説明

樹脂上の金属膜製造方法

【課題】電着塗装方法により形成した樹脂表面に、密着強度の大きい金属めっきを、環境負荷が増大することなく、容易に形成できる方法を提供する。
【解決手段】金属めっき用触媒核となる金属イオンとカチオン電着塗料を混入した触媒核混入電着塗料(S−1)を用いて、触媒核イオンとカチオン電着粒子が同時に混入して電着された、触媒核が表面に表出する、触媒核混入電着樹脂膜を導電性媒体上に形成する(S−4)。そして、この表出触媒核を利用して無電解金属めっき(S−6)を行って金属膜を製造する。強固に樹脂表面と結合した表出触媒核を利用し、それに金属膜が結びついているため、密着力の高い金属膜を得ることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂上の金属膜製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種機器、器具、装飾品などの美的観点の要請から、あるいは導電性などの特性を付与するために、樹脂表面またはプラスチック表面に金属めっきをする場合がある。このとき樹脂表面とめっきした金属との密着力が小さいと金属が樹脂表面から剥離することとなり、使用に耐え得ない。必要とされる密着力は製品用途により異なるが、できるだけ大きいほうが好ましい。
【0003】
樹脂表面に金属めっきをする場合には、通常、触媒金属を樹脂表面に付着させた後に、目的とする金属イオンが溶解している溶液に浸漬し、当該触媒を核として、金属イオンを還元して金属めっき(無電解めっき)する方法が採用されている。
【0004】
一方、樹脂膜を形成する方法の一つとして、電着塗装方法が知られている。この方法は、導電性被塗装媒体を電着塗料溶液中に浸漬し、電界をかけ、溶液中に存在するイオン性化合物を当該媒体に付着させて、導電性媒体表面に樹脂被膜を形成する方法である。こうして形成された樹脂膜表面に金属めっきを施す場合も、上記のめっき方法に準じて、触媒核の表面付着とそれに次いでめっき溶液浸漬による金属めっきを行っている。
【0005】
こうした、樹脂表面への金属めっきは、基本的に触媒核が樹脂表面に付着していることに依存しているので、樹脂とめっき金属間の密着力が一般に弱く、めっき作業中に樹脂表面から付着めっき金属が剥離するなどのケースもある。この弱点を補うため、例えば、樹脂表面のアンカー効果を高めるために、ブラスト処理、プラズマエッチング、あるいはデスミア処理など樹脂表面に凹凸を形成する方法や、化学的吸着を増大させるため特定の被膜(例えば、リン酸塩含有被膜)をめっき処理前に形成する方法、樹脂中に金属粉末を打ち込み、この金属を用いて無電解、電解めっきで金属被膜を得る方法などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3040104号
【特許文献2】特開平11−343593号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】電気鍍金研究会編「次世代めっき技術」日刊工業新聞社1995年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記の密着力向上の方法は、例えば、デスミア処理法は樹脂中に無機フィラーが含有されている場合に有効ではあるが、いずれの樹脂表面に凹凸を形成しアンカー効果を得ようとする方法は、樹脂(膜)の厚さを減少させる作用が大きく、めっき密着力の増大化のために十分有効な凹凸が形成し得ると言い難い。また、化学処理を伴って実施する場合、環境負荷が大きくなる。金属粉末打ち込みの方法は、樹脂の種類を選ぶ必要があり、特に樹脂膜が薄い場合などは、その膜全体の破壊に繋がる懸念もある。
【0009】
そこで本発明の課題は、とくに電着塗装方法により形成した樹脂表面に、密着強度の大きい金属めっきを、従来に比べ環境負荷が増大することなく、比較的容易に形成できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の樹脂上の金属膜製造方法は、
カチオン電着塗料に金属めっき用触媒核となる金属イオンを混入して、触媒核混入電着塗料を作製する工程と、
