説明

樹脂固定化殺生剤

【課題】樹脂固定化殺生剤を提供する。
【解決手段】高Tgメチルメタクリレートコポリマー、ならびに4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンから選択される殺生剤を含む組成物。より詳細には、(a)(i)75%〜95%のメチルメタクリレート由来のモノマー単位;および(ii)5%〜25%のC−Cアルキル(メタ)アクリレート由来のモノマー単位を含むポリマー70%〜99%(当該ポリマーはTg>20℃およびMw>100,000を有する);および(b)4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンの少なくとも1つを含む殺生剤1%〜30%:を含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー樹脂中に固定された殺生剤を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンまたは2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを樹脂の1以上の特定の基中に含有する組成物が米国特許第6,875,797号に開示されている。しかしながら、殺生剤が樹脂と適合性である、さらなる殺生剤−樹脂の組み合わせが、プラスチック製品の調製に有用であろう。
【特許文献1】米国特許第6,875,797号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明により取り扱われる問題は、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンまたは2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを含有するさらなる樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は:(a)(i)75%〜95%のメチルメタクリレート由来のモノマー単位;および(ii)5%〜25%のC−Cアルキル(メタ)アクリレート由来のモノマー単位を含むポリマー70%〜99%(当該ポリマーはTg>20℃およびMw>100000を有する);および(b)4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンの少なくとも1つを含む殺生剤1%〜30%:を含む組成物に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
全てのパーセンテージは他に特に記載しない限り重量パーセントである。本発明において用いられるポリマーは、「アクリルポリマー」、すなわち、少なくとも80%の次のアクリルモノマー:アクリロニトリル(AN);アクリルアミド(AM)、メタクリルアミド、およびそれらN−置換誘導体;アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、およびそれらエステル:由来のモノマー単位を含むポリマーである。(メタ)アクリルおよび(メタ)アクリレートなる用語は、それぞれ、アクリルまたはメタクリル、およびアクリレートまたはメタクリレートを意味する。AAおよびMAAのエステルには、これらに限定されないが、アルキルエステル、例えば、メチルメタクリレート(MMA)、エチルメタクリレート(EMA)、ブチルメタクリレート(BMA)、メチルアクリレート(MA)、エチルアクリレート(EA)、ブチルアクリレート(BA)、ならびにAAまたはMAAの他のエステルが含まれる。ポリマーは、他のエチレン性不飽和モノマー由来のモノマー単位、例えば、スチレンまたは置換スチレン(α−メチルスチレンをはじめとする);他のα,β−不飽和カルボン酸、エステルおよびアミド;ビニルエステルまたはハライドなども含有し得る。好ましくは、ポリマーは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%のアクリルモノマー由来のモノマー残基を含有し;好ましくは、ポリマーは実質的にAA、MAAおよびそれらのエステル以外のモノマー単位を含まない。好ましくは、本発明におけるポリマーは乾燥固体の形態において存在する。
【0006】
本発明の一具体例において、ポリマーは少なくとも40℃、さらに好ましくは少なくとも60℃、最も好ましくは少なくとも80℃のTgを有する。好ましくは、Tgは120℃以下、さらに好ましくは110℃以下である。TgはFox式(T.G.Fox、Bull.Am.Physics Soc.、第1巻(3)、123ページ(1956))を用いて計算される。好ましくは、ポリマーのMwは少なくとも100000、さらに好ましくは少なくとも500000、最も好ましくは少なくとも1000000である。好ましくは、Mwは15000000以下、さらに好ましくは、12000000以下である。重量平均分子量(Mw)は標準的ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)技術により測定される。GPC法は、商業的に入手可能な公知高分子量ポリスチレン標準を用いて測定される。好ましくは、ポリマーは架橋していない。好ましくは、ポリマーは実質的に直鎖である。
【0007】
好ましくは、ポリマー中の少なくとも8%、さらに好ましくは少なくとも10%のモノマー単位は、C−Cアルキル(メタ)アクリレート由来である。好ましくは、20%以下のモノマー単位はC−Cアルキル(メタ)アクリレート由来である。ポリマーはいくつかの異なるC−Cアルキル(メタ)アクリレート由来のモノマー単位を含有し得る。ポリマーは少量のメチルアクリレート由来のモノマー単位を含有することができ;好ましくは、ポリマーはメチルアクリレート由来のモノマー単位を実質的に含まない。好ましくは、ポリマーは1、2、または3のC−Cアルキル(メタ)アクリレート由来のモノマー単位を含有する。好ましくは、ポリマー中の少なくとも80%のモノマー単位は、メチルメタクリレート由来である。好ましくは、92%以下、さらに好ましくは90%以下のモノマー単位はメチルメタクリレート由来である。好ましい一具体例において、C−Cアルキル(メタ)アクリレートはC−Cアルキル(メタ)アクリレートである。特に好ましいC−Cアルキル(メタ)アクリレートは、エチルアクリレート、ブチルアクリレートおよびブチルメタクリレートである。
【0008】
好ましくは、組成物は少なくとも5%、さらに好ましくは少なくとも8%の殺生剤成分を含有する。好ましくは、組成物は25%以下、さらに好ましくは20%以下の殺生剤成分を含有する。好ましくは、組成物は少なくとも75%、さらに好ましくは少なくとも80%のポリマーを含有する。好ましくは、組成物は95%以下、さらに好ましくは92%以下のポリマーを含有する。
【0009】
好ましくは、本発明において用いられるポリマーは、例えば、米国特許第5,352,500号において記載されているように、乳化重合技術により水性懸濁液の形態で製造され、次いで乾燥されて、固体ポリマーが形成される。
【0010】
組成物の殺生剤成分は、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(DCOIT)および2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(OIT)の少なくとも1つを含む。どちらかまたは両方を本発明の組成物において用いることができる。他の殺生剤も組成物において存在することができる。好ましくは、組成物中に存在する殺生剤は、少なくとも75%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%のDCOITおよび/またはOITを含む。好ましい一具体例において、組成物はDCOITおよびOIT以外の殺生剤を実質的に含まない。もう一つ別の好ましい具体例において、組成物はDCOIT以外の殺生剤を実質的に含まない。
【実施例】
【0011】
(実施例1)
殺生剤/ポリマー組成物の調製において、次の乾燥固体ポリマーを使用した。
【0012】
【表1】

