説明

樹脂組成物、繊維ならびに繊維製品

【課題】害虫防除剤を高濃度に保持可能な樹脂組成物を提供する。
【解決手段】以下の成分(A)、成分(B)および成分(C)を含有する樹脂組成物であって、下記成分(A)と成分(B)の合計を100重量%として、成分(A)1〜99重量%、および成分(B)99〜1重量%であり、下記成分(A)と成分(B)の合計を100重量部としたときの成分(C)が1.5〜50重量部含有されている樹脂組成物。
成分(A):オレフィンに基づく単量体単位を含有し、JIS K 7122に従う示差走査熱量測定において、結晶の融解熱量が30J/g以上である結晶融解ピーク、および結晶化熱量が30J/g以上である結晶化ピークのどちらも−50〜200℃の範囲に観測されない重合体である非晶性または低結晶性オレフィン系重合体
成分(B):結晶性プロピレン系重合体
成分(C):害虫防除剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填剤を用いることなく、害虫防除剤を高濃度に保持可能な樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防殺虫剤、昆虫成長抑制剤、忌避剤などの害虫防除剤を徐放する手段として、熱可塑性樹脂と害虫防除剤を混練、または熱可塑性樹脂に害虫防除剤を含浸させた樹脂組成物を用いて、フィルムやシートなどに成形後、該成形体から害虫防除剤を放出する方法が知られている。害虫防除剤の熱可塑性樹脂に対する溶解度は、樹脂、害虫防除剤の選定によっても多少異なるが、通常、0.1〜5重量%程度と低いため、上記方法で作成したフィルムやシートでは、長期間の害虫防除剤の徐放が期待できない場合があった。そこで、長期間の害虫防除剤の徐放を可能にするために、害虫防除剤を多く含有させる手法が求められていた。例えば特許文献1には、熱可塑性樹脂と充填剤より得られた成形体を延伸させ、発生したミクロボイドに害虫防除剤などの薬剤を多く含浸させることにより、長期間の害虫防除剤の徐放が可能となることが記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開平7−10708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された手法では、ミクロボイドを発生させるために、充填剤を用いる必要があることから、充填剤の添加量によっては、透明性に優れた成形体を得ることが困難であったり、長時間の加工下では成形体にメヤニなどの外観不良物が付着するなどの、充填剤添加による弊害が発生する場合もあった。
かかる現状において、本発明の解決しようとする課題、即ち、本発明の目的は、充填剤を用いることなく、害虫防除剤を高濃度に保持可能な樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち本発明は、以下の成分(A)、成分(B)および成分(C)を含有する樹脂組成物において、下記成分(A)と成分(B)の合計を100重量%として、成分(A)1〜99重量%、および成分(B)99〜1重量%であり、下記成分(A)と成分(B)の合計を100重量部としたときの成分(C)が1.5〜50重量部含有されている樹脂組成物に関するものである。
成分(A):オレフィンに基づく単量体単位を含有し、JIS K 7122に従う示差走査熱量測定において、結晶の融解熱量が30J/g以上である結晶融解ピーク、および結晶化熱量が30J/g以上である結晶化ピークのどちらも−50〜200℃の範囲に観測されない重合体である非晶性または低結晶性オレフィン系重合体
成分(B):結晶性プロピレン系重合体
成分(C):害虫防除剤
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、充填剤を用いることなく、害虫防除剤を高濃度に保持可能な樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の成分(A)の非晶性または低結晶性オレフィン系重合体とは、オレフィンに基づく単量体単位を含有する重合体であって、結晶の融解熱量が30J/g以上である結晶融解ピーク、および結晶化熱量が30J/g以上である結晶化ピークのどちらも−50〜200℃の範囲に観測されない重合体である。樹脂組成物がこのような非晶性または低結晶性オレフィン系重合体を含有しないか、たとえ含有しても、その量が本発明で規定する量の下限値よりも少ないと、害虫防除剤を高濃度に保持できない場合がある。以下、成分(A)を非晶性または低結晶性オレフィン系重合体(A)と称することもある。
【0008】
本発明の非晶性または低結晶性オレフィン系重合体(A)を構成するオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、炭素原子数4〜20のα−オレフィンが挙げられ、炭素原子数4〜20のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ナノデセン、1−エイコセン等の直鎖状のα−オレフィン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン、2,2,4−トリメチル−1−ペンテン等の分岐状のα−オレフィン等が挙げられる。
