説明

模様面の形成方法

【課題】塗装仕上げによる模様面形成において、その美観性を高める新規な方法を提供する。
【解決手段】基材に対し、(1)平均粒子径0.1mm以上5mm以下の骨材を含む骨材含有塗材を1種以上用いて、骨材による凹凸が形成された凹凸領域と、当該凹凸領域よりも凹凸が平坦化された平坦領域とが混在した下地面を形成する工程、(2)当該下地面に対し、分散媒中に着色塗料の粒状物が分散した上塗材を塗付する工程、を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な塗装方法に関するものである。本発明は、主に建築物や土木構造物等に対して適用することができる。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物や土木構造物等においては、その表面に種々の模様が付与されている。このうち、多彩模様塗料を用いた塗装によれば、一回の塗装で複数色の色粒が混在した模様を得ることができる。多彩模様塗料は、JIS K5667(2002)「多彩模様塗料」に規定されており、塗料を構成する分散媒と着色粒子の組み合わせによって、水中油型(O/W型)、油中水型(W/O型)、油中油型(O/O型)及び水中水型(W/W型)の4種類に分類される。
【0003】
このような多彩模様塗料の塗装においては、予め別の塗材を塗付し下地を形成しておくことによって、意匠性を高めることもできる。例えば、特許文献1(特開昭62−87285号公報)には、凹凸状に形成せしめた下塗り層の上に、多彩模様塗料を塗付することによって、立体感に富んだ装飾性仕上げを得ることが記載されている。また、特許文献2(特開2002−263561号公報)には、部分的に色調が異なる下塗り塗膜の上に、多彩模様塗料を塗付する方法が記載されている。当該特許文献2では、陰影感、深み感等を有する意匠性が得られることが記載されている。
【0004】
しかしながら、上記特許文献に記載の方法において、多彩模様塗料によって形成される色粒は、被塗面全体に亘りほぼ均一な状態で変化に乏しく、美観性向上の点ではまだ改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−87285号公報
【特許文献2】特開2002−263561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたものであり、塗装仕上げによる模様面形成において、その美観性を高める新規な方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、骨材含有塗材を用いて凹凸領域と平坦領域とが混在する下地面を形成した後、当該下地面に対して、分散媒中に着色塗料の粒状物が分散した上塗材を塗付する方法に想到し、本発明を完成させるに到った。
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
【0008】
1.基材に対し、
(1)平均粒子径0.1mm以上5mm以下の骨材を含む骨材含有塗材を1種以上用いて、骨材による凹凸が形成された凹凸領域と、当該凹凸領域よりも凹凸が平坦化された平坦領域とが混在した下地面を形成する工程、
(2)当該下地面に対し、分散媒中に着色塗料の粒状物が分散した上塗材を塗付する工程、
を行うことを特徴とする模様面の形成方法。
2.前記工程(1)では、
平均粒子径0.1mm以上5mm以下の骨材を含む骨材含有塗材を1種以上塗付し、
その塗面の一部の領域において、骨材を埋没させる処理、骨材を露出させる処理、及び骨材を除去する処理から選ばれる1種以上の処理を施すことにより、
骨材による凹凸が形成された凹凸領域と、当該凹凸領域よりも凹凸が平坦化された平坦領域とが混在した下地面を形成する
ことを特徴とする1.記載の模様面の形成方法。
3.前記工程(1)では、
少なくとも1種以上の骨材含有塗材を、部分的に塗付する
ことを特徴とする1.または2.記載の模様面の形成方法。
4.前記工程(1)では、
骨材の平均粒子径及び/または含有比率が異なる2種以上の骨材含有塗材を用いる
