説明

樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体、タングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成形体およびタングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成形体の製造方法

【課題】塩化ビニル樹脂等の樹脂成形体中に、その樹脂成形体がフィルム形態であっても、タングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子を均一に分散させて、その樹脂成形体の光透過機能を毀損することなく、その樹脂成形体に良好な熱線遮蔽機能を簡単かつ再現性良く付与させる。
【解決手段】分散粒径100nm以下のタングステン酸化微粒子等を、酸価が2〜18.5mgKOH/gの範囲で、示差熱熱重量同時測定より求められる熱分解温度が240℃以上のアクリルポリマー中に均一に分散させて樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体を作製し、これを塩化ビニル樹脂成形体中に添加して良好な可視光線透過能を維持しつつ高い熱線遮蔽機能を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物や自動車の窓等に用いられる透明樹脂フィルム等の光透過性樹脂成形体へ、熱線遮蔽機能を付与する樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体、および、この樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体を用いて製造されるタングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
各種建築物や車両の窓、ドア等のいわゆる開口部分から入射する太陽光線には、可視光線の他に紫外線や赤外線が含まれている。この太陽光線に含まれている赤外線のうち、波長800〜2500nmの近赤外線は熱線と呼ばれ、開口部分から進入することにより室内の温度を上昇させる原因になる。
【0003】
近年、各種建築物や車両の窓材等の分野では、室内温度上昇を解消するために、可視光線を十分に取り入れながら熱線を遮蔽することで、明るさを維持しつつ室内温度上昇を抑制する熱線遮蔽成形体の需要が急増している。この需要に呼応して、熱線遮蔽成形体に関し、多くの提案がされている。
【0004】
たとえば、透明樹脂フィルムに金属、金属酸化物を蒸着してなる熱線反射フィルムを、ガラス、アクリル板、ポリカーボネート板等の透明成形体に接着した熱線遮蔽板(特許文献1参照)が提案されている。
【0005】
また、たとえば、透明成形体表面に、金属または金属酸化物を直接蒸着してなる熱線遮蔽板が多数提案されている。
【0006】
この他、たとえば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂等の熱可塑性透明樹脂へ、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物に代表される有機近赤外線吸収剤を練り込んだ熱線遮蔽板およびフィルム(特許文献2,3参照)が提案されている。
【0007】
さらに、たとえば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の透明樹脂に、熱線反射能を有する酸化チタンあるいは酸化チタンで被覆されたマイカ等の無機粒子を練り込んだ熱線遮蔽板(特許文献4,5参照)が提案されている。
【0008】
また、ポリ塩化ビニル系樹脂を用いた熱線遮蔽シートとして、「反射層」と「吸収層」を有する2層構造の熱線遮蔽シート(特許文献6参照)が提案されている。
ここで「反射層」は、ポリ塩化ビニル系樹脂に、ガラスビーズ、中空ガラスバルーン、マイクロカプセルから選ばれる少なくとも1つと、酸化チタン系白色顔料を含み、特定の波長の光を反射させる。一方「吸収層」は、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂から選ばれる少なくとも1つを含み、上記「反射層」を透過した光であって特に発熱に寄与する波長の光を吸収する。
そして、この2層構造の熱線遮蔽シートで、最外層の「反射層」により太陽光を反射させ、反射しきれない透過光を「吸収層」により有効に吸収させることにより、テントなどのシート状構造体内部の太陽光による温度上昇を防止するとされている。
【0009】
【特許文献1】特開平8−283044号公報
【特許文献2】特開平6−256541号公報
【特許文献3】特開平6−264050号公報
【特許文献4】特開平2−173060号公報
【特許文献5】特開平5−78544号公報
【特許文献6】特開2006−231869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、本発明者らの検討によると、上述した従来技術では次のような問題があった。
まず、透明樹脂フィルムに金属等を蒸着してなる熱線反射フィルムをガラス等の透明成形体に接着した熱線遮蔽板は、製造に際して高真空で精度の高い雰囲気制御を要する蒸着装置を必要とする。このため、当該熱線遮蔽板は、高コストになるという問題があった。
【0011】
次に、透明成形体表面に金属等を直接蒸着してなる熱線遮蔽板も、上記蒸着装置が必要なために高コストになる。さらに、当該透明成形体表面に金属等を直接蒸着場合する方法は、成形体の形状やサイズに個別に対応する真空蒸着装置を用意しなければならないので、量産性が悪く、汎用性に乏しいという問題も加わる。
【0012】
さらに、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の熱可塑性透明樹脂に、有機近赤外線吸収剤を練り込んだ熱線遮蔽板等では、十分に熱線を遮蔽するためには多量の近赤外線吸収剤を配合しなければならない。しかし、熱可塑性透明樹脂へ多量の近赤外線吸収剤を配合すると、今度は熱可塑性透明樹脂の可視光線透過能が低下してしまうという問題が生じる。加えて、この熱線遮蔽板等は、近赤外線吸収剤として有機化合物を使用しているため、直射日光に常時曝される建築物や車両の窓材等への適用においては、耐侯性に難があった。
【0013】
一方、アクリル樹脂等の透明樹脂に、熱線反射能を有する酸化チタン等の無機粒子を練り込んだ熱線遮蔽板は、熱線遮蔽能を高めるために熱線反射粒子を多量に添加する必要がある。ところが、熱線反射粒子の配合量の増加に伴って可視光線透過能が低下してしまうという、上記有機近赤外線吸収剤を使用した場合と同様の問題が生じる。
【0014】
このように、透明な光透過性樹脂中に熱線吸収剤や熱線反射粒子を添加する従来の熱線遮蔽樹脂成形体では、その添加剤(熱線吸収剤または熱線反射粒子)の添加量を少なくすれば可視光線透過能は高まるが熱線遮蔽能が低下してしまう。だからといって、添加剤の添加量を多くすれば、熱線遮蔽能は高まるが可視光線透過能が低下してしまうという背反が生じる。結局、熱線遮蔽能と可視光線透過能とを同時に満足させることは困難であるという問題があった。
【0015】
さらに透明樹脂へ、熱線反射粒子を多量に配合すると、成形体である透明樹脂の物性が劣化し、特に耐衝撃強度や靭性といった機械的特性の悪化が問題となる。
【0016】
ポリ塩化ビニル系樹脂内に、「反射層」と「吸収層」との2層構造を形成した熱線遮蔽シートは、「反射層」にガラスビーズ等および酸化チタン系白色顔料を含有させる。このため、上述した従来技術と同様、透明樹脂成形体において、熱線遮蔽能と可視光線透過能とを両立させられないという問題があった。さらに、2層構造なので、透明樹脂成形体の製造が容易でないという問題もあった。
【0017】
