説明

樹脂フィルム成形装置および樹脂フィルム成形装置における付着物除去方法

【課題】樹脂フィルム成形装置の稼働率を低下させることなく、モールドロール外周面のパーティクル付着、樹脂付着に起因する不良品の発生を未然に防止すること。
【解決手段】外周面に粘着剤層44を有する付着物粘着除去ロール41を用い、モールドロール11の外周面に付着物粘着除去ロール41の粘着剤層44を押し付けられることにより、モールドロール11の外周面に付着している付着物fを粘着剤層44に粘着付着させて除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、樹脂フィルム成形装置および樹脂フィルム成形装置における付着物除去方法に関し、特に、外周面に微細な凹凸形状を形成されたモールドロール(パターンロール)を用いて転写により微細凹凸形状を有する樹脂フィルムを成形する樹脂フィルム成形装置および樹脂フィルム成形装置における付着物除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリズムシート等、微細凹凸形状を有する光学的な樹脂フィルムを製造する樹脂フィルム成形装置として、外周面に微細な凹凸形状を形成されたモールドロールの外周面に樹脂フィルムをバックアップロール(タッチロール)等によって押し付け、モールドロールの外周面に形成されている凹凸形状を樹脂フィルムに転写することにより、微細凹凸形状を有する光学的な樹脂フィルムを成形する転写式の樹脂フィルム成形装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−291251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
熱可塑性の樹脂フィルムの場合には、加熱により軟化した(流動性を高めた)樹脂フィルムをモールドロールの外周面に押し付けてロール外周面の凹凸形状を樹脂フィルムに転写するが、この成形プロセスにおいて、ロール外周面の凹凸形状部に、パーティクルが付着したり、離型不良(剥離不良)によって樹脂の一部が欠けて付着することがある。
【0004】
このような現象が生じると、図3(a)〜(c)に示されているように、樹脂フィルムFの一部がパターン欠損eが生じ、不良品が発生することになる。
【0005】
また、ロール外周面の凹凸形状部Pに残った残留付着物(付着物)fがロール外周面の凹凸形状部Pの凹部(谷部)を塞ぎ、モールドロールにパターン不良(型不良)が生じることになる。このため、これより以降の樹脂フィルム成形においては、図3(d)〜(f)に示されているように、新たな離型不良が生じなくても、型不良によってパターン欠損eを有する不良品が製造され続けられることになると云う重大な問題を生じることになる。
【0006】
なお、図3(a)〜(f)においては、図示の簡素化のために、モールドロールの外周面を平面状に展開して模式的に図示している。
【0007】
モールドロール外周面へのパーティクル付着、樹脂付着を防止するために、ロール外周面の凹凸形状の表面に、撥水・撥油性を有する離型剤膜を形成することが行われるが、離型回数を重ねるに連れて離型剤膜の劣化、剥離が生じ、初期の離型性能を維持できなくなる。
【0008】
このため、従来の樹脂フィルム成形装置では、保守作業として、モールドロールを樹脂フィルム成形装置より定期的に取り外して付着物を除去する清掃処理と、ロール外周面の凹凸形状表面に離型剤を塗布する離型処理を行う必要があった。この保守作業は、面倒で、時間を要し、不良品の発生率を下げるためには、この保守作業を比較的頻繁に行う必要があり、樹脂フィルム成形装置の稼働率を低下させる原因になる。
【0009】
この発明は、従来の樹脂フィルム成形装置に於ける上述の如き問題点を解消するためになされたもので、樹脂フィルム成形装置の稼働率を低下させることなく、モールドロール外周面のパーティクル付着、樹脂付着に起因する不良品の発生を未然に防止できる樹脂フィルム成形装置および樹脂フィルム成形装置における付着物除去方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明による樹脂フィルム成形装置は、外周面に微細な凹凸形状が形成されたモールドロールの外周面に樹脂フィルムを押し付け、前記モールドロールの外周面に形成されている凹凸形状を前記樹脂フィルムに転写する樹脂フィルム成形装置において、外周面に粘着剤層を有し、前記粘着剤層を前記モールドロールの外周面に押し付けられることにより前記モールドロールの外周面に付着している付着物を前記粘着剤層に粘着付着させて除去する付着物粘着除去ロールを有する。
