説明

樹脂洗浄剤組成物、および熱可塑性樹脂加工装置の洗浄方法

【課題】洗浄効果、とりわけ着色剤を含む成形用樹脂の洗浄効果に優れ、洗浄時における発煙を防止可能な樹脂洗浄剤組成物を提供すること、および該樹脂洗浄剤組成物を使用した熱可塑性樹脂成形装置の洗浄方法を提供すること。
【解決手段】未架橋ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、ポリプロピレン10〜50重量%とゴム成分30〜60重量%とを含有するオレフィン系熱可塑性エラストマー60〜2000重量部、および過酸化物を0.2〜10重量部含有し、かつ未架橋ポリオレフィン樹脂の含有重量を100としたとき、ポリプロピレンの含有重量が30〜200である樹脂洗浄剤組成物、および該樹脂洗浄剤組成物を使用した熱可塑性樹脂成形装置の洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形加工を行った後の熱可塑性樹脂加工装置の内部に残留する樹脂、着色剤、充填剤、これらの混合物などを排出、洗浄するための樹脂洗浄剤組成物、および熱可塑性樹脂加工装置の洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は優れた加工性を生かして、プレス成形品、射出成形品、フィルム、シートなどの押出成形品、中空成形品などの多岐に渡る製品が製造されており、その用途はますます拡がりをみせ、デザインの多様化が進んでいる。その結果、少量多品種の成形品の生産が求められており、熱可塑性樹脂加工装置においては、樹脂材料、色、充填剤の切り替えを頻繁に行う必要がある。樹脂材料、色、充填剤などの変更に際しては、その都度加工機の分解掃除を行うことが、変更前の熱可塑性樹脂基材の残留物の変更後の熱可塑性樹脂基材による成形に与える影響を排除する上で確実であるが、加工装置の冷却、分解、クリーニング、組立、加熱が必要であり、生産性の低下をもたらすと共に、コストアップの要因となる。そこで生産性を維持するために、従来から樹脂組成物が洗浄剤として使用されている。洗浄剤は、加工装置の分解を行うことなく、樹脂供給部より供給して成形用の樹脂と同様に加工装置から排出するだけで、加工装置内部を洗浄する作用を有するものである。洗浄剤は、加工装置を分解する際にも有効である。即ち、成形加工後の熱可塑性樹脂加工装置の内部には成形用の熱可塑性樹脂基材が残存し、分解のために冷却すると溶融していた樹脂が固化し、スクリューの取り出しなどの妨げとなるが、洗浄剤を使用して加工装置の内部の成形用の熱可塑性樹脂基材を除去すると分解時のスクリューの取り出しなどが容易となる。
【0003】
洗浄剤は、熱可塑性樹脂加工装置内部、特に押出機や射出成形機のシリンダーやスクリューに付着して残っている単独樹脂ないし着色剤や充填剤を含む樹脂組成物を機械的に掻き出す排出作用(パージ効果)と拭き取り作用(ワイピング効果)とによって洗浄を行なう作用を有するものである。
【0004】
熱可塑性樹脂加工装置の生産性を維持するための洗浄剤組成物として、本発明者らは、下記特許文献1において、ポリオレフィン樹脂および過酸化物を含有する架橋性ポリオレフィン樹脂組成物と、熱可塑性支持体と、を含有する洗浄剤組成物を提案した。この洗浄剤組成物は、熱可塑性樹脂加工装置内部、特に押出機や射出成形機のシリンダーやスクリューに付着して残っている樹脂ないし着色剤や充填剤を含む樹脂組成物を機械的に掻き出す排出作用(パージ効果)と拭き取り作用(ワイピング効果)との両方に優れ、洗浄効率が高いために容易に成形用熱可塑性樹脂の色の変更などを行うことができると共に、加工装置内での洗浄剤組成物自体の残存が少ないので材料変更後の成形開始を早期に行うことができる。
【0005】
ところで、近年では、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトンなどの耐熱性の高いプラスチック、いわゆるスーパーエンジニアリングプラスチックを熱可塑性樹脂加工装置を使用して成形することで、高耐熱性プラスチック製品を製造する技術が広く普及しつつある。スーパーエンジニアリングプラスチックのように溶融(軟化)温度の高い樹脂を射出成形あるいは押出成形する場合、一般的に樹脂の射出(押出)温度は300℃以上となることが多く、必然的に射出(押出)成形後の洗浄工程でも、その洗浄温度を300℃以上とする場合が多い。
【0006】