本発明者らは、上述した諸問題に鑑み、光透過性樹脂成形体とくに透明樹脂フィルムへ、それらの有する光透過機能を確保しつつ、低コストで熱線遮蔽機能を付与すること検討した。
とくに、本発明者らは、機械的特性やコストパーフォマンス等にすぐれた特性を有するポリ塩化ビニル系樹脂(以下、塩化ビニル樹脂と記載する場合がある。)のフィルムに、その光学的・機械的特性を毀損することなく、熱線遮蔽機能を低コストで付与することを検討した。
塩化ビニル樹脂は低コストで汎用性が高く、板やフィルム(シートも含む)等のほとんどあらゆる形態の樹脂成形体に成形加工されて広く利用されている。したがって、その塩化ビニル樹脂成形体とくにフィルムに熱線遮蔽能を付与させることができれば、非常に広い用途が期待されるからである。
【0018】
そこで、本発明者らは、熱線吸収作用のあるタングステン酸化物や複合タングステン酸化物の微粒子を、塩化ビニル樹脂の成型体やフィルム中へ直接添加し、均一に分散させることで、その塩化ビニル樹脂の成型体やフィルムに熱線遮蔽機能を付与することを試みた。
ところが、タングステン酸化物や複合タングステン酸化物の微粒子を、塩化ビニル樹脂の成型体やフィルム中へ直接添加してみると、タングステン酸化物や複合タングステン酸化物の微粒子の凝集が起こり、均一に分散させることは非常に困難であることが判明した。
【0019】
本発明は、上述した技術背景の下になされたもので、その解決しようとする課題は、タングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子が均一に分散された塩化ビニル樹脂の成型体やフィルムを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、上述の課題を解決するため研究を行った。そして、所定の特性を有するアクリルポリマー中に、分散粒径100nm以下であるタングステン酸化物微粒子、および/または、分散粒径100nm以下である六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子が分散している樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体に想到した。そして、この樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体を、塩化ビニル樹脂等に混練・混合し成型することで、タングステン酸化物微粒子および/または複合タングステン酸化物微粒子が、塩化ビニル樹脂等中に均一に分散することを見いだし、本発明を完成したものである。
【0021】
即ち、上述の課題を解決する第1の発明は、
分散粒径100nm以下であって一般式WO(ただし、2.45≦x≦2.999)で示されるタングステン酸化物微粒子、および/または、分散粒径100nm以下であって一般式MWO(ただし、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種類以上の元素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示され、かつ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子、1重量部と、
酸価が2〜18.5mgKOH/gの範囲にあり、熱分解温度が240℃以上のアクリルポリマー0.3〜10重量部とを含み、
上記タングステン酸化物微粒子および/または複合タングステン酸化物微粒子が、上記アクリルポリマー中に均一に分散していることを特徴とする樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体である。
【0022】
第2の発明は、
上記タングステン酸化物微粒子および/または複合タングステン酸化物微粒子が、Si、Ti、Zr、Alの1種類以上を含有する化合物によって表面被覆処理されていることを特徴とする第1の発明に記載の樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体である。
【0023】
第3の発明は、
第1または第2の発明に記載の樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体に含有されていたタングステン酸化物微粒子および/または複合タングステン酸化物微粒子が、可塑剤を含有する塩化ビニル樹脂に分散していることを特徴とするタングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成型体である。
【0024】
第4の発明は、
上記樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体と、可塑剤と、塩化ビニル樹脂とを、熔融混錬した後に成型することを特徴とする第3の発明に記載のタングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成型体の製造方法である。
【0025】
第5の発明は、
上記樹樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体と、可塑剤を含有する塩化ビニル樹脂とを、熔融混錬した後に成型することを特徴とする第3の発明に記載のタングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成型体の製造方法である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、塩化ビニル樹脂等の樹脂成形体が、たとえフィルム形態であっても、タングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子を均一に分散させることが出来、その結果、当該樹脂成形体の光透過機能を毀損することなく、その樹脂成形体に良好な熱線遮蔽機能を簡単かつ再現性良く付与させることができる樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
上述したように、タングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子が均一に分散された塩化ビニル樹脂の成型体やフィルムを得るため、本発明者らは、鋭意研究を行った。その結果、本発明者らは、所定の特性を有するアクリルポリマー中にタングステン酸化物や複合タングステン酸化物の微粒子を分散させた樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体という、全く新規な構成に想到した。
【0028】
当該新規な構成は、従来の技術に係る構成、たとえば塩化ビニル樹脂中へ、タングステン酸化物や複合タングステン酸化物等の光学的特性を有する微粒子を投入した後、均一に分散させようとする構成や、塩化ビニル樹脂中へ、可塑剤と同時期に上記微粒子を投入した後、均一に分散させようとする構成とは全く異なる構成である。
【0029】
つまり、本発明に係る構成では、タングステン酸化物や複合タングステン酸化物の微粒子を、所定の特性を有するアクリルポリマー中に十分に分散させた状態で、塩化ビニル樹脂中へ投入するのである。この結果、タングステン酸化物や複合タングステン酸化物の微粒子は、表面にカルボキシル基を介して吸着するアクリルポリマーの立体障害により、微粒子同士が凝集することなく塩化ビニル樹脂中へ均一に分散していくのであると考えられる。
【0030】
具体的には、まず、タングステン酸化物や複合タングステン酸化物の微粒子を、所定の特性を有するアクリルポリマー中に十分に分散させた、樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体を製造する。次に、樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体を、当該樹脂に添加し、または、可塑剤とともに樹脂に添加して混練、混合する。この後、当該樹脂を成形したり、フィルム状に成形することにより、当該成形体に、可視光領域に透過率の極大を持たせるとともに、近赤外域の熱線に対して強い吸収効果を持たせることが出来る。