【0011】
この発明による樹脂フィルム成形装置は、好ましくは、前記付着物粘着除去ロールは、前記樹脂フィルムが前記モールドロールの外周面より剥離する回転位相位置より、前記モールドロールの回転方向で見て、前記樹脂フィルムが前記モールドロールの外周面に接触する回転位相位置までの間のロール回転位相範囲内において、前記粘着剤層が前記モールドロールの外周面に接触する位置に配置されている。
【0012】
この発明による樹脂フィルム成形装置は、好ましくは、前記付着物除去ロールは、一方の面に粘着剤層を有する粘着テープを巻き付けられた粘着テープ繰出しリールとして構成され、前記モールドロールの回転に応じて前記付着物粘着除去ロールが回転して前記粘着テープが前記付着物粘着除去ロールより繰り出されるよう構成され、更に、繰り出された前記粘着テープを巻き取る巻取りリールを有する。
【0013】
この発明による樹脂フィルム成形装置は、好ましくは、更に、前記付着物除去ロールの前記粘着剤層が前記モールドロールの外周面に接触する回転位相位置より、前記モールドロールの回転方向で見て、前記樹脂フィルムが前記モールドロールの外周面に接触する回転位相位置までの間のロール回転位相範囲内において、前記モールドロールの外周面に離型剤を塗工する離型剤塗工装置を有する。
【0014】
この発明による樹脂フィルム成形装置における付着物除去方法は、外周面に微細な凹凸形状が形成されたモールドロールの外周面に樹脂フィルムを押し付け、前記モールドロールの外周面に形成されている凹凸形状を前記樹脂フィルムに転写する樹脂フィルム成形装置における付着物除去方法において、外周面に粘着剤層を有する付着物粘着除去ロールを用い、前記付着物粘着除去ロールの前記粘着剤層を前記モールドロールの外周面に押し付け、前記モールドロールの外周面に付着している付着物を前記粘着剤層に粘着付着させて除去する。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、付着物粘着除去ロールの外周面にある粘着剤層をモールドロールの外周面に押し付けることによってモールドロールの外周面に付着している付着物を付着物粘着除去ロールの粘着剤層に粘着付着させてモールドロール外周面より除去する。
【0016】
この付着物除去は、モールドロールを樹脂フィルム成形装置より取り外すことなく、樹脂フィルム成形装置の機上で、自動化して行うことができ、樹脂フィルム成形装置の稼働率を低下させることなく、モールドロール外周面のパーティクル付着、樹脂残渣付着に起因する欠損不良の発生を未然に防止でき、欠損不良がない良品を信頼性よく製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明による樹脂フィルム成形装置および樹脂フィルム成形装置における付着物除去方法の一つの実施形態を、図1、図2を参照して説明する。
【0018】
本実施形態の樹脂フィルム成形装置は、互いに平行に配置されたモールドロール(パターンロール)11と、バックアップロール(タッチロール)21とを有する。モールドロール11の外周面には、プリズムシート等の転写成形のための微細な凹凸形状12(図2参照)が形成されている。
【0019】
なお、図2では、本実施形態の要旨を分かり易くするために、凹凸形状12のピッチ方向をロール周方向にしたが、実際には、凹凸形状12のピッチ方向がロール軸線方向(母線方向)である場合がある。
【0020】
モールドロール11と、バックアップロール21は、各々図示省略の電動機によって回転駆動される。図1では、凹凸形状転写ロール11は反時計廻り方向に、バックアップロール21は時計廻り方向に、各々回転駆動される。
【0021】
凹凸形状を転写して成形される樹脂フィルム、例えば、熱可塑性の樹脂フィルムFは、加熱により軟化した状態で、モールドロール11とバックアップロール21との間に送り込まれ、バックアップロール21によってモールドロール11の外周面に押し付けられ、モールドロール11のほぼ半周(下半分)に亘ってモールドロール11の外周面に貼り付いた状態で、モールドロール11の回転に伴って移動し、この間に、モールドロール11によって冷却されつつ、モールドロール11の外周面の凹凸形状12を転写され、その後、モールドロール11の外周面より剥離し、案内ロール31に案内されて次工程へ移動する。
【0022】
