説明

樹脂組成物、成形体及び樹脂製品

【課題】本発明は、不織布との接着性、伸縮性、強度及び耐ブロッキング性が良好なフィルムを形成することが可能な樹脂組成物、該樹脂組成物の成形体及び該成形体を有する樹脂製品を提供することを目的とする。
【解決手段】樹脂組成物は、ポリプロピレン系エラストマー60重量%以上80重量%以下、低密度ポリエチレン10重量%以上30重量%以下及び無機充填剤5重量%以上15重量%以下を含有し、該ポリプロピレン系エラストマーは、プロピレン由来の構成単位80重量%以上及びエチレン由来の構成単位20重量%以下を含有し、曲げ弾性率が12000psi以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、成形体及び樹脂製品に関する。
【背景技術】
【0002】
紙おむつのウエストギャザー及び生理用ナプキンのウイング部のギャザーは、伸縮性が要求されるため、ポリウレタン製の発泡テープ、伸縮性フィルム、糸ゴム、ポリウレタン製の弾性糸等が使用されている。特に、紙おむつの用途では、ポリウレタン製の弾性糸が使用されている(特許文献1参照)。この理由としては、ポリウレタン製の弾性糸が弱い力で伸縮すると共に、伸縮歪みが小さいので、弾性糸の本数を調整することで伸縮力を制御できること、不織布と組み合わせることにより、透湿性及び通気性を確保できること及び作業性が優れることが挙げられる。しかしながら、ポリウレタン製の弾性糸は、ポリプロピレン製の不織布、ポリエチレン製の不織布、ポリエステル製の不織布及びこれらの複合系の不織布との熱接着性及び超音波接着性が低いため、スチレン系、EVA系等のホットメルト接着剤を使用する必要がある。さらに、ポリウレタン製の弾性糸は、断面が円形であるため、ホットメルト接着剤による接着では、接着強度に問題が発生することがある。
【0003】
一方、上記不織布との熱接着性が良好なギャザー部材用伸縮フィルム用樹脂組成物としては、(a)密度が0.86〜0.90g/cm、メルトインデックスが0.1〜50g/10分、重量平均分子量/数平均分子量が1.8〜2.8であり、炭素数が4〜8個のα−オレフィンコモノマーを18重量%以上含有する低密度ポリエチレン30〜80重量%と、(b)エチレン−メチルアクリレート共重合体若しくはエチレン−メチルメタクリレート共重合体10〜60重量%と、(c)密度が0.915〜0.950g/cmのポリエチレン5〜20重量%とを含有するものが知られている(特許文献2参照)。しかしながら、このような伸縮フィルム用樹脂組成物は、軟化点が低いという問題がある。
【0004】
そこで、耐熱性が良好なポリオレフィン混合物として、曲げ弾性率が12000psi以下であり、第一のポリマー成分75〜98重量%と第二のポリマー成分2〜25重量%からなり、該第一のポリマー成分は、DSCで測定される融点が25〜70℃であり、溶融熱が25J/g未満であり、プロピレン由来の構成単位を80重量%以上有し、エチレン由来の構成単位を20重量%以下有し、該第二のポリマー成分は、DSCで測定される融点が130℃より高く、溶融熱が120J/gより大きい立体規則性アイソタクチックポリプロピレンであるものが知られている(特許文献3参照)。しかしながら、このようなポリオレフィン混合物を成膜することにより得られるフィルムは、伸縮性、強度及び耐ブロッキング性が低いという問題がある。
【特許文献1】特開2000−289931号公報
【特許文献2】特許第3805493号公報
