説明

横引き管の接続構造

【課題】地震や気候の変化により隣り合う排水管に相対的な変位が加わっても、これらの排水管が損傷することがない横引き管の接続構造を提供。
【解決手段】排水管4の筒状本体10の端部に筒状本体10より径の大きな中径管部11を一体に形成し、この中径管部11に中径管部11より径の大きい大径管部12を形成し、これらの中径管部11及び大径管部12に排水管5の筒状本体10の端部を挿通し、中径管部11の内周部と排水管5の筒状本体10の外周部との間に防水用突起部131を有する弾性のエラストマー部材13を介装し、大径管部12の内周部と排水管5の筒状本体10の外周部との間にエラストマー部材13より弾性の小さな環状の変位吸収用弾性部材14が介装されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁の表面に設けられる横引き管の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や鉄道等の橋梁上面の雨水等を排水するために、橋梁の下面から橋脚の鉛直面にかけて複数の排水管を直列に継ぎ合わせて排水構造が構成されている。この排水構造のうち、橋梁の裏面に略水平に沿って設けられるものが横引き菅であるが、この横引き管の接続構造として、複数の角筒状の排水管を橋梁の下面に沿って並べて配置し、隣り合う排水管の間に角筒状の接続部材を設けた従来例がある(特許文献1)。
特許文献1では、接続部材は、一方の排水管の内周部に嵌合する第一嵌合部と他方の排水管の内周部に嵌合する第二嵌合部とを備え、この第二嵌合部の外周部には他方の排水管の内周部に押圧される排水管止水ゴムが設けられている構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−152415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述の従来例では、隣り合う排水管は接続部材を介して強固に接続されている構成であり、接続部材と他方の排水管との間に止水ゴムが介装されているとしても、地震や気候の変化によって隣り合う排水管が互いに近接し離隔しあるいは屈曲する恐れがある。特に、想定外の大きな地震によって、互いに軸方向が交差するように隣り合う排水管が屈曲する場合には、排水管の接続部分が損傷する可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、地震や気候の変化により隣り合う排水管に相対的な変位が加わっても、これらの排水管が損傷することがない横引き管の接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の横引き菅の接続構造は、橋梁の表面にそれぞれ筒状本体を有する排水管を複数接続した状態で取り付ける横引き管の接続構造であって、隣り合う前記排水管のうち少なくとも一方の排水管は、前記筒状本体の端部に他方の排水管の前記筒状本体の端部を挿通するとともに前記筒状本体より径が大きな中径管部が一体に設けられ、この中径管部に前記他方の排水管に対して軸方向が交差する変位を許容するとともに前記中径管部より径が大きな大径管部が一体に形成され、前記中径管部の内周部と前記他の排水管の筒状本体の外周部との間には環状の弾性のエラストマー部材が介装され、前記大径管部の内周部と前記他の排水管の筒状本体の外周部との間には前記エラストマー部材より弾性の小さな環状の変位吸収用弾性部材が介装され、前記エラストマー部材は、前記他の排水管の筒状本体の外周面を押圧する防水用突起部を備えていることを特徴とする。
【0007】
この構成の発明では、橋梁の表面、例えば、橋梁の下面に桁方向に沿って複数の排水管を直列接続し、必要箇所を橋梁に金具等を用いてこれらの排水管を固定する。複数の排水管を接続するために、一方の排水管の中径管部に他方の排水管の筒状本体を、その先端が中径管部の途中まで差し込むようにし、筒状本体同士が互いに当接するまで差し込まない。この状態では、一方の排水管の中継管部と他方の排水管の筒状本体との間には防水用突起部を備えたエラストマー部材が介装されているので、排水管の接続部分から漏水することがない。さらに、一方の排水管の大継管部と他方の排水管の筒状本体との間には変位吸収用弾性部材が介装されているので、ゴミ等が配管内部に浸入することがない。
