説明

樹脂組成物およびそれを用いてなる成形体

【課題】優れた誘電特性、特に極めて小さい誘電正接を有し、寸法安定性に優れる成形体が得られる樹脂組成物、および当該樹脂組成物を用いてなる成形体を提供する。
【解決手段】液晶ポリマーをBa、SmおよびTiを含む複合酸化物からなるフィラーと混合して、樹脂組成物とする。この樹脂組成物を溶融成形して、成形体とする。また、この樹脂組成物を溶媒と混合し、得られる液状組成物を基板に塗布し、その塗膜から溶媒を除去して、フィルムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電特性に優れ、寸法安定性に優れた成形体を得ることができる樹脂組成物およびそれから得られる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
衛星通信機器、携帯電話、PHS等の移動通信、無線LANシステム、あるいは高速道路のETCシステムやGPSなどの車載用通信に代表されるような無線情報通信網の発達に伴い、情報通信機器に使用されるアンテナの需要が急増している。このようなアンテナは、より小型軽量で、かつ安価であることが要求されていることから、アンテナ製造用の基体(以下、「アンテナ用基体」という。)には、熱可塑性樹脂を用いてなる成形体が使用されている。
【0003】
アンテナを製造するに当たっては、上記アンテナ用基体に、電極となり得る導体層を形成する必要がある。この電極の形成手段としては、半田付け、金属メッキ等の手段が採用されるため、アンテナ用基体には、これらの電極形成手段によって、その特性が損なわれない程度の耐久性が要求される。このような特性を満足させるために、アンテナ用基体の製造に使用される熱可塑性樹脂として、液晶ポリマーが注目されている。液晶ポリマーは、高水準の耐熱性と加工性とを併せて有し、低吸水性でもあることから、アンテナ製造に係る耐久性はもとより、アンテナの経時使用に対する耐久性も良好となる。
【0004】
一方、既述のような情報通信機器においては、情報の更なる高密度化に伴って、より高周波域の電磁波を用いる情報通信に対する適合性が検討されており、それにしたがって、より誘電特性に優れたアンテナ用基体が求められるようになってきた。
【0005】
かかるアンテナ用基体に求められる誘電特性としては、高周波領域の電磁波に対して比誘電率が高い(高誘電性である)こと、且つ低誘電正接であることが重要視されている。これは、高誘電性のアンテナ用基体であれば、比較的小型のアンテナにおいても、アンテナ特性を著しく低下させることがないためであり、低誘電正接のアンテナ用基体であると、アンテナ利得が増大する傾向があるためである。高誘電性のアンテナ用基体を得るには、高誘電材料を充填剤(以下、「高誘電材料フィラー」ということがある。)として用い、該高誘電材料フィラーと液晶ポリマーとを含む樹脂組成物からアンテナ用基体を得るといった方法が用いられる。例えば、本出願人は、高誘電性、且つ低誘電正接の成形体が得られる樹脂組成物として、特定の構造単位からなる液晶ポリマーとセラミック粉とを含む樹脂組成物を提案している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−233118号公報
【特許文献2】特開2002−114894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、液晶ポリマーは、その剛直分子鎖が流動方向(以下、場合により「MD方向」という)に対し平行に配向することで優れた流動性を発現するが、その反面、液晶ポリマーは配向方向に対して直角方向(以下、場合により「TD方向」という)の成形収縮率が大きくなるという特性がある。液晶ポリマーの溶融成形において、TD方向の収縮率が大きい場合、得られた成形体は、MD方向とTD方向とに特性差が生じ易くなる。そして、このような成形体に金属層を配して部品を製造しようとすると、金属層と液晶ポリマーからなる成形体との熱膨張差によって、当該部品に大きな反りが発生する傾向があり、また、特にTD方向の成形収縮率が大きい樹脂組成物では所望の寸法の成形体を得ることが比較的困難であり、寸法安定性に劣るという問題があった。
【0008】
特許文献1に記載の樹脂組成物は、極めて誘電正接が小さくなるという優れた誘電特性の成形体が得られるが、成形におけるTD方向の成形収縮率を小さくするという点では必ずしも十分ではなく、当該成形体からアンテナを製造する際に発生する反りを抑制するという点や、所望の寸法の成形体を得るという点で、寸法安定性の改善が求められる。
【0009】
また、特許文献2に記載のように、特定の溶媒に特定量の芳香族液晶ポリマーを溶解させ、該溶液を流延した後、溶媒を除去することにより、成形体として異方性の少ないフィルムを得ることができるが、該フィルムには、誘電特性の改善や、寸法安定性の一層の向上の余地が残されている。
【0010】
そこで、本発明の目的は、優れた誘電特性、特に極めて小さい誘電正接を有し、寸法安定性に優れる成形体が得られる樹脂組成物、および当該樹脂組成物を用いてなる成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、下記〔1〕を提供するものである。
〔1〕 下記成分(A)と下記成分(B)とを含有する樹脂組成物。
(A)液晶ポリマー。
(B)Ba、SmおよびTiを含む複合酸化物からなるフィラー。
【0012】
また、本発明は〔1〕に係る好適な実施形態として、下記の〔2〕〜〔5〕を提供する。
〔2〕 成分(B)が、測定温度23℃、測定周波数1GHzの条件下で求められる比誘電率が50〜200の複合酸化物からなるフィラーである〔1〕の樹脂組成物。
〔3〕 成分(A)が、2価の芳香族基がエステル結合により連結してなるポリエステルであり、上記ポリエステルを構成している全ての2価の芳香族基の合計を100モル%としたとき、2,6−ナフタレンジイル基を30モル%以上含む液晶ポリマーである〔1〕または〔2〕の樹脂組成物。
〔4〕 成分(A)が、2価の芳香族基がエステル結合およびアミド結合により連結してなるポリエステルであり、上記ポリエステルアミドを構成している全ての2価の芳香族基の合計を100モル%としたとき、2,6−ナフタレンジイル基を30モル%以上含む液晶ポリマーである〔1〕または〔2〕の樹脂組成物。
〔5〕 成分(A)が、下記式(i)で示される構造単位、下記式(ii)で示される構造単位および下記式(iii)で示される構造単位からなるポリエステルまたはポリエステルアミドであり、Ar1で表される2価の芳香族基、Ar2で表される2価の芳香族基およびAr3で表される2価の芳香族基の合計を100モル%としたとき、2,6−ナフタレンジイル基を30モル%以上含む液晶ポリマーである〔1〕または〔2〕の樹脂組成物。
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、Ar1は、2,6−ナフタレンジイル基、1,4−フェニレン基および4,4’−ビフェニレン基からなる群から選ばれる2価の芳香族基を表す。Ar2およびAr3は、それぞれ独立に2,6−ナフタレンジイル基、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基および4,4’−ビフェニレン基からなる群から選ばれる2価の芳香族基を表し、Xおよびyは、それぞれ独立にOまたはNHを表す。またAr1、Ar2およびAr3で表される芳香族基は、その芳香環に結合している水素原子の一部が、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基で置換されていてもよい。)
