説明

樹状細胞を活性化する方法

【課題】 抗原を発現し、活性化された樹状細胞が開示される
【解決手段】 そのような樹状細胞は、腫瘍、ウイルス、もしくは細菌性抗原をT細胞に提示するのに使われ、予防接種プロトコールに有用となりうる。他のサイトカインを、該活性化され抗原パルスされた樹状細胞と別々に、逐次的にもしくは同時に組み合わせて使用することが可能である。抗原を発現し活性化された樹状細胞を用いて免疫応答を刺激する方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、樹状細胞(dendritic cell)活性化因子、リンパ球を介した免疫応答をin vivoで昂進する方法、並びに、細胞性および体液性免疫応答の操作に有用な樹状細胞集団に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術
予防接種は、感染症による死もしくは障害を防ぐ有効な手段である。感染症における本法の成功は、新生物疾患の治療もしくは予防における予防接種の利用に対する興味も刺激してきた。しかしながら、ワクチン利用により達成された数々の成功にもかかわらず、ワクチン開発の分野には未だに多くの挑戦がある。非経口の投与経路、多くの異なる予防接種が要求されること、並びにブースター免疫の必要性、およびその頻度など、すべてが疾患を管理もしくは排除しようとする努力の妨げとなっている。
【0003】
そのような困難の一つが、抗原の免疫原性の欠如、即ち、抗原が病原体に対する効果的な免疫応答を促進することができないことである。加えて、ある抗原は、ある型の免疫応答、たとえば、細胞を介した、もしくは体液性応答のみしか誘導しないこともある。アジュバントは、免疫応答を昂進、増大もしくは強化する物質であり、いくつかの例では、あるタイプの免疫応答を他のタイプより率先して促進するのに用いることができる。多くのワクチンアジュバントが知られているが、明礬(alum)がヒトに広く使われている唯一のアジュバントである。
【0004】
樹状細胞は、顕著な形態と広範な組織分布を持った不均一な細胞集団である(Steinman, R.M., Annu. Rev. Immunol., 9: 271−296, 1991)。樹状細胞は、「専門的な(professional)」抗原提示細胞と言及され、MHC制限T細胞の感化に関し、高い能力を有する。以上のことから、腫瘍もしくは感染症ワクチンアジュバントとして樹状細胞をex vivoで利用しようという興味が持ち上がっている(例えば、Romaniら, J. Exp. Med., 180: 83, 1994)。それ故、樹状細胞の免疫応答刺激能を昂進する試薬は、広く重要であろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、抗原を発現する活性化された樹状細胞の集団およびその利用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明は、樹状細胞を活性化して抗原提示能を昂進させる方法に関する。活性化され、抗原提示する本発明の樹状細胞は、ワクチンアジュバントとして有用である。
【0007】
本発明はまた、ex vivoで多量の抗原提示樹状細胞を製造する方法を提供する。ある個体のCD34+造血始原細胞および幹細胞の回収後、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)およびflt−3リガンド(flt3−L)などのサイトカインを用いて、in vitroで細胞を増殖させ、それらを樹状細胞系列の細胞に分化させることができる。サイトカインは、細胞回収に先立って血流中のCD34+細胞の数を増加させることにも使用することができる。得られた樹状細胞を、免疫応答を誘導したい抗原に暴露させ、抗原を加工させる(本手順を当該分野では「抗原パルス(antigen−pulsing)」ということもある)。抗原パルスされた(もしくは抗原発現している)樹状細胞を、それから、CD40結合蛋白質で活性化し、次いで上記個体に投与する。
【0008】
抗原提示する樹状細胞を調製する別の方法は、抗原もしくはそれに由来する特異的なポリペプチドをコードする遺伝子で樹状細胞をトランスフェクトすることである。樹状細胞がMHCとの関連で抗原を発現した後、該樹状細胞をCD40結合蛋白質で活性化し、次いで上記個体に投与し、該抗原に対しより強力かつ改善された免疫応答を提供する。
【0009】
活性化された抗原提示樹状細胞は、ワクチンアジュバントとしても使用でき、抗原投与前、中もしくは後に投与してもよい。さらに、上記樹状細胞は、免疫応答を調節するサイトカイン、例えばCD40結合蛋白質(即ち、可溶性CD40L)もしくは可溶性CD83分子の投与前、中もしくは後に該個体に投与してもよい。別の有用なサイトカインとしては、インターロイキン(IL)1,2,4,5,6,7,10,12および15、GM−CSF、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、もしくはGM−CSF/IL−3融合蛋白質などのコロニー刺激因子(CSF)、またはTNF−αもしくはc−kitリガンドなどの他のサイトカインが含まれるが、これらだけに制限されない。さらに、これらのサイトカインの生物学的に活性のある誘導体、ならびにその組み合わせも有用であろう。
【0010】
本発明はまた、抗原特異的T細胞のex vivoでの調製品も提供する。上記の操作により多数の抗原提示樹状細胞をex vivoで調製した後、回収された抗原提示樹状細胞を用いて、該個体より回収されたナイーブT細胞から抗原特異的なT細胞を製造する。該抗原が製造されたT細胞に適切に提示された後、該抗原特異的T細胞を該個体に投与できる。
【0011】
発明の詳細な説明
本発明は、抗原パルスされた樹状細胞を活性化するためのCD40Lの利用に向けられている。活性化は、樹状細胞がリンパ球細胞に抗原を提示する能力を昂進し、それによって抗原に対する免疫応答を増大させる。本発明の別の態様は、活性化され、抗原パルスされた樹状細胞の単離およびそのワクチンアジュバントとしての利用である。活性化され、抗原パルスされた樹状細胞は、ex vivoで使用し、抗原特異的なT細胞を作製することもできる。
【0012】
樹状細胞
樹状細胞(dendritic cell)は、顕著な形態と広範な組織分布を持つ不均一な細胞集団を含む。樹状細胞系およびその免疫における役割は、Steinman,R.M., Annu. Rev. Immunol.,9:271−296(1991)(本明細書中に参考文献として援用される)にまとめられている。樹状細胞の細胞表面は変わっており、ベールのような特徴的な突起物があり、細胞表面マーカーCD1a+,CD4+,CD86+もしくはHLA−DR+を有すことから特徴付けられる。樹状細胞は、MHC制限T細胞の感化に関し高い能力を持ち、T細胞発生および寛容期間における自己抗原および免疫中の外来抗原の両方に関し、非常に効果的にin situでT細胞へ抗原提示する。
【0013】
その抗原提示の有効性から、樹状細胞をex vivoで腫瘍もしくは感染症ワクチンアジュバントとして使用することへの興味が持ち上がってきている(例、Romaniら, J. Exp. Med., 180: 83, 1994参照)。免疫刺激剤としての樹状細胞の利用は、末梢血における樹状細胞の割合の低さ、リンパ器官への操作が制限されること、および樹状細胞が分化の最終段階にあることに制約があった。樹状細胞は、CD34+骨髄もしくは末梢血始原細胞および末梢血単核球に起源を持ち、樹状細胞の増殖および成熟は、サイトカインGM−CSF(サルグラモスチン(sargramostim),Leukine(登録商標),Immunex Corp, ワシントン州シアトル),TNF−α,c−kitリガンド(幹細胞因子(SCF),スチール因子(steel factor;SF)もしくはマスト細胞増殖因子(MGF)としても知られている)およびインターロイキン−4により昂進できる。最近、flt3−Lが、in vivoおよびin vitroの両方で、多数の機能的に成熟した樹状細胞の生成を刺激することが見いだされている(USSN 08/539,142、1995年10月4日出願)。
【0014】
樹状細胞のex vivo培養
造血幹細胞および始原細胞のex vivoでの増殖手法が米国特許第5,199,942号(本明細書中に参考文献として援用されている)に記載されている。他の適当な方法については、当該分野では既知である。簡単に述べると、ex vivo培養および増殖は以下のものを含む:(1)患者、末梢血採取物、もしくは骨髄外植体からCD34+造血幹細胞および始原細胞を回収すること;および(2)当該細胞をex vivoで増殖させること。特許第5,199,942号に記載されている細胞性増殖因子に加え、flt3−L,IL−1,IL−3およびc−kitリガンドなどの他の因子を使用することができる。
【0015】