前記触媒核混入電着塗料を用い、導電性被塗装媒体表面に触媒核混入電着樹脂膜を形成する工程と、
前記触媒核混入電着樹脂膜上に表出した前記金属イオンを還元して金属触媒核とする工程と、
前記金属触媒核を表面に有する前記触媒核混入電着樹脂膜上に無電解めっき膜を形成する工程と
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法により形成される樹脂電着膜の中に取り込まれている触媒核は、樹脂電着膜表面に表出する。この表出触媒核が樹脂膜と強固に結合していることから、表出触媒核と結合して形成されるめっき金属膜も樹脂表面に強く密着した状態で形成され、その結果、樹脂膜上の強固な密着力を有する金属めっき膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の製造工程を説明する工程フロー
【図2】本発明の電着膜形成を説明する図
【図3】本発明の膜生成工程を説明する断面模式図
【図4】比較例の製造工程を説明する工程フロー
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態を、添付図を参照しつつ説明する。
【0014】
図1〜3は、本発明の樹脂上の金属膜製造方法の、製造工程の概要を説明するための工程フロー、電着膜形成模式図、および、製造工程を示すめっき形成媒体の断面模式図である。
【0015】
図1を参照して、本発明の製造方法においては、先ず、触媒核イオン混入電着塗料を準備する工程を要する(図1、S−1)。
【0016】
本発明における電着塗料は、電着可能な樹脂として、一般に知られている低温硬化型樹脂が適用可能で、例えば、アクリル・メラミン系、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系、アルキッド系などが挙げられる。また、電着塗料としては、アニオンタイプとカチオンタイプがあるが、本発明では金属イオン混入とそれを混入した電着膜形成処理を行う関係上、カチオン電着塗料が望ましい。カチオン電着塗料としては、アンモニウム陽イオン型やスルホニウム陽イオン型が適用可能である。
【0017】
一方、金属めっきを行うための触媒としては、一般に、金属Pd(パラジウム)や金属Cu(銅)が知られているが、特に金属Pdが多用されている。この金属Pdの利用にあたって、本発明においては、Pdイオンを電着塗料中に混入させる。この混入にあたっては、例えば、Pdイオンのみを含む溶液を電着塗料に混合する方法と、Sn(スズ)イオンとPdイオンのコロイド溶液を混合する方法があり、いずれも適用可能である。
【0018】
また、被塗装媒体である導電性媒体を用意する(図1、S−2)。導電性媒体としては、ステンレスを初め、用途に応じ、銅、鉄、アルミニウムをはじめ、それらの合金を含む各種導電性金属などを適用することができる。
【0019】
準備したこれらのものを用いて、触媒核混入電着膜形成を行う(図1、S−4)。図2は、本発明における電着膜形成の過程を説明するための模式図である。導電性被塗装媒体1(例えば、各種金属など)と、電極2(例えば、前記導電性媒体と同種の各種金属など)を電着塗料溶液3中に配し、カチオン電着塗料を用いていることから、導電性被塗装媒体1側を陰極、電極2側を陽極にして電界を印加する。これにより、カチオン電着塗料粒子4は導電性被塗装媒体1表面に付着して、塗膜を形成するが、同時に、電着塗料溶液3中に混入したイオン化した触媒核イオン5(例えば、Pd2+、(Pd/Sn)n+)が、カチオン電着塗料粒子4の流れに乗って導電性被塗装媒体1表面に向かい、樹脂膜である電着塗膜の中に取り込まれて、触媒核混入電着膜が形成される。
【0020】
本発明においては、触媒核イオン5が樹脂電着膜である触媒核混入電着膜7内に取り込まれる一方、特に、取り込まれている触媒核の一部がこの触媒核混入電着膜7の表面に相当数露出していることが重要である。このことから、電着膜中における塗料成分に対する触媒核原子の量が、一定数以上存在することが必要である。例えば、電着塗料成分(固形分)に対して金属イオン材料を等重量以上混合することが望ましく、そうすることで、触媒核混入電着膜7の表面に相当数の触媒核イオン5が存在することがわかった。
