説明

横断歩道口

【課題】全ての歩道通行者が、安全かつ円滑に通行しうるととに、コストを低減することができる横断歩道口を提供する。
【解決手段】第1〜第4の横断歩道口11〜14は、傾斜面110と、側壁面111、112と、視覚障害者用警告ブロック113、114とを有している。傾斜面110は、歩道面10から車道面30に向かって下降傾斜し、歩道面10と車道面30との境界部分L2において無段差となっている。側壁面111、112は、傾斜面110の傾斜方向Mに直交する幅方向Wの両端において立ち上がっている。視覚障害者用警告ブロック113、114は、傾斜面110内において、境界部分L2の付近に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横断歩道口に関する。
【背景技術】
【0002】
歩道は、老若男女などの年齢性別差や、視覚障害や歩行障害など障害の種類および程度如何を問わず、全ての歩道通行者が、安全かつ円滑に通行しうるようなデザイン(ユニバーサルデザイン)を備えていることが求められる。
【0003】
ところで、現状の歩道は、歩道通行者が歩道と車道とを行き来する部分(横断歩道口)のデザイン、及び、歩道全体のデザインが、各地域の国道、都道、区道、市道、町道、村道ごとにまちまちで、統一されていない。例えば、歩道全体の具体的なデザインとしては、歩道全体が車道側へ傾斜しているもの、幅員部分のみ傾斜しているものなどさまざまである。
【0004】
また、横断歩道口の具体的なデザインには、車道へ向かう2m手前あたりから傾斜が始まり、車道へ出る縁の歩車道境界縁石が2cmの段差になっているものや、さらに歩車道境界縁石の表面を斜めに削ったものがある。
【0005】
上述した表面を斜めに削った歩車道境界縁石は、乳母車、シルバーカー(手押し車)、シニアカー(福祉用電動車両)、車椅子等の使用者が車道から歩道へ乗り上げやすくするとともに、視覚障害者にも歩道から車道への踏み変わりが足裏の触覚でわかるようにとの配慮に基づくもので、江戸川区の区道で現に採用されていることから、江戸川区ではこれを「江戸川方式」(図6及び図7参照)と言い、用いられる歩車道境界縁石を「斜面ブロック」と呼んでいる。他方、この「江戸川方式」は神戸市内でも見ることができ、神戸市では、この種の歩車道境界縁石を「斜め縁石」と呼んでいる。
【0006】
しかし、斜面ブロックを用いた江戸川方式でも、斜め縁石を用いた神戸市の方式でも、歩道の全周縁に歩車道境界縁石が敷設されることとなるので、コスト高を招き、不経済である。
【0007】
また、歩行者、特に視覚障害者が、歩車道境界縁石の傾斜面変化を予め意識していないと、傾斜面を踏んだときの急な角度変化に対応できず、進行方向につんのめる危険がある。現に、視覚障害者が車道側から横断歩道口に到達したときに、周知の歩車道境界縁石(斜面ブロック)の傾斜面によって進行方向につんのめり、横断歩道口の角付近に設置されてある信号機の柱や、街灯の柱等に顔を打ち付けた実例がある。
【0008】
一方、横断歩道口のデザインとしては「熊谷方式」と呼ばれるものが知られている(図8参照)。熊谷方式では、歩車道境界縁石の表面に、車道に向かって下降傾斜する2本のスロープが形成されている。2本のスロープは、通常、車椅子の両車輪幅に応じた間隔を隔てて配置されており、スロープのそれぞれは車道面に対してゼロ段差で連なる。他方、2本のスロープの間には視覚障害者用警告ブロックを含めた段差2cmの歩車道境界縁石が、30cm程の幅寸法で形成されている。
【0009】
確かに、上述した熊谷方式によると、車椅子等使用者は、通常、視覚健常であるから、目で見て歩車道境界縁石の段差を確認するとともに、2本のスロープに沿って両車輪を通過させることにより、歩道と車道とを行き来することができる。
【0010】
しかし、白杖や足裏の触覚だけが頼りの視覚障害者は、熊谷方式の歩車道境界縁石を、複雑に破損した歩道面と誤認するので、歩車道の境界を識別できない恐れがあり、命の危険にさらされかねない。即ち、このような危険な場所には、シンプルかつ明解に識別可能なデザインの配慮が特に求められる。
【0011】
さらに、熊谷方式では、車椅子の両車輪幅にあわせて2本のスロープを配置しているため、車椅子より車幅が狭くなっている乳母車や、シルバーカー(手押し車)などは、円滑に通行できにくい。また、三輪車構造となっているシニアカー(福祉用電動車両)等の使用者にとっては、2本のスロープ間に形成されている段差2cm、幅30cmの歩車道境界縁石が、通行の妨げになる。
