説明

樹脂成形金型、樹脂成形品の製造方法及び樹脂パレット

【課題】応力集中及び成形歪みが生じ難い樹脂パレット及び、そのような樹脂パレットその他の樹脂成形品を成形可能な樹脂成形金型、樹脂成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の樹脂成形金型50は、型閉じ状態にすると、固定型51の傾斜成形面53と、可動形61の傾斜成形面63とが成形空間を挟んで対向すると共に、傾斜成形面53から突出した第1傾斜突部54と、傾斜成形面63から突出した第2傾斜突部64とが合体して四角形の板状体69になり、その板状体69が厚さ方向で傾斜成形面53と傾斜成形面63との間に挟まった状態になる。そして、成形空間に樹脂を充填すると、傾斜成形面53と傾斜成形面63とによって傾斜平板壁33の表裏の平坦面が成形されると共に、その傾斜平板壁33から板状体69分の壁体が排除されて角形貫通孔34が成形される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉可能な1対の成形型を有し、それらの一方に設けた第1傾斜成形面と、他方に設けた第2傾斜成形面との間に樹脂を充填して、型開閉方向に対して傾斜した傾斜平板壁を成形可能であると共に、傾斜平板壁に四角形の角形貫通孔を成形可能な樹脂成形金型及び、そのような樹脂成形金型を用いた樹脂成形品の製造方法及び、そのような製造方法にて製造可能な樹脂パレットに関する。
【背景技術】
【0002】
図13には、従来の樹脂パレットの一部である傾斜平板壁1が示されている。この傾斜平板壁1は、樹脂パレットにおけるデッキ面(上面)の法線方向H1に対して傾斜している。また、傾斜平板壁1には、四角形の角形貫通孔2が法線方向H1と直交する方向に貫通形成されている。
【0003】
ところで、一般に、樹脂パレットは、デッキ面の法線方向H1に開閉される1対の成形型を有した樹脂成形金型で成形される。そして、上記した角形貫通孔2のようにデッキ面の法線方向H1、即ち、型開閉方向に対して直交した方向で樹脂壁を貫通する孔を成形する場合には、斜平板壁1のうち角形貫通孔2より下側部分を傾斜平板壁1全体に対して傾斜平板壁1の厚さ方向に厚さ分だけずらして角形貫通孔2を成形可能な構成にしていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平02−7791号公報(図3,図5参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の樹脂成形金型で製造される樹脂パレットは、傾斜平板壁1の一部をずらした分の段差部1Dと厚肉部1Aとが傾斜平板壁1の下端部に形成され、その段差部1Dで応力集中が生じると共に、厚肉部1Aと通常の肉厚部分との肉厚差により成形歪みが発生し得た。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、応力集中及び成形歪みが生じ難い樹脂パレット及び、そのような樹脂パレットその他の樹脂成形品を成形可能な樹脂成形金型、樹脂成形品の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る樹脂成形金型は、開閉可能な1対の成形型を有し、それらのうちの一方の成形型に設けられて型開閉方向に対して傾斜した第1傾斜成形面と、他方の成形型に設けられて型開閉方向に対して傾斜した第2傾斜成形面との間に樹脂を充填して、型開閉方向に対して傾斜した傾斜平板壁を成形可能であると共に、傾斜平板壁に四角形の角形貫通孔を成形可能な樹脂成形金型において、型開閉方向に対して平行又は、第1傾斜成形面及び第2傾斜成形面と同じ側に傾斜した基準平坦面に含まれ、型閉じ状態における基準平坦面と第1傾斜成形面との交線である第1線分と基準平坦面と第2傾斜成形面との交線である第2線分とを対辺とした四角形の角形接合面を1対の成形型の間に設け、一方の成形型に、角形接合面を有しかつ第1線分から第2線分に向かって第1傾斜成形面から徐々に突出した第1傾斜突部を形成する一方、他方の成形型に、角形平坦面を有しかつ第2線分から第1線分に向かって