CD34マーカーを有す幹細胞もしくは始原細胞は、骨髄中の単核球の約1%から3%しか含まれない。末梢血のCD34+幹細胞もしくは始原細胞の量は、骨髄のおよそ10から100倍少ない。flt3−Lなどのサイトカインを用いて、in vivoでの樹状細胞の数を増加もしくは変動させることができる。ある個体の樹状細胞の量を増加させることで、腫瘍抗原または細菌性もしくはウイルス性抗原などの、すでに患者に存在している抗原に関し、T細胞への抗原提示を容易にすることができる。また、免疫目的で個体に抗原を投与する前、投与している間、または投与した後に、サイトカインを投与してもよい。
【0016】
末梢血細胞を、当該分野では既知のアフェレシス(apheresis)操作を用いて回収する。例えば、Bishopら、Blood, 83巻、2号、610−616頁(1994)を参照していただきたい。簡単に述べると、末梢血始原細胞(PBPC)および末梢血幹細胞(PBSC)を、慣用された器具、例えばHaemonetics Model V50 apheresis device(Haemonetics、 ブレーンツリー、マサチューセッツ州)を使って回収する。週に5回以下で、およそ6.5×108単核球(MNC)/kgが回収されるまで、4時間回収を行うのが典型である。細胞を標準培地に懸濁し、それから遠心して赤血球および好中球を除去する。2層の界面(バッフィーコート)にある細胞を抜き出し、HBSSに再懸濁する。懸濁した細胞は、単核球が大勢を占めており、細胞混合物のある程度が初期の幹細胞である。
【0017】
ある細胞集団からCD34+造血幹細胞もしくは始原細胞を同定し分離することに関して、種々の細胞選択技術が知られている。例えば、モノクローナル抗体(もしくは他の特異的な細胞結合性蛋白質)を用いて、幹細胞もしくは始原細胞上に見いだされるマーカー蛋白質もしくは表面抗原蛋白質に結合させることが可能である。造血幹細胞に関して、特異的結合蛋白質となるような、いくつかのマーカーもしくは細胞表面抗原(即ち、flt3,CD34,My−10およびThy−1)が当該分野で知られている(例、USSN 08/539,142、1995年10月4日出願を参照)。
【0018】
ある方法では、抗体もしくは結合蛋白質を、例えばガラスビーズもしくはフラスコ、磁気ビーズまたは適当なクロマトグラフ用樹脂の表面に固定し、細胞集団に接触させる。それから幹細胞をビーズマトリクスに結合させる。または、結合蛋白質を細胞混合物とインキュベートし、得られる混合体を抗体−細胞複合体に親和性のある表面に接触させてもよい。不要な細胞および細胞物質は除去され、比較的純粋な幹細胞集団が提供される。特異的な細胞結合性蛋白質を蛍光ラベル(例、クロモフォアもしくはフルオロフォア)で標識し、標識された細胞をソーティングによって分離することも可能である。分離は、免疫アフィニティーカラムによりなされるのが望ましい。
【0019】
免疫アフィニティーカラムは、いかなる形体もとりうるが、通常、充填ベッド反応系から成る。こうしたバイオリアクターにおける充填ベッドは、基質によって実質的に均一にコートされた多孔性物質から作られるのが望ましい。多孔性物質は、高い表面積−体積比を提供し、細胞混合物がベッドから流れ出るのを妨げることなく、細胞の流れに沿って多くの接触機会を与える。基質は、それ自身の性質、もしくは化学的分子の添加により、細胞結合性蛋白質上に見いだされる部分に対し高い親和性を示す。典型的な基質としては、アビジンおよびストレプトアビジンが含まれるが、他の慣用されている基質も利用可能である。
【0020】
ある有用な方法では、分離すべき細胞上にある細胞表面抗原を認識するモノクローナル抗体をさらに修飾してビオチン部分を提示させるのが典型である。ビオチンのアビジンに対する親和性は、それによって可逆的に充填ベッドの表面にモノクローナル抗体を確保する(Berensonら、J.Immunol.Meth.,91:11,1986を参照)。充填ベッドを洗浄して未結合の物質を除去し、従来の方法を用いて標的細胞を放出させる。ビオチン化した抗CD34モノクローナル抗体を用いてアビジンコートした充填ベッドに確保した、上記のタイプの免疫アフィニティーカラムについては、例えばWO 93/08268に記載されている。
【0021】
静止期にある幹細胞を選択する別の手段は、分裂中の、より分化系列にコミットされたタイプの細胞を、5−フルオロウラシル (5−FU)などの抗代謝物、もしくは4−ヒドロキシシクロホスホアミド (4−HC)などのアルキル化剤を用いて細胞死を誘導することである。幹細胞にほとんどもしくは全く影響しない増殖因子の添加により、静止期にない細胞の増殖分化を刺激すると、非幹細胞は増殖分化を引き起こされ、5−FUもしくは4−HCの細胞傷害効果により攻撃されやすくなる。Berardiら、Science, 267:104(1995)(本明細書中に参考文献として援用されている)を参照していただきたい。
【0022】
単離された幹細胞をレート制御フリーザー(例、Cryo−Med, マウントクレメンス、ミズーリ州)で凍らせ、それからジメチルスルホキシドを凍結防止剤として液体窒素の蒸気相中で保存することができる。無血清培地もしくは血清ベースの培地を含め、種々の増殖および培養培地が、樹状細胞(新鮮なものもしくは凍結したもの)の増殖および培養に利用可能である。有用な増殖培地には、RPMI、TC 199、Iscove修飾ダルベッコ培地(Iscoveら、F.J.Exp.Med.,147:923(1978))、DMEM、フィッシャー、アルファ培地、NCTC、F−10、Leibovitz L−15、MEMおよびマッコイが含まれる。
【0023】
培地に存在する特定の栄養素には、血清アルブミン、トランスフェリン、脂質、コレステロール、2−メルカプトエタノールもしくはモノチオグリセロールなどの還元剤、ピルビン酸塩、ブチル酸塩、並びに、ヒドロコルチゾン−2−ヘミコハク酸塩などのグルココルチコイドが含まれる。特に、標準培地には、エネルギー源、ビタミンもしくは他の細胞を助ける有機化合物、培地のpHを安定化させる作用のあるHEPESもしくはTrisなどのバッファー、および種々の無機塩が含まれる。様々な無血清細胞増殖培地がWO 95/00632(本明細書中に参考文献として援用されている)に記載されている。
【0024】
回収されたCD34+細胞を、例えば本明細書およびUSSN 08/539,142中で記載されている適当なサイトカインとともに培養する。CD34+細胞をそれから、分化させ樹状細胞系列へとコミットさせる。これらの細胞を、次に、CD1a,HLA DR,CD80および/もしくはCD86などの樹状細胞に特徴的なマーカーを用いて、フローサイトメトリーもしくは同様の手段でさらに精製する。培養された樹状細胞を、例えば腫瘍抗原または病原性微生物もしくは日和見性微生物由来の抗原に暴露し、抗原を加工させ、次いである量のCD40結合蛋白質とともに培養し、樹状細胞を活性化する。または、樹状細胞を、抗原をコードする遺伝子でトランスフェクトし、次いである量のCD40結合蛋白質とともに培養し、抗原提示している樹状細胞を活性化する。
【0025】
活性化され、抗原を有している樹状細胞を、それから、抗原特異的な免疫応答を刺激するために個体に投与する。樹状細胞は、抗原投与前、中もしくは後に投与することができる。または、T細胞を個体から回収して、活性化され、抗原を有している樹状細胞にin vitroで暴露させ、抗原特異的なT細胞を刺激し、これを該個体に投与することもできる。
【0026】
有用なサイトカイン
様々なサイトカインが、樹状細胞のex vivo培養に有用であろう。flt3−Lは、EP 0627487 A2およびWO 94/28391(共に本明細書中に参考文献として援用されている)に記載されている一群のポリペプチドをいう。ヒトflt3−L cDNAは、1993年8月6日にアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC,アメリカ、メリーランド州、ロックビル)に寄託され、登録番号ATCC 69382を受けている。IL−3は、米国特許第5,108,910号(本明細書中で参考文献に取り入れられている)に記載されているインターロイキン−3ポリペプチドをいう。本発明での使用に適したヒトIL−3蛋白質をコードするDNA配列は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)より登録番号 ATCC 67747で公に入手可能である。c−kitリガンドは、マスト細胞増殖因子(MGF)、スチール因子もしくは幹細胞因子(SCF)とも呼ばれ、EP 423,980(本明細書中に参考文献として援用されている)に記載されている。
【0027】
