説明

樹状高分子量ポリマー薬物担体および特に固形腫瘍の処置のための薬物とのそれらの結合体

本発明は、アミドアミン及び2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸タイプのデンドリマーから誘導され、そのアミノ末端基及びヒドロキシ末端基がN−(2ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)のセミテレケリックコポリマーに生分解性スペーサーを介して連結している、水溶性高分子量ポリマー薬物担体、及び薬物とのその結合体に関する。ポリマー担体及び結合体は、固形腫瘍中への特に抗癌剤の標的輸送を可能にし、生分解、付随する制御薬物放出、及びそれに続く生物体からのポリマー担体の排出が提供される。ヒト腫瘍の標的療法に使用するための抗癌剤と複合化されたポリマー担体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形腫瘍中への抗腫瘍薬物の標的化輸送、生分解、付随する制御薬物放出及びそれに続く生物体からのポリマー担体の排出を可能にする、水溶性高分子量(high−molecular−weight:HMW)樹状ポリマー薬物担体、及び薬物とのその結合体(conjugate)に関する。抗癌剤(cancerostatic)と結結合体化されたポリマー担体の作用は、ヒト腫瘍の標的療法を目標とする。
【背景技術】
【0002】
最近、薬剤開発は、主に必要な治療効果の部位における活性物質の標的化作用を可能にする剤形の探索をますます目標とするようになった。標的化された活性型の薬物は、その副作用が生物体の健常な部分の損傷を招くおそれがある物質と一緒に適用される。この話題の最大の懸念は、健常な組織及び器官を損傷し、細胞増殖抑制剤による処置を受けている患者を危険にさらすことである。薬物の標的化輸送用担体としてのポリマー材料、特に水溶性ポリマーの利用は、上記問題の重要な解決候補の一つである。共有結合による水溶性ポリマーへの細胞増殖抑制剤の連結(attachment)は、水溶性の乏しい薬物の溶解性をかなり高めることができ、その毒性を顕著に低下させることができる。ポリマー−薬物結合体の分子量は、糸球体ろ過による生物体からの薬物の急速な排出を防止し、したがってその血中循環時間及び生物体におけるその全滞留時間をかなり延長し、したがって薬物の生物学的利用能を高める。さらに、ポリマー結合体の高分子量は、高められた透過性及び保持(enhanced permeability and retention:EPR)の効果に起因して、固形腫瘍におけるその蓄積を増加させる[非特許文献1(Maeda 2000)]。
【0003】
抗癌剤がポリマー担体に連結すると、この効果を腫瘍におけるその標的蓄積に利用することができる。過去20年間に、EPR効果をポリマーミセル、リポソームまたは水溶性ポリマー結合体などの薬物のターゲティングに利用することに基づく幾つかの系が開発された。ポリマーミセルは、可溶性ポリマー系とは対照的に、通常、コロイド溶液を形成するHMW構造中に両親媒性ジブロックコポリマーを構築することによって調製される。薬物は、大部分はその疎水性コアにおいて物理的(疎水性)相互作用又は共有結合によってミセルに連結する[非特許文献2(Kataoka 2001)、非特許文献3(Bae 2003)、非特許文献4(Bronich 1999)]。固形腫瘍に蓄積する可溶系ミセルとは対照的に、ポリマーは、水性媒体中に分子的に分散し、通常はランダムコイル形状をとり、薬物は親水性ポリマーに接する。酵素加水分解又は一般的な化学加水分解しやすい加水分解的に不安定なイオン結合又は共有結合によって薬物が連結された、抗癌剤と可溶性ポリマーの多数のタイプの結合体が研究された。上記系は、抗癌剤をその活性な形で腫瘍組織において、又は特異的な方法で直接腫瘍細胞においても、放出することができる。水溶性の系のうち、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)コポリマーに基づいて調製されたポリマー結合体は、最も重要なものに属する。その幾つかは、連結されたターゲティング構造(抗体、ホルモン及びオリゴペプチド)によって腫瘍中に能動的に向けられる。[非特許文献5(Duncan 1985)、非特許文献6(Rihova 2000)、非特許文献7(Kopecek 2001)、非特許文献8(Mrkvan 2005)]。
【0004】
ヒト用の医薬品における薬物担体としてのHPMAコポリマーの使用を妨げる主な欠点の一つは、その切断できない炭素鎖であり、分子量のポリマー担体の調製に利用可能な関連する分子量制限が40000〜50000よりも低い(生物体の腎閾値未満の)分子量であることである。高分子量ポリマーは、生物体から効果的かつ十分に排出されず、したがって薬物としてのその使用は生物体内でのその蓄積を招く。明白なEPR効果、すなわち固形腫瘍における蓄積が多い場合、排除限界をはるかに超えた分子量を有する(HPMAコポリマーを含めた)ポリマーを処理する必要がある[非特許文献9(Seymour 1995)、非特許文献10(Noguchi 1998)]。したがって、ポリマー担体の分子量は十分に高いが、そのポリマーは有効成分の放出後に、例えば糸球体ろ過によって生物体から排出することができる断片へと分解できることが重要である。最近、本発明者らは、HPMAポリマーを使用した薬物の構造及び生物活性、並びに腎臓ろ過限界よりも高い分子量とのその関連を特許化した。これらは、抗癌剤が共有結合によってポリマーに連結した、HPMAコポリマーに基づくグラフトポリマー担体[Etrych特許CZ298945B6、非特許文献11(Etrych 2008)]及びポリマーミセル[Chytil特許CZ PV2006−207]であった。この共有結合は酵素的に又は単に加水分解的に不安定であり、恐らくは、ポリマー鎖は、生分解性の酵素的に及び/又は還元的に切断可能なスペーサー、すなわちオリゴペプチドGlyPheLeuGly又はジスルフィド架橋を介してグラフト構造に結合した。抗癌剤ドキソルビシン(Dox)を有効成分として含む系の利点は、マウスモデルにおいて確認された、同じ薬物を含む元のポリマー系と比較して高められた抗腫瘍活性であった。上記系の欠点は、比較的広い分子量分布(3から4の多分散性指数I)であり、したがって200000g/molを超える高分子量を得る可能性が限られた十分に規定されていない系である。本発明の主題は、分子量分布が狭く(I約1.5〜2.5)、腫瘍における細胞増殖抑制剤の高い蓄積と細胞内分解後に生物体からポリマー担体が排出されることを特徴とする規定された生分解性骨格を有する、新しいHMWポリマー薬物の構造及び合成である。その構造は、樹状中心部から発し、共有結合的に連結した薬物を含むポリマーグラフトを樹状分枝上に有する。グラフト数及びそのサイズを選択することによって、高分子量のポリマー(最高1400000g/mol)を得ることができる。類似の系は以前に記述されており[Wang 2000]、記述された系、本発明の主題の系、及び以前に発表された系の主要な相違は、以前に記述された系が、簡単に分解可能なポリマー骨格を持たず、薬物が酵素分解性のGlyPheLeuGlyオリゴペプチド配列のみを介して連結している点にある。デンドリマー分枝端部の修飾のために、ポリ(エチレングリコール)(PEG)[非特許文献12(Gajbhiye 2009)、非特許文献13(Bai 2009)]がしばしば使用された。これらの系におけるPEGの主要な役割は、デンドリマーの潜在的に有毒なアミノ基を妨害することであり、ここではPEGは生物活性分子の担体としては働かない。前述の場合と同様に、この系は生分解性ではない。それらが生物体に蓄積するべきでない場合、その利用は、50000g/molまでの低分子量に限られる。
【0005】
デンドリマーと他の、しばしば生分解性のポリマーの併用は、特許文献に記載されている。ポリ(アミノ酸)は、デンドリマー−ポリ(アミノ酸)結合体の調製に使用され[Li特許WO03055935]、ここで、この結合体は、デンドリマー開始剤を用いてαアミノ酸のN−カルボキシ無水物の重合によって調製された。この場合、ポリ(アミノ酸)グラフトは、かなりの負電荷(ポリ(グルタミン酸)及びポリ(アスパラギン酸))、正電荷(ポリアルギニン、ポリヒスチジン、ポリリジン)を帯びるか、又は疎水性であり、したがって体液に不溶である。薬物、例えばパクリタキセルは、共有結合性エステル結合を介してこのポリマーに結合する。系表面の高電荷密度又はそのかなりの疎水性及び不溶性のために、種々の組織との望ましくない相互作用及び生物体(例えば、腎臓)内の蓄積が起こり得る。これは、例えば、負に帯電したポリ(アミノ酸)で典型的である[非特許文献14(Rypacek 1982)]。生分解性スペーサーのない共有結合性エステル結合による薬物とポリマーの連結は、本来の活性型の薬物の放出を保証しない。ポリ(アミノ酸)グラフトを利用した系においては、ポリ(グルタミン酸)の部分的分解のみが確認され、ここでは必ずしも生物活性ではない、薬物の広範な低分子量断片及びアミノ酸誘導体の切断が起こる。かかる系の分解は、カテプシンBを含むモデル系においてのみ文献に記述され、in vivoでのその分解に関するデータは不十分である。
【0006】
本発明による系の利点は、HPMAコポリマーに基づく、生物体と相互作用しない不活性無電荷水溶性ポリマーによって形成されるポリマーグラフトであり、薬物はこのポリマーグラフトに対して細胞内分解性スペーサーを介して連結し、標的細胞及び組織における活性薬物の制御放出が可能である。本発明による系の別の利点は、糸球体ろ過によって生物体から排出することができる不活性水溶性HPMAコポリマーのポリマー生成物への担体骨格の明確に証明された細胞内還元又は酵素分解である。したがって、抗癌剤を腫瘍部位に輸送した後に生物体からHMWポリマー担体が排出されることが保証される。
【0007】
文献では、ポリ[N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド]、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(エチレングリコールメタクリレート、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリアクリル酸、ポリ(メタクリル酸、ポリ(2−アミノエチルメタクリレート]、ポリ[N−(3−アミノプロピル)メタクリルアミド]及びポリ[2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート]の親水性鎖が線状又は星形のポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D−ラクチド)、ポリ(DL−ラクチド)及びポリ(グリコール酸)に連結した他の系が記載されている[Lele特許US7018655]。著者らは、こうして調製された系がHMW系を形成し、薬物輸送に利用可能であることを示す。この系は、例えば疎水性ポリ(ε−カプロラクトン)及びHPMAベースのポリマーを含む、その構造の両親媒性のために、溶液中でミセル又はナノ粒子を形成する。次いで、これらの系中の薬物は、この系の疎水性コア上で、疎水性相互作用によって吸収され、外的条件に依存して薬物を制御放出を可能にできず、輸送の過程で薬物放出を防止することができない。さらに、この系は、ほとんどの場合、特許[Li特許WO03055935]に記載の系の問題に類似した問題、すなわち表面電荷及び生物体における望ましくない相互作用を抱える。
【0008】
上記系とは対照的に、すなわち、本発明によれば、凝集の可能性なしに、水及び体液に可溶であり、生分解性スペーサーを介して連結した薬物を有し、標的細胞又は腫瘍組織における薬物の制御放出を可能にする。
【0009】
文献では、例えば消炎薬用の、ポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマーを担体として利用する系も記述されており[Kurtoglu 2009]、ここでは、薬物(N−アセチルシステイン)は、還元的に切断可能なジスルフィド架橋を介してデンドリマーに結合する。この系においては、PAMAMデンドリマーが担体として働く。したがって、PAMAMに起因して、腫瘍組織中への受動的ターゲティングに重要である高分子量を得ることが困難である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Maeda, H., J. Wu, T. Sawa, Y. Matsumura, and K. Hori, Tumor vascular permeability and the EPR effect in macromolecular therapeutics: a review. J Controlled Release 65:271−284 (2000)
【非特許文献2】Kataoka, K.; Harada, A.; Nagasaki, Y. Adv. Drug Delivery Rev. 47, 113−131 (2001)
【非特許文献3】Bae, Y. S.; Fukushima, S.; Harada, A.; Kataoka, K. pH responsive drug−loaded polymeric micelles: Intracellular drug release correlated with in vitro cytotoxicity on human small cell lung cancer SBC−3. Winter Symposium and 11th International Symposium on Recent Advances in Drug Delivery Systems. Salt Lake City, Utah, U.S.A. 2003. Salt Lake City, Utah, U.S.A.
【非特許文献4】Bronich, T. K.; Nehls, A.; Eisenberg, A.; Kabanov, V. A.; Kabanov, A. V. Colloids Surf. B 16, 243−251 (1999)
【非特許文献5】Duncan, R., Lloyd, J.B., J. Kopecek, P. Rejmanova, J. Strohalm, K. Ulbrich, B. Rihova, V. Chytry: Synthetic Polymeric Drugs (1985). Patent CZ 0095/85, Australia 589587, Canada 130053, Denmark 164485, Europe 0187547, US 5,037,883, Japan 000137/86
【非特許文献6】B. Rihova, M. Jelinkova, J. Strohalm, V. Subr, D. Plocova, O. Hovorka, M. Novak, D. Plundrova, Y. Germano, K. Ulbrich, Polymeric Drugs Based on Conjugates of Synthetic and Natural Macromolecules II. Anti−cancer Activity of antibody or (Fab’)2−targeted Conjugates and Combined Therapy with Immunomodulators. J. Controlled Release. 64, 241−261 (2000)
【非特許文献7】Kopecek, J., Kopeckova, P., Minko, T., Lu, Z.R., Peterson, C.M.; ”Water soluble polymers in tumor targeted delivery”. J. Controlled Release 74, 165−173 (2001).
【非特許文献8】T. Mrkvan, M. Sirova, T. Etrych, P. Chytil, J. Strohalm, D. Plocova, K. Ulbrich, B. Rihova, Chemotherapy based on HPMA copolymer conjugates with pH−controlled release of doxorubicin triggers anti−tumor imunity, J. Controlled Release 110, 119−129 (2005)
【非特許文献9】L.W. Seymour, Y. Miyamoto, H. Maeda, M. Brereton, J. Strohalm, K. Ulbrich, R. Duncan, Eur. J. Cancer A 31, 766 − 770 (1995)
【非特許文献10】Y. Noguchi, J. Wu, R. Duncan, J. Strohalm, K. Ulbrich, T. Akaike, H. Maeda, Jpn. J. Cancer Res. 89, 307−314 (1998)
【非特許文献11】Etrych T., Chytil P., Mrkvan T., Sirova M., Rihova B., Ulbrich K., Conjugates of doxorubicin with graft HPMA copolymers for passive tumor targeting, J. Controlled Release 132, 184−192 (2008)
【非特許文献12】Gajbhiye V., Kumar P., Tekade R., Jain N., PEGylated PPI dendritic architectures for sustained delivery of H−2 receptor antagonist, Eur. J. Med. Chem. 44, 1155−1166 (2009)
【非特許文献13】Bai S., Ahsan F., Synthesis and Evaluation of Pegylated Dendrimeric Nanocarrier for Pulmonary Delivery of Low Molecular Weight Heparin, PHARMACEUTICAL RESEARCH Pharm. Res. 26, 539−548 (2009)
【非特許文献14】F. Rypacek, J. Drobnik, V. Chmelar, J. Kalal, The renal excretion and retention of ??macromolecules − the chemical structure effect, Pflug. Arch. Eur. J. Pgy. 392, 211−217 (1982)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
発明の開示
本発明の目的は、狭い分子量分布、系の明確に定義された構造、生分解性骨格、及び単純化された合成によって、既報の系とは異なる、樹状構造を有する新しいHMWポリマー薬物担体及びその薬物結合体の構造及び合成である。上記ポリマー薬物は、腫瘍中の細胞増殖抑制剤の蓄積の増加、並びに細胞内分解、並びに薬物放出及び担体のその役割の遂行後に生物体から排出されるポリマー担体の付随する能力を特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によるHMW生分解性ポリマー担体の目的は、それが、中心G世代からG世代までの樹状ポリ(アミドアミン)及び2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン構造からなっており、そのアミノ基又はヒドロキシ基にセミテレケリックN−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)が生分解性スペーサーを用いてポリマー鎖末端を介して連結していることにある。
【0013】
生きている生物体の主に組織又は標的細胞において分解することができる生分解性スペーサーとしては、還元的に切断可能なジスルフィド結合又は酵素的に切断可能なオリゴペプチド配列が使用される。中心樹状構造及びセミテレケリックグラフトの分子量は、分解後、担体成分すべてが糸球体ろ過によって生物体から排出できるように、生物体の排出限界(HMPAコポリマーの場合約50000g/mol)未満で選択される。デンドリマーとHPMAコポリマーを連結する酵素分解性オリゴペプチド配列は、好ましくはGlyLeuGly、GlyPheGly、GlyPheLeuGly及びGlyLeuPheGly配列を含む。
【0014】
生分解性スペーサーは、3つの方法によって、すなわち、分解性スペーサーを含むセミテレケリックポリマーを使用したデンドリマー分枝末端のアミノ基若しくはヒドロキシ基の反応によって、生分解性スペーサーを含む構造で末端基が修飾されたデンドリマーとセミテレケリックポリマーの反応によって、又は活性化デンドリマーチオール基とセミテレケリックポリマーのチオール末端基の反応によって還元的に切断可能なジスルフィド結合を結合体構造中に導入することによって、担体構造に導入することができる。
【0015】
本発明の一態様は、さらに、セミテレケリックHPMAコポリマーがアミノ基上にグラフトされたポリ(アミドアミン)樹状構造をその中心部に有するポリマー担体であって、このポリマーグラフトは、アミド結合及び生分解性スペーサーを介してポリマー鎖末端経由でデンドリマーに連結している、ポリマー担体である。このポリマー担体は、模式的構造I及びIIを有する。
【0016】
【化1】