【0009】
本発明の非晶性または低結晶性オレフィン系重合体(A)としては、例えば、エチレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−1−へプテン共重合体、エチレン−1−ノネン共重合体、エチレン−1−デセン共重合体、エチレン−1−ウンデセン共重合体、エチレン−1−ドデセン共重合体、エチレン−1−トリデセン共重合体、エチレン−1−テトラデセン共重合体、エチレン−1−ペンタデセン共重合体、エチレン−1−ヘキサデセン共重合体、エチレン−1−ヘプタデセン共重合体、エチレン−1−オクタデセン共重合体、エチレン−1−ナノデセン共重合体、エチレン−1−エイコセン共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−1−オクテン共重合体、プロピレン−1−へプテン共重合体、プロピレン−1−ノネン共重合体、プロピレン−1−デセン共重合体、プロピレン−1−ウンデセン共重合体、プロピレン−1−ドデセン共重合体、プロピレン−1−トリデセン共重合体、プロピレン−1−テトラデセン共重合体、プロピレン−1−ペンタデセン共重合体、プロピレン−1−ヘキサデセン共重合体、プロピレン−1−ヘプタデセン共重合体、プロピレン−1−オクタデセン共重合体、プロピレン−1−ナノデセン共重合体、プロピレン−1−エイコセン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−プロピレン−1−オクテン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体等が挙げられ、1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。成分(A)として好ましくは、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−1−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−プロピレン−1−オクテン共重合体等が挙げられ、より好ましくは、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、さらに好ましくはプロピレン−1−ブテン共重合体である。
【0010】
本発明の非晶性または低結晶性オレフィン系重合体(A)は、オレフィン以外の単量体に基づく単量体単位を含有していてもよく、オレフィン以外の単量体としては、例えば、ビニル芳香族化合物等が挙げられる。オレフィン以外の単量体に基づく単量体単位の含有量は、非晶性または低結晶性オレフィン系共重合体全体を100モル%としたとき、好ましくは20モル%以下である。
【0011】
オレフィン以外の単量体であるビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、フルオロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0012】
本発明の非晶性または低結晶性オレフィン系重合体(A)は、害虫防除剤を高濃度に保持する観点から、下式(1)を満たす重合体であることが好ましい。
0≦[x/(x+y)]<0.6 (1)
(上式(1)において、xは成分(A)のエチレンに基づく単量体単位の含有量(モル%)を表し、yは成分(A)中の炭素原子数4〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位の含有量(モル%)を表す。ただし、成分(A)全体を100モル%とする。)
【0013】
本発明の非晶性または低結晶性オレフィン系重合体(A)は、害虫防除剤を高濃度に保持する観点から、JIS K 7122に従う示差走査熱量測定において、結晶の融解熱量が1J/g以上である結晶融解ピーク、および結晶化熱量が1J/g以上である結晶化ピークのどちらも−50〜200℃の範囲に観測されないことが好ましい。
【0014】
本発明の非晶性または低結晶性オレフィン系重合体(A)の分子量分布は、得られる樹脂組成物のべたつきを低減する観点から、好ましくは1〜4であり、より好ましくは1.5〜3である。分子量分布は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)であり、ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)によって、標準ポリスチレンを分子量標準物質として測定される。
【0015】
本発明の非晶性または低結晶性オレフィン系重合体(A)の135℃のテトラリン溶媒中で測定される極限粘度[η]は、得られる樹脂組成物のべたつきを低減する観点から、好ましくは0.1dl/g以上であり、加工時のトルクネックによる加工不良を抑制する観点から、好ましくは10dl/g以下であり、より好ましくは0.5〜5dl/gである。
