説明

樹脂粒子の製造方法

【課題】均一で、親水性が強く、水系媒体中への分散性に優れた樹脂粒子を簡便に得ることができる方法を提供することを課題とする。
【解決手段】重合開始剤を含む重合性単量体と界面活性剤を含む水溶液との混合液にシード粒子を添加して、前記重合開始剤を含む重合性単量体を前記シード粒子に吸収させる工程と、次いで前記混合液を加熱して前記重合性単量体を重合させる工程とからなる樹脂粒子の製造方法であって、前記重合工程において、前記重合性単量体の重合転化率が90〜99.9%の時に、一般式(I)
【化1】


(式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基又はシアノ基であり、mは1〜500の整数であり、nは1〜200の整数である)
で示される繰り返し単位を有する表面改質剤を添加することを特徴とする樹脂粒子の製造方法により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粒子の製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、水分散性に優れた樹脂粒子の製造方法に関する。本発明の製造方法により得られた樹脂粒子は、LCDスペーサー・銀塩フィルム用表面改質剤・磁気テープ用フィルム用改質剤・感熱紙走行安定剤等の電子工業分野、レオロジーコントロール剤・艶消し剤等の塗料・インク・接着剤等の化学分野、抗原抗体反応検査用粒子等の医療分野、滑り剤、体質顔料等の化粧品分野、不飽和等ポリエステル等の樹脂の低収縮化剤、紙、歯科材料、アンチブロッキング剤、光拡散剤、マット化剤、樹脂改質剤等の一般工業分野等多種の分野への応用が可能である。
【背景技術】
【0002】
従来、親水性ポリマーで表面が被覆された樹脂粒子は、一般に、シード粒子を核として用いた乳化重合を利用して製造されている。この乳化重合では、重合性単量体が、水相でシード粒子に吸収されて重合反応が進行し、シード粒子より大きな樹脂粒子が生成する。そのため、シード粒子を用いた乳化重合において重合性単量体を逐次添加すると、重合安定性を高めることができると共に、反応熱を除去しやすいという利点がある。そして、かかる乳化重合において、重合後期に親水性基を有する重合性単量体を重合系に添加すると、表面が親水性の樹脂粒子を容易に生成できることが知られている。
【0003】
例えば、特開平7−228608号公報(特許文献1)には、重合性ビニルモノマーを重合転化率90%以上に重合した後、親水性モノマー10〜90重量%を含む重合性ビニルモノマーを添加して重合するポリマー微粒子の製造方法が開示されている。
【0004】
また、この重合方法を利用して、親水性基以外の反応性官能基を、樹脂粒子に導入することも行われている。
【0005】
例えば、特開平7−149993号公報(特許文献2)には、アルキル基の炭素数が1〜4のアルキルメタクリレート、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレート及び芳香族ビニルモノマーから選ばれた少なくとも1種以上の非架橋性モノマー100重量部に、架橋性モノマー0.5〜50重量部を配合後重合して得られた微粒子状の架橋性重合体100重量部に対し、分子構造中に1個以上の二重結合を有する重合性ポリ(アルキレンオキシド)グリコール系単量体を0.01〜25重量部、又は重合性スルホン酸塩を0.01〜10重量部配合後重合させ、該架橋性重合体の表面を被覆させて得られる帯電防止性微粒子が開示されている。
【0006】
更に、特開2003−12705号公報(特許文献3)では、上記親水性の重合性単量体を使用する代わりに、特定のアゾ系重合開始剤を溶解した疎水性の重合性単量体を両性イオン界面活性剤の存在下に水系懸濁重合させることで、得られる樹脂粒子に重合開始剤由来の親水性を付与する方法が記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開平7−228608号公報
【特許文献2】特開平7−149993号公報
【特許文献3】特開2003−12705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
シード粒子を用いた乳化重合においては、通常シード粒子に水相で重合性単量体を吸収させた後、シード粒子を加熱して重合性単量体を重合させて樹脂粒子を得る。そのため親水性の重合性単量体を含む重合性単量体を重合しようとすると、水相に移行して重合反応に関与しない親水性の重合性単量体が生じ、親水性の強い樹脂粒子を製造することは困難であることが知られている。水相に移行した親水性の重合性単量体は、それ単独で重合し、微粒子となるため、水相から樹脂粒子を分離する際に、ろ過効率及び脱水性が著しく低下するという問題がある。