【特許文献3】米国特許第6342565号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑み、不織布との接着性、伸縮性、強度及び耐ブロッキング性が良好なフィルムを形成することが可能な樹脂組成物、該樹脂組成物の成形体及び該成形体を有する樹脂製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、樹脂組成物において、ポリプロピレン系エラストマー60重量%以上80重量%以下、低密度ポリエチレン10重量%以上30重量%以下及び無機充填剤5重量%以上15重量%以下を含有し、該ポリプロピレン系エラストマーは、プロピレン由来の構成単位80重量%以上及びエチレン由来の構成単位20重量%以下を含有し、曲げ弾性率が12000psi以下であることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の樹脂組成物において、前記無機充填剤は、炭酸カルシウム及び/又はタルクであることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の樹脂組成物において、前記ポリプロピレン系エラストマー、低密度ポリエチレン及び無機充填剤の総重量に対して、0.1重量%以上0.3重量%以下の不飽和脂肪酸アミドをさらに含有することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の樹脂組成物において、前記不飽和脂肪酸アミドは、エルカ酸アミドであることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、成形体において、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の樹脂組成物が成形されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の成形体において、さらに、延伸された状態でアニーリングされていることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、樹脂製品において、請求項5又は6に記載の成形体を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、不織布との接着性、伸縮性、強度及び耐ブロッキング性が良好なフィルムを形成することが可能な樹脂組成物、該樹脂組成物の成形体及び該成形体を有する樹脂製品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0015】
本発明の樹脂組成物は、ポリプロピレン系エラストマー60重量%以上80重量%以下、低密度ポリエチレン10重量%以上30重量%以下及び無機充填剤5重量%以上15重量%以下を含有し、ポリプロピレン系エラストマー68〜76重量%、低密度ポリエチレン17〜23重量%及び無機充填剤7〜9重量%を含有することが好ましい。さらに、ポリプロピレン系エラストマーは、曲げ弾性率が12000psi以下である。これにより、樹脂組成物を用いて形成されるフィルムの物性(伸縮性、強度)を維持することができると共に、加工性(薄肉化)を改善することができる。
【0016】
本発明において、ポリプロピレン系エラストマーは、米国特許第6342565号明細書に記載されている第一のポリマー成分75〜98重量%と第二のポリマー成分2〜25重量%からなり、曲げ弾性率が12000psi以下であるポリオレフィン混合物であることが好ましい。なお、第一のポリマー成分は、融点が25〜70℃であり、溶融熱が25J/g未満であり、プロピレン由来の構成単位を80重量%以上有し、エチレン由来の構成単位を20重量%以下有する。また、第二のポリマー成分は、融点が130℃より高く、溶融熱が120J/gより大きい立体規則性アイソタクチックポリプロピレンである。なお、第一のポリマー成分は、融点が100℃未満であり、溶融熱が65J/g未満であり、プロピレン由来の構成単位を75重量%より多く有する第三のポリマー成分を50重量%以下含有することが好ましい。
【0017】
以下、ポリオレフィン混合物について、詳述する。第一のポリマー成分は、結晶性エチレン−プロピレン共重合体からなり、第一のポリマー成分の結晶性は、結晶性を有する立体規則性プロピレン鎖に起因する。第一のポリマー成分は、以下に示す特徴を有する。
【0018】