ことを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載の模様面の形成方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、平坦領域では比較的大きな色粒によって模様が形成され、凹凸領域では比較的小さな色粒によって模様が形成される。そのため、最終的な仕上面において視覚的変化が生じ、美観性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0011】
本発明は、主に、建築物の内外壁面、天井、床等、あるいは土木構造物の表面等に適用することができる。このような部位を構成する基材としては、例えば、コンクリート、モルタル、サイディングボード、押出成形板、石膏ボード、パーライト板、合板、プラスチック板、金属板、木工板、ガラス、煉瓦、陶磁器タイル等の各種基材が挙げられる。
これら基材は、何らかの表面処理(フィラー処理、サーフェーサー処理、シーラー処理等)が施されたものや、予め着色塗料等で着色されたものでもよく、既に塗膜が形成されたものや、壁紙が貼り付けられたものであってもよい。
【0012】
本発明では、工程(1)において、まず上記基材に対し、平均粒子径0.1mm以上5mm以下の骨材を含む骨材含有塗材を塗付する。
この塗材における骨材としては、平均粒子径が上記範囲内のものであれば材質は特に限定されず、例えば、寒水石、珪砂、砂利、ガラスビーズ、樹脂ビーズ、金属粒、あるいは岩石、ガラス、陶磁器、貝殻、焼結体、コンクリート、モルタル、プラスチック、ゴム等の破砕品等が使用できる。これらは、着色処理が施されたものであってもよい。
骨材の平均粒子径が0.1mmよりも小さい場合は、凹凸領域における凹凸の程度が不十分となり、本発明の効果が得られ難くなる。骨材の平均粒子径が5mmを超える場合は、塗装作業等に支障をきたすおそれがあり、実用的ではない。本発明では、特に、平均粒子径0.15mm以上3mm以下(好ましくは0.2mm以上2mm以下)の骨材を含む骨材含有塗材が好適である。
なお、骨材の平均粒子径は、JIS Z8801−1:2000に規定される金属製網ふるいを用いてふるい分けを行い、その重量分布の平均値を算出することによって得られる値である。
【0013】
本発明における骨材含有塗材は、樹脂成分を含むベース塗材と、上記骨材との混合物である。骨材含有塗材における骨材の含有比率は、ベース塗材の固形分100重量部に対し、通常10〜2000重量部、好ましくは30〜1000重量部、より好ましくは50〜500重量部程度である。骨材の含有比率がこのような範囲内であれば、後の工程において凹凸領域と平坦領域が形成しやすくなり好適である。
【0014】
ベース塗材における樹脂成分は、結合材として作用するものであり、本発明では水分散性樹脂及び/または水溶性樹脂が好適である。樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体等、あるいはこれらの複合物等が挙げられる。このような樹脂成分は、塗膜形成後に架橋反応を生じる性質を有するものであってもよい。
【0015】
上記ベース塗材としては、樹脂成分に加え、平均粒子径0.1mm未満の粉粒体を含むものが好適である。このような粉粒体を用いることで、上塗材塗装後の着色粒子の滲み等が抑制され、美観性向上の点で好適である。この効果は、下地面の表層においてマイクロオーダー以下の微細な凹凸等が形成されることが有効に作用しているものと推測される。
このような粉粒体としては、各種体質顔料、着色顔料等が使用できる。具体的に、体質顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、カオリン、陶土、チャイナクレー、タルク、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、ホワイトカーボン、珪藻土、中空ビーズ等が挙げられる。
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化第二鉄(ベンガラ)、黄色酸化鉄、酸化鉄、酸化珪素、群青、コバルトグリーン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化インジウム、アルミナ等の無機着色顔料、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンゾイミダゾール系、フタロシアニン系、キノフタロン系等の有機着色顔料、パール顔料、アルミニウム顔料、蛍光顔料等が挙げられる。