ポリオレフィン樹脂としてポリエチレンを含有する洗浄剤組成物を使用した場合、特に洗浄温度が高温となると、ポリエチレンの酸化分解反応、および架橋反応に伴う発熱によって、ポリエチレンからの発煙が激しくなり、作業場に煙が立ちこめ、作業環境が著しく劣悪となるという問題があった。すなわち、ポリエチレンを含有する洗浄剤組成物を使用した場合、洗浄温度が200℃程度であれば発煙は問題とならないが、250℃になると発煙が顕著となり、300℃になると発煙が非常に激しくなる。加えて、洗浄剤組成物が熱可塑性樹脂加工装置内で固まり、所謂ダンゴのような状態になると、冷却が進まず熱が蓄積し、さらに自己発熱が進むので発煙がますます激しくなり、作業者が耐えられない状態に達することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4076167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、洗浄効果、とりわけ着色剤を含む成形用樹脂の洗浄効果に優れ、洗浄時における発煙を防止可能な樹脂洗浄剤組成物を提供すること、および該樹脂洗浄剤組成物を使用した熱可塑性樹脂加工装置の洗浄方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述したとおり、未架橋ポリオレフィン樹脂と過酸化物とを含有する熱可塑性樹脂組成物を単独で樹脂洗浄剤とし、未架橋ポリオレフィン樹脂として、特にポリエチレンを使用して架橋反応を進行させると、洗浄温度が高温になるに伴って、ポリエチレンの酸化分解反応および架橋反応による発熱のために発煙が激しくなる。しかしながら、本発明者らが鋭意検討した結果、未架橋ポリオレフィン樹脂と過酸化物とに加えて、ポリプロピレンとゴム成分とを含有するオレフィン系熱可塑性エラストマーを併用することで、優れた洗浄効果を発揮しながら、ポリエチレンに由来する発煙を防止できることを見出した。
【0010】
本発明は、上記知見に基づきなされたものであって、下記の如き構成を備える。即ち、本発明に係る樹脂洗浄剤組成物は、未架橋ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、ポリプロピレン10〜50重量%とゴム成分30〜60重量%とを含有するオレフィン系熱可塑性エラストマー60〜2000重量部、および過酸化物を0.2〜10重量部含有し、かつ前記未架橋ポリオレフィン樹脂の含有重量を100としたとき、ポリプロピレンの含有重量が30〜200であることを特徴とする。
【0011】
上記樹脂洗浄剤組成物は、洗浄効果、とりわけ着色剤を含む成形用樹脂の洗浄効果に優れたものである。より具体的には、本発明に係る樹脂洗浄剤組成物は、熱可塑性樹脂加工装置内部、特に押出機や射出成形機のシリンダーやスクリューに付着して残っている着色剤や充填剤を含む熱可塑性樹脂基材を、機械的に掻き出す排出作用(パージ作用)と拭き取り作用(ワイピング作用)とによって洗浄を行なう作用を有する。その結果、洗浄効率が高いために容易に成形用樹脂の色の変更などを行うことができると共に、加工装置内の樹脂洗浄剤組成物の残存が少ないので材料変更後の成形開始を早期に行うことができる。
【0012】
また、本発明に係る樹脂洗浄剤組成物は、未架橋ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、過酸化物を0.2〜10重量部含有する。この未架橋ポリオレフィン樹脂は、加工装置に供給されると簡単に溶融し、溶融した未架橋ポリオレフィン樹脂は、シリンダーやスクリューに馴染み易く、その結果、熱可塑性樹脂加工装置内に残存する成形用樹脂(熱可塑性樹脂基材)を拭き取る(ワイピング)作用を発揮する。次いで、スクリューやシリンダーなどと接触して熱可塑性樹脂加工装置内を移動しつつ、過酸化物により未架橋ポリオレフィン樹脂が架橋し、その樹脂強度が高くなる。その結果、容易に変形しなくなって強い掻き出し(パージ)作用を発揮し、ワイピングした成形用樹脂をパージすることによって熱可塑性樹脂加工装置を効率よく洗浄する。
【0013】