第一のポリマー成分は、組成分布が狭いランダムコポリマーからなることが好ましい。なお、第一のポリマー成分に対して用いられている結晶性は、非変形状態で主にアモルファスであるが、伸張、アニーリングにより、あるいは結晶性ポリマーの存在下で結晶化することができるポリマー又は分子鎖であることを意味する。結晶化は、DSCを用いて測定される。ポリマー分子間の組成分布は、溶媒中における熱による分別により求められる。代表的な溶媒は、ヘキサン又はヘプタンのような飽和炭化水素である。直前又は直後のフラクションの残りのポリマーと共に、通常、およそ75重量%、好ましくは85重量%のポリマーが1つ又は隣接する2つの可溶性フラクションとして単離される。これらのフラクションのそれぞれは、組成(エチレン含有量)が全ての第一のポリマー成分のエチレン含有量の平均値に対して、(相対的に)20重量%以下、好ましくは(相対的に)10重量%以下の差異を有する。
【0019】
第一のポリマー成分は、ブロードな融解遷移を一つ有することが好ましい。これは、DSCにより求められる。このような第一のポリマー成分は、融点が105℃未満であり、100℃未満が好ましく、DSCにより求められる溶融熱が45J/g未満であり、35J/g未満が好ましく、25J/g未満がさらに好ましい。第一のポリマー成分の融点は、通常、第二のポリマー成分より低い0〜105℃であり、20〜90℃が好ましく、25〜70℃が最も好ましい。
【0020】
第一のポリマー成分は、結晶性を有するアイソタクチックプロピレン鎖を有する。第一のポリマー成分は、アニーリングされたポリマーの試料の溶融熱により測定される結晶化度がアイソタクチックポリプロピレンの1〜65%であることが好ましく、3〜30%がさらに好ましい。
【0021】
第一のポリマー成分は、多分散度が1.5〜40.0であり、1.8〜5が好ましく、1.8〜3が最も好ましいと共に、分子量が1万〜500万であることができ、8万〜50万が好ましい。また、第一のポリマー成分は、ML(1+4)@125℃が100未満であることが好ましく、75未満がさらに好ましく、60未満が最も好ましい。
【0022】
第一のポリマー成分の結晶性を低下させるためには、5〜40重量%、好ましくは6〜30重量%、さらに好ましくは8〜25重量%、特に好ましくは8〜20重量%、最も好ましくは10〜15重量%のエチレンを組み込み、プロピレンの平均含有量が60重量%以上であり、75重量%以上が好ましい。エチレン成分が上記の下限より少ないと、第一のポリマー成分と第二のポリマー成分からなるポリオレフィン混合物は、熱可塑性であるが、弾性回復に必要な相分離したモルフォロジーを有さなくなる。エチレン成分が上記の上限より多いと、ポリオレフィン混合物は、引っ張り強さが低下し、粗い分散を有する相分離したモルフォロジーを有する。
【0023】
ポリオレフィン混合物は、第一のポリマー成分5〜100重量%と、第二のポリマー成分0〜95重量%からなってもよい。ポリオレフィン混合物は、好ましくは30〜98重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、最も好ましくは75〜98重量%の第一のポリマー成分を含有する。
【0024】
二種以上の第一のポリマー成分を第二のポリマー成分とのポリオレフィン混合物に用いてもよい。第一のポリマー成分の数は、通常、3未満であり、2が好ましい。これらの第一のポリマー成分は、結晶性が異なる。結晶性が低い部分は、上記の第一のポリマー成分であり、結晶性が高い部分は、下記の第三のポリマー成分である。第三のポリマー成分は、アニーリングされたポリマーの試料の溶融熱により測定される結晶化度がアイソタクチックポリプロピレンの20〜65%であることが好ましく、25〜65%がさらに好ましい。第一のポリマー成分と第三のポリマー成分は、分子量も異なっていてもよい。また、第一のポリマー成分と第三のポリマー成分は、エチレンの含有量も異なっていてもよい。結果として生じるモルフォロジーは、結晶性が高い成分の微細な分散と、結晶性が低い成分の連続相からなる。このようなモルフォロジーにより、ポリオレフィン混合物が弾性回復する。第三のポリマー成分は、非変形状態で実質的に結晶であるポリマー又は分子鎖を意味する。第二のポリマー成分のようなポリマー結晶を存在させることにより、さらに結晶化させてもよい。このような第三のポリマー成分は、融点が115℃未満であり、100℃未満が好ましく、DSCにより求められる溶融熱が75J/g未満であり、70J/g未満が好ましく、65J/g未満がさらに好ましい。