【0015】
〔6〕 成分(A)と成分(B)との合計100容量%に対して、成分(A)の含有量が50〜80容量%である〔1〕〜〔5〕のいずれかの樹脂組成物。
〔7〕 〔1〕〜〔6〕のいずれかの樹脂組成物と溶媒とを含有する液状組成物。
【0016】
また、本発明は上記の樹脂組成物を用いてなる、以下の〔8〕〜〔13〕を提供する。
〔8〕 〔1〕〜〔6〕のいずれかの樹脂組成物からなる成形体。
〔9〕 測定温度23℃、周波数1MHzの条件下で求められる誘電正接が0.01以下である〔8〕の成形体。
〔10〕 〔7〕の液状組成物を基板に塗布し、その塗膜から溶媒を除去してなるフィルム。
〔11〕 測定温度23℃、周波数1MHzの条件下で求められる誘電正接が0.01以下である〔10〕のフィルム。
〔12〕 〔8〕または〔9〕の成形体と電極とを有するアンテナ。
〔13〕 〔10〕または〔11〕のフィルムと電極とを有するアンテナ。
【発明の効果】
【0017】
本発明の樹脂組成物によれば、優れた誘電特性、特に極めて小さい誘電正接を有し、寸法安定性に優れる成形体を得ることができる。例えば、該樹脂組成物から得られる溶融成形体は、特にTD方向の成形収縮率が小さいことから、寸法安定性に優れた成形体を提供することができ、所望の寸法の成形体を得やすいという利点もある。また、該樹脂組成物と溶媒からなる液状組成物は、これを基板に塗布して溶媒を除去することにより、成形体として寸法安定性に優れるフィルムを提供する。さらに、これら成形体に金属層を配して部品を製造する際には、当該部品の反りを十分抑制することが可能となる。したがって、本発明の樹脂組成物はアンテナ用基体の製造用として特に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0019】
<成分(A)液晶ポリマー>
成分(A)に適用する液晶ポリマーとは、サーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるものであり、450℃以下で光学的に異方性を示す溶融体を形成するという特性を有する。具体的には、(1)芳香族ヒドロキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとを組み合わせて重合させて得られる液晶ポリマー、(2)複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合させて得られる液晶ポリマー、(3)芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとを組み合わせて重合させて得られる液晶ポリマー、(4)ポリエチレンテレフタレート等の結晶性ポリエステルに芳香族ヒドロキシカルボン酸を反応させて得られる液晶ポリマー等が挙げられる。また、上記(1)〜(4)において、芳香族ヒドロキシカルボン酸の一部を芳香族アミノカルボン酸に置き換えて得られるポリエステルアミド、芳香族ジオールの一部を、フェノール性水酸基を有する芳香族アミンおよび/または芳香族ジアミンに置き換えて得られるポリエステルアミドも、成分(A)として用いることができる。
【0020】
なお、上記(1)〜(4)の液晶ポリマーを製造するに当たっては、これらの芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸または芳香族ジオールの代わりに、それらのエステル形成性誘導体を使用することも可能であり、該エステル形成性誘導体を用いれば、液晶ポリマーの製造が容易になるという利点がある。また、芳香族ヒドロキシカルボン酸の一部を、芳香族アミノカルボン酸に置き換える場合、芳香族アミノカルボン酸をエステル形成性・アミド形成性誘導体にして液晶ポリマーを製造することもできる。同様に、芳香族ジオールの一部を、フェノール性水酸基を有する芳香族アミンおよび/または芳香族ジアミンに置き換える場合、フェノール性水酸基を有する芳香族アミンおよび/または芳香族ジアミンをエステル形成性・アミド形成性誘導体にして液晶ポリマーを製造することもできる。
【0021】
ここで、エステル形成性誘導体やアミド形成性誘導体について簡単に説明する。分子内にカルボキシル基を有する、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族アミノカルボン酸および芳香族ジカルボン酸の場合は、当該カルボキシル基が高反応性のハロホルミル基やアシルオキシカルボニルなどの基に転化して、酸ハロゲン化物や酸無水物などとなったもの、エステル交換反応やアミド交換反応などによりポリエステルまたはポリエステルアミドを生成するように、当該カルボキシル基がアルコール類やエチレングリコールなどとエステルを形成したもの等を挙げることができる。また、分子内にフェノール性水酸基を有する芳香族ヒドロキシカルボン酸や芳香族ジオールの場合は、エステル交換反応によりポリエステルを生成するように、当該フェノール性水酸基が低級カルボン酸類とエステルを形成したもの等を、エステル形成性誘導体として挙げることができる。同様に、分子内にアミノ基(特に、−NH2で表される基)を有する芳香族アミノカルボン酸、フェノール性水酸基を有する芳香族アミンおよび芳香族ジアミンの場合には、アミノ基を、アミド結合を形成しやすいような反応基に転換したもの等を、アミド形成性誘導体として挙げることができる。
【0022】
さらに、エステル形成性やアミド形成性を阻害しない程度であれば、上記の、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸または芳香族ジオールは、その芳香環に、塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子、メチル基、エチル基などのアルキル基、またはフェニル基などのアリール基を置換基として有していてもよい。同様に、芳香族アミノカルボン酸、フェノール性水酸基を有する芳香族アミンまたは芳香族ジアミンの場合も、その芳香環に、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基を置換基として有していてもよい。同様に、エステル形成性やアミド形成性を阻害しない程度であれば、上記の芳香族アミノカルボン酸、フェノール性水酸基を有する芳香族アミンおよび芳香族ジアミンにおいても、その芳香環に、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基を置換基として有していてもよい。
【0023】
液晶ポリマーを構成する構造単位としては、下記の構造単位を例示することができる。
【0024】
芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位:
【0025】
【化2】

【0026】
上記の構造単位は、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基を置換基として有していてもよい。
【0027】
芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位:
