説明

樹木の再生および形質転換のための材料および方法

本開示は、メタ-トポリンを含む植物培養培地を用いて、植物外植片からシュートを再生する方法に関する。本発明はまた、植物、特に林木を再生するための培地および方法も提供する。特に、安定的に形質転換されたユーカリおよびマツ樹木を再生する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年5月7日付け米国特許仮出願第61/176314号に対する優先権を主張するものであり、その全内容を参照により本明細書に組み入れる。
【0002】
技術分野
本発明の技術は概して、植物組織培養の分野に関するものである。特に、本発明の技術は、精英樹種の不応性(recalcitrant)クローンまたは遺伝子型からのシュート再生効率を高めるための方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
背景
以下の説明は読者の理解を助けるために提供される。提供した情報または引用した文献のどれも、本発明の先行技術であると認めるものではない。
【0004】
植物の遺伝子操作は商業的に重要な植物種の改良に大きな可能性を提供している。近年では、樹木の遺伝子操作が躍進を遂げてきており、パルプおよび木材業界において特に応用されている。モミジバフウ、ヨーロッパカラマツ、イエローポプラおよび多くのポプラ属種のような樹種については、いくつかの樹木形質転換系が確立されている。害虫抵抗性および除草剤耐性などのさまざまな形質がこれらの樹種に遺伝子操作により導入されてきた。したがって、ユーカリ(Eucalyptus)、マツおよびモミジバフウを含む商業的に重要な樹種に関して、樹種を遺伝子操作できる可能性は大きい。
【0005】
ユーカリ植物は500超の種を含むポリジーナス(polygenus)植物である。ユーカリは成長速度が速く、さまざまな環境に適応し、しかも虫害をに対する感受性がほとんど無い。その並外れた成長特性に加えて、ユーカリ樹木は製紙産業用繊維の最大の供給源となっている。ユーカリなどの硬材種からの繊維は一般的に、マツなどの軟材からの繊維よりもはるかに短い。ユーカリから得られる短い繊維は、滑らかさと明るさを含む望ましい表面特性を有するものの引裂きまたは引張り強度が弱い、パルプおよび紙の産生をもたらす。木材として、ユーカリは中密度から高密度の長くてまっすぐな木材を提供する。ユーカリの木材は用途が広く、合板およびパーティクルボード業界、家具業界で利用されており;かつ、薪や建設資材の原料を提供する。
【0006】
ユーカリの形質転換を実証する報告のほとんどは、育種計画を通して得られたエリート(elite)遺伝子型またはクローンではなく、ユーカリの実生を用いたものである。例えば、国際公開公報第99/48355号(特許文献1)は、E.グランディス(E. grandis)およびE.カマルドレンシス(E. camaldulensis)の実生から得られた若葉外植片を形質転換する方法を記載している。形質転換は成功したものの、上記の方法には2つの主要な問題が存在する。第一に、その再生プロトコールは実生外植片には有効であるが、エリート遺伝子型由来の外植片の場合には効果がない。第二に、実生外植片および特許請求された改良を用いたとしても、これら2つの種の子葉外植片とE.カマルドレンシスの胚軸外植片については形質転換効率が2.2%以下に制限される。改良された形質転換・再生プロトコールがHoら、Plant Cell Reports 17:675-680 (1998)(非特許文献1)によってE.カマルドレンシスの実生に関して報告された;しかし、このプロトコールはE.カマルドレンシスの実生を用いたときでさえ再現性がなかった。数千もの外植片を培養して、トランスジェニックカルス株を産生したが、回収されたシュートの数はごくわずかだった。
【0007】
ユーカリクローン材料の大量増殖は日常的に行われているが、デノボシュート再生は、商業的に重要なユーカリ種の選抜クローンすなわち「エリート」クローンではなく、実生に限定されている。育種と選抜を何回も繰り返すことによって得られるエリート遺伝子型は、経済的に望ましい形質が組み合わされていることで評価される。成長形質とトランスジーン発現によってもたらされる所望の形質との共分離を確実にするためには多数の遺伝子型が必要である、実生の形質転換とは異なり、エリートクローンの形質転換は樹種を遺伝子操作するための効率のよい有利な系を提供すると考えられる。エリート遺伝子型は、多数の出発遺伝子型を用いた長年のクローンフィールド試験に基づいて選択することができる。他の多くの早生硬材樹種と同様に、ユーカリについて形質を比較的正確に予測できるまでには、何年ものフィールド評価が必要である。したがって、実生を遺伝子操作のために用いる場合には、トランスジーン発現により付与される所望の形質と共に成長形質を成功裏に選択するために、さらに多数の遺伝子型が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開公報第99/48355号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Hoら、Plant Cell Reports 17:675-680 (1998)
【発明の概要】
【0010】
概要
ユーカリなどの樹木のエリート遺伝子型またはクローンの場合は、外植片組織からシュートを再生することがしばしば困難である。トランスジェニック細胞の選択と発生のためには再生が必要であるので、こうした再生の欠如または低再生効率が、これらのエリート遺伝子型またはクローンの遺伝的形質転換を妨げている。
【0011】
従来、樹種のシュート再生はBAP、ゼアチン、カイネチン、2ipおよびTDZなどの成長調節剤を用いることによって達成されてきた。しかし、特定のエリート系統については、上に挙げた成長調節剤またはそれらの組合せのどれもが、シュート再生を誘導することに単独でも組合せでも成功しなかった。本明細書に記載する方法は、育種計画から選抜されたユーカリなどの精英樹に関する再生問題を克服する対処法を実証するものである。
【0012】
本発明者らは、エリート遺伝子型またはクローンからシュートを再生させるのに重要な培地成分を発見した。したがって、本発明は概して、さもなくば再生の難しい精英樹種のシュートの再生を促進するために、N6-(メタ-ヒドロキシベンジル)アデニン(メタ-トポリン)およびメタ-トポリンと他の植物成長調節剤との組合せを使用することに関する。単独または他の成長調節剤と組合せたメタ-トポリンの使用は、特定のエリート遺伝子型からの再生を誘導するのに効果的であるが、これらの化合物は同様に他の遺伝子型の再生効率を向上させることも期待される。
【0013】
一局面において、本開示は、以下の段階を含む、植物組織から植物を再生する方法を記載する:(a)(i)メタ-トポリンと、(ii)1種以上の追加のサイトカイニンとを含む培地で植物組織を培養する段階であって、少なくとも1種のサイトカイニンがチジアズロン(TDZ)およびN-(2-クロロ-4-ピリジル)-N'-フェニル尿素(4-CPPU)からなる群より選択される、段階;ならびに(b)該植物組織を、1つ以上のシュートまたはシュート原基が形成されるまでインキュベートする段階。
【0014】
一態様において、植物組織は、葉外植片、葉柄外植片、節間部外植片、花組織外植片、および胚形成組織外植片からなる群より選択される外植片である。例えば、植物組織は、遺伝子を植物細胞に導入できるベクターを保有するアグロバクテリウム菌株と接触している外植片であり得る。特定の態様では、植物組織は、形質転換されたカルスである。ある態様では、植物組織は、ユーカリ、マツ、ポプラ(Populus)、およびモミジバフウからなる群より選択される樹木に由来する。具体的な態様では、植物組織は、E.グランディス、E.ウロフィラ(E. urophylla)、E.ナイテンス(E. nitens)、E.グロブルス(E. globulus)、E.ダニアイ(E. dunnii)、E.サリグナ(E. saligna)、E.オクシデンタリス(E. occidentalis)、E.カマルドレンシス、およびそれらの交雑種からなる群より選択されるユーカリ樹木に由来する。他の具体的態様では、植物組織は、イースタンホワイトパイン(Eastern white pine)、ウエスタンホワイト(Western white)、シュガーパイン(Sugar pine)、レッドパイン(Red pine)、ピッチパイン(Pitch pine)、ジャックパイン(Jack pine)、ロングリーフパイン(Longleaf pine)、ショートリーフパイン(Shortleaf pine)、ロブロリーパイン(Loblolly pine)、スラッシュパイン(Slash pine)、バージニアパイン(Virginia pine)、ポンデロサパイン(Ponderosa pine)、ジェフリーパイン(Jeffrey pine)、ポンドパイン(Pond pine)、ロッジポールパイン(Lodgepole pine)、ラジアータパイン(Radiata pine)、およびそれらの交雑種からなる群より選択されるマツ樹木に由来する。
【0015】
ある態様において、培地中のメタ-トポリンの濃度は約0.01〜約100μM、または約0.1〜約20μMである。ある態様では、培地はTDZを含み、TDZの濃度は約0.025〜約0.1μMである。ある態様では、培地は4-CPPUを含み、4-CPPUの濃度は約0.025〜約0.1μMである。ある態様では、培地はさらにゼアチンを含む。ある態様では、培地はさらにオーキシンを含む。例えば、オーキシンはNAA、2,4-D、IBAおよびIAAからなる群より選択することができる。典型的には、培地は塩類、ビタミン類、ブドウ糖、ショ糖およびゲル化剤からなる群より選択される1種以上の成分を含む。ある態様では、植物組織は、培地中で少なくとも1日または少なくとも1週間インキュベートされる。
【0016】
ある態様において、本方法は、以下の段階をさらに含む:植物組織を、外来DNAを保有する形質転換ベクターを含むアグロバクテリウム菌株に曝すことによって、該植物組織の少なくとも1個の細胞を該外来DNAで形質転換する段階であって、該外来DNAが該植物組織の細胞少なくとも1個に導入される、段階。前記方法はさらに、形質転換植物細胞を選択する段階を含むことができる。
【0017】
別の局面において、本開示は、以下の段階を含む、ユーカリ植物の再生方法を記載する:(a)ユーカリ外植片を供給する段階、および(b)該ユーカリ外植片を、メタ-トポリンを含む培地中で、1つ以上のシュートまたはシュート原基が形成されるまでインキュベートする段階。ある態様において、ユーカリ外植片は、E.グランディス、E.ウロフィラ、E.ナイテンス、E.グロブルス、E.ダニアイ、E.サリグナ、E.オクシデンタリス、E.カマルドレンシス、およびそれらの交雑種からなる群より選択される。例えば、ユーカリ外植片は、葉外植片、葉柄外植片、節間部外植片、花組織外植片、および胚形成組織外植片からなる群より選択される外植片である。ある態様では、ユーカリ外植片は、遺伝子を植物細胞に導入できるベクターを保有するアグロバクテリウム(Agrobacterium)菌株と接触している外植片である。ある態様では、前記培地はさらに、1-フェニル-3-(1,2,3-チアジアゾール-5-イル)尿素(チジアズロン、TDZ)、N-(2-クロロ-4-ピリジル)-N'-フェニル尿素(4-CPPU)、ゼアチンおよびオーキシンからなる群より選択されるサイトカイニンを含有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】5μMメタ-トポリン+0.1μM 4-CPPU+0.025μM TDZを含有するH2_2培地で再生させた節間部外植片の一連の写真である。