本発明の一目的は、さらに、4〜256個のアミノ基、ピリジルジスルファニル基又はカルボキシル基を含むポリ(アミドアミン)に基づくG世代からG世代までの樹状構造によってその中心部が形成されたポリマー担体であって、コアユニットは、好ましくは、システアミン、エチレンジアミン、ブタン−1,4−ジアミン、ヘキサン−1,6−ジアミン又はドデカン−1,12−ジアミンによって形成される、ポリマー担体である。
【0017】
本発明の目的は、さらに、ポリマー担体であって、その中心部が、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸に基づく樹状構造によって形成され、それにヒドロキシ基を介してセミテレケリックHPMAコポリマーが結合しており、このポリマーグラフトはエステル結合及び生分解性スペーサーを介してこのデンドリマーに連結している、ポリマー担体である。このポリマー担体は、模式的構造III及びIVを有する。
【0018】
【化2】

【0019】
【化3】

本発明の更なる一態様は、樹状ポリマー担体であって、その中心部が、8〜256個のヒドロキシ末端基、ピリジルジスルファニル末端基又はカルボキシル末端基を含む第1世代から第6世代までの2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸に基づく樹状構造によって形成された、樹状ポリマー担体である。
【0020】
本発明による樹状ポリマー担体の一態様は、それが、SPのメタクリロイル化アミノ酸ヒドラジドのモノマー単位0.5〜8mol%を含むHPMAコポリマーによって形成された2〜28個のグラフトを含み、ここでこのアミノアシルが、好ましくは、β−アラニル、6−アミノヘキサノイル(AH)、4−アミノベンゾイル、及び/又はオリゴペプチドヒドラジド(oligope hydrazides)GlyGly、GlyPheGly、GlyLeuGly、GlyLeuPheGly及びGlyPheLeuGlyから誘導される複合アシルSPの群から選択されることである。
【0021】
本発明は、さらに、ポリマーグラフトが、ジスルフィド又は生分解性オリゴペプチドを含む生分解性結合を介して中心ポリ(アミドアミン)樹状部分に連結している、HMWポリマー担体を含む。本発明によるオリゴペプチドは、好ましくは、酵素分解性オリゴペプチドGlyLeuGly、GlyPheGly、GlyPheLeuGly及びGlyLeuPheGlyの群から選択される。
【0022】
本発明の更なる一目的は、本発明による樹状ポリマー担体と、加水分解的に切断可能な結合を介して担体に連結している薬物とからなる、薬物とのHMWポリマー結合体である。
【0023】
本発明の一態様は、薬物が好ましくは抗癌剤であるHMWポリマー結合体でもある。本発明の更なる一態様は、抗癌剤が、好ましくは、加水分解的に切断可能なヒドラゾン結合を介して担体に連結しているドキソルビシンである、樹状ポリマー結合体である。
【0024】
本発明の更なる一態様は、本発明によるポリマー担体と、アミドで結合された薬物とからなる、本発明によるHMWポリマー結合体であって、ここで、2〜28個のHPMAコポリマーグラフトが、結合薬物、好ましくはドキソルビシンがオリゴペプチド配列の末端にアミド結合を介して連結したメタクリロイル化オリゴペプチドヒドラジドSPのモノマー単位0.5〜8mol%を含み、このオリゴペプチドは、GlyPheGly、GlyLeuGly、GlyLeuPheGly及びGlyPheLeuGlyからなる群から選択される、HMWポリマー結合体である。
【0025】
本発明の更なる一目的は、樹状構造から誘導されるHMW担体とドキソルビシンとの結合体であり、ここでドキソルビシン含有量は1〜25wt.%である。本発明は、本発明による樹状構造から誘導されるHMWポリマー結合体を有効成分として含む医薬組成物も含む。この組成物は、腫瘍、詳細には固形腫瘍、一部のリンパ腫タイプ及び白血病の処置における使用が意図される。
【0026】
ポリマー結合体においては、担体は、生分解性結合、好ましくは、pHに依存して加水分解的に切断可能なヒドラゾン結合又はリソソーム酵素によって切断可能なオリゴペプチドスペーサーを介して連結した薬物を有する。ポリマー結合体は、生物体の排除限界をかなり超えて、長期の血液循環時間、十分に高いEPR効果、及び固形腫瘍組織における捕捉をもたらすために十分な高分子量を得るように構築される。結合体の分子量は、合成に使用されるセミテレケリックポリマーの分子量、使用するデンドリマーの世代数、及び樹状末端基の置換によって制御することができる。かかる樹状系の分子量は、好ましくは、40000から1400000g/molの範囲であり、Dox含有量は、ポリマー鎖と得られる樹状結合体のどちらも、1から25wt%(ポリマー中0.3〜8mol%)の範囲である。
【0027】
本発明による樹状ポリマー結合体は、主に静脈内適用(注射又は注入)が意図されるが、腫瘍又は腹腔内に適用することもできる。化学的に結合した細胞増殖抑制剤を有するポリマーは血液循環中で安定であり、オリゴペプチドスペーサー又はヒドラゾン結合は血流の生理的条件下(pH7.4)で比較的安定である。血管外遊出及び固形腫瘍における捕捉後、溶解した結合体は、EPR効果による飲作用によって腫瘍細胞中に侵入する。外部のpH7.4から細胞内の5〜6へとpHが低下することにより、ヒドラゾン結合が加水分解され、細胞増殖抑制剤が標的細胞中に放出され、活性化される。同様に、腫瘍細胞に侵入後、ジスルフィド結合又はオリゴペプチドスペーサーは、細胞質及び細胞リソソーム中で切断する。オリゴペプチドスペーサーを介して結合した薬物及び同時にポリマー骨格は、分解して断片になり、この断片は生物体から排出することができる。さらに、システアミンコアを有するPAMAM樹状構造が結合体に組み込まれると、コアは既に生分解性ジスルフィド結合を含み、腫瘍細胞中でこの系をより低分子量の分解生成物へと分解するのを可能にする。
【0028】
文献に記載された系とは対照的に、本発明による担体は、HMWで受動的に標的化された担体のその機能を果たした後、十分可溶な生体適合性の短鎖ポリマー断片へと生物体中で分解することができる。細胞の少し酸性の還元性媒体中で、ジスルフィド結合は還元され(文献によれば、動物細胞の細胞質中のグルタチオン濃度は、1mmol/lと5mmol/lとの間の範囲である)、HMW系は最初のポリマーの断片へと分解し、生物体から排出することができる。酵素的に切断可能なオリゴペプチド配列を介して樹状構造に連結したポリマー鎖を含む担体では、類似の担体分解が起こるはずである。この場合、ポリマー骨格は、リソソーム酵素の作用によって分解されるはずである。本発明によるポリマー結合体の提案された作用機序の現実性は、ポリマー担体からのドキソルビシンのモデル放出、及び動物細胞における関係を模した媒体中で試験された樹状ポリマーの分解によって、実証される。抗腫瘍活性試験を含めたこれらの試験の結果は、本特許出願の実施例に記載されている。
【0029】
したがって、本発明の目的は、抗癌剤の生分解性HMW担体、並びに固形腫瘍に対する明白な細胞傷害効果及び細胞分裂阻害効果を有する選択された抗癌剤、好ましくはドキソルビシンとこの担体との結合体である。
【0030】
ポリマー担体及び薬物とのその結合体は以下のグループに分けることができる:
1型のポリマー担体は、系のコアがポリ(アミドアミン)系デンドリマーコアによって形成されており、中心部がシステアミン、エチレンジアミン、ブタン−1,4−ジアミン、ヘキサン−1,6−ジアミン又はドデカン−1,12−ジアミンによって形成されており、分子量10000〜50000g/molの2〜28個のHPMAコポリマーグラフトが還元的に切断可能なジスルフィド結合を含むスペーサーを介して連結している4〜256個の末端アミノ基(スキーム11、13及び14の構造参照)を有することを特徴とし、コポリマーグラフトが、スキーム7〜10に示す構造及び組成を有するセミテレケリックHPMAコポリマーの群から選択されることを特徴とする。
【0031】
2型のポリマー担体は、系のコアが2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸に基づく樹状構造によって形成されており、分子量10000〜50000g/molの2〜28個のHPMAコポリマーグラフトが還元的に切断可能なジスルフィド結合を含むスペーサーを介して連結している8〜256個のヒドロキシ末端基(スキーム12〜14の構造参照)を有することを特徴とし、ポリマーグラフトが、スキーム7〜10に示す構造及び組成を有するセミテレケリックHPMAコポリマーの群から選択されることを特徴とする。
【0032】
3型ポリマー担体は、系のコアが1型ポリマー担体の場合と同じ樹状構造によって形成されており、セミテレケリックポリマーが生分解性オリゴペプチド配列GlyPheLeuGlyを介して連結していることを特徴とし、ポリマーグラフトがスキーム1〜6に示す構造及び組成を有するセミテレケリックHPMAコポリマーの群から選択されることを特徴とする。
【0033】
4型のポリマー担体は、系のコアが2型ポリマー担体の場合と同じデンドリマーによって形成され、セミテレケリックポリマーが生分解性オリゴペプチド配列、好ましくはGlyPheLeuGlyを介して結合していることを特徴とし、ポリマーグラフトがスキーム1〜6に示す構造及び組成を有するセミテレケリックHPMAコポリマーの群から選択されることを特徴とする。
【0034】
ポリマー結合体1〜4型の構造は、ポリマー担体の構造と同一であるが、抗癌剤は、オリゴペプチド配列(スペーサー)の末端で、純粋に加水分解的に切断可能なヒドラゾン結合又は酵素的に切断可能なアミド結合によってポリマーグラフトに結合している。ポリマー結合体の分子量は、樹状部分のサイズ、セミテレケリックポリマーの長さ、及び置換度に応じて40000g/molと1400000g/molとの間の範囲である。
【0035】
樹状ポリマー担体及びドキソルビシンとのその結合体の構造
本発明によるポリマー担体及びDoxが連結したポリマー結合体の合成は、幾つかのステップで実施される。それは、モノマー(HPMA、Doxがアミドとして結合したメタクリロイル化オリゴペプチド、アミノ酸のメタクリロイル化誘導体、及びヒドラジド又はBocで保護されたヒドラジド基で終結したオリゴペプチド)の合成、それに続くラジカル重合によって調製されるポリマー前駆体(中心樹状構造に結合するための反応性末端基を有し、オリゴペプチドスペーサーを介して連結した保護された若しくは無保護のヒドラジド基又は薬物成分を鎖に沿って有するための反応性末端基、セミテレケリックポリマー)の合成からなる。モノマー及びセミテレケリックポリマー前駆体の合成は、以前に詳述された[Etrych特許CZ298945B6、Etrych 2008]。セミテレケリックポリマーの合成は、連鎖移動剤(3−スルファニルプロパン酸)(SPA)の存在下でラジカル重合によって、又は二官能アゾ開始剤(3,3’−アゾビス(シアノイソ吉草酸)(ABIA)若しくは3,3’−[4,4’−アゾビス(4−シアノ−4−メチル−1−オキソブタン−4,1−ジイル)]ビス(チアゾリジン−2−チオン)、ABIA−TT)を用いて開始される共重合によって、又はアゾビスイソブチロニトリル及び4−シアノ−4−チオベンゾイルスルファニルペンタン酸を用いて開始される制御されたラジカル重合(RAFT、可逆的連結−開裂連鎖移動)とそれに続く水素化ホウ素ナトリウム還元によって、実施された。
【0036】
セミテレケリックコポリマーは、HPMA単位85〜99mol%、メタクリロイル化Boc保護アミノ酸ヒドラジド若しくはオリゴペプチド又はメタクリロイル化オリゴペプチドの単位1〜15mol%を含み、反応鎖末端に連結薬物及び反応基を有することを特徴とする。担体及び結合体の合成においては、以下の反応基を有するセミテレケリックコポリマーを使用した:カルボキシル、カルボキシチアゾリジンチオン(TT)、第一級アミノ基、チオール及びピリジルジスルファニル(PDS)。ポリマーの構造は、ポリマー、担体及び結合体の構造を示したスキームにおいて後述する。以下の記号を使用する:
(i)メタクリロイル化アミノ酸ヒドラジドにおけるアミノ酸アシル、例えば、グリシル、βアラニル、6−アミノヘキサノイル(AH)、4−アミノベンゾイル、及び/又はオリゴペプチドGlyGly、GlyPheGly、GlyLeuGly、GlyLeuPheGly及びGlyPheLeuGlyから誘導される複合アシルに対してはSP
(ii)好ましくは生分解性オリゴペプチド配列GlyLeuGly、GlyPheGly、GlyPheLeuGly及びGlyLeuPheGly)を含む、酵素分解性オリゴペプチド配列から誘導されるメタクリロイル化アミノ酸アミド中の複合アシルに対してはSP
(iii)メタクリロイルに対してはMA、
(iv)2−アミノエチルに対してはAE、
(v)スルファニルプロパノイルに対してはSP。
【0037】
コポリマーのリスト
ポリマー1
ヒドラジド基がBocで保護されている(−CONHNH−Boc)、メタクリロイル化アミノ酸ヒドラジド又はオリゴペプチドヒドラジドとHMPAとのコポリマーであって、このコポリマーは、反応性N−スクシンイミジルエステル又はカルボキシル末端鎖基を含む(ポリマー1a)。このコポリマーは、連鎖移動剤(スルファニルプロパン酸、SPA)の存在下で共重合によって調製された。第2ステップにおいては、SPA(−COOH)鎖末端基は、N−ヒドロキシスクシンイミド/DCC反応によってN−スクシンイミジルエステルに転換された。
【0038】
【化4】