【0025】
第一のポリマー成分は、アタクチックプロピレンとアイソタクチックプロピレンのコポリマーからなってもよい。このような結晶性ポリプロピレンは、米国特許第5594080号明細書に記載されている。
【0026】
第一のポリマー成分及び第三のポリマー成分は、結晶化するのに十分な長さの立体規則性プロピレン鎖を有する。これらの立体規則性プロピレン鎖は、第二のポリマー成分のプロピレンの立体規則性と調和する必要がある。例えば、第二のポリマー成分が主にアイソタクチックポリプロピレンである場合、第一のポリマー成分及び第三のポリマー成分は、アイソタクチックプロピレン鎖を有するコポリマーである。第二のポリマー成分が主にシンジオタクチックポリプロピレンである場合、第一のポリマー成分及び第三のポリマー成分は、シンジオタクチック鎖を有するコポリマーである。この立体規則性の調和が成分の相溶性を増加させ、ポリオレフィン混合物の成分である異なる結晶性を有するポリマードメイン間の接着性が改良すると考えられる。さらに良好な相溶性は、第一のポリマー成分のコポリマーの組成が狭い範囲であることによってのみ達成される。コポリマーの分子間及び分子内の組成分布が狭いことが好ましい。前述の第一のポリマー成分及び第三のポリマー成分の特徴は、キラルなメタロセン触媒を用いて重合することにより達成されることが好ましい。
【0027】
第三のポリマー成分は、第一のポリマー成分と第二のポリマー成分の中間の結晶性と組成を有する。第二のポリマー成分がポリプロピレンであるのに対して、第三のポリマー成分がエチレン−プロピレン共重合体であることが好ましい。第三のポリマー成分は、第一のポリマー成分と第二のポリマー成分同様のプロピレンの結晶性を有し、第一のポリマー成分と第二のポリマー成分の間のエチレンを含有する。第一のポリマー成分と第二のポリマー成分のプロピレンの結晶性が異なる場合には、第三のポリマー成分は、第一のポリマー成分と第二のポリマー成分の中間のプロピレンの結晶性を有する。第三のポリマー成分をポリオレフィン混合物に添加すると、同様の組成で第三のポリマー成分を有さない混合物と比較して、良好な分散相が得られる。第一のポリマー成分と第三のポリマー成分の重量比は、95:5〜50:50であることができる。第二のポリマー成分と、第一のポリマー成分と第三のポリマー成分の合計の重量比は、1:99〜95:5であってもよく、2:98〜70:30が好ましい。
【0028】
第二のポリマー成分、すなわち、結晶性ポリプロピレンポリマー成分は、ポリプロピレン、プロピレンコポリマー又はその混合物であってもよい。第二のポリマー成分は、以下に示す特徴を有する。
【0029】
ポリプロピレンは、主に結晶であり、すなわち、融点が通常、110℃より高く、好ましくは115℃より高く、最も好ましくは130℃より高い。なお、第二のポリマー成分に対して用いられている結晶性という用語は、分子間及び分子内の秩序が高いポリマーを特徴付けている。ポリプロピレンは、DSC分析により求められる溶融熱が60J/gより大きく、70J/g以上が好ましく、80J/g以上がさらに好ましい。
【0030】
ポリプロピレンは、組成を変化させることができる。例えば、実質的にアイソタクチックなポリプロピレン又は10重量%以下のエチレンを有するプロピレンコポリマーが挙げられる。さらに、ポリプロピレンは、グラフト又はブロックコポリマーが立体規則性プロピレンに特徴的な110℃を超える、好ましくは115℃を超える、さらに好ましくは130℃を超えるシャープな融点を有する限り、ポリプロピレンブロックがエチレン−プロピレン共重合体と実質的に同じ立体規則性を有するグラフト又はブロックコポリマーであることができる。プロピレンポリマー成分は、ポリプロピレン及び/又はランダムコポリマー及び/又はブロックコポリマーを組み合わせてもよい。プロピレンポリマー成分がランダムコポリマーである場合、共重合されたエチレンのコポリマー中の割合は、通常、9重量%以下であり、2〜8重量%が好ましく、2〜6重量%が最も好ましい。