更に、上記特定のアゾ系重合開始剤を使用する方法では、粒径が均一な樹脂粒子が得にくいという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かくして本発明によれば、重合開始剤を含む重合性単量体と界面活性剤を含む水溶液との混合液にシード粒子を添加して、前記シード粒子に前記重合開始剤を含む重合性単量体を吸収させる工程と、次いで前記混合液を加熱して前記重合性単量体を重合させる工程とからなる樹脂粒子の製造方法であって、前記重合工程において、前記重合性単量体の重合転化率が90〜99.9%の時に、一般式(I)
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基又はシアノ基であり、mは1〜500の整数であり、nは1〜200の整数である)
で示される繰り返し単位を有する表面改質剤を添加することを特徴とする樹脂粒子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の樹脂粒子の製造方法によれば、均一で、親水性が強く、水系媒体中への分散性に優れた樹脂粒子を簡便に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
まず、本発明では、重合開始剤を含む重合性単量体と界面活性剤を含む水溶液との混合液にシード粒子を添加して、重合開始剤を含む重合性単量体をシード粒子に吸収させる工程が行われる。
【0014】
シード粒子としては、スチレン系、スチレン・ブタジエン系、(メタ)アクリル酸エステル系、酢酸ビニル系等の重合体粒子が挙げられる。これらのシード粒子としては、平均粒径0.1〜10μmで、かつCv値〔(粒径標準偏差/平均粒径)×100で表される〕が15%以下の架橋型又は非架橋型の粒子が好ましい。特に、非架橋型の粒子が、重合性単量体を多く吸収できるという点で好ましい。これらのシード粒子は、公知の方法で製造でき、例えば、製造方法としては、ソープフリー乳化重合法、分散重合法等が挙げられる。
【0015】
重合性単量体としては、スチレン;α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−nオクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン誘導体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、弗化ビニル等のハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、α−クロロアクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール等の単官能性単量体の他、
【0016】
ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールトリアクリレート、N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルファイト等の多官能性単量体が挙げられる。これら重合性単量体は、単独で用いてもよく、二種以上併用してもよい。
【0017】
また、本発明の効果を妨げない範囲であれば、親水性単量体を併用してもよい。親水性単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸もしくはその酸誘導体、マレイン酸、フマール酸、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物、ビニルナフタリン塩等が挙げられる。
なお、上記において(メタ)アクリとは、アクリ又はメタクリを意味する。
【0018】
上記、重合性単量体の添加量は、所望する樹脂粒子の粒径に応じて適宜設定できる。一般的に、添加量が少なくなると重合による粒径の増加は小さく、多くなると完全にシード粒子に吸着されず、混合液中で重合性単量体が独自に重合し微粒子を生成することがある。そのため、添加量は、シード粒子1重量部に対して5〜200重量部が好ましく、10〜150重量部がより好ましい。
【0019】
重合開始剤としては、特に限定されず、重合性単量体の種類、重合温度等に応じて適宜選択できる。例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、キュメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、2、2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ系化合物等が挙げられる。
【0020】
界面活性剤としては、特に限定されず、両性イオン界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤をいずれも使用できる。
【0021】
両性イオン界面活性剤としては、例えばラウリルジメチルカルボキシベタイン、ラウリルアミドプロピルベタイン、ラウリルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシプロピルスルホアンモニウムべタイン等が挙げられる。
