説明

樹脂成形部材

【課題】プリンタ装置の大型化を防ぎ、柔軟性と大気のしゃ断によるバリア性の両方が十
分に確保された樹脂成形部材を提供する。
【解決手段】表面部又は内面部又は肉厚部に、鱗片Fよりなるしゃ蔽材を設け、
また、しゃ蔽材は金型押出し成形後に接着剤とともにコーティングすることにより樹脂成
形部材の内から外又は外から内方向に水分が透過するのをしゃ断し、外気が樹脂成形部材
を透過して内部のインクを希釈するのを防ぎ、インク水分が低減しインク粘度が高くなる
ことで生じるインク品質の劣化を防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形部材の製造方法に関するもので、例えば、プリンタ装置においてイ
ンクカートリッジから記録ヘッドにインクを供給するために用いられる樹脂成形部材に関
する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばプリンタ装置、医療分野等で用いられるカテーテル、点滴用チューブ、電
装ハーネス、ガソリン等液体配管等のチューブないし被覆材等は、溶融合成樹脂を用いて
インジェクションないしは押出し成形により形成されており、その材料としては、一例と
してPP等を主体素材とし、他の素材と混錬したものから成る。
このように成形された樹脂成形部材としてのチューブとしては、例えばインク流路とし
ているプリンタ装置の部品(インクタンク,インクカートリッジからキャリッジまでイン
クを搬送するチューブとかキャッピング装置より廃タンクに搬送するチューブ)では、イ
ンクに含まれる蒸気が長年月経過を経て外部に放出したり、外部からの湿気が内部に入り
込む。その一例としては、チューブ内のインク減少による減圧により、外部圧力が高くな
るので外部から湿気が入り込んで、インクを希釈化することが考えられる。内部から外部
に蒸気が放出する例としては、外部が乾燥状態となり、内部から蒸発水が漏れ出ることが
考えられる。
この為PP等の素材量あるいはこの素材に含まれる材料の種類,種類を改良していたが
、十分な柔軟性,可撓性を確保する必要上、チューブ内部から外部又はその反対の通気を
十分にしゃ断するのに限界を生じていた。また、バリア性確保のためにチューブの厚みを
大きくすることも考えられるが、チューブの大型化を招き、プリンタ装置全体が大型化し
てしまう欠点があった(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−168357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、チューブの素材となるPP等の材料の種類,種類を改良しても、チューブ
においての柔軟性と大気のしゃ断によるバリア性の両方を十分に確保するには限界がある
ことが判明した。また、チューブ肉厚を確保し、外部とのしゃ断性を得ることもできるが
、プリンタ装置を大型化する必要があり、実用性に乏しいという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで本発明は、上記課題の解決を目的として、表面部又は内面部又は肉厚部に、鱗片
よりなるしゃ蔽材を設けたことを特徴とする樹脂成形部材を提供する。樹脂成形部材に前
記鱗片よりなるしゃ蔽材を設けることにより、樹脂成形部材の内から外又は外から内方向
に水分が透過するのをしゃ断する。これにより、外気が樹脂成形部材を透過して内部のイ
ンクを希釈するのを防ぐ。また、インクの水分が樹脂成形部材を透過して外気へ蒸発する
ことを防ぎ、インク水分が低減しインク粘度が高くなることで生じるインク品質の劣化を
防ぐことができる。よって、長年月経過を経ても常にインク品質を一定に保つことができ
る。
【0005】
また、他の発明によると、前記樹脂成形部材において、前記しゃ蔽材は、金型押出し成
形後に接着剤とともにコーティングされて成ることを特徴とする。これにより、簡単な作
業で、樹脂成形部材にしゃ蔽材を設けることができ、樹脂成形部材に水分のしゃ断性をも
たらすことができる。
【0006】