【0031】
第二のポリマー成分は、多分散度が1.5〜40.0であると共に、分子量が1万〜500万であることができ、5万〜50万が好ましい。
【0032】
熱可塑性のポリオレフィン混合物は、0〜95重量%、好ましくは2〜70重量%、さらに好ましくは2〜40重量%、特に好ましくは2〜25重量%の第二のポリマー成分を含有してもよい。
【0033】
なお、ポリオレフィン混合物(ポリプロピレン系エラストマー)の物性の評価方法及び第一のポリマー成分と第二のポリマー成分の混合方法は、米国特許第6342565号明細書に記載されている。
【0034】
樹脂組成物中のポリプロピレン系エラストマーの含有量が60重量%未満であると、伸縮性が低下し、80重量%を超えると、耐ブロッキング性が低下する。
【0035】
本発明において、低密度ポリエチレンは、加工性を向上させるために添加されている。低密度ポリエチレンとしては、密度が0.915〜0.925g/cmである高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)及び密度が0.920〜0.930g/cmである線状低密度ポリエチレン(LLDPE)が挙げられるが、LDPEが好ましい。密度が0.915g/cm未満であると、耐ブロッキング性が低下することがあり、0.930g/cmを超えると、フィルムの伸縮性が低下することがある。また、LDPEは、MI(190℃/2.16kg荷重)が0.5〜3.0g/10分であることが好ましい。MIが0.5g/10分未満であると、フィルムの薄膜化が困難になることがあり、3.0g/10分を超えると、フィルムの成膜安定性が低下することがある。低密度ポリエチレンは、無機充填剤等のマスターバッチのキャリア樹脂として、用いることもできる。
【0036】
樹脂組成物中の低密度ポリエチレンの含有量が10重量%未満であると、加工性が低下し、30重量%を超えると、フィルムの伸縮性が低下する。なお、ポリプロピレン製の不織布等との熱接着性及び超音波接着性をさらに向上させるためにフィルムの耐熱性を向上させる必要がある場合、樹脂組成物は、LDPEの代わりにポリプロピレン、プロピレンのランダム共重合体を5〜10重量%含有してもよい。
【0037】
本発明において、無機充填剤は、耐ブロッキング性を向上させるために添加されており、炭酸カルシウム、タルク、ゼオライト、石膏、カーボンブラック、マイカ、クレー、カオリン、シリカ、ケイソウ土等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、炭酸カルシウム及びタルクが好ましい。無機充填剤は、平均粒子径が2〜10μmであることが好ましく、表面が脂肪酸等で処理されたものも用いることができる。なお、無機充填剤を樹脂組成物に添加する際には、前述したように、低密度ポリエチレンを用いてマスターバッチとした後に添加することが好ましい。樹脂組成物中の無機充填剤の含有量が5重量%未満であると、耐ブロッキング性が低下し、15重量%を超えると、強度が低下する。
【0038】
本発明の樹脂組成物は、ポリプロピレン系エラストマー、低密度ポリエチレン及び無機充填剤の総重量に対して、好ましくは0.1〜0.3重量%、さらに好ましくは0.15〜0.25重量%の不飽和脂肪酸アミド(スリップ剤)をさらに含有する。これにより、耐ブロッキング性をさらに向上させることができる。不飽和脂肪酸アミドとしては、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、エルカ酸アミドが好ましい。なお、不飽和脂肪酸アミドを樹脂組成物に添加する際には、無機充填剤と同様に、低密度ポリエチレンを用いてマスターバッチとした後に添加することが好ましい。