【0013】
殺生剤/ポリマー組成物の調製
以下の表2に記載される組成を有するサンプルをブレンドし、次いで、全てのヒーター領域およびダイを185℃に設定して、直径0.75インチ(19mm)の一軸スクリュー押出機を用いて押し出した。押出機を40rpmで運転した。各配合物の5インチ(12.7cm)×5インチ×0.125インチ(0.318cm)のプラークを油圧プレスで190℃でプレスした。
【0014】
【表2】

【0015】
適合性試験
プラークを−10℃、室温および60℃で老化させた。これを、最低30日後、色の変化およびブルームまたは滲出の何らかの徴候について目視で評価した。60℃で保存されたサンプルの色を、0、7、14、21および28日に測定した。
【0016】
有効性試験
60gの以下の表3に記載する各配合物を、190℃、60rpmに設定されたBrabenderレオメーターで溶融混合することにより、微生物試験用プラークを調製した。混合物を融解ピークを過ぎて1分間流した。混合物を次いで取り出し、油圧式プレスで190℃で成型した。
【0017】
【表3】

【0018】
適合性および有効性試験の結果
全てのサンプルは良好に押し出されたが、ポリマーB、CおよびDを用いて製造されたサンプルは、ポリマーAで製造されたサンプルよりも熱間強度が幾分低かった。全てのサンプルは、ポリマーに関してDCOITの良好な適合性を示した。−10℃、室温または60℃で1ヶ月老化後のサンプルのいずれにおいても、ブルームまたは滲出の徴候は見られなかった。60℃で、0、7、14、21および28日間貯蔵されたサンプルの色度測定値(Hunter比色計から得られる黄色度指数、YI)を表4に示す。
【0019】
【表4】