つまり、成形体に用いる樹脂の光透過機能を毀損することなく、その樹脂成形体に良好な熱線遮蔽機能を簡単かつ再現性良く付与させることができる。このような機能付与は、
機械的特性やコストパーフォマンス等にすぐれた特性を有する塩化ビニル樹脂成形体においてとくに望まれることである。そして、上記手段によれば、塩化ビニル樹脂成形体とくにフィルム状成形体においても、非常に好適に適用できることが判明した。したがって、上記手段によれば、光透過機能と熱線遮機能がともに良好な塩化ビニルフィルムの作製が可能となる。
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、(1)熱線遮蔽機能を有する微粒子、(2)アクリルポリマー、(3)タングステン酸化物のアクリルポリマーへの分散方法、(4)その他の添加剤、(5)タングステン酸化物微粒子が分散した塩化ビニル樹脂成形体、の順で詳細に説明する。
【0032】
(1)熱線遮蔽機能を有する微粒子:
本発明に係る樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体に用いられる、熱線遮蔽機能を有する微粒子は、タングステン酸化物微粒子および/または複合タングステン酸化物微粒子(以下、「タングステン酸化物微粒子」および/または「複合タングステン酸化物微粒子」を、総称として「タングステン酸化物微粒子等」と略記する。)である。
本発明に用いられるタングステン酸化物微粒子は、近赤外線領域、特に1000nm以上の光を大きく吸収するため、その透過色調はブルー系の色調となるものが多い。
【0033】
ここで、本発明に係る樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体における、タングステン酸化物微粒子等の分散粒径とは、光散乱法を用いて当該タングステン酸化物微粒子等の平均粒径を50回測定し、当該測定値を平均した値である。一方、本発明に係る酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成型体における、タングステン酸化物微粒子等の分散粒径は、当該成型体をTEM(透過電子顕微鏡)等の電子顕微鏡で観察することで測定することができる。
【0034】
本発明に用いられるタングステン酸化物微粒子等の分散粒径は、その使用目的によって適宜選定することができる。
たとえば、熱遮断機能を付与される成形体に対して透明性を重視する場合、上記タングステン酸化物微粒子等は、800nm以下の分散粒径を有していることが好ましい。800nmよりも小さい分散粒径であれば、散乱により光を遮蔽することが無く、可視光領域の視認性を保持し、同時に効率よく透明性を保持することができるからである。
特に、可視光領域での透明性を重視する場合は、さらに粒子による散乱をさらに低減させることが好ましい。この場合、上記タングステン酸化物微粒子等は、その分散粒径が200nm以下、好ましくは100nm以下となるようにするとよい。尤も、より好ましくはその分散粒系が90nm以下となるようにし、さらに好ましくは80nm以下となるようにするとよい。
【0035】
タングステン酸化物微粒子等の分散粒径が小さくなると、幾何学散乱やミー散乱による波長400nm〜780nmの可視光線領域における分散光の散乱が低減する。そして、この可視光線領域(400nm〜780nm)での光の散乱を低減させることができれば、熱線遮蔽膜が曇りガラスのようになって鮮明な透明性が得られなくなるということを回避させることができる。
このため、上記タングステン酸化物微粒子等の分散粒径を少なくとも800nm以下にすると良い。
【0036】
上記タングステン酸化物微粒子等の分散粒径が200nm以下になると、上記幾何学散乱やミー散乱が、さらに低減し、レイリー散乱領域になる。このレイリー散乱領域では散乱光が粒子径の6乗に反比例して低減する。従って、上記タングステン酸化物微粒子等の分散粒径が200nm以下の領域では、分散粒径の減少にともなって光の散乱がさらに低
減し、透明性が一層向上する。
【0037】
上記タングステン酸化物微粒子等の分散粒径が100nm以下になると、散乱光は非常に少なくなってさらに一層良好な透明性が得られる。
【0038】
上述したように、光の散乱を回避する観点からは、上記タングステン酸化物微粒子等の分散粒径は小さい方が好ましい。この分散粒径が、1nm以上であれば、タングステン酸化物微粒子等の工業的な製造は容易である。
【0039】
次に、本発明に用いられるタングステン酸化物微粒子等の組成、構造について説明する。
(a)タングステン酸化物微粒子:
一般式WO(ただし、2.45≦x≦2.999)で示されるタングステン酸化物微粒子としては、たとえばW1849、W2058、W11などを挙げることができる。
本発明に用いられるタングステン酸化物微粒子の熱線遮蔽材料では、xの値が2.45以上であれば、その熱線遮蔽材料中に目的外であるWOの結晶相が現れるのを完全に回避することができるとともに、材料の化学的安定性を得ることができる。
一方、xの値が2.999以下であれば、十分な量の自由電子が生成され、効率のよい熱線遮蔽材料となることができる。また、xの値が2.95以下であれば、熱線遮蔽材料としてさらに好ましい特性を得ることができる。
尚、xの範囲が2.45≦x≦2.999であるようなWO化合物は、いわゆるマグネリ相と呼ばれる化合物に含まれる。
【0040】
(b)複合タングステン酸化物微粒子:
本発明に用いられる一般式MWO(ただし、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種類以上の元素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示され、かつ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子としては、Cs0.33WO、Rb0.33WO、K0.33WO、Ba0.33WOなどを挙げることができる。
当該複合タングステン酸化物粒子では、y,zが上記の範囲に収まるものであれば、有用な熱線遮蔽特性を得ることができる。
添加元素Mの添加量は、0.1以上0.5以下が好ましく、さらに好ましくは0.33付近である。これは、六方晶の結晶構造から理論的に算出される値が0.33であり、この前後の添加量で好ましい光学特性が得られるからである。
zの範囲については、2.2≦z≦3.0が好ましい。これは、MWOで表記される複合タングステン酸化物材料においても、上述したWOで表記されるタングステン酸化物材料と同様の機構が働くのに加え、z=3.0においても、上述した元素Mの添加による自由電子の供給があるためである。尤も、光学特性の観点から、zの好ましい範囲は2.2≦z≦2.99、さらに好ましくは、2.45≦z≦2.99となる。
【0041】
(c)タングステン酸化物微粒子等の製造方法:
上述した一般式WOで表記されるタングステン酸化物微粒子、一般式MWO表記される複合タングステン酸化物微粒子は、タングステン化合物出発原料を不活性ガス雰囲気または還元性ガス雰囲気中で熱処理して得ることができる。
【0042】
まず、タングステン化合物出発原料について説明する。
タングステン化合物出発原料には、タングステン酸化物の水和物粉末、タングステン酸化物の化合物粉末、または金属タングステン粉末が好ましい。
【0043】
