説明

樹脂パネル接合構造

【課題】簡単な構成でありながら量産性を確保しつつ確実な接合、接合強度の保証を行なうことができる樹脂パネル接合構造を提供する。
【解決手段】樹脂パネル10,20同士を接合する樹脂パネル接合構造であって、一方のパネル10には、他方のパネル20と当接するよう隆起し、かつ一方のパネル10と他方のパネル20とで閉空間19を形成するダム部18が設けられ、一方のパネル10および他方のパネル20の何れか一方には閉空間19と連通する複数の貫通孔23,24が設けられ、複数の貫通孔の少なくとも1つをパネル間接合用の接合剤を注入する注入口23に設定し、複数の貫通孔の他の1つを接合剤充填を確認する確認口24に設定し、注入口23と確認口24とが互に離間形成されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、樹脂パネル同士を接合するような樹脂パネル接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂パネル構造の一例として樹脂バンパの構造を例示すると、一般に樹脂バンパ内にヘッドランプ等の比較的大きい灯体用の開口を形成した場合、バンパレインフォースメントから大きく離間するバンパフェイス上部の剛性、特に灯体用の開口上部近傍の剛性が不足する。
【0003】
このような剛性不足を解消するために従来、特許文献1に記載されたバンパ構造が既に発明されている。
すなわち、樹脂製のバンパフェイスの裏面側(リヤ側)に金属製の補強部材を設け、この補強部材を、バンパフェイスに形成された左右の開口を車幅方向に連結する長さに設定し、該補強部材でバンパフェイスを補強すると共に、これら両者(補強部材とバンパフェイス)を車体に対して共締め固定するように構成したものである。
【0004】
この特許文献1に開示された従来構造においては、補強部材でバンパフェイスを補強することができる反面、バンパが樹脂製のバンパフェイスと金属製の補強部材との材料を異にする2つの部材から構成されている関係上、車体に対する取付け構造が複雑化する問題点があった。
【0005】
このような問題点を解決するために、補強部材を樹脂で構成し、バンパフェイスと補強部材とを両面接着テープ等で接着固定する構造が考えられるが、この場合、複数箇所への接着テープの貼付工程が必要不可欠となって、生産性が低下する問題点があるうえ、リサイクル時には上記接着テープを剥す工程が必要となり、リサイクル性が大幅に阻害され、さらに極暑地域等においては熱変形に起因してバンパフェイスと補強部材とが剥離される問題点があった。
【特許文献1】実開平1−99755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明は、一方のパネルと他方のパネルとを接合するものにおいて、一方のパネルには他方のパネル側へ隆起して両パネル間に閉空間を形成する部分を設け、何れか一方のパネルには複数の貫通孔を設け、貫通孔の少なくとも1つを接合剤注入用の注入口に設定し、他の1つの貫通孔を確認口に設定し、注入口と確認口とを離間形成することにより、両パネル間を接合剤の充填により接合する際、確認口により接合剤の充填状態を目視確認することができ、簡単な構成でありながら量産性を確保しつつ確実な接合、接合強度の保証を行なうことができる樹脂パネル接合構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による樹脂パネル接合構造は、樹脂パネル同士を接合する樹脂パネル接合構造であって、一方のパネルには、他方のパネルと当接するよう隆起し、かつ一方のパネルと他方のパネルとで閉空間を形成するダム部が設けられ、上記一方のパネルおよび他方のパネルの何れか一方には上記閉空間と連通する複数の貫通孔が設けられ、複数の貫通孔の少なくとも1つをパネル間接合用の接合剤を注入する注入口に設定し、複数の貫通孔の他の1つを接合剤充填を確認する確認口に設定し、上記注入口と確認口とが互に離間形成されたものである。
【0008】
上述の接合剤としては、熱可塑性樹脂を主成分とするホットメルト形接着剤や注入式接着剤を用いることができる。
【0009】
上記構成によれば、両パネルを当接すると、一方のパネルと他方のパネルとの間にダム部にて閉空間が形成され、注入口から閉空間に接合剤を注入して両パネル間を接合する際、確認口からオーバフローする接合剤を目視することで、閉空間に接合剤が確実に充填されたことを確認することができる。
