説明

横延伸システム

【課題】ポテンショメータやリミットスイッチが不要であり、レール支持部材の移動中に屈曲角が許容角度幅に達してしまうことがない横延伸システムを提供する。
【解決手段】シャフト(Si)をサーボモータ(Mi)で駆動し、エンコーダ(Gi)からのフィードバック信号(pi)により現在幅wiを求める。フィードバック信号(pi)に基づいて求めた現在幅wiが適正か否かを判定して、適正でないならサーボモータ(Mi)を停止させる。現在幅wiと目標幅Wiの差Xiが多いシャフトでは高い回転速度とし、少ないシャフトでは低い回転速度とする。
【効果】ポテンショメータやリミットスイッチを備える必要がなくなり、メンテナンス性が向上する。レール支持部材(Pai,Pbi)の移動中の屈曲角が小さく保たれ、許容角度幅に対する余裕が大きくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横延伸システムに関し、さらに詳しくは、ポテンショメータやリミットスイッチが不要であり、レール支持部材の移動中に屈曲角が許容角度幅に達してしまうことがない横延伸システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の横延伸システムでは、シャフト毎に、レール支持部材の現在位置を検出するためのポテンショメータPmや、レール支持部材の前後のレールの屈曲角βが許容角度幅Bに達したことを検出するためのリミットスイッチLSを備えていた(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−138329号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の横延伸システムでは、シャフト毎に、ポテンショメータPmやリミットスイッチLSを備えているため、メンテナンスが煩雑になる問題点があった。
また、従来の横延伸システムでは、ギヤードモータMでシャフトSを回転させているが、ギヤードモータMの回転速度については考慮されておらず、例えばレール支持部材の移動量(=現在幅と目標幅の差)の多いシャフトも少ないシャフトも同じ回転速度で回転させると、レール支持部材の移動中に屈曲角βが許容角度幅Bに達してしまうことがある問題点があった。
そこで、本発明の第1の目的は、ポテンショメータやリミットスイッチを備えない構成の横延伸システムを提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、レール支持部材の移動中に屈曲角βが許容角度幅Bに達してしまうことがないようにモータの回転速度を制御する横延伸システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の観点では、本発明は、i=1,2,…とするとき、レール支持部材(Pai,Pbi)間の幅を目標幅Wiとするために駆動されるシャフト(Si)と、各シャフト(Si)を駆動するためのサーボモータ(Mi)と、前記サーボモータ(Mi)の回転を検出するエンコーダ(Gi)と、前記エンコーダ(Gi)からのフィードバック信号(pi)を参照しつつ前記サーボモータ(Mi)を制御するサーボアンプ(Ai)とを含む横延伸装置(10);および前記フィードバック信号(pi)に基づいて現在幅wiを求めると共に前記現在幅wiが適正か否かを判定する現在値適否判定手段(PL)と、前記現在幅wiが適正でないなら前記サーボモータ(Mi)を停止させる安全停止手段(PL)とを含む制御装置(20)を具備したことを特徴とする横延伸システム(100)を提供する。
上記第1の観点による横延伸システム(100)では、シャフト(Si)をサーボモータ(Mi)で駆動し、エンコーダ(Gi)からのフィードバック信号(pi)により現在幅wiを求めることとした。これにより、ポテンショメータを備える必要がなくなる。また、フィードバック信号(pi)に基づいて求めた現在幅wiが適正か否かを判定して、適正でないならサーボモータ(Mi)を停止させるようにした。これにより、リミットスイッチを備える必要がなくなる。よって、メンテナンス性が向上する。
【0005】
第2の観点では、本発明は、上記構成の横延伸システム(100)において、前記制御装置(20)は、前記目標幅Wiと前記現在幅wiの差Xiの中で最も大きい値をXmaxとし、差Xi=Xmaxに該当するシャフト(Smax)の回転速度をVmaxとするとき、各シャフト(Si)の目標回転速度Viを、Vi=Xi×Vmax/Xmax、とする回転速度指示手段(PC)を含むことを特徴とする横延伸システム(100)を提供する。
上記第2の観点による横延伸システムでは、レール支持部材の移動量(=現在幅wiと目標幅Wiの差Xi)の多いシャフトでは高い回転速度とし、少ないシャフトでは低い回転速度とするので、レール支持部材の移動中の屈曲角が小さく保たれ、許容角度幅に達することがなくなる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の横延伸システムによれば、メンテナンス性が向上する。また、レール支持部材の移動中に屈曲角が許容角度幅に達してしまうことがなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図に示す実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0008】
図1は、実施例1に係る横延伸システム100を示す構成説明図である。
この横延伸システム100は、横延伸装置10と、制御装置20とを具備してなる。
【0009】
横延伸装置10は、i=1,2,…とするとき、レールRai-1とレールRaiを継ぐ関節を支持するレール支持部材PaiおよびレールRbi-1とレールRbiを継ぐ関節を支持するレール支持部材Pbi間の現在幅wiを目標幅Wiとするために駆動されるシャフトSiと、各シャフトSiを駆動するためのサーボモータMiと、サーボモータMiの回転を検出するエンコーダGiと、エンコーダGiからのフィードバック信号piを参照しつつサーボモータMiを制御するサーボアンプAiとを含んでいる。