他の有用なサイトカインには、インターロイキン−4(IL−4;Mosleyら、Cell 59:335(1989)、Idzerdaら、J.Exp.Med.171:861 (1990)およびGalizziら、Intl.Immunol.2:669(1990)(各々、本明細書中も参考文献として援用されている))、並びに顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF;米国特許第5,108,910号および5,229,496号(各、本明細書中で参考文献に取り入れられている))が含まれる。市販のGM−CSF(サルグラモスチン、Leukine(登録商標))はImmunex社(ワシントン州シアトル)より入手可能である。さらに、GM−CSF/IL−3融合蛋白質(即ち、GM−CSFおよびIL−3の、N末端へのC末端融合)も、樹状細胞のex vivo培養に有用であろう。そのような融合蛋白質は既知であり、米国特許第5,199,942号、5,108,910号および5,073,627号(各々、本明細書中に参考文献として援用されている)に記載されている。好適な融合蛋白質は、米国特許第5,199,942号に記載されているようなPIXY321である。
【0028】
樹状細胞のex vivo培養への利用に加え、活性化され、抗原パルスされた樹状細胞に、1種もしくは複数のサイトカインを別々に、逐次的にもしくは同時に投与することによっても、サイトカインは本発明に有用であろう。好適なサイトカインは、免疫応答を調節するもの、特に、インターロイキン1,2,3,4,5,6,7,10,12および15;顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子;インターロイキン−3および顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子を含む融合蛋白質;インターフェロン−γ;TNF;TGF−β;flt−3リガンド;可溶性CD40リガンド;これらのサイトカインの生物学的に活性のある誘導体;並びにこれらの組み合わせから成るグループから選択されるサイトカインである。USSN 08/601,954(1996年2月15日出願)に記載の可溶性CD83、並びに、USSN 08/477,733およびUSSN 08/484,624(共に1995年6月7日出願)に記載の可溶性CD40Lは、特に望ましいサイトカインである。
【0029】
有用なサイトカインは、樹状細胞表面に存在する受容体に結合し、シグナルを伝えることによって作用する。さらに、CD40結合蛋白質に関し、適当なサイトカイン受容体に結合し樹状細胞にシグナルを伝える別の結合蛋白質が、本明細書に記載されるようにして調製可能である。例えば、WO 95/27062は、Flt−3Lの受容体であるFlt−3に対するアゴニスト抗体について記載しており、これより種々のFlt−3結合蛋白質が調製可能である。さらに有用なサイトカインとして、樹状細胞の培養に有用なサイトカインの生物学的に活性な類似体が含まれる。有用なサイトカイン類似体は、天然のサイトカインと実質的に同様のアミノ酸配列を有し、その特異的受容体に結合して生物学的シグナルを伝えることのできる生物学的活性を有している。そのような類似体は、当該分野では既知の、そして本明細書中でも記載される方法によって調製され試験することができる。
【0030】
CD40/CD40L
CD40は、腫瘍壊死因子(TNF)/神経成長因子(NGF)受容体ファミリーの一員であり、細胞外領域におけるシステインに富んだモチーフの存在により定義される(Smithら、Science 248:1019,1990;MallettおよびBarclay, Immunology Today 12:220;1991)。このファミリーには、リンパ球抗原CD27,CD30(ホジキンリンパ腫およびReed−Sternberg細胞に見出される抗原)、TNFに対する2種の受容体、4−1BBと呼ばれるマウス蛋白質、ラットOX40抗原、NGF受容体、並びにFas抗原が含まれる。ヒトCD40抗原(CD40)は、分子量30,600を持つ、277アミノ酸から成るペプチドである(Stamenkovicら、EMBO J. 8:1403,1989)。
【0031】
活性化されたCD4+ T細胞は、高レベルのCD40リガンド(CD40L)を発現する。ヒトCD40Lは、Spriggsら、J.Exp.Med.176:1543(1992)に記載されたように、末梢血T細胞からクローン化された。マウスCD40Lのクローン化はArmitageら、Nature 357:80(1992)に記載されている。CD40Lは、細胞外領域をC末端に、膜貫通領域および細胞内領域をN末端に持つタイプIIポリペプチドである。CD40Lの生物学的活性は、CD40Lの細胞外領域がCD40と結合することによって媒介され、B細胞増殖および(IgE分泌を含む)抗体分泌の誘導を含む。
【0032】
CD40Lは、免疫応答のフィードバック制御に重要と考えられている。例えば、CD40+の抗原提示細胞は、T細胞に抗原提示するが、それから活性化されCD40Lを発現するようになる。CD40Lは、今度は、抗原提示細胞をさらに活性化し、抗原提示の効率を増加させ、種々のサイトカインの他にクラスIおよびクラスII MHC、CD80およびCD86共刺激分子の発現を上昇させる(Cauxら、J.Exp.Med.180:1263,1994)。
【0033】
本発明の方法に有用なCD40Lの形体は、USSN 08/477,733およびUSSN 08/484,624(共に1995年6月7日出願、共に本明細書中で参考文献に取り入れられている)に開示されている。そのような有用な形体には、CD40結合性ペプチドおよびオリゴマー形成ペプチドを含む、可溶性オリゴマーCD40リガンドが含まれる。CD40結合性ペプチドは、
(a) SEQ ID NO:2のアミノ酸1から261,35から261,34から225,113から261,113から225,120から261もしくは120から225を含むペプチド;
(b) CD40に結合する(a)によるペプチドの断片;ならびに
(c) (a)もしくは(b)のペプチドをコードするDNAに、ストリンジェントな条件下(6×SSC、63℃で一晩ハイブリダイズ;3×SSC、55℃で洗浄)でハイブリダイズするDNAにコードされ、CD40に結合するペプチド、
から成るグループから選択される。
【0034】
有用なオリゴマー形成ペプチドもUSSN 08/477,733およびUSSN 08/484,624に開示されており、本明細書中でSEQ ID NO:3および4に示されている。
【0035】
TNFRファミリー中の分子に関して、対応するリガンドのファミリーが存在しており、これらのいくつかはまた、活性化されたT細胞もしくは免疫系の他の細胞に発現している。このファミリーには、CD27L(USSN 08/106,507、1993年8月13日出願)、CD30L(米国特許第5,480,981号、1996年1月2日公表)、4−1BBL(USSN 08/236,918、1994年5月6日出願)、OX40L(米国特許第5,457,035号、1995年10月10日公表)、およびFas L(USSN 08/571,579、1995年12月13日出願)以外に、腫瘍壊死因子およびリンホトキシン(それぞれ、TNFおよびLT;Wareら、Curr.Top.Micobiol.Immunol.198:175,1995にまとめられている)が含まれる。これらのリガンドは、免疫応答の調節にも関与していることが知られており、抗原パルスされた樹状細胞もしくは対応する受容体を持った他の抗原提示細胞の活性化に有用となるであろう。
【0036】
CD40モノクローナル抗体およびさらなるCD40結合蛋白質
有用なCD40結合蛋白質は、CD40に結合し、CD40のCD40Lとの結合を阻害する(可溶性CD40のCD40Lとの結合を少なくとも約90%阻害することが観察されることによって決定される)能力を持つものであり、モノクローナル抗体、CD40リガンドおよびその誘導分子が含まれる。CD40表面抗原に対するモノクローナル抗体(CD40 mAb)は、ヒトB細胞に対し様々な生物学的活性を媒介することが示されている(例えば、LEUKOCYTE TYPING IV; A.J. McMichael編、Oxford Unviersity Press、オックスフォード、426頁)。USSN 08/130,541(1993年10月1日出願)(その関連した開示は本明細書中に参考文献として援用されている)は、CD40に特異的に結合する2種のモノクローナル抗体、hCD40m2およびhCD40m3を開示している。他のCD40 mAbとは異なり、hCD40m2(ATCC HB11459;ブダペスト条約下、アメリカンタイプカルチャーコレクション、米国メリーランド州ロックビルに1993年10月6日寄託された)およびhCD40m3は、CD40に結合し、CD40Lを構成的に発現する細胞にCD40が結合するのを阻害することで、hCD40m2およびhCD40m3は、リガンド結合ドメインもしくはその近くでCD40に結合することが示されている。
【0037】