Bocで保護されたヒドラジド基で終結された、メタクリロイル化アミノ酸又はオリゴペプチドとのHPMAコポリマーであって、このコポリマーは、反応性カルボニルチアゾリジン−2−チオン鎖末端基(ポリマー1b)又はN−スクシンイミジルエステル鎖末端基(ポリマー1c)を含む。
【0039】
【化5】

Boc保護ヒドラジド基及び生分解性オリゴペプチド(例えば、GlyPheLeuGly、一般にSP2)の鎖末端N−スクシンイミジルエステル基で終結された、メタクリロイル化アミノ酸又はオリゴペプチドとのHPMAコポリマー(ポリマー1d)は、2ステップ合成によって調製された。第1ステップにおいては、ポリ(HPMA−co−MA−AH−NHNH−Boc)−SPA−OSuコポリマーのN−スクシンイミジルエステルは、オリゴペプチドGFLGのアミノ基と反応した。第2ステップにおいては、調製されたコポリマーポリ(HPMA−co−MA−AH−NHNH−Boc)−SPA−GFLG−COOHのカルボキシル鎖末端基は、N−ヒドロキシスクシンイミド/DCC反応によってN−スクシンイミジルエステルに転換された。
【0040】
【化6】

アミド基に薬物が結合されたメタクリロイル化オリゴペプチドとHPMAとのコポリマーは、連鎖移動剤としてSPAの存在下で実施されたHPMAのラジカル重合によって調製された。このコポリマーは、カルボキシル基又はN−スクシンイミジルエステルで終結する(ポリマー1e)。このコポリマーは、連鎖移動剤SPAの存在下で共重合によって調製された。第2ステップにおいては、カルボキシル末端基は、N−ヒドロキシスクシンイミド/DCC反応によってN−スクシンイミジルエステルに転換された。
【0041】
【化7】

カルボニルチアゾリジン−2−チオン末端基で終結された、アミド結合で結合された薬物を有するメタクリロイル化オリゴペプチドとHPMAのコポリマー(ポリマー1f)は、ABIA−TTを用いて開始される対応するモノマーのラジカル重合によって調製された。N−スクシンイミジルエステル基で終結されたコポリマーは、ABIA−TTを用いて開始され、続いてカルボキシル鎖末端基をN−ヒドロキシスクシンイミドを用いて活性化する類似の方法で調製された(ポリマー1g)。
【0042】
【化8】

生分解性オリゴペプチド(例えば、GlyPheLeuGly)(一般にSP2)の鎖末端N−スクシンイミジルエステルを有する、アミドで結合された薬物を有するメタクリロイル化オリゴペプチドとHPMAとのコポリマー(ポリマー1h)は、2ステップ合成によって調製された。第1ステップにおいては、コポリマーポリ(HPMA−co−MA−SP2−Dox)−SPA−OSuのスクシンイミジルエステルは、このオリゴペプチドのアミノ基と反応した。第2ステップにおいては、調製されたコポリマーポリ(HPMA−co−MA−SP2−Dox)−SPA−GFLG−COOHのカルボキシル鎖末端基は、N−ヒドロキシスクシンイミド/DCC反応によってN−スクシンイミジルエステルに転換された。
【0043】
【化9】

ポリマー2
チオールで終結された主鎖を有する、HPMAとメタクリロイル化アミノ酸又はヒドラジド基がBocで保護されたオリゴペプチドヒドラジドとの基本コポリマーは、HPMAと関連コモノマーのRAFT共重合とそれに続く水素化ホウ素ナトリウムを用いた還元によって調製された(ポリマー2z)。
【0044】
【化10】

チオール基で終結された主鎖を有する、HPMAとメタクリロイル化アミノ酸又はヒドラジドがN−Bocで保護されたオリゴペプチドヒドラジドとのHPMAコポリマーは、ポリマー1aのスクシンイミジルエステルと2−(2−ピリジルジスルファニル)エチルアミン(PDEA)の反応とそれに続くジチオトレイトール(DTT)を用いた還元によって調製された(ポリマー2a)。
【0045】
【化11】

チオール基で終結された主鎖を有する、HPMAとメタクリロイル化アミノ酸又はヒドラジド基がBocで保護されたオリゴペプチドヒドラジドとのコポリマーは、ポリマー1b及び1cの活性化鎖末端カルボキシル基とPDEAの反応とそれに続くDTTを用いた還元によって調製された(ポリマー2b)。
【0046】
【化12】

チオール基で終結された主鎖を有し、アミドで結合された薬物を有する、HPMAとメタクリロイル化オリゴペプチドとのコポリマーは、ポリマー1eのスクシンイミジルエステル鎖末端基とPDEAとの反応とそれに続くDTTを用いた還元によって調製された(ポリマー2c)。
【0047】
【化13】

チオール基で終結された主鎖を有する、アミドで結合された薬物を有するHPMAとメタクリロイル化オリゴペプチドのコポリマーは、ポリマー1f及びポリマー1gの活性化カルボキシル鎖末端基とPDEAの反応とそれに続くDTTを用いた還元によって調製された(ポリマー2d)。
【0048】
【化14】

デンドリマー
ゼロから第6世代の樹状構造をポリマー結合体における中心部として使用した。好ましくは、システアミン、エチレンジアミン、ブタン−1,4−ジアミン、ヘキサン−1,6−ジアミン又はドデカン−1,12−ジアミンコアユニットを有し、第一級アミノ基を末端基として有する、PAMAMデンドリマー(スキーム11)
【0049】
【化15】

又は
ヒドロキシ末端基を有する2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸(BPA)に基づくデンドリマーを使用した(スキーム12)。
【0050】
【化16】

一部の生分解性ポリマー担体及び結合体の合成においては、PAMAM又はBPAデンドリマーのアミノ基又はヒドロキシ基は、セミテレケリックポリマーとの反応前に末端ピリジルジスルファニル(PDS)基に転換された(スキーム13)。アミノ基含有デンドリマーにおいては、アミノ基は、リソソーム酵素を用いて切断可能なオリゴペプチドSP2で修飾された(スキーム14)。ピリジルジスルファニル基は、アミノ基とN−スクシンイミジル[3−(2−ピリジルジスルファニル)]プロパノエート(SPDP)のスクシンイミジル基との反応によって、又はDCC法を使用してヒドロキシ基と3−(2−ピリジルジスルファニル)]プロピオン酸との反応によって、導入された。このオリゴペプチドは、DCC法を使用して、デンドリマーのアミノ基又はヒドロキシ基とFmocで保護されたオリゴペプチドとの反応によって導入された。
【0051】
【化17】