【図2】β-グルクロニダーゼ(GUS)活性について5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-グルクロン酸(X-gluc)で染色した、形質転換された節間部外植片の一連の写真である。
【図3】GUS遺伝子の存在と発現を検出するためにサンプリングしてx-glucで処理した推定上のトランスジェニックシュート由来の葉外植片およびシュート外植片の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
本開示の方法は、樹木のエリートクローンまたは遺伝子型において通常得られる低い再生効率を克服するための、遺伝子型に依存しないシュート再生を提供する。その最も広い局面において、本方法は、樹木外植片からのシュート再生の効率を高めることに関する。シュート再生頻度の増大は、メタ-トポリンを含む培地上で外植片を培養することによって達成される。前記培地はまた、1つ以上の遺伝子または選択可能なマーカーで形質転換されている任意の植物細胞から植物を再生するためにも使用することができる。本発明の培地および方法は、トランスジェニック林木を再生するのに特に有用である。
【0020】
以下の説明において、いくつかの用語が広範囲に利用されている。他に定義しない限り、本明細書中で用いるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって通常理解される意味と同じ意味を有する。以下の定義は本発明の理解を容易にするために提供される。単位、接頭辞および記号はそれらの認められたSI形式で表示することができる。
【0021】
反対のことが明記されていない限り、用語「含む」および「含み」もしくは「含んで」などの変形、ならびに「有する」および/または「含有し」は、例えば、請求項の要部に記載されている情報を包含すると解されるが、明記されていない情報を除外すると解すべきでない。
【0022】
本明細書中で用いる「一つの(a)」および「ある(an)」は、単数形が明示的に指定されていない限り、「1つ以上」を意味する。
【0023】
本明細書中で数値に言及する場合、用語「約」は、特に断りのない限り、列挙値のプラスマイナス10%をさす。
【0024】
用語「アグロバクテリウム介在形質転換」は、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)由来のTi(腫瘍誘導性)プラスミドの使用によってDNAが植物細胞のゲノムに安定的に挿入される方法を意味する。T-DNAとして知られる、Tiプラスミドの一部が宿主植物細胞の核内に組み込まれる。あるいはまた、アグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)由来のRiプラスミドを形質転換に用いてもよい。アグロバクテリウム介在形質転換では、植物への導入が意図される遺伝子またはDNAが、T-DNAのレフトボーダーとライトボーダーの間に配置される。
【0025】
用語「オーキシン」は、切除された植物組織における細胞分裂を刺激する能力により主に特徴付けられる、植物成長調節剤のクラスを包含する。細胞分裂および細胞伸長におけるそれらの役割に加えて、オーキシンは発根を含む他の発達プロセスにも影響を及ぼす。本発明においては、オーキシンおよびオーキシン型成長調節剤として、限定するものではないが、ナフタレン酢酸(NAA)、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)、インドール-3-酪酸(IBA)、およびインドール-3-酢酸(IAA)が挙げられる。
【0026】
用語「カルス」とは、細胞または組織の脱分化した増殖性の塊をさす。
【0027】
「クローニングベクター」とは、宿主細胞内での自律複製能を有するプラスミド、コスミドまたはバクテリオファージなどの遺伝学的要素である。クローニングベクターは一般的に、特定可能な向きで外来DNA配列を挿入できる部位と、該クローニングベクターにより形質転換された細胞の同定および選択に適した産物をコードするマーカー遺伝子とを含む。マーカー遺伝子には、その産物が抗生物質耐性または除草剤耐性を付与する遺伝子が含まれる。クローニングベクターへの外来DNA配列の挿入は、クローニングベクターまたはマーカー遺伝子の必須の生物学的機能を妨げることはない。
【0028】
用語「サイトカイニン」は、組織培養の際の細胞分裂とシュート器官形成を刺激する能力により特徴付けられる植物成長調節剤のクラスをさす。本発明においては、サイトカイニンとして、限定するものではないが、N6-ベンジルアミノプリン(BAP)、N6-ベンジルアデニン(BA)、ゼアチン、カイネチン、チジアズロン(TDZ)、メタ-トポリン、2-イソペンテニルアデニン(2ip)、および4-CPPU (N-(2-クロロ-4-ピリジル)-N'-フェニル尿素)が挙げられる。
【0029】
本明細書中で用いる「有効量」とは、さまざまな植物成長反応の1つ以上を刺激または惹起するように植物または外植片に投与されるサイトカイニンなどの化合物の量または濃度をさす。植物成長反応としては、とりわけ、茎伸長の誘導、シュートまたは根形成の促進、カルス形成の刺激、葉成長の増強、種子発芽の刺激、多くの植物および植物部位の乾燥重量含量の増加などが挙げられる。
【0030】
用語「エリート遺伝子型」とは、既知のフィールド性能を有しかつ育種と選抜を通して得られる、商業的に重要な植物(例えば樹木)の遺伝子型をさす。本出願の意図においては、用語「遺伝子型」と「クローン」は同じ意味で用いられる。
【0031】
用語「胚形成組織」とは、1つ以上の子葉の体細胞胚を産成することができる、植物由来の任意の組織をさす。例えば、用語「胚形成組織」には、針葉樹の胚形成組織が含まれる。
【0032】
用語「外植片」とは、形質転換されることが可能でありかつその後植物体へと再生することが可能である、植物部位をさす。典型的な外植片としては、葉、葉柄、花組織、節間部組織、未熟胚または胚形成組織、体細胞胚およびそれらの器官、体細胞胚発生カルス、ならびに子葉に由来する外植片が挙げられる。
【0033】
「外来DNA」は、別の種からまたは関心対象の種から単離されて、同じ種に再導入されるDNAである。DNAは構造遺伝子、アンチセンス遺伝子、DNA断片などであり得る。
【0034】
「遺伝子」は、メッセンジャーRNA (mRNA)に転写され、次いで、ポリペプチドに特有なアミノ酸の配列へと翻訳される、遺伝性のDNA配列である。
【0035】
用語「機能的に連結される」とは、2つ以上の分子を、それらが組み合わさって植物細胞内で適切に機能するような様式で組み合わせることの説明である。例えば、プロモーターが構造遺伝子の転写を制御している場合には、該プロモーターは該構造遺伝子と機能的に連結されている。
【0036】
「植物プロモーター」とは、その起源が植物細胞であるかどうかに関わらず、植物細胞内で転写を開始することができるプロモーターである。代表的な植物プロモーターには、限定するものではないが、植物、植物ウイルス、および細菌(例えば、植物細胞内で発現される遺伝子を含むアグロバクテリウムまたはリゾビウム(Rhizobium))から得られるものが含まれる。発生制御下にあるプロモーターの例には、葉、根または種子などの特定の組織で転写を優先的に開始させるプロモーターがある。そうしたプロモーターは組織優先型プロモーター(tissue-preferred promoter)と呼ばれる。特定の組織でのみ転写を開始させるプロモーターは組織特異的プロモーターと呼ばれる。細胞型特異的プロモーターは主に、1つ以上の器官における特定の細胞型での、例えば、根または葉の維管束細胞での、発現を駆動する。誘導性または抑制性プロモーターは環境制御下にあるプロモーターである。誘導性プロモーターによる転写に影響を与え得る環境条件の例には、嫌気的条件または光の存在が含まれる。組織特異的プロモーター、組織優先型プロモーター、細胞型特異的プロモーター、および誘導性プロモーターは非構成的プロモーターのクラスを構成する。構成的プロモーターとは、ほとんどの環境条件においておよびほとんどの植物部位において活性であるプロモーターのことである。
【0037】
本明細書中で用いる用語「前培養培地」は、アグロバクテリウムによる形質転換に先立って植物外植片を培養するための栄養培地であり、形質転換効率および植物の再生を高めるために必要とされる。前培養培地は、アグロバクテリウムの誘導物質、例えばアセトシリンゴン、ならびに任意で、植物成長調節剤、例えばオーキシンおよびサイトカイニンを含むことができる。
【0038】
用語「シュート再生培地」とは、関心対象の植物シュート、例えばトランスジェニックシュートの再生を目的として設計された培地をさす。シュート再生培地は無機塩類、アミノ酸とビタミンの混合物、酸化防止剤、有機窒素、および植物成長調節剤を含有する。本明細書に記載する方法のさまざまな態様において、シュート再生培地にはサイトカイニンのメタ-トポリンが含まれる。
【0039】
用語「構造遺伝子」は、メッセンジャーRNA (mRNA)へと転写され、次いで、特定のポリペプチドに特徴的なアミノ酸の配列へと翻訳される、DNA配列である。
【0040】
「形質転換」とは、遺伝的に安定した遺伝形質をもたらす、宿主生物のゲノムへの核酸断片の導入をさす。形質転換核酸断片を含む宿主生物は、「トランスジェニック」または「組換え」または「形質転換された」生物と呼ばれる。
【0041】
用語「樹木」は、木芯を蓄積するあらゆる多年生植物をさす。樹木には被子植物と裸子植物種がある。樹木の例としては、ポプラ、ユーカリ、ダグラスファー(Douglas fir)、マツ、シュガーパインおよびモントレーパイン、堅果樹、例えばクルミおよびアーモンド、果樹、例えばリンゴ、プラム、柑橘類およびアンズ、ならびに硬材樹、例えばセイヨウトネリコ、カバノキ、オーク、およびチークが挙げられる。商用目的で特に関心対象となるのは、マツ、モミ、トウヒなどの針葉樹、ユーカリ、アカシア、アスペン(Asspen)、モミジバフウ、およびポプラである。
【0042】
本発明は、形質転換されたまたは形質転換されていない樹木の外植片からシュートを再生させる方法を提供する。本方法は、樹木の外植片を、N6-(メタ-ヒドロキシベンジル)アデニン(本明細書では「メタ-トポリン」と称する)と、任意で1種以上の追加のサイトカイニンまたは成長因子と、の存在下で培養することを意図している。本明細書中で示すように、メタ-トポリンは精英樹種の外植片におけるシュート再生の頻度を高める上で重要な役割を果たすことが判明した。実際、再生効率はメタ-トポリンのレベルに直接依存することが観察された。これらの結果は、再生培地中のメタ-トポリン濃度と全体的な再生効率の間に正の相関があることを示している。
【0043】