【0010】
この結果、簡単な構成でありながら量産性を確保しつつ確実な接合と、接合強度の保証とを行なうことができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記ダム部は閉ループ状に形成されたものである。
上記構成によれば、閉ループ状のダム部にて接合領域を特定することができると共に、注入口から注入された接合剤が接合領域外に流出するのを阻止することができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記閉空間の内壁を形成するパネルには、上記注入口から注入された接合剤を案内する案内部が設けられたものである。
【0013】
上述の案内部は、案内溝つまり凹溝、または案内突部(凸部)の何れで構成してもよい。
【0014】
上記構成によれば、注入口から注入された接合剤は案内部にて案内されるので、接合剤の拡散が図れ、このため迅速かつ確実に接合剤の充填完了を行なうことができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記案内部は注入口側から確認口側に向けて設けられたものである。
上記構成によれば、案内部の向きにより、接合剤の充填完了をより一層迅速かつ確実に行なうことができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、一方のパネルと他方のパネルとの当接時、一方のパネルのダム部と他方のパネルの閉空間内壁部とが他部に対して優先的に当接すべく構成したものである。
【0017】
上記構成によれば、一方のパネルのダム部と、他方のパネルの閉空間内壁部との高い密着性が確保でき、これにより、接合剤の充填性向上を図ることができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、一方のパネルは車両のバンパ外表面を形成するバンパフェイスに設定され、他方のパネルは該バンパフェイスを補強する補強部材に設定され、上記注入口および確認口は補強部材に設けられたものである。
【0019】
上記構成によれば、注入口および確認口を補強部材側に設けたので、バンパフェイスの意匠面を損なうことなく、該バンパフェイスを補強することができる。
【0020】
この発明の一実施態様においては、上記バンパフェイスには開口が設けられると共に、上記補強部材は開口縁の少なくとも一部に沿うように設けられたものである。
【0021】
上記構成によれば、バンパフェイスに開口が設けられると、この開口周辺部の剛性が低下するが、開口縁に沿う補強部材にてバンパフェイスの開口周囲の剛性を確保することができる。
【0022】
この発明の一実施態様においては、上記開口に対応する車体側には灯体が固定され、該灯体は開口を通して光を放射するよう設けられたものである。
【0023】
上述の灯体は、車両の前照灯つまりヘッドランプに設定してもよい。
上記構成によれば、灯体が車体側に固定されている場合、バンパフェイスの熱変形により生ずる灯体とバンパフェイスとの間の隙を最小限に抑止することができる。
この発明の一実施態様においては、上記接合剤はパネルと同系素材に設定されたものである。
【0024】
上述の接合剤としては、樹脂パネルと同系の素材から成るホットメルト形接着剤(いわゆるホットメルト)を用いてもよい。
上記構成によれば、樹脂パネルのリサイクル時に、パネルや接合剤を剥す必要がなくなるので、リサイクル性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、一方のパネルと他方のパネルとを接合するものにおいて、一方のパネルには他方のパネル側へ隆起して両パネル間に閉空間を形成する部分を設け、何れか一方のパネルには複数の貫通孔を設け、貫通孔の少なくとも1つを接合剤注入用の注入口に設定し、他の1つの貫通孔を確認口に設定し、注入口と確認口とを離間形成したので、両パネル間を接合剤の充填により接合する際、確認口により接合剤の充填状態を目視確認することができ、簡単な構成でありながら量産性を確保しつつ確実な接合、接合強度の保証を行なうことができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