【0039】
なお、本発明の樹脂組成物は、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤、色剤等をさらに含有してもよい。
【0040】
本発明の樹脂組成物は、リボンブレンダー、回転式ドラムブレンダー(ヘンシェルミキサー、高速ミキサー)等を用いて、ドライブレンドしたものであってもよい。また、押出機等を用いて、ドライブレンドした樹脂組成物を150〜210℃程度で溶融混練し、押し出してペレット化したものであってもよい。
【0041】
本発明の成形体は、本発明の樹脂組成物が成形することにより得られる。このような成形体としては、伸縮性フィルム、伸縮性テープ、弾性紐、弾性糸等が挙げられる。
【0042】
樹脂組成物を成形して伸縮性フィルムを作製する際には、T−ダイ押出機を用いることも可能であるが、フィルムの縦と横の強度バランス、高速成形性等を考慮すると、チューブ状のフィルムを成形する空冷インフレーション成形法を用いることが好ましい。なお、空冷インフレーション成形は、樹脂温度150〜180℃、ブロー比2〜5で行うことが好ましい。ブロー比が2以下では、フィルムが縦裂けしやすくなることがあり、5以上では、フィルムの成膜安定性が低下することがある。
【0043】
伸縮性フィルムの厚さは、各種用途により適宜選択されるが、通常、200μm以下であることが好ましく、20〜150μmがさらに好ましい。伸縮性フィルムの厚さが200μmを超えると、フィルムの製膜安定性が低下することがある。また、伸縮性フィルムは、伸縮歪みが20%以下であることが好ましい。なお、伸縮性フィルムを15〜60mm程度の幅に裁断して、ロール巻製品にするか、受箱にそのまま垂らし込むことにより、伸縮性テープとすることができる。また、ロール巻製品を更に1〜15mmの細幅に裁断してトラバース巻製品にするか、受箱にそのまま垂らし込むことにより、細幅の伸縮性テープとすることができる。
【0044】
本発明の成形体は、さらに、延伸された状態でアニーリングされていることが好ましい。これにより、低応力下での伸縮歪みを減少させ、伸縮性を向上させることができる。伸縮性テープを延伸する場合、延伸方向は、縦一軸方向(MD)、横一軸方向(TD)及び縦横二軸方向のいずれでもよい。延伸倍率は、特に限定されないが、いずれの方向でも通常、1.5〜6倍程度であり、1.5〜3.5倍が好ましい。なお、伸縮性テープの延伸は加熱下で行ってもよい。次に、延伸した伸縮性テープをアニーリングする場合、延伸時の温度と同等又は若干高い温度、具体的には、常温〜常温+30℃で行うことが好ましい。このとき、アニーリングは、高温のロール、湯漕等を用いて行うことができる。
【0045】
さらに、本発明においては、伸縮性テープを縦一軸方向(MD)に延伸し、アニーリングした後に裁断するか、伸縮性テープを裁断した後に縦一軸方向(MD)に延伸し、アニーリングすることにより、弾性紐を得ることができる。弾性紐の幅は、通常、1〜15mmであり、1.5〜10mm程度が好ましい。なお、伸縮性テープの延伸倍率は、特に限定されないが、通常、1.5〜6倍程度であり、1.5〜3.5倍程度が好ましい。また、延伸は、加熱下で行ってもよい。なお、アニーリングは、上記と同様に実施することができる。
【0046】
本発明の樹脂製品は、本発明の成形体を有する。具体的には、伸縮性テープを伸張した状態で不織布、織布、プラスチックフィルム、プラスチックシート又はこれらの積層体に熱接着又は超音波接着させ、テープの伸張を緩和して得られる紙おむつのウエストギャザー、生理用ナプキンのウイング部のギャザー、パップ剤、絆創膏、経皮吸収剤、弾性紐を不織布に超音波接着させることにより得られる半導体製造用の不織布製簡易マスク等が挙げられる。
【実施例】
【0047】
本実施例中の部は、重量部を意味し、本実施例は、本発明を例示したものに過ぎず、本発明は、これらの実施例により限定されない。
(実施例1〜4)