【0016】
上記粉粒体の混合比率は、ベース塗材中の樹脂固形分100重量部に対し、通常10〜1000重量部、好ましくは20〜500重量部、より好ましくは30〜300重量部程度である。
ベース塗材においては、とりわけ平均粒子径0.5μm以上50μm以下(さらには1μm以上45μm以下)の粉体を上記比率で含むものが好適である。
【0017】
ベース塗材は、上記成分の他、通常塗材に混合可能な種々の成分を含むことができる。このような成分としては、例えば、希釈剤、造膜助剤、硬化剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、界面活性剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、湿潤剤、触媒、硬化促進剤、脱水剤、消泡剤、艶消剤、凍結防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等が挙げられる。
【0018】
骨材含有塗材の色調は、最終的な仕上り性等を勘案して適宜設定することができる。骨材含有塗材を着色するには、着色顔料等を用いて所望の色調に調整すればよい。この際、骨材含有塗材の色調を、上塗材に近似した色相(共色)に設定しておけば、下地面が露出した場合であっても違和感のない仕上りとなる。
【0019】
骨材含有塗材の塗装方法としては、特に限定されず、吹付け塗装、ローラー塗装、コテ塗り等の方法を採用することができる。骨材含有塗材の塗付け量は、通常0.2〜8kg/m(好ましくは0.5〜6kg/m)程度である。
【0020】
本発明では、上記骨材含有塗材の塗付時ないし塗付後に、その塗面の一部の領域に対し、骨材を埋没させる処理(a)、骨材を露出させる処理(b)、及び骨材を除去する処理(c)から選ばれる1種以上の処理を施すことが望ましい。このような処理により、骨材による凹凸が形成された凹凸領域と、当該凹凸領域よりも凹凸が平坦化された平坦領域とが混在した下地面を形成することができる。なお、本発明における平坦化とは、下地面において、骨材による凸部の高さ及び/または密度が相対的に小さくなることを意味する。
【0021】
上記処理(a)は、骨材を埋没させる処理である。このような処理は、通常、骨材含有塗材の塗付時、ないし骨材含有塗材の塗面の乾燥前までに行えばよい。
処理(a)では、骨材含有塗材の塗面に露出した状態の骨材を、押圧することにより、骨材がベース塗材内に埋没した状態となる。押圧の際には、各種押圧具を使用すればよい。押圧具としては、骨材を埋没させることが可能なものであればよく、例えば、コテ、ヘラ、プラスチックローラー等が使用できる。その他、種々の板材やデザインローラー等も使用可能である。
【0022】
上記処理(b)は、骨材を露出させる処理である。このような処理は、通常、骨材含有塗材の塗付時、ないし骨材含有塗材の塗面の乾燥前までに行えばよい。
処理(b)では、ベース塗材内に埋没した状態の骨材を露出させるため、骨材周辺のベース塗材を除去すればよい。
ベース塗材を除去するには、例えば、ベース塗材を掻き取る方法や、吸収する方法等を採用することができる。このうち、前者では、ブラシ等を用いて骨材周辺のベース塗材を除去すればよい。後者では、スポンジ、布等の吸液性材料を塗面に接触させる手段を用いることができる。
また、これらの方法を行う際には、ベース塗材を軟化または溶解させることで、作業の効率化を図ることもできる。ベース塗材を軟化または溶解させるには、ベース塗材の塗面に、水、溶剤等の媒体が接触するようにして処理を行えばよい。
【0023】
上記処理(c)は、骨材を除去する処理である。このような処理は、骨材含有塗材の塗付時、ないし骨材含有塗材の塗面の乾燥前までに行えばよいが、場合により、骨材含有塗材の塗面の乾燥後に行うこともできる。
処理(c)では、骨材含有塗材の塗面に露出した状態の骨材を除去し、その周辺のベース塗材が残存するように処理すればよい。また、処理(c)では、骨材を除去した箇所に著しい凹み等が残存しないように、骨材除去の方法やタイミング等を選定すればよい。除去の際には、例えば、刷毛、研磨紙等を用いることができる。
【0024】