サイトカイニンはある種のN6置換プリン誘導体植物ホルモンであり、細胞分裂だけでなく多数の発達事象、例えば植物の成長、細胞分裂、シュートの発生と発達、根の分化と発達、葉の発達、葉緑体の発生、および老化を調節している(Mok et al. (1995) Cytokinins. Chemistry, Action and Function. CRC Press, Boca Raton, F1a., pp. 155-166)。高活性の芳香族サイトカイニンであるメタ-トポリンは、成熟ポプラ葉の抽出物中で同定された (Strnad et al., Phytochemistry, 45: 213-218 (1997))。本発明者らは、再生培地へのメタ-トポリンの添加が、さもなくば低い再生効率を示す樹種由来の外植片のシュート再生をもたらすことを発見した。
【0044】
したがって、一局面において本発明は、以下の段階を含む、植物組織から植物を再生する方法を提供する:(a)メタ-トポリンを含む培地で植物組織を培養する段階、および(b)該植物組織を、1つ以上のシュートまたはシュート原基が形成されるまでインキュベートする段階。ある態様において、シュートはその後伸長し、発根して植物になる。
【0045】
本発明の方法および組成物は、さもなくば再生が難しい植物種に由来する種々の組織に適用することができる。ある態様において、植物組織は、ユーカリ、マツ、ポプラ、およびモミジバフウからなる群より選択される樹木に由来する。ある態様では、本方法および組成物がユーカリのシュート再生に適用され得る。自然環境で成長させたユーカリ樹木およびクローン増殖させたユーカリ外植片を含めて、任意のユーカリ外植片も本明細書に記載の方法に従って再生させることができる。外植片は以下を含むすべてのユーカリ属種から選択することができる:ユーカリプツス・アルバ(Eucalyptus alba)、ユーカリプツス・バンクロフチ(Eucalyptus bancroftii)、ユーカリプツス・ボトリオイデス(Eucalyptus botryoides)、ユーカリプツス・ブリジェシアナ(Eucalyptus bridgesiana)、ユーカリプツス・カロフィラ(Eucalyptus calophylla)、ユーカリプツス・カマルドレンシス(Eucalyptus camaldulensis)、ユーカリプツス・シトリオドラ(Eucalyptus citriodora)、ユーカリプツス・クラドカリクス(Eucalyptus cladocalyx)、ユーカリプツス・コキフェラ(Eucalyptus coccifera)、ユーカリプツス・クルチシ(Eucalyptus curtisii)、ユーカリプツス・ダルリンプレアナ(Eucalyptus dalrympleana)、ユーカリプツス・デグルプタ(Eucalyptus deglupta)、ユーカリプツス・デラガテンシス(Eucalyptus delagatensis)、ユーカリプツス・ジベルシカラー(Eucalyptus diversicolor)、ユーカリプツス・ダニアイ(Eucalyptus dunnii)、ユーカリプツス・フィキフォリア(Eucalyptus ficifolia)、ユーカリプツス・グロブルス(Eucalyptus globulus)、ユーカリプツス・ゴムフォケファラ(Eucalyptus gomphocephala)、ユーカリプツス・ガニー(Eucalyptus gunnii)、ユーカリプツス・ヘンリイ(Eucalyptus henryi)、ユーカリプツス・レボピネア(Eucalyptus laevopinea)、ユーカリプツス・マカルツリ(Eucalyptus macarthurii)、ユーカリプツス・マクロリンカ(Eucalyptus macrorhyncha)、ユーカリプツス・マクラタ(Eucalyptus maculate)、ユーカリプツス・マルジナタ(Eucalyptus marginata)、ユーカリプツス・メガカルパ(Eucalyptus megacarpa)、ユーカリプツス・メリオドラ(Eucalyptus melliodora)、ユーカリプツス・ニコリイ(Eucalyptus nicholii)、ユーカリプツス・ナイテンス(Eucalyptus nitens)、ユーカリプツス・ノバ-アンゲリカ(Eucalyptus nova-angelica)、ユーカリプツス・オブリカ(Eucalyptus obliqua)、ユーカリプツス・オクシデンタリス(Eucalyptus occidentalis)、ユーカリプツス・オブツシフロラ(Eucalyptus obtusiflora)、ユーカリプツス・オレアデス(Eucalyptus oreades)、ユーカリプツス・パウキフロラ(Eucalyptus pauciflora)、ユーカリプツス・ポリブラクテア(Eucalyptus polybractea)、ユーカリプツス・レグナンス(Eucalyptus regnans)、ユーカリプツス・レジニフェーラ(Eucalyptus resinifera)、ユーカリプツス・ロブスタ(Eucalyptus robusta)、ユーカリプツス・ルディス(Eucalyptus rudis)、ユーカリプツス・サリグナ(Eucalyptus saligna)、ユーカリプツス・シデロキシロン(Eucalyptus sideroxylon)、ユーカリプツス・スツアルチアナ(Eucalyptus stuartiana)、ユーカリプツス・テレチコルニス(Eucalyptus tereticornis)、ユーカリプツス・トレリアナ(Eucalyptus torelliana)、ユーカリプツス・アーニゲラ(Eucalyptus urnigera)、ユーカリプツス・ウロフィラ(Eucalyptus urophylla)、ユーカリプツス・ビミナリス(Eucalyptus viminalis)、ユーカリプツス・ビリディス(Eucalyptus viridis)、ユーカリプツス・ワンドゥ(Eucalyptus wandoo)、ユーカリプツス・ユーマンニ(Eucalyptus youmanni)、およびそれらの交雑種。
【0046】
ある態様において、本方法は、マツ由来のクローン増殖させた組織を形質転換することを提供する。ある態様では、標的植物が以下の植物からなる群より選択される:バンクスマツ(Pinus banksiana)、ピヌス・ブルチア(Pinus brutia)、カリビアマツ(Pinus caribaea)、ピヌス・クラスサ(Pinus clasusa)、ロッジポールパイン(Pinus contorta)、シシマツ(Pinus coulteri)、ショートリーフパイン(Pinus echinata)、ピヌス・エルダリカ(Pinus eldarica)、スラッシュパイン(Pinus elliotii)、ジェフリーパイン(Pinus jeffreyi)、シュガーパイン(Pinus lambertiana)、タイワンアカマツ(Pinus massoniana)、ウエスタンホワイトパイン(Pinus monticola)、コルシカンパイン(Pinus nigra)、ダイオウマツ(Pinus palustris)、フランスカイガンショウ(Pinus pinaster)、ポンデロサパイン(Pinus ponderosa)、ラジアータパイン(Pinus radiata)、レッドパイン(Pinus resinosa)、ピッチパイン(Pinus rigida)、ポンドパイン(Pinus serotina)、ストローブマツ(Pinus strobus)、ヨーロッパアカマツ(Pinus sylvestris)、テーダマツ(Pinus taeda)、バージニアパイン(Pinus virginiana)、アマビリスモミ(Abies amabilis)、バルサムモミ(Abies balsamea)、コロラドモミ(Abies concolor)、グランドファー(Abies grandis)、アルプスモミ(Abies lasiocarpa)、カリフォルニアレッドファー(Abies magnifica)、ノーブルモミ(Abies procera)、ローソンヒノキ(Chamaecyparis lawsoniona)、ベイヒバ(Chamaecyparis nootkatensis)、ヌマヒノキ(Chamaecyparis thyoides)、エンピツビャクシン(Juniperus virginiana)、ヨーロッパカラマツ(Larix decidua)、アメリカカラマツ(Larix laricina)、カラマツ(Larix leptolepis)、セイブカラマツ(Larix occidentalis)、シベリアカラマツ(Larix siberica)、インセンスシダー(Libocedrus decurrens)、ヨーロッパトウヒ(Picea abies)、エンゲルマントウヒ(Picea engelmanni)、カナダトウヒ(Picea glauca)、クロトウヒ(Picea mariana)、アオトウヒ(Picea pungens)、アカトウヒ(Picea rubens)、シトカトウヒ(Picea sitchensis)、ダグラスモミ(Pseudotsuga menziesii)、ジャイアントセコイア(Sequoia gigantea)、センペルセコイア(Sequoia sempervirens)、ラクウショウ(Taxodium distichum)、カナダツガ(Tsuga canadensis)、アメリカツガ(Tsuga heterophylla)、マウンテンヘムロック(Tsuga mertensiana)、ニオイヒバ(Thuja occidentalis)、およびベイスギ(Thuja plicata)。
【0047】
特定の態様において、植物はユーカリプツス・グランディス(Eucalyptus grandis)もしくはその交雑種、ラジアータパイン、テーダマツ(Pinus taeda L.)(ロブロリーパイン)もしくはその交雑種、セイヨウハコヤナギ(Populus nigra)、アメリカクロヤマナラシ(Populus deltoides)、ウラジロハコヤナギ(Populus alba)もしくはポプラ交雑種、アカシア・マンギュウム(Acacia mangium)、またはモミジバフウ(Liquidamber styraciflua)であり得る。
【0048】
ある態様において、本方法は、エリートユーカリ遺伝子型の保存培養物から得られるユーカリ外植片の再生を意図している。大量増殖されるシュート培養物は、新たに出芽した頂芽または腋芽を回収し、その組織を殺菌溶液中で表面殺菌することにより得ることができる。1〜5%漂白液などの殺菌溶液は当技術分野で知られており、滅菌蒸留水によるすすぎを繰り返し行うことができる。ユーカリ保存培養物は、無機塩類、炭素源、ビタミン類およびサイトカイニンを含む維持培地上でシュートクラスタとして維持することができる。例えば、保存培養物は、木本植物培地(WPM)塩(Loyd and McCown, 1980)およびN6-ベンジルアデニン(BA)を含むユーカリ維持(EM)培地(表1)上で維持されてもよい。あるいは、他の塩培地、例えばMS培地(Murashige and Skoog 1962)またはDKW培地(Driver, J. A.; Kuniyuki, A. H. 1984. In vitro propagation of Paradox walnut rootstock, Juglans hindsii X Juglans regia, tissue culture. HortScience. 19:507-509)を使用してもよい。
【0049】
(表1)ユーカリ維持培地(EM培地)

