説明

標識装置

【課題】設置や撤収に手間が掛からず取り扱いが容易にして作業性に優れた標識装置を提供する。
【解決手段】表面に矢印警告マーク若しくは案内マーク等の標識1を設けた一対の板材2の上端部を枢着して成る標識装置であって、板材2の対向面間には板材2を開閉する開閉機構が設けられ、一対の板材2の枢着部4の上方には操作レバー5が設けられ、開閉機構は操作レバー5の引き上げ操作により、一対の板材2が閉じた状態から下端部の間隔が広がって開いた状態となるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路上に設置して、車両等に進行方向を指示する矢印等を示す標識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路工事や建設現場等では、通行する車両や通行人に進行方向を指示する矢印等の標識が用いられており、例えば、特許文献1のような道路標識が提案されている。
【0003】
この特許文献1の道路標識板は、一対の板材を頂部で枢着し、この一対の板材の下部間を中央で折り曲げ可能なリンク部材によって連結し、頂部に上下方向に遊動自在な操作レバーを設け、この操作レバーと前記リンク部材の中央を紐部材で連結したものである。
【0004】
この特許文献1の道路標識板を現場に設置するとき、作業者は両手で一対の板材の下部を持って押し広げ、折り曲げ状態のリンク部材が略真直ぐになるようにして現場に設置する。一方、現場からこの道路標識を撤収するときには、この道路標識の頂部に設けた把手を持ち上げると、リンク部材の中央が上側に折り曲がり、この道路標識は折り畳まれる。
【0005】
この特許文献1の道路標識を多数用いる場合、把手を持ち上げると速やかに折り畳めるため、現場からの撤収は速やかに行えることができる。しかし、この道路標識を現場に設置するときには、この道路標識を一つ一つ作業員が両手でこの板材の下部を持って押し広げて開脚させることが必要であり、この作業は大変手間が掛かって作業効率が悪い。
【0006】
そこで、本発明者等は、設置や撤収が速やかに行える道路標識装置として特許文献2の矢印板装置を提案した。
【0007】
この特許文献2の矢印板装置は、一対の板材を頂部で枢着し、この一対の板材の対向面に中央で折り曲げ可能なリンク部材の両端を夫々枢着し、リンク部材の中央に設置受体(皿状ベース)を設け、この設置受体が、一対の板材を閉じた状態において板材の一端から下方に位置するように設けられたもので、この設置受皿を地面に押圧すると、リンク部材が真直ぐになって一対の板材は開放状態になる。尚、この特許文献2の矢印板装置は持ち上げると板材の自重によりリンク部材が屈曲して一対の板材が閉じることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭61−198314号公報
【特許文献2】特許第3425617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、更に、一層手間が掛からず、設置や撤収が容易な道路標識板が業界では望まれていた。
【0010】
本発明は、設置や撤収に手間が掛からず取り扱いが容易にして作業性に優れた標識装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0012】
表面に矢印警告マーク若しくは案内マーク等の標識1を設けた一対の板材2の上端部を枢着して成る標識装置であって、前記板材2の対向面間には該板材2を開閉する開閉機構3が設けられ、前記一対の板材2の枢着部4の上方には操作レバー5が設けられ、前記開閉機構3は前記操作レバー5の引き上げ操作により、前記一対の板材2が閉じた状態から下端部の間隔が広がって開いた状態となるように構成されていることを特徴とする標識装置に係るものである。
【0013】
また、請求項1記載の標識装置において、前記枢着部4には握持部6が設けられ、この握持部6は前記操作レバー5の近傍に設けられ、前記握持部6を握持した手で前記操作レバー5を操作し得るように構成されていることを特徴とする標識装置に係るものである。
【0014】
また、請求項2記載の標識装置において、前記開閉機構3は、前記握持部6を握持して前記一対の板材2を持ち上げた場合、前記一対の板材2が自重により閉じた状態となるように構成されていることを特徴とする標識装置に係るものである。