【0052】
【化18】

【0053】
以下、ポリマー担体は、薬物が連結していない、樹状構造を含むHMWポリマーである。したがって、ポリマー結合体は、薬物が連結したポリマー担体である。薬物、好ましくはドキソルビシンは、Boc保護基を除去後、ヒドラゾン結合を介して担体に連結する。担体へのDoxの連結は、メタノール中で酢酸の存在下で実施される。アミドで結合されたドキソルビシンの場合、ポリマー結合体は、Doxを有するセミテレケリックコポリマーと対応するデンドリマーとの反応によって調製される。
【0054】
結合体構造、及びポリマー構造の分解機序に起因して、本発明によるポリマー結合体は、4つの基本グループに分けられる。
【0055】
結合体1
結合体1は、薬物を有するポリマー鎖が還元分解性ジスルフィド結合を介して連結した中心PAMAM樹状構造からなる。この薬物は、ポリマー鎖にヒドラゾン又はアミド結合によって連結する(スキーム15参照)。
【0056】
【化19】

【0057】
結合体2
結合体2は、薬物を有するポリマー鎖が還元分解性ジスルフィド結合を介して結合した中心BPA樹状構造からなる。この薬物は、ポリマー鎖にヒドラゾン又はアミド結合によって連結する(スキーム16参照)。
【0058】
【化20】

【0059】
結合体3
結合体3は、薬物を有するポリマー鎖が酵素分解性オリゴペプチドを介して結合した中心PAMAM樹状構造からなる。この薬物は、ポリマー鎖にヒドラゾン又はアミド結合によって連結する(スキーム17参照)
【0060】
【化21】

【0061】
結合体4
結合体4は、薬物を有するポリマー鎖が酵素分解性オリゴペプチドを介して結合した中心BPA樹状構造からなる。この薬物は、ポリマー鎖にヒドラゾン又はアミド結合によって連結する(スキーム18参照)。
【0062】
【化22】