【0022】
アニオン性界面活性剤としては、例えばオレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリウム等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0023】
カチオン性界面活性剤としては、例えばラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0024】
ノニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。
上記界面活性剤は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0025】
界面活性剤は、得られる樹脂粒子の粒径と重合時の分散安定性を考慮して、その種類や使用量を適宜調節して使用される。界面活性剤の使用量は、水100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましい。使用量が0.01重量部を下回ると、安定的に重合を行うことが難しくなるので好ましくない。また、その使用量が5重量部を上回ると、その使用量に見合った効果が得られないので好ましくない。
【0026】
界面活性剤は、シード粒子に重合性単量体及び重合開始剤を吸収させた後で添加してもよいし、重合性単量体及び重合開始剤を水溶液に混合させる時に添加してもよい。混合時の添加によって、混合時と重合時の分散安定化とを実現できるので好ましい。
【0027】
必要に応じて、無機分散安定剤、高分子分散安定剤等の分散安定剤を加えてもよい。無機分散安定剤としては、第三リン酸カルシウムのようなリン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛等のリン酸塩、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸アルミニウム、ピロリン酸亜鉛等のピロリン酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、コロイダルシリカ等の難水溶性無機化合物が挙げられる。高分子分散安定剤としては、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、デンプン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール等が挙げられる。分散安定剤の添加量は、水100重量部に対して0.1〜15重量部が好ましい。
【0028】
更に、重合性単量体には、顔料を添加または溶解させてもよい。顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、水酸化鉄、酸化クロム、水酸化クロム、群青、紺青、マンガンバイオレット、群青紫、チタンブラック、カーボンブラック、アルミニウム粉、雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、酸化鉄処理雲母チタン、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ゼオライト、アルミナ、タルク、マイカ、ベントナイト、カオリン、セリサイト等の無機顔料、タートラジン、サンセットエロFCF、ブリリアントブルーFCF等のアルミニウムレーキ、ジルコニウムレーキ、バリウムレーキ、へリンドンピンクCN、リソールルビンBCA、レーキレッドCBA、フタロシアニンブルー、パーマネントオレンジ等の有機顔料等が挙げられる。
【0029】
重合開始剤を含む重合性単量体の界面活性剤を含む水溶液への混合方法としては、特に限定されず、公知の方法をいずれも使用できる。例えば、重合性単量体を水性媒体(例えば、水、又は水とアルコールのような有機溶媒との混合液)中で、ホモジナイザー、超音波処理機、ナノマイザー等の微細乳化機により混合(微分散)することができる。混合後の重合性単量体は、通常、水溶液中で、微分散エマルジョンを形成している。微分散エマルジョンは、重合性単量体及び重合開始剤を予め混合して水性媒体に添加した後又は添加しながら形成してもよいし、両者を水性媒体に別々に微分散させたものを混合して形成してもよい。得られた微分散エマルジョン中の重合性単量体粒子の粒径は、シード粒子よりも小さい方が、シード粒子に効率よく吸収されるので好ましい。この粒径は、シード粒子の粒径の1/5〜1/2程度が好ましい。
【0030】
上記微分散エマルジョンは、シード粒子を水性分散媒(例えば、水、又は水とアルコールのような有機溶媒との混合液)に分散させたもの(以下、シード粒子分散液という)に混合され、攪拌される。その結果、シード粒子に重合性単量体及び重合開始剤が吸収される。吸収は、通常、上記微分散エマルジョンとシード粒子分散液とを、室温で1〜12時間攪拌することにより行うことができる。また、両者の混合液を30〜50℃程度に加温することにより吸収を促進できる。