【0028】
【化3】

【0029】
上記の構造単位は、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基を置換基として有していてもよい。
【0030】
芳香族ジオールに由来する構造単位:
【0031】
【化4】

【0032】
上記の構造単位は、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基を置換基として有していてもよい。
【0033】
また、液晶ポリマーがポリエステルアミドである場合、以下に例示するような、芳香族アミノカルボン酸に由来する構造単位、フェノール性水酸基を有する芳香族アミンに由来する構造単位または芳香族ジアミンに由来する構造単位を含む。このような構造単位を含む液晶ポリエステルアミドは、液晶性を十分に維持しながらも、溶媒に対する溶解性が一層優れる傾向にある。
【0034】
芳香族アミノカルボン酸に由来する構造単位:
【0035】
【化5】

【0036】
上記の構造単位は、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基を置換基として有していてもよい。
【0037】
フェノール性水酸基を有する芳香族アミンに由来する構造単位:
【0038】
【化6】

【0039】
上記の構造単位は、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基を置換基として有していてもよい。
【0040】
芳香族ジアミンに由来する構造単位:
【0041】
【化7】

【0042】
上記の構造単位は、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基を置換基として有していてもよい。
【0043】
成分(A)に用いられる液晶ポリマーは、その流動開始温度が270〜400℃であることが好ましく、300〜380℃であることがより好ましい。流動開始温度が270℃未満の液晶ポリマーを成分(A)として用いると、高温環境下において、得られる成形体が変形し易くなったり、半田処理等によりブリスター(膨れ異常)を生じ易くなったりすることがある。一方、流動開始温度が400℃を超える液晶ポリマーの場合には、溶融加工温度が高くなるため、成形体を製造することが比較的困難になり易い。また、400℃以上の溶融加工温度で加工しようとすると液晶ポリマー自身が熱劣化し易くなるという不都合が生じ易い。
【0044】
なお、ここでいう流動開始温度とは、内径1mm、長さ10mmのノズルを持つ毛細管型レオメーターを用い、9.8MPaの荷重において、4℃/分の昇温速度で加熱溶融体をノズルから押し出す時に、溶融粘度が4800Pa・secを示す温度を意味するものであり、該流動開始温度は当技術分野で周知の液晶ポリエステルの分子量を表す指標である(小出直之編、「液晶性ポリマー合成・成形・応用−」、95〜105頁、シーエムシー、1987年6月5日発行を参照)。
【0045】
また、本発明者らは、芳香族基として2,6−ナフタレンジイル基を特定量以上含む液晶ポリマーは、高誘電性フィラーとの相乗効果により、優れた誘電特性、特に低誘電正接化に有効であることを見出した。すなわち、成分(A)として、液晶ポリマーを構成している全ての2価の芳香族基の合計を100モル%としたとき、2,6−ナフタレンジイル基を30モル%以上含む液晶ポリマーは、特に誘電正接を小さくすることに有効であり、さらに2,6−ナフタレンジイル基が40モル%以上である液晶ポリマーがさらに好ましく、50モル%以上である液晶ポリマーが一層好ましい。
【0046】
成分(A)に用いられる液晶ポリマーとしては、2価の芳香族基がエステル結合により連結してなるポリエステル、2価の芳香族基がエステル結合およびアミド結合により連結してなるポリエステルアミドのいずれも使用できるが、得られる成形体の寸法安定性をより一層向上させる観点からは、2価の芳香族基がエステル結合により連結してなるポリエステルが好適である。また、既述のように、該2価の芳香族基は特定量以上の2,6−ナフタレンジイル基を含むと好ましく、特に好ましくは、下記式(i)で示される構造単位(以下、「構造単位(i)」という)、下記式(ii)で示される構造単位(以下、「構造単位(ii)」という)および下記式(iii)で示される構造単位(以下、「構造単位(iii)」という)からなるポリエステルまたはポリエステルアミドであり、Ar1で表される2価の芳香族基、Ar2で表される2価の芳香族基およびAr3で表される2価の芳香族基の合計を100モル%としたとき、2,6−ナフタレンジイル基が30モル%以上の液晶ポリマーである。
【0047】
【化8】

【0048】
式中、Ar1は、2,6−ナフタレンジイル基、1,4−フェニレン基および4,4’−ビフェニレン基からなる群から選ばれる2価の芳香族基を表す。Ar2およびAr3は、それぞれ独立に2,6−ナフタレンジイル基、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基および4,4’−ビフェニレン基からなる群から選ばれる2価の芳香族基を表し、Xおよびyは、それぞれ独立にOまたはNHを表す。またAr1、Ar2およびAr3で表される芳香族基は、その芳香環に結合している水素原子の一部が、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基で置換されていてもよい。
【0049】
また、上記液晶ポリマーは、それを構成する構造単位(i)、構造単位(ii)および構造単位(iii)の合計(以下、「全構造単位合計」ということがある。)を100モル%としたときに、構造単位(i)の合計が30〜80モル%、構造単位(ii)の合計が10〜35モル%、構造単位(iii)の合計が10〜35モル%であることが好ましい。構造単位(i)、構造単位(ii)および構造単位(iii)の、全構造単位合計に対するモル比率(共重合比率)がこの範囲である液晶ポリエステルは、誘電正接を小さくすることに加え、高度の液晶性を発現し、さらに実用的な温度で溶融し得るものとなり、溶融成形が容易となるため好ましい。
【0050】
そして、該液晶ポリマーは、より高度の耐熱性が得られる点で全芳香族液晶ポリマーであることが好ましい。したがって、上記の構造単位(i)、構造単位(ii)および構造単位(iii)以外の構造単位を有さないものであると好ましく、全構造単位合計に対する構造単位(ii)の合計のモル比率と、構造単位(iii)の合計のモル比率とは実質的に等しくなる。
【0051】
全構造単位合計に対する、構造単位(i)の合計のモル比率は40〜70モル%であるとより好ましく、45〜65モル%であると、とりわけ好ましい。
【0052】
一方、全構造単位合計に対する構造単位(ii)の合計のモル比率および構造単位(iii)の合計のモル比率は、それぞれ15〜30モル%であるとより好ましく、それぞれ17.5〜27.5モル%であると、とりわけ好ましい。
【0053】