【0016】
本発明の非晶性または低結晶性オレフィン系重合体(A)の重合方法としては、例えば、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等を採用すること可能であり、所定の単量体をメタロセン触媒によって重合することによって製造することができる。メタロセン触媒としては、例えば、特開昭58−19309号公報、特開昭60−35005号公報、特開昭60−35006号公報、特開昭60−35007号公報、特開昭60−35008号公報、特開昭61−130314号公報、特開平3−163088号公報、特開平4−268307号公報、特開平9−12790号公報、特開平9−87313号公報、特開平11−80233号公報、特表平10−508055号公報等に記載のメタロセン系触媒を挙げることができる。また、メタロセン触媒を用いた非晶性または低結晶性オレフィン系重合体の製造方法として特に好ましくは、欧州特許出願公開第1211287号明細書に記載の製造方法である。
【0017】
本発明の結晶性プロピレン系重合体(B)は、プロピレンに基づく単量体単位を含有する重合体であって、JIS K 7122に従う示差走査熱量測定において、結晶の融解熱量が30J/g以上の結晶融解ピーク、および/または結晶化熱量が30J/g以上の結晶化ピークが−50〜200℃の範囲に観測される重合体である。得られる樹脂組成物のべたつきを低減する観点から、結晶性プロピレン系重合体(B)は、結晶の融解熱量が50J/g以上である結晶融解ピーク、または結晶化熱量が50J/g以上である結晶化ピークが−50〜200℃の範囲に観測される重合体であることが好ましい。得られる樹脂組成物のべたつきを低減する観点から、結晶化ピークが観測される温度は、好ましくは50〜180℃であり、より好ましくは70〜160℃である。また、−50〜200℃の範囲に複数の結晶化ピークが観測されるとき、それらの結晶融解ピークの中でピーク温度が最大である結晶融解ピークが観測される温度は、得られる樹脂組成物のべたつきを低減する観点から、好ましくは50〜180℃であり、より好ましくは70〜160℃である。
【0018】
本発明の結晶性プロピレン系重合体(B)は、通常、プロピレンに基づく単量体単位の含有量が結晶性プロピレン系重合体(B)の全重量100重量%に対して50重量%以上の重合体であり、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、プロピレンと炭素原子数4〜20のα−オレフィンのランダムまたはブロック共重合体などを例示することができる。α−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ナノデセン、1−エイコセン等の直鎖状のα−オレフィン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン、2,2,4−トリメチル−1−ペンテン等の分岐状のα−オレフィン等を例示することができる。結晶性プロピレン系重合体(B)として、好ましくは、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体であり、より好ましくは、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体である。また、これらの重合体を単独で用いてもよく、少なくとも2種を併用してもよい。
【0019】
本発明の結晶性プロピレン系重合体(B)の製造方法としては、公知の重合用触媒を用いる公知の重合方法が挙げられる。公知の重合用触媒としては、例えば、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系錯体や非メタロセン系錯体を用いる錯体系触媒等が挙げられ、公知の重合方法としては、例えば、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等が挙げられる。また、結晶性プロピレン系重合体(B)として、市販の該当品を用いても良い。
【0020】
本発明の害虫防除剤(C)とは、防殺虫剤、昆虫成長抑制剤、忌避剤等の防虫活性がある化合物があげられる。
【0021】
防殺虫剤としては、ピレスロイド系化合物、有機リン系化合物、カーバメート系化合物、フェニルピラゾール系化合物等があげられる。ピレスロイド系化合物としては、ペルメトリン、アレスリン、d−アレスリン、dd−アレスリン、d−テトラメトリン、プラレスリン、d−フェノトリン、d−レスメトリン、エムペントリン、フェンバレレート、エスフェンバレレート、フェンプロパスリン、シハロトリン、エトフェンプロクス、トラロメスリン、エスビオスリン、ベンフルスリン、テラレスリン、デルタメスリン、フェノトリン、テフルトリン、ビフェントリン、シフルトリン、シペルメトリン、アルファシペルメトリン等があげられ、有機リン系化合物としては、フェニトロチオン、ジクロルボス、ナレド、フィンチオン、シアホス、クロロピリホス、ダイアジノン、カルクロホス、サリチオン、ダイアジノン等があげられ、カーバメート系化合物としては、メトキシジアゾン、プロポクスル、カルバリル、フェノブカルブ等が挙げられる。