第2傾斜成形面から徐々に突出した第2傾斜突部を形成したところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明に係る樹脂成形品の製造方法は、開閉可能な1対の成形型のうちの一方の成形型に設けられて型開閉方向に対して傾斜した第1傾斜成形面と、他方の成形型に設けられて型開閉方向に対して傾斜した第2傾斜成形面との間に樹脂を充填して、型開閉方向に対して傾斜した傾斜平板壁を成形すると共に、傾斜平板壁に四角形の角形貫通孔を成形して、それら傾斜平板壁及び角形貫通孔を有した樹脂成形品を製造する樹脂成形品の製造方法において、型開閉方向に対して平行又は、第1傾斜成形面及び第2傾斜成形面と同じ側に傾斜した基準平坦面に含まれ、型閉じ状態における基準平坦面と第1傾斜成形面との交線である第1線分と基準平坦面と第2傾斜成形面との交線である第2線分とを対辺とした四角形の角形接合面を1対の成形型の間に設けておくと共に、一方の成形型に、角形接合面を有しかつ第1線分から第2線分に向かって第1傾斜成形面から徐々に突出した第1傾斜突部を形成する一方、他方の成形型に、角形平坦面を有しかつ第2線分から第1線分に向かって第2傾斜成形面から徐々に突出した第2傾斜突部を形成しておき、型閉じ状態で接合する第1傾斜突部と第2傾斜突部とによって角形貫通孔の内側面を成形するところに特徴を有する。
【0009】
請求項3の発明に係る樹脂パレットは、荷物を載置可能なデッキ面の法線に対して傾斜しかつ、四角形の角形貫通孔を有する傾斜平板壁を備えた樹脂パレットにおいて、角形貫通孔の内側面のうちデッキ面の法線方向で対向した1対の内側面が、デッキ面の法線方向から見たときに互いに離間しているか又は、離間せずかつ重ならずに横並びに配置されているところに特徴を有する。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3に記載の樹脂パレットにおいて、デッキ面を上面に有したデッキ盤を桟構造にして、そのデッキ盤の一部に断面U字又は断面V字の溝形桟を設け、溝形桟における1対の側壁を傾斜平板壁としたところに特徴を有する。
【0011】
請求項5の発明は、請求項3又は4に記載の樹脂パレットにおいて、デッキ面を上面に有したデッキ盤から下方に突出した複数のデッキ下面突壁を傾斜平板壁として備え、フォークリフトのフォーク挿入用に複数のデッキ下面突壁に角形貫通孔を形成したところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
[請求項1及び2の発明]
請求項1及び2の発明によれば、1対の成形型を閉じると、一方の成形型の第1傾斜成形面と、他方の成形型の第2傾斜成形面とが成形空間を挟んで対向すると共に、第1傾斜成形面から突出した第1傾斜突部と、第2傾斜成形面から突出した第2傾斜突部とが合体して四角形の板状体になり、その板状体が厚さ方向で第1傾斜成形面と第2傾斜成形面との間に挟まった状態になる。そして、成形空間に樹脂を充填すると、第1傾斜成形面と第2傾斜成形面とによって傾斜平板壁の表裏の平坦面が成形されると共に、その傾斜平板壁から前記した板状体分の壁体が排除されて角形貫通孔が成形される。このように、本発明では、傾斜平板壁に従来の段差部や厚肉部を設けずに角形貫通孔を成形することができ、応力集中及び成形歪みが生じ難い樹脂成形品の製造が可能になる。しかも、第1傾斜突部及び第2傾斜突部は、角形貫通孔によって傾斜平板壁から排除される四角形の板状体を、その板厚方向で斜めに半割にした単純な形状であるので、金型加工費を抑えることができる。
【0013】
[請求項3,4,5の発明]
樹脂パレットを請求項3,4,5の構成にすれば、請求項1の樹脂成形金型及び請求項2の樹脂成形品の製造方法を用いて製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る樹脂パレットの斜視図
【図2】樹脂パレットの一部破断の斜視図
【図3】波形補強壁の断面形状を示した斜視図
【図4】波形補強壁の斜視図
【図5】(A)波形補強壁の下面図、(B)波形補強壁の変形例の下面図