【0031】
上記シード粒子は、重合体単量体を吸収することにより膨潤するが、膨潤度は、上記微分散エマルジョンとシード粒子分散液との混合比率を変えることにより調節することが可能である。通常、シード粒子1重量部に対して重合性単量体5〜200重量部を吸収させることにより生じる膨潤度であることが好ましい。ここでいう膨潤度とは、膨潤前のシード粒子に対する膨潤後のシード粒子の体積比で定義される。例えば、シード粒子1重量部に対して重合性単量体5〜200重量部を吸収させた場合、膨潤度は、6〜201の範囲となる。
【0032】
なお、吸収の終了は光学顕微鏡の観察でシード粒子の粒径の拡大を確認することにより判定できる。
次いで、混合液を加熱して重合性単量体を重合させる重合工程を経ることにより樹脂粒子を得ることができる。
【0033】
重合温度は、重合性単量体や重合開始剤の種類に応じて、適宜選択することができるが、通常、25〜100℃が好ましく、より好ましくは50〜90℃である。重合は、シード粒子に重合性単量体及び重合開始剤が完全に吸収した後に行ってもよく、吸収させつつ行ってもよい。特に前者が好ましい。
本発明は、上記重合工程において、重合性単量体の重合転化率が90〜99.9%の時に、一般式(I)
【0034】
【化2】

【0035】
(式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基又はシアノ基であり、mは1〜500の整数であり、nは1〜200の整数である)
で示される繰り返し単位を有する表面改質剤を添加することを特徴の1つとしている。この改質剤を添加して、表面に親水性基を備えた樹脂粒子を得ることができる。
【0036】
一般式(I)中、R1、R2、R3及びR4において、低級アルキル基としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。R1、R2、R3及びR4は、低級アルキル基とシアノ基が少なくとも1つずつ含まれていることが好ましい。
mが0の場合、親水性が得られないので好ましくない。mのより好ましい範囲は、10〜200である。
【0037】
また、表面改質剤は、2000〜100000の数平均分子量を有していることが好ましく、数平均分子量は5000〜50000が更に好ましい。数平均分子量が2000を下回ると、目的とする親水性、水系媒体への分散性が得られ難いため好ましくない。また、100000を上回ると、重合性単量体相の粘度が高くなり、目的とする粒径(例えば、1μm以上)の樹脂粒子が得られ難いため好ましくない。
【0038】
表面改質剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常0.01〜7重量部用いることが好ましく、0.01〜5重量部用いることがより好ましい。表面改質剤の使用量が0.01重量部を下回ると、目的とする親水性の向上効果が得られ難いため好ましくない。また、7重量部を超えて使用しても、使用量に見合った親水性の向上効果が見られず、耐溶剤性および水系媒体に対する再分散性が低下する場合があるので好ましくない。
【0039】
上記の表面改質剤は、例えば、アゾ基含有ジカルボン酸クロライドとポリオキシエチレンとを脱塩酸剤の存在下に重縮合させる方法や、アゾ基含有ジカルボン酸とポリオキシエチレンとを無触媒または三級アミン触媒の存在下に脱水縮合試薬を用いて重縮合させる方法等により製造することができる。
【0040】
表面改質剤は、重合性単量体の重合転化率が90〜99.9%のときに重合系に添加される。重合転化率が90%未満の場合、小粒子が発生するので好ましくなく、99.9%より大きい場合、親水性を付与できないので好ましくない。より好ましい重合転化率の範囲は、95〜98%である。
【0041】
なお、表面改質剤は、直接重合系に添加しても、水や、トルエン、酢酸エチル等の疎水性の有機溶剤に一旦溶解させて、重合系に添加してもよい。この開始剤の溶液に、必要に応じてラウリル硫酸ナトリウム等の界面活性剤を添加してもよい。
【0042】
表面改質剤の添加後、加熱してもよい。加熱温度は25〜100℃が好ましく、より好ましくは50〜90℃である。
重合完了後、必要に応じて、微粒子を遠心分離して水相を除去し、水及び溶剤で洗浄した後、乾燥することで、樹脂粒子を単離してもよい。
【0043】
本発明の樹脂粒子の製造方法によれば、Cv値で15%以下(好ましくは、13%以下)の粒径の揃った樹脂粒子を得ることができる。粒径は、用いられるシード粒子の粒径、上記重合性単量体とシード粒子の混合割合によって自由に設計可能である。本発明の製造方法は、特に、粒径が1〜30μmの樹脂粒子の製造に好適である。
【実施例】
【0044】
まず、実施例及び比較例に使用した測定方法を説明する。
(平均粒径測定方法)