また、他の発明によると、少なくとも1個の中空孔を有する押出し成形品について、し
ゃ蔽材を設けることができ、中空と外気との間の水分のしゃ断性をもたらすことができる

【0007】
また、他の発明によると、前記樹脂成形部材において、溝付き射出成形品の溝側表面を
フィルムで被って成ることを特徴とする。これにより、この射出成形品において、しゃ蔽
材を設けることができ、外気との水分のしゃ断性をもたらし、インク劣化を防止すること
ができる。
【0008】
また、他の発明によると、前記樹脂成形部材において、前記しゃ蔽材の鱗片は、モンモ
リロナイト又はガラス片又は炭素材又は雲母より成ることを特徴とする。これにより、鱗
片の素材は水分をしゃ断する性質を持つ素材であり、樹脂成形部材に十分な弾性をもたせ
ることができるので、しゃ蔽材を有する樹脂成形部材の形を自在に変形させることができ
る。
【0009】
また、他の発明によると、前記樹脂成形部材において、前記しゃ蔽材は接着剤を表面に
塗布してから、その上に付着されて成る。これにより、樹脂成形部材にしゃ断性を持たせ
る加工作業を容易に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
最良の形態1
以下、発明の実施の形態を用いて本発明を説明する。
図1は樹脂成形部材の製造工程を示す図であり、図2はヘッドダイ15を示す図であり
、図3はチューブ1の斜視図及び断面図であり、図4はプリンタ装置取付け図である。
【0011】
図1に示す樹脂成形部材の製造工程において、樹脂成形部材の成形は、図3(b)に示
すように横並びの中空孔1mを有するとともに、上,下面が波状面1nとなった板状のチ
ューブ1を成形する樹脂成形機10による樹脂成形工程、チューブ1が成形された後に冷
却機20により冷却される冷却工程、チューブ1冷却後に乾燥機30により乾燥する乾燥
工程、チューブ1乾燥後にチューブ1表面にコーティング槽42でコーティング層41a
(図3(a),(b))を成形するコーティング工程、押出し成形された押出し成形品と
してのチューブ1を引取機50で引取る引取工程により成る。樹脂成形部材としてのチュ
ーブ1を構成する樹脂の素材としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)
、オレフィン系の可塑性エラストマー(TPE)、スチレン系のTPE、ポリアミド系の
TPE、あるいは、ウレタン系のTPEなどの、固化後に可撓性を有する樹脂が用いられ
る。
【0012】
金型押出し成形にあたる樹脂成形工程では、上記PP等を主体素材とする樹脂素材を樹
脂成形機10のホッパ11からシリンダ12に投入する。投入された樹脂はシリンダ12
により一定温度で加熱・溶融され、スクリュー13によってシリンダ12の先端に取付け
られた押出ヘッド14の方向に押出される。押出ヘッド14にはヘッドダイ15が取付け
られる。ヘッドダイ15の樹脂吐出口側の面はチューブの所定の断面形状を有する形態に
成形されており、ヘッドダイ15から押出された樹脂は、中空孔1mを例えば4個横並び
させた一体形状のチューブ1の形態に形成される。なお、チューブ1の上,下面は弧状の
波状面1nとなっている。
【0013】
冷却工程では、水21を冷却装置22で循環させ常に一定温度に保たれた水が収容され
た冷却槽により成る冷却機20により、樹脂成形機10で成形されたチューブ1を常温近
傍まで冷却する。乾燥工程では、乾燥翼32をモータ31で回転し、乾燥機30内を通過
するチューブ1に空気を吹付けることによりチューブ1を急速乾燥する。コーティング工
程では、接着剤43と鱗片Fとを攪拌したコーティング溶液41をコーティング槽42に
収容してなり、乾燥後のチューブ1をコーティング溶液41に通過させることで、チュー
ブ1の表面全体にコーティング溶液41よりなるコーティング層41aとしての被膜が成
形される。また、鱗片Fの接着剤43への混合は20乃至30重量%程度である。引取工
程では引取機50により、樹脂成形機10で成形されたチューブ1を上,下より挟んで所
定の張力で引取る。
【0014】