タングステン酸化物の水和物粉末は、三酸化タングステン粉末、ニ酸化タングステン粉末、酸化タングステンの水和物、六塩化タングステン粉末、タングステン酸アンモニウム粉末、または、六塩化タングステンをアルコール中に溶解させた後、乾燥して得られる。または、六塩化タングステンをアルコール中に溶解させた後、水を添加して沈殿を生成させ、当該沈殿を乾燥して得られる。
タングステン酸化物の化合物粉末は、タングステン酸アンモニウム水溶液を乾燥して得られる。
【0044】
本発明に係る熱線遮蔽材料粒子としては、タングステン酸化物微粒子と複合タングステン酸化物微粒子の一方または両方が使用されるが、これらは次のように製造されることが好ましい。
【0045】
タングステン酸化物微粒子を製造する場合には、製造工程の容易さの観点から、出発原料として、タングステン酸化物の水和物粉末、三酸化タングステン、またはタングステン酸アンモニウム水溶液を乾燥して得られるタングステン化合物粉末を用いることが好ましい。
【0046】
複合タングステン酸化物微粒子を製造する場合には、出発原料として、タングステン酸アンモニウム水溶液や、六塩化タングステン溶液を用いることが好ましい。この場合、出発原料が、いずれも水溶液または有機溶剤溶液であることにより、各元素成分を均一に混合させることが容易にできる。
【0047】
上記のような原料を用い、これを不活性ガス雰囲気または還元性ガス雰囲気中で熱処理して、上述した粒径のタングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子を得ることができる。
【0048】
さらに、上記元素Mを含む一般式MWOで表記される複合タングステン酸化物微粒子を含有する熱線遮蔽材料微粒子は、上述した一般式WOで表されるタングステン酸化物微粒子と同様にタングステン化合物を出発原料とするが、この場合、その出発原料のタングステン化合物には、元素Mを元素単体または化合物の形態で含有するものが使用される。
【0049】
ここで、各成分が分子レベルで均一混合した出発原料を製造するためには、各原料を溶液として混合することが好ましい。このため、元素Mを含むタングステン化合物の出発原料は、水や有機溶媒等の溶媒に溶解可能なものの組み合わせであることが好ましい。
【0050】
この各成分が、溶解可能なものの組み合わせとしては、たとえば、元素Mを含有するタングステン酸塩、塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、酸化物、炭酸塩、水酸化物等が挙げられる。尤も、これらに限定されず、溶液状になる組み合わせであれば良い。
【0051】
次に、不活性ガス雰囲気または還元性ガス雰囲気中における熱処理について説明する。
まず、不活性ガス雰囲気中における熱処理条件としては、650℃以上が好ましい。
【0052】
650℃以上で熱処理された出発原料は、十分な近赤外線吸収力を有し、熱線遮蔽効果が高い。雰囲気として用いる不活性ガスとしてはAr、N等の不活性ガスがよい。
【0053】
還元性雰囲気中における熱処理条件としては、まず、出発原料を還元性ガス雰囲気中にて100℃以上、650℃以下で加熱して熱処理し、次いで不活性ガス雰囲気中にて650℃以上、1200℃以下の温度で加熱して熱処理することが良い。
【0054】
このときの還元性ガスは、特に限定されないが、Hが好ましい。還元性ガスとしてHを用いる場合は、還元性雰囲気の組成として、たとえば、Ar、N等の不活性ガスにHを体積比で0.1%以上を混合することが好ましく、さらに好ましくは0.2%以上混合する。Hが体積比で0.1%以上であれば、効率よく出発原料の還元を進めることができる。
【0055】
上述の製造方法で得られたタングステン酸化物微粒子等を用いると、所望の光学特性を呈する樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体を得ることができる。一方、当該タングステン酸化物微粒子等の粉体色は、国際照明委員会(CIE)が推奨しているL表色系(JIS−Z−8729)における粉体色において、Lが25〜80、aが−10〜10、bが−15〜15である条件を満たす。
【0056】
本発明に係るタングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子は、耐候性向上の観点から、その粒子表面を、Si、Ti、Zr、Alの1種類以上を含有する化合物、好ましくは酸化物で被覆する処理を行うことが好ましい。
この表面被覆処理は、具体的にはたとえば、公知のシランカップリング剤、チタンカッカップリング剤、ジルコニウムカップリグ剤、アルミニウムカップリング剤等を用いて行えばよい。
このとき、必要に応じて、酸、アルカリ、金属キレートなどの触媒を添加し、加水分解処理、続いて、加熱処理等を行う。これにより、本発明に係るタングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子の表面をSi等の化合物で被覆処理することができる。
【0057】
(2)アクリルポリマー:
本発明に用いる樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体に用いられるアクリルポリマーは、アクリル樹脂の1種であるが、所定以上の熱分解温度と、所定範囲の酸価とを有するものである。
【0058】
まず、本発明に用いるアクリルポリマーの熱分解温度について説明する。
本発明に用いるアクリルポリマーの熱分解温度は、示差熱熱重量同時測定装置(以下、TG−DTAと記載する場合がある。)で測定されるが、この熱分解温度が240℃以上であることが好ましい。
【0059】
本発明において、アクリルポリマーの熱分解温度とは、200℃におけるアクリルポリマーの重量に対して、3重量%以上の重量減少が確認される温度をいう。200℃におけるアクリルポリマーの重量を基準とするのは、アクリルポリマーによっては水分等の吸着が生じていることがあり、また、有機溶剤に溶解された状態で市販されるアクリルポリマーでは、有機溶剤の吸着がある。そこで、係る水分や溶剤等の影響を除いて重量減少を確認するためである。
【0060】
本発明に用いるアクリルポリマーにおいて、熱分解温度が240℃以上あれば、塩化ビニル樹脂との混練時に、アクリルポリマーが分解して着色することが回避され、さらに、アクリルポリマーがタングステン酸化物微粒子の分散剤としての効果を発揮する。この結果、タングステン酸化物微粒子等が分散した塩化ビニル樹脂成形体の褐色着色、可視光透過率の低下など、本来の光学特性が得られなくなる事態を回避できるからである。
【0061】
熱分解温度が240℃以上あることで、当該アクリルポリマーの分解着色が回避出来るのは、後工程における、塩化ビニル樹脂との混練・混合温度が150℃であるが、混合時間は15分間以上であるため、局所的には240℃程度まで昇温することによる。即ち、該アクリルポリマーの熱分解温度が240℃以上あれば、塩化ビニル樹脂との混練・混合操作において熱分解による着色という事態を回避できるからである。
【0062】
次に、本発明に用いるアクリルポリマーの酸価について説明する。
本発明に用いるアクリルポリマーは、多くのCOOH基を有している。このようなアクリルポリマーは、タングステン酸化物微粒子の粒子表面に作用し、当該タングステン酸化物微粒子等の塩化ビニル樹脂等中への分散性を向上させる作用を、発揮すると考えられる。
ここで、本発明に用いるアクリルポリマーの酸価は、2〜18.5mgKOH/gの範囲にあることが好ましい。アクリルポリマーの酸価が2mgKOH/g以上であると、タングステン酸化物微粒子等の塩化ビニル樹脂中での分散が十分に出来、透明性が確保される。一方、アクリルポリマーの酸価が18.5mgKOH/g以下であれば、塩化ビニル樹脂が分解を起さず好ましいからである。
【0063】
次に、本発明に用いるアクリルポリマーの添加量について説明する。