【図6】樹脂成形金型の一部の斜視図
【図7】樹脂成形金型の一部の側断面図
【図8】基準平坦面及び角形接合面の概念図
【図9】樹脂成形金型が閉じた状態の側断面図
【図10】樹脂成形金型が開いた状態の側断面図
【図11】第2実施形態の樹脂パレットの一部破断斜視図
【図12】(A)第2実施形態の樹脂パレットの部分斜視図,(B)対比例の樹脂パレットの部分斜視図
【図13】従来の樹脂パレットの傾斜平板壁の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
以下、本発明の一実施形態を図1〜図10に基づいて説明する。本実施形態の樹脂パレット10は、平面略正方形のデッキ盤11における四隅を含む複数箇所に桁部20を備え、それら桁部20,20同士の間がフォーク挿入空間14になっている。また、樹脂パレット10全体は、上下方向に開放した複数の網の目を有する桟構造になっている。
【0016】
デッキ盤11には、その外縁部と縦横の中心線に沿った部位に、比較的強度が大きな上面強化梁12が備えられ、デッキ盤11の全体で上面強化梁12が「田」の字形状になっている。そして、上面強化梁12に囲まれた四角形の4つの領域がそれぞれ荷受盤13にて塞がれている。
【0017】
桁部20は、デッキ盤11のうち上面強化梁12同士の交差位置に配置されている。即ち、桁部20は、デッキ盤11の四隅と、デッキ盤11の各外縁部における各中央部と、デッキ盤11の平面形状における図心との計9箇所に配置されている。また、縦横の何れかの方向で隣り合った桁部20,20の下端部の間には、下面強化梁15が差し渡され、その下面強化梁15も全体が「田」の字形状になっている。なお、下面強化梁15に囲まれた四角形の4つの領域には、荷受盤13に相当する構造体はなく、単なる空間になっている。
【0018】
樹脂パレット10の外縁部中央に位置した各桁部20は、角筒壁20Gの内側に波形補強壁30を備え、図2及び図3には、波形補強壁30の断面形状が示されると共に、図4には、波形補強壁30の溝形構造が模式的に示されている。具体的には、波形補強壁30は、図4に示すように、角筒壁20Gにおける1対の内側対向面20T,20T(図4には、一方の内側対向面20Tのみが示されている)の上端部間で平行に延びた複数の上部帯状壁31と、1対の内側対向面20T,20Tの下端部間で平行に延びた複数の下部帯状壁32とを波形構造の上下の頂点部分に備えると共に、上下に並んだ上部帯状壁31の側縁部と下部帯状壁32の側縁部との間にそれぞれ平板状の傾斜平板壁33を備えている。そして、各傾斜平板壁33に本発明に係る矩形貫通孔34が形成されている。なお、波形補強壁30の一部は、本発明に係る溝形桟39になっていて、その溝形桟39の溝開口は下方を向いている。
【0019】
傾斜平板壁33は、デッキ盤11の上面であるデッキ面11D(図1参照)の法線方向H1に対し、樹脂成形上、アンダーカット形状にならないように傾斜している。即ち、上部帯状壁31を介して連絡された傾斜平板壁33,33は、その上部帯状壁31に接近するに従って(上側に向かうに従って)傾斜平板壁33,33同士が接近するように傾斜し、下部帯状壁32を介して連絡された傾斜平板壁33,33は、その下部帯状壁32に接近するに従って(下側に向かうに従って)傾斜平板壁33,33同士が接近するように傾斜している。図4には、これら傾斜平板壁33の傾斜角が強調して示されている。
【0020】
なお、上記した傾斜平板壁33,33が、例えば、上部帯状壁31に接近するに従って離間するように傾斜した、所謂「アリ溝構造」の場合には、デッキ面11Dの法線方向H1に開閉する後述の固定型51及び可動型61では、それら固定型51と可動型61とが干渉するか、或いは、樹脂パレット10と固定型51又は可動型61とが干渉することになり、型の開閉を行えなくなる。このような形状が一般に「アンダーカット形状」と呼ばれている。
【0021】
さて、各傾斜平板壁33に形成された角形貫通孔34のうちデッキ面11Dの法線方向H1で対向した1対の内側面34A,34Bは、図5(A)に示すように、デッキ面11Dの法線方向H1から見たときに互いに僅かに離間している。つまり、傾斜平板壁33は、角形貫通孔34の内側面34A,34Bに関しても、アンダーカット形状ではない形状になっている。