構造単位(i)は芳香族ヒドロキシカルボン酸から誘導される構造単位であり、構造単位(i)を誘導するモノマーとしては、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、p−ヒドロキシ安息香酸、4−(4−ヒドロキシフェニル)安息香酸が挙げられる。さらに、これらのモノマーのベンゼン環またはナフタレン環に結合している水素原子の一部が、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基で置換されてなるモノマーも用いることができる。この中で、2,6−ナフタレンジイル基を有する構造単位を誘導するモノマーは、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸である。
【0054】
構造単位(ii)は芳香族ジカルボン酸から誘導される構造単位であり、構造単位(ii)を誘導するモノマーとしては、2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸が挙げられる。さらに、これらのモノマーのベンゼン環またはナフタレン環に結合している水素原子の一部が、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基で置換されてなるモノマーも用いることができる。この中で、2,6−ナフタレンジイル基を有する構造単位を誘導するモノマーは、2,6−ナフタレンジカルボン酸である。
【0055】
構造単位(iii)は芳香族ジオール、フェノール性水酸基を有する芳香族アミンまたは芳香族ジアミンから誘導される構造単位である。該芳香族ジオールとしては、2,6−ナフタレンジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシビフェニルが挙げられ、該フェノール性水酸基を有する芳香族アミンとしては、2−アミノ−6−ナフトール、p−アミノフェノール、m−アミノフェノール、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニルが挙げられ、該芳香族ジアミンとしては、2,6−ナフタレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、4,4’−ビフェニレンジアミンが挙げられる。また、これらのモノマーのベンゼン環またはナフタレン環に結合している水素原子の一部が、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基で置換されてなるモノマーも用いることができる。この中で、2,6−ナフタレンジイル基を有する構造単位を誘導するモノマーとは、2,6−ナフタレンジオールである。
【0056】
液晶ポリマーの製造方法としては、種々公知の方法を採用することができるが、例えば、特開2004−256673号公報に開示されている製造方法が、操作が簡便であることから好適に用いられる。
【0057】
かかる公報記載の製造方法を簡単に説明すると、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオールおよび芳香族ジカルボン酸の混合物に脂肪酸無水物を混合し、窒素雰囲気中で、130〜180℃で反応させることにより、芳香族ヒドロキシカルボン酸および芳香族ジオールのフェノール性水酸基を脂肪酸無水物によりアシル化することで、アシル化物(芳香族ヒドロキシカルボン酸アシル化物および芳香族ジオールアシル化物)とする。その後、昇温して反応副生物を反応系外に留去しながら、アシル化物のアシル基と、芳香族ヒドロキシカルボン酸アシル化物および芳香族ジカルボン酸のカルボキシル基とがエステル交換を生じるようにして、重縮合させて液晶ポリエステルを製造する。
【0058】
芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオールおよび芳香族ジカルボン酸の混合物中のフェノール性水酸基とカルボキシル基との比は、0.9〜1.1であることが好ましい。
【0059】
芳香族ジオールおよび芳香族ヒドロキシカルボン酸のフェノール性水酸基の合計に対する脂肪酸無水物の使用量は、0.95〜1.20倍当量が好ましく、1.00〜1.15倍当量がより好ましい。脂肪酸無水物の使用量が少ないと、得られる液晶ポリマーの着色が抑えられる傾向があるが、脂肪酸無水物の使用量が少なすぎると、重縮合時に未反応の芳香族ジオールまたは芳香族ジカルボン酸が昇華し易くなって、反応系が閉塞する傾向がある。一方、脂肪酸無水物の使用量が1.2倍当量を超える場合には、得られる液晶ポリマーの着色が著しくなり、成形体の色調を悪化させる恐れがある。
【0060】
脂肪酸無水物としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水ピバル酸、無水2エチルヘキサン酸、無水モノクロル酢酸、無水ジクロル酢酸、無水トリクロル酢酸、無水モノブロモ酢酸、無水ジブロモ酢酸、無水トリブロモ酢酸、無水モノフルオロ酢酸、無水ジフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水β−ブロモプロピオン酸等が挙げられるが、特に限定されるものでない。これらは2種類以上を混合して用いてもよい。経済性および取り扱い性の観点から、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸が好ましく使用され、無水酢酸がより好ましく使用される。
【0061】
エステル交換(重縮合)反応は、130〜400℃の範囲で0.1〜50℃/分の割合で昇温させながら行うことが好ましく、150〜350℃の範囲で0.3〜5℃/分の割合で昇温しながら行うことがより好ましい。そして、エステル交換(重縮合)反応をより円滑にするために、反応副生物を系外へと留去させることが好ましい。
【0062】
また、このような液晶ポリマーの製造方法は、窒素原子を2原子以上含む複素環状有機塩基化合物の存在下に行ってもよい。このような複素環状有機塩基化合物を用いると、エステル交換(重縮合)反応はより円滑に進行し易くなり、得られる液晶ポリマーの着色を十分抑制できる利点もある。この窒素原子を2原子以上含む複素環状有機塩基化合物としては、例えば、イミダゾール化合物、トリアゾール化合物、ジピリジリル化合物、フェナントロリン化合物、ジアザフェナントレン化合物等を挙げることができる。これらの中でも、アシル化や重縮合に関わる反応性の観点からはイミダゾール化合物が好ましく、入手が容易であることから1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾールがより好ましい。
【0063】
また、エステル交換(重縮合)反応をより促進して重縮合速度を増加させる目的で、上記複素環状有機塩基化合物以外の触媒を併用してもよい。ただし、金属塩等を触媒として使用する場合には、当該金属塩が液晶ポリマーに不純物として残存することになるので、アンテナ等の電子部品を製造するうえでは悪影響を及ぼすことがある。この点においても、上記複素環状有機塩基化合物を用いることは、成分(A)に適用する液晶ポリマーを製造するうえで、特に好適な実施態様である。
【0064】
液晶ポリマーの重合度をさらに向上させる方法としては、エステル交換(重縮合)反応時に反応容器内を減圧するといった方法(減圧重合)や、エステル交換(重縮合)反応後の反応生成物を冷却固化した後、粉末状に粉砕し、得られた粉末を250〜350℃で2〜20時間固相重合する方法等が挙げられる。このような重合方法により液晶ポリマーの重合度を上げることにより、好適な流動開始温度の液晶ポリマーを製造することが容易となる。設備が簡便であることを勘案すると、固相重合を用いることが好ましい。