【0050】
本方法は、樹齢または発達段階とは関係のない外植片の再生を包含する。外植片は葉、葉柄、花組織、節間部組織、未熟胚または胚形成組織、体細胞胚とそれらの器官、および体細胞胚発生カルス、ならびに子葉を含む種々の植物組織に由来するものであり得る。保存培養物から得られる樹木外植片を形質転換のために使用してもよい。樹木外植片は1つ以上の葉、葉柄、節間部組織、および花組織から選択することができる。適切な態様では、葉外植片がその豊富な供給量と形質転換し易さとのために選択される。傷ついた細胞の数を増やすために、葉の先端部分をピンセットで取り除くか、穴を開けてもよい。葉外植片は一般に葉の裏側を下にして培地上に置かれる。
【0051】
本方法はまた、傷をつけた植物組織からのシュートの再生も包含する。用語「傷をつけた」または「創傷」とは、植物組織への傷の導入をさす。植物組織の創傷は、例えば、パンチング、刃物の使用、浸解、微小弾丸の衝突などによって達成することができる。微粒子衝突は当業者に公知のいずれかの技術を用いて実施することができる。そうした技術として、限定するものではないが、タングステンまたは金微粒子の衝突(DNAなし)が挙げられる。創傷により、形質転換および再生の能力がある露出組織が提供されると予想される。
【0052】
本発明は、アミノ酸とビタミンの混合物、植物成長調節剤、ブドウ糖、および酸化防止剤を含む培地上で、外植片を培養する、シュート再生方法を教示する。本明細書に記載の方法によると、再生される樹種に適した任意の基礎培地にメタ-トポリンを添加してもよい。植物組織の成長に適した最少培地の例としては、B5培地(Gamborg et al, Exptl. Cell. Res., 50: 151-158 (1968)); MS培地(Murashige and Skoog, (1962), Physiologia Plantarium 15: 443-97)、およびN6培地(Chu et al, Scientia Sinica, 18: 659-668 (1975))が挙げられる。例えば、MS最少培地には一般的に次の最少塩類が存在する:MgSO4・7H2O、CaCl2・2H2O、KNO3, NH4NO3、KH2PO4、MgSO4・4H2O、ZnSO4・7H2O、CuSO4・5H2O、CoCl2・6H2O、KI、H3BO3、Na2MoO4・2H2O、FeSO4・7H2OおよびNa2EDTA。基礎培地はまた、2%ショ糖を添加した、Lloyd and McCown, Proc. Int. Plant Prop. Soc. 30:421-437 (1980)に記載の木本植物培地(WPM)であってもよく、De Block, Plant Physiol. 93:1110-1116 (1990)に記載されるように、650mg/Lのグルコン酸カルシウムと500mg/LのMESがpH緩衝剤として添加される。
【0053】
基礎培地には、B5のビタミン類または任意の他のビタミン組成物のビタミン類および炭素源(例えば、ショ糖またはブドウ糖1〜6%w/v)を含めることができる。前記培地はさらに、ゲル化剤として寒天0.6〜1.2%またはフィタゲル(ゲルライト)0.2〜0.5%w/vを含んでもよい。一般的には、オートクレーブ滅菌に先立って培地をpH5.4〜6.2に調節する。
【0054】
上で述べたように、再生培地はオーキシンを含むことができる。例えば、オーキシンまたはオーキシン型成長調節剤は、ナフタレン酢酸(NAA)、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)、インドール-3-酪酸(IBA)、およびインドール-3-酢酸(IAA)からなる群より選択できる。前記オーキシンの濃度範囲は典型的には約0.1〜約10mg/lである。この型のオーキシンの濃度は約0.2〜約5mg/lである。
【0055】
再生培地は他の成長調節剤または植物ホルモンを含むことができる。適当な成長調節剤は6-ベンジルアミノ(BAP)、チジアズロン(TDZ)、N-(2-クロロ-4-ピリジル)-N'-フェニル尿素(4-CPPU)、カイネチン、ゼアチン、および6-ベンジルアデニンである。TDZは数種の同族化合物を有し、その一部はTDZと同様に作用する。したがって、列挙した成長調節剤と同じ効果をもつ化合物は本発明に包含される。TDZは成長調節剤として作用するだけでなく、他の成長調節剤の合成および/または蓄積を誘導するという利点も有する。多くの植物における体細胞胚発生による再生は、長期培養中にTDZによって誘導され得る。TDZはオーキシンにもサイトカイニンにも影響を及ぼす可能性がある。BAP、4-CPPUもしくはTDZの同時使用、またはオーキシンと4-CPPUもしくはオーキシンとTDZの使用も効果的である。好適な態様では、メタ-トポリンがTDZおよび4-CPPUの一方または両方と組み合わされる。
【0056】
再生培地は、ショ糖をブドウ糖と置き換えるなどの改変を加えたMS基礎塩類および寒天とゲルライトの混合物から構成される。カルベニシリン、セフォタキシムおよびチメンチンなどの抗生物質を培地に加えて、形質転換後の細菌の異常増殖を防ぐこともできる。好適な態様では、該抗生物質はチメンチンである。抗生物質の濃度は一般的には約75〜800mg/l、典型的には約250mg/lである。ユーカリ用の代表的な再生培地を表2に示す。
【0057】
(表2)ユーカリ再生培地