一方のパネルと他方のパネルとを接合剤の充填により接合する際、接合剤の充填状態を目視確認でき、簡単な構成でありながら量産性を確保しつつ確実な接合を得るという目的を、一方のパネルには、他方のパネルと当接するよう隆起し、かつ一方のパネルと他方のパネルとで閉空間を形成するダム部を設け、両パネルのうちの何れか一方には上記閉空間と連通する複数の貫通孔を設け、複数の貫通孔の少なくとも1つをパネル間接合用の接合剤を注入する注入口に設定し、複数の貫通孔の他の1つを接合剤充填を確認する確認口に設定し、上記注入口と確認口とを互に離間形成するという構成にて実現した。
【実施例】
【0027】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は樹脂パネル同士を接合する樹脂パネル接合構造を示すが、以下の実施例においては一方のパネルとしての樹脂製のバンパフェイスと、他方のパネルとしての樹脂製のバンパガード(補強部材)とを接合する構造について説明する。
【0028】
図1はバンパフェイス10と、バンパガード20とを分解して示す平面図であって、バンパフェイス10は図2に平面図で、図3に正面図で、図4に右側面図で、図5に斜視図でそれぞれ示すように構成されている。
【0029】
すなわち、このバンパフェイス10はそのフロント側先端部11から左右両側部にかけて湾曲する湾曲形状に構成され、左右両側部の上部にはヘッドライト用の開口部12,12が形成され、フロント側中間部にはバンパフェイス10に沿って車幅方向に延びるエアインテーク部13が形成されている。
【0030】
また上述のヘッドライト用の開口部12,12の下方で、かつエアインテーク部13の車幅方向外方に対応する部位には、フォグランプ用の開口部14,14が形成される一方、上述のエアインテーク部13の下部には下部エアインテーク部15が車幅方向に延びるように形成されている。
【0031】
さらに上述のバンパフェイス10の上端部リヤ側には車体パネルに取付けられる平面視略円弧状のフランジ部16が一体形成され、このフランジ部16には複数の取付け孔17…が設けられている。ここで、上述のバンパフェイス10は車両のバンパ外表面を形成するものである。
【0032】
図1に示すように、上述のバンパフェイス10における左右のヘッドライト用の開口部12,12周辺にはその内側(リヤ側)から左右一対かつ左右略対称構造のバンパガード20,20が接合固定され、これらバンパガード20,20でバンパフェイス10を補強するように構成している。
【0033】
図6は車両の右側に位置するバンパガード20の平面図、図7はその正面図、図8は右側面図、図9は斜視図であって、バンパガード20はバンパフェイス10のコーナ部内面に対応する湾曲形状に形成されると共に、図10(図10はバンパフェイス10とバンパガード20とを組合わせた状態下における図6のA−A線矢視断面図)にも示すように、ヘッドライト用の開口部12の開口縁12a(図1〜図5参照)と対応する部分には該開口縁12aの全周に沿う開口縁21aをもった開口部21が形成され、バンパガード20の一部が開口縁12aに沿うように形成されている。
【0034】
また、上述のバンパガード20にはバンパフェイス10のフランジ部16と対応する位置に折曲げ部22が一体形成されている。
図10においてバンパフェイス10の開口部12およびバンパガード20の開口部21と対応して、灯体としてのヘッドランプ30が設けられている。このヘッドランプ30は車体側に固定されると共に、ヘッドランプ30は各開口部12,21を通して光を放射するように設けられている。
【0035】
このヘッドランプ30はレンズ31、本体としてのハウジング32(いわゆるレンズボディ)、バルブおよびリフレクタを備え、これら各要素がユニット化されたものである。なお、図10において、33は車体パネルとしてのフェンダパネル、34はフェンダパネル33の位置決め孔33aに挿入される位置決めピンであって、この位置決めピン34はバンパガード20の上部背面側から車両後方に向けて一体形成されている。
【0036】
ところで、図1〜図5に示すように一方のパネルとしてのバンパフェイス10において開口部12の周辺近傍には、補強部材としてのバンパガード20と当接するように該バンパフェイス10の裏面側に隆起する閉ループ状の複数のダム部18,18…が一体形成されている。
【0037】