【0012】
他方、歩車道境界縁石について、例えば、特許文献1に開示されている歩車道境界縁石は、角部に弾性部材を有している。この構造によると、車椅子等使用者がブロックを乗り越えようとすると、弾性部材が弾性変形して段差が低くなり、視覚障害者が白杖や足裏で段差を触知する際には、弾性部材は弾性変形せずに段差が保たれ、歩車道の境界を確認することができる。しかし、特許文献1では、弾性部材が経年劣化して弾性変形に不具合が生じたり、また、経年使用により弾性部材が角部から脱落する不具合が生じる。
【特許文献1】特願2003−239212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、全ての歩道通行者が、安全かつ円滑に通行しうる横断歩道口を提供することである。
【0014】
本発明のもう1つの課題は、車椅子、乳母車、シニアカー(福祉用電動車両)、シルバーカー(手押し車)などが歩車道間を通行しやすく、視覚障害者にも歩道から車道への踏み変わりが確実に識別可能な横断歩道口を提供することである。
【0015】
本発明の更にもう一つの課題は、コストを低減することができる横断歩道口を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決するため、本発明に係る横断歩道口は、傾斜面と、側壁面と、視覚障害者用警告ブロックとを有している。傾斜面は、歩道面から車道面に向かって下降傾斜し、歩道面と車道面との境界部分において無段差となっている。側壁面は、傾斜面の傾斜方向に直交する幅方向の両端において立ち上がっている。視覚障害者用警告ブロックは、傾斜面内において、境界部分の付近に配置されている。
【0017】
上述した構造によると、本発明に係る横断歩道口は、傾斜面を有しているから、乳母車、シルバーカー(手押し車)、シニアカー(福祉用電動車両)、車椅子等の使用者であって、視覚健常な車椅子等使用者は、横断歩道口から歩道に乗り上げようとするとき、傾斜面を目で確かめて、傾斜面を通って車道から歩道に乗り上げ、又は、傾斜面を通って歩道から車道に下りることができる。
【0018】
また、傾斜面は、歩道面から車道面に向かって下降傾斜しているから、視覚障害者は、例えば、歩道を誘導ブロックに沿って歩いていて、これから車道に出ようとするとき、傾斜面の下降傾斜を白杖や足裏で触知することができれば、傾斜面を通って、安全かつ円滑に歩道から車道に下りることができる。
【0019】
傾斜面は、歩道面から車道面に向かって下降傾斜し、歩道面と車道面との境界部分において無段差となっているから、老若男女などの年齢性別差や、視覚障害や歩行障害など障害の種類および程度如何を問わず、傾斜面を通じて安全かつ円滑に歩道と車道とを行き来することができる。
【0020】
さらに、傾斜面は、歩道面から車道面に向かって下降傾斜し、歩道面と車道面との境界部分において無段差となっている。即ち、傾斜面は、面内において、歩道面と車道面との境界部分に段差を有しないから、傾斜面の幅を例えば70cmとした場合、70cm以下の車輪幅を有する全ての車が、安全かつ円滑に歩道と車道とを行き来することができる。
【0021】
横断歩道口は、側壁面を有している。側壁面は、傾斜面の傾斜方向に直交する幅方向の両端において立ち上がっているから、視覚障害者は、側壁面の存在、及び、向い合う側壁面間の幅を白杖や足裏で触知することにより、傾斜面を画定する側壁面間に進入することができる。
【0022】
また、横断歩道口は、視覚障害者用警告ブロックを有している。視覚障害者用警告ブロックは、傾斜面内において、境界部分の付近に配置されているから、視覚障害者は、視覚障害者用警告ブロックの凹凸を白杖や足裏で触知することにより、側壁面内において、歩道と車道との境界を確認することができる。
【0023】
なお、車道を渡って、反対側の歩道に到達した場合、到達地点にも本発明に係る横断歩道口が設けられているから、上述した順序の反対の順序で傾斜面を確認しつつ、車道から歩道内に乗り上げることができる。
【0024】
本発明に係る横断歩道口の構造によると、傾斜面は、歩道の横断歩道口に部分的に設けられるものであるから、新規工事においても、改修工事においても、効率的に、且、低コストで設置することができる。
【0025】
本発明の他の目的、構成及び利点については、添付図面を参照し、更に詳しく説明する。添付図面は、単に、例示に過ぎない。