【0015】
また、請求項1〜3いずれか1項に記載の標識装置において、前記開閉機構3は、中央部7が下方に屈曲可能なリンク部材8の両端が夫々前記板材2の対向面に枢着された構成であることを特徴とする標識装置に係るものである。
【0016】
また、請求項4記載の標識装置において、前記操作レバー5には棒状若しくは紐状の連結部材9が連結され、この連結部材9は前記リンク部材8の前記中央部7と枢着されていることを特徴とする標識装置に係るものである。
【0017】
また、請求項1〜5いずれか1項に記載の標識装置において、前記枢着部4にはバネ10が設けられ、前記一対の板材2はこのバネ10により開き付勢されていることを特徴とする標識装置に係るものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上述のように、操作レバーを引き上げるだけで一対の板材を容易に開くことができ現場での設置に手間が掛からず、極めて取り扱いが容易で作業性に優れた標識装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施例に係る標識装置の折り畳み状態の斜視図である。
【図2】本実施例に係る標識装置の設置状態の斜視図である。
【図3】本実施例に係る標識装置の開閉機構を説明する断面斜視図である。
【図4】本実施例に係る標識装置の折り畳み状態の側面図である。
【図5】本実施例に係る標識装置の設置状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
例えば、板材2が閉じた状態において、操作レバー5を引き上げると、板材2の対向面間に設けた開閉機構3が対向する板材2を押し広げ、板材2の下端部の間隔が広がって開いた状態になる。
【0021】
従って、操作レバー5を引き上げるだけの簡単な操作で板材を開いた状態にすることができ、現場での設置に手間が掛からず、極めて取り扱いが容易で作業性に優れた標識装置となる。
【実施例】
【0022】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0023】
本実施例の標識装置13は、表面に矢印警告マーク若しくは案内マーク等の標識1を設けた一対の板材2の上端部を枢着して成る標識装置13であって、板材2の対向面間には板材2を開閉する開閉機構3が設けられ、一対の板材2の枢着部4の上方には操作レバー5が設けられ、開閉機構3は操作レバー5の引き上げ操作により、一対の板材2が閉じた状態から下端部の間隔が広がって開いた状態となるように構成されている。
【0024】
本実施例は、道路工事や建設現場等で用いる、通行する車両や通行人に進行方向を矢印で指示する矢印標識装置である。
【0025】
具体的には、枢着部4には握持部6が設けられ、この握持部6は操作レバー5の近傍に設けられ、この握持部6を握持した手で操作レバー5を操作し得るように構成されている。詳細には、握持部6は操作レバー5の上方位置に設け、握持部6を握持した手の指先で操作レバー5を操作し得る構成である。
【0026】
従って、一対の板材2が閉じられた状態から、片手で握持部6を握って標識装置13を持ち上げ、握持部6を握った手の指先を操作レバー5に掛けて引き上げ操作するだけで、板材2の下端間が開いて直ちに標識装置13を開放状態にでき、標識装置13の設置が簡単に行えることになる。
【0027】
また、開閉機構3は、握持部6を握持して一対の板材2を持ち上げた場合、一対の板材2が自重により閉じた状態となるように構成されている。
【0028】
従って、握持部6を握持して標識装置13を持ち上げると標識装置13が直ちに閉じ状態になるから、この標識装置13を現場から撤去する際も簡単に行えることになる。
【0029】
また、開閉機構3は、中央部7が下方に屈曲可能なリンク部材8の両端が夫々板材2の対向面に枢着された構成である。
【0030】
従って、この開閉機構3は、リンク部材8の中央部7が下方にV字状に屈曲した状態でこのリンク部材8の屈曲度合いを変えることで、一対の板材2の間隔を変えて一対の板材2を開閉し得ることになる。
【0031】