図11はバンパフェイス10とバンパガード20とを当接させた状態下における図6のB−B線矢視断面図であって、上述の各ダム部18(但し、図11では1つのダム部のみを示す)はバンパフェイス10とバンパガード20とで閉空間19を形成するためのものである。
【0038】
図11に示すように、一方のパネルとしてのバンパフェイス10と他方のパネルとしてのバンパガード20との当接時に、バンパフェイス10裏面側の閉ループ状のダム部18とバンパガード20の閉空間内壁部20aとが他部20bに対して優先的に当接するように構成されている。
【0039】
すなわち、ダム部18と当接するバンパガード20は、ダム部18が設けられたバンパフェイス10の裏面に対して所定間隔Lを形成するように構成されている。
また、一方のパネルおよび他方のパネルの何れか一方には上述の閉空間19と連通する複数の貫通孔23,24が設けられている。この実施例では一方のパネルをバンパフェイス10に設定しているので、このバンパフェイス10の意匠面10a(外表面)の美観を損なわないことを目的として、他方のパネルとしてのバンパガード20に複数の貫通孔23,24を設け、複数の貫通孔23,24の
1つを閉空間19内に接合剤α(図14、図15参照)を注入する注入口23に設定し、複数の貫通孔23,24の他の1つを接合剤αの充填を確認する確認口としてのオーバフロー孔24に設定すると共に、これら注入口23とオーバフロー孔24とを互に離間形成している。さらに、バンパフェイス10とバンパガード20とを、ダム部18以外では当接しないよう構成し、上記優先的当接をより確実にしてもよい。
【0040】
この実施例では閉ループ状のダム部18で形成される1つの閉空間19に合計2つの貫通孔23,24を形成し、一方の貫通孔をパネル間接合用の接合剤αを注入する注入口23に設定し、他方の貫通孔を接合剤αの充填を確認する確認口としてのオーバフロー孔24に設定したが、注入口23およびオーバフロー孔24、特に注入口23は1つの閉空間19に対して複数設けてもよい。
【0041】
図12は図11のC−C線に沿う要部の矢視図、図13は図11のD−D線矢視断面図であって、図11に示す閉空間19の内壁部10b,20aを形成するパネル、この実施例ではバンパフェイス10の裏面側には図12,図13に示すように、上述の注入口23から注入された接合剤αを案内する案内部としての凹状の案内溝25を設けている。
【0042】
図12に示すように、上述の案内溝25は注入口23側からオーバフロー孔24側に向けて設けられると共に、注入口23近傍からオーバフロー孔24近傍にわたるように設けられている。この実施例では閉ループ状のダム部18により比較的細長い閉空間19が形成されているので、上述の案内溝25は閉空間19の中央部においてその長手方向に沿うように形成されると共に、この案内溝25にはオーバフロー孔24側に傾斜する複数の分岐溝26が連続して形成されている。
【0043】
ここで、上述のオーバフロー孔24は注入口23から閉空間19内に充填される接合剤αの充填下流側においてダム部18の近傍に設けられている。また上述の接合剤αとしては樹脂パネルつまりバンパフェイス10、バンパガード20と同系素材のもの、例えば同系素材からなるホットメルト形接着剤を用いることができる。
【0044】
バンパフェイス10の裏面側にバンパガード20を接合する場合、まず、図11に示すようにバンパフェイス10とバンパガード20とを当接して、固定治具27のクランプ部材28にて両パネルをクランプする。すなわち、図11に仮想線βで示すアンクランプ位置のクランプ部材28をハンドル29の操作により支点29aを中心として同図に実線で示すクランプ位置に操作し、クランプ部材28先端のラバー部材28aを介してバンパガード20に傷を付けないように両パネルをクランプする。
【0045】
この時、バンパフェイス10側のダム部18とバンパガード20の閉空間内壁部20aとが他部20bに対して優先的に当接するので、両者18,20a間にクリアランスが形成されることなく、これら両者18,20a間の高い密着性を確保することができる。
【0046】
次に、ノズル部40aおよび把持部40bを備えてなる接着ガン40を、図11に示す状態から図14に示すようにバンパガード20に当接し、該バンパガード20の注入口23に接着ガン40のノズル部40a先端を一致させて、接合剤αを注入口23から閉空間19内へ注入する。
【0047】