さらなるCD40モノクローナル抗体を従来の技術によって作製してもよい(米国特許第RE32,011号、4,902,614号、4,543,439号および4,411,993号(本明細書中に参考文献として援用されている)を参照;また、Monoclonal Antibodies, Hybridomas: A New Dimension in Biological Analyses, Plenum Press, Kennett, McKearnおよびBechtol編、1980,並びに、Antibodies: A Laboratory Manual, HarlowとLane編、Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988(これらも本明細書中に参考文献として援用されている)も参照していただきたい)。リガンド結合ドメインもしくはその近くでCD40に結合するモノクローナル抗体も、本発明に有用であろう。
【0038】
さらに別のCD40結合蛋白質は、組換DNA技術を利用して構築することもできる。例えば、リガンド結合ドメインもしくはその近くで結合する、CD40に対するモノクローナル抗体をコードする遺伝子の可変領域を、有用なCD40結合蛋白質に取り込ませることが可能である(Larrickら、Biotechnology 7:934,1989;Reichmanら、Nature 332:323,1988;Robertsら、Nature 328:731,1987;Verhoeyenら、Science 239:1534,1988;Chaudharyら、Nature 339:394,1989を参照)。
【0039】
簡単に述べると、CD40 mAbの抗原結合部位(即ちCD40結合ドメイン;可変領域)をコードするDNAを単離、増幅し、別の蛋白質、例えばヒトIgGをコードするDNAに連結する(Verhoeyenら、上記;Reichmannら、上記を参照)。また、抗原結合部位(可変領域)を、別の完全に異なる蛋白質に連結もしくは挿入し(Chaudharyら、上記)、完全に異なる蛋白質の機能活性とともに、抗体の抗原結合部位を持つ新たな蛋白質を得ることもできる。
【0040】
同様に、CD40リガンドのCD40結合領域(細胞外ドメイン)を用いて他のCD40結合蛋白質を調製してもよい。CD40リガンドの有用な形体は、USSN 08/477,733およびUSSN 08/484,624(共に1995年6月7日出願)に開示されている。CD40リガンドの別の形体は、当該分野において既知の方法により調製可能である。他の有用なCD40結合蛋白質と同様、CD40リガンドはリガンド結合ドメインもしくはその近くでCD40に結合し、CD40発現細胞にシグナルを伝えることができる(即ち生物学的活性のある)であろう。
【0041】
オリゴマーを形成する蛋白質もしくはペプチドをコードするDNA配列は、CD40抗体の抗原結合ドメインもしくはCD40リガンドの細胞外ドメインを含むCD40結合蛋白質の調製において特に有用であろう。ある、そのようなオリゴマー形成蛋白質は、USSN 08/477,733およびUSSN 08/484,624(共に1995年6月7日出願)に開示されている;別の有用なオリゴマー形成蛋白質は、USSN 08/446,922(1995年5月18日出願)にも開示されている。Fc融合蛋白質(Fcムテイン(mutein)で形成され、Fc受容体に対する親和性が低下したものを含む)も調製できる。
【0042】
前記のCD40結合蛋白質と実質的に同様の(即ち、天然アミノ酸配列と少なくとも80%、最も好適には最低90%同一のアミノ酸配列を有す)CD40結合蛋白質の変異型も本発明に有用であろう。配列の一致率は、例えば、GAPコンピュータープログラム、バージョン6.0(Devereuxら、Nucl.Acids Res. 12:387, 1984に記載、ウィスコンシン大学ジェネティックスコンピューターグループ(UWGCG)より入手可能)を用いて配列情報を比較することによって決定できる。GAPプログラムは、SmithとWaterman(Adv.Appl.Math. 2:482,1981)により修正されたNeedlemanとWunsch(J.Mol.Biol.48:443,1970)のアライメント法を利用している。GAPプログラムの望ましいデフォルトのパラメーターは:(1)SchwartzとDayhoff編、Atlas of Protein Sequence and Structure,National Biomedical Research Foundation,353−358頁、1979年に記載された、ヌクレオチドに対する単一の比較行列(一致に対し1を不一致に対し0の値を含む)、およびGribskovとBurgess,Nucl.Acids Res.14:6745,1986の荷重比較行列;(2)各ギャップに対する3.0のペナルティおよび各ギャップの各文字に対するさらに0.10のペナルティ;並びに(3)終末ギャップに対するペナルティなしを含む。
【0043】
一般に、有用なCD40結合蛋白質の天然型におけるものから異なるアミノ酸型への置換は、保存的になされるべきである;即ち、最も好適な置換アミノ酸とは、本発明の蛋白質が天然のCD40リガンドと実質的に等価にCD40と結合する能力に影響しない。保存的置換の例としては、結合ドメイン外のアミノ酸の置換、並びにCD40結合蛋白質の2次および/もしくは3次構造を変更しないアミノ酸置換が含まれる。更なる例としては、Ile,Val,Leu,もしくはAlaを互いに置換するように、ある脂肪族残基からの別の脂肪族残基への置換、または、LysとArg間;GluとAsp間;およびGlnとAsn間のように、ある極性残基から別の極性残基への置換が含まれる。他のそのような保存的置換、例えば、類似した疎水性特性を持つ領域全体の置換がよく知られている。
【0044】
同様に、欠失もしくは挿入法が採用された場合、生物学的活性に対する欠失もしくは挿入の潜在的効果を考慮すべきである。CD40結合蛋白質のサブユニットを、末端もしくは内部の残基もしくは配列を欠失させて構築することもできる。なされうる変異のタイプに関する別の指針は、CD40結合蛋白質の配列を同様の構造を持つ蛋白質と比較することにより提供される。
【0045】
変異は、勿論、コード配列の読み枠を保存していなければならず、CD40結合蛋白質mRNAの翻訳に不都合に働くループもしくはヘアピンなどのmRNA2次構造を作り出すようなハイブリダイゼーションをしうる相補的な領域を作り出さないことが望ましい。変異部位は予め決定できるが、変異の性質それ自体は予め決定される必要はない。例えば、ある特定部位における変異の最適な性質を選択するために、無作為変異導入を標的コドンに導入し、発現した変異蛋白質を求める活性に対してスクリーニングすることもできる。
【0046】
変異は、変異配列を含むオリゴヌクレオチド(天然の配列の断片に連結可能となるよう制限部位を隣に配置しておく)を合成することにより特定の座に導入することができる。連結後、得られる再構築された配列は、求めるアミノ酸付加、置換もしくは欠失を有す類似体をコードする。または、オリゴヌクレオチドによる部位特異的変異導入を使って、求める置換、欠失もしくは付加によって変更された特定のコドンを有す変更された遺伝子を提供することもできる。上記の変更を行う実際の方法の例については、Walderら(Gene 42:133,1986);Bauerら(Gene 37:73,1985);Craik(BioTechniques,12−19、1985年1月);Smithら(Genetic Engineering:Princples and Methods,Plenum Press,1981);並びに米国特許第4,518,584号および4,737,462号に開示されており、これらには適当な技術が開示され、本明細書中に参考文献として援用されている。
【0047】
当該分野でよく知られているように、すべての変異がアミノ酸配列の変化を生じさせるわけではない。組換蛋白質の生産に有利な特性を与える変異も、有用なCD40結合蛋白質の調製に有用であろう。天然に存在する変異型も本発明に包含される。そのような変異型の例は、mRNAの選択的スプライシングもしくは蛋白質の蛋白分解的切断から生じる蛋白質であり、そこにおいても天然の生物学的特性は保持されている。
【0048】
適当な抗体もしくは結合蛋白質が得られたなら、当該分野に熟達したものにはよく知られた多くの技術によってそれらを単離もしくは精製することができる(Antibodies:A Laboratory Manual, HarlowとLane編、Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988を参照)。適当な技術には、ペプチドもしくは蛋白質アフィニティカラム、HPLCもしくはRP−HPLC、プロテインAもしくはプロテインGカラムによる精製、または、これらの技術のいかなる組み合わせも含まれる。組換CD40結合蛋白質は、標準的方法に従って調製し、例えばELISA、ABCもしくはドットブロットアッセイを含めた当該分野において既知のアッセイを利用してCD40に対する結合特異性を試験することができる。後者は、CD40結合蛋白質の生物学的活性の評価にも有用である。
【0049】
抗原の調製
