説明

樹脂組成物、成形品および樹脂プレート

【課題】 屋外で使用可能な透明または着色された樹脂プレート、例えば、看板の面板材料として必要な耐熱性、成形性、割れにくさを有し、樹脂プレートを安定して押出成形可能で、押出成形時の着色が防止された樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 ポリカーボネート樹脂と、ポリエステル樹脂と、ホスフェート化合物(A)と、ホスファイト化合物およびホスホナイト化合物のうちの1種以上の化合物(B)と、を含み、該ホスファイト化合物およびホスホナイト化合物のうちの1種以上の化合物(B)の含有量に対するホスフェート化合物(A)の含有量の比[A/B]が0.01以上1以下である樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、成形品および樹脂プレートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋外で使用可能な透明または着色された樹脂プレートは、例えば、看板の面板材料などに使われる場合、樹脂プレートを真空成形などにより熱成形し、印刷、塗装、マーキングフィルム貼りなどにより加飾され使用されている。
上記樹脂プレートとしては、優れた色調(透明性や着色の再現性)を有し、熱成形が容易に行え、印刷、塗装、マーキングフィルム貼りなどが可能な樹脂プレートが必要である。また直射日光による温度上昇や、バックライトとして使用する蛍光灯などから出る熱に耐える必要がある。このため、樹脂プレートとして、成形性、加飾性、耐熱性に優れるアクリル樹脂プレートが用いられている。(例えば、特許文献1参照。)
しかしながら、近年安全意識の高まりから看板面板材料に割れにくさや、難燃性が求められるようになってきている。
アクリル樹脂は割れやすく、また、燃えやすい性質があり、一度着火すると燃え尽きるまで消火しない性質があるため、アクリル樹脂プレートに代わる、割れにくく燃えにくい看板面板材料が求められている。
従来、看板面板材料に割れにくさや難燃性が求められた場合、ポリカーボネート樹脂プレートが用いられている。しかし、ポリカーボネート樹脂は耐熱温度が過剰に高いため、真空成形など熱成形を行う際、発泡を防止する為に予備乾燥が必要、安価な木型では型再現性が悪く金型が必要、加熱時間が長いなど生産性に劣る。
【0003】
これに対し、最近では、ポリカーボネート樹脂および/またはジカルボン酸系重縮合成分とグリコール系縮合成分とを重縮合させて得られるポリエステル樹脂を含有する樹脂からなる樹脂プレートが提案されている。(特許文献2参照)
これは、ポリカーボネート樹脂と特定のポリエステル樹脂を混合することで、ポリカーボネート樹脂の優れた特徴である透明性と強度および耐燃焼性を維持したまま、適度な熱成形性を付与されたものである。
ただし、ポリカーボネート樹脂と特定のポリエステル樹脂を混合し、押出成形などにより樹脂プレートを作製する場合、各々、ポリカーネート樹脂のみ、または、ポリエステル樹脂のみを単独で作製する場合に比べ、大きく黄色みを帯びてしまうことが問題となる。この着色の主原因は明らかにはなっていないが、該ポリエステル樹脂中に含まれる金属触媒残渣、特にチタン系金属触媒残渣の影響により、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂との間でエステル交換反応が発生することが原因として推定される。
【0004】
ポリカーボネート樹脂と特定のポリエステル樹脂を混合し成形する際の着色を防止する手段として、リン系安定剤のうち、特定構造のホスフェートを添加することが知られているが(特許文献3、4、5参照)
【0005】