【0065】
なお既述のように、エステル交換(重縮合)の後に固相重合を行う場合には、エステル交換(重縮合)反応で得られた比較的低分子量のポリマー(以下、「プレポリマー」という)を冷却固化した後に、各種公知の粉砕手段によって粉砕した粉末を用いる。この粉末の粒子径は、平均で0.05mm以上3mm程度以下の範囲が好ましく、0.05mm以上1.5mm程度以下の範囲がより好ましい。粉末の粒子径がこのような範囲であれば、液晶ポリエステルの高重合度化が、より促進されることからより好ましく、0.1mm以上1.0mm程度以下の範囲であれば、粉末粒子間のシンタリングを生じることなく液晶ポリマーの高重合度化が促進されるため、さらに好ましい。そして、このような固相重合を用いれば、液晶ポリマーをより高分子量化して、好適な流動開始温度(270〜400℃)の液晶ポリマーを、比較的短時間で得ることができる。
【0066】
上記のアシル化およびエステル交換反応による重縮合や、その後の減圧重合や固相重合は、窒素等の不活性ガスの雰囲気下で行われることが好ましい。
【0067】
また、液晶ポリマーの製造用のモノマーにおいて、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジオールから選ばれる2,6−ナフタレンジイル基を導入可能なモノマーの全モノマーに対する使用量比を適宜最適化することで、液晶ポリマーに2,6−ナフタレンジイル基を特定量以上導入するが可能となる。
【0068】
<成分(B):複合酸化物からなるフィラー>
本発明に用いられる成分(B)は、Ba、SmおよびTiを含む複合酸化物からなるフィラーであり、これら3種の元素を主として含むものであれば、その他の金属元素を含有させた固溶体もフィラーとして使用することができる。この場合、その他の金属元素とは、例えばLa(ランタン)、Bi(ビスマス)、Nd(ネオジウム)、Pr(プラセオジム)等が挙げられる。
【0069】
ここで、簡単に成分(B)に使用される複合酸化物の製造方法を説明する。複合酸化物を製造するには、固相法や化学的合成法(例えば、気相法や液相法)といった製造方法が挙げられるが、操作が簡便で目的とする組成の複合酸化物が得られやすい点で、固相法が有利である。この固相法に関し簡単に説明すると、Ba、SmおよびTiをそれぞれ含む酸化物や炭酸塩を混合して、高温下で反応させるという方法である。より詳しくは、Ba、SmおよびTiをそれぞれ含む酸化物[酸化バリウム(BaO)、酸化サマリウム(Sm23)および酸化チタン(TiO2)]を準備し、これらを混合して、焼成するという方法や、BaTiO3を生成し得る炭酸バリウム(BaCO3)と酸化チタン(TiO2)との混合物に対して、酸化サマリウム(Sm23)を混合せしめ、それを焼成するという方法が挙げられる。複合酸化物に他の金属元素を含ませる場合には、酸化ランタン(La23)、酸化ネオジム(Nd23)、酸化ニオブ(Nb25)および/または酸化プラセオジム(Pr611)を、上記酸化物[酸化バリウム(BaO)、酸化サマリウム(Sm23)および酸化チタン(TiO2)]に少量混合せしめ、焼成すればよい。焼成温度は800〜1200℃で、使用する酸化物等の原料の種類によって適宜最適化できる。このような固相法に係る固相反応においては、高温、長時間の焼成処理により、複合酸化物が粗大な塊となり易く、この塊を粉砕することで粉末状の複合酸化物とする。なお、塊の粉砕方法は、得られた複合酸化物の種類に応じて、公知の粉砕手段から最適なものを選べばよい。
【0070】
そして、本発明の成分(B)として使用するには、このようにして得られた複合酸化物を造粒または解砕し、必要に応じて分級することにより、液晶ポリエステルと混合性が良好となる平均粒径のフィラーを得ることができる。このようなフィラーは、たとえばレーザー回折粒径測定で測定した場合、その平均粒径0.1〜100μmのフィラーであると好ましい。なお、成分(B)として使用する場合、フィラーの形状は、粒子状、板状、針状等、形状はいずれでもよく、使用する液晶ポリマーの種類により、フィラーの形状は最適なものを選択できるが、フィラー製造の容易さの点で粒子状であることが好ましい。
【0071】
また、得られる成形体の誘電正接をより低くするためには、複合酸化物におけるBaおよびSmの含有当量比を、Ba/Smで表したとき、0<Ba/Sm≦1を満足するものであると好ましく、0.4<Ba/Sm≦1を満足するものであると、さらに好ましい。
【0072】
また、得られる成形体の高誘電率化を達成する面で、成分(B)に使用するフィラーとしては、測定温度23℃、測定周波数1GHzの条件下で測定される比誘電率が50以上200以下の複合酸化物からなるものであると好ましく、比誘電率が100以上200以下の複合酸化物からなるものであるとさらに好ましい。比誘電率が50を下回ると、成形体としたときに大幅な比誘電率の向上が期待できず、例えばアンテナ用基体として用いる場合、当該アンテナ用基体の小型化が困難となる傾向がある。なお、該比誘電率の上限は、実用的な面で200以下が好ましい。なお、かかる比誘電率の測定には、インピーダンスアナライザーを用いればよい。
【0073】
また、Ba、SmおよびTiを主成分として含み、上記のようにして求められる比誘電率50〜200を満足する複合酸化物からなるフィラーの市販品を使用することもできる。かかる市販品の具体例としては、共立マテリアル(株)製「HF−120D」が挙げられる。
【0074】
本発明の樹脂組成物においては、得られる成形体が所望の比誘電率になるようにして、成分(A)と成分(B)との配合比を最適化できる。また、成形体の使用用途に係る他の諸特性(例えば、耐熱性、機械強度など)によって、さらに配合比は調整され、好適な配合比に関しては後述する。なお、配合比は、使用する成分(A)液晶ポリマーと成分(B)フィラーのそれぞれの使用重量と比重とから算出できる。
【0075】
また、成分(B)として使用する際に、フィラーの液晶ポリマーに対する分散性を高める目的で、当該フィラーに表面処理を施してもよい。かかる表面処理には通常、表面処理剤が使用される。該表面処理剤としては公知のものが使用でき、例えばチタネート系カップリング剤、アルミ系カップリング剤、シラン系カップリング剤等のカップリング剤を挙げることができる。
【0076】
<その他の成分>
本発明の樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲であれば、必要な特性に応じて補強剤等の添加剤が含有されていてもよい。ここで添加剤としては、例えばガラス繊維、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維などの繊維状補強材;ホウ酸アルミニウムウィスカー、チタン酸カリウムウィスカーなどの針状の補強材;ガラスビーズ、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ドロマイトなどの無機充填材;フッ素樹脂、金属石鹸類などの離型改良剤;染料、顔料などの着色剤;酸化防止剤;熱安定剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;界面活性剤等が挙げられる。
【0077】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、成分(A)、成分(B)、および必要に応じて上記の添加剤などのその他の成分を混合することにより得られる。