【0022】
なお、角形貫通孔34のうちデッキ面11Dの法線方向H1で対向した1対の内側面34A,34Bは、図5(B)に示すように、離間せずかつ重ならずに横並びに配置された構造にしてもよく、この場合もアンダーカット形状ではない形状になる。また、角形貫通孔34における1対の内側面34A,34Bが、デッキ面11Dの法線方向H1から見て互いに重なっていた場合には、「アンダーカット形状」になる。
【0023】
本実施形態の樹脂パレット10の構成に関する説明は以上である。次に樹脂パレット10の製造に用いられる樹脂成形金型50について説明する。
【0024】
図6には、樹脂パレット10を成形するための樹脂成形金型50の一部が示されている。同図において符号51は例えば固定型であって本発明に係る「一方の成形型」に相当し、符号61は例えば可動型であって本発明に係る「他方の成形型」に相当する。可動型61は、デッキ面11Dの法線方向H1でもある型開閉方向H2に直動し、固定型51に接合された型閉じ状態と、固定型51から離間した型開き状態とに切り替えられる。そして、型閉じ状態で固定型51と可動型61との間に形成されたキャビティ内に樹脂が充填されて樹脂パレット10が成形される。このとき、樹脂パレット10のうち上方及び斜め上方を向いた成形面は可動型61によって成形され、樹脂パレット10のうち下方及び斜め下方を向いた成形面は固定型51によって成形される。
【0025】
詳細には、固定型51には、波形補強壁30の波形構造のうち下方から見た際の谷部に対応した複数の固定側台形突部52(図6には1つの固定側台形突部52のみが示されている)が備えられる一方、可動型61には、波形補強壁30の波形構造のうち上方から見た際の谷部に対応した複数の可動側台形突部62が備えられている。そして、型閉じ状態にすると、固定側台形突部52が可動側台形突部62,62の間に突入して、固定型51と可動型61との間に波形成形空間K(図9参照)が上記したキャビティの一部として形成される。
【0026】
本実施形態では、固定側台形突部52の傾斜成形面53は、本発明に係る「第1傾斜成形面」に相当し、可動側台形突部62の傾斜成形面63は、本発明に係る「第2傾斜成形面」に相当する。そして、固定側台形突部52の傾斜成形面53に、本発明に係る第1傾斜突部54が突出形成され、可動側台形突部62の傾斜成形面63に、本発明に係る第2傾斜突部64が突出形成されている。第1傾斜突部54は、傾斜成形面53の一部を四角形に切り離し、その切り離された四角形の平坦面を、固定側台形突部52の基端部から先端部に向かうに従って傾斜成形面53から徐々に離れるように傾斜させた構造になっている。第2傾斜突部64に関しても同様に、傾斜成形面63の一部を四角形に切り離し、その切り離された四角形の平坦面を、可動側台形突部62の基端部から先端部に向かうに従って傾斜成形面63から徐々に離れるように傾斜させた構造になっている。
【0027】
詳細には、第1傾斜突部54及び第2傾斜突部64は以下のようにして形成されている。即ち、図7に示すように、樹脂成形金型50の型開閉方向H2に対して所定の傾斜角θ1(例えば、1度。図7では、傾斜が強調して示されている)だけ傾斜成形面53,63と同じ側に傾斜して傾斜成形面53,63と交差する基準平坦面P1を設定すると共に、図8に示すように、基準平坦面P1と傾斜成形面53との交線である第1線分S1と傾斜成形面63との交線である第2線分S2とが、型開閉方向H2に対して直交しかつ同じ長さとなるように設定する。そして、型閉じ状態で第1線分S1と第2線分S2とを対辺とした四角形の角形接合面P2を、固定型51と可動型61の間の接合面の一部として設け、第1傾斜突部54が、角形接合面P2を備えて、その角形接合面P2の第1線分S1から第2線分S2に向かって傾斜成形面53から徐々に突出した構造になっている。また、第2傾斜突部64も同様に、角形接合面P2を備えて、その角形接合面P2の第2線分S2から第1線分S1に向かって傾斜成形面63から徐々に突出した構造になっている。