【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、(細胞内媒体を模した)pH5の緩衝液中でインキュベートされたpH5における樹状ポリマー結合体1及び2並びに線状ポリマー結合体3(Doxはヒドラゾン結合を介して結合している)から放出されたDoxの時間依存を示す。
【図2】図2は、(血流を模した)pH7.4の緩衝液中でインキュベートされたpH7.4における樹状ポリマー結合体1及び2並びに線状ポリマー結合体3(Doxはヒドラゾン結合を介して結合している)から放出されたDoxの時間依存を示す。
【図3】図3は、グルタチオン(c=3.10−3mol/l)を含むリン酸緩衝液中でインキュベートされたポリマー結合体1の分子量の時間依存を示す。
【図4】図4は、カテプシンB(c=5.10−7mol/l)を含むリン酸緩衝液中でインキュベーション中のポリマー結合体3の分子量の時間依存を示す。
【図5】図5は、ヒドラゾンで結合されたドキソルビシンを有するK−1 HYD、アミド結合で結合されたドキソルビシンを有するK−1 AM、並びに線状ポリマー結合体LIN HYD及びLIN AMの投与後の腫瘍増殖を示す。
【図6】図6は、ヒドラゾン結合で結合されたドキソルビシンを有するK−1 HYD、アミド結合で結合されたドキソルビシンを有するK−1 AM、並びに線状ポリマー結合体LIN HYD及びLIN AMの投与後のEL4腫瘍を有するマウスの生存を示す。
【図7】図7は、ポリマー結合体を用いて治癒され(図5及び6参照)、致死量の最初の腫瘍細胞(マウスT細胞リンパ腫EL4、1×10細胞)が再移植されたマウスの生存を示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
発明を実施する例
結合体の合成及び諸性質の例
中間体及びドキソルビシン−ポリマー結合体の合成例
【実施例1】
【0065】
(連鎖移動剤SPAを使用した)セミテレケリックポリマー前駆体の合成
ポリ(HPMA−co−MA−AH−NHNH−Boc)−SPA−OSu(ポリマー1a)
セミテレケリックコポリマーポリ(HPMA−co−MA−AH−NHNH−Boc)−SPA−OSuを、アセトン中で50℃で開始剤2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(AIBN)及び連鎖移動剤SPAの存在下でHPMAとMA−AH−NHNH−Bocとの沈殿ラジカル共重合によって調製した。ある場合には、第2ステップにおいて、既報(Etrych、CZ特許298945B6)のように、N−ヒドロキシスクシンイミド/DCCとの反応によってカルボキシ末端基をN−スクシンイミジルエステルに転換した。
【実施例2】
【0066】
セミテレケリックポリマー前駆体ポリ(HPMA−co−MA−AH−NHNH−Boc)−TT(ポリマー1b)の合成
セミテレケリックコポリマーポリ(HPMA−co−MA−AH−NHNH−Boc)−TTを、DMSO中で60℃でABIA−TTを用いて開始された(Etrych、CZ特許298945B6)HPMAとMA−AH−NHNH−Bocとの溶液ラジカル共重合によって調製した。
【実施例3】
【0067】
セミテレケリックポリマー前駆体ポリ(HPMA−co−MA−AH−NHNH−Boc)−OSu(ポリマー1c)の合成
セミテレケリックコポリマーポリ(HPMA−co−MA−AH−NHNH−Boc)−SPA−OSuを、エタノール中50℃における開始剤ABIAの存在下でのHPMAとMA−AH−NHNH−Bocとの溶液ラジカル共重合とそれに続くN−スクシンイミジルエステルへの転換によるカルボキシ鎖末端基の活性化(Etrych、CZ特許298945B6)によって調製した。
【実施例4】
【0068】
セミテレケリックポリマー前駆体ポリ(HPMA−co−MA−AH−NHNH−Boc)−SPA−GFLG−OSu(ポリマー1d)の合成
セミテレケリックコポリマーポリ(HPMA−co−MA−AH−NHNH−Boc)−SPA−GFLG−OSuを2ステップ合成によって調製した。第1ステップにおいては、コポリマーポリ(HPMA−co−MA−AH−NHNH−Boc)−OSuのN−スクシンイミジルエステルは、オリゴペプチドGFLGのアミノ基と反応した。ある場合には、調製されたコポリマーポリ(HPMA−co−MA−AH−NHNH−Boc)−SPA−GFLG−COOHのカルボキシ末端基を、第2ステップにおいて、既報(Etrych、CZ特許298945B6)のように、N−ヒドロキシスクシンイミド/DCCとの反応によってN−スクシンイミジルエステルに転換した。
【実施例5】
【0069】
(SPAによる連鎖移動を含む)セミテレケリックポリマー前駆体ポリ(HPMA−co−MA−GFLG−Dox)−SPA−OSu(ポリマー1e)の合成
セミテレケリックコポリマーポリ(HPMA−co−MA−GFLG−Dox)−SPA−OSuを、アセトン中で50℃で開始剤AIBN及び連鎖移動剤SPAの存在下でHPMAとMA−GFLG−Doxとの沈殿ラジカル共重合によって調製した。カルボキシ鎖末端基を、第2ステップにおいて、N−ヒドロキシスクシンイミド/DCCとの反応によってN−スクシンイミジルエステル基に転換した。[Ulbrich 2000]。
【実施例6】
【0070】
セミテレケリックポリマー前駆体ポリ(HPMA−co−MA−GFLG−Dox)−TT(ポリマー1f)の合成
セミテレケリックコポリマーポリ(HPMA−co−MA−GFLG−Dox)−TTを、DMSO中で60℃でABIA−TTを用いて開始されたHPMAとMA−GFLG−Doxの溶液ラジカル共重合によって調製した。
【0071】
220mg(1.54mmol)HPMA、25mg(0.025mmol)MA−GFLG−DoxをDMSO1.7mlに溶解させ、その溶液を重合アンプルに移した。重合アンプル中、ABIA−TT84mg(0.170mmol)(4wt%)であった。窒素をアンプル中の溶液を通して15分間バブリングさせ、アンプルを密封し、サーモスタット中に60℃で置いた。開始剤は60℃で3分後に溶解した。6時間後、反応混合物が50mlのアセトン−ジエチルエーテル2:1中に沈殿した。コポリマーをメタノール3mlに溶解させ、同じ混合溶媒50ml中に再度沈殿させた。沈殿したコポリマーをろ別し、恒量まで乾燥させた。
【実施例7】
【0072】
セミテレケリックポリマー前駆体ポリ(HPMA−co−MA−GFLG−Dox)−SPA−GFLG−OSu(ポリマー1h)の合成
セミテレケリックコポリマーポリ(HPMA−co−MA−GFLG−Dox)−SPA−GFLG−OSuを、ポリ(HPMA−co−MA−AH−NHNH−Boc)−SPA−GFLG−OSuの調製(実施例4)において記述した2ステップ合成によって調製した。第1ステップにおいては、コポリマーポリ(HPMA−co−MA−GFLG−Dox)−SPA−OSuのN−スクシンイミジルエステルは、オリゴペプチドGFLGのアミノ基と反応した。コポリマーポリ(HPMA−co−MA−AH−NHNH−Boc)−OSuのカルボキシ末端とオリゴペプチドGFLGのアミノ基。第2ステップにおいては、調製したコポリマーポリ(HPMA−co−MA−GFLG−Dox)−SPA−GFLG−COOHのカルボキシル鎖末端基を、N−ヒドロキシスクシンイミド/DCCとの反応によってN−スクシンイミジルエステルに転換した。
【実施例8】
【0073】
セミテレケリックポリマー前駆体−ポリ(HPMA−co−MA−AH−NHNH−Boc)−SPA−AE−SH(ポリマー2a)の合成
セミテレケリックコポリマーポリ(HPMA−co−MA−AH−NHNH−Boc)−SPA−AE−SHを、DMSO中でのコポリマーポリ(HPMA−co−MA−AH−NHNH−Boc)−SPA−OSuと二官能性試薬2−(2−ピリジルジスルファニル)エチルアミン(PDEA)のポリマー類似反応とそれに続く0.5Mリン酸緩衝液(0.1M NaCl、pH7.4)中のジチオトレイトール(DTT)を用いた還元によって調製した。
【0074】
PDEA.HCl 8mg(0.036mmol)をDMSO 0.5mlに溶解させ、激しく撹拌しながらエチル(ジイソプロピル)アミン6μl(0.036mmol)を添加した。5分後、DMSO 4ml中のポリ(HPMA−co−MA−AH−NHNH−Boc)−SPA−OSu 300mg(0.026mmol TT基)の溶液を室温で激しく撹拌しながら添加した。2時間後、反応混合物をメタノールで15mlに希釈し、Sephadex LH−20充填カラムでのゲルクロマトグラフィー(メタノール、RI検出)によって低分子量不純物を除去することによってコポリマーを精製した。ポリマー画分を回転式減圧エバポレータによって6mlに濃縮し、このコポリマーを80mlのアセトン−ジエチルエーテル3:1中に沈殿させて単離した。次のステップにおいては、PDS基を有するポリマー300mg(0.024mmol)をリン酸緩衝液5mlに溶解させ、蒸留水0.4ml中のDTT 18.5mgの溶液を添加した。1時間後、水溶液中でのSephadex G−25充填カラムでのゲルろ過によって低分子量不純物を除去することによってこのポリマーを精製した。このポリマーを凍結乾燥によって単離し、アルゴン下で−18℃で貯蔵した。
【実施例9】
【0075】
セミテレケリックポリマー前駆体−ポリ(HPMA−co−MA−AH−NHNH−Boc)−SPA−AE−SH(ポリマー2b)の合成
セミテレケリックコポリマーポリ(HPMA−co−MA−AH−NHNH−Boc)−AE−SHを、実施例8に記載の手順によって、DMSO中でのコポリマーポリ(HPMA−co−MA−AH−NHNH−Boc)−OSu又はポリ(HPMA−co−MA−AH−NHNH−Boc)−TTと二官能性試薬PDEAとのポリマー類似反応とそれに続く0.5Mリン酸緩衝液(0.1M NaCl、pH7.4)中のDTTを用いた還元によって調製した。
【実施例10】
【0076】
セミテレケリックポリマー前駆体−ポリ(HPMA−co−MA−GFLG−Dox)−SPA−AE−SH(ポリマー2c)の合成
セミテレケリックコポリマーポリ(HPMA−co−MA−GFLG−Dox)−AE−SPK−SHを、実施例8に記載の手順によって、DMSO中でのコポリマーポリ(HPMA−co−MA−GFLG−Dox)−SPA−OSuと二官能性試薬PDEAのポリマー類似反応とそれに続く0.5Mリン酸緩衝液(0.1M NaCl、pH7.4)中のDTTを用いた還元によって調製した。
【実施例11】
【0077】
セミテレケリックポリマー前駆体−ポリ(HPMA−co−MA−GFLG−Dox)−AE−SH(ポリマー2d)の合成
セミテレケリックコポリマーポリ(HPMA−co−MA−GFLG−Dox)−AE−SHを、実施例8に記載の手順によって、DMSO中でのコポリマーポリ(HPMA−co−MA−GFLG−Dox)−OSu又はポリ(HPMA−co−MA−GFLG−Dox)−TTと二官能性試薬PDEAのポリマー類似反応とそれに続く0.5Mリン酸緩衝液(0.1M NaCl、pH7.4)中のDTTを用いた還元によって調製した。
【実施例12】
【0078】
PDS基を有するデンドリマーの合成
ピリジルジスルファニル基を含むPAMAM又はBPAデンドリマー(デンドリマー−PDS)を、デンドリマーのアミノ基又はヒドロキシ基と、N−スクシンイミジル[3−(2−ピリジルジスルファニル)]プロパノエート(SPDP)のスクシンイミジル基、又はDCC法を使用して3−(2−ピリジルジスルファニル)プロパン酸のカルボキシル基との反応によって調製した。第二世代PAMAMデンドリマー5mg(0.026mmolアミノ基)をメタノール0.5mlに溶解させ、メタノール0.5ml中のSPDP 23mg(0.071mmol)の溶液を一定撹拌下で添加した。2時間後、メタノール中でSephadex LH−20充填カラムでのゲルクロマトグラフィー(RI検出)によって低分子量不純物を除去することによって修飾デンドリマーを精製した。デンドリマーを含む画分を回転式減圧エバポレータで1mlに濃縮し、このデンドリマーを凍結乾燥によってメタノール−水 1:3混合物から単離した。
【実施例13】
【0079】
オリゴペプチドが連結したデンドリマーの合成
アミノ末端基を含むオリゴペプチドが連結したPAMAM又はBPAデンドリマー(デンドリマー−SP)を、縮合試薬DCCの存在下でデンドリマーのアミノ基又はヒドロキシ基とN−Fmocで保護されたオリゴペプチドのカルボキシル基との反応によって調製した。
【0080】