このように施工された複数の排水管では、一方の排水管の中径管部の中間位置に他方の排水管の筒状本体の先端が位置しているので、地震や気候変化によって相対的な変位が生じる場合、例えば、隣り合う排水管が軸方向に沿って互いに近接する場合では、筒状本体同士が当接することがなく、隣り合う排水管が互いに離隔する場合では、一方の排水管から他方の排水管が外れることがない。さらに、互いに軸方向が交差するように隣り合う排水管が接続部分を中心として屈曲する場合では、一方の排水管の大径管部と他方の排水管の筒状本体との間に形成された隙間により、両者の変位が許容される。この際、一方の排水管の大径管部と他方の排水管の筒状本体との間には環状の変位吸収用弾性部材が介装されているが、この変位吸収用弾性部材が弾性変形して変位を吸収する。
隣り合う排水管が変位した後でも、一方の排水管の大径管部と他方の排水管の筒状本体との間に変位吸収用弾性部材が外れることなく設けられているので、ゴミ等が配管内部に浸入することがない。
従って、本発明では、一方の排水管には筒状本体の端部に中径管部及び大径管部が設けられ、これらの中径管部及び大径管部に他方の排水管の筒状本体の端部が挿通され、かつ、中径管部の内周部と他の排水管の筒状本体の外周部との間に弾性のエラストマー部材が介装され、大径管部の内周部と他の排水管の筒状本体の外周部との間にエラストマー部材より弾性の小さな環状の変位吸収用弾性部材が介装されているから、隣り合う排水管同士が地震等により軸方向や軸方向と交差する方向に変位しても、接続部分が破損等することがない。
【0008】
ここで、本発明では、前記エラストマー部材は前記筒状本体の軸方向に沿って複数列が互いに離れて配置されている構成が好ましい。
この構成の発明では、複数列のエラストマー部材が一方の排水管の中径管部と他方の排水管の筒状本体との間に介装されているので、防水効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態にかかる横引き管の接続構造が設けられた建造物の正面図。
【図2】横引き管の接続構造を詳細に示す一部を破断した正面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態にかかる横引き管の接続構造が設けられた建造物の正面図である。図2は、横引き管の接続構造を詳細に示す一部を破断した正面図である。
【0011】
図1に示すように、建造物は橋梁1が橋脚2に支持された高速道路であり、橋梁1の上面は高速道路の路面3となっている。この路面3の両側には路肩に垂直側壁3Wが設けられている。また、橋梁1の下面には橋梁用の排水管4,5が接続されている。これらの排水管4,5から本実施形態の横引き管の接続構造が構成されている。この横引き管の接続構造は図1に示される通り、橋梁2の長手方向に沿って配置されている。なお、本実施形態では、横引き管の接続構造は橋梁下面の橋脚2側の基端から路肩3S側の先端に向かって配置される構造でもよい。
排水管5の下端には複数の橋脚用の縦樋6が上下に複数並んで配置されている。これらの排水管4,5及び縦樋6は、集水枡によって連通されている。なお、排水管4,5と縦樋6とは連通管7で互いに連通されている。
この橋梁1の路面3に降った雨及び雪が溶けた水が路肩から集水枡に集まり、水はここから橋梁1の横引き管を構成する排水管4,5の内部を流れ、連通管7から縦樋6に送り込まれ、さらに、縦樋6に沿って下方に流れ、縦樋6の排出口8を通って橋脚2の下に設けられた溝9に流れる。
【0012】
橋梁1の下面で接続される排水管4,5の横引き管の接続構造が図2に示されている。
図2において、隣り合う排水管4,5のうち一方の排水管4は、筒状本体10と、この筒状本体10の一端部に一体に形成され筒状本体10より径が大きな中径管部11と、この中径管部11に一体に形成され中径管部11より径の大きな大径管部12とを有する。
これらの筒状本体10、中径管部11及び大径管部12は、それぞれ軸心が一致するとともにFRP(ガラス繊維強化プラスチック)から円筒状に形成されている。筒状本体10と中径管部11との接続部分はテーパ状に形成され、中径管部11と大径管部12との接続部分はテーパ状に形成されている。
【0013】
以上の構成の一方の排水管4は、その長さ寸法や直径寸法、肉厚寸法は適宜設定されるものであるが、例えば、長さ寸法を750mmとし、筒状本体10の内径寸法を250mm、外径寸法を262mm、肉厚寸法を6mmとするものでもよい。さらに、地震等で他方の排水管5が排水管4から寸法D、例えば、100mm後退してもよいように中径管部11の長さが設定される。
【0014】