上記鱗片Fの素材としては、一例として鱗片状の高分子化合物を使用する。鱗片Fの素
材は、モンモリロナイト又はガラス片又は炭素材又は雲母などの厚さ約1ナノ、対角線長
約50μm乃至80μm程度の矩形状の極微小の鱗片粒子であり、この片状粒子は、例え
ば高アスペクト比の板状結晶を持つものでもよい。また、鱗片状結晶は水分を透過させな
いでブロックする性質を持つので、鱗片状結晶の集合体である粒子もまた、水分をしゃ断
する性質を持つ。例えば、モンモリロナイトは厚さが約1n(ナノ)以下の極薄い板状結
晶であり、また、対角線の寸法が50μm乃至80μmでよい。
なお、鱗片Fの形状は四角形に限らず、三角形,円形,ひし形等であっても、あるいは
形状の定まらない異形であってもよい。要は薄形のものであれば、いかなる形状であって
もよい。
【0015】
上記接着剤43は、有機合成エラストマー系の素材を主成分とするものを使用する。例
えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、クロロプレンゴムなどの高分子化合物に有機溶剤等
を加えて成るものであり、貼着後、弾力性、可撓性をもって固化するものである。
【0016】
図2(a)、(b)はヘッドダイ15の一構成例を示す図で、このヘッドダイ15は、
押出される中空チューブであるチューブ1の断面外形状と同じ断面外形状を有する上,下
波状の貫通孔19aが形成された円筒状の外型19と、この外型19を支持するホルダ1
8と、上記外型19の貫通孔19a内に挿入される4本の中空孔1m(図3(b))成形
用のコアピン17aを備えた内型17と、上記ホルダ18の後端側に取付けられて、上記
押出ヘッド14(図1)から吐出された液状の樹脂を当該ヘッドダイ15の内部へ導入す
るスパイダと称される樹脂導入部材16とを備えており、この樹脂導入部材16に上記内
型17が取付けられる。
上記押出ヘッド14から吐出されてヘッドダイ15の内部へ注入された樹脂は、図2(
b)に示すように、樹脂導入部材16から外型19と内型17との間に形成される空隙を
通って、上記貫通孔19aとコアピン17aとの間の空隙からヘッドダイ15の外部へと
押出される。
【0017】
チューブの種別、例えば、単管、2管、3管等、形状の異なるチューブを成形する場合
においては、ヘッドダイ15の内型17と外型19を交換し、各チューブの長手方向と直
交するチューブ断面を形成することで、樹脂成形機10によって各チューブの成形が可能
となる。
【0018】
図3(a),(b)はチューブ1の斜視図及び断面図である。チューブ1は、図1の工
程により成形された横並びの中空孔1mを4個有し、上,下面が波状面1nとなる。チュ
ーブ1の表面部分は、鱗片Fからなるしゃ蔽材と接着剤43を攪拌して成るコーティング
溶液41により、コーティング層41aが形成され、これにより鱗片Fはチューブ1表面
に一様に分布する。すなわち、チューブ1の表面部分は上記コーティング溶液41により
鱗片Fからなるしゃ蔽材で被覆され、コーティング層41aが形成された状態にあり、且
つ接着剤43でしっかりと接着されたものとなる。
【0019】
以上の構成によれば、ホッパ11に、PP等の樹脂素材を投入することで、樹脂成形部
材としてのチューブ1を押出し成形し、これを冷却機20で冷却、固化した後、乾燥機3
0で乾燥し、ついでコーティング機40のコーティング溶液41を通過する過程で、チュ
ーブ1の外周にコーティング層41aを被着できる。コーティング層41aは接着剤43
を固化後、弾性に富む素材を用いているので、チューブ1の屈曲、変形を阻害することが
ない。コーティング層41aにはしゃ蔽材としての鱗片Fを含んでいるので、水分がチュ
ーブ1外へ出ようとしても、又は外からの水分がチューブ1内に入り込もうとしても、こ
の水分のチューブ1における透過を防ぐので、水蒸気漏れあるいは水分混入を阻止できる

【0020】
図4は、本樹脂成形部材としてのチューブ1をプリンタ装置に取付けた例を示す図であ
る。チューブ1は所定寸法のものの両端にコネクタ5a,5aが取付けられ、J又はU字