【0022】
昆虫成長制御剤としては、ピリプロキシフェン、メソプレン、ヒドロプレン、ジフルベンズロン、シロマジン、フェノキシカーブ、ルヌェヌロン等を例示することができる。これらを単独で用いてもよく、少なくとも2種を併用してもよい。
【0023】
忌避剤としては、ジエチルトルアミド、ジブチルフタレート等があげられる。
【0024】
本発明の害虫防除剤(C)は、単独または2種以上を混合して用いることができる。また、防虫活性の効果を高める役割をもつ化合物を併用してもよい。該化合物としては、ピペロニルブトキサイド、MGK264、オクタクロロジプロピルエーテル等があげられる。
【0025】
本発明の害虫防除剤(C)としては、防殺虫剤が好ましく、ピレスロイド系化合物がより好ましく、25℃での蒸気圧が1×10-6mmHg未満であるピレスロイド系化合物が更に好ましい。該25℃での蒸気圧が1×10-6mmHg未満であるピレスロイド系化合物としては、ピリプロキシフェン、レスメスリン、ペルメトリン等があげられる。蒸気圧の低い害虫防除剤を用いることにより、長期間に渡って害虫防除効果を維持する樹脂組成物となる。
【0026】
本発明の樹脂組成物は、JIS K 7122に従う示差走査熱量測定において、結晶の融解熱量が30J/g以上である結晶融解ピーク、および結晶化熱量が30J/g以上である結晶化ピークのどちらも−50〜200℃の範囲に観測されない重合体である非晶性または低結晶性オレフィン系重合体(A)、結晶性プロピレン系重合体(B)および害虫防除剤(C)を含有し、成分(A)と成分(B)の合計を100重量%として、成分(A)1〜99重量%、および成分(B)99〜1重量%であり、成分(A)と成分(B)の合計を100重量部としたときの成分(C)が1.5〜50重量部含有されている樹脂組成物である。成分(A)と成分(B)の合計を100重量%としたときの、成分(A)と成分(B)の含有量としては、好ましくは、成分(A)1〜70重量%、および成分(B)99〜30重量%であり、より好ましくは成分(A)1〜50重量%、および成分(B)99〜50重量%である。該樹脂組成物における(B)の含有量が1重量%より少ないと、本発明で得られる樹脂組成物のハンドリングに劣る場合があり、(B)の含有量が99重量%より多いと害虫防除剤を高濃度に保持できない場合がある。
成分(A)と成分(B)の合計を100重量部としたときの成分(C)の含有量は、好ましくは、1.5〜20重量部であり、より好ましくは1.5〜10重量部である。該樹脂組成物における(C)の含有量が1.5重量部より少ないと害虫防除剤による効果が得られ難い場合があり、50重量部より多いと成分(A)と成分(B)に対する害虫防除剤の溶解度を越えてしまい、本発明で得られる樹脂組成物のハンドリングに劣る場合がある。
【0027】
本発明で得られる樹脂組成物のメルトフローレイトは、試験温度230℃、試験荷重21.2Nで測定して、好ましくは0.1g/10分以上100g/10分未満であり、より好ましくは0.5g/10分以上70g/10分以下である。メルトフローレイトが前記範囲にある樹脂組成物は、加工性に優れるものである。
【0028】
本発明の樹脂組成物は、発明の特性を本質的に損なわない範囲において、必要に応じて、変性ポリオレフィン系樹脂、ロジン系樹脂、ポリテルペン系樹脂、合成石油樹脂、クマロン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂、スチレン系樹脂、イソプレン系樹脂等の他の樹脂と組み合わせて用いることができる。
【0029】
変性ポリオレフィン系樹脂とは、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、アクリル酸、メタクリル酸、テトラヒドロフタル酸、グリシジルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等の変性用化合物で変性されたポリオレフィンである。ここで用いられるポリオレフィン系樹脂は、公知のポリオレフィンでよいが、例えば、上記エチレン系樹脂、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、コモノマーを含むランダムタイプポリプロピレン、多段重合によるブロックタイプポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(1−ブテン)、上記非晶性α−オレフィン系共重合体等が挙げられる。
【0030】
ロジン系樹脂としては、例えば、天然ロジン、重合ロジン、部分水添ロジン、完全水添ロジン、これらロジンのエステル化物(例えば、グリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル、エチレングリコールエステル、メチルエステル)、ロジン誘導体(例えば、不均化ロジン、フマル化ロジン)が挙げられる。