ポリプロピレン系エラストマーVISTAMAXX VM1100(エクソンモービル社製)(MI(190℃/2.16kg荷重)1.3g/10分、MFR(230℃/2.16kg荷重)3.0g/10分、密度0.862g/cm、エチレン含有量15重量%、プロピレン含有量85重量%、曲げ弾性率1972psi)、低密度ポリエチレン(LDPE)NUC−8506(MI(190℃/2.16kg荷重)0.8g/10分、密度0.923g/cm)、炭酸カルシウムPO−150−B−10(白石カルシウム社製)(平均粒子径3.2μm、見掛け比重0.87g/cm、特殊脂肪酸処理品)及びスリップ剤(マスターバッチ)PEX SLT−01(東京インキ社製)を表1に示す比率で混合し、樹脂組成物を得た。
【0048】
【表1】

なお、PEX SLT−01は、スリップ剤として、エルカ酸アミドを10重量%含有し、キャリア樹脂として、LDPE(MI(190℃/2.16kg荷重)5.0g/10分)を含有する。
【0049】
次に、空冷インフレーション押出機YEI−55HDR−W130S−LRW(吉井鉄工社製)を用いて、表1に示す厚さ、幅及び目付けを有するフィルムを作製した。なお、押出は、直径55mmの低圧縮フルフライト先端ミキシングスクリュー、直径150mmスパイラルダイ及び特殊空冷エアーリングを用いて行った。このとき、押出条件は、C1、C2、C3、H、D1及びD2の温度がそれぞれ165℃、170℃、176℃、176℃、173℃及び173℃とした。また、フィルムの厚さに対する製膜条件は、表2に示す。
【0050】
【表2】

得られたフィルムの両耳を裁断した後、2枚に分けてシート状に巻き取り、伸縮性フィルムを作製した。
【0051】
次に、回転刃方式のスリッター531K(ゴードーキコー社製)を用いて、伸縮性フィルムを幅25mmに裁断したものを、3インチ紙管にレコード巻として100〜200m巻き取り、伸縮性テープを作製した。
(実施例5)
スリット刃にレザー刃を用いたトラバースワインダーBTW型(伸和鉄工社製)で、実施例3の伸縮性テープを幅5mmに裁断して巻き取り、線密度0.55g/mの弾性紐を作製した。
(実施例6)
回転刃方式のスリッター531K(ゴードーキコー社製)を用いて、実施例3の伸縮性フィルムを幅20mmに裁断したものを、3インチ紙管にレコード巻として500m巻き取り、伸縮性テープを作製した。さらに、トラバーススリットワインダーBTW型(伸和鉄工社製)を用いて、幅2mmに裁断して巻き取り、伸縮性テープを作製した。得られた伸縮性テープを常温で3倍に延伸した後、50℃の水槽でアニーリングし、常温のロールで段ボール箱に垂らし込み、線密度0.2g/mの弾性糸を作製した。
(実施例7)
回転刃方式のスリッター531K(ゴードーキコー社製)を用いて、実施例1の伸縮性フィルムを幅300mmに裁断したものを、3インチ紙管にレコード巻として500m巻き取り、伸縮性テープを作製した。次に、伸縮性テープを40℃のオーブンの中で1週間保管した後、上記のスリッターを用いて、伸縮性テープが巻芯までスムーズに繰り出せるか評価したところ、問題無く繰り出せた。このことから、実施例7の伸縮性フィルムは、実用上、問題の無い耐ブロッキング性を有することがわかった。
(比較例1)
ポリウレタン製の伸縮性テープとして、厚さ29μm、幅25μm、目付け30g/mのラブレーズU2フィルム(新和興化成社製)を用いた。
(比較例2)
ポリウレタン製の弾性紐として、厚さ160μm、幅4mm、線密度0.67g/mのモビロン(日清紡社製)を用いた。
(評価方法及び評価結果)
伸縮性は、JIS−L1096に準拠した引っ張り試験機RTA−100(オリエンテック社製)を用いて、伸縮性テープを縦一軸方向(MD)及び横一軸方向(TD)に伸縮させ、チャック間隔が100mm、クロスヘッドスピードが300mm/分で、100%伸長の時点で折り返して応力歪み曲線を描かせることにより評価を行った。評価結果を、後述する引っ張り強伸度、熱接着性及び超音波接着性と共に、表3に示した。
【0052】
【表3】