他方の排水管5は筒状本体10を備えている。この筒状本体10は排水管4の筒状本体10と同じ径寸法であり、その長さ寸法は同じでも、長くても、あるいは短くてもよい。
排水管5の筒状本体10の一端部は排水管4の中径管部11及び大径管部12に挿通され、その端縁が排水管4の筒状本体10の端縁に対して寸法tだけ離れて配置されている。さらに、排水管5は筒状本体10の外周面と排水管4の中径管部11の内周面とは寸法t1だけ離れており、さらに、筒状本体10の外周面と大径管部12の内周面とは寸法t2(t2>t1)だけ離れている。
【0015】
中径管部11の内周部と排水管5の筒状本体10の外周部との間には環状の弾性のエラストマー部材13が介装されている。このエラストマー部材13は中径管部11の内周部に予め一体に設けられているものであり、その材質は、SRB、その他のエラストマーである。さらに、エラストマー部材13は排水管5の筒状本体10の外周面を押圧する防水用突起部131を備えており、この防水用突起部131は筒状本体10に向いた内周面に複数の切り込みが形成された略断面矩形状であって、排水管5の筒状本体10が挿通される際には倒れるように弾性変形するために、大径管部12に対向する側面がテーパ状とされている。
本実施形態では、エラストマー部材13は互いに所定間隔離れて複数列、図2では2列、配置されている。
【0016】
大径管部12の内周部と排水管5の筒状本体10の外周部との間にはエラストマー部材13より弾性の小さな環状の変位吸収用弾性部材14が介装されている。この変位吸収用弾性部材14はスポンジゴムから形成されており、その断面形状は筒状本体10に向いた内周面が直線とされた矩形状である。なお、変位吸収用弾性部材14の断面形状の先端部を半円形状としてもよい。
以上においては、他の排水管として筒状本体10のみ有する排水管5を例示して説明したが、本実施形態では、当該他の排水管として一端部に中径管部11及び大径管部12が設けられた排水管4を用いてもよい。
橋脚用の縦樋6はFRPからなる円筒状部材であり、隣り合う縦樋6の接続部分には図示しないシール部材が介装されている。
【0017】
この構成の本実施形態では、橋梁1の下面に複数の排水管4,5を直列接続して横引き管を構成するとともに、橋梁1に金具等を用いてこれらの排水管4,5の所定の部位を固定する。さらに、橋脚2の側面に複数の縦樋6を直接接続するとともに、金具等を用いて所定箇所を橋脚2に固定する。
複数の排水管4,5を接続するために、排水管4の大径管部12及び中径管部11に排水管5の筒状本体10を差し込むが、この排水管5の筒状本体10の先端が中径管部11の途中まで、つまり、筒状本体10とは寸法tだけ離れた位置まで差し込む。さらに、複数の排水管6の接続は従来と同様の方法による。
【0018】
地震や気候変化によって隣り合う排水管4と排水管5とに相対的な変位が生じる場合では、その変位が排水管4と排水管5との接続部分で吸収される。
例えば、排水管4と排水管5とが互いに近接する場合では、排水管4と排水管5との筒状本体10同士が寸法tだけ離れて配置されているから、筒状本体10同士が当接しない。これに対して、隣り合う排水管4と排水管5とが互いに離隔する場合では、排水管5の筒状本体10の先端が中径管部11の途中まで差し込まれているので、排水管5が排水管4から外れない。この際、排水管4の中径管部11にエラストマー部材13が軸方向に並んで2列設けられているので、排水管4と排水管5とが互いに離隔しても、少なくとも1列のエラストマー部材13で排水管4と排水管5との漏水が阻止される。
【0019】
この状態で、排水管4に対して排水管5の軸方向が交差する方向に変位する場合では、エラストマー部材13が設けられている部分を中心として排水管5が排水管4に対して回動する力が働くが、排水管4の大径管部12と排水管5の筒状本体10との間に形成された隙間t2により、この変位が許容される。この際、排水管4の大径管部12と排水管5の筒状本体10とに介装されている変位吸収用弾性部材14はエラストマー部材13より弾性力が小さいので変形しやすくなり、排水管5の変位が容易に許容される。
【0020】
従って、本実施形態では、次の作用効果を奏することができる。