【0058】
ある態様において、再生培養物は、シュートが形成されるまで、白色蛍光灯(40〜100μmol/m2 s)の16時間光周期で温度20〜40℃にてインキュベートされる。これに伴い、外植片の基底部分の膨張が起こる。この段階で、シュートを回収して、伸長培地または発根培地に移植することができる。伸長培地とは典型的に、ホルモンを含まない基礎培地である。発根培地とは典型的に、ホルモンを含まない基礎培地またはオーキシンを添加した培地である。一般的に、塩類の正確な濃度は、本発明から逸脱しない範囲内で変えることができる。
【0059】
シュートが再生され次第、その組織を伸長培地に移植することができ、必要に応じて、200〜400mg/Lのチメンチン、典型的には250mg/Lのチメンチンを用いて残存アグロバクテリウムを抑制してもよい。アグロバクテリウムが存在しない場合には、培養培地からチメンチンを省いてもよい。約2〜3cmの長さまで伸長した緑色の健全なシュートを切り出して、発根培地に別々に植え付ける。
【0060】
植物の形質転換
本方法のある態様においては、形質転換された外植片からシュートが再生される。形質転換と再生の2つのプロセスは相補的である。これら2つのプロセスの相補性とは次のようなものである:形質転換プロセスによって成功裏に遺伝的変換される組織は、あるタイプおよび性質を有するものであり、かつ、十分に健全で、適格で、生命力があるものであり、したがってこれらは、植物体へと成功裏に再生され得る。形質転換および再生技術の成功は単子葉植物と双子葉植物について実証されている。
【0061】
双子葉植物種の細胞の形質転換に用いられる最も一般的な方法論は、植物病原体アグロバクテリウム・ツメファシエンスを使用するものである。アグロバクテリウム介在形質転換はいくつかの単子葉植物において達成されているが、Plant Biotechnology (1989) pp. 35-51, Butterworth Publishers, Stoneham, Mass中でWuが記載しているように、他の遺伝子導入法、例えばポリエチレングリコール法、エレクトロポレーション、直接注入、粒子衝突などのほうがより効果的であった。本発明は、植物再生段階を含むどのような形質転換法にも有用である。特定の態様において、本発明は、葉または茎外植片に由来する培養下の組織の遺伝的形質転換を想定している。形質転換された組織は植物組織構造体を形成するように誘導することができ、その構造体は植物体へと再生され得る。
【0062】
本明細書に記載する形質転換および再生方法は、樹種、例えばユーカリまたはマツの種に任意の外来DNAを導入するために使用することができる。本明細書に記載した方法および当技術分野で公知の方法を用いて、任意の外来DNAを植物細胞に安定的に組み込み、子孫に伝達することが可能である。例えば、リグニン生合成、花発達、セルロース合成、栄養の取込みと輸送、耐病性、または環境条件に対する耐性増大に関与する遺伝子が本方法によって植物細胞に導入され得る。
【0063】
そのような関心対象の外来遺伝子を含むベクターの構築についての詳細は、植物遺伝子工学分野の当業者に知られており、かつ、タバコ、ペチュニアおよび他のモデル植物種で有効であることがすでに実証されているプラクティスと本質的には違いがない。外来遺伝子は、マーカー遺伝子として(Jefferson et al. (1987) EMBO J. 6:3901-3907)、または植物細胞内で何らかの所望の効果を果たすように、選択すべきである。該効果とは、成長促進、耐病性、植物形態の変化、植物産物の品質の変化、または遺伝子操作によって達成され得る他の任意の変化であってよい。キメラ遺伝子の構築物は、1種以上の外因性タンパク質の発現をコードしたり、疾病過程または望ましくない内因性植物機能を制御または阻害するためにマイナス鎖RNAの転写を引き起すことが可能である。
【0064】
ある態様において、本方法は、樹種における遺伝子発現を低下させるために使用することができる。遺伝子発現の低下は、アンチセンス抑制、コサプレッション(センス抑制)、および二本鎖RNA干渉を含む当技術分野で公知の方法により、得られる。遺伝子抑制技術の一般総説については、Science, 288:1370-1372 (2000)を参照されたい。代表的な遺伝子サイレンシング法は国際公開公報第99/49029号および国際公開公報第99/53050号にも掲載されている。
【0065】
アンチセンス抑制の場合には、DNA構築物中でcDNA配列がプロモーター配列に対して逆向きに配置される。cDNA配列は一次転写産物または完全にプロセシングされたmRNAに対して完全長である必要はない。一般的には、より短い配列の使用を補償するために、より高い同一性を用いることができる。さらに、導入される配列は同じイントロンまたはエクソンパターンをもつ必要がなく、非コードセグメントの同一性は等しく有効でありうる。通常、約30または40ヌクレオチドとほぼ完全長ヌクレオチドの間の配列を使用する必要があるが、少なくとも約100ヌクレオチドの配列が好ましく、少なくとも約200ヌクレオチドの配列がさらに好ましく、約500〜約3500ヌクレオチドの配列が特に好ましいものである。一般に導入される核酸セグメントは、抑制される内因性遺伝子の少なくとも一部と実質的に同一である。しかし、該配列は発現を阻害するために完全に同一である必要はない。本発明のベクターは、その阻害効果が標的遺伝子に対する同一性または実質的な同一性を示す遺伝子のファミリー内の他の遺伝子にも適用されるように、設計することができる。
【0066】
植物における別の周知の遺伝子抑制法はセンス・コサプレッションである。センス方向の核酸配列構成の導入は、標的遺伝子の転写を遮断するための有効な手段を提供する。Assaad et al. Plant Mol. Bio. 22: 1067-1085 (1993); Flavell Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 3490-3496 (1994); Stam et al. Annals Bot. 79: 3-12 (1997); Napoli et al., The Plant Cell 2:279-289 (1990); ならびに米国特許第5,034,323号、第5,231,020号および第5,283,184号を参照されたい。コサプレッションでは、導入される配列が一次転写産物または完全にプロセシングされたmRNAに対して完全長である必要はない。好ましくは、導入される配列は、同時に起こるセンス過剰発現の表現型を避けるために、完全長ではない。一般的には、完全長よりも短い配列におけるより高い同一性が、より長く、より同一性の低い配列を補償する。
【0067】
本発明の方法を用いると、リグニン生合成に関与する遺伝子のアンチセンス抑制を用いて、形質転換および再生されたユーカリ植物におけるリグニン含量および/または組成を改変することができる。ポプラ、タバコ(N. tabacum)およびマツにおけるシンナミルアルコールデヒドロゲナーゼ(CAD)をコードする配列のアンチセンス発現は、改変されたモノマー組成を有するリグニンの産生をもたらすことが実証されている。それぞれGrand et al, Planta 163: 232-37 (1985); Yahiaoui et al, Phytochemistry 49: 295-306 (1998); およびBaucher et al, Plant Physiol. 112: 1479 (1996)。したがって、本発明の方法は、外来DNAのアンチセンス抑制を有するユーカリ種を安定的に形質転換して再生させるために使用することができる。
【0068】
本発明の方法は、ユーカリまたはマツ種において花発達を調節するために使用することができる。いくつかの遺伝子産物が葯発達と花粉形成のための重要な成分として同定されている。例えば、小胞子細胞壁の形成および小胞子の放出にとって不可欠なカロースを早期分解することは雄性不稔を引き起こすのに十分である。Worrall et al, Plant Cell 4:7:759-71(1992)。したがって、雄性不稔性植物を作出するためにいくつかの方法が開発されてきた。例えば、米国特許第5,962,769号は、アビジンの発現を介して雄性不稔としたトランスジェニック植物を記載している。アビジンは、組織非特異的な様式で、または葯特異的組織において、構成的に発現させることができる。さらに、カルコンシンターゼA遺伝子のアンチセンス抑制によって雄性不稔を誘導できる。van der Meer et al, Plant Cell 4:253 (1992)。本発明の方法によって、雄性不稔性のユーカリおよびマツ種の作出および再生が可能である。
【0069】
特定の態様において、ユーカリ外植片の形質転換は、形質転換ベクターを保有するさまざまなA.ツメファシエンス株を用いて行われる。前記ベクターは一般的に、プロモーターと機能的に連結された選択マーカー遺伝子を保有する。外植片を、誘導培地中に懸濁したA.ツメファシエンス培養物と共に10〜30分間インキュベートする。あるいはまた、外植片は、真空浸潤、花の浸漬、および当技術分野で周知の他のアグロバクテリウム介在形質転換法により形質転換することもできる。アグロバクテリウム介在形質転換の総説については、Gelvin, S B. Microbiol. Mol Biol Rev 67:1:16-37 (2003)を参照されたい。アグロバクテリウムの導入後、外植片は共培養培地で約3日間、アグロバクテリウムと共培養される。共培養後、外植片はトランスジェニックシュートの回収のためのシュート再生培地に移される。
【0070】
通常は、形質転換された外植片を選択する前に4日間の回収期間を設ける。形質転換外植片を選択するために、いずれかの選択マーカーを再生培地に添加する。選択マーカーとしては、除草剤および抗生物質が挙げられる。さらに、形質転換植物を選択するために、任意のスクリーニング可能なマーカーを用いることができる。スクリーニング可能なマーカーの例として、β-グルクロニダーゼ(GUS)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、およびルシフェラーゼが挙げられる。除草剤選択物質を用いてもよい。除草剤としては、Ally、Oust、およびLibertyが挙げられる。除草剤の濃度は、特定の種に由来する外植片の感受性に応じて変動しうる。選択された外植片は、不定芽の形成まで、2〜3週間ごとに継代培養する。形質転換された不定シュートをシュート塊から分離し、導入遺伝子の発現について調べる。Jefferson et al. EMBO:6:13:901-3907 (1987)。形質転換効率を決定するために、および、形質転換シュートがエスケープまたはキメラでないことを確実にするために、GUSなどのレポーター遺伝子アッセイが使用可能である。
【0071】
スクリーニング可能なマーカー遺伝子の発現、サザンブロット分析、PCR分析、または当技術分野で公知の他の方法によって形質転換を確認した後、形質転換シュートは好ましくはシュート伸長用の培地に移される。本発明は、MS塩類、ショ糖、オーキシン、およびジベレリン酸を含むシュート伸長培地を意図している。NAAが適切なオーキシンであり、GA3が適切なジベレリン酸である。シュートをシュート伸長培地上で約10〜約14日間、好ましくは弱光条件下で培養する。E.ダニアイ(E. dunii)クローンの伸長については、伸長培地に追加のオーキシンを添加する必要があり、かつシュートを、暗所で2〜4週間、または弱光条件下で伸長期間の間、培養すべきである。
【0072】
シュート伸長に続いて、シュートを切り出し、オーキシンなどの植物成長調節剤を含んでもよい根誘導培地に移植する。シュートの切り出しは節または節のすぐ下で行うことができる。好ましくは、シュート頂に近い節からシュートを切り出す。1つのそのような発根培地は、BTM-1栄養成分(Chalupa 1988)、活性炭(MeadWestvaco, Nuchar)、および追加量のCaCl2からなる。あるいは、他の低塩培地、例えば木本植物培地およびMSを、根誘導培地に用いてもよい。
【0073】
光条件に応じて、発根培地は、根の形成を誘導するための成長調節剤を含むことができる。例えば、黄化とシュート頂端分裂組織におけるオーキシン産生とを誘導する暗条件下では、発根培地にオーキシンを含める必要がない。さらに、シュートを暗所で切り出す場合には、切り出しの起点を節領域および/またはシュート頂に制限する必要がない。あるいは、発根段階を明所で行う場合には、発根培地にオーキシンを添加することが必要であり得る。さらに、発根段階を明所で行う場合には、シュート頂端分裂組織の近くの節でシュートを切り出すことが好ましい。
【0074】
木材、パルプおよび紙製品
本発明の別の局面は、本発明の方法によって形質転換および再生された植物から木材、木材パルプ、紙、およびオイルを得る方法を提供する。トランスジェニック植物を形質転換して選択する方法は上記されており、当技術分野で公知である。形質転換植物は任意の適切な条件下で栽培または成長させることができる。例えば、マツは米国特許出願公開第2002/0100083号に記載されるように栽培および成長させることができる。ユーカリは、例えばRydelius, et al., Growing Eucalyptus for Pulp and Energy(Mechanization in Short Rotation, Intensive Culture Forestry Conference, Mobile, Ala., 1994に発表)と同様に栽培および成長させることができる。木材、木材パルプ、紙、およびオイルは当技術分野で公知の任意の手段によって植物から取得することができる。
【0075】
上述したように、本発明に従って得られた木材および木材パルプは、以下のいずれか1つ以上を含むがこれらに限定されない、改善された特性を示す可能性がある:リグニン組成、リグニン構造、木部組成、セルロース重合、繊維寸法、繊維と他の植物成分の比、植物細胞分裂、植物細胞発生、単位面積あたりの細胞数、細胞の大きさ、細胞の形状、細胞壁の組成、木部形成率、木部の美的外観、茎欠陥の形成、成長速度、根の形成速度、枝に対する根の栄養発生の割合、葉面積指標、葉の形状、例えば、リグニン含量の増減、リグニンの化学的処理しやすさの増加、リグニンの反応性向上、セルロース含量の増減、寸法安定性の増加、引張り強度の増加、剪断強度の増加、圧縮強度の増加、耐衝撃性の増加、剛性の増加、硬度の増減、らせん性の減少、収縮の減少、ならびに重量、密度および比重の違い。
【0076】
表現型は任意の適切な手段によって評価可能である。植物はその一般的形態に基づいて評価することができる。トランスジェニック植物を肉眼で観察し、秤量し、その高さを測定することが可能である。植物組織の個々の層、すなわち篩部と形成層を単離することによって植物を調査することができ、形成層はさらに分裂組織細胞、初期肥大成長、後期肥大成長、二次壁形成、および後期細胞成熟に区分される。植物はまた、顕微鏡解析または化学解析を用いて評価することもできる。
【0077】
顕微鏡解析には、細胞型、発生段階、および組織と細胞とによる染料の取込みなどの試験が含まれる。木材パルプ繊維の繊維壁厚および微小繊維角などの繊維形態は、例えば顕微透過エリプソメトリーを用いて観察できる。Ye and Sundstrom, Tappi J., 80:181 (1997)を参照されたい。湿った木材と立ち木の木材強度、密度および木理傾斜は、多変量解析と組み合わせた可視および近赤外スペクトルデータを測定することによって決定できる。米国特許出願公開第2002/0107644号および同第2002/0113212号を参照されたい。管腔サイズは走査型電子顕微鏡を用いて測定可能である。リグニン構造と化学的特性は、Marita et al, J. Chem. Soc., Perkin Trans. 12939 (2001)に記載されるように核磁気共鳴分光法を用いて観測できる。リグニン、セルロース、炭水化物および他の植物抽出物の生化学的特性は、分光光度法、蛍光分光法、HPLC、質量分析、および組織染色法を含めて、公知の任意の標準的な分析方法によって評価可能である。
【実施例】
【0078】
本発明は以下の実施例によってさらに説明されるが、これらの実施例はいかなる場合も制限するものとして解釈されるべきでない。
【0079】
実施例1 - メタ-トポリンはエリートユーカリのシュート再生を促進する
エリートユーカリの形質転換に重要な要素は、細胞からシュートを再生させることである。既存の芽からのシュート増殖は一部のエリートユーカリにとって比較的容易であるが、成熟樹木に由来する細胞から分化を通してシュートを再生させることは通常、律速段階である。ユーカリの形質転換のために現在利用可能な技術のもとでは、トランスジェニック植物は、トランスジェニック細胞が再生または発生して植物となる場合しか得られない。このように、再生がトランスジェニック細胞の選択と発生に必要であるので、再生の欠如または低再生はエリートユーカリ形質転換の可能性を妨げるものである。
【0080】
従来、再生はBAP、ゼアチン、カイネチン、2ipおよびTDZなどの成長調節剤を用いることによって達成されてきた。ある状況では、4-CPPUが再生のために使われた。しかし、特定のエリート系統では、上記の成長調節剤またはその組み合わせのどれもが単独でも組合せでも役に立たなかった。本実施例に記載する方法は、育種計画から選抜されたエリートユーカリ遺伝子型に関する再生問題を克服する方法を実証している。特に、単独、あるいは4-CPPUおよび/またはTDZと組合せた成長調節剤メタ-トポリンの使用は、さもなければ再生させるのが難しかった精英樹の細胞の再生を促進した。
【0081】
植物材料および培養条件
すべてのエリートクローンは、マゼンタボックスまたは大型の使い捨て容器に入れたユーカリ維持(EM)培地(表1)中でシュート塊として維持し、4〜6週間ごとに継代培養した。シュート塊を必要に応じて分割し、保存培養物として維持した。特に断りのない限り、すべての培養物は、光強度30〜40μE/m2/sの、傘のついたクール蛍光灯のもとで、光周期16時間、温度21℃で成育させた。
【0082】
形質転換とその後の再生のために葉、葉柄、節間部、花組織、および胚形成組織を使用できるが、葉が豊富であるという理由で葉外植片が選択された。形質転換のために、E.グランディス(E. grandis)クローン6075および6084の外植片をアグロバクテリウムと共にインキュベートし、以下の変更を除いて再生培地(表2)と同一の共培養培地に置床した:アグロバクテリウム誘導物質アセトシリンゴンの添加およびオーキシンに富む植物成長調節剤の添加。今回の共培養培地にはMS培地(Murashige and Skoog 1962)を用いた;しかし、他の塩培地、例えば木本植物培地(WPM)塩(Loyd and McCown, 1980)またはLepoivre培地を用いてもよい。さらに、他のアグロバクテリウム誘導物質を用いてもよい。植物外植片は共培養培地上で弱光条件下または暗所にて4日間共培養した。
【0083】
各種サイトカイニンが不定再生を刺激する能力を試験するため、4-CPPU、ゼアチン、TDZ、メタ-トポリン、および硫酸アデニンの効果が比較された。サイトカイニンのレベルは0.025μMから10μMまで変動させた。このマトリックスの基本培地はH2_2.0 (または略してH2_2)と命名され、最初のMSベースの再生培地(表2)である。この培地は、E.グランディス、E.ダニアイ、E.カマルドレンシス、E.ウロフィラ、E.オクシデンタリス、およびE.サリグナを含めて、多くのユーカリ種からのシュート再生を誘導するのに効果があった。抗生物質チメンチンを250mg/Lの最終濃度で添加した。シュート再生はシュートを生じた外植片の頻度として測定した。外植片は最終的な再生データの収集前に再生培地で約8〜10週間培養した。
【0084】
第1の実験では、メタ-トポリンとTDZの組合せを再生培地に加えて、シュートパーセントを測定した。表3および4は、それぞれ、クローン6084および6075についての試験した組合せのマトリックスと結果を示す。
【0085】
(表3)クローン6084についてのTDZを含むメタ-トポリンマトリックス