本発明では、工程(1)において、平坦な基材に対し、少なくとも1種以上の上記骨材含有塗材を、基材の一部の領域に部分的に塗付することによって、凹凸領域と平坦領域とが混在した下地面を形成することもできる。この方法では、通常、骨材含有塗材による塗膜の一部ないし全部が凹凸領域となり、基材が平坦領域となる。また、この方法では、上記(a)〜(c)の処理を行ってもよいが、省略することもできる。
【0025】
さらに、工程(1)では、骨材の平均粒子径及び/または含有比率が異なる2種以上の骨材含有塗材を用いることによって、凹凸領域と平坦領域とが混在した下地面を形成することもできる。この方法では、通常、平均粒子径が大きい骨材を含む塗材による塗膜の一部ないし全部が凹凸領域となり、相対的に平均粒子径が小さい骨材を含む塗材による塗膜の一部ないし全部が平坦領域となる。一方、骨材の含有比率については、その含有比率が高い塗材による塗膜の一部ないし全部が凹凸領域となり、相対的に含有比率が低い塗材による塗膜の一部ないし全部が平坦領域となる。この方法において、上記(a)〜(c)の処理は行ってもよいが、省略することも可能である。
【0026】
以上の工程(1)により得られる凹凸領域、平坦領域の形状、面積等は、所望の仕上面が得られるように適宜設定すればよい。本発明では、例えば、一方の領域の中に他方の領域が島状に散在する状態、一方の領域の中に他方の領域が線状に存在する状態、それぞれの領域が交互に並んだ状態等を形成することが可能である。
【0027】
本発明では、上記下地面に対し、着色塗料の粒状物(「着色粒子」ともいう)が分散媒中に分散した上塗材を塗付する。
上述の通り、本発明における下地面では、骨材による凹凸が形成された凹凸領域と、当該凹凸領域よりも凹凸が平坦化された平坦領域とが混在した状態となっている。このような下地面に対して、上記上塗材を塗付することにより、平坦領域では、上塗材に含まれる着色粒子が、塗付時の外力により変形して潰れやすい(広がりやすい)ため、比較的大きな色粒によって模様が形成される。他方、凹凸領域では、塗付時に外力が加わっても、骨材が障壁となって着色粒子が広がりにくいため、比較的小さな色粒によって模様が形成される。すなわち、同一面内に、比較的大きな色粒による模様領域と、比較的小さな色粒による模様領域とが混在することとなる。
本発明では、このように凹凸領域と平坦領域で上塗材の仕上状態に視覚的変化が生じる。具体的に、平坦領域では各色粒自体の色調が認識されやすくなり、凹凸領域では各色粒が混ざり合ったような色調で認識されやすくなる。このような視覚的変化により、本発明では従来技術では得られなかった美観仕上げが可能となる。
【0028】
本発明で用いる上塗材は、分散媒中に、着色塗料の粒状物が分散したものである。このような上塗材は、塗付時に変形可能な着色粒子を含むものであればよく、一般に多彩模様塗料として知られている材料を使用することができる。多彩模様塗料は、JIS K5667(2002)「多彩模様塗料」に規定されており、塗料を構成する分散媒と着色粒子の組み合わせによって、水中油型(O/W型)、油中水型(W/O型)、油中油型(O/O型)及び水中水型(W/W型)の4種類に分類される。本発明における上塗材としては、特に、水中油型(O/W型)または水中水型(W/W型)の多彩模様塗料が好適である。
【0029】
上塗材に含まれる着色粒子は、塗付時に変形可能なものであれば、ある程度ゲル化した状態であってもよい。
着色粒子の色相は、最終的に形成される模様に応じて適宜設定すればよい。本発明において使用する上塗材としては、通常2色以上、好ましくは3〜8色程度の着色粒子が含まれるものが好適である。
着色粒子の粒径も、最終的に形成される模様に応じて適宜設定すればよいが、通常は0.01〜5mm、好ましくは0.1〜2mm程度である。粒子径が異なる着色粒子を種々組み合せることによって、意匠性の幅を広げることもできる。
【0030】
上塗材の塗装方法については、本発明の効果が奏される限り、種々の方法を採用することができるが、本発明では吹き付け塗装が好適である。
上塗材の塗付け量は、最終的な模様の種類によって異なるが、通常0.1〜1kg/m程度である。上塗材の乾燥は、通常、常温で行えばよい。
【0031】
