説明

樹脂強化木質材料および床材

【課題】複雑な設備や工程を必要とせず、簡便な方法で耐衝撃変形性を改良した樹脂強化木質材料および床材を提供する。
【解決手段】ウレタン反応性ホットメルト樹脂を、持続可能な植物資源であり、生育時の多くの二酸化炭素を吸収できるファルカタ、アシ、バカス、ケナフ、バンブーなどに塗布し、耐衝撃変形性を改良して床材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂強化木質材料および床材に関する。
【背景技術】
【0002】
木材や、木材を加工した合板などの木質材料は様々な分野で使用されているが、ラワンなどの一部の材種では、産地での過剰伐採が問題となり、森林保護や資源保護の観点から入手することが困難となっている。一方、ファルカタなどの生育の早い材種は、持続可能な植物資源であることや生育時の多くの二酸化炭素を吸収できることが評価され、これらの材種への転換が図られている。しかしながら、硬度や他の物性は必ずしも木質材料に適しているとはいえず、限られた用途にしか使用できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
木材や木質材料に樹脂を作用させ、性能向上を図る試みは数多く行われている。例えば、樹脂を木材に含浸させる方法は多く知られているが、樹脂を木材に浸透させる際に減圧設備が必要であったり、含浸後に加熱や圧締が必要となるなど、設備や工程が複雑となる問題があった(例えば特許文献1および2)。また、電子線硬化樹脂を用いる方法も知られているが、電子線照射設備が必要となることや、表面硬度には優れるものの衝撃変形は十分に改善されないなどの問題があった(例えば特許文献3および4)。さらに、ウレタンプレポリマーを用いる方法が開示されており、樹脂液を塗布した後は乾燥するまで放置するだけという簡便性および表面硬度には優れるものの、衝撃変形は十分に改善されないなどの問題があった(例えば特許文献5)。
【特許文献1】特開2000−229305号公報
【特許文献2】特開2005−178254号公報
【特許文献3】特開2002−337107号公報
【特許文献4】特開2007−196669号公報
【特許文献5】特開2007−145917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、従来の木材や木質材料の改質技術では設備や工程が複雑となりがちであったが、その目的が天然木では得られないような高度の物性を得ることであったためと推測される。一方、比較的物性が低い材種の物性を、比較的物性が高い材種レベルまで引き上げるのに適した簡便な方法は知られていなかった。また、床材として使用される場合、D型高度計を用いて測定される単純な表面硬度だけではなく、耐衝撃変形性も求められるが、これに適した方法は知られていなかった。
【0005】
このような状況に鑑み、本発明は複雑な設備や工程を必要とせず、簡便な方法で耐衝撃変形性を改良した樹脂強化木質材料および床材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、反応性ホットメルト樹脂が塗布されていることを特徴とする樹脂強化木質材料、およびそれを用いた床材である。前記反応性ホットメルト樹脂はウレタン反応性ホットメルト樹脂であることが好ましく、前記木質材料はファルカタ、アシ、バカス、ケナフ、バンブーからなる群から選ばれるいずれかであるであることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の樹脂強化木質材料は耐衝撃変形性が改良されているため、床材などに適する。また、本発明の樹脂強化木質材料は複雑な設備や工程を必要とせず、樹脂を塗工するだけの簡便な方法で製造できる。さらに、ファルカタ、アシ、バカス、ケナフ、バンブーなどに適用した場合、持続可能な植物資源であることや生育時に多くの二酸化炭素を吸収できることから、環境問題への対応ともなる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で用いる反応性ホットメルト樹脂は、常温では固形であり、加熱することによって液状となり塗布可能となるものであり、基材に塗布すると冷却されて再び固化するとともに化学反応が進行し、最終的な強度が得られるものである。反応性ホットメルト樹脂としては、ウレタン反応性ホットメルト樹脂、シリコーン反応性ホットメルト樹脂、紫外線硬化反応性ホットメルト樹脂などが挙げられるが、入手が容易であり、湿気で硬化可能なことからウレタン反応性ホットメルト樹脂が好ましい。ウレタン反応性ホットメルト樹脂は、ポリオール等の活性水素基含有化合物と多価イソシアネート化合物を反応させたものであり、PURなどとも称される。ポリオールとして結晶性、非晶性、液状の各種ポリオール組み合わせたり、さらに分子量や融点を調製することにより、常温では固形状であり、加熱することによって液状となる。