【0020】
ポリマーおよびDCOIT/ポリマー組成物は、すべてHDPE/Oak組成物中によく分散された。殺生剤配合物の不適合性の徴候はなかった。
【0021】
プラークの抗菌試験の結果のまとめを表5に示す。
【0022】
【表5】

【0023】
(実施例2)
表6において以下に記載する殺生剤/ポリマー組成物のプラークを調製した。
【0024】
【表6】

【0025】
325°F(163℃)に設定し、ロールスピードを10rpmに設定したReliableツーロールミルで、サンプルを調製した。チャージサイズは125gであった。サンプルをバンディング後、4分間処理した。6インチ(15cm)×6インチ×0.125インチ(0.318cm)のプラークを、加熱されたCarverプレス中、クロムメッキされたシート間でプレスした。
【0026】
プラークを−10℃、室温、および60℃で老化させた。これを、変色またはブルームまたは滲出の何らかの徴候に関して最低30日後に外観の変化に関して目視で評価した。
【0027】
濃縮物調製
表7において以下に記載した殺生剤/ポリマー組成物を調製した。
【0028】
【表7】

【0029】
それぞれのペレットをHaake0.75インチ(19mm)一軸スクリュー押出機で調製した。
【0030】
ポリマーAを含有する配合物を次の条件でペレット化した:ゾーン1=130℃、ゾーン2=150℃、ゾーン3=160℃、ダイ=170℃、スクリュー速度50rpm。ポリマーCを含有する配合物について、温度を次の温度まで上昇させた:ゾーン1=150℃、ゾーン2=160℃。
【0031】
OITを有するポリマーAについての平均トルクは2500mgであった。DCOITを有するポリマーCについては、平均トルクは850mgに低下した。ポリマーCサンプルは、より高トルクのために、より高温で押し出した。さらに高い加工温度で、両方のポリマーCサンプルのトルクは約3000mgであった。
【0032】
有効性試験
4ポンド(1.8kg)の柔軟性PVC化合物をMerlin FM−10ブレンダーで調製した。ブレンドの組成は次の通りであった:
PVC、K=70 100.00
ジイソデシルフタレート 40.00
エポキシ化大豆油 7.70
MARK4716* 3.00
ステアリン酸 0.25
*Crompton Corp.から入手可能なBa/Zn液体安定剤
【0033】
ブレンドサイクルは、PVC樹脂を室温で、安定剤を52℃で、滑剤を57℃で、可塑剤を66℃で添加することからなっていた。冷却は、88℃で開始し、ブレンドは66℃に低下した。
【0034】
Reliable二本ロール機を用いてミルにかけられたシートを調製した。試験シートは次の組成を有していた:
ニートな柔軟性PVCコンパウンド
1%の次のものを有する柔軟性PVCコンパウンド:
柔軟性PVC中10%DCOIT
柔軟性PVC中10%OIT
ポリマーA中10%DCOIT
ポリマーA中10%OIT
ポリマーC中10%DCOIT
ポリマーC中10%OIT
【0035】
ミルのフロントロールおよびバックロールを365°F(185℃)に設定し、ロール速度を15rpmに設定した。フィルムをバンディング後、5分間ミルにかけた。
【0036】
結果
適合性試験
−10℃および室温で保存されたサンプルのいずれにおいても色の変化はなかった。60℃で保存された全てのサンプルに関して若干の変色があった。ブルームまたは滲出の何らかの徴候を示したサンプルは無かった。DCOITおよびOITは、固体殺生剤濃縮物を調製するために好適な量で、ポリマーAおよびポリマーCのどちらにも適合性である。
【0037】
濃縮物調製
固体殺生剤ペレットの調製に成功した。サンプルをHPLCにより分析し、加工中に殺生剤の分解が起こるかどうかを究明した。
【0038】
有効性試験
ツーロールミルでフィルムを調製する間に観察を行った。固体殺生剤濃縮物ペレットはすべて柔軟性PVCコンパウンド中によく分散された。ミリング中に観察された唯一の加工の違いは、ポリマーA中10%DCOITおよびポリマーC中10%DCOITは、他の濃縮物よりもPVCコンパウンド中に分散させるためにより長い時間がかかったことである。どのフィルムも、色または透明性において違いを示さなかった。各フィルムシートの一部分を抗微生物効果について試験した。結果を以下に表8および9において示す。
【0039】
【表8】