なお、表中、行きとは、100%伸長する前の過程を意味し、戻りとは、100%伸長した後の過程を意味し、伸縮歪みとは、戻りで応力が0になる時点での歪みを意味する。表3の応力及び伸縮歪みの値から、実施例の伸縮性テープ、弾性紐、弾性糸は、実用上、問題の無い伸縮性を有することがわかった。
【0053】
また、引っ張り強伸度は、チャック間隔を50mmにした以外は、上記と同様に評価を行った。表3の破断時の応力及び伸度の値から、実施例の伸縮性テープ、弾性紐、弾性糸は、実用上、問題の無い引っ張り強伸度を有することがわかった。
【0054】
熱接着性は、以下のようにして評価した。面端子が10mm×25mmである傾斜式ホットタック試験機を用いて、ヒートシール台の下側(シリコーンゴム製)を50℃に固定した状態で、熱源面を上側に配置して、伸縮性テープを上側、不織布を下側に配置して、ヒートシールした。なお、不織布は、面積密度が18g/mのポリプロピレン製スパンボンド(市販品)である。次に、JIS−L1096に準拠した引張試験機RTA−100(オリエンテック社製)を用いて、180度剥離強度を測定し、剥離強度が最大になる温度及び剥離強度を求めた。表3より、比較例1の伸縮性テープで困難であった不織布との熱接着が実施例1〜4の伸縮性テープで可能となることがわかった。
【0055】
超音波接着性は、弾性紐を不織布に超音波接着させた半導体製造用簡易マスクを実際に装着して確認し、切れ及び剥がれが発生しないものを◎、殆ど発生しない場合を○、発生する場合と発生しない場合があるものを△、発生するものを×として評価した。なお、超音波接着は、手動タイプの超音波シール機HW35型(スイス リンコ社製)を用いて、溶着時間が0.5〜1.5秒、冷却時間が1秒、エアー圧力が2kg/cm、ホーンと台との間隙が0.2mm以下となる条件で行った。ここで用いた半導体製造用簡易マスクは、3層構造をしており、超音波接着させる最内層の不織布は、面積密度が18g/mのポリプロピレン製スパンボンド(市販品)である。表3より、比較例2の弾性紐で困難であった不織布との超音波接着が実施例5の弾性紐で可能となることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系エラストマー60重量%以上80重量%以下、低密度ポリエチレン10重量%以上30重量%以下及び無機充填剤5重量%以上15重量%以下を含有し、
該ポリプロピレン系エラストマーは、プロピレン由来の構成単位80重量%以上及びエチレン由来の構成単位20重量%以下を含有し、曲げ弾性率が12000psi以下であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記無機充填剤は、炭酸カルシウム及び/又はタルクであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリプロピレン系エラストマー、低密度ポリエチレン及び無機充填剤の総重量に対して、0.1重量%以上0.3重量%以下の不飽和脂肪酸アミドをさらに含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記不飽和脂肪酸アミドは、エルカ酸アミドであることを特徴とする請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の樹脂組成物が成形されていることを特徴とする成形体。
【請求項6】
さらに、延伸された状態でアニーリングされていることを特徴とする請求項5に記載の成形体。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の成形体を有することを特徴とする樹脂製品。

【公開番号】特開2008−169304(P2008−169304A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−3830(P2007−3830)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(302002797)新和興化成株式会社 (3)
【Fターム(参考)】