状に変形される。両端のコネクタ5a,5aは一方を液体収容容器であるインクタンク5
e側に設けられたインクタンク側雄コネクタ5dに、他方をキャリッジ5c側に設けられ
たキャリッジ側雄コネクタ5bに嵌合させる。キャリッジ5cはキャリッジ軸5fにより
支持される。キャリッジ軸5fは、キャリッジ5cがキャリッジ軸5fの長手方向と平行
する方向である主走査方向へ往復運動するのを支持する。キャリッジ5cは図外の駆動モ
ータからの駆動力が図外の駆動ベルトを通して伝動され、主走査方向に動作する。キャリ
ッジ5cの底面には図外の記録ヘッドが設けられ、記録ヘッドの噴射口よりインクが記録
媒体に向け噴射される。インクはインクタンク5eより、インクタンク側雄コネクタ5d
、インクタンク側のコネクタ5a、チューブ1、キャリッジ5c側のコネクタ5a、キャ
リッジ側雄コネクタ5b、キャリッジ5cの各流路を通過し、記録ヘッドから吐出される

【0021】
キャリッジ5cが主走査方向に動作することにより、キャリッジ側雄コネクタ5bもキ
ャリッジ5cと一体となり動作する。キャリッジ5cの動作により、キャリッジ5c側雄
コネクタ5bと嵌合するチューブ1のキャリッジ5c側のコネクタ5aも連動することで
、コネクタ5aと一体となるチューブ1がJ字又はU字状に撓む。図1の工程により、チ
ューブ1の表面は鱗片Fからなるしゃ蔽材と接着剤43を攪拌して成るコーティング溶液
41でコーティング加工されたコーティング層41aが成形されている。前記コーティン
グ層41aは鱗片Fが粒子状の極微小なものであるため、チューブ1の上記撓みにより、
鱗片Fの断面形状を変化させることがない。そのため、鱗片Fによるチューブ1のしゃ断
性は、上記撓みに影響されることなく保つことができる。また、接着剤43の素材をエラ
ストマー系の固化後に弾性を有する素材を用いた場合、上記コーティング層41aは上記
撓みを阻害されることなくチューブ1の可撓性を保つことができる。また、チューブ1の
表面は、鱗片Fからなるしゃ蔽材と接着剤43を攪拌して成るコーティング溶液41によ
り、チューブ1表面に鱗片Fが一様に分布する。そのため、チューブ1の表面部に一様に
分布された鱗片Fにより、チューブ1は外気とチューブ1の中空部分の流路とをしゃ断す
るしゃ断性を有す。これにより、長年月経過を経てもインク品質が極度に劣化するのを防
ぎ、インク品質を一定に保つことができる。
【0022】
最良の形態2
チューブ1にしゃ蔽材を付着させるには、コーティング工程でコーティング溶液41を
使用せず、接着剤43のみを先にチューブ1表面に塗布した後、これが乾燥する前に鱗片
Fよりなるしゃ蔽材をチューブ1の表面に付着させることも可能である。例えば、図1の
各工程においてコーティング工程でのコーティング槽42に収容するコーティング溶液4
1を接着剤43のみの溶液で構成し、コーティング槽42からチューブ1が搬出された直
後、接着剤43が固化しない状態において、チューブ1表面に鱗片Fよりなるしゃ蔽材を
吹き付けることで、チューブ1表面にしゃ蔽材を付着させることができる。
【0023】
最良の形態3
図5は、中空孔1mの内面部にしゃ蔽材を設けたチューブ1の断面図である。図1の樹
脂成形工程、冷却工程、乾燥工程、引取工程によりチューブ1を成形した後、鱗片Fから
なるしゃ蔽材と接着剤43とを攪拌して成るコーティング溶液をチューブ1の中空孔1m
に一定量流し込んで、内面に被着後、空気を吹込んで、この溶液を除去することで、コー
ティング溶液によるコーティング層41aをチューブ1の内面部に貼着させることができ
、チューブ1内面部に鱗片Fよりなるしゃ蔽材を設けることができる。コーティング溶液
によるコーティング層41aの成形は図1による成形工程でのチューブ1表面部への被膜
層によらず、チューブ1の内面部に成形することができる。これにより、チューブ1の内
面部に一様に分布された鱗片Fにより、チューブ1は外気とチューブ1の中空部分の流路
とをしゃ断するしゃ断性を有す。これにより、長年月経過を経てもインク品質が極度に劣
化するのを防ぎ、インク品質を一定に保つことができる。
【0024】
最良の形態4