本発明では、上塗材の塗膜が乾燥した後、必要に応じクリヤー塗料を塗付することもできる。特に耐候性が要求される構造物外部の部位に施工する際には、保護の目的でクリヤー塗料を塗付するのが好ましい。
また、本発明では、通常、下地面に対し直接上塗材を塗付するが、本発明の効果を阻害しない限り、必要に応じ中塗材等を塗付した後に上塗材を塗付することも可能である。
また、目地棒や目地型枠等の目地材の使用によって、格子状、幾何学模様状等の目地部を形成することもできる。この場合は、目地色となる色調で塗装を施した基材に、目地材を貼り付けた後、上記工程を行い、その後に目地材を除去すればよい。
【実施例】
【0032】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0033】
(骨材含有塗材)
・ベース塗材1
アクリル樹脂エマルション(樹脂固形分50重量%)200重量部、重質炭酸カルシウム(平均粒子径5μm)120重量部、酸化チタン(平均粒子径0.3μm)25重量部、黄色酸化鉄(平均粒子径0.8μm)4重量部、増粘剤2重量部、造膜助剤18重量部、消泡剤1重量部を均一に攪拌混合してベース塗材1を得た。
【0034】
・骨材含有塗材1
上記ベース塗材1の固形分100重量部に、寒水石(粒子径0.1〜0.3mm、平均粒子径0.2mm)80重量部、及び珪砂(粒子径0.5〜2mm、平均粒子径1.2mm)210重量部を均一に混合して、骨材含有塗材1を得た。
【0035】
・骨材含有塗材2
上記ベース塗材1の固形分100重量部に、寒水石(粒子径0.1〜0.3mm、平均粒子径0.2mm)60重量部を均一に混合して、骨材含有塗材2を得た。
【0036】
・骨材含有塗材3
上記ベース塗材1の固形分100重量部に、珪砂(粒子径0.4〜1mm、平均粒子径0.6mm)60重量部を均一に混合して、骨材含有塗材3を得た。
【0037】
(上塗材)
上塗材としては、以下に示すものを用意した。
・上塗材1
褐色粒子(アクリル樹脂、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、二酸化チタン、脂肪族炭化水素系溶剤を主成分とする着色塗料の粒状物、粒子径約2mm)と、淡黄色粒子(アクリル樹脂、黄色酸化鉄、二酸化チタン、脂肪族炭化水素系溶剤を主成分とする着色塗料の粒状物、粒子径約2mm)と、黒色粒子(アクリル樹脂、黒色酸化鉄、脂肪族炭化水素系溶剤を主成分とする着色塗料の粒状物、粒子径約1mm)が水性媒体中に分散した水中油型の多彩模様塗料。褐色粒子:淡黄色粒子:黒色粒子=4:4:2(重量比率)。
【0038】
・上塗材2
白色粒子(アクリル樹脂、二酸化チタン、脂肪族炭化水素系溶剤を主成分とする着色塗料の粒状物、粒子径約1.5mm)と、黄色粒子(アクリル樹脂、黄色酸化鉄、二酸化チタン、脂肪族炭化水素系溶剤を主成分とする着色塗料の粒状物、粒子径約2mm)と、灰色粒子(アクリル樹脂、黒色酸化鉄、二酸化チタン、脂肪族炭化水素系溶剤を主成分とする着色塗料の粒状物、粒子径約1mm)が水性媒体中に分散した水中油型の多彩模様塗料。白色粒子:黄色粒子:灰色粒子=40:30:30(重量比率)。
【0039】
(実施例1)
予めシーラーが塗装されたスレート板に対し、塗付け量4kg/mで骨材含有塗材1を吹付け塗装して、起伏のある塗面を形成させ、その直後にコテで塗面の凸部のみを押えて均し、24時間乾燥した。この処理により、コテで押え均した部分は、骨材が埋没して平坦となった。それ以外の部分(コテが接触しなかった部分)では、骨材による凹凸が残存した。
この下地面に対し、上塗材1を塗付量0.6kg/mでスプレー塗装し、24時間乾燥した。
以上の方法により得られた模様面は、平坦領域では径の大きな粒により模様が形成され、凹凸領域では比較的小さな粒により模様が形成されたものとなり、美観性に優れるものであった。
【0040】
(実施例2)
実施例1と同様の下地面に対し、上塗材2を塗付量0.6kg/mでスプレー塗装し、24時間乾燥した。
以上の方法により得られた模様面は、平坦領域では径の大きな粒により模様が形成され、凹凸領域では比較的小さな粒により模様が形成されたものとなり、美観性に優れるものであった。
【0041】
(実施例3)