【0031】
ポリテルペン系樹脂としては、例えば、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン等の環状テルペンの単独重合体、上記環状テルペンの共重合体、上記環状テルペンと、フェノール、ビスフェノール等のフェノール系化合物との共重合体(例えば、α−ピネン−フェノール樹脂、ジペンテン−フェノール樹脂、テルペン−ビスフェノール樹脂等のテルペン−フェノール系樹脂)、上記環状テルペンと芳香族モノマーとの共重合体である芳香族変性テルペン樹脂が挙げられる。
【0032】
合成石油樹脂としては、例えば、ナフサ分解油のC5留分、C6〜C11留分およびその他オレフィン系留分の単独重合体や共重合体、これらの単独重合体や共重合体の水添物である脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂環式系石油樹脂、脂肪族−脂環式共重合体が挙げられる。合成石油樹脂として、さらに、上記のナフサ分解油と上記のテルペンとの共重合体や、該共重合体の水添物である共重合系石油樹脂が挙げられる。
【0033】
ナフサ分解油の好ましいC5留分としては、例えば、イソプレン、シクロペンタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン等のメチルブテン類、1−ペンテン、2−ペンテン等のペンテン類、ジシクロペンタジエンが挙げられる。C6〜C11留分として好ましくは、インデン、スチレン、o−ビニルトルエン、m−ビニルトルエン、p−ビニルトルエン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン等のメチルスチレン類、メチルインデン、エチルインデン、ビニルキシレン、プロペニルベンゼンである。その他オレフィン系留分として好ましくは、ブテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ブタジエン、オクタジエンである。
【0034】
クロマン系樹脂としては、例えば、クロマンの単独重合体またはクロマンとインデンの共重合体等が挙げられる。
【0035】
フェノール系樹脂としては、例えば、アルキルフェノール樹脂、アルキルフェノールとアセチレンとの縮合によるアルキルフェノール−アセチレン樹脂およびこれら樹脂の変性物が挙げられる。ここで、これらフェノール系樹脂としては、フェノールを酸触媒でメチロール化したノボラック型樹脂や、アルカリ触媒でメチロール化したレゾール型樹脂のいずれであってもよい。
【0036】
キシレン系樹脂としては、例えば、m−キシレンとホルムアルデヒドとからなるキシレン−ホルムアルデヒド樹脂や、これに第3成分を添加して反応させた変性樹脂が挙げられる。
【0037】
スチレン系樹脂としては、例えば、スチレンの低分子量重合体、α−メチルスチレンとビニルトルエンとの共重合体、スチレンとアクリロニトリルとインデンとの共重合体、スチレンとブタジエンの共重合体、スチレンとエチレンブチレンの共重合体が挙げられる。
【0038】
イソプレン系樹脂としては、例えば、イソプレンの二量化体であるC10脂環式化合物とC10鎖状化合物とを共重合して得られる樹脂が挙げられる。
【0039】
本発明の樹脂組成物は、発明の特性を本質的に損なわない範囲において、必要に応じて、充填剤以外の添加剤を1種類以上含有していてもよい。前記添加剤としては、酸化防止剤、抗ブロッキング剤、滑剤、帯電防止剤、耐候安定剤、顔料、加工性改良剤、金属石鹸等が挙げられる。
【0040】
本発明の樹脂組成物を作成するにあたり、樹脂成分である成分(A)と成分(B)と害虫防除剤である成分(C)の混合方法は、特に限定されるものではないが、例えば、害虫防除剤が熱的に安定な場合には、害虫防除剤と、樹脂成分である成分(A)と成分(B)とを、ロール型混練機、バンバリ−型混練機などの混練機や、1軸または2軸押出機を用いて混合することができる。また、樹脂成分である成分(A)と成分(B)を害虫防除剤である成分(C)に浸し、樹脂組成物を得ることもできる。
【0041】
本発明の樹脂組成物は、高濃度で害虫防除剤を含有することができるため、該樹脂組成物を用いて得られる各種成形品は、長期間に渡って害虫防除剤を放出することができる。
【0042】
本発明で得られる樹脂組成物は、各種成形品に成形して使用することができ、とりわけ繊維として好適に用いられる。ここで繊維とは、モノフィラメントまたはマルチフィラメントのことをいう。
【0043】
モノフィラメントとは、1本の単糸からなる連続糸である。通常モノフィラメントは、ひとつのダイに数十から数百個ある紡糸ノズルから溶融押出ししたフィラメントを一本ずつ冷却、延伸したものを引取り製造される。モノフィラメントは、釣り糸、ブラシ、テニスラケットのガット、漁網等として用いられている。
【0044】