【0021】
勿論、電着塗料成分に対する金属イオン材料の量が多いほど、樹脂電着膜中の触媒核の表面表出機会が多くなることはいうまでもないが、本発明では、触媒核イオンが電着樹脂の樹脂表面に露出し、かつ、分子鎖間にトラップされる必要があるため、触媒核イオンの混入量に下限および上限値が存在し、電着樹脂固形分に対して、触媒核イオンの含有量は、70〜150重量部の範囲である。混入量が過小であると、めっきの密着力が発現せず、また、過大であると、触媒核イオンが樹脂表面に付着しても容易に脱落し、後のめっき工程で有効に利用されないことになる。
【0022】
次に、表出した触媒核イオン5を還元して金属化することや余分な触媒核イオンを溶解除去することなどの、還元化処理(図1、S−5)を行う。すなわち、混入触媒核イオンとして、触媒イオンがPd2+(イオンのみの場合には、例えば、Sn2+イオンを含む還元試薬溶液(例えば、塩化スズ水溶液)中に浸漬するなどして、金属Pdに変換する。Sn2+イオンとPd2+イオンのコロイド溶液((Pd/Sn)n+イオン)を用いる場合は、酸洗浄により、余分なSn2+イオンを除去する処理を行う。
【0023】
触媒核混入電着膜形成(図1、S−4)以降の工程を、図3の形成媒体断面模式図を用いて説明する。図3(1)において、導電性被塗装媒体1上に、表出した触媒核イオンが還元された触媒核6を含む触媒核混入電着膜7が形成されていることを示す。
【0024】
そして、これを、めっきの目的とする金属イオンを含有する溶液(めっき液)中に浸漬し、所望の金属の無電解金属めっき(図1、S−6)をする。すなわち、図3(2)に示すように、触媒核混入電着膜7の上に、表出する触媒核6(この場合、Pd金属核)をもとに、無電解金属めっき膜8を形成する。無電解金属めっき膜8として、例えば、銅(Cu)膜やニッケル(Ni)膜を形成する。
【0025】
そして、必要に応じて、例えば、熱硬化型の樹脂膜である触媒核混入電着膜7に対し、加熱による樹脂膜の架橋硬化処理、すなわち架橋処理(図1、S−7)を行う。こうした架橋処理は、この工程時点ではなく、例えば、無電解金属めっき(図1、S−6)工程の前または後に、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性気体雰囲気中で熱による硬化のための架橋処理を行ってもよい。
【0026】
こうして形成した、樹脂膜上の金属膜、つまり触媒核混入電着膜7上の無電解金属めっき膜8においては、無電解金属めっき膜8の基となる触媒核6、例えばPd金属、は、樹脂を構成する化学結合内、あるいは高分子の網目内に取り込まれて固定化されており、それと結合する金属めっき膜は樹脂膜表面と強固に結びつくことが可能となる。
【0027】
形成された無電解金属めっき膜8は通常、かなり薄い金属膜であり、実用的な金属膜の膜厚を得るために、この無電解金属めっき膜8を一方の電極として、金属電解めっき液中で電気金属めっき(図1、S−8)を行って、図3(3−1)に示すように、無電解金属めっき膜8上に電気金属めっき膜9を形成してもよい。
【0028】
更に、図1の工程フローにおいて、導電性媒体(S−2)表面に、先ず、触媒核イオンを混入しない電着塗料により、触媒核が混入されない通常の樹脂膜形成である、電着膜形成(S−3)を行い、そして、その電着膜上に、触媒核イオン混入電着塗料(S−1)を用いた触媒核混入電着膜形成(S−4)を行う工程を採用し、以降、同一工程を踏む膜形成を行ってもよい。こうして形成された膜構成の断面模式図を、図3(3−2)に示す。この図において、導電性被塗装媒体1上に(触媒核が混入しない)電着膜10が形成され、その上に、順次、触媒核6が混入した触媒核混入電着膜7、無電解金属めっき膜8、電気金属めっき膜9が形成される。
【0029】
この工程は、いわば、樹脂電着膜の「重ね塗り」に相当する。この方法によって、(触媒核が混入しない)電着膜10の膜厚を目的用途に必要な、十分な厚さのものに形成する一方、この上に、触媒核混入電着膜7を、その樹脂膜内に固定化され、かつその膜表面に表出した触媒核6を得るのに必要なだけの薄い膜を形成する。このようにすることで、比較的高価なPd金属の使用量をより少なくすることができる一方、触媒核の表面表出の機会を多くし、強固なめっき形成のための多量の触媒核を獲得できるという特長を有している。