さらに、本発明に係る樹脂洗浄剤組成物は、ポリプロピレン10〜50重量%とゴム成分30〜60重量%とを含有するオレフィン系熱可塑性エラストマーを、未架橋ポリオレフィン樹脂100重量部に対して60〜2000重量部含有する。このオレフィン系熱可塑性エラストマーが含有するポリプロピレンは、ポリエチレンの酸化分解反応中に発生するラジカルを補足する作用を有するため、ポリエチレンに由来する発煙を防止することができる。ただし、本発明に係る樹脂洗浄剤組成物中、未架橋ポリオレフィン樹脂の含有重量を100としたとき、ポリプロピレンの含有重量を30〜200とする。未架橋ポリオレフィン樹脂の含有重量を100としたとき、ポリプロピレンの含有重量が30未満であると、発煙を防止する効果が低下し、200を超えると、樹脂洗浄剤組成物のパージ効果が低下する。なお、本発明において、「ポリプロピレンの含有重量」とは、オレフィン系熱可塑性エラストマーの重量部数とポリプロピレンの重量%との積を意味する。
【0014】
ところで、ポリエチレンの酸化分解反応を防止するだけであれば、ポリプロピレンを単独で、未架橋ポリオレフィン樹脂と過酸化物とを含有する熱可塑性樹脂組成物に添加することで、ポリエチレンの発煙を防止できるとも考えられる。しかしながら、後述する実施例の結果が示すとおり、ポリプロピレンは洗浄中に分解し、溶融粘度が低下するため、単独で添加した場合は樹脂洗浄剤組成物のパージ効果が低下する。その結果、洗浄後にポリプロピレンが、例えばスクリューの溝壁に付着して残るため、樹脂洗浄剤としては好ましくない結果をもたらす。
【0015】
しかしながら、本発明において使用するオレフィン系熱可塑性エラストマーは、ポリプロピレンとゴム成分とがアロイの様に混ざり合っており、架橋反応中にポリプロピレンが粘度低下を起こしてもゴム成分が溶融粘度の低下を抑える役目を果たし、その洗浄効果の低下を防止することができる。即ち、本発明においては、オレフィン系熱可塑性エラストマーの一成分であるポリプロピレンによって、ポリエチレンの酸化分解反応による発煙を防止することができるとともに、もう一方のゴム成分によって、溶融粘度を保持し、樹脂洗浄剤組成物のパージ効果を保持することができる。
【0016】
その結果、本発明に係る樹脂洗浄剤組成物は、洗浄効果、とりわけ着色剤を含む成形用樹脂の洗浄効果に優れ、かつ洗浄時における発煙を防止することができる。
【0017】
上記樹脂洗浄剤組成物において、さらに、ポリマー成分合計100重量部に対して、滑剤および界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種を、0.1〜3重量部含有することが好ましい。
【0018】
また、本発明に係る熱可塑性樹脂加工装置の洗浄方法は、熱可塑性樹脂基材を成形した後の熱可塑性樹脂加工装置の樹脂供給部に、前記いずれかに記載の樹脂洗浄剤組成物を供給し、未架橋ポリオレフィン樹脂の架橋を進行させながら、前記熱可塑性樹脂加工装置に残留する前記熱可塑性樹脂基材を、前記樹脂洗浄剤組成物と共に排出、洗浄することを特徴とする。
【0019】
上記洗浄方法により、洗浄時における発煙を防止しながら、熱可塑性樹脂加工装置を洗浄することができる。加えて、この洗浄方法により、熱可塑性樹脂基材を成形した後の熱可塑性樹脂加工装置の洗浄を短時間に行うことができ、樹脂成形の生産性が向上すると共に樹脂洗浄剤組成物の消費量も低減することができる。
【0020】
なお、本発明に係る熱可塑性樹脂加工装置の洗浄方法は、特にポリエチレンの酸化分解反応による発煙が顕著になる温度、具体的には、洗浄温度として250℃以上の温度で未架橋ポリオレフィン樹脂の架橋を進行させながら行うことが好ましく、300℃以上の温度で未架橋ポリオレフィン樹脂の架橋を進行させながら行うことが特に好ましい。また、本発明に係る熱可塑性樹脂加工装置の洗浄方法において、洗浄温度の上限としては、樹脂洗浄剤組成物の焼けなどを防止するために、400℃以下とすることが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成する未架橋ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、エチレンと少量割合(一般的には0.1〜15重量%好ましくは0.5〜6重量%)のプロピレン、ブテンなど他の単量体との共重合物を挙げることができる。
【0022】
より具体的には、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)などのポリエチレン樹脂、エチレン/プロピレン共重合物体、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体を例示することができる。これらのポリオレフィンは単独で使用してもよく、2種類以上を使用してもよい。この未架橋ポリオレフィン樹脂は、MFR値が0.01〜10(g/10分)、より好ましくは0.01〜(g/10分)であることが好ましい。