免疫は、疾患を予防もしくは改善するための病原体に対する防御的免疫応答も含め、1世紀の歴史を持つ非常に効果的な手段である。そのような誘導のために使われてきたワクチンは、生きた弱毒化された微生物、または殺された微生物標品もしくはその分画であることが一般的である。弱毒化生ワクチンは一般的に、殺された微生物もしくは病原体由来の非感染性標品から調製されるもの(即ち、トキソイド、組換蛋白質ワクチン)に比べ、自然の感染時に起こる免疫応答により近く模倣するものと考えられている。しかし、弱毒化ワクチンもまた、病原性の復活という危険性を持っており、特に免疫不調の患者には病気を起こしうる。
【0050】
衛生状況の改善にともない、免疫は、ヒトおよび動物における多くの感染症による死もしくは障害を防ぐ最も有効な手段となってきた。疑いのある集団に対する予防接種は、世界レベルでの小ポックスの根絶、そして先進国におけるジフテリア、百日咳および麻痺性ポリオなどの疾患の罹患率の劇的な現象をもたらしてきた。アデノウイルス、はしか、おたふく風邪および風疹ウイルス、並びにポリオウイルスといった生ウイルスワクチン、そしてジフテリアおよび破傷風トキソイドワクチン、並びにHaemophilus bおよび髄膜炎菌多糖ワクチンを含め、多数のワクチンのヒトへの投与が許可されている(Hinmanら、Principles and Practice of Infectious Diseases,第3版;G.L. Mandell,R.G.Douglas およびJ.E. Bennett編、Churchill Livingstone Inc.,NY,ニューヨーク;2320−2333;表2)。
【0051】
感染症の分野での利用に加え、予防接種はガンの有望な治療法としても考えられている。そのような利用法のために、例えば、Cohenら、Cancer Res.54:1055 (1994) およびCohenら、Eur.J.Immunol.24:315(1994)に記載されたようにして腫瘍細胞の粗抽出液を調製する、または抗原を部分的に精製する(例えば、Itohら、J.Immunol.153:1202;1994に記載)ことによって、腫瘍細胞から腫瘍に関連した抗原を調製することができる。さらに、有用な腫瘍抗原をさらに精製、または組み換えて発現させることで、適当な抗原標品を提供することもできる。ガンにおいてそれに対する免疫応答が有益であると考えられる抗原を同定し単離する他のいかなる方法も、本発明の方法に有用性を見出すであろう。
【0052】
精製した樹状細胞を、それから、抗原にパルス(暴露)させ、他の免疫系の細胞に提示するのに適した様式で抗原を取り込まさせる。抗原は、古典的には2種の経路で加工され提示される。細胞質画分の蛋白質に由来するペプチドはクラスI MHC分子の流れで提示され、エンドサイトーシス経路に見出される蛋白質に由来するペプチドはクラスII MHC分子の流れで提示される。しかし、当該分野に熟達したものは、例外が存在することに気づく;例えば、CD8+腫瘍特異的T細胞(MHCクラスI上に発現された外来性腫瘍抗原を認識する)の反応。MHC依存性の抗原加工およびペプチド提示に関するレビューはGermain, R.N., Cell 76:287(1994)に見出される。
【0053】
樹状細胞を抗原でパルスする多数の方法が知られている;当該分野の熟達者は選択された抗原を適当な方法で開発することを、日常の実験と見做している。一般に、細胞の生存能力が促進される条件下で培養された樹状細胞に抗原を添加し、それから細胞が抗原を取り込み加工するのに十分な時間を与え、そして約24時間(約18から約30時間、24時間が望ましい)の間に、クラスIもしくはクラスII MHCに関連して細胞表面に抗原ペプチドが発現される。樹状細胞は、抗原をコードするDNAでトランスフェクトすることによって抗原に暴露してもよい。DNAが発現し、抗原は細胞質/クラスIの経路でおそらく加工されるであろう。
【0054】
活性化され抗原パルスされた樹状細胞の投与
本発明は、活性化され抗原パルスされた樹状細胞を含む治療組成物の使用法を提供する。そのような細胞を可溶性サイトカイン受容体もしくはサイトカインまたは他の免疫制御分子と組み合わせて使用することも企図されている。本発明の組成物は、免疫応答を刺激するために投与され、巨丸注入、連続点滴、インプラントからの持続的放出、もしくは他の適当な技術によって与えられうる。典型的には、生理学的に受容可能な担体、賦形剤もしくは希釈剤とともに、抗原パルスされ活性化された樹状細胞を含む組成物の形で、本発明の方法の細胞を投与するであろう。そのような担体は、使われる薬量および濃度において受容者にとって毒性が無いであろう。中性緩衝化生理食塩水もしくは同種の血清アルブミンと混合した生理食塩水が、実際に適した希釈液である。
【0055】
あるタイプの免疫応答を刺激するのに使うにあたり、活性化され抗原パルスされた樹状細胞とともに他のサイトカインの投与も企図されている。いくつかの有用なサイトカイン(もしくはペプチド制御因子)については、Schrader, J.W.(Mol Immunol 28:295;1991)に考察されている。そのような因子としては、インターロイキン1,2,4,5,6,7,10,12および15;顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子;インターロイキン−3と顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子を含む融合蛋白質;インターフェロン−γ、TNF、TGF−β、flt−3リガンド、並びにその生物学的活性のある誘導体(これら単独もしくはその組み合わせ)が含まれる。特に望ましいサイトカインはCD40リガンド(CD40L)である。可溶化型CD40Lは、USSN 08/484,624(1995年6月7日出願)に記載されている。他のサイトカインも、本明細書中で記載されているように、有用であろう。そのようなサイトカインをコードするDNAもまた、例えば、樹状細胞にトランスフェクトしてサイトカインを発現させることによって、本発明の方法に有用であろう。これらの免疫制御分子の投与は、本発明の細胞と同時に、別々に、もしくは逐次的に投与することが含まれる。
【0056】
好ましい態様
本発明は好ましくは以下の態様を含む。
1.(a) 樹状細胞を回収し;
(b) (i)抗原の取り込みおよび加工を促進する条件下で培養中に該樹状細胞を抗原に暴露させる、もしくは(ii)該抗原をコードする遺伝子で該樹状細胞をトランスフェクトすることによって、該樹状細胞に該抗原を発現させ;そして
(c) 該抗原を発現する樹状細胞を、可溶性CD40のCD40Lへの結合を最低約90%阻害することが観察されることによって決定されるように、CD40に結合し、CD40のCD40Lへの結合を阻害することができるCD40結合蛋白質に暴露することによって、該抗原を発現する樹状細胞を活性化する
工程により産生される、抗原を発現する活性化された樹状細胞の集団。
【0057】
2.造血幹細胞もしくは始原細胞を、GM−CSF, flt3−L, IL−4, TNF−α, IL−3, c−kitリガンド, GM−CSFとIL−3の融合体、およびこれらの組み合わせからなるグループから選択される分子と接触させることによって、樹状細胞が得られる、態様1に記載の集団。
【0058】
3.CD40結合蛋白質が:
(a) SEQ ID NO:2のアミノ酸1から261,35から261,34から225,113から261,113から225,120から261もしくは120から225を含むペプチド;
(b) CD40に結合する(a)によるペプチドの断片;並びに
(c) (a)もしくは(b)のペプチドをコードするDNAに、ストリンジェントな条件下(6×SSC、63℃で一晩ハイブリダイズ;3×SSC、55℃で洗浄)でハイブリダイズするDNAにコードされ、CD40に結合するペプチド、
並びにオリゴマー形成ペプチドから成るグループから選択される、可溶性オリゴマーCD40リガンドである、態様1に記載の集団。
【0059】
4.可溶性オリゴマーCD40リガンドが:
(a) SEQ ID NO:2にあげられたアミノ酸配列を持ち、アミノ酸194のシステインが別のアミノ酸に置換されているポリペプチド;および
(b) ムテイン(a)の断片でCD40に結合するポリペプチド;
ここにおいて、アミノ酸194のシステインのかわりに置換されるアミノ酸は、トリプトファン、セリン、アスパラギン酸およびリジンからなるグループから選択される
からなるグループから選択される、態様3に記載の集団。
【0060】
5.(a) 個体から樹状細胞を回収し;
(b) (i)抗原の取り込みおよび加工を促進する条件下で培養中に該樹状細胞を抗原に暴露させる、もしくは(ii)該抗原をコードする遺伝子で該樹状細胞をトランスフェクトすることによって、該樹状細胞に該抗原を発現させ;
(c) 該抗原を発現する樹状細胞を、可溶性CD40のCD40Lへの結合を最低約90%阻害することが観察されることによって決定されるように、CD40に結合し、CD40のCD40Lへの結合を阻害することができるCD40結合蛋白質に暴露することによって、該抗原を発現する樹状細胞を活性化し;そして