(1)排水管4の筒状本体10の端部に筒状本体10より径の大きな中径管部11を一体に形成し、この中径管部11に中径管部11より径の大きい大径管部12を形成し、これらの中径管部11及び大径管部12に排水管5の筒状本体10の端部を挿通し、中径管部11の内周部と排水管5の筒状本体10の外周部との間に防水用突起部131を有する弾性のエラストマー部材13を介装し、大径管部12の内周部と排水管5の筒状本体10の外周部との間にエラストマー部材13より弾性の小さな環状の変位吸収用弾性部材14が介装されている。そのため、隣り合う排水管4,5同士が地震等により軸方向や軸方向と交差する方向に変位しても、その変位を中径管部11及び大径管部12や変位吸収用弾性部材14が吸収するので、排水管4,5の接続部分が破損等することがない。
【0021】
(2)エラストマー部材13は筒状本体10の軸方向に沿って複数列が互いに離れて配置されているから、排水管4と排水管5とが互いに離れて排水管5の筒状本体10が1つのエラストマー部材13から外れても、残りのエラストマー部材13で排水管5の筒状本体10の外周面と排水管4の中径管部11とを封止しているから、防水効果を高めることができる。
【0022】
(3)エラストマー部材13は大径管部12に対向する側面がテーパ状とされているから、排水管5の筒状本体10が排水管4の中径管部11に挿通される際には倒れるように弾性変形する。そのため、排水管5の排水管4への挿通作業が容易となる。
(4)排水管4を構成する筒状本体10、中径管部11及び大径管部12、並びに、排水管5を構成する筒状本体10は、それぞれFRPから形成される。FRPは軽量かつ大きな強度を有する材料であるため、排水管自体の取扱が容易となり、かつ、管自体の破損も防止できる。
【0023】
なお、本発明は、上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で以下に示される変形をも含むものである。
例えば、前記実施形態では、排水管4を構成する筒状本体10、中径管部11及び大径管部12、並びに、排水管5を構成する筒状本体10をそれぞれ円筒状としたが、本発明では、これらの管を角筒状としてもよい。
さらに、排水管4の筒状本体10の両端に中径管部11と大径管部12とをそれぞれ設け、この排水管4を継手として利用するものでもよい。
【0024】
エラストマー部材13は1列のみ配置するものでもよく、さらに、その断面形状は前期実施形態の形状に限定されるものではない。例えば、半円状や多角形であってもよい。同様に、変位吸収用弾性部材14の断面形状も種々の形状を用いることができ、例えば、先端部が多角形であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、高速道路、鉄道、その他、橋梁を有する建造物一般に利用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1…橋梁、2…橋脚、4,5…排水管、10…筒状本体、11…中径管部、12…大径管部、13…エラストマー部材、14…変位吸収用弾性部材、131…防水用突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の表面にそれぞれ筒状本体を有する排水管を複数接続した状態で取り付ける横引き管の接続構造であって、
隣り合う前記排水管のうち少なくとも一方の排水管は、前記筒状本体の端部に他方の排水管の前記筒状本体の端部を挿通するとともに前記筒状本体より径が大きな中径管部が一体に設けられ、この中径管部に前記他方の排水管に対して軸方向が交差する変位を許容するとともに前記中径管部より径が大きな大径管部が一体に形成され、前記中径管部の内周部と前記他の排水管の筒状本体の外周部との間には環状の弾性のエラストマー部材が介装され、前記大径管部の内周部と前記他の排水管の筒状本体の外周部との間には前記エラストマー部材より弾性の小さな環状の変位吸収用弾性部材が介装され、前記エラストマー部材は、前記他の排水管の筒状本体の外周面を押圧する防水用突起部を備えていることを特徴とする横引き管の接続構造。
【請求項2】
請求項1記載の横引き管の接続構造において、
前記エラストマー部材は前記筒状本体の軸方向に沿って複数列が互いに離れて配置されていることを特徴とする横引き管の接続構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−216181(P2010−216181A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65994(P2009−65994)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(395000348)日本ホーバス株式会社 (10)
【Fターム(参考)】