モノフィラメントの断面形状は特に限定はなく、円形、中空、扁平、正方形、半月状、三角形、5角以上の多角形などいかなる断面形状を有するものでよい。さらに、芯鞘型、海島型などの複合モノフィラメントであってもよい。本発明の繊維がモノフィラメントである場合、50〜1000デニールがよく、用途によって適宜選択できる。
【0045】
マルチフィラメントとは、数本から数十本のフィラメントを撚り合わせて1本の糸とするもので、ロープ、ネット、カーペットのパイル素材、不織布の原糸等に用いられる。
【0046】
マルチフィラメントの製造方法は、次のような方法があげられる。まず、紡糸ノズルから吐出された多数の溶融フィラメントを、冷却ゾーンを通過させて冷却する。ここでの冷却は単糸フィラメントが互いに融着しない程度でよく、冷却後、オイリングローラーにより油剤が付与される。未延伸糸を巻き取った後、または続けて延伸工程において撚り(ドラフト)をかけて引取り製造される。
【0047】
本発明の繊維がマルチフィラメントである場合、その単繊維は1〜100デニールであり、トータルとしては50〜500デニールがよく、用途によって適宜選択できる。
【0048】
樹脂組成物を溶融押出しする時の温度は、該樹脂組成物が劣化せず、糸状に成形加工できる範囲であり、かつ樹脂組成物中の成分(C)である害虫防除剤が分解しない範囲において、できるだけ高い方が好ましく、通常200〜300℃であり、220〜280℃が好ましい。また、使用されるノズルは各吐出された多数の溶融フィラメントが均一に冷却される配列が好ましい。
【0049】
本発明の樹脂組成物から得られる繊維は、衣類、家庭用品、日用雑貨、アウトドア用品、農林水産用品、衛生用品などの防虫機能を有する繊維製品に利用することができる。
【0050】
家庭用品や日用雑貨としては例えば、蚊帳、防虫網、布団カバー、布団袋、カーテン、クッション、座布団、ソファカバー、流し台用マット、浴室用マット、洗面台用マット、便所用マット、便座カバー、衣装カバー、敷物などがあげられる。
【0051】
農林水産用品としては例えば、防虫ネット、害虫防除シート、漁網など、アウトドア用品としては、テント、ハンモック、ロープ、寝袋など、衛生用品としては、マスク、絆創膏、包帯などがあげられる。
【0052】
なかでも特に、蚊帳として用いた場合は、マラリアなどの感染症を媒介する蚊が繊維表面の害虫防除剤と接触することで殺虫効果を奏する。このような殺虫方法は、環境に安全な駆除方法であり、好ましい。
【0053】
本発明で得られる樹脂組成物は、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、インフレーション成形、モールドスタンピング成形等の公知の成形方法により、シート、フィルム、輸液ボトル、パイプ、ホース、電線被覆、玩具や文具等の雑貨、自動車材料、家電材料等の広範な用途に適用することもできる。
【実施例】
【0054】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
[I]測定方法
物性測定は、下記のとおりに行った。
(1)メルトフローレイト(単位:g/10分)
JIS K 7210に従い、試験温度230℃、試験荷重21.18Nで測定した。
(2)非晶性α−オレフィン系共重合体に含有される各単量体に基づく単量体単位の含有量(単位:モル%)
プロピレン−1−ブテン重合体中の各単量体単位の含有量は、核磁気共鳴装置(Bruker社製 商品名AC−250)を用いて、13C−NMRスペクトルの測定結果に基づき算出した。具体的には、13C−NMRスペクトルのプロピレンに基づく単量体単位に由来するメチル炭素のスペクトル強度と1−ブテンに基づく単量体単位に由来するメチル炭素のスペクトル強度の比からプロピレンに基づく単量体単位と1−ブテンに基づく単量体単位の組成比を算出した。
(3)結晶融解ピーク
JIS K 7121に従い、示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)社製DSC220C:入力補償DSC)によって測定を行った。具体的には、状態調整として、試料重合体を室温から200℃まで30℃/分で昇温し、200℃で5分間保持した。次に、10℃/分で−100℃まで降温し、−100℃で5分間保持した後、−100℃から200℃まで10℃/分で昇温し、結晶融解ピークの測定を行った。
(4)分子量分布(Mw/Mn)
ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法によって測定した。測定装置としてはWaters社製150C/GPCを用い、測定溶媒としてはo−ジクロロベンゼンを用い、カラムとしては昭和電工(株)社製Sodex Packed ColumnA−80M(2本)を用い、分子量標準物質としては標準ポリスチレン(東ソー(株)社製、分子量68〜8,400,000)を用い、溶出温度140℃、溶出溶媒流速1.0ml/分の条件で、試料重合体約5mgを5mlのo−ジクロロベンゼンに溶解したものを400μl注入し、示差屈折検出器にてポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定し、両者の比である分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