【0086】
(表4)クローン6075についてのTDZを含むメタ-トポリンマトリックス

【0087】
データは、最初のユーカリ再生培地H2_2がこれらのエリートクローンからの高率の再生を誘導できなかったことを示している。同様に、0.1μM未満のメタ-トポリンを含む再生培地は、5%超のシュート形成を促進するには不十分であった。このように、これらのクローンは再生させることが非常に困難である。データはさらに、少なくとも2.5μMのメタ-トポリン濃度がクローン6084および6075の双方において不定シュート形成の顕著な増加をもたらすことを示している。この効果は、再生培地にTDZをさらに含めると増強され得る。メタ-トポリンとTDZの両方の添加に起因する相乗効果は存在するが、メタ-トポリンの増加はそれよりずっと大幅なシュート再生増加に寄与している。例えば、任意のTDZレベルで、メタ-トポリンの増加に伴う再生の向上は、メタ-トポリンのほぼすべての増分について10%を上回る(25%程度)。しかし、TDZの増加に伴う再生の向上はほとんどが5%未満である(メタ-トポリンが2.5μMの場合のある発生率のみが10.9%に達した)。したがって、メタ-トポリンを含有する再生培地は、エリートユーカリ種のシュート形成を高める方法で用いることができる。
【0088】
再生の向上にはメタ-トポリン処理の0.1μMから5.0μMへの増量が寄与していたので、次の実験ではその濃度範囲を20μMにまで拡大した。表5は、試験した組合せのマトリックスとクローン6084および6075についての結果を示す。データは、約2.5〜約10μMのメタ-トポリン濃度がクローン6075および6084について著しく高いシュート再生頻度をもたらしたことを示している。さらに、TDZ単独では、0.1μMという比較的高い濃度でさえも、シュート再生の促進に効果がなかったことが示される。
【0089】
(表5)クローン6075および6084についてのメタ-トポリン×TDZマトリックス

【0090】
メタ-トポリンと4-CPPUの組合せを再生培地に加えて、シュート形成パーセントを測定した。表6は、試験した組合せのマトリックスとクローン6075および6084についての結果を示す。データは、2.5または5μMの有効メタ-トポリン濃度が、4-CPPU濃度にかかわらず、クローン6075および6084について高頻度で不定シュートをもたらしたことを示している。より低い4-CPPU濃度は不定シュート形成の誘導に効果がない。0.1μMという高濃度だけが効果を奏し、また、4-CPPUをメタ-トポリンと一緒に用いた場合にシュート再生の相加的増大が認められた。
【0091】
(表6)クローン6075および6084の再生のための4-CPPUを伴うメタ-トポリン

【0092】
メタ-トポリン、4-CPPU、ゼアチン、およびオーキシンの組合せを再生培地に加えて、シュート再生パーセントを測定した。表7は、試験した組合せのマトリックスとクローン6084および6075についての結果を示す。データは、メタ-トポリンによる処理がクローン6075および6084について比較的高いシュート再生頻度をもたらしたことを示している。0.025、0.05または0.1μMの4-CPPUと10μMのゼアチンと0.53μMのNAAとの組合せはシュートの誘導に効果がなかった。概して、10μMのゼアチンと0.53μMのNAAの存在は、有効濃度のメタ-トポリンおよび/または4-CPPUと共に用いた場合に、比較的低い再生をもたらした。
【0093】
(表7)4-CPPU、ゼアチンおよびNAAを伴うメタ-トポリン