特許文献3では、熱可塑性ポリエステル樹脂または、熱可塑性ポリエステル樹脂を10重量%以上含有する熱可塑性ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂とのポリマーブレンド樹脂に対し、特定のホスフェート化合物を0.001〜5重量部を添加することでの色調悪化を防止するとしており、実施例として、ポリエステル樹脂単独の系に対し、該ホスフェート化合物を0.2重量部添加した場合の効果を示している。また、ポリカーボネート樹脂と熱可塑性ポリエステル樹脂の1種であるポリブチレンテレフタレート樹脂との混合系に対し、該ホスフェート化合物を0.3重量部または0.5重量部を添加した場合の効果を示している。これらは、すべて射出成形により確認されている。
【0006】
特許文献4では、芳香族ポリカーボネート樹脂と芳香族ポリエステル樹脂を含む組成物に特定の有機リン酸エステル(ホスフェート)を0.005〜1重量部、好ましくは0.01〜0.5重量部を配合することで、熱劣化を防止し溶融安定性を高めることが提案され、実施例として、芳香族ポリカーボネート樹脂と、芳香族ポリエステル樹脂としてポリエチレンテレフタレート樹脂もしくはポリブチレンテレフタレート樹脂を含有する樹脂混合物に、特定の有機リン酸エステルを0.02〜0.1重量部配合した場合の効果を示している。これらは、すべて射出成形により確認されている。
【0007】
特許文献5では、特定のポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂の混合樹脂に対し、アルキルアシッドホスフェート0.01〜3重量部を含有することで色調の悪化を防止できることが提案され、実施例として、特定のポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂の混合樹脂に対し、アルキルアシッドホスフェートを0.02〜2.5重量部を添加した場合の効果を示している。
【0008】
これら従来の技術を、ポリカーボネート樹脂と特定のポリエステル樹脂を混合しプレート状に成形する際の着色を防止手段として用いようとする場合、サイズの比較的大きなプレート(例えば縦横1メートルのプレート)を経済的に作成するために押出成形法などの生産方式に適用することが求められるが、押出成形において、これら従来技術を適用すると、成形安定性が極端に低くなり、安定して生産することが困難であるという問題を生じる。そのためにホスフェートの添加量を具体手的に提示されている量より減らした場合は、着色防止の効果が得られない。また、不安定な成形性の中で得られたプレートサンプルを評価すると、耐熱変色性に課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平06−100712号公報
【特許文献2】特許4211136公報
【特許文献3】特許2928787公報
【特許文献4】特開平04−325553号公報
【特許文献5】特開2000−327893公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
屋外で使用可能な透明または着色された樹脂プレート、例えば、看板の面板材料として必要な耐熱性、成形性、割れにくさを有し、樹脂プレートを安定して押出成形可能で、押出成形時の着色が防止された樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的は、下記の[1]〜[6]に記載の本発明により達成される。
[1] ポリカーボネート樹脂と、ポリエステル樹脂と、ホスフェート化合物(A)と、ホスファイト化合物およびホスホナイト化合物のうちの1種以上の化合物(B)と、を含み、該ホスファイト化合物およびホスホナイト化合物のうちの1種以上の化合物(B)の含有量に対するホスフェート化合物(A)の含有量の比[A/B]が0.01以上1.0以上である樹脂組成物。
[2] 前記ホスフェート化合物(A)が、下記式(1)で表されるジアルキルホスフェートおよび下記式(2)で表されるモノアルキルホスフェートのうちのいずれか一方または両方の組み合わせである前記[1]記載の樹脂組成物。