本発明に用いるアクリルポリマーの、タングステン酸化物微粒子等に対する添加重量割合は、0.3〜10倍の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜5倍の範囲である。
タングステン酸化物微粒子等に対するアクリルポリマーの添加重量割合が上記範囲にあれば、タングステン酸化物微粒子等が、塩化ビニル樹脂中で均一に分散するとともに、得られる塩化ビニル樹脂の物性に悪影響を及ぼすことがないからである。
【0064】
タングステン酸化物微粒子に対するアクリルポリマーの添加重量割合が0.3重量部より多ければ、塩化ビニル樹脂中でタングステン酸化物微粒子等が凝集することなく十分な分散状態が得られ、タングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成形体が曇ることを回避出来る。
一方、タングステン酸化物微粒子等に対するアクリルポリマーの添加重量割合が10重量部以下であれば、タングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成形体の機械的特性を確保することが出来る。
【0065】
さらに、作業性の観点から、本発明に係る塩化ビニル樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体は、常温で固体(粉体)であることが好ましい。従って、当該アクリルポリマーも、常温で固体であることが好ましく、ガラス転移温度(Tg)が40℃以上のものが、とくに好ましい。
【0066】
Tgが40℃以上のアクリルポリマーは、常温で液状、ワックス状とならない。この結果、本発明に係る塩化ビニル樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体は、常温で固体(粉体)となる。すると、タングステン酸化物微粒子が分散した塩化ビニル樹脂成形体等の製造に際し、秤量、塩化ビニル樹脂等への添加等の取り扱いが容易となるからである。
【0067】
尚、本発明に用いるアクリルポリマーのTg測定は、公知のTG−TDA、DSC(示差走査熱量計)やTMA(熱機械測定装置)を用いて行うことができる。
【0068】
(3)タングステン酸化物のアクリルポリマーへの分散方法:
タングステン酸化物微粒子等をアクリルポリマーに分散させる方法としては、次の方法を採ることができる。
【0069】
まず、攪拌媒体ミルを用いて当該タングステン酸化物微粒子等を任意の溶剤に分散し、タングステン酸化物微粒子分散液を作製する。作製した分散液に、予め有機溶剤に溶解したアクリルポリマー、および必要に応じて他の添加剤を添加し、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の混合機を用いてよく混合し、混合物とする。この混合物を、真空乾燥機に装填し溶剤を除去し、タングステン酸化物微粒子等が、アク
リルポリマー中に均一に分散している本発明に係る樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体を得る。
【0070】
この場合、アクリルポリマーの添加は、上記タングステン酸化物微粒子等の分散液を作製する工程で行うことも可能である。
【0071】
ここで、タングステン酸化物微粒子等がアクリルポリマー中に均一に分散しているとは、次のようなことである。
すなわち、樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体と可塑剤(たとえばジオクチルフタレート)と塩化ビニル樹脂を2本ロールで150℃15分間混合し、カレンダーロール法により0.3mm厚のタングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成形体を得て、可視光透過率80%のときのヘイズ値が2%以下を示すように、上記タングステン酸化物微粒子等がアクリルポリマー中に分散されて樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体となっていることである。そして、本発明の樹脂添加用タングステン微粒子分散体と可塑剤と塩化ビニル樹脂を上述の通りに混合し得られる0.3mm厚のタングステン微粒子分散塩化ビニル樹脂成型体では、上記タングステン酸化物微粒子等の分散粒径が100nm以下であることが確認できるのである。
また、タングステン酸化物微粒子等が、タングステン微粒子分散塩化ビニル樹脂成型体に分散しているとは、タングステン酸化物微粒子等の分散粒径が100nm以下であることが確認できることをいう。
【0072】
(4)その他の添加剤:
上記(3)に記載した、必要に応じて添加するその他の添加剤について説明する。
当該その他の添加剤としては、たとえば、塩化ビニル樹脂等の樹脂成形体へ所望の色調を与えるためのアゾ系染料、シアニン系染料、キノリン系、ペリレン系染料、カーボンブラック等、一般的に熱可塑性樹脂の着色に利用されている染料、顔料がある。また、ヒンダードフェノール系、リン系等の安定剤、離型剤、ヒドロキシベンゾフェノン系、サリチル酸系、HALS系、トリアゾール系、トリアジン系等の有機紫外線吸収剤、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム等の無機紫外線吸収剤、カップリング剤、界面活性剤、帯電防止剤等がある。
【0073】
(5)タングステン酸化物微粒子等が分散した塩化ビニル樹脂成形体:
本発明に係るタングステン酸化物微粒子等が分散した塩化ビニル樹脂成形体、とくにフィルム形態の成形体について説明する。
この形態のタングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成形体(フィルム)は、上述した樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体と、塩化ビニル樹脂と、可塑剤とを熔融混練した後、押出成形法、カレンダー成形法等の、公知の方法によりフィルム状に成形することによって得られる。また、樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体と、可塑剤を含有する塩化ビニル樹脂とを、熔融混錬した後、成型することでもタングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成形体を得ることができる。
【0074】
上記のようにして得られたフィルム形態のタングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成形体は、窓ガラス、アーケード等の構造材に張り合わせて使用することができる他、無機ガラス、樹脂ガラス、樹脂フィルム等の透明成形体に適宜な方法で張り合わせることにより、一体化した熱線遮蔽透明積層体として、構造材に使用することもできる。
たとえば、上記フィルム形態のタングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成形体を無機ガラスに貼り合わせることで、熱線遮蔽機能と飛散防止機能を共に有する熱線遮蔽透明積層体を得ることができる。
このように、上記熱線遮蔽透明積層体は、相互の成形体の持つ利点を有効に発揮させつつ、相互の欠点を補完することで、より有用な構造材として使用することができる。
【0075】
以上、実施形態について説明したように、熱線遮蔽機能を有する微粒子として、一般式WOで示されるタングステン酸化物微粒子、および/または一般式MWOで示され、かつ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子をアクリルポリマー中に均一に分散することで、塩化ビニル樹脂等の樹脂成形体中に、その樹脂成形体がフィルム形態であっても、タングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子を均一に分散させて、その樹脂成形体の光透過機能を毀損することなく、その樹脂成形体に良好な熱線遮蔽機能を簡単かつ再現性良く付与させることができる樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体が得ることができた。