測定方法はCoulter Electronics Limited発行のReference MANUAL FOR the COULTER MULTISIZER(1987)に従って、50μmアパチャーを用いてキャリブレーションを行い測定した。
【0045】
具体的には、樹脂粒子0.1gを0.1%ノニオン系界面活性剤溶液10ml中にタッチミキサー及び超音波を用いて予備分散させ、これを本体備え付けの、ISOTON II(ベックマンコールター社製:測定用電解液)を満たしたビーカー中に、緩く攪拌しながらスポイドで滴下して、本体画面の濃度計の示度を10%前後に合わせた。次にマルチサイザーII本体にアパチャーサイズ50μm、Currentを800、Gainを4、Polarityを+と入力してmanualで測定を行った。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、樹脂粒子を10万個測定した点で測定を終了した。
変動係数(CV値)とは標準偏差(σ)及び前記平均粒径(x)から以下の式により算出された値である。
CV値(%)=(σ/x)×100
【0046】
(重合転化率測定方法)
重合転化率は以下の重量法で求めた。即ち、重合中の樹脂粒子を含む分散液を重合槽から一定重量をサンプリングし、多量のメタノール中に分散させる。得られる沈降物をろ過し単離し、乾燥させる。
重合転化率(%)=(得られた沈降物の重量(g)/分散液中の重合体重量(g))×100
上記式中、分散液中の重合体重量(g)とはサンプリングした分散液重量(g)×仕込み重合性単量体濃度(%)である。
【0047】
(親水性の評価方法)
親水性は次の方法により評価した。イオン交換水100gを200mlビーカーに入れマグネティックスターラー(柴田科学機器工業社製 MGP−301型)により液面がゆっくり流動する程度攪拌する。その後樹脂粒子0.1gを投入し、液面下に沈降分散するまでの時間を測定した。600秒以内に液中に完全に沈降分散したものは親水性が強く、600秒経っても液面に樹脂粒子が観察されるものは親水性が弱いと評価した。
【0048】
実施例1
(シード粒子の製造)
イオン交換水3400gに、ノルマルオクチルメルカプタン5.6gをメタクリル酸メチル560gに溶解した溶液を分散させた。得られた分散液を攪拌しながら窒素気流中で70℃に昇温し、重合開始剤として過硫酸カリウム2.8gを投入し、60℃で12時間ソープフリーの重合反応を行った。その結果、平均粒径が0.7μmの単分散ポリメタクリル酸メチルからなるシード粒子を含むの分散液(固形分14.1%)を得た。
(シード重合)
重合性単量体としてスチレン480gとエチレングリコールジメタクリレート320gとを用い、これに重合開始剤としてジメチル2,2−アゾビスイソブチルニトリル4.8g、ベンゾイルパーオキサイド4.8gを溶解して単量体混合物を得た。得られた単量体混合物と、界面活性剤としてコハクスルホン酸ナトリウム4gが含まれたイオン交換水800gとを混合し、T.KホモミキサーMark2.5(特殊機化工業社製)にて8000rpmで10分間処理して乳化液を得た。
【0049】
この乳化液に上記で得たシード粒子の分散液を45g加え、3時間攪拌して分散させた。得られた分散液を光学顕微鏡で観察したところ、乳化液中の重合性単量体は完全にシード粒子に吸収されていることを認めた。その後、この乳化液と、分散安定剤としてのポリビニルアルコール(クラレ社製 PVA 224E)40gの水溶液2300gとをオートクレーブに入れ、攪拌しながら70℃で2時間重合を行った。
【0050】
次いで一般式(I)で表される表面改質剤(和光純薬工業社製、商品名VPE−020
1、一般式(I)におけるR1及びR3がメチル基、R2及びR4がシアノ基であり、mが約45、nが約10、数平均分子量が約20000である)8gを含む水溶液を前記分散液に添加し、70℃で2時間重合を続けて樹脂粒子を得た。
【0051】
得られた樹脂粒子の粒度分布をコールター社製のコールターカウンターで測定したところ、平均粒径が3.5μmで、偏差係数(CV値)が12.0%であって、粒径が非常によく揃っており、親水性も十分であることを認めた。
また、一般式(I)で示される表面改質剤を入れる前の粒子を取り出し、重合転化率を
未反応単量体量から算出したところ97.5%であった。
【0052】
(実施例2)
70℃で2時間、100℃で4時間重合した後、一般式(I)で表される表面改質剤3
2gを含む水溶液を添加したこと以外は実施例1と同様にして樹脂粒子を得た。
得られた樹脂粒子の平均粒径は3.5μmで、偏差係数(CV値)が12.4%であって、粒径が非常によく揃っており、親水性も十分であることを認めた。重合転化率は99.8%であった。
【0053】
(実施例3)
重合性単量体としてスチレン560gとメタクリル酸メチル160gジビニルベンゼン80g、これに重合開始剤としてジメチル2,2−アゾビスイソブチルニトリル3.0gを使用したこと以外は実施例1と同様にして樹脂粒子を得た。