【0028】
なお、本実施形態では、角形接合面P2を含む基準平坦面P1が樹脂成形金型50の型開閉方向H2に対して傾斜しているが、角形接合面P2を含む基準平坦面P1を樹脂成形金型50の型開閉方向H2に対して平行に配置してもよい。
【0029】
本実施形態の樹脂成形金型50の構成に関する説明は以上である。次に、樹脂パレット10の製造方法について説明する。樹脂パレット10を製造するには、樹脂成形金型50を型閉じ状態にする。すると、図9に示すように、固定型51の固定側台形突部52,52の間に可動型61の可動側台形突部62が突入して、固定型51と可動型61との間に波形の成形空間Kが形成される。
【0030】
このとき、樹脂パレット10のうち波形補強壁30を成形する部分に関しては、固定型51の傾斜成形面53と可動型61の傾斜成形面63とは、成形空間Kを挟んで対向すると共に、固定型51の傾斜成形面53から突出した第1傾斜突部54と、可動型61の傾斜成形面63から突出した第2傾斜突部64とが合体して四角形の板状体69(図7参照)になり、その板状体69が厚さ方向で両傾斜成形面53,63の間に挟まった状態になる。
【0031】
次いで、樹脂成形金型50を閉じたらキャビティに溶融樹脂を充填する。これにより、樹脂パレット10が成形される。このとき、固定型51の傾斜成形面53と可動型61の傾斜成形面63とによって傾斜平板壁33(図4参照)の表裏の平坦面が成形されると共に、その傾斜平板壁33から前記した板状体69分の壁体が排除されて角形貫通孔34が成形される。このようにして、本実施形態では、傾斜平板壁33に従来の段差部や厚肉部を設けずに角形貫通孔34を成形することができる。
【0032】
樹脂成形金型50内の樹脂が固化したら、図10に示すように、樹脂成形金型50を開き、樹脂パレット10を樹脂成形金型50から取り出す。以上により、樹脂パレット10が完成する。
【0033】
このように樹脂パレット10を本実施形態の構成のようにすることで、本実施形態の樹脂成形金型50及び製造方法を用いて製造することが可能になる。そして、本実施形態の樹脂成形金型50及び樹脂パレット10の製造方法によれば、傾斜平板壁33に従来の段差部や厚肉部を設けずに角形貫通孔34を成形することができるので、応力集中及び成形歪みが生じ難い樹脂成形品の製造が可能になると共に、従来の厚肉部がなくなることで樹脂の冷却時間が短縮され、生産効率が向上する。また、応力集中及び成形歪みが生じ難くなるので、角形貫通孔34を多数設けることができ、樹脂パレット10の軽量化を図ることもできる。しかも、第1傾斜突部54及び第2傾斜突部64は、角形貫通孔34によって傾斜平板壁33から排除される四角形の板状体69を、その板厚方向で斜めに半割にした単純な形状であるので、金型加工費を抑えることができる。
【0034】
なお、本実施形態の樹脂パレット10では、図3に示すようにデッキ面11Dの図心の桁部20と外縁部中央の桁部20との間を連絡する上面強化梁12及び下面強化梁15からなる構造部も、上記した波形補強壁30と同様に本発明に係る傾斜平板壁90を複数備えた波形構造になっている。また、それら複数の傾斜平板壁90には、フォーク挿入空間14を形成するために本発明に係る角形貫通孔91が成形されている。そして、各角形貫通孔91を成形するための樹脂成形金型50の構造が、上記した桁部20内の波形補強壁30における角形貫通孔34を成形する部位の構造と共通した構造になっている。
【0035】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る樹脂パレット10Vは、図11及び図12(A)に示されている。この樹脂パレット10Vは、所謂、ネスティングパレットであって、樹脂パレット10V,10V同士を重ね合わせた際に、上側の樹脂パレット10Vの下端部が、下側の樹脂パレット10Vの上面の凹部に嵌合されることで、樹脂パレット10Vの積み上げ高さを通常の樹脂パレットに比べて低くすることができるようになっている。
【0036】