【0023】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成する過酸化物としては、公知の過酸化物が限定なく使用可能である。具体的には、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、ジアシルパーオキサイドなどが使用できる。より具体的には、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、α, α’−ジ(t−ブチルパーオキシ−ジイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、t−ブチル−オキシベンゾエートなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。また、本発明においては、過酸化物を単独で樹脂洗浄剤組成物に添加しても良く、過酸化物とゴム、あるいは過酸化物と未架橋ポリオレフィン樹脂とのマスターバッチを予め作成し、これを樹脂洗浄剤組成物に添加しても良い。
【0024】
過酸化物は、半減期が洗浄温度において8〜12時間であることが洗浄効果の点で好ましい。未架橋ポリオレフィンおよびオレフィン系熱可塑性エラストマーと過酸化物との混合は、公知の混合装置を使用することができ、具体的にはヘンシェルミキサー、Vブレンダー、タンブラーなどによるのが好適である。
【0025】
過酸化物の配合量は、未架橋ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、0.2〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部である。
【0026】
本発明の樹脂洗浄剤組成物が含有するオレフィン系熱可塑性エラストマーは、例えばプラスチックエージ2009年7月号48頁で例示される、ポリプロピレンを主体とするポリオレフィンとエチレンプロピレンメチレンリンケージゴム(EPDMゴム)などを主体とするゴム成分の単純ブレンド物(非架橋系)、EPDMゴムなどのゴム成分を加硫させながらポリオレフィンとブレンドさせたTPV系(Termoplastic Vulcanize)のもの(架橋系)、およびポリプロピレンの重合末期にゴム成分とブレンドさせるTPO系(Termoplastic Olefine )などが挙げられる。これらはいずれも、ポリプロピレンとゴム成分とがアロイの様に混ざり合っており、本来ゴム成分単体では粘度が高すぎて、通常のプラスチック加工に使われる射出成型機やシート・フィルムおよびブロー成型機などでは加工が難しいものを、該成型機で加工可能にした材料である。オレフィン系熱可塑性エラストマーは、ゴム成分が混ざることによってゴム的性質が付与され、軟質ゴムの風合いが発現する。
【0027】
オレフィン系熱可塑性エラストマーが本発明の樹脂洗浄剤としての目的を達成するためには、ポリエチレンの酸化分解反応を抑えること、および十分な溶融粘度を保持することの両方が必要である。これらの特性は、オレフィン系熱可塑性エラストマー中のゴム成分とポリプロピレンとの配合比率によって決まり、本発明に使用されるオレフィン系熱可塑性エラストマーは、ポリプロピレン10〜50重量%とゴム成分30〜60重量%とを含有する。オレフィン系熱可塑性エラストマー中のポリプロピレンが10重量%未満になると、ポリエチレンの酸化分解反応を抑えることが難しくなり、発煙を防止することが困難となる。一方、オレフィン系熱可塑性エラストマー中のポリプロピレンが50重量%を超えると、発煙を防止することは可能であるが、ポリプロピレンの分解による溶融粘度低下が起こり、樹脂洗浄剤組成物のパージ効果を保持できなくなる。なお、本発明で使用するオレフィン系熱可塑性エラストマーは、ポリプロピレンおよびゴム成分のみからなるものであってもよく(ポリプロピレンとゴム成分とで100重量%)、あるいはポリプロピレンとゴム成分とに加えて、例えばプロセスオイルなどの油性成分を含むものであってもよい。油性成分は、ゴム成分として使用する油展ゴム中に含まれてもよく、あるいはポリプロピレンとゴム成分とに、別途添加することで含まれるものであってもよい。
【0028】