【0040】
【表9】

【0041】
試験法および定義
細菌耐性(定性的)
サンプルを、次のものを接種された栄養寒天上に置いた:
スタフィロコッカス・アウレウス ATCC6538
クレブシエラ・ニューモニエ ATCC4352
37℃で24時間インキュベーションした後、各サンプルの周りの増殖のない透明な領域(阻止領域)のサイズ(mm)を測定し、接触部分における増殖を目視により決定することにより抗細菌活性を評価した。細菌の増殖を次の基準により評定する:
接触領域で増殖なし(NGCA)
これは、細菌試験においてしばしば用いられる記号表示である。細菌生物はサンプルそれ自体の上で測定するのが困難であり、したがってサンプルのすぐ下の領域を増殖について調べる。これは通常、合格の表示であり、サンプルの下に細菌コロニーが見られないことを示す。
接触領域で増殖(GCA)
細菌のコロニーがこれと接触するサンプルのすぐ下で検出されるので、サンプルは不合格であることを示す。
耐かび性
ピンクの着色
サンプルを、ピンク色に着色する生物、Stv.reticulum ATCC25607で接種された栄養寒天上に置いた。28℃で14日間インキュベーションした後、各サンプルの周りの増殖のない透明な領域(阻止領域)のサイズ(mm)を測定し、かつ着色の程度を目視で評価した。
表面の着色を次の基準により評価する。
着色なし(NS)
微量の着色(TS)
軽度の着色(LS)
中程度の着色(MS)
重度の着色(HS)
ASTM G−21−96
増殖なし(NG)
微量の増殖(10%未満の被覆)(TG)
軽度の増殖(10〜30%の被覆)(LG)
中程度の被覆(30〜60%の被覆)(MG)
重度の着色(60%〜完全な被覆)(HG)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)75%〜95%のメチルメタクリレート由来のモノマー単位;および(ii)5%〜25%のC−Cアルキル(メタ)アクリレート由来のモノマー単位:を含むポリマー70%〜99%(当該ポリマーはTg>20℃およびMw>100,000を有する);および
(b)4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンの少なくとも1つを含む殺生剤1%〜30%:
を含む組成物。
【請求項2】
ポリマーがTg>60℃を有する請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ポリマーが、5%〜25%のC−Cアルキル(メタ)アクリレート由来のモノマー単位を有する請求項1記載の組成物。
【請求項4】
殺生剤が、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを少なくとも75%含む請求項1記載の組成物。
【請求項5】
ポリマーが、80%〜92%のメチルメタクリレート由来のモノマー単位および8%〜20%のC−Cアルキル(メタ)アクリレート由来のモノマー単位を含む請求項1記載の組成物。
【請求項6】
4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンの少なくとも1つを含む殺生剤を5%〜20%有する請求項1記載の組成物。
【請求項7】
ポリマーが、Mw>500,000を有する請求項1記載の組成物。
【請求項8】
(a)(i)80%〜92%のメチルメタクリレート由来のモノマー単位;および(ii)8%〜20%のC−Cアルキル(メタ)アクリレート由来のモノマー単位:を含むポリマー80%〜95%(当該ポリマーはTg>60℃およびMw>500,000を有する);および
(b)4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを含む殺生剤5%〜20%:
を含む組成物。
【請求項9】
4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを少なくとも75%含む殺生剤を5%〜20%有する請求項8記載の組成物。
【請求項10】
前記C−Cアルキル(メタ)アクリレートが、エチルアクリレート、ブチルアクリレートおよびブチルメタクリレートからなる群から選択される請求項9記載の組成物。

【公開番号】特開2007−23276(P2007−23276A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−189066(P2006−189066)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】