説明

模様付容器

【課題】裏面に金属薄膜層が形成された透明部材を有する容器であって、その透明部材に印象的な模様が付与されて興趣に富むだけでなく、裏面に金属薄膜層が形成されていることを強く印象付けることのできる、優れた模様付容器を提供する。
【解決手段】透明な蓋体4の裏面にアルミニウム薄膜層5が形成されたコンパクト容器であって、上記蓋体4の表面に、表と裏の色もしくは柄が異なる模様形成層6が部分的に設けられており、上記模様形成層6の裏面が、透明な蓋体4を通してアルミニウム薄膜層5に映り、陰影模様7になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特殊な表面模様が付与されている模様付容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、化粧料等を収容したコンパクト容器には、蓋体の内側面(裏面)に、ガラス製の鏡を貼着した構造のものが多いが、このようなコンパクト容器は、本体に比べて蓋体の重量が重く、蓋体を開いた状態で安定姿勢を保ちにくい、容器が衝撃を受けると鏡が割れるおそれがある、等の問題を有している。そこで、上記鏡に代えて、蓋体裏面に、真空蒸着により金属層を形成し、この金属層を鏡として用いる技術が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭57−159825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1によれば、金属層を鏡として用い、ガラス製の鏡を省略することができる利点の他、蓋体を透明もしくは半透明樹脂で形成することにより、蓋体表面がメタリック調の色彩となり、装飾的な効果を奏する旨が記載されている。
【0004】
しかしながら、蓋体を透明もしくは半透明にして蓋体裏面の金属層を透かせて見せるだけでは、装飾的な効果がいま一つ不充分である。また、金属層を透かせて見せた場合、金属層が蓋体裏面に形成されているのか蓋体表面に形成されているのかが、すぐには判断しかねるため、このコンパクト容器を店頭に陳列する際、ガラス製の鏡を省略して金属層を内側に形成していることを顧客にアピールするには、説明書きを添付したり、蓋体を閉じた状態と開いた状態の2つの態様で陳列する等の手間が必要であった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、裏面に金属薄膜層が形成された透明部材を有する容器であって、その透明部材に印象的な模様が付与されて興趣に富むだけでなく、裏面に金属薄膜層が形成されていることを強く印象付けることのできる、優れた模様付容器の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、容器の表にあらわれる部分の少なくとも一部が、裏面に金属薄膜層が形成された透明部材で構成された容器であって、上記透明部材の表面に、表と裏の色もしくは柄が異なる模様形成層が部分的に設けられており、上記模様形成層の裏面が、透明部材を通して金属薄膜層に映り、陰影模様になっている模様付容器を第1の要旨とする。
【0007】
また、本発明は、上記金属薄膜層が蒸着によって形成されており、上記模様形成層がバックプリント箔で形成されている模様付容器を第2の要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
すなわち、本発明の模様付容器は、容器の表にあらわれる部分の少なくとも一部(例えば蓋部)が、裏面に金属薄膜層が形成された透明部材で構成されており、上記透明部材の表面に、部分的に模様形成層が設けられ、その裏面が、上記金属薄膜層に映ることにより、陰影模様が形作られるようになっている。そして、上記模様形成層は、表と裏の色もしくは柄が異なっている。したがって、上記金属薄膜層が、鏡としての役割や容器部材を補強する役割を果たすという実用的な効果だけでなく、上記金属薄膜層に映る陰影模様が、模様形成層からなる表面模様とは異なる色もしくは柄の模様となり、しかもその陰影模様が見る角度によってずれて、模様形成層からなる表面模様を立体的に浮き立たせることにより、非常に興趣に富む外観になる、という意匠的な効果を奏する。
【0009】
なお、本発明において、特に、上記金属薄膜層が蒸着によって形成されたものであり、上記模様形成層がバックプリント箔で形成されているものは、とりわけ美麗な外観となり、顧客に対し強い印象を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態について説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
【0011】
図1は、本発明を実施するための最良の形態であるコンパクト容器の斜視図であり、図2は、そのX−X′断面図である。これらの図において、1は本体部で、その内側の向かって左側に設けられた凹部2には、ファンデーション等の化粧料が収容保持されるようになっている。また、向かって右側に設けられた凹部3には、化粧料を肌に塗布するためのパフが収容保持されるようになっている。そして、上記本体部1の上部開口を蓋する蓋体4は、本体部1とヒンジ連結され、図1において鎖線で示すように、上方に開くようになっている。
【0012】
上記蓋体4は、全体が透明アクリル樹脂成形体からなる透明部材で構成されており、その裏面全面に、アルミニウム薄膜層5が形成されている。また、その表面には、水玉模様を形成する模様形成層6が設けられている。
【0013】
上記アルミニウム薄膜層5は、真空蒸着によって形成されている。そして、その表面が、透明ポリウレタンによってトップクリアコートされており、アルミニウム薄膜層5が損傷したり汚れたりしないよう保護されている。
【0014】