N−Fmocで保護されたオリゴペプチドGFLG 40mg(0.065mmol)をDMF 0.9mlに溶解させ、−18℃に冷却後、DMF 0.1ml中のDCC 13.5mg(0.065mmol)の溶液を添加した。30分後、DMF0.5ml中の第2世代デンドリマーBPA 10mg(0.052mmolヒドロキシ基)の溶液を冷却した反応混合物に添加した。混合物を4℃で90分間及び室温で更に2時間撹拌した。次いで、反応混合物をメタノールで5mlに希釈し、メタノール中でSephadex LH−20充填カラムでのゲルクロマトグラフィー(RI検出)によって低分子量不純物を除去することによって修飾デンドリマーを精製した。デンドリマーを含む画分を回転式減圧エバポレータによって1mlに濃縮し、デンドリマーをジエチルエーテル中に沈殿させて単離した。Fmocで保護されたアミノ基をDMF中の25%ピペリジン溶液で脱保護して、修飾デンドリマー上の遊離アミノ基を得た。
【実施例14】
【0081】
ポリマー結合体1及び2の合成
薬物がオリゴペプチド配列末端にアミド結合によって結合したポリマー結合体1又は2を、修飾PAMAM又はBPAデンドリマーのPDS基とポリマー2c又は2dのチオール基との反応によって調製した。
【0082】
ポリ(HPMA−co−MA−GFLG−Dox)−AE−SH 150mg(0.010mmol SH基)を0.1M NaClおよび0.01Mエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む0.5Mリン酸緩衝液3ml(pH7.4)に溶解させ、その溶液をメタノール1ml中のデンドリマー−PDS(0.013mmol PDS基)の撹拌溶液に実験室温度で添加されたメタノール1ml中のデンドリマー−PDS 6.5mg(0.013mmol PDS基)の撹拌溶液に添加した。室温で4時間反応後、その溶液をメタノール10mlに希釈し、メタノール中でSephadex LH−20でのゲルクロマトグラフィーによって低分子量不純物を除去することによってポリマー結合体を精製した。ポリマー画分を回転式減圧エバポレータによって2mlに濃縮し、コポリマーを酢酸エチル30ml中に沈殿させて単離した。生成物を恒量まで乾燥させた。
【0083】
ヒドラゾンで結合された薬物を有するポリマー結合体1又は2を、デンドリマー−PDSのPDS基とポリマー2a又は2bのSH基との反応とそれに続くトリフルオロ酢酸(TFA)を使用したヒドラジド基の脱保護及びメタノール中で酢酸触媒下でのDox結合によって調製した。
【0084】
ポリ(HPMA−co−MA−AH−NHNH−Boc)−SPA−AE−SH 200mg(0.014mmol SH基)を0.5Mリン酸緩衝液(0.1M NaCl、0.01Mエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、pH7.4)4mlに溶解させ、その溶液を室温でメタノール1.5ml中のデンドリマー−PDS 8.5mg(PDS基0.017mmol)撹拌溶液に添加した。室温で4時間反応後、溶液をメタノールで13mlに希釈し、メタノール中でSephadex LH−20カラムでのゲルクロマトグラフィーによって低分子量不純物を除去することによってポリマー担体を精製した。ポリマー画分を回転式減圧エバポレータによって2mlに濃縮し、コポリマーを酢酸エチル30ml中に沈殿させて単離した。生成物を恒量まで乾燥させた。Bocで保護されたポリマー担体の脱保護においては、この担体190mgをTFA−トリイソプロピルシラン−水95:2.5:25混合物5mlに溶解させた。15分後、この混合物を小さい結晶が沈殿するまで水ポンプ減圧下でメタノール(5倍過剰)と一緒にエバポレータによって繰り返し蒸発させた。生成物を水に溶解させ、その溶液のpHをpH7〜8に調節した。蒸留水中でSephadex G−25カラムでのゲルクロマトグラフィー(RI検出)によって低分子量不純物を除去することによってポリマー担体を精製した。このポリマーをLyovac GT−2装置中で凍結乾燥によってポリマー画分から単離した。Doxを結合させるために、ポリマー担体180mgをメタノール2mlに溶解させ、溶液をサーモスタットセルに移した。サーモスタットセル中、Dox.HCl20mg(0.034mmol)であった。得られた不均一懸濁液を暗所で25℃で撹拌し、1分後、酢酸100μlを添加した。反応中、懸濁液は順次溶解し、23時間の反応後、メタノール中でSephadex LH−20カラムでのゲルクロマトグラフィーによって低分子量不純物及び遊離薬物を除去することによってポリマー生成物を精製した。ポリマー画分を回転式減圧エバポレータによって3mlに濃縮した。ポリマー結合体を酢酸エチル30mlに沈殿させて単離した。生成物を恒量まで乾燥させた。
【実施例15】
【0085】
ポリマー結合体3及び4の合成
オリゴペプチドによってアミド基を介して結合した薬物を含むポリマー結合体3又は4を、アミノ修飾PAMAM若しくはBPAデンドリマー−GFLG−NHとポリマー1e、1f若しくは1gのTT基若しくはOSu基との反応によって、又はポリマー1h(ポリ(HPMA−co−MA−GFLG−Dox)−SPA−GFLG−OSu)のスクシンイミジル基若しくはカルボキシル基とこのデンドリマーのアミノ基若しくはヒドロキシ基との反応によって調製した。
【0086】
ポリマー1f 100mg(0.006mmol OSu基)をDMSO 2mlに溶解させ、その溶液をメタノール1ml中のデンドリマー1.9mg(0.009mmol GFLG−NH基)撹拌溶液に実験室温度で添加した。実験室温度で2時間反応後、その溶液をメタノールで8mlに希釈し、メタノール中でSephadex LH−20カラムでのゲルクロマトグラフィーによって低分子量不純物を除去することによってポリマー結合体を精製した。ポリマー画分を回転式減圧エバポレータによって2mlに濃縮し、コポリマー結合体を酢酸エチル30ml中に沈殿させて単離した。生成物を恒量まで乾燥させた。
【0087】
ヒドラゾンで結合された薬物を有するポリマー結合体3又は4を、修飾PAMAM若しくはBPAデンドリマー−GFLG−NHのアミノ基とポリマー1a、1b若しくは1cのTT基若しくはOSu基との反応によって、又はポリマー1dポリ(HPMA−co−MA−AH−NHNH−Boc)−SPA−GFLG−OSuのスクシンイミジル基若しくはある場合にはカルボキシル基とデンドリマーのアミノ基若しくはヒドロキシ基との反応とそれに続くトリフルオロ酢酸(TFA)を使用したヒドラジド基の脱保護及びメタノール中で酢酸触媒下でのDoxの連結によって調製した。
【0088】
ポリ(HPMA−co−MA−AH−NHNH−Boc)−GFLG−OSu 120mg(0.008mmol OSu基)をDMSO 2mlに溶解させ、その溶液をメタノール1ml中のデンドリマー2.2mg(0.011mmol NH基)撹拌溶液に実験室温度で添加した。実験室温度で2時間反応後、この溶液をメタノールで9mlに希釈し、メタノール中でSephadex LH−20カラムでのゲルクロマトグラフィーによって低分子量不純物を除去することによってポリマー担体を精製した。ポリマー画分を回転式減圧エバポレータによって2mlに濃縮し、コポリマー担体を酢酸エチル30ml中に沈殿させて単離した。生成物を恒量まで乾燥させた。
【0089】
Boc保護基の除去及びヒドラゾン結合による薬物の連結を実施例14に記載の手順によって実施した。
【実施例16】
【0090】
ポリマー結合体からのドキソルビシンの放出
ポリマー結合体から放出されたドキソルビシンの量を、細胞内媒体を模したpH5.0の0.1Mリン酸緩衝液(0.05M NaCl)中及び血流媒体を模したpH7.4のリン酸緩衝液中でのそれらのインキュベーション後に測定した。インキュベーション溶液中の放出されたDoxをHPLC(Shimadzu)によって決定した。所定時間間隔で溶液試料50μlを抜き取り、TSKGel G3000xlカラムによってpH6.5のメタノール−アセテート(80:20vol%)緩衝液からなる移動相のイソクラチック流量0.5ml/minで分析した。Dox量を遊離及び結合のDoxのピーク面積から計算した(488nmにおけるUV−VIS検出)。37℃の生理的媒体(リン酸緩衝液、pH7.4)中の(濃度5mg/mlの)結合体溶液のインキュベーション後は、わずかに少量の薬物しか放出されない(最高7%/24時間、図2)。それに対して、pH5.0における弱酸性の媒体中のポリマー結合体からのDox放出速度、したがって細胞毒の活性化速度はかなり大きい(図1)。pH7.4及びpH5におけるグラフトポリマー結合体からの放出速度は、線状コポリマー又はグラフトコポリマーから調製されたヒドラゾン結合体で見られる放出速度[Etrych 2008]に十分匹敵する。
【実施例17】
【0091】
グルタチオンを使用した、生物体から排出することができる分解生成物への、アミド結合で結合された薬物を有するポリマー結合体1の分解
0.1Mリン酸緩衝液(0.05M NaCl、pH6)中で還元剤としてグルタチオンの存在下で、すなわち細胞(細胞質、エンドソーム及び二次リソソーム)を模した媒体中で、ポリマー結合体の分解を試験した。ポリマー結合体をリン酸緩衝液に濃度20mg/mlで溶解させた。溶液をサーモスタット(37℃)中に置く直前に、インキュベーション媒体中の得られるグルタチオン濃度が3.10−3mol/lであるようにグルタチオンストック液を添加した。インキュベーション溶液のアリコート試料(200μl)を所定時間間隔で抜き取り、PD−10カラムによって脱塩し、凍結乾燥させた。分解生成物の分子量を屈折計(Optilab Rex、Wyatt Technology、USA)及び多角度光散乱検出器(DAWN EOS、Wyatt Technology、USA)を備えた液体クロマトグラフShimadzu LC−10ADによって測定した。分析をSuperose(商標)6カラム(300×10mm、Amersham Bioscience)によって実施した。移動相として、流量0.5ml/minの0.3M酢酸緩衝液(pH6.5、0.5g/lNaN)を使用した。コポリマーの分子量及び多分散性をAstraソフトウェア(Wyatt Technology、USA)によって計算した。
【0092】
細胞質濃度のグルタチオン(3.10−3mol/l)を含む溶液中のジスルフィド架橋を有する結合体(結合体1)は急速に分解する。グルタチオンと一緒に24時間インキュベーション後、分子量が腎臓ろ過限界(約25000g/mol)未満のポリマー分解生成物が見られた(図3)。
【実施例18】
【0093】
生物体から排出することができる分解生成物への、ヒドラゾン結合で結合された薬物を有するポリマー結合体3のカテプシンBによる分解
リソソーム酵素カテプシンBを含む、したがって腫瘍細胞中の二次リソソームの媒体を模した、0.1Mリン酸緩衝液(NaHPO/NaOH、pH6.0、5mMグルタチオン、1mM EDTA)中でポリマー結合体の分解を基質濃度50mg/mlで試験した。ポリマー結合体をリン酸緩衝液に濃度10mg/mlで溶解させ、(37℃で)サーモスタット中に配置する直前に、その得られる濃度が5.10−7MであるようにカテプシンBのストック液を添加した。インキュベーション溶液の試料(200μl)を所定時間間隔で抜き取り、PD−10カラムによって脱塩し、凍結乾燥させた。分解生成物の分子量を上記と同様に測定した。GFLGオリゴペプチドスペーサーを含む結合体(結合体3)は、カテプシンBの溶液(5.10−7mol/l)中で徐々に分解した。カテプシンBと一緒に48時間インキュベーション後、分子量が腎臓ろ過限界(約40000g/mol)未満のポリマー分解生成物が見られた(図4)。
【0094】
生物活性の例では、ポリマー結合体に対して以下のコードを定義する。
【0095】
K−1 AM−アミド結合で結合された薬物を有する樹状ポリマー結合体1
=248000、I=1.9、R=15.6nm
K−1 HYD−ヒドラゾン結合で結合された薬物を有する樹状ポリマー結合体1
=199000、I=2.1、R=14.2nm
LIN AM−アミド結合で結合された薬物を有する線状ポリマー結合体
=45000、I=1.85、R=5.2nm
LIN HYD−ヒドラゾン結合で結合された薬物を有する線状ポリマー結合体
=36000、I=1.87、R=4.5nm。
【実施例19】
【0096】
種々の腫瘍株の細胞と一緒にインキュベートされたドキソルビシンの樹状結合体及びグラフト結合体のin vitro生物活性(細胞傷害性、IC50)の例([H]チミジン取り込み方法を使用した)
【0097】
【表1】