【0076】
そして、上記樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体を塩化ビニル樹脂、必要に応じて可塑剤と混練して、公知の方法によりフィルム状に成形することによって、可視光領域に透過率の極大を持つとともに近赤外域に強い吸収をもつようなタングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成形体の作製が可能になった。この結果、成形形態がフィルム状であって、良好な可視光線透過能を維持しつつ、高い熱線遮蔽機能を安定して備えることができる塩化ビニル樹脂成形体を提供することができる。
【0077】
なお、本発明に係る樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体は、塩化ビニル樹脂のほかに、ポリカーボネート、ポリオレフィン、アクリル等の樹脂にも添加することができる。本発明に係る樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体を、塩化ビニル樹脂以外の樹脂へ添加する場合も、上述の塩化ビニル樹脂成形体の場合と同様に、これらの樹脂と上記樹脂添加用タングステン酸化微粒子分散体を混練した後、押出成形法、カレンダー成形法等の、公知の方法によりフィルム状や板状に成形することで、熱線遮蔽機能を有するタングステン酸化物微粒子分散樹脂成形体の作製が可能となる。
一方、ポリカーボネート等に添加可能であるが、本発明の技術的範囲外のタングステン酸化物微粒子等を、塩化ビニルに添加しても本発明の効果が得られない。
【実施例】
【0078】
以下に、本発明の実施例を比較例とともに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0079】
各実施例において、タングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子の粉体色(10°視野、光源D65)、および、熱線遮蔽塩化ビニルフィルムの可視光透過率並びに日射透過率は、日立製作所(株)製の分光光度計U−4000を用いて測定した。日射透過率は、タングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成形体の熱線遮蔽性能を示す指標となる。
ヘイズ値は、村上色彩技術研究所(株)社製HR−200を用い、JIS−K−7105に基づいて測定した。そして、可視光透過率とヘイズ値の関係により良否の判断基準の一とした。具体的には、可視光透過率が60〜80%のときヘイズ値が2%以下であるか、可視光透過率が60%未満のときヘイズ値が3.5%以下であれば、良と判断した。
当該可視光透過率とヘイズ値の良否判定の基準を表1に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
また、ブリーディング発生の有無は、タングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成
形体を30℃の恒温槽に7日間放置し、目視で観察し判定した。ブリーディングが発生すると、塩化ビニル樹脂成型体が白濁したようになる。
【0082】
[実施例1]
WO50gを入れた石英ボートを石英管状炉にセットし、Nガスをキャリアーとした5%Hガスを供給しながら加熱した。この加熱を600℃の温度で1時間おこない還元処理をおこなった後、Nガス雰囲気下800℃で30分間焼成して、実施例1に係るタングステン酸化物微粒子(以下、微粒子aと略称する。)を得た。
【0083】
この微粒子aの粉体色は、Lが36.9288、aが1.2573、bが−9.1526であり、粉末X線回折による結晶相の同定の結果、W1849の結晶相が観察された。
【0084】
次に、微粒子a6重量%、アクリルポリマーA(熱分解温度265℃、酸価6.5mgKOH/g)1.5重量%、トルエン92.5重量%を秤量し、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、6時間粉砕・分散処理することによって、実施例1に係るタングステン酸化物微粒子分散液(以下、A液と略称する。)を調製した。このA液におけるタングステン酸化物微粒子の分散粒径を大塚電子製粒度分布計で測定したところ77nmであった。
【0085】
A液100重量部に、40重量%アクリルポリマーAトルエン溶液を41.3重量部添加し、タングステン酸化物微粒子1重量部に対してアクリルポリマーAが3重量部になるように調整し混合物とした。この後、この混合物を真空乾燥機に装填し、トルエンを除去して樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体を得た(以下、A分散体と略称する。)。
【0086】
次に、得られたA分散体1.3重量%、可塑剤ジオクチルフタレート38.7重量%、塩化ビニル樹脂60重量%を混合し、2本ロールを使用して150℃で15分間混練してから、カレンダーロール法で0.3mm厚の、実施例1に係るタングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成形体(以下、成形体Aと略称する。)を得た。
【0087】
成形体Aの光学特性を、表2に示す。表2は、各実施例および各比較例においてそれぞれ調製した樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体の構成と、それぞれ作製したタングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成形体の光学特性とを示す。
成形体Aの光学特性は、可視光透過率59.1%のときの日射透過率は39.5%で、ヘイズ値は1.9%であった。
【0088】
[実施例2]
WO50gと、Cs(OH)217.0g(Cs/W=0.3相当)とをメノウ乳鉢で十分混合した粉末を、Nガスをキャリアーとした5%Hガスを供給しながら加熱した。この加熱を600℃の温度で1時間おこない、還元処理を行った後、Nガス雰囲気下800℃で30分間焼成して、実施例2に係る複合タングステン酸化物微粒子(以下、微粒子bと略称する。)を得た。
【0089】
この微粒子bの組成式は、Cs0.3WOであり、粉体色は、Lが35.2745、aが1.4918、bが−5.3118であった。
【0090】
次に、微粒子aに替えて微粒子bを使用した以外は、実施例1と同様の操作をおこなって実施例2に係るタングステン酸化物微粒子分散液(以下、B液と略称する。)を調製した。このB液におけるタングステン酸化物微粒子の分散粒径を大塚電子製粒度分布計で測
定したところ57nmであった。
【0091】
A液に替えてB液を使用した以外は、実施例1と同様の操作をおこなって、実施例2に係る樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体(以下、B分散体と略称する。)を得た。
【0092】
次に、A分散体に替えてB分散体を使用した以外は実施例1と同様の操作をおこなって、実施例2に係る酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成形体(以下、成形体Bと略称する。)を得た。
【0093】
成形体Bの光学特性は、表2に示すように、可視光透過率69.9%のときの日射透過率は34.8%で、ヘイズ値は1.7%であった。
【0094】
[実施例3]