接合剤αはダム部18および閉空間内壁部10b,20aで囲繞された閉空間19内に順次充填されるが、この時、上述の案内溝25および分岐溝26により接合剤αがオーバフロー孔24側に向けて、拡散、案内され、接合剤αの流れが助長されるので、接合剤αを迅速かつ確実に充填することができる。
【0048】
接合剤αが閉空間19内部に完全に充填されると、この接合剤αは、図15に示すように、オーバフロー孔24の孔内を満たすので、目視によって閉空間19に対する接合剤αの充填が終了したことを確認することができる。なお、その他の閉空間19に対しても同様に接合剤αを充填する。また、上述のオーバフロー孔24は接合剤αの充填完了までの間は閉空間19内の空気を外部に逃す空気抜き穴を兼ねるものであって、このオーバフロー孔24は注入口23に対して小径に形成してもよい。
【0049】
上述の接合剤αとしてパネルと同系素材からなるホットメルト形接着剤を用いた場合には、この接着剤の冷却後にバンパフェイス10とバンパガード20とが強固に接合一体化される。
【0050】
なお、図中、矢印Fは車両の前方を示すものである。
このように上記実施例の樹脂パネル接合構造は、樹脂パネル(バンパフェイス10、バンパガード20参照)同士を接合する樹脂パネル接合構造であって、一方のパネル(バンパフェイス10参照)には、他方のパネル(バンパガード20参照)と当接するよう隆起し、かつ一方のパネル(バンパフェイス10参照)と他方のパネル(バンパガード20参照)とで閉空間19を形成するダム部18が設けられ、上記一方のパネル(バンパフェイス10参照)および他方のパネル(バンパガード20参照)の何れか一方(この実施例ではバンパガード20側)には
上記閉空間19と連通する複数の貫通孔23,24が設けられ、複数の貫通孔23,24の少なくとも1つをパネル間接合用の接合剤αを注入する注入口23に設定し、複数の貫通孔23,24の他の1つを接合剤充填を確認する確認口としてのオーバフロー孔24に設定し、上記注入口23とオーバフロー孔24とが互に離間形成されたものである。
【0051】
この構成によれば、両パネル(バンパフェイス10、バンパガード20参照)
を当接すると、一方のパネル(バンパフェイス10参照)と他方のパネル(バンパガード20参照)との間にダム部18にて閉空間19が形成され、注入口23から閉空間19に接合剤αを注入して両パネル間(バンパフェイス10、バンパガード20間参照)を接合する際、オーバフロー孔24からオーバフローする接合剤αを目視することで、閉空間19に接合剤αが確実に充填されたことを確認することができる。
【0052】
この結果、簡単な構成でありながら量産性を確保しつつ確実な接合と、接合強度の保証とを行なうことができる。
また、上記ダム部18は閉ループ状に形成されたものである。
この構成によれば、閉ループ状のダム部18にて接合領域を特定することができると共に、注入口23から注入された接合剤αが接合領域外に流出するのを阻止することができる。
【0053】
さらに、上記閉空間19の内壁を形成するパネル(バンパフェイス10、バンパガード20参照)には、上記注入口23から注入された接合剤αを案内する案内部(案内溝25参照)が設けられたものである。
【0054】
この構成によれば、注入口23から注入された接合剤αは案内部(案内溝25参照)にて案内されるので、接合剤αの拡散が図れ、このため迅速かつ確実に接合剤αの充填完了を行なうことができる。
【0055】
加えて、上記案内部(案内溝25参照)は注入口23側から確認口(オーバフロー孔24参照)側に向けて設けられたものである。
上記構成によれば、案内部(案内溝25参照)の向きにより、接合剤αの充填完了をより一層迅速かつ確実に行なうことができる。
【0056】
また、一方のパネル(バンパフェイス10参照)と他方のパネル(バンパガード20参照)との当接時、一方のパネル(バンパフェイス10参照)のダム部18と他方のパネル(バンパガード20参照)の閉空間内壁部20aとが他部20bに対して優先的に当接すべく構成したものである。
【0057】
この構成によれば、一方のパネル(バンパフェイス10参照)のダム部18と、他方のパネル(バンパガード20参照)の閉空間内壁部20aとの高い密着性が確保でき、これにより、接合剤の充填性向上を図ることができる。
【0058】
しかも、一方のパネルは車両のバンパ外表面を形成するバンパフェイス10に設定され、他方のパネルは該バンパフェイス10を補強するバンパガード20に設定され、上記注入口23および確認口(オーバフロー孔24参照)はバンパガード20に設けられたものである。