試験ポリマーの阻害活性を決定するために、マウス起源及びヒト起源の以下の永久腫瘍株を選択した:マウスT細胞リンパ腫EL4、マウスB細胞リンパ腫38C13、マウス黒色腫B16、マウスB細胞白血病BCL1、ヒトB細胞リンパ腫Raji、ヒトT細胞白血病Jurkat、マウス線維芽細胞腫3T3、ヒト有棘細胞癌腫FaDu及びマウス乳癌腫4T1。抗増殖活性を[H]チミジンの取り込みによって測定した。
【0098】
表1から、全試験株において最も明白な阻害活性は、両方のヒドラゾン結合で結合されたドキソルビシンポリマー結合体(K−1 HYD及びLIN HYD)で示されることになる。アミド結合で結合されたドキソルビシンとの結合体は、かなり低い活性を示す。高分子量ポリマー結合体K−1 HYD及びK−1 AMは、薬物が同様に結合した線状結合体よりもわずかに高い抗増殖活性を示す。その差は大きくなく、高分子量ポリマー結合体は、その低分子量線状類似体とほぼ同じ抗増殖活性を示すと言うことができる。
【実施例20】
【0099】
T細胞リンパ腫EL4を皮下移植した近交系マウスC57BL/6における樹状ポリマー−ドキソルビシン結合体のin vivo生物活性の例
T細胞リンパ腫EL4を皮下移植した近交系マウスC57BL/6をin vivo実験に使用した。静脈内(i.v.)投与された用量は、1×15mg Dox当量/kg及び10mg Dox当量/kgであった。有効な対照として、EL4腫瘍を有するマウス群を使用し、ドキソルビシンのみ(8日目及び15日目に2×5mg/kg i.v.)で処置した。基本対照は、EL4腫瘍を有する無処置マウスであった。ドキソルビシンがヒドラゾンで結合されたK−1 HYD、ドキソルビシンがアミドで結合されたK−1 AM、並びに線状ポリマー結合体LIN HYD及びLIN AMを投与した後の腫瘍増殖を図5に示す。
【0100】
図5及び6から、用量15mg Dox当量/kgの両方の樹状HMWポリマー結合体(K−1 HYD及びK−1 AM)の試料は非常に効率が高いことが明らかである。活動的な腫瘍増殖期間に投与された単一用量の薬物は、実験腫瘍EL4を有するマウスの100%を治癒させることができる。HMWポリマー結合体の効率は、薬物が同様に結合した線状結合体の効率よりもかなり高い。これらの線状結合体では、実験腫瘍を有するマウスの37%(LIN HYD)又は25%(LIN AM)が治癒した。10mg Dox当量/kgの用量では、ドキソルビシンがヒドラゾン結合で結合されたK−1 HYDは、活動的な腫瘍増殖期間に投与された単一用量によってやはり100%のマウスが治癒したので、常に活性が高いことがわかった。ドキソルビシンがアミド結合で結合されたポリマー結合体K−1 AMは、それよりも低活性であるが、それでも単一の低用量によって実験腫瘍を有するマウスの60%超が治癒する。
【0101】
図7は、ポリマー結合体(図5及び6参照)を用いて治癒したマウス、及び致死量の最初の腫瘍(1×10マウスT細胞リンパ腫EL4)を再移植したマウスの生存を示す。マウスは処置されなかった。図7の結果から、ポリマー結合体で処置したマウスにおいては、抗腫瘍抵抗性が治療中に発現したことが明らかである。これは、ヒドラゾンで結合されたドキソルビシン(用量10mg及び15mg Dox当量/kg)を含むK−1 HYD及びアミド結合で結合されたドキソルビシン(10mg Dox当量/kg)を含むK−1 AMで治癒したマウスの30〜40%で生じた。この結果は、本発明による新規に調製されたポリマー薬物が2つの効果、すなわち、大多数の腫瘍細胞を直接殺傷する細胞分裂阻害効果、及び処置中に免疫系を刺激して抗腫瘍抵抗性を誘発する免疫調節効果を示すことを意味する。以前に処置した動物に致死量の腫瘍細胞を再移植した後に得られた結果は、本発明によるポリマー結合体を使用した療法が、腫瘍の除去だけでなく、癌の二次的な/転移性の発生又はその再発に対して治癒動物を防御するということの実験的証拠である。
【0102】
【表2−1】