図6は、肉厚部にサンドイッチ状にしゃ蔽材を設けたチューブ1の断面図である。押出
し成形したチューブ1aの表面に、鱗片Fなどからなるしゃ蔽材と接着剤43とを攪拌し
て成るコーティング溶液によるコーティング層41aを成形した後、チューブ1bを構成
する樹脂を加熱・溶融し、上記しゃ蔽材を有する小径のチューブ1aとともに径の大きな
金型を通過させて外側にチューブ1bを一定量被膜することで、サンドイッチ状のしゃ蔽
材を設けることができる。よって、チューブ1にサンドイッチ状に一様に分布された鱗片
Fにより、チューブ1は外気とチューブ1の中空孔1mの流路とをしゃ断するしゃ断性を
形成できる。これにより、長年月経過を経てもインク品質が極度に劣化するのを防ぎ、イ
ンク品質を一定に保つことができる。
【0025】
最良の形態5
図7は、樹脂へしゃ蔽材を設けたチューブ1の断面図である。図1の樹脂成形工程にお
いて、チューブ1を構成する上記樹脂の素材に鱗片Fよりなるしゃ蔽材を混入し、樹脂と
しゃ蔽材を均一に攪拌したものをチューブ1の素材とする。樹脂の素材に鱗片Fよりなる
しゃ蔽材を混入したものをホッパ11に投入し、チューブ1を樹脂成形機10により成形
する。成形されたチューブ1の肉厚部1gは、図7で示す様に樹脂と鱗片Fよりなるしゃ
蔽材とが混合されたものになり、チューブ1の肉厚部にしゃ蔽材を設けることができる。
これにより、図1のチューブ1の成形工程において、コーティング槽42によるコーティ
ング工程を省くことができ、チューブ1の成形工程をより簡略化することができる。
【0026】
最良の形態6
図8は、溝付き射出成形品60を示す斜視図であり、図9は、チューブ1の端部断面図
であり、図10は溝付き射出成形品60の構造を示す斜視図である。図8に示すように、
チューブ1に継手部61を介してインクタンク側に延長する溝付き射出成形品60にしゃ
蔽材を設けてもよい。
図10に示すように、上記溝付き射出成形品60は、図外のインクタンクに沿うように
変形した平板材の表面に6本の溝62aを付加し、この溝62aをフィルム63で塞いで
溝流路62bを有する部品として形成したもので、溝62aの端部の継手部61に、この
溝62aの端部から継手部61の裏面方向に延長する貫通孔64が形成され、この貫通孔
64にチューブ1の先端側1Cが溝付き射出成形品60裏面側より嵌合される。
図9に示すように、製造に際しては、まず、先端側1Cに鍔付きの管65を挿入後、射
出成形を用い、その金型66A、66Bの成形空間67にチューブ1の先端側1Cをセッ
トしてからPP樹脂を主体とする素材をインジェクションすることで、溝62a,貫通孔
64を有するとともに、適度に変形された溝流路62bの部品が得られ、フィルム63を
被着することで、溝流路62bを有する溝付き射出成形品60が完成する。チューブ1の
先端側1Cの中空孔には鍔付きの管65が挿入され、チューブ1の先端側1Cがつぶれる
のを防止している。
【0027】
最良の形態6では、上記溝付き射出成形品60の射出成形前において、溝付き射出成形
品60を成形する樹脂素材に鱗片Fよりなるしゃ蔽材を混入しておく。しゃ蔽材が混入さ
れた樹脂を成形空間67に流し込み、射出成形することで、図8乃至図10に示すように
溝付き射出成形品60の成形樹脂に鱗片Fよりなるしゃ蔽材を設けることができる。
【0028】
最良の形態7
溝付き射出成形品60又は押出し成形品への鱗片Fよりなるしゃ蔽材の被着は、溝付き
射出成形品60又は押出し成形品に、鱗片Fからなるしゃ蔽材と接着剤43を攪拌して成
るコーティング溶液をスプレーで吹き付けることで被着させても良い。
【0029】
最良の形態8
あるいは、コーティング溶液を刷毛などにより溝付き射出成形品60又は押出し成形品
の表面部に塗布することで、溝付き射出成形品60又は押出し成形品の表面にコーティン
グ層を形成しても良い。これにより、溝付き射出成形品60又は押出し成形品の表面部に
鱗片Fよりなるしゃ蔽材を設けることができ、表面部に一様に分布された鱗片Fにより、
溝付き射出成形品60又は押出し成形品は外気と溝流路62b又は中空孔をしゃ断するし