【0059】
この構成によれば、注入口23および確認口(オーバフロー孔24参照)をバンパガード20側に設けたので、バンパフェイス10の意匠面を損なうことなく、該バンパフェイス10を補強することができる。
【0060】
また、上記バンパフェイス10には開口部12が設けられると共に、上記バンパガード20は該開口部12の開口縁12aの少なくとも一部に沿うように設けられたものである。
【0061】
この構成によれば、バンパフェイス10に開口部12が設けられると、この開口周辺部の剛性が低下するが、開口縁12aに沿うバンパガード20にてバンパフェイス10の開口周囲の剛性を確保することができる。
【0062】
さらに、上記開口部12に対応する車体側には灯体(ヘッドランプ30参照)が固定され、該灯体(ヘッドランプ30参照)は開口部12を通して光を放射するよう設けられたものである。
【0063】
この構成によれば、灯体(ヘッドランプ30参照)が車体側に固定されている場合、バンパフェイス10の熱変形により生ずる灯体とバンパフェイス10との間の隙を最小限に抑止することができる。
【0064】
加えて、上記接合剤αは樹脂パネル(バンパフェイス10、バンパガード20参照)と同系素材に設定されたものである。
この接合剤αとしては、樹脂パネルと同系の素材から成るホットメルト形接着剤(いわゆるホットメルト)を用いてもよい。
【0065】
この構成によれば、樹脂パネル(バンパフェイス10、バンパガード20参照)のリサイクル時に、パネルや接合剤αを剥す必要がなくなるので、リサイクル性の向上を図ることができる。
【0066】
図16は閉ループ状のダム部18の他の実施例を示し、注入口23側およびオーバフロー孔24側に対応する部分のダム部18の形状を円弧状と成したものである。
【0067】
このように構成すると、接合剤αがより一層拡散しやすくなるので、閉空間19に対する接合剤αの充填性向上を図ることができる。図16に示すように構成しても、その他の構成、作用、効果については図12で示した先の実施例と同様であるから、図16において図12と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0068】
図17は案内部の他の実施例を示し、図13で示した実施例においては案内部として凹状に窪む案内溝25を採用したが、この図17に示す実施例においてはバンパフェイス10の閉空間内壁部10bに案内突起25Aを一体形成したものである。
【0069】
この案内突起25Aも図12、図13で示した案内溝25と同様に、注入口23側からオーバフロー孔24側に向けて形成される。
また図17で示すこの実施例においては、注入口23の閉空間19と対向する部分にはテーパコーン形状の拡散孔23aを連続して設け、接合剤αの注入時における拡散性の向上を図るように構成している。
【0070】
図17に示すように構成しても、その他の構成、作用、効果については図13で示した先の実施例とほぼ同様であるから、図17において図13と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0071】
図18は樹脂パネル接合構造のさらに他の実施例を示し、図12で示した先の実施例においては、方形枠状のダム部18により細長い閉空間19を形成したが、図18に示すこの実施例においては、円環状のダム部18により円形の閉空間19を形成し、バンパガード20の閉空間内壁部20aにおいて円形の中心部分に注入口23を形成し、ダム部18に近傍する径方向外方部にオーバフロー孔24を形成したものである。
【0072】
図18に示すように構成しても、その他の構成、作用、効果については図12で示した先の実施例とほぼ同様であるから、図18において図12と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0073】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の一方のパネル(樹脂パネル)は、実施例のバンパフェイス10に対応し、
以下同様に、
他方のパネル(樹脂パネル)は、バンパガード20(補強部材)に対応し、
確認口は、オーバフロー孔24に対応し、
案内部は、案内溝25、案内突起25Aに対応し、