(5)極限粘度([η]、単位:dl/g)
ウベローデ粘度計を用いて、135℃のテトラリン溶媒中で測定を行った。非晶性α−オレフィン系共重合体の濃度(c)が、0.6、1.0、1.5mg/mlであるテトラリン溶液を調製し、試料溶液の液面が標線間を流過する時間を3回測定した。それぞれの濃度で3回繰り返し測定し、得られた3回の値の平均値をその濃度における比粘度(ηsp)とし、ηsp/cのcをゼロ外挿した値を極限粘度([η])として求めた。
(6)樹脂組成物中に含有された害虫防除剤量
成分(A)と成分(B)を混練後、0.5mm厚のプレスシートを作成し、該プレスシートを約0.5gの重さになるようサンプリングし、正確な重量を測定する(W1)。成分(C)としてペルメトリンを使用し、サンプル瓶に50ml秤量し、約0.5gにサンプリングしたプレスシートを浸す。1日経時ごとに、害虫防除剤中に浸したプレスシートを取り出し、プレスシートをアルコール洗浄した後、精秤し、プレスシートを再び害虫防除剤中に浸して、作業を繰り返す。重量変化が無くなった時点で、樹脂組成物中の成分(C)が飽和濃度に達したとし、その重量(W2)を記録する。下記式(2)を用い、樹脂組成物中の成分(C)の含有量(S)を求めた。この値が大きいほど、成分(C)の含有量が多く、高濃度に保持していることになる。
S=(W2−W1)/W1×100 (2)
【0055】
実施例1
[成分(A)非晶性または低結晶性オレフィン系重合体の製造]
攪拌機を備えた100LのSUS製反応器中で、プロピレンおよび1−ブテンを、分子量調節剤として水素を用い、以下の方法で連続的に重合させて、非晶性α−オレフィン系共重合体に相当するプロピレン−1−ブテン共重合体を得た。
反応器の下部から、重合溶媒としてヘキサンを100L/時間の供給速度で、プロピレンを24.00kg/時間の供給速度で、1−ブテンを1.81kg/時間の供給速度で、それぞれ連続的に供給した。
また同様に、重合用触媒として、ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライドを0.005g/時間の供給速度で、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを0.298g/時間の供給速度で、トリイソブチルアルミニウムを2.315g/時間の供給速度で、それぞれ連続的に供給した。
反応器内部の反応液の容量が常に100Lを維持するように、反応器の上部から反応液を連続的に抜き出した。
重合反応は、反応器の外部に取り付けられたジャケットに冷却水を循環させることによって、45℃で行った。
反応器の上部から連続的に抜き出された反応液に、少量のエタノールを添加して重合反応を停止させた後、未反応の単量体を除去し、次いで反応液に含まれる重合用触媒の残渣を除去するため水洗浄し、最後に大量の水中でスチームによって重合溶媒を除去することによって、プロピレン−1−ブテン共重合体(以下、重合体(A1)と称する。)を得、これを80℃で1昼夜減圧乾燥した。重合体(A1)のプロピレンに基づく単量体単位の含有量は94.5モル%、1−ブテンに基づく単量体単位の含有量は5.5モル%、エチレンに基づく単量体単位の含有量は0.0モル%であった。また、重合体(A1)の[η]は2.3dl/gであり、分子量分布(Mw/Mn)は2.2であり(Mw=420000、Mn=191000)、結晶融解ピーク、結晶化ピークはいずれも観測されなかった。
【0056】
[成分(A)と成分(B)の混合物の作成]
成分(A)として上記重合体(A1)30重量%と、成分(B)としてエチレン−プロピレンランダム共重合体(住友化学(株)製 ノーブレンS131)70重量%を配合し、2軸のバッチ式混練機ブラベンダープラスチコーダー(ブラベンダー社製)を用いて、温度220℃、スクリュー回転数100rpmで5分間混練を行った。得られた溶融体を230℃の熱プレス成形によって厚み0.5mmの試験片を作成し、重量約0.5gになるようサンプリングを行った。
【0057】
[樹脂組成物の作成]
上記で得られた成分(A)と成分(B)のプレス成形品を、(6)記載の通り、成分(C)のペルメトリン(住友化学(株)製、商品名:エクスミン、25℃での蒸気圧:5.5×10-7mmHg)中に浸し、経時後、式(2)を用いて、樹脂組成物中の成分(C)の含有量(S)を求めた。得られた値を表1に示す。
【0058】
実施例2
成分(A)として上記重合体(A1)を50重量%と成分(B)としてエチレン−プロピレンランダム共重合体(住友化学(株)製 ノーブレンS131)を50重量%で配合した以外は実施例1と同様にした。得られた物性値を表1に示す。
【0059】
実施例3
成分(A)として上記重合体(A1)を70重量%と成分(B)としてエチレン−プロピレンランダム共重合体(住友化学(株)製 ノーブレンS131)を30重量%で配合した以外は実施例1と同様にした。得られた物性値を表1に示す。