(R−O)−P(O)−OH (1)

(R−O)−P(O)−(OH) (2)

(式(1)および式(2)中、RおよびRは、炭素数4〜20のアルキル基である。)
[3] 前記ホスフェート化合物(A)の含有量が、ポリカーボネート樹脂およびポリエステル樹脂の含有量の合計100重量部に対して、0.005重量部以上0.15重量部以下である前記[1]または[2]のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[4] 前記ポリエステル樹脂の含有量が、前記ポリカーボネート樹脂の含有量および前記ポリエステル樹脂の含有量の合計100重量部に対して、20重量部以上80重量部以下である前記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[5] 前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いて作製した成形品。
[6] 前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いて作製した樹脂プレート。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、屋外で使用可能な透明または着色された樹脂プレート、例えば、看板の面板材料として必要な耐熱性、成形性、割れにくさを有し、樹脂プレートを安定して押出成形可能で、押出成形時の着色が防止された樹脂組成物看板面板材料として必要な耐熱性、成形性を両立し、かつ難燃性に優れる樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂とを含むものであり、以下、詳細について説明をする。
本発明において使用されるポリカーボネート樹脂は、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる。
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類などが挙げられる。これらは単独だけでなく2種類以上混合して使用してもよい。
【0014】
また、かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し分子量調節剤、触媒などを必要に応じて添加しても差し支えない。
本発明において、ポリカーボネート樹脂は、全樹脂組成物に対して、20重量部以上80
重量部以下であり、好ましくは30重量部以上70重量部以下、さらに好ましくは40重量部以上60重量部以下含むことができる。
ポリカーボネート樹脂が上記下限値を下回ると、耐熱性に劣り好ましくない。またポリカーボネート樹脂が上記上限値を超えると、真空成形など熱成形を行う際、発泡を防止する為に予備乾燥が必要、安価な木型では型再現性が悪く金型が必要、加熱時間が長いなど生産性に劣る。
【0015】
本発明に使用するポリエステル樹脂は、ジカルボン酸系成分とグリコール系成分とを重縮合させて得られるものであり、テレフタル酸および/またはその誘導体からなる群より選ばれる1種または2種以上のテレフタル酸系成分からなるジカルボン酸系成分と、1,4−シクロヘキサンジメタノールを含有するグリコール系成分を用いる。
ジカルボン酸系成分はテレフタル酸および/またはその誘導体からなる群より選ばれる1種または2種以上のテレフタル酸系成分よりなる。テレフタル酸誘導体とは、例えばテレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチルなどが挙げられるが、中でもテレフタル酸ジメチルが好適である。
【0016】
グリコール系成分において、1,4−シクロヘキサンジメタノールを40モル%以上含有させる必要がある。グリコール系成分全体に占める1,4−シクロヘキサンジメタノールの割合が40モル%未満では、シートの透明性が得られないからであり、50モル%以上とするのがより望ましい。なお、1,4−シクロヘキサンジメタノールは、シス型とトランス型の2種の異性体が存在するが、いずれであっても良い。1,4−シクロヘキサンジメタノールと併用して用いるグリコール系縮合成分としては、例えばエチレングリコール、プロプレングリコールなどが挙げられるが、物性バランスがよく、広く工業生産され安価であることから、エチレングリコールが特に好適である。もちろん、グリコール系成分として1,4−シクロヘキサンジメタノールを100%使用するものとしても良い。
【0017】
本発明において、ポリエステル樹脂は、全樹脂組成物に対して、20重量部以上80重量部以下であり、好ましくは30重量部以上70重量部以下、さらに好ましく40重量部以上60重量部以下含むことができる。
ポリエステル樹脂が上記上限値を超えると、耐熱性に劣り好ましくない。またポリエステル樹脂が上記下限値を下回ると、真空成形など熱成形を行う際、発泡を防止する為に予備乾燥が必要、安価な木型では型再現性が悪く金型が必要、加熱時間が長いなど生産性に劣る。
【0018】
本発明で好ましく使用されるホスフェート化合物(A)は、下記式(1)または式(2)のホスフェート化合物、もしくは、下記式(1)および(2)の混合物である、アルキルアシッドホスフェート化合物である。

(R−O)−P(O)−OH (1)

(R−O)−P(O)−(OH) (2)