具体的には、樹脂パレット10Vには、外縁部全体に沿って第1V字溝形壁70(本発明の「溝形桟」に相当する)が形成されている。第1V字溝形壁70は、樹脂パレット10Vの上面から下面に至る高さをなし、デッキ面11Dの法線方向H1に対して僅かに傾斜した1対の溝側壁71,71を備え、それら溝側壁71,71の間がデッキ面11Dで上方に向かって開口している。また、第1V字溝形壁70は、樹脂パレット10Vの四隅の角部と側縁部とで分断されている。そして、分断された複数の各第1V字溝形壁70の両端部で、溝側壁71が外側に膨出していて桁部75になっている。
【0037】
各第1V字溝形壁70の両溝側壁71,71は、本発明に係る「傾斜平板壁」及び「デッキ下面突壁」に相当し、両溝側壁71,71には、桁部75,75の間にフォークリフトのフォーク挿入用の角形貫通孔73がそれぞれ貫通形成されている。
【0038】
なお、第1V字溝形壁70の底壁72は、両溝側壁71,71の下端部より上方に配置されると共に、内側の溝側壁71から外側の溝側壁71に向かって下るように傾斜している。そして、両角形貫通孔73,73の下辺部分が底壁72と両溝側壁71,71との交差部分に配置されている。
【0039】
樹脂パレット10Vには、第1V字溝形壁70群に沿ってそれら第1V字溝形壁70より内側に第2V字溝形壁76(本発明の「溝形桟」に相当する)が形成されている。第2V字溝形壁76は、第1V字溝形壁70と同様に、本発明に係る「傾斜平板壁」に相当する溝側壁77,77を備え、その溝側壁77,77には溝側壁71の角形貫通孔73,73に対応させて角形貫通孔79,79が形成されている。なお、第2V字溝形壁76の溝側壁77,77は、角形貫通孔79を備えかつデッキ盤11から下方に突出しているので、本発明に係る「デッキ下面突壁」にも相当する。
【0040】
なお、図12(A)に示すように、第2V字溝形壁76の底壁78は、両第1V字溝形壁70の底壁72とは反対側に傾斜していて、両角形貫通孔79,79の下辺部分が底壁78と両溝側壁77,77との交差部分に配置されている。
【0041】
また、上記した第1と第2のV字溝形壁70,76と同様の1対の第3V字溝形壁80,80(本発明の「溝形桟」に相当する)が、樹脂パレット10の全体中央と各底縁部中央とを繋ぐ十字のライン上にも設けられ、それら第3V字溝形壁80,80にも角形貫通孔83が貫通形成されている。そして、上記した第1と第2のV字溝形壁70,76及び1対の第3V字溝形壁80,80に形成された各角形貫通孔73,79,83において、デッキ面D11の法線方向H1で対向する1対の内側面は、前記第1実施形態の角形貫通孔34における1対の内側面34A,34B(図5(A)及び図5(B)参照)と同様に、デッキ面11Dの法線方向H1から見たときに互いに離間しているか又は、離間せずかつ重ならずに横並びに配置されている。
【0042】
本実施形態の樹脂パレット10Vの構成によれば、前記第1実施形態の樹脂成形金型50の第1及び第2の傾斜突部54,64と同様の第1及び第2の傾斜突部を備えた樹脂成形金型で成形することができる。これにより、従来の樹脂成形金型で成形された場合に発生する図12(B)に示した段差部73D,79Dや厚肉部73A,79Aが排除され、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0043】
なお、本発明は、上記第1及び第2の実施形態に限定されるものではなく、上記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0044】
10,10V 樹脂パレット
11 デッキ盤
11D デッキ面
33 傾斜平板壁
34,73,79,83 角形貫通孔
39 溝形桟
50 樹脂成形金型
51 固定型(成形型)
53 傾斜側面(第1傾斜成形面)
54 第1傾斜突部
61 可動型(成形型)
63 傾斜成形面(第2傾斜成形面)
64 第2傾斜突部
69 板状体
70 第1V字溝形壁(溝形桟)
76 第2V字溝形壁(溝形桟)
80 第3V字溝形壁(溝形桟)
71,77 溝側壁(傾斜平板壁,デッキ下面突壁)
D11 デッキ面
H1 法線方向
H2 型開閉方向