【0094】
メタ-トポリン、4-CPPU、およびTDZの組合せを再生試験でさらに評価し、シュート再生パーセントを測定した。表8は、試験した組合せのマトリックスとクローン6084および6075についての結果を示す。データは、少なくとも2.5μM〜のメタ-トポリン濃度がクローン6075および6084について著しく高い不定シュート再生をもたらしたことを示している。4-CPPUおよび/またはTDZの組合せはメタ-トポリンの効果を高めたが、メタ-トポリンを含まない4-CPPUとTDZの組合せは効果にはほど遠かった。したがって、メタ-トポリンを含有する再生培地は、エリートユーカリクローンのシュート形成を高める方法において用いることができる。
【0095】
(表8)クローン6075および6084の再生のためのメタ-トポリン、4-CPPUおよびTDZ

【0096】
複数の実験にわたり最良の再生が得られたメタ-トポリン、4-CPPUおよびTDZの組合せを、過去に他のクローンで効果があった2つの標準的な再生培地と組み合わせて、新しいクローン材料に対する再生スクリーニング用のマトリックスとした。表9は、試験した組合せのマトリックスと次の3つのエリートクローンについての結果を示す:E.ウロフィラ×グランディスS-519、E.グランディスクローンS-619 (両方ともSuzano社から)およびE.アンプリフォリア(E. amplifolia)クローンEA5490 (フロリダ大学から)。データは、少なくとも2.5μM〜のメタ-トポリン濃度がクローンS519およびEA5490について著しく高い不定シュート再生をもたらしたことを示している。EA5490は5μMのメタ-トポリン濃度で最高の再生を示した。
【0097】
(表9)再生スクリーニング用マトリックス

【0098】
表10は、E.ベンタミイ(E. benthamii)(Ben 83)、E.アンプリフォリア(5481および4810)のクローンについての各種培地のシュート再生結果を示す。表11は、E.ウロフィラ×グランディスのエリートクローン(IPB-8、IPB-13、A11420、A6466、S6021、S1048、S1002)についての各種培地のシュート再生結果を示す。培地の組成は表9と同じであった。データは、少なくとも2.5μM〜のメタ-トポリン濃度が多くのユーカリクローンについて著しく高い不定シュート再生をもたらしたことを示している。
【0099】
(表10)E.ベンタミイおよびE.アンプリフォリアのシュート再生

【0100】
(表11)E.ウロフィラ×グランディスのシュート再生

【0101】
実施例2 - クローン6084についてのメタ-トポリン、TDZおよび4-CPPUを含む再生/選択培地からの安定したトランスジェニックカルスの回収
構築物pWVR31を保有するアグロバクテリウムEHA105株(Hood et al. 1993 Transgenic Res. 2:208-218)を形質転換のために使用した。pWVR31構築物は、ユビキチン11プロモーターによって駆動されるイントロン含有GUS遺伝子およびユビキチン10プロモーターの制御下のネオマイシンホスホトランスフェラーゼII遺伝子(NPTII)を含む。
【0102】
ユーカリ維持培地上で維持したユーカリ保存培養物を外植片の供給源として用いた。伸長したシュートの節間部を回収し、約5mmの切片に切断した。アグロバクテリウムの調製のため、プレートから採取したpWVR31を含むアグロバクテリウムの単一コロニーを、100mg/lのカナマイシンと50mg/lのリファンピシンを加えた50mlの液体YEP培地(10g/l 酵母エキス、10g/l ペプトンおよび50mg/l NaCl、pH7.0〜7.2)中で増殖させた。培養物を振とうインキュベーターに入れて28℃、150rpmで一晩インキュベートした。OD約0.6の一晩培養物を卓上遠心機にて3000gで20分間遠沈させ、50mlのアグロバクテリウム誘導培地すなわちAIM (5g/l ブドウ糖、250μM アセトシリンゴン、2mM リン酸バッファー、および0.05M MESを加えたWPM塩、pH5.8)を用いて再懸濁させた。該アグロバクテリウム中に外植片を30〜40分間浸漬し、その後それらを薄暗い光の育成チャンバー内で3日間共培養培地に置床した。
【0103】
共培養の後、外植片を、250mg/lのチメンチンと100mg/lのカナマイシンを加えた再生培地H.210 (5μM メタ-トポリン、0.1μM 4-CPPUおよび0.025μM TDZを含むMS)である選択培地に置床した。4週間目に、150mg/lのカナマイシンを加えた同じ培地に外植片を移植した。外植片を、カルスおよびシュート原基が形成されるまで、4週ごとに定期的に継代培養した。推定上のトランスジェニック系統におけるGUS活性を測定するため、外植片を、100mMリン酸バッファー(pH7.0)、0.05%ジメチルスルホキシド、0.05% Triton X-100、10mM EDTA、0.5mM フェロシアン化カリウム、および1.5mg/ml 5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-グルクロニダーゼ(X-gluc)を含む基質中でインキュベートした。外植片を真空下に10分間供した後、37℃で一晩インキュベートした。X-gluc基質で処理した外植片を70%エタノールで脱染した。青色のカルスを有する外植片の数を各処理につき記録した。データは以下の表にまとめており、外植片上に発生したGUS陽性カルスは図2で見ることができる。
【0104】
(表12)トランスジェニックカルスの回収

【0105】
実施例3 - クローン6075についてのメタ-トポリン、TDZおよび4-CPPUを含む再生/選択培地からのトランスジェニック植物の回収
本実施例では、不応性のユーカリクローン6075の形質転換と再生の成功について記載する。ユーカリクローン6075を外来DNAで形質転換し、その後メタ-トポリンを含む培地中で再生させた。本実施例では、クローン6075をGUSマーカー遺伝子構築物pARB1001で形質転換した。この構築物は、SUBIN::GUSIN::NOSTERレポーターカセットおよびユビキチン10プロモーター下のネオマイシンホスホトランスフェラーゼII遺伝子(NPTII)を含む。SUBINはラジアータパイン由来のユビキチンプロモーターを示し(米国特許第6,380,459号参照)、5'-UTRとイントロンとをコードするゲノムDNAを含んでいた。
【0106】
形質転換のために構築物pWVRlOOlを保有するアグロバクテリウムGV2260株(McBride and Summerfelt 1990 Plant Mol. Bio. 14:269-276)を使用したことを除いて、形質転換の手順は先の実施例と同様であった。ユーカリ維持培地上で維持したユーカリ保存培養物を外植片の供給源として用いた。アグロバクテリウムで被覆された外植片を薄暗い光の育成チャンバー内で6日間、共培養培地に置床した。共培養の後、外植片を、250mg/lのチメンチンと10mg/lのジェネティシンを加えた再生培地H.215 (5μM メタ-トポリンおよび0.05μM 4-CPPUを含むMS)である選択培地に置床した。2週間後、新しい培地に外植片を移植した。4週間目に、外植片を、ジェネティシン濃度が15mg/lであることを除いて同一である培地に移植した。次に、外植片を4週ごとに同じ培地に移植した。推定上のトランスジェニックシュートから葉およびシュート外植片をサンプリングし、GUS遺伝子の存在および発現を検出するためにx-glucで処理した。トランスジェニック系統は強いGUS発現を示した(図3)。950個の外植片からのPCRにより3つの陽性事象が確認され、(0.3%)の形質転換率となった。
【0107】
トランスジェニックシュートは、保存培地と同一である増殖培地上で大きくした。伸長および発根は上記と同じ手順に従った。この手順によって、クローン6075のトランスジェニック植物が初めて得られた。したがって、これらのデータは、形質転換後のエリートユーカリクローンのシュート形成を高める方法において、メタ-トポリンを含む再生培地が使用できることを実証している。
【0108】
実施例4 - クローン6084についてのメタ-トポリン、TDZおよび4-CPPUを含む再生/選択培地からのトランスジェニック植物の回収
本実施例では、不応性のユーカリクローン6084の形質転換と再生の成功について記載する。ユーカリクローンは、外来DNAで形質転換し、その後メタ-トポリンを含む培地中で再生させることができる。例えば、エリートユーカリクローンを、セルロース合成に関与する酵素、例えばセルロースシンターゼをコードする遺伝子で形質転換する。セルロースシンターゼはUDP-グルコースと結合し、新生グルカン鎖の非還元末端に糖を転移させる。本発明の方法を用いると、外来DNAをトランスジェニック植物で発現させることが可能である。
【0109】
形質転換の手順は先の実施例と同様であった。構築物pWV184を保有するアグロバクテリウムGV2260株を形質転換のために使用した。該構築物は、ロブロリーパイン由来の木部特異的プロモーターによって駆動されるセルロースシンターゼのUDPG結合ドメインをコードする遺伝子、および、ユビキチン10プロモーター下のネオマイシンホスホトランスフェラーゼII遺伝子(NPTII)を含む。
【0110】
ユーカリ維持培地上で維持したユーカリ保存培養物を外植片の供給源として用いた。アグロバクテリウムで被覆された外植片を薄暗い光の育成チャンバー内で5日間、共培養培地に置床した。共培養の後、外植片を、250mg/lのチメンチンと15mg/lのジェネティシンを加えた再生培地H.215 (5μM メタ-トポリンおよび0.05μM 4-CPPUを含むMS)である選択培地に置床した。その外植片を、シュート再生が起こるまで4週ごとに同一の培地に移植した。選択を最大に受けるために、シュート塊は個々のシュートに分割された。推定上のトランスジェニックシュートをリアルタイムPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)解析のためにサンプリングし、トランスジーンの存在を検出した。950個の外植片からのPCRによって3つの陽性事象が確認され、(0.3%)の形質転換率となった。RT-PCRにより陽性と確認されたシュートは、保存培地と同一の増殖培地上で大きくした。伸長および発根は上記と同じ手順に従った。この実験によって、クローン6084のトランスジェニック植物が初めて得られた。また、成長遺伝子の構築物がこのクローンに導入されたのも今回が初めてである。
【0111】
これらのデータは、メタ-トポリンを含有する培地での培養を含む本発明の方法が、さもなければ不応性であるクローンからの、再生および形質転換に有用であることを実証している。
【0112】
実施例5 - メタ-トポリンはエリートマツ種のシュート再生を促進する(予測)
外植片を市販のマツ樹木の保存培養物から取得し、実施例2に記載のように前培養培地上で培養する。各種サイトカイニンがロブロリーパインの不定再生を刺激する能力を試験するため、4-CPPU、ゼアチン、TDZ、メタ-トポリン、および硫酸アデニンの効果を比較する。サイトカイニンのレベルは0.025μMから10μMまで変動させる。このマトリックス用の基本培地は、250mg/Lの最終濃度で抗生物質チメンチンを含むH2_2である。外植片を再生培地に置床し、シュート再生を、シュートを生じた外植片の頻度として測定する。培養培地にメタ-トポリンを含めた処理と、メタ-トポリンを欠いた処理とを比較することによって、この化合物がエリートマツ種のシュート再生を促進する効果が示される。
【0113】
実施例6 - メタ-トポリンはアメリカクロヤマナラシ(Populus deltoides)のシュート再生を促進する
外植片を市販のポプラ樹木(WV94)の保存培養物から取得し、実施例2に記載のように前培養培地上で培養した。各種サイトカイニンがポプラの不定再生を刺激する能力を試験するため、4-CPPU、ゼアチン、TDZ、メタ-トポリン、および硫酸アデニンの効果を比較した。サイトカイニンのレベルは0.025μMから10μMまで変動させた。このマトリックス用の基本培地は、250mg/Lの最終濃度で抗生物質チメンチンを含むH2_2である。外植片を再生培地に置床し、シュート再生を、シュートを生じた外植片の頻度として測定した。培養培地にメタ-トポリンを含めた処理と、メタ-トポリンを欠いた処理とを比較することによって、この化合物がポプラ種のシュート再生を促進する効果が示される。結果を表13に示す。
【0114】
(表13)表11. アメリカクロヤマナラシのシュート再生