【発明の効果】
【0026】
以上述べたように、本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)全ての歩道通行者が、安全かつ円滑に通行しうる横断歩道口を提供することができる。
(2)車椅子、乳母車、シニアカー(福祉用電動車両)、シルバーカー(手押し車)などが歩車道間を通行しやすく、視覚障害者にも歩道から車道への踏み変わりが確実に識別可能な横断歩道口を提供することができる。
(3)コストを低減することができる横断歩道口を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る横断歩道口を有する歩道の全体構造を示す平面図である。図1に示す歩道の実施形態は、斜線で示す歩車道境界縁石20(縁石20)によって、歩道面10と、車道面30との境界が規定されている歩道区域を一単位として模式的に表現したものである。
【0028】
さらに、図1に示す歩道の実施形態は、車道よりも高い位置に歩道面10を有している。縁石20は、歩道面10の周縁において、矢印Mで示す動線方向、及び、矢印Wで示す幅員方向に配置されており、車道面30に対して2cmから20cm程度の段差を形成している。具体的に、歩道の動線方向Mに沿った側縁部分には、歩道通行者が車道に出ないことを前提として、車道に対して15〜20cm程度の段差を有する縁石21が敷設されている。他方、交差点など、歩道通行者が歩道と車道とを行き来する横断歩道口では、車道側に向かって傾斜がつけられており、さらに歩道と車道との境界部分には、車道に対して2cm程度の段差を有する縁石22が敷設されている。
【0029】
図1に示す歩道の実施形態において、本発明の一実施形態に係る第1〜第4の横断歩道口11〜14は、歩道面10の周縁において、横断歩道に面した部分に設置されるスロープ設備である。第1及び第2の横断歩道口11、12は、歩道区域の動線方向Mの両端に配置されており、この第1及び第2の横断歩道口11、12に直交する幅員方向Wに、それぞれ第3及び第4の横断歩道口13、14が配置されている。なお、一点鎖線40は、歩道面10と、歩道面10に面する民有地との境界部分を示している。
【0030】
また、歩道面10の面上には、第1〜第3の視覚障害者用誘導路15〜17が備えられている。第1の誘導路15は、動線方向Mの一端側において、第1及び第3の横断歩道口11、13に接続されている。具体的に、第1の誘導路15は、主誘導路151と、副誘導路152とを有している。主誘導路151は、複数の視覚障害者用誘導ブロック6が、車道側の第3の横断歩道口13から民有地40の側に向かって、幅員方向Wの全幅に渡って、条状に配置されており、民有地40の手前に視覚障害者用警告ブロック7が配置されている。副誘導路152は、複数の誘導ブロック6が、第1の横断歩道口11から主誘導路151に向かって条状に配置されており、主誘導路151との交差部分に警告ブロック7が配置されている。
【0031】
第2の誘導路16は、動線方向Mの他端側において、第2及び第4の横断歩道口12、14に接続されている。具体的に、第2の誘導路16は、主誘導路161と、副誘導路162とを有している。主誘導路161は、複数の誘導ブロック6が、車道側の第4の横断歩道口14から民有地40の側に向かって、幅員方向Wの全幅に渡って、条状に配置されており、民有地40の手前に警告ブロック7が配置されている。副誘導路162は、複数の誘導ブロック6が、第2の横断歩道口12から主誘導路161に向かって条状に配置されており、主誘導路161との交差部分に警告ブロック7が配置されている。
【0032】
第3の誘導路17は、歩道面10の動線方向Mの中間部分において、複数の誘導ブロック6が、車道側から民有地40の側に向かって、幅員方向Wの全幅に渡って、条状に配置されている。第3の誘導路17は、具体的にバス乗り場を想定した形態である。
【0033】
次に、本発明に係る横断歩道口の具体的構成について、主として第1の横断歩道口11を例にとり、図2乃至図5を参照して説明する。図2は、図1に示した横断歩道口の使用態様について、一部を省略して示す平面図である。また、図3は図1及び図2に示した横断歩道口の一部を拡大して示す図、図4は図3に示した横断歩道口を正面方向から見た図、図5は図4の5−5線に沿った部分断面図である。図2乃至図5において、図1に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0034】