【0010】
制御装置20は、汎用プログラマブル・コントローラPLと、汎用パソコンPCとを含んでおり、両者はLANで接続されている。
【0011】
なお、図1では、w1=w2=w3=w4、W1=w1、W1<W2<W3<W4を想定している。
【0012】
横延伸システム100の動作は次のようになる。
(1)操作者は、汎用パソコンPCから各シャフトSiの目標幅Wiを入力する。すなわち、図1に示すW1,W2,W3,W4を入力する。
【0013】
(2)汎用パソコンPCは、入力された目標幅Wiが次式を満たすなら適正と判定し、次式を満たさないなら不適正と判定して目標幅Wiの再入力を操作者に要求する。
Bi≧|sin-1{0.5(Wi-1-Wi)/Li-1}+sin-1{0.5(Wi+1-Wi)/Li}−φi|
但し、シャフトSiとその直前のシャフトSi-1間のレール長さをLi-1、シャフトSiとその直後のシャフトSi+1間のレール長さをLi、シャフトSiにおけるバイアス角度をφi,許容角度幅をBiとする。レール長さLi、バイアス角度φi,許容角度幅Biは、予め設定されている。なお、上式は、特許文献1に記載されている。
【0014】
(3)汎用パソコンPCは、入力された目標幅Wiが適正と判定されたら、次の手順によりシャフトSiの目標回転速度Viを算出する。
(3−1)汎用プログラマブル・コントローラPLを介して現在幅wiを読み取り、目標幅Wiとの差Xi(=Wi−wi)を算出する。
(3−2)シャフトの回転速度の最大値をVmaxとし、差Xiの中で最も大きい値をXmaxとするとき、シャフトSiの目標回転速度Viを、
Vi=Xi×Vmax/Xmax
とする。
【0015】
(4)汎用パソコンPCは、汎用プログラマブル・コントローラPLに対して、目標幅Wiと、目標回転速度Viと、直前のシャフトSi-1の現在幅wi-1と、直後のシャフトSi+1の現在幅wi+1とを与える。
【0016】
(5)汎用プログラマブル・コントローラPLは、現在幅wiが次式を満たすなら適正と判定し、満たさないなら不適正と判定する。
Bi≧|sin-1{0.5(wi-1-wi)/Li-1}+sin-1{0.5(wi+1-wi)/Li}−φi|
【0017】
(6)汎用プログラマブル・コントローラPLは、現在幅wiが適正と判定したなら目標幅Wiおよび指令速度vi=Viを、現在幅wiが不適正と判定したなら指令速度vi=0を、サーボアンプAiに与える。
【0018】
(7)サーボアンプAiは、現在幅wiが目標幅Wiに一致するまで指令速度viでシャフトSiを駆動する。
(8)図2に示すように、現在幅wiが目標幅Wiに一致したらシャフトSiの駆動を停止する。
【0019】
実施例1の横延伸システム100によれば、シャフトSiをサーボモータMiで駆動し、エンコーダGiからのフィードバック信号piにより現在幅wiを求めることとしたため、ポテンショメータを備える必要がなくなる。また、シャフトSiの駆動中にフィードバック信号piに基づいて求めた現在幅wiが適正か否かを判定して適正でないならサーボモータMiを停止させるようにしたから、リミットスイッチを備える必要がなくなる。よって、メンテナンス性が向上する。
【0020】
また、現在幅wiと目標幅Wiの差Xiの多いシャフトでは高い回転速度とし、少ないシャフトでは低い回転速度とするので、レール支持部材Pai,Pbiの移動中の屈曲角が小さく保たれ、許容角度幅に対する余裕が大きくなる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の横延伸システムは、例えばフィルムの幅延伸に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1に係る横延伸システムの幅出し前の状態を示す構成説明図である。
【図2】実施例1に係る横延伸システムの幅出し後の状態を示す構成説明図である。
【符号の説明】
【0023】
10 横延伸装置
20 制御装置
100 横延伸システム
A1,A2,… サーボアンプ
G1,G2,… エンコーダ
M1,M2,… サーボモータ
PC 汎用パソコン
PL 汎用プログラマブル・コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i=1,2,…とするとき、レール支持部材(Pai,Pbi)間の幅を目標幅wiとするために駆動されるシャフト(Si)と、各シャフト(Si)を駆動するためのサーボモータ(Mi)と、前記サーボモータ(Mi)の回転を検出するエンコーダ(Gi)と、前記エンコーダ(Gi)からのフィードバック信号(pi)を参照しつつ前記サーボモータ(Mi)を制御するサーボアンプ(Ai)とを含む横延伸装置(10);および前記フィードバック信号(pi)に基づいて現在幅Wiを求めると共に前記現在幅Wiが適正か否かを判定する現在値適否判定手段(PL)と、前記現在幅Wiが適正でないなら前記サーボモータ(Mi)を停止させる安全停止手段(PL)とを含む制御装置(20)を具備したことを特徴とする横延伸システム(100)。
【請求項2】
請求項1に記載の横延伸システム(100)において、前記制御装置(20)は、前記目標幅wiと前記現在幅Wiの差Xiの中で最も大きい値をXmaxとし、差Xi=Xmaxに該当するシャフト(Smax)の回転速度をVmaxとするとき、各シャフト(Si)の目標回転速度viを、
vi=Xi×Vmax/Xmax
とする回転速度指示手段(PC)を含むことを特徴とする横延伸システム(100)。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−136904(P2007−136904A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−335073(P2005−335073)
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】