具体的には、リンク部材8は、2本の棒部材14からなり、この棒部材14夫々の一端部を板材2の夫々に枢着して沿設状態になるまで下方に擺動し得るように構成するとともに、この棒部材14の他端部同士は重合し、この重合部分は回動し得る回動軸15を備え、この回動軸15がリンク部材8の中央部7となり、この中央部7はV字状に下方に屈曲した状態で屈曲し得るように構成されている。
【0032】
更に詳細には、板材2の裏面には枢着軸16を有する支持体17が設けられ、この支持体17の枢着軸16に棒部材14が枢着され、この棒部材14は、板材2の裏面の下方側に回動して板材2の裏面に沿設し得ると共に、所定角度を越える上方には回動せずに係止されるように形成されている。
【0033】
具体的には、棒部材14の枢着軸16側の端部は、下側となる角部を直線状若しくは曲線状の切欠部18を設けて枢着軸16の周りの下方には回動できるようにすると共に、上側となる角部には切欠部を設けないようにすることで、棒部材14が板材2に対して所定角度以上には回動せずに係止されるように形成されている。このように棒部材14の一端部を形成することで、ストッパ部材を設けなくとも所定角度以上には回動できないように構成されている。
【0034】
また、操作レバー5には棒状若しくは紐状の連結部材9が連結され、この連結部材9はリンク部材8の中央部7と枢着されている構成である。
【0035】
本実施例では、棒状の連結部材9でリンク部材8の中央部7と操作レバー5とを連結することで、操作レバー5を開閉機構3に連動している。
【0036】
この操作レバー5は短冊状若しくは棒状の部材であり、連結部材9がこの操作レバー5の一側面に略直交するように設けられて側面視T字状となる構成であり、更に、この連結部材9の他端部は、リンク部材8の中央部7である回動軸15に枢着されている。
【0037】
本実施例の連結部材9は棒状の剛体であり、この連結部材9はピストン棒の役を果し、操作レバー5を上下させると、この連結部材9がリンク部材8の中央部7を上下させて、リンク部材8を開閉し、従って、枢着部4で蝶着された一対の板材2を開閉できることになる。
【0038】
この連結部材9は、棒状等の剛体の他、紐,帯,鎖等の可撓体でもよく、いずれでも、握持部6を持って標識装置13を持ち上げ、操作レバー5を持ち上げると、開閉機構3のV字状のリンク部材8の両端が広がって板材2を押し広がることで一対の板材2の下端部の間隔が広がって標識装置13が開き、操作レバー5から手を離すと板材2自体の自重によって開閉機構3のリンク部材8が押圧されて狭まることによって標識装置13が閉じることになる。
【0039】
また、握持部6を握持した状態で、操作レバー5の上げ下げに要する長さ、即ち、操作レバー5のストローク長が過度に大きくならないように、本実施例の開閉機構3を構成するリンク部材8は板材2の上端部側に設けている。
【0040】
従って、握持部6を持って標識装置13を持ち上げ、この握持部6を持った手の指で操作レバー5を上げるだけで矢印標識装置13を開くことができ、操作レバー5から指を離すと標識装置13を閉じることができ、片手で簡単に矢印標識装置13を操作できることになる。
【0041】
その結果、開閉機構3を構成するリンク部材8は小型で済み、また、操作レバー5と連結する連結部材9の長さも短くて済むため、標識装置13自体の軽量化をもたらすことにもなる。
【0042】
また、枢着部4にはバネ10が設けられ、一対の板材2はこのバネ10により開き付勢されている構成である。
【0043】
具体的には、板材2と枢着部4との枢着にバネ10を有するバネ蝶番21を用いて、板材2を枢着部4にバネ付勢された状態で取付けることにより、板材2が開脚方向に付勢される構成である。従って、板材2は開脚方向に付勢されているため、操作レバー5の引き上げ操作の力が弱くとも、例えば、指一本で板材2の開放動作が容易となり、標識装置13の設置作業が容易になる。
【0044】
また、本実施例の標識装置13の主要部材は軽量金属材料を用いて構成され、また、板材2の下端及び側面には保護部材19・20を設けている。
【0045】