(d) 該活性化され抗原を発現する樹状細胞を該個体に投与する
工程を含む、個体における抗原に対する特異的な免疫反応を刺激する方法。
【0061】
6.造血幹細胞もしくは始原細胞を該個体から回収し、該造血幹細胞もしくは始原細胞をflt−3リガンド, GM−CSF, IL−4, TNF−α, IL−3, c−kitリガンド, GM−CSFとIL−3の融合体、および、これらの組み合わせからなるグループから選択される分子と接触させることによって、樹状細胞が得られる、態様5に記載の方法。
【0062】
7.CD40結合蛋白質が:
(a) SEQ ID NO:2のアミノ酸1から261,35から261,34から225,113から261,113から225,120から261もしくは120から225を含むペプチド;
(b) CD40に結合する(a)によるペプチドの断片;並びに
(c) (a)もしくは(b)のペプチドをコードするDNAに、ストリンジェントな条件下(6×SSC、63℃で一晩ハイブリダイズ;3×SSC、55℃で洗浄)でハイブリダイズするDNAにコードされ、CD40に結合するペプチド、
並びにオリゴマー形成ペプチドから成るグループから選択される、可溶性オリゴマーCD40リガンドである、態様6に記載の方法。
【0063】
8.可溶性オリゴマーCD40リガンドが:
(a) SEQ ID NO:2にあげられたアミノ酸配列を持ち、アミノ酸194のシステインが別のアミノ酸に置換されているポリペプチド;および
(b) ポリペプチド(a)の断片でCD40に結合するポリペプチド;
ここにおいて、アミノ酸194のシステインのかわりに置換されるアミノ酸は、トリプトファン、セリン、アスパラギン酸およびリジンからなるグループから選択される
からなるグループから選択される、態様7に記載の集団。
【0064】
9.該個体の血中の始原細胞数を増大させるため、flt−3リガンドが樹状細胞回収前に該個体に投与される、態様5に記載の方法。
10.造血幹細胞もしくは始原細胞を該個体から回収し、該造血幹細胞もしくは始原細胞をflt−3リガンド,GM−CSF,IL−4,TNF−α,IL−3,c−kitリガンド, GM−CSFとIL−3の融合体、およびこれらの組み合わせからなるグループから選択される分子と接触させることによって、樹状細胞が得られる、態様9に記載の方法。
【0065】
11.抗原を発現し、活性化された樹状細胞が、インターロイキン1,2,3,4,5,6,7,10,12および15;顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子;インターロイキン−3および顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子を含む融合蛋白質;インターフェロン−γ;TNF;TGF−β;flt−3リガンド;可溶性CD40リガンド;可溶性CD83;これらサイトカインの生物学的活性のある誘導体;並びにこれらの組み合わせからなるグループから選択される分子と、同時に、逐次的に、または別々に投与される、態様5に記載の方法。
【0066】
12.CD40結合蛋白質が:
(a) SEQ ID NO:2のアミノ酸1から261,35から261,34から225,113から261,113から225,120から261もしくは120から225を含むペプチド;
(b) CD40に結合する(a)によるペプチドの断片;
(c) (a)もしくは(b)のペプチドをコードするDNAに、ストリンジェントな条件下(6×SSC、63℃で一晩ハイブリダイズ;3×SSC、55℃で洗浄)でハイブリダイズするDNAにコードされ、CD40に結合するペプチド;
(d) (a)によるポリペプチドで、アミノ酸194のシステインが、トリプトファン、セリン、アスパラギン酸およびリジンからなるグループから選択される別のアミノ酸に置換されている当該ポリペプチド;並びに
(e) ポリペプチド(d)の断片でCD40に結合する当該断片;
並びにオリゴマー形成ペプチドから成るグループから選択される、可溶性オリゴマーCD40リガンドである、態様9に記載の方法。
【0067】
13.CD40結合蛋白質が:
(a) SEQ ID NO:2のアミノ酸1から261,35から261,34から225,113から261,113から225,120から261もしくは120から225を含むペプチド;
(b) CD40に結合する(a)によるペプチドの断片;
(c) (a)もしくは(b)のペプチドをコードするDNAに、ストリンジェントな条件下(6×SSC、63℃で一晩ハイブリダイズ;3×SSC、55℃で洗浄)でハイブリダイズするDNAにコードされ、CD40に結合するペプチド;
(d) (a)によるポリペプチドで、アミノ酸194のシステインが、トリプトファン、セリン、アスパラギン酸およびリジンからなるグループから選択される別のアミノ酸に置換されている当該ポリペプチド;並びに
(e) ポリペプチド(d)の断片でCD40に結合する当該断片;
並びにオリゴマー形成ペプチドから成るグループから選択される、可溶性オリゴマーCD40リガンドである、態様10に記載の方法。
【0068】
14.CD40結合蛋白質が:
(a) SEQ ID NO:2のアミノ酸1から261,35から261,34から225,113から261,113から225,120から261もしくは120から225を含むペプチド;
(b) CD40に結合する(a)によるペプチドの断片;
(c) (a)もしくは(b)のペプチドをコードするDNAに、ストリンジェントな条件下(6×SSC、63℃で一晩ハイブリダイズ;3×SSC、55℃で洗浄)でハイブリダイズするDNAにコードされ、CD40に結合するペプチド;
(d) (a)によるポリペプチドで、アミノ酸194のシステインが、トリプトファン、セリン、アスパラギン酸およびリジンからなるグループから選択される別のアミノ酸に置換されている当該ポリペプチド;並びに
(e) ポリペプチド(d)の断片でCD40に結合する当該断片;
並びにオリゴマー形成ペプチドから成るグループから選択される、可溶性オリゴマーCD40リガンドである、態様11に記載の方法。
【0069】
15.(a) 個体から樹状細胞を回収し;
(b) (i)抗原の取り込みおよび加工を促進する条件下で培養中に該樹状細胞を抗原に暴露させる、もしくは(ii)該抗原をコードする遺伝子で該樹状細胞をトランスフェクトすることによって、該樹状細胞に該抗原を発現させ;
(c) 該抗原を発現する樹状細胞を、可溶性CD40のCD40Lへの結合を最低約90%阻害することが観察されることによって決定されるように、CD40に結合し、CD40のCD40Lへの結合を阻害することができるCD40結合蛋白質に暴露することによって、該抗原を発現する樹状細胞を活性化し;そして
(d) T細胞に対して該樹状細胞に該抗原を提示させる
工程を含む、個体から抗原特異的T細胞を調製する方法。
【0070】
16.抗原特異的T細胞が、該個体から回収され、抗原提示樹状細胞にex vivoで暴露され、そして該個体に再投与される、態様15に記載の方法。
17.CD40結合蛋白質が:
(a) SEQ ID NO:2のアミノ酸1から261,35から261,34から225,113から261,113から225,120から261もしくは120から225を含むペプチド;
(b) CD40に結合する(a)によるペプチドの断片;
(c) (a)もしくは(b)のペプチドをコードするDNAに、ストリンジェントな条件下(6×SSC、63℃で一晩ハイブリダイズ;3×SSC、55℃で洗浄)でハイブリダイズするDNAにコードされ、CD40に結合するペプチド;
(d) (a)によるポリペプチドで、アミノ酸194のシステインが、トリプトファン、セリン、アスパラギン酸およびリジンからなるグループから選択される別のアミノ酸に置換されている当該ポリペプチド;並びに
(e) ポリペプチド(d)の断片でCD40に結合する当該断片;
並びにオリゴマー形成ペプチドから成るグループから選択される、可溶性オリゴマーCD40リガンドである、態様15に記載の方法。
【0071】
18.CD40結合蛋白質が:
(a) SEQ ID NO:2のアミノ酸1から261,35から261,34から225,113から261,113から225,120から261もしくは120から225を含むペプチド;
(b) CD40に結合する(a)によるペプチドの断片;
(c) (a)もしくは(b)のペプチドをコードするDNAに、ストリンジェントな条件下(6×SSC、63℃で一晩ハイブリダイズ;3×SSC、55℃で洗浄)でハイブリダイズするDNAにコードされ、CD40に結合するペプチド;
(d) (a)によるポリペプチドで、アミノ酸194のシステインが、トリプトファン、セリン、アスパラギン酸およびリジンからなるグループから選択される別のアミノ酸に置換されている当該ポリペプチド;並びに
(e) ポリペプチド(d)の断片でCD40に結合する当該断片;