【0078】
本発明の樹脂組成物における、成分(A)と成分(B)との配合比は、既述のとおり、所望の誘電特性が十分に発現され、かつ使用用途に対して必要な諸特性を損なわない範囲で設定する必要がある。アンテナ用基体等に使用する上では、配合される成分(A)と成分(B)との合計量100容量%に対し、成分(A)が50〜90容量%であると好ましく、50〜80容量%であるとさらに好ましい。
【0079】
次に、本発明の樹脂組成物の調製方法について説明する。本発明の樹脂組成物を得る調製方法において、各原料成分を溶融混練できるのであれば、その混合手段は特に限定されない。具体的には、成分(A)と成分(B)、さらに必要に応じて添加されるその他の成分とを、各々別々に溶融混合機に供給する方法、これらの原料成分を乳鉢、ヘンシェルミキサー、ボールミル、リボンブレンダーなどを利用して予備混合してから溶融混合機に供給する方法等が挙げられる。このような溶融混練(熱溶融)により、樹脂組成物は加熱溶融体を形成する。
【0080】
この溶融混練における温度条件は、使用する成分(A)液晶ポリマーの流動開始温度Tp[℃]を基点にして適宜最適化できる。好ましくは、Tp−10[℃]以上Tp+100[℃]以下の範囲であり、より好ましくは、Tp−10[℃]以上Tp+70[℃]以下の範囲であり、特に好ましくは、Tp−10[℃]以上Tp+50[℃]以下の範囲である。また、2種類以上の液晶ポリマーを成分(A)として使用した場合は、この2種類以上の液晶ポリマーの混合物に対して、既述した方法で流動開始温度Tp[℃]を求め、その流動開始温度Tp[℃]を基点にすればよい。
【0081】
溶融混練で得られた樹脂組成物の加熱溶融体は、例えば単軸または多軸押出機、好ましくは二軸押出機、バンバリー式混錬機、ロール式混練機等により紐状に押し出してストランドとした後、このストランドを冷却固化し、切断するといった一連の操作により、組成物ペレットに加工できる(ストランド法)。また、上記のようにして得たストランドを冷却固化させることなく、押出機のダイスから吐出した直後、ダイスカッターにより、切断してペレット状に加工するホットカット法も用いることができる。但し、ストランド法とホットカット法を生産性の観点から比較すると、より生産性が良好となる面でストランド法が有利である。このように、単軸または二軸押出機を用いた組成物ペレットの調製方法は、溶融混練からペレット化までを連続して行うことができることから操作性が容易である。
【0082】
<液状組成物>
本発明の液状組成物は、成分(A)を溶媒に溶解する工程、および該溶液に成分(B)、および必要に応じて上記の添加剤などのその他の成分を分散させる工程により得られる。
【0083】
本発明の液状組成物に用いる溶媒は、液晶ポリマーを溶解できるものであれば特に限定はされないが、前記構造単位を含む芳香族液晶ポリエステルを溶解する場合、下記一般式(I)で示されるハロゲン置換フェノール化合物(以下、「ハロゲン置換フェノール化合物(I)」ということがある。)を30重量%以上含有する溶剤が、常温または加熱下に芳香族液晶ポリエステルを比較的低温で溶解できるため好ましく使用される。
【0084】
また、芳香族液晶ポリエステルを比較的低温で溶解できることから、ハロゲン置換フェノール化合物(I)を60重量%以上含有する溶剤がより好ましく、他成分と混合する必要がないため、ハロゲン置換フェノール化合物(I)が実質的に100重量%の溶剤がさらに好ましく使用される。
【0085】
【化9】

【0086】
式中、Aはハロゲン原子またはトリハロゲン化メチル基を表し、iは1〜5の整数を表す。iが2以上の場合、複数あるAは互いに同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子が好ましい。
【0087】
ハロゲン原子がフッ素原子であるハロゲン置換フェノール化合物(I)の例としては、ペンタフルオロフェノール、テトラフルオロフェノールなどが挙げられる。ハロゲン原子が塩素原子であるハロゲン置換フェノール化合物(I)の例としては、o−クロロフェノール、p−クロロフェノールが挙げられ、溶解性の観点からp−クロロフェノールが好ましい。
【0088】
なお、上記溶剤中には、溶液の保存時または後述の流延時に芳香族液晶ポリエステルを析出させるものでなければ、ハロゲン置換フェノール化合物(I)以外に他の成分を含有させてもよい。含有させてもよい他の成分は、特に限定されるものではないが、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、テトラクロロエタンなどの塩素系化合物などが挙げられる。
【0089】
また、液晶ポリマーが前記構造単位を含む液晶ポリエステルアミドである場合、この液晶ポリエステルアミドはハロゲン原子を含まない非プロトン性溶媒に対して十分な溶解性を発現するので、このような非プロトン性溶媒の使用が好適である。
【0090】
ハロゲン原子を含まない非プロトン性溶剤とは、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤;アセトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル等のエステル系溶剤;γ―ブチロラクトン等のラクトン系溶剤;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶剤;トリエチルアミン、ピリジン等のアミン系溶剤;アセトニトリル、サクシノニトリル等のニトリル系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N−メチルピロリドン等のアミド系溶剤;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ系溶剤;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の硫黄系溶剤、ヘキサメチルリン酸アミド、トリn−ブチルリン酸等のリン系溶剤が挙げられる。なお、上述の液晶ポリマーの溶剤可溶性とは、これらから選ばれる少なくとも1つの非プロトン性溶剤に可溶であることを指すものである。
【0091】
前記液晶ポリエステルアミドの溶剤可溶性をより一層良好にして、液状組成物が得られやすい点では、例示した溶剤の中でも、双極子モーメントが3以上5以下の非プロトン性極性溶剤を用いることが好ましい。中でも、アミド系溶剤、ラクトン系溶剤が好ましく、N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)がより好ましい。更には、前記溶剤が、1気圧における沸点が180℃以下の揮発性の高い溶剤であると、後述する成形体の製造がより容易になるので好ましく、このような点からはDMF、DMAcを用いることが特に好ましい。
【0092】
成分(A)は、溶媒100重量部に対して、0.5〜100重量部である。0.5重量部未満だと溶液粘度が低すぎて均一に塗工できないことがある。作業性あるいは経済性の観点から、1〜50重量部の範囲が好ましく、2〜10重量部の範囲がより好ましい。
【0093】
上記のように得られた成分(A)の溶液は、必要に応じてフィルターによってろ過し、該溶液中に含まれる微細な異物を除去する工程を経てもよい。
【0094】