図2に示す実施形態は、交差点における歩道デザインを示しており、横道31を挟んで2つの歩道面10の横断歩道口101、102が向い合っており、横断歩道口101において第1の横断歩道口11が、横断歩道口102において第2の横断歩道口12が、それぞれ横断歩道32に面して備えられている。なお、図示は省略しているが、横道31に直交する本線車道33を挟んだ向かい側にも、同様の歩道が形成されている。
【0035】
図3乃至図5を参照すると、第1の横断歩道口11は、傾斜面110と、側壁面111、112と、視覚障害者用警告ブロック113、114とを有している。
【0036】
傾斜面110は、歩道面10から車道面30に向かって下降傾斜し、歩道面10と車道面30との境界部分(一点鎖線表記)において無段差となっている。即ち、歩道面10は、傾斜面110によって、無段差で車道面30に接続されている。
【0037】
より具体的に説明すると、図2乃至図5に示す傾斜面110は、動線方向Mで見た縦寸法M110が80cm程度、幅員方向Wで見た幅寸法W110が70cm程度であって、一点鎖線で示す傾斜面110の始端縁L1から、一点鎖線で示す傾斜面110の終端縁L2まで一定の傾斜率で傾斜している。ここで、縁石22は、車道面30に対して2cm程度の段差を形成しているから、傾斜面110は、終端縁L2で縁石22の段差面に対応する2cm程度の高低差を形成している。
【0038】
側壁面111、112は、傾斜面110の傾斜方向(動線方向M)に直交する幅方向W(幅員方向W)の両端において、傾斜面110の傾斜角、又は、歩道面10と車道面30との高低差に応じて、傾斜面110から歩道面10の方向に、略垂直に立ち上がっている。換言すれば、側壁面111、112は、傾斜面110の傾斜角に応じて、歩道面10から傾斜面110に落ち込んでおり、歩道面10と車道面30との境界部分で最大高さ寸法T1となっている。本実施形態における最大高さ寸法T1は、縁石22の段差面が有する2cmとほぼ一致する。
【0039】
傾斜面110に設けられている2枚の視覚障害者用警告ブロック113、114は、
複数の凸点を有している。凸点のそれぞれは、基板面から5mmの高さで、通行者の靴底が最も摺り上がり易い傾斜角45度となっている。また、視覚障害者用警告ブロック113、114は、傾斜面110内において、車道面30との境界部分(無段差部分)の付近に配置され、且、幅方向Wの両端が側壁面111、112から間隔Gを隔てて配置されている。図1に示す視覚障害者用警告ブロック113、114は、好ましくは、車椅子の車幅を想定して2枚の視覚障害者用警告ブロック113、114を境界部分(無段差部分)に沿って幅方向Wに配置したものであり、間隔Gは車椅子のタイヤ幅以上の幅寸法となるように設定されている。この構成によると、車椅子の車幅内に視覚障害者用警告ブロック113、114が配置され、車椅子等使用者通行時に両タイヤを間隔Gにそれぞれ通すことにより、円滑に傾斜面110を昇降し、通行することができる。
【0040】
図1に示す歩道の実施形態、及び、図2乃至図5に示した交差点部分の歩道形態を参照して説明したように、第1の横断歩道口11は、車道面30よりも高い位置に歩道面10を有する歩道の横断歩道口101に配置されるものである。横断歩道口101は、第1の横断歩道口11の無い部分に縁石22を有し、縁石22は、車道面30に対して少なくとも2cm以上の段差を有しているから、視覚障害者は、縁石22の段差を足裏で触知することにより歩道から車道への踏み変わりを確認し、又は、縁石22の段差を白杖で触知することにより歩道と車道との境界を確認することができる。
【0041】
本発明の特徴の一つは、横断歩道口の縁に沿って伸びる縁石の途中に、部分的に横断歩道口が設けられている点にある。具体的に、第1の横断歩道口11は、横断歩道口101の縁に沿って縁石22の途中に傾斜面110を有しているから、乳母車、シルバーカー(手押し車)、シニアカー(福祉用電動車両)、車椅子等の使用者であって、視覚健常な車椅子等使用者は、第1の横断歩道口11から歩道に乗り上げようとするとき、縁石22による高低差のない傾斜面110を目で確かめて、そこから歩道面10に乗り上げることができる。従って、車椅子等使用者が、歩道と車道とを行き来しやすい第1の横断歩道口11を提供することができる。
【0042】