並びにオリゴマー形成ペプチドから成るグループから選択される、可溶性オリゴマーCD40リガンドである、態様16に記載の方法。
【0072】
19.(a) 個体から樹状細胞を回収し;
(b) (i)抗原の取り込みおよび加工を促進する条件下で培養中に該樹状細胞を抗原に暴露させる、もしくは(ii)該抗原をコードする遺伝子で該樹状細胞をトランスフェクトすることによって、該樹状細胞に該抗原を発現させ;
(c) 該抗原を発現する樹状細胞を、可溶性CD40のCD40Lへの結合を最低約90%阻害することが観察されることによって決定されるように、CD40に結合し、CD40のCD40Lへの結合を阻害することができるCD40結合蛋白質に暴露することによって、該抗原を発現する樹状細胞を活性化し;そして
(d) T細胞に対して該樹状細胞に該抗原を提示させる
工程によって産生される抗原特異的T細胞の集団。
【0073】
20.CD40結合蛋白質が:
(a) SEQ ID NO:2のアミノ酸1から261,35から261,34から225,113から261,113から225,120から261もしくは120から225を含むペプチド;
(b) CD40に結合する(a)によるペプチドの断片;
(c) (a)もしくは(b)のペプチドをコードするDNAに、ストリンジェントな条件下(6×SSC、63℃で一晩ハイブリダイズ;3×SSC、55℃で洗浄)でハイブリダイズするDNAにコードされ、CD40に結合するペプチド;
(d) (a)によるポリペプチドで、アミノ酸194のシステインが、トリプトファン、セリン、アスパラギン酸およびリジンからなるグループから選択される別のアミノ酸に置換されている当該ポリペプチド;並びに
(e) ポリペプチド(d)の断片でCD40に結合する当該断片;
並びにオリゴマー形成ペプチドから成るグループから選択される、可溶性オリゴマーCD40リガンドである、態様19に記載の集団。
【実施例】
【0074】
本明細書中にあげた全ての出版物の関連開示は、参考文献として取り入れられている。以下の実施例は本発明の特定の態様の例示を提供するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0075】
実施例1
本実施例は、精製された樹状細胞をex vivoで作製する方法を記載する。ヒト骨髄を入手し、CD34+表現型を有す細胞をCD34抗体カラム(CellPro, Bothell, ワシントン州)を用いて分離する。CD34+細胞を、適当な培地、例えば、マッコイのエンハンス培地(McCoy’s enhanced media)(樹状細胞の増殖を促進するサイトカイン(即ち、GM−CSF, IL−4, TNF−αをそれぞれ20ng/ml、または、100ng/mlのflt3−Lもしくはc−kitリガンド、またはそれらの組み合わせ)を含む)で培養する。37℃、10% CO2、湿気でおよそ2週間培養し続ける。それから細胞を、CD1a+, HLA−DR+ およびCD86+に対する抗体を使ってフローサイトメトリーによりソートする。GM−CSF, IL−4およびTNF−αの組み合わせは、2週間の培養後、細胞数を6から7倍に増加させることができ、その内50−80%がCD1a+ HLA−DR+ CD86+である。flt3−Lおよび/もしくはc−kitリガンドの添加は、総細胞の増加、従って、樹状細胞の増加をさらに昂進する。こうした条件下で分離し培養した細胞の表現型分析は、細胞の60−70%がHLA−DR+ CD86+(試験した全ての因子の組み合わせにおいてCD1aを発現する細胞の40−50%)である。
【0076】
実施例2
本発明は、樹状細胞を回収し増幅させるための方法を記載する。細胞回収前に、flt3−Lもしくはサルグラモスチン(Leukine(登録商標),Immunex Corporation,ワシントン州シアトル)を個体に投与し血中のPBPCおよびPBSCの数を変動もしくは増加させることができる。CSF−1,GM−CSF,c−kitリガンド,G−CSF,EPO,IL−1,IL−2,IL−3,IL−4,IL−5,IL−6,IL−7,IL−8,IL−9,IL−10,IL−11,IL−12,IL−13,IL−14,IL−15,GM−CSF/IL−3融合蛋白質,LIF,FGFおよびその組み合わせなどの他の増殖因子を、flt3−Lと連続的にもしくは同時に組み合わせて、同様に投与することができる。
【0077】
動化もしくは非動化したPBPCおよびPBSCを、当該分野で既知のapheresis操作を用いて回収する。例えば、Bishopら、Blood, 83巻、2号、610−616頁(1994年)を参照していただきたい。簡単に述べると、PBPCおよびPBSCを従来の器具、例えばHaemonetics モデルV50 aphresis device(Haemonetics, マサチューセッツ州ブレインツリー)を用いて回収する。典型的には、およそ6.5×108単核球(MNC)/kg個体が回収されるまで、週5回以下で4時間回収を行う。
【0078】
回収されたPBPCおよびPBSCのアリコットを顆粒球−マクロファージコロニー形成単位(CFU−GM)量についてアッセイする。簡単に述べると、MNC(およそ300,000)を分離し、十分な湿度のもと、37℃、5%CO2で、改変されたマッコイの5A培地(0.3%寒天、200U/ml組換ヒトGM−CSF、200U/ml組換ヒトIL−3および200U/ml組換ヒトG−CSFを含む)中で約2週間培養する。flt3−LもしくはGM−CSF/IL−3融合分子(PIXY 321)を含め、他のサイトカインを培養液に添加してもよい。これらの培養液をWright染色液で染め、CFU−GMコロニーを解剖顕微鏡を用いて計測する(Wardら、Exp.Hematol.,16:358(1988))。また、CFUーGMコロニーは、Sienaら、Blood,77巻、2号、400−409頁、1991年のCD34/CD33フローサイトメトリー法、または当該分野で既知のいかなる他の方法を用いてアッセイしてもよい。
【0079】
CFU−GMを含む培養液を、レート制御フリーザー(例、Cryo−Med,ミズーリ州マウントクレメンス)で凍らせ、それから液体窒素の蒸気相中で保存する。10%ジメチルスルホキシドを凍結防止剤として使用してもよい。個体から全ての回収作業がなされた後、CFU−GMを含む培養液を融解し、プールし、それからflt3−Lと、上記にあげた他のサイトカインとを別々に、逐次的にもしくは同時に組み合わせて接触させ、CFU−GMを樹状細胞系列へと誘導する。樹状細胞は、培養され、上記の選択マーカーを発現する細胞の割合について分析される。
【0080】
実施例3
本実施例は、CD40L刺激された樹状細胞が同種抗原を提示し、従ってT細胞の増殖をもたらす能力を例示する。CD34+細胞をヒトドナーの骨髄から得て、選択されたサイトカインの存在下で2週間培養し、実質的に実施例1に記載したようにしてフローサイトメトリーにより分離した。混合リンパ球反応液(MLR)中でそれらを使う前に、樹状細胞の増殖を助けるサイトカインを含むマッコイのエンハンス培地中で、CD40Lの可溶性3量体の存在下(1μg/ml)もしくは非存在下で樹状細胞をさらに24時間培養した。
【0081】
HLA不一致のドナーの血液から、2−アミノメチルイソチオイロニウム ブロマイド ヒドロブロマイド処理した羊赤血球でロゼット化させることによって、T細胞を精製した。CD4+およびCD8+集団を、MACS(Milenyi Biotec, カリフォルニア州サニーベール)を用いて業者の指示にしたがって免疫磁気選択によりさらに精製した。滴定された数の樹状細胞の存在下で、RPMI(10%加熱不活化されたウシ胎児血清を含む)中で、37℃、10%CO2下で、精製したT細胞に対して細胞増殖アッセイを行った。ウェルあたりおよそ1×105のT細胞を、丸底96穴ミクロタイタープレート(Corning)で3重にして、様々な数の不一致樹状細胞の存在下で、7日間培養した。トリチウムラベルしたチミジン(25Ci/nmole,アマシャム、イリノイ州アーリントンハイツ)1μCi/ウェルで培養の最後の8時間、細胞をパルスした。
【0082】
細胞を自動細胞回収器でグラスファーバーディスク上に回収し、取り込まれたcpmを液体シンチレーションスペクトロメトリーで計測した。結果は、図1に示してあるが、MLRに使用する前にCD40L暴露しなかったものに比べ、CD40L活性化した樹状細胞は、T細胞を同等に増殖刺激するのに要する量が3倍少なかったことが示された。この増加は、同種反応性T細胞を刺激する細胞表面分子の発現の増加によるものと思われた。
【0083】
実施例4
本実施例は、樹状細胞が抗原特異的にT細胞の増殖を刺激する能力を例示する。CD34+細胞を、破傷風トキソイドに対して反応すると考えられるヒトドナーの骨髄から採取し、選択されたサイトカインの存在下で2週間培養し、実質的に実施例1に記載したようにしてフローサイトメトリーによって分離した。これらを破傷風トキソイド(TTX)抗原提示アッセイに使用する前に、樹状細胞の増殖を助けるサイトカインを含むマッコイのエンハンス培地中で、CD40Lの可溶性3量体の存在下(1μg/ml)もしくは非存在下で樹状細胞をさらに24時間培養し、それから精製したTTX(Connaught Laboratory Inc., ペンシルバニア州スイフトウォーター)で、37℃、10%CO2下で24時間パルスした。