ゃ断性を有すこととなる。
【0030】
最良の形態9
図11は、多連型補強管の他の形態を示す。多連補強管70は鍔付きの管65を多連中
空チューブの各チューブ間隔と同一の間隔で配置し、ベース71に一体に固定されて成る
。鍔付きの管65をチューブ1の中空部分に嵌合し、溝付き射出成形品60が成形された
後において、一本のチューブ1より引抜ける方向に力が作用した場合、各鍔付きの管65
はベース71と一体となっていることから、チューブ1が溝付き射出成形品60から容易
に抜け落ちない。
【0031】
このように、本発明によれば、樹脂成形部材に鱗片よりなるしゃ蔽材を設けることで、
樹脂成形部材の内部流路と外気との間をしゃ断することができ、長年月経過を経てもイン
ク品質が極度に劣化するのを防ぎ、インク品質を一定に保つことができる。
本発明はプリンタ装置に適用することに限らず、医療分野等で用いられるカテーテル用
、点滴用、電装ハーネス用、ガソリン等配管用、多品種に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】樹脂成形部材の製造工程を示す図である。
【図2】ヘッドダイの一構成例を示す図である。
【図3】チューブの斜視図及び断面図である。
【図4】プリンタ装置取付け図である。
【図5】内面部にしゃ蔽材を設けたチューブ断面図である。
【図6】肉厚部にしゃ蔽材を設けたチューブ断面図である。
【図7】樹脂へしゃ蔽材を設けたチューブ断面図である。
【図8】溝付き射出成形品を示す斜視図である。
【図9】チューブ端部断面図である。
【図10】溝付き射出成形品の構造を示す斜視図である。
【図11】多連型補強管の他の形態を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 チューブ、1m 中空孔、1n 波状面、1C 先端側、5a コネクタ、
5b キャリッジ側雄コネクタ、5c キャリッジ、5d インクタンク側雄コネクタ、
5e インクタンク、5f キャリッジ軸、10 樹脂成形機、11 ホッパ、
12 シリンダ、13 スクリュー、14 押出ヘッド、15 ヘッドダイ、
16 樹脂導入部材、17 内型、17a コアピン、18 ホルダ、19 外型、
19a 貫通孔、20 冷却機、21 水、22 冷却装置、30 乾燥機、
31 モータ、32 乾燥翼、40 コーティング機、41 コーティング溶液、
41a コーティング層、42 コーティング槽、43 接着剤、50 引取機、
60 溝付き射出成形品、61 継手部、62a 溝、62b 溝流路、
63 フィルム、64 貫通孔、65 鍔付きの管、67 成形空間、
70 多連補強管、71 ベース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面部又は内面部又は肉厚部に、鱗片よりなるしゃ蔽材を設けたことを特徴とする樹脂
成形部材。
【請求項2】
前記しゃ蔽材は、金型押出し成形後に接着剤とともにコーティングされて成ることを特
徴とする請求項1に記載の樹脂成形部材。
【請求項3】
少なくとも1個の中空孔を有する押出し成形品より成る請求項1に記載の樹脂成形部材

【請求項4】
溝付き射出成形品の溝側表面をフィルムで被って成る請求項1に記載の樹脂成形部材。
【請求項5】
前記しゃ蔽材の鱗片は、モンモリロナイト又はガラス片又は炭素材又は雲母より成るこ
とを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形部材。
【請求項6】
前記しゃ蔽材は接着剤を表面に塗布してから、その上に付着されて成ることを特徴とす
る請求項1に記載の樹脂成形部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−220322(P2009−220322A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65298(P2008−65298)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】