【0103】
【表2−2】

【0104】
【表2−3】

【0105】
【表2−4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミドアミン−及び2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸単位からなる群から選択されるゼロから第6世代のデンドリマーの中心樹状部分からなることを特徴とする、樹状高分子量ポリマー薬物担体であって、そのアミノ末端基又はヒドロキシ末端基にN−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)のセミテレケリックコポリマーがアミド結合又はエステル結合及び生分解性スペーサーを介してグラフトされた、ポリマー薬物担体。
【請求項2】
中心アミドアミンデンドリマーからなることを特徴とする、請求項1に記載のポリマー薬物担体であって、そのアミノ基にセミテレケリックHPMAコポリマーがグラフトされており、該セミテレケリックHPMAコポリマーは、アミド結合と、構造Iに示されるジスルフィド結合によって形成された生分解性スペーサー又は構造IIに示されるオリゴペプチド配列SPによって形成された生分解性スペーサーとを介してポリマー鎖末端で該デンドリマーに連結している、ポリマー薬物担体。
【化23】

【化24】

【請求項3】
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸に基づく中心デンドリマーからなることを特徴とする、請求項1に記載のポリマー担体であって、そのヒドロキシ基にセミテレケリックHPMAコポリマー鎖がグラフトされており、該セミテレケリックHPMAコポリマー鎖は、鎖末端エステル結合と、構造IIIに示されるジスルフィド結合を含む生分解性スペーサー又は構造IVに示されるオリゴペプチド配列SPとによって、該デンドリマーに連結している、ポリマー担体。
【化25】

【化26】

【請求項4】
その中心部がアミノ基、ピリジルジスルファニル基及びカルボキシル基からなる群から選択される4〜256個の末端基を含むゼロから第6世代のアミドアミンデンドリマーによって形成されたことを特徴とする、請求項1及び2に記載のポリマー担体であって、そのコアユニットが好ましくはシステアミン、エチレンジアミン、ブタン−1,4−ジアミン、ヘキサン−1,6−ジアミン又はドデカン−1,12−ジアミンによって形成された、ポリマー担体。
【請求項5】
その中心部がヒドロキシ基、ピリジルジスルファニル基及びカルボキシル基を含む群から選択される8〜256個の末端基を含むゼロから第6世代の2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸デンドリマーによって形成されることを特徴とする、請求項1及び3に記載のポリマー担体。
【請求項6】
2〜28個のグラフトが、アミノアシルSPのメタクリロイル化ヒドラジドのモノマー単位0.5〜8mol%を含むHPMAコポリマーによって形成されることを特徴とする、請求項1から5に記載のポリマー担体であって、前記アミノアシルが、好ましくは、グリシル、βアラニル、6−アミノヘキサノイル(AH)、4−アミノベンゾイル、及び/又はオリゴペプチドGlyGly、GlyPheGly、GlyLeuGly、GlyLeuPheGly及びGlyPheLeuGlyから誘導される混合アシルの群から選択される、ポリマー担体。
【請求項7】
前記ポリマーグラフトが前記中心樹状ポリ(アミドアミン)又は2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸にジスルフィド基又は生分解性オリゴペプチドSPを含む生分解性スペーサーによって連結することを特徴とする、請求項1から5に記載のポリマー担体。
【請求項8】
前記オリゴペプチドSPが、好ましくは、GlyLeuGly、GlyPheGly、GlyPheLeuGly及びGlyLeuPheGlyを含めたオリゴペプチドの群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載のポリマー担体。
【請求項9】
請求項1から8に記載のポリマー担体と、共有結合した薬物、好ましくは抗癌剤とからなることを特徴とする、ポリマー結合体。
【請求項10】
請求項1から8に記載のポリマー担体と、抗癌剤、好ましくはドキソルビシンとからなることを特徴とする、請求項9に記載のポリマー結合体。
【請求項11】
ドキソルビシンが、加水分解的に切断可能なヒドラゾン結合によって前記担体に連結していることを特徴とする、請求項10に記載のポリマー結合体。
【請求項12】
請求項1、2、3、4、5、7及び8に記載のポリマー担体と、アミド結合で結合された薬物とからなることを特徴とする、請求項10に記載のポリマー結合体であって、2〜28個のポリマーグラフトが、メタクリロイル化オリゴペプチドSPのモノマー単位0.5〜8mol%を含むHPMAコポリマーによって形成され、ドキソルビシンが該オリゴペプチドの末端にアミド結合を介して連結しており、前記オリゴペプチドが、好ましくは、オリゴペプチドGlyPheGly、GlyLeuGly、GlyLeuPheGly及びGlyPheLeuGlyからなる群から選択される、ポリマー結合体。
【請求項13】
かかる樹状系の分子量が好ましくは40000から1400000g/molの範囲であり、vポリマー鎖と生成樹状結合体の両方におけるドキソルビシン含有量が1wt%と25wt%との間(ポリマーに対して0.3〜8mol%)の範囲であることを特徴とする、請求項9から12に記載のポリマー結合体。
【請求項14】
腫瘍処置に使用するための、請求項9から12のいずれかに記載の物質を有効成分として含む、医薬組成物。
【請求項15】
固形腫瘍処置に使用するための、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
幾つかのタイプのリンパ腫及び白血病の処置に使用するための、請求項14に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−513626(P2013−513626A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543465(P2012−543465)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【国際出願番号】PCT/CZ2010/000131
【国際公開番号】WO2011/072627
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(512153957)
【出願人】(512153968)
【Fターム(参考)】