【0084】
自己由来の破傷風トキソイド反応性T細胞は、精製したTTXおよび低濃度のIL−2およびIL−7(それぞれ、2ng/mlおよび5ng/ml)存在下で、CD34抗体カラムから溶出したCD34−細胞を2週間培養することによって誘導した。CD34−集団は、抗原提示細胞として作用する他のタイプの細胞以外に、T細胞(その一部は破傷風トキソイドに反応する)をある割合(約5%)だけ含んでいる。2週目までには、これらの細胞の分析から、約90%がT細胞で、その大勢が破傷風トキソイド特異的で、T細胞活性化マーカーは低レベルになっていることが示された。
【0085】
抗原特異的T細胞増殖アッセイは、10%加熱不活化されたウシ胎児血清を添加したRPMI中で、37℃、10%CO2下で、破傷風トキソイドパルスされた樹状細胞の存在下で、上記CD34−骨髄細胞からのTTX特異的T細胞について行われた。ウェルあたりおよそ1×105のT細胞を、丸底96穴ミクロタイタープレート(Corning)で3重にして、滴定された数の樹状細胞の存在下で、5日間培養した。トリチウムラベルしたチミジン(25Ci/nmole,アマシャム、イリノイ州アーリントンハイツ)1μCi/ウェルで培養の最後の4から8時間、細胞をパルスした。細胞を自動細胞回収器でグラスファーバーディスク上に回収し、取り込まれたcpmを液体シンチレーションスペクトロメトリーで計測した。結果は、図2に示してあるが、CD40Lとともに培養した樹状細胞は、CD40L暴露しなかった樹状細胞に比べ、TTX特異的T細胞に対する抗原提示効率が約10倍低いことが示された。
【0086】
実施例5
本実施例は、CD40Lが、抗原パルスされた樹状細胞の抗原特異的T細胞の刺激を活性化する能力について例示する。CD34+細胞を実施例4に記載したようにして回収し、処理をした。但し、CD40Lとともに培養する前に破傷風トキソイドで24時間パルスした。自己由来の破傷風トキソイド反応性T細胞の誘導、および抗原特異的T細胞増殖アッセイは、実施例4に記載されたようにして行った。結果は、図3に示してあるが、最初に抗原でパルスし、それからCD40Lで培養した樹状細胞は、抗原でパルスしたがCD40L暴露しなかった樹状細胞に比べ、TTX特異的T細胞にTTXを提示した際に同等の増殖刺激を与えるのに要する量が、3倍少なかったことが示された。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】図1は、同種(allo)抗原T細胞増殖アッセイの結果を表し、MLR(混合リンパ球反応液)中でその使用前に樹状細胞をCD40Lとともにインキュベートすると、樹状細胞のT細胞増殖刺激能を約3倍増加させることを示している(実施例3に記載)。
【図2】図2は、CD40Lとともに培養した樹状細胞が、CD40Lに暴露されていない樹状細胞に比べ、抗原特異的T細胞に対する抗原提示に関して効果的でないことを例示する(実施例4に記載)。
【図3】図3は、最初に抗原でパルスされ、次にCD40Lとともに培養された樹状細胞が、抗原でパルスされたがCD40Lに暴露されていない樹状細胞に比べ、抗原特異的T細胞に対する抗原提示に関して効果的であることを例示する(実施例5に記載)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) (i)抗原の取り込みおよび加工を促進する条件下で培養中に該樹状細胞を抗原に暴露させる、もしくは(ii)該抗原をコードする遺伝子で該樹状細胞をトランスフェクトすることによって、該樹状細胞に該抗原を発現させ;そして
(b) 該抗原を発現する樹状細胞を、CD40に結合できるCD40結合タンパク質に暴露することによって、該抗原を発現する樹状細胞を活性化する
工程により産生される、抗原を発現する活性化された樹状細胞の集団であって、
ここにおいて、前記CD40結合タンパク質は、CD40抗体、あるいは、CD40結合ペプチド及びオリゴマ形成ペプチドを含む、可溶性オリゴマーCD40リガンドであって、そして、CD40結合ペプチ緒は、以下の:
(i) SEQ ID NO:2のアミノ酸1から261,35から261,34から225,113から261,113から225,120から261もしくは120から225を含むペプチド;
(ii) CD40に結合する、(i)のペプチドの断片;並びに
(iii) (i)もしくは(ii)のペプチドをコードするDNAに、ストリンジェントな条件下(6×SSC、63℃で一晩ハイブリダイズ;3×SSC、55℃で洗浄)でハイブリダイズするDNAにコードされ、CD40に結合するペプチド
から成るグループから選択される、
前記集団。
【請求項2】
CD40結合蛋白質が、CD40のCD40Lへの結合を少なくとも90%阻害することができる、請求項1に記載の集団。
【請求項3】
造血幹細胞もしくは始原細胞を、GM−CSF,flt3−L,IL−4,TNF−α,IL−3,c−kitリガンド,GM−CSFとIL−3の融合体、およびこれらの組み合わせからなるグループから選択される分子と接触させることによって、樹状細胞が得られる、請求項1又は2に記載の集団。
【請求項4】
CD40結合タンパク質が:
(a) SEQ ID NO:2に記載されたアミノ酸配列を持ち、アミノ酸194のシステインが別のアミノ酸に置換されているポリペプチド;および
(b) ポリペプチド(a)の断片でCD40に結合するポリペプチド;
ここにおいて、アミノ酸194のシステインのかわりに置換されるアミノ酸は、トリプトファン、セリン、アスパラギン酸およびリジンからなるグループから選択される
からなるグループから選択される、請求項3に記載の集団。
【請求項5】
前記(a)の樹状細胞が、工程(a)および(b)の前にflt−3リガンドで処理されている、請求項1−4のいずれか1項の集団。
【請求項6】
免疫応答を刺激するための治療組成物の調製ための、請求項1−5のいずれか1項の活性化された樹状細胞の集団の使用。
【請求項7】
インターロイキン1,2,3,4,5,6,7,10,12および15;顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子;インターロイキン−3および顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子を含む融合蛋白質;インターフェロン−γ;TNF;TGF−β;flt−3リガンド;可溶性CD40リガンド;可溶性CD83;これらサイトカインの生物学的活性のある誘導体;並びにこれらの組み合わせからなるグループから選択される分子と組み合わせである、請求項6の使用。
【請求項8】
請求項1−5のいずれか1項の活性化された樹状細胞の集団を含む、免疫応答を刺激するための治療組成物
【請求項9】
インターロイキン1,2,3,4,5,6,7,10,12および15;顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子;インターロイキン−3および顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子を含む融合蛋白質;インターフェロン−γ;TNF;TGF−β;flt−3リガンド;可溶性CD40リガンド;可溶性CD83;これらサイトカインの生物学的活性のある誘導体;並びにこれらの組み合わせからなるグループから選択される分子と投与される、請求項8の治療組成物。
【請求項10】
抗原特異的T細胞を調製する方法であって、
(a)請求項1−5のいずれか1項の活性化された樹状細胞の集団を提供し;そして
(b)活性化された樹状細胞がT細胞へex vivoで抗原を提示することを可能にする
工程を含む、前記方法。
【請求項11】
請求項10の方法により得られるT細胞の集団。
【請求項12】
請求項10のT細胞の集団の、免疫応答を刺激するための治療組成物の調製のための使用。
【請求項13】
請求項11のT細胞の集団を含む、免疫応答を刺激するための治療組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−119004(P2008−119004A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327480(P2007−327480)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【分割の表示】特願平10−505349の分割
【原出願日】平成9年7月9日(1997.7.9)
【出願人】(591123609)イミュネックス・コーポレーション (24)
【氏名又は名称原語表記】IMMUNEX CORPORATION
【Fターム(参考)】