得られた樹脂粒子の平均粒径は3.5μmで、偏差係数(CV値)が12.8%であって、粒径が非常によく揃っており、親水性も十分であることを認めた。重合転化率は91.8%であった。
【0054】
(実施例4)
重合性単量体としてメタクリル酸メチル560gとスチレン240gとジビニルベンゼン80gとを用い、一般式(I)で示される表面改質剤0.16gを含む水溶液を添加し
たこと以外は実施例2と同様にして樹脂粒子を得た。
得られた樹脂粒子の平均粒径は3.5μmで、偏差係数(CV値)が13.1%であって、粒径が非常によく揃っており、親水性も十分であることを認めた。重合転化率は96.4%であった。
【0055】
(実施例5)
一般式(I)で表される表面改質剤48gを含む水溶液を添加したこと以外は実施例2
と同様にして樹脂粒子を得た。
得られた樹脂粒子の平均粒径は3.5μmで、偏差係数(CV値)が12.6%であって、粒径が非常によく揃っており、親水性も十分であることを認めた。重合転化率は99.8%であった。
【0056】
(比較例1)
一般式(I)の表面改質剤を含む水溶液を添加しないこと以外は、実施例1と同様にし
て樹脂粒子を得た。
得られた樹脂粒子の平均粒径は3.5μmで、偏差係数(CV値)が11.9%であって、粒径が非常によく揃っているが、親水性が不十分であった。重合転化率は97.5%であった。
【0057】
(比較例2)
70℃で2時間、100℃で24時間重合したこと以外は実施例2と同様にして樹脂粒子を得た。
得られた樹脂粒子の平均粒径は3.5μmで、偏差係数(CV値)が12.0%であって、粒径が非常によく揃っているが、親水性が不十分であった。重合転化率は100%であった。
【0058】
(比較例3)
重合性単量体としてスチレン480gとエチレングリコールジメタクリレート320gを、重合開始剤としてジメチル2,2−アゾビスイソブチルニトリル1.0gを使用したこと以外は実施例1と同様にして樹脂粒子を得たが、分散液には2μm以下の小粒子が発生し、また一部凝集が生じていた。
得られた樹脂粒子の平均粒径は3.7μmで、偏差係数(CV値)が18.2%であって、粒径は揃っておらず、親水性も不十分であった。重合転化率は88.3%であった。
【0059】
(比較例4)
重合性単量体としてスチレン480gとエチレングリコールジメタクリレート320gを、重合開始剤としてジメチル2,2−アゾビスイソブチルニトリル4.8gとベンゾイルパーオキサイド4.8g、一般式(I)で示される表面改質剤8gを使用したこと以外は実施例1と同様にして樹脂粒子を得たが、分散液には2μm以下の小粒子が発生し、また一部凝集が生じていた。
得られた樹脂粒子の平均粒径は3.8μmで、偏差係数(CV値)が19.3%であって、粒径は揃っておらず、親水性も不十分であった。重合転化率は98.8%であった。
実施例及び比較例の表面改質剤の添加量、重合転化率、2μm以下の粒子の割合、偏差係数及び分散時間を表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
上記表1から、実施例によれば、粒径が均一で、親水性の樹脂粒子が得られていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の製造方法により得られた親水性を有する樹脂粒子は、LCDスペーサー・銀塩フィルム用表面改質剤・磁気テープ用フィルム用改質剤・感熱紙走行安定剤等の電子工業分野、レオロジーコントロール剤・艶消し剤等の塗料・インク・接着剤等の化学分野、抗原抗体反応検査用粒子等の医療分野、滑り剤、体質顔料等の化粧品分野、不飽和等ポリエステル等の樹脂の低収縮化剤、紙、歯科材料、アンチブロッキング剤等の樹脂改質剤として有用である。加えて、光拡散剤、マット化剤、樹脂改質剤等では、バインダーへの親和性を改善することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合開始剤を含む重合性単量体と界面活性剤を含む水溶液との混合液にシード粒子を添加して、前記シード粒子に前記重合開始剤を含む重合性単量体を吸収させる工程と、次いで前記混合液を加熱して前記重合性単量体を重合させる工程とからなる樹脂粒子の製造方法であって、前記重合工程において、前記重合性単量体の重合転化率が90〜99.9%の時に、一般式(I)
【化1】

(式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基又はシアノ基であり、mは1〜500の整数であり、nは1〜200の整数である)
で示される繰り返し単位を有する表面改質剤を添加することを特徴とする樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
前記表面改質剤が、重合性単量体100重量部に対して、0.01〜7重量部添加される請求項1に記載の樹脂粒子の製造方法。