およびRは、炭素数4〜20のアルキル基を表す。
上記アルキルアシッドホスフェート化合物において、RおよびRで表わされる炭素原子数4から20のアルキル基としては、直鎖または分岐鎖構造の、ブチル、オクチル、ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシルなどがあげられ、アルキル基は1種類でもよいし、複数のアルキル基が混在してもよい。
上記式(1)で表わされるジアルキルジアシドホスフェートまたは、上記式(2)で表わされるモノアルキルアシドホスフェートが、成形時の樹脂の着色を防止するメカニズム
は、金属触媒残渣、特にチタン系金属触媒残渣と錯体を形成し、触媒残渣を失活させることによるものと推定されが、モノアルキルアシドホスフェートの方が、比較的少量でその効果を発揮し、押出法などによる成形時の安定化により効果的である。これは、ホスフェート化合物中に含有されるリン原子に結合された水酸基が、着色防止に作用しているものと推定される。
上記アルキルアシドホスフェート化合物は、例えば、対応するトリアルキルホスフェートを加水分解する方法、オキシ塩化リンと対応するアルカノールとを反応させた後加水分解する方法あるいは五酸化リンと対応するアルカノールとを反応させる方法などの周知の方法によって容易に合成することができる。
また、例えば五酸化リンと対応するアルカノールとを反応させる方法によって合成された長鎖アルキルアシドホスフェート化合物は、一般には、上記式(1)で表わされるジアルキルジアシドホスフェートと、上記式(2)で表わされるモノアルキルアシドホスフェートとの混合物として得られやすく、これらの混合物からの分離操作は煩雑である。
モノアルキルアシッドホスフェート化合物とジアルキルジアシドホスフェート化合物は、同時に添加しても、本発明の目的である、成形時の樹脂の着色を防止する効果を十分に発揮することから、本発明においては、これらのモノアルキルアシッドホスフェートとジアルキルアシドホスフェートの混合物をそのまま使用することもできる。
上記アルキルアシドホスフェート化合物の含有量は、ポリカーボネート樹脂と、ポリエステル樹脂との合計100重量部に対して、0.005重量部以上、0.15重量部以下、より好ましくは0.01重量部以上0.1重量部以下である。含有量が0.005重量部より少ない場合は所期の目的を達成するには不充分であり、また、0.15重量部より多く添加した場合は、押出などの成形時の安定性の低下や、得られた樹脂成型品の耐熱変色性が悪化する。
【0019】
本発明で使用されるホスファイト化合物およびホスホナイト化合物のうちの1種以上の化合物(B)について、以下に説明する。
本発明で好ましく使用されるホスファイト化合物としては、亜リン酸エステル中の少なくとも1つのエステルがフェノールおよび/または炭素数1〜25のアルキル基を少なくとも1つ有するフェノールでエステル化された亜リン酸エステルが挙げられる。
亜リン酸エステル化合物の具体例としては、トリオクチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(オクチルフェニル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジラウリルフェニルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)フェニルホスファイト、ジイソオクチルフェニルホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ジラウリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、(フェニル)(1,3−プロパンジオール)ホスファイト、(4−メチルフェニル)(1,3−プロパンジオール)ホスファイト、(2,6−ジメチルフェニル)(1,3−プロパンジオール)ホスファイト、(4−tert−ブチルフェニル)(1,3−プロパンジオール)ホスファイト、(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)(1,3−プロパンジオール)ホスファイト、(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(1,3−プロパンジオール)ホスファイト、(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)(1,3−プロパンジオール)ホスファイト、(フェニル)(1,2−エタンジオール)ホスファイト、(4−メチルフェニル)(1,2−エタンジオール)ホスファイト、(2,6−ジメチルフェニル)(1,2−エタンジオール)ホスファイト、(4−tert−ブチルフェニル)(1,2−エタンジオール)ホスファイト、(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)(1,2−エタンジオール)ホスファイト、(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(1,2
−エタンジオール)ホスファイト、(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)(1,2−エタンジオール)ホスファイト、(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)(1,4−ブタンジオール)ホスファイトなど、ジフェニルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(3−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジメチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジメチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,3,6−トリメチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(3−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ビフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジナフチルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
これらの中で好ましくは、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイトであり、より好ましくは、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトである。
【0020】
本発明で好ましく使用されるホスホナイト化合物としては、下記式(3)で表されるホスホナイト化合物が好ましく用いられる。

(RO)−P−R−R−P−(OR (3)