従って、標識装置13の板材2が閉じた状態において、握持部6を握持して標識装置13を持ち上げ、握持部6を握持した手の指を操作レバー5に掛けて引き上げ操作すると、操作レバー5に連結されている連結部材9がリンク部材8の中央部7が持ち上がり、リンク部材8がV字状に下方に屈曲した状態からこのV字状の両端が広がった状態になって、このリンク部材8の両端が一対の板材2を外方向に押しやることで、一対の板材2の下端部の間隔が広がって開いた状態になるから、この状態で標識装置13を所定の設置場所に載置すると、標識装置13の下端が開いた状態を維持して、現場にこの標識装置13を配設できることになる。
【0046】
また、この標識装置13が開いた状態においてもリンク部材8は板材2間にV字状に下方に屈曲した状態が維持されているものであって、板材2は係止固定されているものではないため、操作レバー5から指を離した状態で、握持部6を握持し、標識装置13を持ち上げると、板材2の自重によって、リンク部材8が両側から押圧されて中央部7が一層下方に屈曲し、リンク部材8の2本の棒部材14は板材2の夫々に沿設した状態になって標識装置13は閉じることになる。即ち、この標識装置13を持ち上げるだけで自ら閉じることになり、手間を掛けずに撤収が可能である。
【0047】
以上、本実施例の標識装置13は、板材2間が開脚した状態でもリンク部材8が板材2間の下方に屈曲状態となるようにしたことで、枢着部4を上にして板材2が閉じた状態において、操作レバー5を上に動かすと、枢着部材8が下方に屈曲した状態で伸張して一対の板材2間が開き、一方、この板材2間が開いた状態においても枢着部材8が下方に屈曲した状態であるため、標識装置13を持ち上げだけで、枢着部材8の中央部7は伸張状態から下方に屈曲して閉じて、一対の板材2は自重によって自ずから閉じることになる。
【0048】
従って、標識装置13の開閉が極めて簡単に行えるため、現場での設置及び撤収に手間が掛からず、極めて取り扱いが容易で作業性に優れた標識装置13となる。
【符号の説明】
【0049】
1 標識
2 板材
3 開閉機構
4 枢着部
5 操作レバー
6 握持部
7 中央部
8 リンク部材
9 連結部材
10 バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に矢印警告マーク若しくは案内マーク等の標識を設けた一対の板材の上端部を枢着して成る標識装置であって、前記板材の対向面間には該板材を開閉する開閉機構が設けられ、前記一対の板材の枢着部の上方には操作レバーが設けられ、前記開閉機構は前記操作レバーの引き上げ操作により、前記一対の板材が閉じた状態から下端部の間隔が広がって開いた状態となるように構成されていることを特徴とする標識装置。
【請求項2】
請求項1記載の標識装置において、前記枢着部には握持部が設けられ、この握持部は前記操作レバーの近傍に設けられ、前記握持部を握持した手で前記操作レバーを操作し得るように構成されていることを特徴とする標識装置。
【請求項3】
請求項2記載の標識装置において、前記開閉機構は、前記握持部を握持して前記一対の板材を持ち上げた場合、前記一対の板材が自重により閉じた状態となるように構成されていることを特徴とする標識装置。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項に記載の標識装置において、前記開閉機構は、中央部が下方に屈曲可能なリンク部材の両端が夫々前記板材の対向面に枢着された構成であることを特徴とする標識装置。
【請求項5】
請求項4記載の標識装置において、前記操作レバーには棒状若しくは紐状の連結部材が連結され、この連結部材は前記リンク部材の前記中央部と枢着されていることを特徴とする標識装置。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか1項に記載の標識装置において、前記枢着部にはバネが設けられ、前記一対の板材はこのバネにより開き付勢されていることを特徴とする標識装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−97435(P2012−97435A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244850(P2010−244850)
【出願日】平成22年10月30日(2010.10.30)
【出願人】(509185446)株式会社ネクスコ・メンテナンス新潟 (5)
【Fターム(参考)】