混合比を、B分散体0.68重量%、可塑剤ジオクチルフタレート39.3重量%、塩化ビニル樹脂60重量%を混合した以外は実施例2と同様にして、実施例3に係る酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成形体(以下、成形体Cと略称する。)を得た。
【0095】
成形体Cの光学特性は、表2に示すように、可視光透過率78.1%のときの日射透過率は43.9%で、ヘイズ値は1.2%であった。
【0096】
[実施例4]
B液にメチルトリメトキシシランを添加し、微粒子b100重量部に対してメチルトリメトキシシラン25重量部とし、メカニカルスターラーで1時間攪拌し混合し混合物を得た。この混合物から、スプレードライヤーを用いてトルエンを除去し、メチルトリメトキシシランにて表面処理を施した複合タングステン酸化物微粒子(以下、微粒子cと略称する。)を得た。
【0097】
次に、微粒子aに替えて微粒子cを使用した以外は、実施例1と同様に操作して実施例3に係るシラン化合物にて表面処理を施した複合タングステン酸化物微粒子分散液(以下、C液と略称する。)を調製した。
【0098】
C液におけるシラン化合物にて表面処理を施した複合タングステン酸化物微粒子の分散粒径を、大塚電子製粒度分布計で測定したところ65nmであった。
【0099】
そして、A液に替えてC液を使用した以外は実施例1と同様の操作をおこなって、樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体(以下、C分散体と略称する。)を得た。
【0100】
次に、A分散体に替えてC分散体を使用した以外は実施例1と同様の操作をおこなって、実施例4に係るタングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成形体(以下、成形体Dと略称する。)を得た。
【0101】
成形体Dの光学特性は、表2に示すように、可視光透過率69.7%のときの日射透過率は34.9%で、ヘイズ値は1.9%であった。
【0102】
[実施例5]
アクリルポリマーAに替えてアクリルポリマーB(熱分解温度265℃、酸価2mgKOH/g)を使用した以外は、実施例2と同様の操作をおこなって、実施例5に係るタングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成形体(以下、成形体Eと略称する。)を得た。
【0103】
成形体Eの光学特性は、表2に示すように、可視光透過率69.5%のときの日射透過率は34.2%で、ヘイズ値は1.9%であった。
【0104】
[実施例6]
アクリルポリマーAに替えてアクリルポリマーC(熱分解温度265℃、酸価18.5mgKOH/g)を使用した以外は、実施例2と同様の操作をおこなって、実施例6に係るタングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成形体(以下、成形体Fと略称する。)を得た。
【0105】
成形体Fの光学特性は、表2に示すように、可視光透過率69.1%のときの日射透過率は34.1%で、ヘイズ値は1.1%であった。
【0106】
[実施例7]
アクリルポリマーAに替えてアクリルポリマーD(熱分解温度240℃、酸価6.5mgKOH/g)を使用した以外は、実施例2と同様の操作をおこなって、実施例7に係るタングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成形体(以下、成形体Gと略称する。)を得た。
【0107】
成形体Gの光学特性は、表2に示すように、可視光透過率70.1%のときの日射透過率は35.1%で、ヘイズ値は1.7%であった。
【0108】
[実施例8]
B液100重量部に、40wt%アクリルポリマーAトルエン溶液を0.75重量部添加し、タングステン酸化物微粒子1重量部に対してアクリルポリマーAが0.3重量部になるように調整し混合物とした。この混合物を真空乾燥機に装填してトルエンを除去し、実施例8に係る樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体を得た(以下、H分散体と略称する。)。
【0109】
次に、得られたH分散体0.43重量%、可塑剤ジオクチルフタレート39.57重量%、塩化ビニル樹脂60重量%を混合し、2本ロールを使用して150℃で15分間混練してから、カレンダーロール法で0.3mm厚の実施例8に係るタングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成形体(以下、成形体Hと略称する。)を得た。
【0110】
成形体Hの光学特性は、表2に示すように、可視光透過率69.5%のときの日射透過率は34.1%で、ヘイズ値は1.9%であった。
【0111】
[実施例9]
B液100重量部に、40wt%アクリルポリマーAトルエン溶液を146.3重量部添加し、タングステン酸化物微粒子1重量部に対してアクリルポリマーAが10重量部になるように調整し混合物とした。この混合物を真空乾燥機に装填しトルエンを除去し、実施例9に係る樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体を得た(以下、I分散体と略称する。)。
【0112】
次に、得られたI分散体3.63重量%、可塑剤ジオクチルフタレート36.37重量%、塩化ビニル樹脂60重量%を混合し、2本ロールを使用して150℃で15分間混練してから、カレンダーロール法で0.3mm厚の、実施例9に係るタングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成形体(以下、成形体Iと略称する。)を得た。
【0113】
成形体Iの光学特性は、表2に示すように、可視光透過率69.8%のときの日射透過
率は35.1%で、ヘイズ値は1.2%であった。
【0114】
[比較例1]
微粒子b6重量%、アクリルポリマーA1.5重量%、トルエン92.5重量%を秤量し、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、2時間粉砕・分散処理することによってタングステン酸化物微粒子分散液(以下、J液と略称する。)を調製した。J液のタングステン酸化物微粒子の分散粒径を大塚電子製粒度分布計で測定したところ200nmであった。
【0115】
そして、A液に替えてJ液を使用した以外は、実施例1と同様の操作をおこなって、比較例1に係るタングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成形体(以下、成形体Jと略称する。)を得た。
【0116】
成形体Jの光学特性は、表2に示すように、可視光透過率72.5%のときの日射透過率は36.7%で、ヘイズ値は7.1%であった。タングステン酸化物微粒子の分散粒径が200nmと大きいため、ヘイズが高い透明感が損なわれた成形体となった。
【0117】
[比較例2]
アクリルポリマーAに替えてアクリルポリマーE(熱分解温度265℃、酸価1mgKOH/g)を使用した以外は、実施例1と同様の操作をおこなって、比較例2に係るタングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成形体(以下、成形体Kと略称する。)を得た。
【0118】
成形体Kの光学特性は、表2に示すように、可視光透過率73.5%のときの日射透過率は37.5%で、ヘイズ値は11.7%であった。
使用したアクリルポリマーEの酸価が1mgKOH/gと低いため、タングステン酸化物微粒子の塩化ビニル樹脂中での分散が不十分であったと考えられる。その結果、ヘイズが高い透明感が損なわれた成形体となった。
【0119】
[比較例3]