【0060】
比較例1
成分(B)としてプロピレン系樹脂(住友化学(株)製 ノーブレンFS2011DG3)のみ100重量%を用いた以外は実施例1と同様にした。得られた物性値を表1に示す。
【0061】
【表1】


成分(B)
エチレン−プロピレンランダム共重合体(住友化学(株)製 ノーブレンS131):融解熱量が60J/Gの結晶融解ピークが130℃に観測された。
プロピレン系樹脂(住友化学(株)製 ノーブレンFS2011DG3):融解熱量が110J/Gの結晶融解ピークが158℃に観測された
【0062】
本発明の要件を満足する実施例1〜3の樹脂組成物は、充填剤を含有することなく、害虫防除剤を高濃度に保持可能である。
【0063】
実施例4
本発明の樹脂組成物を用いてマルチフィラメントを作成し、害虫防除剤のブリード性を評価した。
[樹脂ペレットの作成]
二軸押出機(直径43mm、L/D=30)を用いて、害虫防除剤含有樹脂ペレットを得た。
上記重合体(A1)を7重量%、プロピレン系樹脂(MFR13)91重量%、ペルメトリン2重量%の配合比となるよう混合したものを押出機のホッパーから投入し、溶融混練ゾーン200℃、ダイス200℃、吐出量20kg/時間の条件で直径4mmの5個のダイス孔からストランドを押出し、冷却水槽に通して冷却した後、ペレタイザーで切断してペレット状にした。
【0064】
[マルチフィラメントの作成]
上記ペレットを一軸押出機に投入して220℃で溶融させ、直径0.5mmの円形で、同心円状に並んだ24個のダイス孔から24本の糸を押出し、オイリングしながら300m/分の速度で巻取り、270デニール(単糸11.2デニール)の原糸を得た。次に40m/分で繰り出した原糸を110℃の熱板上で加熱しながら120m/分で3倍に延伸して撚りをかけ、90デニール(単糸3.7デニール)の延伸糸とした。このようにして害虫防除剤2重量%を含有するマルチフィラメントを得た。得られたマルチフィラメントは、害虫防除剤のにじみ出しでべたつくことなく、各種の織物に適した糸であった。
【0065】
[害虫防除剤のブリード性評価]
上記で得たマルチフィラメントを50m(0.5g)切り取り糸束にしたものをガラス容器に入れ、10ccのエタノールを加えて1分間振とうして予め糸表面を洗浄した。40℃のオーブンで1日加温した後、10ccのエタノールで1分間振とうして糸表面を洗浄する工程を2日間繰り返した。この1日後と2日後のエタノール洗浄液の272nmにおける吸光度を測定し、検量線を用いてペルメトリンの濃度を求めた。その結果、1日後に糸束の表面にブリードしていたペルメトリンは4300μg/g、2日後は4000μg/gであり、洗浄後のブリード回復性は良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)、成分(B)および成分(C)を含有する樹脂組成物であって、下記成分(A)と成分(B)の合計を100重量%として、成分(A)1〜99重量%、および成分(B)99〜1重量%であり、下記成分(A)と成分(B)の合計を100重量部としたときの成分(C)が1.5〜50重量部含有されている樹脂組成物。
成分(A):オレフィンに基づく単量体単位を含有し、JIS K 7122に従う示差走査熱量測定において、結晶の融解熱量が30J/g以上である結晶融解ピーク、および結晶化熱量が30J/g以上である結晶化ピークのどちらも−50〜200℃の範囲に観測されない重合体である非晶性または低結晶性オレフィン系重合体
成分(B):結晶性プロピレン系重合体
成分(C):害虫防除剤
【請求項2】
成分(A)が、下記式(1)を満たす重合体である請求項1記載の樹脂組成物。
0≦[x/(x+y)]<0.6 (1)
(上記式(1)において、xは成分(A)のエチレンに基づく単量体単位の含有量(モル%)を表し、yは成分(A)の炭素原子数4〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位の含有量(モル%)を表す。ただし、成分(A)全体を100モル%とする。)
【請求項3】
成分(A)が、JIS K 7122に従う示差走査熱量測定において、結晶の融解熱量が1J/g以上である結晶融解ピーク、および結晶化熱量が1J/g以上である結晶化ピークのどちらも−50〜200℃の範囲に観測されない非晶性オレフィン系重合体である請求項1または請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物からなる繊維。
【請求項5】
請求項4に記載の繊維からなる繊維製品。
【請求項6】
蚊帳である請求項5に記載の繊維製品。

【公開番号】特開2009−161739(P2009−161739A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310783(P2008−310783)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】