本発明に係る樹脂洗浄剤組成物は、ポリプロピレン10〜50重量%とゴム成分30〜60重量%とを含有するオレフィン系熱可塑性エラストマーを、未架橋ポリオレフィン樹脂100重量部に対して60〜2000重量部含有する。ただし、本発明に係る樹脂洗浄剤組成物中、未架橋ポリオレフィン樹脂の含有重量を100としたとき、ポリプロピレンの含有重量を30〜200とする。未架橋ポリオレフィン樹脂の含有重量を100としたとき、ポリプロピレンの含有重量が30未満であると、発煙を防止する効果が低下し、200を超えると、樹脂洗浄剤組成物のパージ効果が低下する。例えば、ポリプロピレン10重量%を含有するオレフィン系熱可塑性エラストマーを使用する場合、未架橋ポリオレフィン樹脂の含有重量とポリプロピレンの含有重量との上記関係を満たすためには、未架橋ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、オレフィン系熱可塑性エラストマーを300〜2000重量部使用する必要がある。ここで、樹脂洗浄剤組成物中に、未架橋ポリオレフィン樹脂100重量部に対してオレフィン系熱可塑性エラストマーを2000重量部含有する場合であっても、ポリプロピレン量の少ないエラストマーは元々粘性が高いため、パージ効果に対する悪影響はない。
【0029】
本発明に係る樹脂洗浄剤組成物では、オレフィン系熱可塑性エラストマーを単独で使用してもよく、2種類以上のオレフィン系熱可塑性エラストマーを併用してもよい。
【0030】
本発明の樹脂洗浄剤組成物に添加する好ましい滑剤としては、シリコーンオイル、高級脂肪酸並びに金属塩、高級脂肪酸アミド、ワックスなどが例示される。高級脂肪酸としては、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸などが例示され、これらの脂肪酸の金属塩としては、ナトリウ塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩などが好適なものとして例示できる。
【0031】
滑剤に代えて、或いは滑剤と共に使用される界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレングリコールの高級アルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンモノラウレートなどのポリオキシエチレングリコールの高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸ジエタノールアミド、高級脂肪酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドなどの脂肪酸アミドなどのノニオン界面活性剤が好適なものとして例示できる。これらは、いずれも市販品の使用が好ましい。
【0032】
本発明の樹脂洗浄剤組成物には、必要に応じて未架橋ポリオレフィン樹脂以外の他の熱可塑性樹脂、酸化防止剤、帯電防止剤、無機充填剤、発泡剤など添加することができる。
【0033】
未架橋ポリオレフィン樹脂以外の他の熱可塑性樹脂としては、例えばポリメチルメタクリレート樹脂、アクリロニトリル/スチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン樹脂/ブタジエン共重合体樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。ただし、洗浄効果と耐発煙性とを考慮した場合、これらの熱可塑性樹脂の配合量は、未架橋ポリオレフィン樹脂100重量部に対して50重量部以下とすることが好ましい。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例などについて説明する。
<樹脂洗浄剤組成物の作成>
【0035】
実施例1
未架橋ポリオレフィン樹脂として、低流動性ポリオレフィン樹脂である高密度ポリエチレンのノバテックHF313(日本ポリエチレン社製;MFR0.05)100重量部、有機過酸化物パークミルD(日本油脂社製;ジクミルパーオキサイド)を2重量部、EPDMゴム40重量%を加硫させながらポリプロピレン20重量%とプロセスオイル40重量%とをブレンドして得られたものであり、ショア硬度Aで77、230℃・98Nに於けるMFRが15であるオレフィン系熱可塑性エラストマー(架橋系)を400重量部、さらにポリマー成分合計100重量部に対して高級脂肪族アミド系滑剤の花王ワックスEB−G(花王石鹸社製)0.5重量部と、を加え、ヘンシェルミキサーで混合し樹脂洗浄剤組成物を製造した。
【0036】
実施例2