【実施例】
【0030】
(第1の実施例)
(1)触媒核混入電着膜の形成
カチオン電着塗料(商品名;エレコートCM、株式会社シミズ製)100重量部、
(Pd/Sn)コロイド溶液(商品名;キャタポジット44、ロームアンドハース社製)100重量部、
両者を攪拌して均一混合する。このとき、この混合比率は、電着塗料の固形物100重量部に対し、Pd2+イオンの含有量が120重量部になる。<触媒核イオン混入電着塗料(S−1)相当>
この混合電着塗料溶液を500ml用い、厚さ2mm、100mm□、のステンレス板2枚をおのおの陽極および陰極とし、15V、20秒間電着を実施。陰極ステンレス板表面に、膜厚20μmの電着塗膜を形成。<触媒核混入電着膜形成(S−4)相当>
(2)銅めっき膜の形成
上記電着塗膜を形成した塗装板を、触媒活性化溶液のアクセレレータ(商品名;キューポジットアクセレレータ19E、ロームアンドハース社製)の17vol%水溶液中に6分間浸漬。<還元化処理(S−5)相当>
次いで、硫酸銅溶液(還元剤;ホルムアルデヒド)中に25分間浸漬。膜厚約0.2μmの無電解銅めっき被膜を形成。<無電解金属めっき(S−6)相当>
次いで、150℃、30分間熱処理して熱硬化、架橋構造を完成。<架橋処理(S−7)相当>
さらに、この塗装板を、硫酸銅を主体とする電気めっき液中、電流密度2.0A/(dm)、100分間電気めっき。膜厚30μmの電気銅めっき被膜を形成。<電気金属めっき(S−8)相当>
(3)膜密着強度の測定
JIS C 6481の規格により、銅膜密着力、つまり、実質的には、樹脂膜と銅膜(無電解銅めっき幕と電気銅めっき膜からなる膜)との密着強度の測定を行った結果、平均12N/cmを得た。
【0031】
(第2の実施例)
(1)触媒核混入電着膜の形成
カチオン電着塗料(商品名;エレコートCM、株式会社シミズ製)100重量部、
塩化パラジウム溶液(商品名;アクチベータ、奥野製薬工業社製)100重量部、
両者を攪拌して均一混合する。このとき、この混合比率は、電着塗料の固形物100重量部に対し、Pd2+イオンの含有量が90重量部になる。<触媒核イオン混入電着塗料(S−1)相当>
この混合電着塗料溶液を500ml用い、厚さ2mm、100mm□、のステンレス板2枚をおのおの陽極および陰極とし、15V、20秒間電着を実施。陰極ステンレス板表面に、膜厚20μmの電着塗膜を形成。<触媒核混入電着膜形成(S−4)相当>
(2)銅めっき膜の形成
上記電着塗膜を形成した塗装板を、塩化スズ溶液(商品名;センシタイザ、奥野製薬工業社製)の10vol%水溶液中に5分間浸漬。Pd2+イオンのPd金属へ還元<還元化処理(S−5)相当>
次いで、硫酸銅溶液(還元剤;ホルムアルデヒド)中に25分間浸漬。膜厚約0.2μmの無電解銅めっき被膜を形成。
【0032】
次いで、150℃、30分間熱処理して熱硬化、架橋構造を完成。<架橋処理(S−7)相当>
さらに、この塗装板を、硫酸銅を主体とする電気めっき液中、電流密度2.0A/(dm)、100分間電気めっき。膜厚30μmの電気銅めっき被膜を形成。<電気金属めっき(S−8)相当>
(3)膜密着強度の測定
JIS C 6481の規格により、銅膜密着力を測定し、平均10N/cmを得た。
【0033】
以上の本発明の方法によって製造された、樹脂膜上の銅膜の密着力は、平均10N/cmと、強固な値を得ることができた。
【0034】
次に、従来の方法によって得た銅膜の密着力の比較を示す。
【0035】
図4は、従来の方法を踏襲した、樹脂膜上の金属膜製造方法の、製造工程の概要を説明するための比較例工程フローである。本工程を参照しながら、比較実施例を説明する。
(1)電着膜の形成
カチオン電着塗料(商品名;エレコートCM、株式会社シミズ製)を500ml用い、厚さ2mm、100mm□、のステンレス板2枚をおのおの陽極および陰極とし、15V、20秒間電着を実施。陰極ステンレス板表面に、膜厚20μmの電着塗膜を形成。<電着膜形成(RS−2)相当>
次いで、150℃、30分間熱処理して熱硬化、架橋構造を完成。<架橋処理(RS−3)相当>
(2)触媒核形成