なお、図1において、符号Aは樹脂フィルムFがモールドロール11の外周面に接触する回転位相位置(接触位置)を、符号Bは樹脂フィルムFがモールドロール11の外周面より剥離する回転位相位置(剥離位置)を各々示している。
【0023】
モールドロール11の上方位置には付着物粘着除去ロール41が設けられている。付着物粘着除去ロール41は、図2に示されているように、外周面に粘着剤層44を有し、粘着剤層44をモールドロール11の外周面に押し付けられることにより、モールドロール11の外周面、特に、凹凸形状12の谷部に付着している付着物fを粘着剤層44に粘着付着させて除去する。
【0024】
この実施形態では、付着物粘着除去ロール41は、樹脂フィルムFがモールドロール11の外周面より剥離する回転位相位置Bより、モールドロール11の回転方向(反時計廻り方向)で見て、前記樹脂フィルムFがモールドロール11の外周面に接触する回転位相位置Aまでの間のロール回転位相範囲内において、粘着剤層44がモールドロール11の外周面に接触する位置に配置されている。これにより、付着物粘着除去ロール41とロール外周の樹脂フィルムFとが干渉することがない。
【0025】
付着物粘着除去ロール41は、図2に示されているように、テープ基材(支持体)43の一方の面に粘着剤層44を有する粘着テープ42を巻き付けられた粘着テープ繰出しリールとして構成され、モールドロール11の回転に応じて付着物粘着除去ロール41が回転し、粘着テープ42が付着物粘着除去ロール41より繰り出されるようになっている。
【0026】
なお、粘着テープ42の繰り出しによって付着物粘着除去ロール41の実外径が小さくなっても、粘着テープ42が所要の押付力をもってモールドロール11の外周面に押し付ける状態が維持されるよう、付着物粘着除去ロール41は、図示されていないばね手段等によって、モールドロール11の外周面に弾力的に付勢されている。
【0027】
更に、繰り出された粘着テープ42を巻き取るモータ駆動の巻取りリール51が設けられている。
【0028】
ここで使用する粘着テープ42としては、テープ基材43が樹脂フィルム製で、粘着剤層44は、ゴム系、アクリル系、シリコーン系等による一般的な粘着剤によるものであってよい。
【0029】
また、モールドロール11の真上位置には、離型剤塗工装置61が設けられている。離型剤塗工装置61は、スプレー式のものであり、付着物除去ロール41の粘着剤層44がモールドロールの外周面に接触する回転位相位置Cより、モールドロール11の回転方向(反時計廻り方向)で見て、樹脂フィルムFがモールドロール11の外周面に接触する回転位相位置Aまでの間のロール回転位相範囲内において、モールドロール11の外周面に、撥水・撥油性を有する離型剤62を噴霧塗工する。
【0030】
上述したように、付着物粘着除去ロール41の粘着剤層44がモールドロール11の外周面に押し付けられることにより、モールドロール11の外周面、特に、図2に示されているように、凹凸形状12の谷部に付着している付着物fが、粘着剤層44の粘着力によって粘着剤層44に付着し、凹凸形状12の谷部より取り除かれる。
【0031】
この付着物除去は、付着物粘着除去ロール41の粘着剤層44をモールドロール11の外周面に押し付けるだけで、モールドロール11を樹脂フィルム成形装置より取り外すことなく機上で行うことができるから、樹脂フィルム成形装置の稼働率を低下させることなく、モールドロール外周面のパーティクル付着、樹脂付着に起因する不良品の発生を未然に防止できる。これにより、欠損不良がない良品を信頼性よく製造することが可能になる。
【0032】
なお、付着物粘着除去ロール41の粘着剤層44による付着物除去は、常時行われる必要なく、定期的、例えは、モールドロール11の積算回転回数が所定値になるたびに自動的に行わればよく、付着物除去時以外は、付着物粘着除去ロール41は、粘着剤層44がモールドロール11の外周面より離れる待避位置に移動させておくことができる。
【0033】
また、付着物粘着除去ロール41が粘着テープ42を巻き付けられた粘着テープ繰出しリールとして構成され、モールドロール11の回転に応じて付着物粘着除去ロール41が回転し、粘着テープ42が付着物粘着除去ロール41より繰り出されるので、付着物除去時には、モールドロール11の外周面には常に新しい粘着剤層44が接触する。これにより、粘着剤層44に転移した付着物fがモールドロール11の外周面に再び付着するような不具合を生じることがなく、付着物除去が確実に良好に行われるようになる。
【0034】