オレフィン系熱可塑性エラストマーを、未架橋EPDMゴム60重量%とポリプロピレン40重量%とからなり、ショア硬度Aで95、230℃・98Nに於けるMFRが25であるオレフィン系熱可塑性エラストマー(非架橋系)250重量部に代えた以外は、実施例1と同じ条件で樹脂洗浄剤組成物を製造した。
【0037】
実施例3
オレフィン系熱可塑性エラストマーを200重量部に代えた以外は、実施例1と同じ条件で樹脂洗浄剤組成物を製造した。
【0038】
実施例4
オレフィン系熱可塑性エラストマーを750重量部に代えた以外は、実施例1と同じ条件で樹脂洗浄剤組成物を製造した。
【0039】
比較例1
オレフィン系熱可塑性エラストマーを、架橋EPDMゴム95重量%とポリプロピレン5重量%とからなるオレフィン系熱可塑性エラストマー(非架橋系)400重量部に代えた以外は、実施例1と同じ条件で樹脂洗浄剤組成物を製造した。
【0040】
比較例2
オレフィン系熱可塑性エラストマーを、架橋EPDMゴム30重量%とポリプロピレン70重量%とからなるオレフィン系熱可塑性エラストマー(非架橋系)400重量部に代えた以外は、実施例1と同じ条件で樹脂洗浄剤組成物を製造した。
【0041】
比較例3
オレフィン系熱可塑性エラストマーを100重量部に代えた以外は、実施例1と同じ条件で樹脂洗浄剤組成物を製造した。
【0042】
比較例4
オレフィン系熱可塑性エラストマーを600重量部に代えた以外は、実施例2と同じ条件で樹脂洗浄剤組成物を製造した。
【0043】
比較例5
オレフィン系熱可塑性エラストマーに代えて、230℃・21.6Nに於けるMFRが0.5のポリプロピレンを単独で、未架橋ポリオレフィン樹脂100重量部に対して300重量部添加したこと以外は、実施例1と同じ条件で樹脂洗浄剤組成物を製造した。
【0044】
比較例6〜比較例8
オレフィン系熱可塑性エラストマーを添加しないこと以外は、実施例1と同じ条件で樹脂洗浄剤組成物を製造した。なお、洗浄温度は、比較例6で300℃、比較例7で250℃、比較例8で200℃とした。
【0045】
<評価方法>
(1)基材樹脂除去評価
〔洗浄と評価サンプルの作成〕
1)樹脂成形
ホモポリプロピレンである三井ポリプロJ105W(三井ポリプロ社製)100重量部にブルー系顔料マスターバッチであるREMAFIN BLUE 915CG(クラリアント社製)を2.5重量部加えた混合物を、型締圧55トンの射出成型機(東芝機械社製)の温度を200℃に上げて縦65ミリ×幅25ミリ×厚さ1.5ミリのプレートを5枚成形した。
【0046】
2)洗浄
成形後、射出成型機の温度を表1に記載の所定温度に保ち、射出成型機から残存する成形用樹脂をスクリューを回転させて排出した後に樹脂洗浄剤組成物を200gホッパーから投入し、スクリューを回転させて100gの樹脂洗浄剤組成物を排出させた。一旦スクリューを停止し、5分後に再びスクリューを回転させて残りの樹脂洗浄剤組成物を排出した。
【0047】
3)置換
次いで射出成型機の温度を200℃に下げ、色替え後の成形用樹脂の熱可塑性樹脂である三井ポリプロJ105Wを200g投入して加熱し、スクリューを回転させて射出成型機内に残存する樹脂洗浄剤組成物を該樹脂と共に全量排出した。
【0048】
4)サンプル成形
4)−1 評価サンプル成形
色替え後の成形用樹脂として三井ポリプロJ105W100重量部に白色顔料マスターバッチであるREMAFIN WHITE EEF90(クラリアント社製)を1.0重量部添加した混合物300gを洗浄後の射出成型機に投入して縦65ミリ×幅25ミリ×厚さ1.5ミリのプレートを成形した。最初の3ショットの成形プレートを廃棄して4ショット目の成形プレートを評価サンプルとした。
4)−2 基準サンプル成形
【0049】
上記の2)洗浄を行なわず、色替え後の成形用樹脂の熱可塑性樹脂である三井ポリプロJ105Wを300g供給してスクリューを回転させて完全に排出した後にスクリューを抜き、金属ブラシで掃除をして完全に成形用樹脂を除去した。清掃後のスクリューを射出成型機に装着し、4)−1に記載した色替え後の成形用樹脂組成物300gを供給して排出することにより洗浄と置換を行った後に、上記4)−1記載のように成形し、4ショット目の成形プレートを基準サンプルとした。
【0050】
〔洗浄効果の評価〕
上記4ショット目の成形プレートの色相を測定して樹脂洗浄剤組成物の洗浄効果を評価した。色相の測定は、分光光度計(ミノルタ社製)を使用して行ない、評価サンプルと基準サンプルの色相から、JIS Z 8730のL*A*B*表示系によって色差(ΔE)値を求めた。ΔE値は、小さいほど洗浄効果は優れていることを示す。ΔE値が2.5以下の場合、評価を○とし、2.5を超えた場合、評価を×とした。