また、上記模様形成層6は、表面がシルバー(アルミニウム薄膜層5と同様の、光沢ある銀色)、裏面がブルーのバックプリント箔を転写することによって形成されている。
【0015】
したがって、上記蓋体4の表面には、模様形成層6によるシルバーの水玉模様が付与されている一方、その裏面が、透明な蓋体4を透かしてブルーの水玉模様としてアルミニウム薄膜層5に映り、陰影模様7が付与されるようになっている。そして、この陰影模様7は、蓋体4の正面から見ると、模様形成層6による表面の水玉模様と重なって見えず、見る角度を斜めにずらすと、表面の水玉模様の下方に、蓋体4の厚み分だけ離れて見えるようになっている。このため、表面の水玉模様が、宙に浮いているように立体的に見えるのであり、非常に印象深い外観となる。
【0016】
しかも、上記のように、模様形成層6が浮き上がって見えることから、蓋体4の表面ではなく裏面に、鏡の役割を果たすアルミニウム薄膜層5が形成されていることが一目でわかるため、このコンパクト容器を店頭で陳列する際、わざわざそのことを説明したり、蓋を開いた状態で陳列したりする必要がない。そして、ガラス製の鏡を用いていないことから、容器全体が軽量になる、蓋体4を開いて使用する際に安定がよい、鏡が割れにくい、等の効果を奏する。
【0017】
なお、上記の例において、蓋体4を構成する透明部材は、従来から容器等の成形品に用いられる透明部材であれば、どのようなものであってもよく、アクリル樹脂の他、例えば、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリカーボネート等があげられる。これらの透明部材は、必ずしも無色である必要はなく、多少着色されていても、反対側が透けて見えるものであれば差し支えはない。
【0018】
また、上記アルミニウム薄膜層5は、真空蒸着に限らず、化学蒸着、スパッタリング、メッキ、ホットスタンプ、金属箔の転写、塗装等、適宜の方法によって形成することができる。そして、用いる金属も、アルミニウム以外に、ステンレス、クロム、チタン、ニッケル等、金属光沢を有する薄膜層となるものであれば、どのような金属を用いても差し支えない。
【0019】
そして、上記の例では、アルミニウム薄膜層5の表面に、透明ポリウレタンを用いてトップクリアコートを施しているが、上記透明ポリウレタンに代えて、透明アクリルウレタン樹脂、透明ポリスチレン等を用いることができる。なお、容器内に中蓋が設けられ、アルミニウム薄膜層5が汚れにくい構造になっている場合等においては、必ずしもこのようなトップクリアコートを施す必要はない。
【0020】
さらに、上記の例では、上記模様形成層6を、バックプリント箔の転写によって形成しているが、必ずしも光沢ある「箔」を用いる必要はなく、表裏面にどのような着色や柄が付与された転写シートを用いても差し支えない。ただし、転写によって形成される模様形成層6において、表と裏の色、あるいは表と裏の柄が、必ず、互いに異なるように設定されていなければならない。例えば、表がホログラム、裏面が無地の転写層や、表が赤、裏が黄色の転写層といったものがあげられる。また、転写シートによらず、まず第1のインクで印刷模様を形成し、つぎに、第1のインクと色の異なる第2のインクで、上記印刷模様の上に印刷を行うことにより、表と裏で色の異なる模様形成層6を得るようにしてもよい。
【0021】
なお、上記模様形成層6は、蓋体4の表面において、部分的に形成されたものでなければならない。すなわち、蓋体4の表面全面に形成すると、陰影模様7を見ることができないからである。ただし、そのデザインや配置は、特に限定するものではない。
【0022】
上記の例において、アルミニウム薄膜層5と模様形成層6は、まず、模様形成層6を形成するための転写シートを用い、インモールド成形により、蓋体4の成形と模様形成層6の形成を同時に行い、つぎに、蓋体4の裏面に、アルミニウム蒸着を行ってアルミニウム薄膜層5を形成することが好適である。
【0023】
また、アルミニウム薄膜層5と模様形成層6を、両方とも転写シート(もしくは転写箔)で形成する場合は、どちらを先にインモールド成形してもよく、その後、蓋体4の反対側の面に、他方の層を転写するようにする。あるいは、可能であれば、両面インモールド成形を行ってもよい。もちろん、蓋体4の成形後、両層を順次形成するようにしても差し支えない。
【0024】
そして、上記の例は、本発明をコンパクト容器に適用したものであるが、容器の種類や形状、透明部材(上記の例では蓋体)の配置等は、これに限るものではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施例の斜視図である。
【図2】図1のX−X′断面図である。
【符号の説明】
【0026】
4 蓋体
5 アルミニウム薄膜層
6 模様形成層
7 陰影模様

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の表にあらわれる部分の少なくとも一部が、裏面に金属薄膜層が形成された透明部材で構成された容器であって、上記透明部材の表面に、表と裏の色もしくは柄が異なる模様形成層が部分的に設けられており、上記模様形成層の裏面が、透明部材を通して金属薄膜層に映り、陰影模様になっていることを特徴とする模様付容器。
【請求項2】
上記金属薄膜層が蒸着によって形成されており、上記模様形成層がバックプリント箔で形成されている請求項1記載の模様付容器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−91285(P2007−91285A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−284364(P2005−284364)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)
【Fターム(参考)】