前記電着塗膜を形成した塗装板を、酸性のコンディショナ(商品名;サーキュポジットコンディショナ3320、ロームアンドハース社製)の10vol%水溶液中に浸漬。<触媒核付着のための表面調整>
次いで、(Pd/Sn)コロイド溶液(商品名;キャタポジット44、ロームアンドハース社製)の3vol%水溶液中に55℃、3分間浸漬。<触媒核溶液浸漬(RS−4)相当>
(3)銅めっき膜の形成
上記電着塗膜を形成した塗装板を、触媒活性化溶液のアクセレレータ(商品名;キューポジットアクセレレータ19E、ロームアンドハース社製)の17vol%水溶液中に6分間浸漬。<還元化処理(RS−5)相当>
次いで、硫酸銅溶液(還元剤;ホルムアルデヒド)中に25分間浸漬。膜厚約0.2μmの無電解銅めっき被膜を形成。<無電解金属めっき(RS−6)相当>
次いで、120℃、60分間乾燥処理。
【0036】
さらに、この塗装板を、硫酸銅を主体とする電気めっき液中、電流密度2.0A/(dm)、100分間電気めっき。膜厚30μmの電気銅めっき被膜を形成。<電気金属めっき(RS−7)相当>
(4)膜密着強度の測定
JIS C 6481の規格により、銅膜密着力の測定し、平均1N/cmを得た。
【0037】
この密着力は、本発明による第1、第2の実施例の結果と比較しても、およそ10分の1程度であった。
【0038】
以上の様に、本発明の方法は、樹脂上に強固な密着力を有する金属膜を製造するのに、非常に有効であることが判った。特に、接着対象が樹脂膜といった薄いものに対し、表面ダメージが皆無である点、環境負荷が殆ど増大しない点、さらに樹脂膜をより厚くすることが可能である一方、貴金属コスト増大を抑制可能でき、また追加電気めっきなどによって形成金属膜を任意に厚くすることも可能である。
【0039】
実施例で採用された各種材料や形成条件は、これらに限らず、本発明の趣旨によった範囲で、工程の適宜変更、拡張することは可能であることは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0040】
1 導電性被塗装媒体
2 電極
3 電着塗料溶液
4 カチオン電着塗料粒子
5 触媒核イオン
6 触媒核
7 触媒核混入電着膜
8 無電解金属めっき膜
9 電気金属めっき膜
10 電着膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン電着塗料に金属めっき用触媒核となる金属イオンを混入して、触媒核混入電着塗料を作製する工程と、
前記触媒核混入電着塗料を用い、導電性被塗装媒体表面に触媒核混入電着樹脂膜を形成する工程と、
前記触媒核混入電着樹脂膜上に表出した前記金属イオンを還元して金属触媒核とする工程と、
前記金属触媒核を表面に有する前記触媒核混入電着樹脂膜上に無電解めっき膜を形成する工程と
を含むことを特徴とする樹脂上の金属膜製造方法。
【請求項2】
さらに、前記無電解金属めっき膜上に電気金属めっき膜を形成する工程と
を含むことを特徴とする請求項1記載の樹脂上の金属膜製造方法。
【請求項3】
前記触媒核混入電着樹脂膜を形成する工程の前に、金属めっき用触媒核となる金属イオンを混入しないカチオン電着塗料による、触媒核非混入電着樹脂膜を形成する工程を含むことを特徴とする請求項1または2記載の樹脂上の金属膜製造方法。
【請求項4】
前記電気金属めっき膜を形成する工程の前または後に、樹脂架橋処理の工程を含むことを特徴とする請求項2または3記載の樹脂上の金属膜製造方法。
【請求項5】
前記金属めっき用触媒核は、パラジウム・スズコロイド溶液あるいは塩化パラジウム溶液を用いて形成することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の樹脂上の金属膜製造方法。









【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−219839(P2011−219839A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92650(P2010−92650)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】