式(3)中、Rはフェニル基またはフェニレン基、Rはフェニル基、C〜Cのアルキル基またはC〜C15のフェニル誘導体を表す。フェニル誘導体としては、C〜Cのアルキル基によって置換されたフェニル基が挙げられる。
ホスホナイト化合物の具体例としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチル−フェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,5−ジ−tert−ブチル−フェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3,4−トリメチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3−ジメチル−5−エチル−フェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチル−フェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチル−5−エチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3,4−トリ−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、などが挙げられる。中でも、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチル−フェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトなどの4,4’−ビフェニレンジホスホナイト化合物が好ましい。
【0021】
本発明において用いられる、上記ホスフェート化合物(A)と、ホスファイト化合物またはホスホナイト化合物のうち少なくとも1種類の化合物(B)の含有量の比[A/B]
は、0.01以上1以下、より好ましくは、0.03以上0.5以下で含有された場合に、その着色防止性と、耐熱変色の防止に格段の効果を発揮する。含有量の比[A/B]が、0.01を下回ると、着色防止効果が不十分となり、1を超えると、押出などの成形時の安定性が不十分となる他、得られた樹脂成形品の耐熱変色性が問題となる。
【0022】
本発明の樹脂組成物には、さらに紫外線吸収剤を用いてもよい。
本発明に使用する紫外線吸収剤としては特に限定しないが、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、安息香酸エステル類、サリチル酸フェニル類、クロトン酸類、マロン酸エステル類、オルガノアクリレート類、ヒンダードアミン類、ヒンダードフェノール類、トリアジン類などを用いることができる。これらの紫外線吸収剤は、単独もしくは複数を併用してもよく、樹脂組成物に均一に添加してもよいし、また、複層構造として表面層に高濃度を添加した層を形成してもよいし、それらを組み合わせてもよい。
【0023】
本発明の樹脂組成物には、さらに難燃剤を用いてもよい。
本発明に使用する難燃剤としては特に限定しないが、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、塩素系難燃剤、無機系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤などを用いることができる。
本発明においては、全樹脂組成物に対して難燃剤は、0.01重量部以上5重量部以下、好ましくは0.1重量部以上4重量部以下、さらに好ましくは1重量部以上3重量部以
下含むことができる。
難燃剤が上記下限値を下回ると、難燃性向上効果が低く好ましくない。また難燃剤が上記上限値を超えると、押出法などによって樹脂プレートを製造する際、プレートの発泡や波うちなど外観不良となるため好ましくない。
【0024】
本発明の樹脂組成物には、所望により通常に使用される添加剤、例えば安定剤、滑剤、加工助剤、顔料、帯電防止剤、酸化防止剤、中和剤、分散剤を含有させることもできる。
【0025】
本発明の樹脂組成物を用いて、樹脂プレートを製造する方法は、特に限定されないが、カレンダリング法、押出法、プレス法、キャスト法などを用いることができる。
本発明の樹脂組成物を用いて、成形品を製造する方法は、特に限定されないが、真空成型、圧空成形、真空圧空成形、プレス成形などの熱成形を用いることができる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明を説明するが、これは単なる例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。実施例において用いた材料を以下に記載した。なお、表1に各材料の添加量を記載し、重量部で示した。
・ポリカーボネート樹脂
製品名:E−2000FN(製法:ホスゲン法、着色剤を含まず)、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製
・ポリエステル樹脂
製品名:J−2003(1,4シクロヘキサンジメタノール−エチレングリコールテレフタル酸共重合樹脂/チタン系触媒残渣を含有、着色材を含まず)、SKケミカル社製
・ホスフェート化合物(A)
(A−1)ステアリルアシッドホスフェート(城北化学工業製 品番JAMP−18P)
炭素数18(モノ:ジ=9:1)(式(1)と式(2)のホスフェート化合物の混合物)
(A−2)ブチルアシッドホスフェート(城北化学工業製 品番JP−504)
炭素数4(モノ:ジ=5:5)(式(1)と式(2)のホスフェート化合物の混合物)
(A−3)ジブチルアシッドホスフェート(城北化学工業製 品番DBP)
炭素数4(モノ:ジ=0:10)(式(1)のホスフェート化合物)
・ホスファイト化合物およびホスホナイト化合物(B)
(B−1)トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト
(B−2)ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト
(B−3)テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチル−フェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト
【0027】
[実施例1]
表1の組成にしたがって調整した組成物を、T型ダイスを取りつけた、スクリュー径40mm、L/D=32の単軸押出機を用い、シリンダー温度250℃にて押出成形することにより厚さ3.0mmの樹脂プレートを得た。得られた樹脂プレートの初期色調、を以下の方法により評価した。また、得られた樹脂プレートを粉砕し、再度、同条件での押出成形を行うことを2回繰り返し、リサイクルされた樹脂プレートを得た。
評価結果を表1に示す。
【0028】
・押出時の着色性
作製した樹脂プレートの初期色調、およびリサイクルされた樹脂プレートの色調は、各々、JIS K7103に準拠した方法にて黄色度を測定し、押出時の着色性として評価した。
・耐熱性(色調)
作製した樹脂プレートを80℃の熱風循環式オーブン中に500時間設置した後の耐熱後の色調を、JIS K7103に準拠した方法にて黄色度を測定し、耐熱性(色調)として評価した。
・耐熱性(変形)
作製した樹脂プレートを、ASTM D 648(荷重:1.8MPa)に準拠した方法で荷重たわみ温度を測定し、耐熱性(変形)として評価した。
・耐衝撃性(割れにくさ)
作製した樹脂プレートを縦横15cmの開口部を設けた鋼製枠に固定し、1kgのなす型錘を高さ2mから落下させ、クラックや割れの発生を確認し、割れにくさとして評価した。
・成形性評価
作製した樹脂プレートを用いて、真空成形機と木型を用いて真空成形を行い、樹脂プレート成形品を得た。得られた成形品について、発泡発生せず、型再現性が良好であることを確認し、成形性の評価とした。
【0029】
[実施例2〜12、比較例1〜7]
実施例2〜12、比較例1〜7は、実施例1と同様に樹脂プレートを作製し、評価を行った。但し、比較例6では、押出成形時のシリンダー温度を270℃とした。
表1および表2の配合とした以外は、実施例1と同様に樹脂組成物、樹脂プレートを製造し、評価した。評価結果を表1に示した。
実施例1〜12において、成形性は、予備加熱しないでも成形可能であり問題なかった。押出し成形時の変動についてもトルクの変動はなく良好であった。
しかし、比較例2では、押出し成形時の変動が大きくNGであり、比較例6は成形時の予備加熱なしでは、発泡しNGであった。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】