本発明の液状組成物における、成分(A)と成分(B)との配合比は、既述のとおり、所望の誘電特性が十分に発現され、かつ使用用途に対して必要な諸特性を損なわない範囲で設定する必要がある。アンテナ用基体等に使用する上では、配合される成分(A)と成分(B)との合計量100容量%に対し、成分(A)が50〜90容量%であると好ましく、50〜80容量%であるとさらに好ましい。
【0095】
<成形体及びアンテナ用基体>
かくして得られた樹脂組成物は、種々慣用の成形方法に適用可能である。成形方法としては、例えば、射出成形あるいはプレス成形などの溶融成形が挙げられ、特に射出成形が好ましい。射出成形としては、一般射出成形、射出圧縮成形、2色成形、サンドイッチ成形などを具体的に挙げることができ、これらの中でも一般射出成形、射出圧縮成形が好ましい。該樹脂組成物は、成形におけるTD方向の成形収縮率を特に小さくできるという特性を有する。したがって、所望の寸法の成形体を容易に得ることが可能であり、得られた成形体に金属層を配して部品を製造する際、当該部品に反りが発生することを良好に抑制することが可能である。
【0096】
液状組成物を用いたフィルムの製造方法としては、該液状組成物を金属箔上に、例えば、ローラーコート法、ディップコート法、スプレイコート法、スピナーコート法、スロットコート法、スクリーン印刷法などの各手段により、表面平坦かつ均一に流延し、その後、有機溶剤を除去して得ることができる。
【0097】
本発明の樹脂組成物を用いて得られる成形体は、成分(B)が発現する高誘電性を十分に反映し、さらに誘電正接が極めて小さいという優れた誘電特性を発現する。特に、本発明の樹脂組成物により得られる成形体は、測定温度23℃、測定周波数1MHzの条件下で測定した誘電正接が0.01以下のものを得ることができる。以上のような特性を有するため、本発明の樹脂組成物は、特にアンテナ用基体の製造用として特に有用なものとなる。
【0098】
以下、本発明の樹脂組成物を用いて得られるアンテナに関し、簡単に説明する。本発明の樹脂組成物を用いて得られるアンテナ用基体は、必要に応じてエッチング等を施し、電極(放射電極、グランド電極等)を形成せしめることによりアンテナを製造することができる。電極となり得る導電層の形成手段は、金属めっき、スパッタリング、イオンプレーティング、真空蒸着、半田付け等の公知の方法が採用される。また、所望の電極形状に加工された金属箔を接着剤等で接着または圧着してもよく、予め金属箔を成形体表面に接着または圧着させた後に、所望の形状となるように、接着または圧着された金属箔をパターニングしてもよい。
【0099】
かくして得られるアンテナは、アンテナ用基体の誘電特性が極めて優れるため、従来のものより小型化が容易である。該アンテナ用基体から得られるアンテナは、例えば、ブルートゥースなどの無線LAN用、携帯電話・PHSあるいはモバイル機器用、GPS(グローバルポジショニングシステム)用、ETC(エレクトロリックトールコレクションシステム)用、衛星通信用等に、特に好適に用いられる。
【0100】
また、本発明の樹脂組成物を用いて得られるアンテナは、液晶ポリマーが有している高機械強度、高耐熱性等の特性が十分維持されているので、外環境に対する耐久性に優れている。そのため、屋外設置用アンテナにも好適に使用可能である。また、優れた誘電特性による小型化の効果により、自動車搭載用アンテナまたは携帯機器用アンテナとしても、極めて優れている。
【実施例】
【0101】
以下、本発明を実施例によって、より詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
【0102】
〔各種測定方法〕
(流動開始温度測定方法)
フローテスター〔島津製作所社製、「CFT−500型」〕を用いて試料量約2gを内径1mm、長さ10mmのダイスを取付けた毛細管型レオメーターに充填させる。9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下において昇温速度4℃/分で溶融体をノズルから押出すときに、溶融粘度が4800Pa・s(48000ポイズ)を示す温度を流動開始温度とした。
【0103】
合成例1〔液晶ポリエステルの製造〕
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却器を備えた反応器に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸1034.99g(5.5モル)、ハイドロキノン272.52g(2.475モル、0.225モル過剰仕込み)、2,6−ナフタレンジカルボン酸378.33g(1.75モル)、テレフタル酸83.07g(0.5モル)、無水酢酸1226.87g(12.0モル)および触媒として1−メチルイミダゾール0.17gを添加し、室温で15分間攪拌した後、攪拌しながら昇温した。内温が145℃となったところで、同温度を保持したまま1時間攪拌した。
【0104】
次に、留出する副生酢酸、未反応の無水酢酸を留去しながら、145℃から310℃まで3時間30分かけて昇温した。同温度で3時間保温して液晶ポリエステルを得た。得られた液晶ポリエステルを室温に冷却し、粉砕機で粉砕して、粒子径が約0.1〜1mmの液晶ポリエステルの粉末(プレポリマー)を得た。このプレポリマーについてフローテスターを用いて、流動開始温度を測定したところ、267℃であった。
【0105】
得られたプレポリマーを粉砕して粉末状とした後、粉末状のプレポリマーを、25℃から250℃まで1時間かけて昇温したのち、同温度から293℃まで5時間かけて昇温し、次いで同温度で5時間保温して固相重合させた。冷却して得られた液晶ポリエステルについてフローテスターを用いて、流動開始温度を測定したところ、317℃であった。なお、この液晶ポリエステルの全芳香族基合計に対する2,6−ナフタレンジイル基の含有量は、72.5モル%である。
【0106】
実施例1
合成例1で得られた液晶ポリエステル樹脂と共立マテリアル(株)製「HF−120D」(Ba、SmおよびTiを主成分とする複合酸化物。BaとSmの含有当量比Ba/Sm=0.8〜0.9)を表1の割合(容量比)となるように配合し、二軸押出し機(池貝鉄工(株)製「PCM−30」)を用いて、溶融温度340℃にてストランド法によりペレット化して、組成物ペレットを得た。
【0107】
(誘電特性評価)
得られたペレットを120℃で3時間乾燥させた後、射出成形機(日精樹脂工業(株)製「PS40E5ASE型」)を用いて、シリンダー温度350℃、金型温度130℃で、64mm×64mm×1mmの樹脂基板をサンプルとして得た後、HP製インピーダンスアナライザーにより、測定温度23℃、測定周波数1GHzの条件下で、誘電特性を評価した。結果を表1に示す。
【0108】
(寸法安定性評価)
得られたペレットを120℃で3時間乾燥させた後、射出成形機(日精樹脂工業(株)製「PS40E5ASE型」)を用いて、シリンダー温度350℃、金型温度130℃で、64mm×64mm×3mmの平板試験片を成形し、各辺の寸法を測定した。溶融成形時の樹脂の配向方向(MD方向)およびこれに直角方向(TD方向)に関して各辺の平均値として算出した金型寸法から、MD方向およびTD方向の収縮量をそれぞれ算出した。これを金型寸法に対する変化量として100分率で表した。結果を表1に示す。
【0109】
比較例1