バンパフェイス10の開口は、ヘッドランプ配設用の開口部12に対応し、
灯体は、ヘッドランプ30に対応し、
補強部材は、バンパガード20に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0074】
例えば、上記案内部(案内溝25、案内突起25A参照)はバンパガード20側に設けてもよい。また上記実施例の接合構造は樹脂パネル同士を一時的に仮止めする仮止め接合として用いてもよく、特に図18で示した構成は樹脂パネル同士の仮止め接合として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の樹脂パネル接合構造を示す分解平面図
【図2】バンパフェイスの平面図
【図3】バンパフェイスの正面図
【図4】バンパフェイスの右側面図
【図5】バンパフェイスの斜視図
【図6】バンパガードの平面図
【図7】バンパガードの正面図
【図8】バンパガードの右側面図
【図9】バンパガードの斜視図
【図10】バンパフェイスとバンパガードとを組合せた状態下における図6のA−A線矢視断面図
【図11】バンパフェイスとバンパガードとを組合せた状態下における図6のB−B線矢視断面図
【図12】図11のC−C線に沿う要部の矢視図
【図13】図11のD−D線矢視断面図
【図14】接合剤注入時の説明図
【図15】接合剤充填完了時の説明図
【図16】ダム部の他の実施例を示す説明図
【図17】案内部の他の実施例を示す断面図
【図18】樹脂パネル接合構造の他の実施例を示す説明図
【符号の説明】
【0076】
10…バンパフェイス(一方のパネル)
12…開口部(開口)
12a…開口縁
18…ダム部
19…閉空間
20…バンパガード(他方のパネル)
20a…閉空間内壁部
20b…他部
23…注入口(貫通孔)
24…オーバフロー孔(貫通孔)
25…案内溝(案内部)
25A…案内突起(案内部)
30…ヘッドランプ(灯体)
α…接合剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂パネル同士を接合する樹脂パネル接合構造であって、
一方のパネルには、他方のパネルと当接するよう隆起し、かつ一方のパネルと他方のパネルとで閉空間を形成するダム部が設けられ、
上記一方のパネルおよび他方のパネルの何れか一方には上記閉空間と連通する複数の貫通孔が設けられ、
複数の貫通孔の少なくとも1つをパネル間接合用の接合剤を注入する注入口に設定し、
複数の貫通孔の他の1つを接合剤充填を確認する確認口に設定し、
上記注入口と確認口とが互に離間形成された
樹脂パネル接合構造。
【請求項2】
上記ダム部は閉ループ状に形成された
請求項1記載の樹脂パネル接合構造。
【請求項3】
上記閉空間の内壁を形成するパネルには、上記注入口から注入された接合剤を案内する案内部が設けられた
請求項1または2記載の樹脂パネル接合構造。
【請求項4】
上記案内部は注入口側から確認口側に向けて設けられた
請求項3記載の樹脂パネル接合構造。
【請求項5】
一方のパネルと他方のパネルとの当接時、一方のパネルのダム部と他方のパネルの閉空間内壁部とが他部に対して優先的に当接すべく構成した
請求項1〜4の何れか1に記載の樹脂パネル接合構造。
【請求項6】
一方のパネルは車両のバンパ外表面を形成するバンパフェイスに設定され、
他方のパネルは該バンパフェイスを補強する補強部材に設定され、
上記注入口および確認口は補強部材に設けられた
請求項1〜5の何れか1に記載の樹脂パネル接合構造。
【請求項7】
上記バンパフェイスには開口が設けられると共に、上記補強部材は開口縁の少なくとも一部に沿うように設けられた
請求項6記載の樹脂パネル接合構造。
【請求項8】
上記開口に対応する車体側には灯体が固定され、該灯体は開口を通して光を放射するよう設けられた
請求項7記載の樹脂パネル接合構造。
【請求項9】
上記接合剤はパネルと同系素材に設定された
請求項1〜8の何れか1に記載の樹脂パネル接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−199121(P2006−199121A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−12211(P2005−12211)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)