P1 基準平坦面
P2 角形接合面
S1 第1線分
S2 第2線分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能な1対の成形型を有し、それらのうちの一方の成形型に設けられて型開閉方向に対して傾斜した第1傾斜成形面と、他方の成形型に設けられて前記型開閉方向に対して傾斜した第2傾斜成形面との間に樹脂を充填して、前記型開閉方向に対して傾斜した傾斜平板壁を成形可能であると共に、前記傾斜平板壁に四角形の角形貫通孔を成形可能な樹脂成形金型において、
前記型開閉方向に対して平行又は、前記第1傾斜成形面及び第2傾斜成形面と同じ側に傾斜した基準平坦面に含まれ、型閉じ状態における前記基準平坦面と前記第1傾斜成形面との交線である第1線分と前記基準平坦面と前記第2傾斜成形面との交線である第2線分とを対辺とした四角形の前記角形接合面を前記1対の成形型の間に設け、
前記一方の成形型に、前記角形接合面を有しかつ前記第1線分から前記第2線分に向かって前記第1傾斜成形面から徐々に突出した第1傾斜突部を形成する一方、
前記他方の成形型に、前記角形平坦面を有しかつ前記第2線分から前記第1線分に向かって前記第2傾斜成形面から徐々に突出した第2傾斜突部を形成したことを特徴とする樹脂成形金型。
【請求項2】
開閉可能な1対の成形型のうちの一方の成形型に設けられて型開閉方向に対して傾斜した第1傾斜成形面と、他方の成形型に設けられて前記型開閉方向に対して傾斜した第2傾斜成形面との間に樹脂を充填して、前記型開閉方向に対して傾斜した傾斜平板壁を成形すると共に、前記傾斜平板壁に四角形の角形貫通孔を成形して、それら傾斜平板壁及び角形貫通孔を有した樹脂成形品を製造する樹脂成形品の製造方法において、
前記型開閉方向に対して平行又は、前記第1傾斜成形面及び第2傾斜成形面と同じ側に傾斜した基準平坦面に含まれ、型閉じ状態における前記基準平坦面と前記第1傾斜成形面との交線である第1線分と前記基準平坦面と前記第2傾斜成形面との交線である第2線分とを対辺とした四角形の前記角形接合面を前記1対の成形型の間に設けおくと共に、
前記一方の成形型に、前記角形接合面を有しかつ前記第1線分から前記第2線分に向かって前記第1傾斜成形面から徐々に突出した第1傾斜突部を形成する一方、
前記他方の成形型に、前記角形平坦面を有しかつ前記第2線分から前記第1線分に向かって前記第2傾斜成形面から徐々に突出した第2傾斜突部を形成しておき、
前記型閉じ状態で接合する前記第1傾斜突部と前記第2傾斜突部とによって前記角形貫通孔の内側面を成形することを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
荷物を載置可能なデッキ面の法線に対して傾斜しかつ、四角形の角形貫通孔を有する傾斜平板壁を備えた樹脂パレットにおいて、
前記角形貫通孔の内側面のうち前記デッキ面の法線方向で対向した1対の内側面が、前記デッキ面の法線方向から見たときに互いに離間しているか又は、離間せずかつ重ならずに横並びに配置されていることを特徴とする樹脂パレット。
【請求項4】
前記デッキ面を上面に有したデッキ盤を桟構造にして、そのデッキ盤の一部に断面U字又は断面V字の溝形桟を設け、前記溝形桟における1対の側壁を前記傾斜平板壁としたことを特徴とする請求項3に記載の樹脂パレット。
【請求項5】
前記デッキ面を上面に有したデッキ盤から下方に突出した複数のデッキ下面突壁を前記傾斜平板壁として備え、フォークリフトのフォーク挿入用に前記複数のデッキ下面突壁に前記角形貫通孔を形成したことを特徴とする請求項3又は4に記載の樹脂パレット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−116073(P2012−116073A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267319(P2010−267319)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(591006944)三甲株式会社 (380)
【Fターム(参考)】