更に、離型剤塗工装置61が設けられていることにより、付着物粘着除去ロール41による付着物除去後に、付着物除去ロール41の粘着剤層44がモールドロールの外周面に接触する回転位相位置Cより、モールドロール11の回転方向で見て、樹脂フィルムFがモールドロール11の外周面に接触する回転位相位置Aまでの間のロール回転位相範囲内のモールドロール11の外周面に、離型剤塗工装置61より、離型剤62を噴霧塗工(スプレーコート)することができる。
【0035】
これにより、離型剤塗工も、モールドロール11を樹脂フィルム成形装置より取り外すことなく機上で行うことができ、このことによっても、樹脂フィルム成形装置の稼働率の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明による樹脂フィルム成形装置および樹脂フィルム成形装置における付着物除去方法の一つの実施形態を示す構成図である。
【図2】本実施形態による樹脂フィルム成形装置の要部の拡大図である。
【図3】(a)〜(f)は従来の樹脂フィルム成形装置における問題点を示す説明図である。
【符号の説明】
【0037】
11 モールドロール
12 凹凸形状
21 タッチアップロール
41 付着物粘着除去ロール
42 粘着テープ
43 テープ基材
44 粘着剤層
51 巻取りリール
61 離型剤塗工装置
62 離型剤
F 樹脂フィルム
f 付着物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に微細な凹凸形状が形成されたモールドロールの外周面に樹脂フィルムを押し付け、前記モールドロールの外周面に形成されている凹凸形状を前記樹脂フィルムに転写する樹脂フィルム成形装置において、
外周面に粘着剤層を有し、前記粘着剤層を前記モールドロールの外周面に押し付けられることにより前記モールドロールの外周面に付着している付着物を前記粘着剤層に粘着付着させて除去する付着物粘着除去ロールを有することを特徴とする樹脂フィルム成形装置。
【請求項2】
前記付着物粘着除去ロールは、前記樹脂フィルムが前記モールドロールの外周面より剥離する回転位相位置より、前記モールドロールの回転方向で見て、前記樹脂フィルムが前記モールドロールの外周面に接触する回転位相位置までの間のロール回転位相範囲内において、前記粘着剤層が前記モールドロールの外周面に接触する位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂フィルム成形装置。
【請求項3】
前記付着物除去ロールは、一方の面に粘着剤層を有する粘着テープを巻き付けられた粘着テープ繰出しリールとして構成され、前記モールドロールの回転に応じて前記付着物粘着除去ロールが回転して前記粘着テープが前記付着物粘着除去ロールより繰り出されるよう構成され、更に、繰り出された前記粘着テープを巻き取る巻取りリールを有することを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂フィルム成形装置。
【請求項4】
前記付着物除去ロールの前記粘着剤層が前記モールドロールの外周面に接触する回転位相位置より、前記モールドロールの回転方向で見て、前記樹脂フィルムが前記モールドロールの外周面に接触する回転位相位置までの間のロール回転位相範囲内において、前記モールドロールの外周面に離型剤を塗工する離型剤塗工装置を有することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の樹脂フィルム成形装置。
【請求項5】
外周面に微細な凹凸形状が形成されたモールドロールの外周面に樹脂フィルムを押し付け、前記モールドロールの外周面に形成されている凹凸形状を前記樹脂フィルムに転写する樹脂フィルム成形装置における付着物除去方法において、
外周面に粘着剤層を有する付着物粘着除去ロールを用い、前記付着物粘着除去ロールの前記粘着剤層を前記モールドロールの外周面に押し付け、前記モールドロールの外周面に付着している付着物を前記粘着剤層に粘着付着させて除去することを特徴とする樹脂フィルム成形装置における付着物除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−207474(P2008−207474A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−46960(P2007−46960)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】