【0032】
表1および表2から明らかなように、本発明に係る実施例1〜12においては、初期黄色度、リサイクル黄色度とも、黄色度1.5を下回り、押出時の着色が少ない良好な特性を有していた。また、実施例1〜12においては、耐熱後の黄色度も同様に1.5以下で
あり、かつ荷重たわみ温度がすべて80℃以上であり、耐熱性に優れていた。
一方、ホスファイト化合物およびホスホナイト化合物(B)を含有しない比較例1および比較例2、ホスフェート化合物(A)とホスファイト化合物およびホスホナイト化合物(B)の含有量の比[A/B]が本発明の範囲を上回る比較例3は、耐熱後の黄色度が大きく、耐熱性に劣る結果であった。ホスフェート化合物(A)とホスファイト化合物よびホスホナイト化合物(B)の含有量の比[A/B]が本発明の範囲を下回る比較例4は、リサイクル黄色度が高い数値となり、押出時の着色性に劣る結果であった。また、比較例7は、荷重たわみ温度が65℃と低く耐熱性に劣る結果であった。さらに、ホスフェート化合物(A)を含まない比較例5は、押出時の着色性、耐熱性に劣る結果であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂と、ポリエステル樹脂と、ホスフェート化合物(A)と、ホスファイト化合物およびホスホナイト化合物のうちの1種以上の化合物(B)と、を含み、該ホスファイト化合物およびホスホナイト化合物のうちの1種以上の化合物(B)の含有量に対するホスフェート化合物(A)の含有量の比[A/B]が、0.01以上1以下である樹脂組成物。
【請求項2】
前記ホスフェート化合物(A)が、下記式(1)で表されるジアルキルホスフェートおよび下記式(2)で表されるモノアルキルホスフェートのうちのいずれか一方または両方の組み合わせである請求項1記載の樹脂組成物。

(R−O)−P(O)−OH (1)

(R−O)−P(O)−(OH) (2)

(式(1)および式(2)中、RおよびRは、炭素数4〜20のアルキル基である。)
【請求項3】
前記ホスフェート化合物(A)の含有量が、ポリカーボネート樹脂およびポリエステル樹脂の含有量の合計100重量部に対して、0.005重量部以上0.15重量部以下である請求項1または2のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリエステル樹脂の含有量が、前記ポリカーボネート樹脂の含有量および前記ポリエステル樹脂の含有量の合計100重量部に対して、20重量部以上80重量部以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いて作製した成形品。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いて作製した樹脂プレート。

【公開番号】特開2012−136642(P2012−136642A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290108(P2010−290108)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】