予めシーラーが塗装されたスレート板に対し、塗付け量1kg/mで骨材含有塗材2を吹付け塗装し、平坦な面を形成した。2時間乾燥後、塗付け量1.5kg/mで骨材含有塗材1を島状に吹付け塗装し、24時間乾燥した。以上の方法で得られた下地面において、骨材含有塗材1による島状の部分では、骨材による凹凸が現れ、それ以外の部分(骨材含有塗材2の塗膜が露出した部分)は比較的平坦であった。
この下地面に対し、上塗材1を塗付量0.6kg/mでスプレー塗装し、24時間乾燥した。
以上の方法により得られた模様面は、平坦領域では径の大きな粒により模様が形成され、凹凸領域では比較的小さな粒により模様が形成されたものとなり、美観性に優れるものであった。
【0042】
(実施例4)
予めシーラーが塗装されたスレート板に対し、塗付け量1kg/mで骨材含有塗材2を吹付け塗装し、平坦な面を形成した。2時間乾燥後、塗付け量1.5kg/mで骨材含有塗材3を島状に吹付け塗装し、24時間乾燥した。以上の方法で得られた下地面において、骨材含有塗材3による島状の部分では、骨材による凹凸が現れ、それ以外の部分(骨材含有塗材2の塗膜が露出した部分)は比較的平坦であった。
この下地面に対し、上塗材1を塗付量0.6kg/mでスプレー塗装し、24時間乾燥した。
以上の方法により得られた模様面は、平坦領域では径の大きな粒により模様が形成され、凹凸領域では比較的小さな粒により模様が形成されたものとなり、美観性に優れるものであった。
【0043】
(実施例5)
予めシーラーが塗装されたスレート板に対し、塗付け量0.3kg/mでベース塗材1を吹付け塗装し、平坦な面を形成した。2時間乾燥後、塗付け量1.5kg/mで骨材含有塗材1を島状に吹付け塗装し、24時間乾燥した。以上の方法で得られた下地面において、骨材含有塗材1による島状の部分では、骨材による凹凸が現れ、それ以外の部分(ベース塗材1の塗膜が露出した部分)は比較的平坦であった。
この下地面に対し、上塗材1を塗付量0.6kg/mでスプレー塗装し、24時間乾燥した。
以上の方法により得られた模様面は、平坦領域では径の大きな粒により模様が形成され、凹凸領域では比較的小さな粒により模様が形成されたものとなり、美観性に優れるものであった。
【0044】
(比較例1)
予めシーラーが塗装されたスレート板に対し、塗付け量0.3kg/mでベース塗材1を吹付け塗装し、24時間乾燥し、平坦な面を形成した。
この下地面に対し、上塗材1を塗付量0.6kg/mでスプレー塗装し、24時間乾燥した。
以上の方法により得られた模様面は、実施例に比べ変化に欠ける仕上がりとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に対し、
(1)平均粒子径0.1mm以上5mm以下の骨材を含む骨材含有塗材を1種以上用いて、骨材による凹凸が形成された凹凸領域と、当該凹凸領域よりも凹凸が平坦化された平坦領域とが混在した下地面を形成する工程、
(2)当該下地面に対し、分散媒中に着色塗料の粒状物が分散した上塗材を塗付する工程、
を行うことを特徴とする模様面の形成方法。
【請求項2】
前記工程(1)では、
平均粒子径0.1mm以上5mm以下の骨材を含む骨材含有塗材を1種以上塗付し、
その塗面の一部の領域において、骨材を埋没させる処理、骨材を露出させる処理、及び骨材を除去する処理から選ばれる1種以上の処理を施すことにより、
骨材による凹凸が形成された凹凸領域と、当該凹凸領域よりも凹凸が平坦化された平坦領域とが混在した下地面を形成する
ことを特徴とする請求項1記載の模様面の形成方法。
【請求項3】
前記工程(1)では、
少なくとも1種以上の骨材含有塗材を、部分的に塗付する
ことを特徴とする請求項1または2記載の模様面の形成方法。
【請求項4】
前記工程(1)では、
骨材の平均粒子径及び/または含有比率が異なる2種以上の骨材含有塗材を用いる
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の模様面の形成方法。

【公開番号】特開2010−149110(P2010−149110A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263845(P2009−263845)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(599071496)ベック株式会社 (98)
【Fターム(参考)】