「HF−120D」に替えて、富士チタン工業(株)製「NPO−S」(Ba、NdおよびTiを主成分とする複合酸化物)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により各種特性を評価した。結果を表1に示す。
【0110】
【表1】

【0111】
合成例2
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸941g(5.0モル)、4、4’−ジヒドロキシビフェニル466g(2.5モル)、イソフタル酸415g(2.5モル)及び無水酢酸1123g(11.0モル)を仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、温度を保持して3時間還流させた。
【0112】
その後、留出する副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら170分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。取り出した内容物を室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕して、粉末を得た。この粉末の流動開始温度は229℃であった。この粉末を、窒素雰囲気において264℃3時間加熱処理し、固相重合を行った。こうして液晶ポリエステルを得た。この液晶ポリエステルの流動開始温度は303℃であった。
【0113】
かくして得られた液晶ポリエステルを27g、p−クロロフェノール(PCP)273gに加え、120℃で8時間加熱して樹脂溶液1を得た。この樹脂溶液1の溶液粘度は7000cPであった。なお、この溶液粘度は、B型粘度計(東機産業製「TVL−20型」、ローターNo.23(回転数:10rpm))を用いて、測定温度50℃で測定した値である。
【0114】
実施例2
得られた樹脂溶液1と共立マテリアル(株)製「HF−120D」(Ba、SmおよびTiを主成分とする複合酸化物。BaとSmの含有等量比Ba/Sm=0.8〜0.9)を表2の割合(容量比)となるように配合して液状組成物1を得た。この液状組成物1を銅箔(三井金属(株)製「3EC‐VLP」(18μm))上にバーコートした後、100℃で1時間、さらに320℃で3時間熱処理して銅箔上にフィルムを形成させた。次いで塩化第二鉄溶液(木田(株)製、40°ボーメ)で全ての銅箔を除去して、フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの厚みは20μmであった。
【0115】
(誘電特性評価)
得られた樹脂フィルムに金蒸着を施して電極を形成後、Agilent製LCRメーターにより、測定温度23℃、測定周波数20Hz〜1MHzの条件下で誘電特性を評価した。結果を表2に示す。
【0116】
(寸法安定性評価)
得られた樹脂フィルムの線膨張係数を、JIS C6481「プリント配線板用銅張積層板試験方法」に準拠して、TMA装置(SII製)にて100〜150℃の温度範囲で測定した。単位はppm/℃である。結果を表2に示す。
【0117】
比較例2
「HF−120D」に替えて、富士チタン工業(株)製「NPO−S」(Ba、NdおよびTiを主成分とする複合酸化物)を用いたこと以外は、実施例2と同様の方法により各種特性を評価した。結果を表2に示す。
【0118】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)と下記成分(B)とを含有する樹脂組成物。
(A)液晶ポリマー。
(B)Ba、SmおよびTiを含む複合酸化物からなるフィラー。
【請求項2】
成分(B)が、測定温度23℃、測定周波数1GHzの条件下で求められる比誘電率が50〜200の複合酸化物からなるフィラーである請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
成分(A)が、2価の芳香族基がエステル結合により連結してなるポリエステルであり、前記ポリエステルを構成している全ての2価の芳香族基の合計を100モル%としたとき、2,6−ナフタレンジイル基を30モル%以上含む液晶ポリマーである請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
成分(A)が、2価の芳香族基がエステル結合およびアミド結合により連結してなるポリエステルアミドであり、前記ポリエステルアミドを構成している全ての2価の芳香族基の合計を100モル%としたとき、2,6−ナフタレンジイル基を30モル%以上含む液晶ポリマーである請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
成分(A)が、下記式(i)で示される構造単位、下記式(ii)で示される構造単位および下記式(iii)で示される構造単位からなるポリエステルまたはポリエステルアミドであり、Ar1で表される2価の芳香族基、Ar2で表される2価の芳香族基およびAr3で表される2価の芳香族基の合計を100モル%としたとき、2,6−ナフタレンジイル基を30モル%以上含む液晶ポリマーである請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【化1】

(式中、Ar1は、2,6−ナフタレンジイル基、1,4−フェニレン基および4,4’−ビフェニレン基からなる群から選ばれる2価の芳香族基を表す。Ar2およびAr3は、それぞれ独立に2,6−ナフタレンジイル基、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基および4,4’−ビフェニレン基からなる群から選ばれる2価の芳香族基を表し、Xおよびyは、それぞれ独立にOまたはNHを表す。また、Ar1、Ar2およびAr3で表される芳香族基は、その芳香環に結合している水素原子の一部が、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基で置換されていてもよい。)
【請求項6】
成分(A)と成分(B)との合計100容量%に対して、成分(A)の含有量が50〜80容量%である請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂組成物と溶媒とを含有する液状組成物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂組成物からなる成形体。
【請求項9】
測定温度23℃、周波数1MHzの条件下で求められる誘電正接が0.01以下である請求項8記載の成形体。
【請求項10】
請求項7に記載の液状組成物を基板に塗布し、その塗膜から溶媒を除去してなるフィルム。
【請求項11】
測定温度23℃、周波数1MHzの条件下で求められる誘電正接が0.01以下である請求項10記載のフィルム。
【請求項12】
請求項8または9に記載の成形体と電極とを有するアンテナ。
【請求項13】
請求項10または11に記載のフィルムと電極とを有するアンテナ。

【公開番号】特開2010−31256(P2010−31256A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148554(P2009−148554)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】