アクリルポリマーAに替えてアクリルポリマーF(熱分解温度265℃、酸価30mgKOH/g)を使用した以外は、実施例1と同様の操作をおこなって、比較例3に係るタングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成形体を得ようと試みた。しかし、二本ロールでの混練時に塩化ビニル樹脂の分解が起こり、成形体が得られなかった。この塩化ビニル樹脂の分解は、使用したアクリルポリマーEの酸価が30mgKOH/gと高いためであったと考えられる。
【0120】
[比較例4]
アクリルポリマーAに替えてアクリルポリマーG(熱分解温度230℃、酸価6.5mgKOH/g)を使用した以外は、実施例1と同様の操作をおこなって、比較例4に係るタングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成形体(以下、成形体Lと略称する。)を得た。
【0121】
成形体Lの光学特性は、表2に示すように、可視光透過率45.3%のときの日射透過率は30.1%で、ヘイズ値は1.9%であった。
使用したアクリルポリマーGの熱分解温度が180℃と低いため、二本ロールでの混練時にアクリルポリマーの分解が起こり、成形体が褐色に着色してしまった。
【0122】
[比較例5]
A液を、真空乾燥機に装填しトルエンを除去して、タングステン酸価微粒子1重量部に
対しアクリルポリマーAが0.25重量部となる、樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体を得た(以下、M分散体と略称する。)。
【0123】
次に、得られたM分散体0.41重量%、可塑剤ジオクチルフタレート39.59重量%、塩化ビニル樹脂60重量%を混合し、2本ロールを使用して150℃で15分間混練してから、カレンダーロール法で0.3mm厚の比較例5に係る、タングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成形体(以下、成形体Mと略称する。)を得た。
【0124】
成形体Mの光学特性は、表2に示すように、可視光透過率68.5%のときの日射透過率は35.3%で、ヘイズ値は10.7%であった。
使用したアクリルポリマーAの含有量が、タングステン酸化物微粒子1重量部に対して0.25重量部と少なかったため、塩化ビニル樹脂中でのタングステン酸化物微粒子の分散が不十分であった。その結果、ヘイズが高い透明感が損なわれた成形体となった。
【0125】
[比較例6]
B液100重量部に、40wt%アクリルポリマーAトルエン溶液を221.3重量部添加し、タングステン酸化物微粒子1重量部に対してアクリルポリマーAが15重量部になるように調整し混合物とした。この混合物を真空乾燥機に装填し、トルエンを除去し樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体を得た(以下、N分散体と略称する。)。
【0126】
次に、得られたN分散体5.28重量%、可塑剤ジオクチルフタレート34.72重量%、塩化ビニル樹脂60重量%を混合し、2本ロールを使用して150℃で15分混練してから、カレンダーロール法で0.3mm厚の比較例6に係るタングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成形体(以下、成形体Nと略称する。)を得た。
【0127】
成形体Nの光学特性は、表2に示すように、可視光透過率69.2%のときの日射透過率は34.4%で、ヘイズ値は1.1%であった。この結果を表1に示した。
成形体Nを30℃の恒温槽に7日間放置するとブリーディングが確認された。なお、成型体N以外の成型体A〜Mではブリーディングは確認されなかった。これは、成型体NにおいてアクリルポリマーAの含有量が、タングステン酸化物微粒子1重量部に対して15重量部と多かったためと考えられる。
【0128】
【表2】

【0129】
以上、本発明をその代表的な実施例に基づいて説明したが、本発明は上述した以外にも
種々の態様が可能である。たとえば、本発明に係る樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体は、塩化ビニル樹脂成形体とくにフィルム状成形体に、可視光領域での光透過機能を維持しつつ良好な熱線遮蔽機能を再現性良く付与させるのに用いてとくに有効なものであるが、塩化ビニル樹脂以外の樹脂成形体にそれらの機能を付与させるのに適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0130】
塩化ビニル樹脂等の樹脂成形体中に、その樹脂成形体がフィルム形態であっても、タングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子を均一に分散させて、その樹脂成形体の光透過機能を毀損することなく、その樹脂成形体に良好な熱線遮蔽機能を簡単かつ再現性良く付与させることができる樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体を提供することができる。
また、成形形態がフィルム状であっても、良好な可視光線透過能を維持しつつ、高い熱線遮蔽機能を安定して備えることができる塩化ビニル樹脂成形体を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散粒径100nm以下であって一般式WO(ただし、2.45≦x≦2.999)で示されるタングステン酸化物微粒子、および/または、分散粒径100nm以下であって一般式MWO(ただし、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種類以上の元素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示され、かつ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子、1重量部と、
酸価が2〜18.5mgKOH/gの範囲にあり、熱分解温度が240℃以上のアクリルポリマー0.3〜10重量部とを含み、
上記タングステン酸化物微粒子および/または複合タングステン酸化物微粒子が、上記アクリルポリマー中に均一に分散していることを特徴とする樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体。
【請求項2】
上記タングステン酸化物微粒子および/または複合タングステン酸化物微粒子が、Si、Ti、Zr、Alの1種類以上を含有する化合物によって表面被覆処理されていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体に含有されていたタングステン酸化物微粒子および/または複合タングステン酸化物微粒子が、可塑剤を含有する塩化ビニル樹脂に分散していることを特徴とするタングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成型体。
【請求項4】
上記樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体と、可塑剤と、塩化ビニル樹脂とを、熔融混錬した後に成型することを特徴とする請求項3に記載のタングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成型体の製造方法。
【請求項5】
上記樹樹脂添加用タングステン酸化物微粒子分散体と、可塑剤を含有する塩化ビニル樹脂とを、熔融混錬した後に成型することを特徴とする請求項3に記載のタングステン酸化物微粒子分散塩化ビニル樹脂成型体の製造方法。

【公開番号】特開2009−144037(P2009−144037A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322106(P2007−322106)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】