傾斜面110は、歩道面10から車道面30に向かって下降傾斜しているから、視覚障害者は、例えば、歩道面10を誘導ブロック6に沿って歩いていて、これから車道側に出ようとするとき、傾斜面110の下降傾斜を足裏で触知して、傾斜面110に進入することができる。車椅子等使用者が、歩道と車道とを行き来しやすい第1の横断歩道口11を提供することができる。
【0043】
さらに、傾斜面110は、歩道面10と車道面30との境界部分において無段差となっているから、老若男女などの年齢性別差や、視覚障害や歩行障害など障害の種類および程度如何を問わず、傾斜面110を通じて安全かつ円滑に歩道と車道とを行き来することができる。従って、全ての歩道通行者が、安全かつ円滑に通行しうる第1の横断歩道口11を提供することができる。
【0044】
また、傾斜面110は、歩道面10から車道面30に向かって下降傾斜し、歩道面10と車道面30との境界部分において無段差となっている。即ち、傾斜面110は、境界部分において、部分的にも段差を有しないから、傾斜面110の幅を例えば70cmとした場合、70cm以下の車輪幅を有する全ての車が、安全かつ円滑に歩道と車道とを行き来することができる。従って、乳母車、シルバーカー(手押し車)、シニアカー(福祉用電動車両)、車椅子等の使用者であって、視覚健常な車椅子等使用者や、重度の歩行障害者であっても、歩道へ乗り上げやすく、傾斜面110を通じて安全かつ円滑に歩道と車道とを行き来することができる。
【0045】
第1の横断歩道口11は、側壁面111、112を有している。側壁面111、112は、傾斜面110の傾斜方向に直交する幅方向Wの両端において、傾斜面110の傾斜角に応じて、傾斜面110から歩道面10の方向に立ち上がっているから、視覚障害者は、側壁面111、112と歩道面10の角部を白杖や足裏で触知することにより、側壁面111、112の存在を確認することができる。さらに、視覚障害者は、向い合う側壁面111、112間の幅を白杖や足裏で触知することにより、向い合う側壁面111、112の範囲を確認しながら、傾斜面110を画定する側壁面111、112の間に内に進入することができる。従って、視覚障害者にも歩道から車道への切り替わりを容易に識別可能な第1の横断歩道口11を提供することができる。
【0046】
第1の横断歩道口11は、視覚障害者用警告ブロック113、114を有している。視覚障害者用警告ブロック113、114は、傾斜面110内において、境界部分の付近に配置されているから、視覚障害者は、視覚障害者用警告ブロック113、114を白杖や足裏で触知することにより、傾斜面110内において、歩道と車道との境界を確認することができる。従って、視覚障害者にも歩道から車道への踏み変わりがわかる第1の横断歩道口11を提供することができる。
【0047】
視覚障害者用警告ブロック113、114は、傾斜面110内において、幅方向Wの両端が側壁面111、112から間隔Gを隔てて配置されているから、車椅子等使用者は傾斜面110を通じて車道面30から歩道面10に乗り上げようとするとき、傾斜面110、及び、視覚障害者用警告ブロック113、114の両端の間隔Gを目で確かめて、車椅子の両タイヤを間隔Gにそれぞれ通すことにより、安全かつ円滑に歩道と車道とを行き来することができる。
【0048】
なお、横断歩道32を渡って、反対側の横断歩道口102に到達した場合、到達地点にも本発明に係る第2の横断歩道口12が設けられているから、上述した順序の反対の順序で傾斜面110を確認しつつ、車道面30から歩道面10に進行することができる。従って、全ての歩道通行者が、安全かつ円滑に通行しうる第1の横断歩道口11を提供することができる。
【0049】
本発明に係る第1の横断歩道口11の構造によると、傾斜面110は、歩道の横断歩道口において、条状に伸びる縁石22の途中に、部分的に設けられるものであるから、新規工事においても、改修工事においても、効率的に、且、低コストで設置することができる。
【0050】