【0051】
(2)洗浄剤残存性評価
〔洗浄と評価サンプルの作成〕
1)樹脂成形
ホモポリプロピレンである三井ポリプロJ105W(三井ポリプロ社製)100重量部に白色顔料マスターバッチであるREMAFIN WHITE EEF90(クラリアント社製)を1.0重量部添加した混合物を、型締圧55トンの射出成型機(東芝機械社製)を使用して縦65ミリ×幅25ミリ×厚さ1.5ミリのプレートを5枚成形した。
【0052】
2)洗浄
成形後、射出成型機の温度を所定温度に保ち、成形後の射出成型機から残存する成形用樹脂を、スクリューを回転させて排出した後に樹脂洗浄剤組成物を200gホッパーから投入し、スクリューを回転させて100gの樹脂洗浄剤組成物を排出させた。一旦スクリューを停止し、5分後に再びスクリューを回転させて残りの樹脂洗浄剤組成物を排出した。
【0053】
3)置換
次いで次いで射出成型機の温度を200℃に下げ、色替え後の成形用樹脂の熱可塑性樹脂であるポリスチレン樹脂東洋スチロールM−W−1−321(東洋ポリスチレン社製)200gを投入して加熱し、スクリューを回転させて射出成型機内に残存する樹脂洗浄剤組成物を該樹脂と共に全量排出した。
【0054】
4)評価サンプル成形
色替え後の成形用樹脂として東洋スチロールMW−1−321(東洋スチレン社製) 300gを洗浄後の射出成型機に投入して縦65ミリ×幅25ミリ×厚さ1.5ミリのプレートを成形した。最初の3ショットの成形プレートを廃棄して4ショット目の成形プレートを評価サンプルとした。
【0055】
〔残存性評価〕
1)スクリュー溝目視観察
上記、4)−1の基準サンプル成形の際にスクリューを抜き取った際にスクリュー溝を目視観察しスクリュー溝への残りの有無を見た。スクリュー溝への残りが殆ど観察されないものを○、僅かに認められるものを△、はっきり認められるものを×として表示した。
【0056】
2)成形プレート観察
上記の4ショット目の成形プレートを目視にて使用した樹脂洗浄剤組成物が残存しているか否かを評価した。樹脂洗浄剤組成物が残存している場合には、透明なポリスチレン樹脂中に洗浄剤の汚れが発生する。評価結果は洗浄剤の汚れがみとめられないものを○、僅かに認められるものを△、はっきり認められるものを×として表示した。
【0057】
(3)発煙性評価
上記(1)の成形樹脂除去評価の2)において樹脂洗浄剤組成物を排出する際の発煙の状態を観察した。
【0058】
発煙が認められないか或いはあっても極めて軽微な状態を○、発煙が認められるも余り気にならない状態を△、発煙が激しく作業環境が著しく悪化した状態を×として表示した。
【0059】
【表1】

【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
未架橋ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、ポリプロピレン10〜50重量%とゴム成分30〜60重量%とを含有するオレフィン系熱可塑性エラストマー60〜2000重量部、および過酸化物を0.2〜10重量部含有し、かつ前記未架橋ポリオレフィン樹脂の含有重量を100としたとき、ポリプロピレンの含有重量が30〜200であることを特徴とする樹脂洗浄剤組成物。
【請求項2】
さらに、ポリマー成分合計100重量部に対して、滑剤および界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種を、0.1〜3重量部含有する請求項1に記載の樹脂洗浄剤組成物。
【請求項3】
熱可塑性樹脂基材を成形した後の熱可塑性樹脂加工装置の樹脂供給部に、請求項1または2に記載の樹脂洗浄剤組成物を供給し、未架橋ポリオレフィン樹脂の架橋を進行させながら、前記熱可塑性樹脂加工装置に残留する前記熱可塑性樹脂基材を、前記樹脂洗浄剤組成物と共に排出、洗浄する熱可塑性樹脂加工装置の洗浄方法。

【公開番号】特開2011−83972(P2011−83972A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238626(P2009−238626)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(395009123)オーケーファスト株式会社 (2)
【Fターム(参考)】