【0009】
本発明における木質材料とは、木材そのものや単板、木材を加工して製造される合板、MDF、LVL、集成材、パーチクルボードなどを含む。また、木質材料の原材料となる木材とは、繊維質を利用できる植物全般を含むものである。木質材料の原材料となる木材は特に限定されないが、持続可能な植物資源であり、生育時に多くの二酸化炭素を吸収できるファルカタ、アシ、バカス、ケナフ、バンブーなどに適用すると、耐衝撃変形性などの物性が向上して、床材などに用途を拡大することができる。
【0010】
反応性ホットメルト樹脂を木質材料に塗布する方法は特に限定されず、反応性ホットメルト樹脂を加熱溶融した後、ロールーコーター、ダイコーター、ノズル塗布などの方法により、木質材料に塗布する。木質材料に塗布後は、反応性ホットメルト樹脂がウレタン反応性ホットメルト樹脂の場合は特段の更なる工程を必要とせず、木質材料を放置、養生すれば良い。反応性ホットメルト樹脂の塗布厚みは、要求性能によって適宜調整されるが、100〜500μm程度が好ましい。
【0011】
本発明を適用した樹脂強化木質材料は、耐衝撃変形性などの物性が向上しているため各種用途に使用できるが、特に好ましいのは床材である。以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0012】
実施例1
ファルカタ合板(厚さ10.5mm、5プライ)に、膜厚が500μmとなるようにウレタン反応性ホットメルト樹脂(分子量が2000であり、ジカルボン酸としてアジピン酸、ジオールとしてヘキサンジオールを構成成分とし、結晶性であるポリエステルポリオールと、多官能イソシアネート化合物とを反応させて得られるイソシアネート末端ウレタンプレポリマー型反応性ホットメルト)を塗布し、室温で72時間養生することにより、実施例1の樹脂強化木質材料を製造した。
【0013】
比較例1
実施例1において、ウレタン反応性ホットメルト樹脂の代わりにウレタン樹脂(ポリエーテル成分として分子量300の3官能ポリプロピレングリコールとひまし油を使用し、炭酸カルシウム等のフィラー、ゼオライト等の脱水剤、硬化促進剤を配合した主剤と、粗製ジフェニルメタンジイソシアネートを硬化剤とした2液型のウレタン樹脂)を膜厚が500μmとなるように塗布した他は実施例1と同様に行い、比較例1の樹脂強化木質材料を製造した。
【0014】
比較例2
実施例1で用いたファルカタ合板をそのまま比較例2の木質材料とした。
【0015】
試験方法
JIS K 5600−5−3のデュポン式に準じて耐おもり落下性試験を行なった。75mm×75mmにカットした各樹脂強化木質材料を塗布面が上となるように半径6.35mmの撃ち型と受け台とを取り付け、端から19mmの部分に質量500gの重りを30cmの高さより落下させ、変形量(凹みの深さ)を測定した。
【0016】
【表1】

【0017】
実施例1は、比較例2よりも耐衝撃変形性が大幅に改良されている。比較例1でもある程度は改良されているものの、実施例1と比較すると劣っている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性ホットメルト樹脂が塗布されていることを特徴とする樹脂強化木質材料。
【請求項2】
前記反応性ホットメルト樹脂が、ウレタン反応性ホットメルト樹脂であることを特徴とする請求項1記載の樹脂強化木質材料。
【請求項3】
前記木質材料が、ファルカタ、アシ、バカス、ケナフ、バンブーからなる群から選ばれるいずれかであることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂強化木質材料。
【請求項4】
請求項1から3いずれかに記載の樹脂強化木質材料を用いたことを特徴とする床材。

【公開番号】特開2010−228312(P2010−228312A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78903(P2009−78903)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】