図1に示した歩道デザインは、第1〜第3の誘導路15〜17が備えられている。第1の誘導路15は、動線方向Mの一端側において、第1及び第3の横断歩道口11、13に接続されている。具体的に、第1の誘導路15は、主誘導路151と、副誘導路152とを有している。主誘導路151は、複数の視覚障害者用誘導ブロック6が、車道側の第3の横断歩道口13から民有地40の側に向かって、幅員方向Wの全幅に渡って、条状に配置されており、民有地40の手前に視覚障害者用警告ブロック7が配置されている。副誘導路152は、複数の誘導ブロック6が、第1の横断歩道口11から主誘導路151に向かって条状に配置されており、主誘導路151との交差部分に警告ブロック7が配置されている。この構造によると、視覚障害者は、歩道面10を歩いていて、これから横道31の横断歩道32を横切ろうとするとき、それまで歩行してきた足裏で辿ってきた誘導ブロック6の延長線上に、横道31の方向への第1の横断歩道口11の傾斜面110の下降傾斜が足裏に識別できれば、横断歩道32に出ることができる。さらに、横断歩道32に沿って渡った向こう側の横断歩道口102に達し、第2の横断歩道口12に進入することができる。
【0051】
さらに、第1〜第3の誘導路15〜17の構造によると、民有地40ギリギリにまで主誘導路151〜171が敷設されているから、視覚障害者が車道33の側、又は、民有地40の側のいずれの部分を歩行していても、主誘導路151〜171を横切る方向での誘導ブロック6に、白杖や足裏が触れるので、その地点で、仮に歩行者の右側(多くは白杖を手にしている側)が民有地40だとすれば、左側方向にバス乗り場あるいは第3、第4の横断歩道口13、14があることが、視覚障害者にも認識できる。
【0052】
また、横道31を横切って次の歩道面10に到達し、仮に歩行者の左側が車道33だとすると、第3の横断歩道口13から車道33を向こう側へ渡ろうとするとき、右方向への分岐点に警告ブロック7を白杖又は足裏で触知した後、それを踏んだら左方向へ移動すれば、車道への第3の横断歩道口13に到達することができる。
【0053】
これに対して、従来の歩道デザインでは、横道31から歩道面10の幅員方向Wに歩みを進めた場合や、バス停留所で降車して後に幅員方向Wに歩みを進めた場合、誘導ブロック6は、歩道幅員の中ほどまでしか敷設されていない。通常、視覚障害者が歩道を単独歩行する場合、第3、第4の横断歩道口13、14やバス乗り場を確認しやすい車道33の側を歩く傾向にあるものの、車道33の側には、街路樹や電柱、花壇、商店などのゴミ箱、放置自転車等が障害物となって、視覚障害者には歩きにくくなっており、従って、視覚障害者のほとんどは、歩道の民有地40側(車道側の反対側)を歩こうとする心境となる。しかし、現状の誘導ブロックの敷設形態では、歩道の民有地40側にまで第1〜第3の誘導路15〜17が敷設されていないため、第3、第4の横断歩道口13、14やバス乗り場を通り過ぎてしまう問題が生じる。
【0054】
図6は、従来技術に係る歩道デザイン例(江戸川方式)について、一部を省略して示す平面図、図7は図6の7−7線に沿った部分断面図である。
【0055】
図6及び図7を参照すると、江戸川方式歩車道境界縁石は、表面が斜めに削られている。江戸川方式歩車道境界縁石は、乳母車、シルバーカー(手押し車)、シニアカー(福祉用電動車両)、車椅子等の使用者が歩道へ乗り上げやすくするとともに、視覚障害者にも歩道から車道への踏み変わりが足裏の触覚でわかるようにとの配慮に基づくものである。
【0056】
しかし、図6及び図7に示した江戸川方式歩車道境界縁石では、歩道の全周縁に歩車道境界縁石が敷設されることとなるので、コスト高を招き、不経済である。また、歩行者が、江戸川方式歩車道境界縁石の傾斜面変化を予め意識していないと、傾斜面を踏んだときの急な角度変化に対応できず、進行方向につんのめる危険がある。現に、視覚障害者が車道側から横断歩道口に到達したときに、江戸川方式歩車道境界縁石の傾斜面によって進行方向につんのめり、横断歩道口の角付近に設置されてある信号機の柱や、街灯の柱等に顔を打ち付けた実例がある。
【0057】
これに対して、図1乃至図5を参照して説明した本発明の一実施形態によると、第1の横断歩道口11は、横断歩道口101〜104の一部にのみ傾斜面110を有していれば足りるから、従来の江戸川方式の斜面ブロックや、神戸の斜め縁石とは異なり、低コストで経済的に設置することができる。
【0058】
また、傾斜面110は、歩道面10から車道面30に向かって一定の傾斜率で下降傾斜しているから、視覚障害者等が安全かつ円滑に、歩道と車道とを行き来す通行することができる。
【0059】
さらに、傾斜面110は、歩道面10と車道面30との境界部分において無段差となっているから、老若男女などの年齢性別差や、視覚障害や歩行障害など障害の種類および程度如何を問わず、傾斜面110を通じて安全かつ円滑に歩道と車道とを行き来することができる。従って、全ての歩道通行者が、安全かつ円滑に通行しうる第1の横断歩道口11を提供することができる。