【0115】
実施例7 - メタ-トポリンはモミジバフウ種のシュート再生を促進する(予測)
外植片を市販のモミジバフウ樹木の保存培養物から取得し、実施例2に記載のように前培養培地上で培養する。各種サイトカイニンがモミジバフウの不定再生を刺激する能力を試験するため、4-CPPU、ゼアチン、TDZ、メタ-トポリン、および硫酸アデニンの効果を比較する。サイトカイニンのレベルは0.025μMから10μMまで変動させる。このマトリックス用の基本培地は、250mg/Lの最終濃度で抗生物質チメンチンを含むH2_2である。外植片を再生培地に置床し、シュート再生を、シュートを生じた外植片の頻度として測定する。培養培地にメタ-トポリンを含めた処理と、メタ-トポリンを欠いた処理とを比較することによって、この化合物がモミジバフウ種のシュート再生を促進する効果が示される。
【0116】
本開示は、本出願に記載された特定の態様の点で限定されるものではない。当業者には明らかなように、その精神および範囲から逸脱することなく多くの修飾および変更を加えることが可能である。本明細書中で列挙したものに加えて、本開示の範囲内である機能的に同等の方法および組成物が、上記の説明から当業者には明らかであろう。そうした修飾および変更は添付の特許請求の範囲に含まれるものとする。本開示は、添付の特許請求の範囲と共に、該特許請求の範囲が権利を有する同等物の全範囲によってのみ、限定されるべきである。本開示は特定の方法、試薬、化合物または組成物に限定されず、当然のことながら、これらは変更可能であることを理解すべきである。また、本明細書中で用いた専門用語は特定の態様を説明することのみを目的とし、限定を意図したものではないことも理解すべきである。
【0117】
当業者には理解されるように、あらゆる目的のために、特に明細書を提供することに関して、本明細書に開示されたすべての範囲はまた、そのあらゆる部分範囲および部分範囲の組合せをも包含する。列挙された任意の範囲は、少なくとも2等分、3等分、4等分、5等分、10等分などに分割される同一範囲を十分に説明しかつ可能とすることが容易に認識され得る。非限定的な例として、本明細書に記載された各範囲は下3分の1、中央3分の1、および上3分の1などに容易に分割できる。同じく当業者に理解されるように、「最大で」、「少なくとも」、「より多い」、「未満」などの語は全て、列挙した数を包含し、かつ上で述べたように部分範囲にその後分割できる範囲をさす。最後に、当業者には理解されるように、1範囲には個々のメンバーが含まれる。したがって、例えば、1〜3単位を有する1グループは、1、2、または3単位を有するグループ類をさす。同様に、1〜5単位を有する1グループは、1、2、3、4、または5単位を有するグループ類をさす。
【0118】
本明細書で言及したすべての刊行物、特許出願、特許、および他の文献は、それぞれが個別に参照により組み込まれたのと同程度に、それらの全内容が参照により明示的に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、植物組織から植物を再生する方法:
(a) (i)メタ-トポリンと、(ii)1種以上の追加のサイトカイニンとを含む培地で植物組織を培養する段階であって、少なくとも1種のサイトカイニンがチジアズロン(TDZ)およびN-(2-クロロ-4-ピリジル)-N'-フェニル尿素(4-CPPU)からなる群より選択される、段階;ならびに
(b) 該植物組織を、1つ以上のシュートまたはシュート原基が形成されるまでインキュベートする段階。
【請求項2】
前記植物組織が、葉外植片、葉柄外植片、節間部外植片、花組織外植片、および胚形成組織外植片からなる群より選択される外植片である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記植物組織が、遺伝子を植物細胞に導入できるベクターを保有するアグロバクテリウム菌株と接触している外植片である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記植物組織が形質転換されたカルスである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記植物組織が、ユーカリ(Eucalyptus)、マツ、ポプラ(Populus)、およびモミジバフウからなる群より選択される樹木に由来する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記植物組織が、E.グランディス(E. grandis)、E.ウロフィラ(E. urophylla)、E.ナイテンス(E. nitens)、E.グロブルス(E. globulus)、E.ダニアイ(E. dunnii)、E.サリグナ(E. saligna)、E.オクシデンタリス(E. occidentalis)、E.カマルドレンシス(E. camaldulensis)、およびそれらの交雑種からなる群より選択されるユーカリ樹木に由来する、請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記植物組織が、イースタンホワイトパイン(Eastern white pine)、ウエスタンホワイト(Western white)、シュガーパイン(Sugar pine)、レッドパイン(Red pine)、ピッチパイン(Pitch pine)、ジャックパイン(Jack pine)、ロングリーフパイン(Longleaf pine)、ショートリーフパイン(Shortleaf pine)、ロブロリーパイン(Loblolly pine)、スラッシュパイン(Slash pine)、バージニアパイン(Virginia pine)、ポンデロサパイン(Ponderosa pine)、ジェフリーパイン(Jeffrey pine)、ポンドパイン(Pond pine)、ロッジポールパイン(Lodgepole pine)、ラジアータパイン(Radiata pine)、およびそれらの交雑種からなる群より選択されるマツ樹木に由来する、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記培地中のメタ-トポリンの濃度が約0.01〜約100μMである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記培地中のメタ-トポリンの濃度が約0.1〜約20μMである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記培地がTDZを含み、TDZの濃度が約0.025〜約0.1μMである、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記培地が4-CPPUを含み、4-CPPUの濃度が約0.025〜約0.1μMである、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記培地がゼアチンをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記培地がオーキシンをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記オーキシンがNAA、2,4-D、IBA、およびIAAからなる群より選択される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記培地が、塩類、ビタミン類、ブドウ糖、ショ糖およびゲル化剤からなる群より選択される1種以上の成分を含む、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記植物組織が前記培地中で少なくとも1日インキュベートされる、請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記植物組織が前記培地中で少なくとも1週間インキュベートされる、請求項1記載の方法。
【請求項18】
以下をさらに含む、請求項1記載の方法:
段階(a)の前に、前記植物組織を、外来DNAを保有する形質転換ベクターを含むアグロバクテリウム菌株に曝すことによって、該植物組織の少なくとも1個の細胞を該外来DNAで形質転換する段階であって、該外来DNAが該植物組織の細胞少なくとも1個に導入される、段階。
【請求項19】
少なくとも1個の前記形質転換植物細胞を選択する段階をさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
以下の段階を含む、ユーカリ植物を再生するための方法:
(a) ユーカリ外植片を供給する段階;および
(b) 該ユーカリ外植片を、メタ-トポリンを含む培地中で、1つ以上のシュートまたはシュート原基が形成されるまでインキュベートする段階。
【請求項21】
前記ユーカリ外植片が、E.グランディス、E.ウロフィラ、E.ナイテンス、E.グロブルス、E.ダニアイ、E.サリグナ、E.オクシデンタリス、E.カマルドレンシス、およびそれらの交雑種からなる群より選択される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記培地が、チジアズロン(TDZ)、N-(2-クロロ-4-ピリジル)-N'-フェニル尿素(4-CPPU)、ゼアチン、およびオーキシンからなる群より選択されるサイトカイニンをさらに含む、請求項20記載の方法。
【請求項23】
前記ユーカリ外植片が、葉外植片、葉柄外植片、節間部外植片、花組織外植片、または胚形成組織外植片からなる群より選択される外植片である、請求項20記載の方法。
【請求項24】
前記ユーカリ外植片が、遺伝子を植物細胞に導入できるベクターを保有するアグロバクテリウム菌株と接触している外植片である、請求項20記載の方法。
【請求項25】
前記ユーカリ外植片が形質転換された外植片である、請求項20記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2012−525848(P2012−525848A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509961(P2012−509961)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/033821
【国際公開番号】WO2010/129737
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(505450722)アーバージェン インコーポレイテッド (19)
【Fターム(参考)】