【0060】
図8は、従来技術に係る別の歩道デザイン例(熊谷方式)について、一部を省略して示す平面図である。
【0061】
図8に示したように、熊谷方式では、歩車道境界縁石の表面(斜線表記部分)に、車道に向かって下降傾斜する2本のスロープが形成されている。この2本のスロープは、車椅子の両車輪幅に応じた間隔を隔てて二つ一組で配置されており、スロープ間には歩車道境界縁石が残されている。スロープのそれぞれは、車道面に対してゼロ段差で連なる。
【0062】
しかし、熊谷方式では、車椅子の車幅にあわせて2本のスロープを配置しているため、車椅子より車幅が狭くなっている乳母車やシルバーカー(手押し車)などは、円滑に通行することができない。また、三輪車構造となっているシニアカー(福祉用電動車両)等の使用者にとっては、2本のスロープ間に確保されている歩車道境界縁石の段差が、通行の妨げになる。
【0063】
これに対して、図1乃至図5を参照して説明した本発明の一実施形態に係る第1の横断歩道口11によると、横断歩道口に敷設されている縁石22おいて、車道に向かって傾斜する傾斜面110の70cm幅の部分だけ無段差にし、その両側は従来どおりの2cmの段差が形成されているから、車椅子等使用者は車道から歩道に乗り上げようとするとき、傾斜面110の部分を目で確かめて、そこから歩道に乗り上げることができる。
【0064】
しかも、傾斜面110は、境界部分において、部分的にも段差を有しないから、傾斜面110の幅を例えば70cmとした場合、70cm以下の車輪幅を有する全ての車が、安全かつ円滑に歩道と車道とを行き来することができる。従って、乳母車、シルバーカー(手押し車)、シニアカー(福祉用電動車両)、車椅子等の使用者や、重度の歩行障害者であっても、歩道へ乗り上げやすく、傾斜面110を通じて安全かつ円滑に歩道と車道とを行き来することができる。
【0065】
他方、視覚障害者は、例えば、歩道面10を誘導ブロック6に沿って歩いていて、これから車道に出ようとするとき、傾斜面110の下降傾斜を足裏に識別できれば、車道に出ることができる。従って、視覚障害者にも歩道から車道への踏み変わりがわかる第1の横断歩道口11を提供することができる。
【0066】
さらに、傾斜面110の両側には、2cmの段差を有する縁石22が確保されているから、白杖などで縁石22を確認しながら、車道に出ることができる。
【0067】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種種の変形態様を採り得ることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態に係る横断歩道口の構造を示す平面図である。
【図2】図1に示した横断歩道口の使用態様について、一部を省略して示す平面図である。
【図3】図1及び図2に示した横断歩道口の一部を拡大して示す図である。
【図4】図3に示した横断歩道口を正面方向から見た図である。
【図5】図4の5−5線に沿った部分断面図である。
【図6】従来技術に係る歩道デザイン例(江戸川方式)について、一部を省略して示す平面図である。
【図7】図6の7−7線に沿った部分断面図である。
【図8】従来技術に係る別の歩道デザイン例(熊谷方式)について、一部を省略して示す平面図である。
【符号の説明】
【0069】
10 歩道面
11 横断歩道口
110 傾斜面
111、112 側壁面
113、114 視覚障害者用警告ブロック
30 車道面
M 動線方向
W 幅員方向
L1、L2 傾斜面の始端縁、終端縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜面と、側壁面と、視覚障害者用警告ブロックとを有する横断歩道口であって、
前記傾斜面は、歩道面から車道面に向かって下降傾斜し、前記歩道面と前記車道面との境界部分において無段差となっており、
前記側壁面は、前記傾斜面の傾斜方向に直交する幅方向の両端において立ち上がっており、
前記視覚障害者用警告ブロックは、前記傾斜面内において、前記境界部分の付近に配置されている、
横断歩道口。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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