説明

樹脂組成物および成形体

【課題】耐衝撃性、および曲げ弾性率に優れ、自消性のある難燃性に優れた、樹脂組成物および成形体を提供する。
【解決手段】ポリエチレン10〜85質量%、ポリプロピレン4〜85質量%およびポリスチレン5〜60質量%を含有する樹脂(A)100質量部に対し、無機物(B)30〜150質量部を含有する樹脂組成物であって、「電気用品の技術上の基準を定める省令別表第二附表第二十四の耐燃性試験」または「地中電線を収める管又はトラフの「自消性のある難燃性」試験方法JESC E7003(2005)」において、前記樹脂組成物を成形してなる成形体から得られた試験試料の炎が60秒以内に消える樹脂組成物、およびその樹脂組成物を成形してなる成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂組成物および成形体に関し、詳しくは、優れた耐衝撃性を有し、コンクリートと同等の色調をもつ自消性のある難燃性樹脂組成物およびその難燃性樹脂組成物を成形してなる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道の線路脇などに布設されているトラフは、高い強度が要求されることから、通常コンクリート製のものが使用されている。しかし、コンクリート製のものは、重量が重く、取り扱い性の悪いものであった。そこで近年、コンクリートに代えて、樹脂製のトラフの使用が検討され、さらにプラスチックのリサイクルを図る観点で廃棄プラスチックを利用して形成されたトラフが検討されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、特許文献1のトラフでは、廃棄プラスチック単独で成形しており、耐衝撃性や曲げ弾性率に問題があった。廃棄プラスチックは、通常複数の樹脂が混在している場合が多く、樹脂同士の相溶性が低い場合は、強度に不安がある場合が多い。また、樹脂製のトラフは通常黒色をしている場合が多く、コンクリート製のトラフの色と違いすぎるため、コンクリート製のトラフに近い色調のものが要求されていた。さらに、鉄道に関する技術基準(電気編)では、鉄道用トラフとして自消性のある難燃性が要求されており、この自消性のある難燃性とは「電気用品の技術上の基準を定める省令別表第二附表第二十四の耐燃性試験」に合格するものである。しかし、これまで廃棄プラスチック単独で成形されたトラフでは、自消性のある難燃性を得ることは困難であった。
【特許文献1】特開平11−215673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、耐衝撃性、曲げ弾性率および難燃性に優れた、樹脂組成物および成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、前記問題を解決するために鋭意検討した結果、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンを特定量含有する樹脂に、無機物を所定量含有させることにより、耐衝撃性や曲げ弾性率に優れた自消性のある難燃性樹脂組成物が得られることを見出した。本発明はこれらの知見をもとになされたものである。
すなわち、本発明は、
(1)ポリエチレン10〜85質量%、ポリプロピレン4〜85質量%およびポリスチレン5〜60質量%を含有する樹脂(A)100質量部に対し、無機物(B)30〜150質量部を含有する樹脂組成物であって、「電気用品の技術上の基準を定める省令別表第二附表第二十四の耐燃性試験」(以下、難燃性試験1という。)または「地中電線を収める管又はトラフの「自消性のある難燃性」試験方法JESC E7003(2005)」(以下、難燃性試験2という。)において、前記樹脂組成物を成形してなる成形体から得られた試験試料の炎が60秒以内に消えることを特徴とする樹脂組成物、
(2)前記樹脂(A)が、廃棄プラスチックおよび/またはポリオレフィン系ノンハロゲン難燃樹脂を1〜100質量%含むことを特徴とする(1)項に記載の樹脂組成物、
(3)前記無機物(B)が、水酸化マグネシウムを含有することを特徴とする(1)又は(2)項に記載の樹脂組成物。
(4)前記無機物(B)が、天然水酸化マグネシウム及び/又は表面処理された非結晶成長型水酸化マグネシウムを含有することを特徴とする(1)又は(2)項に記載の樹脂組成物、
(5)前記樹脂組成物を成形してなる成形体がJIS Z 8729における明度が65以上であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の樹脂組成物、
(6)前記無機物(B)が、酸化チタンを樹脂(A)100質量部に対し0.7〜25質量部含有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の樹脂組成物、
(7)前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の樹脂組成物を成形してなる成形体、および、
(8)トラフであることを特徴とする(7)項に記載の成形体
を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の樹脂組成物は、ポリエチレン10〜85質量%、ポリプロピレン4〜85質量%およびポリスチレン5〜60質量%を含有する樹脂100質量部に無機物を所定量配合されているので、その樹脂組成物を成形した成形体は耐衝撃性や難燃性に優れたものである。また、前記樹脂として廃棄プラスチックを使用することにより、低コストで曲げ弾性率に優れたものとすることができる。また、ポリオレフィン系ノンハロゲン難燃樹脂を含有させることにより耐衝撃性に優れたものとすることができる。
また、無機物として水酸化マグネシウムを使用することにより燃焼時に有害なガスを発生せず、環境にやさしい樹脂組成物をえることができ、特に天然水酸化マグネシウムや非結晶成長型水酸化マグネシウムを使用すると低コスト化できる。また、酸化チタンを所定量含有することにより、耐候性、色調、特に、JIS Z 8729における明度を65以上とすることができ、コンクリートの色調をもつ成形体とすることが可能となる。
さらに、本発明の成形体は、耐衝撃性に優れ、低コストで環境にやさしく、コンクリートの色調を有することも可能であり、美観も優れた成形体である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
まず、本発明の樹脂組成物について説明する。
本発明の樹脂組成物は、ポリエチレン10〜85質量%、ポリプロピレン4〜85質量%およびポリスチレン5〜60質量%を含有する樹脂(A)100質量部に対し、無機物(B)30〜150質量部を含有する。
以下、樹脂(A)の各成分について説明する。
【0007】
<ポリエチレン>
本発明に用いられるポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレンとα−オレフィンとの共重合体などが挙げられる。具体的には、それに限定されるものではないが、例えば、NUCポリエチレン(商品名、日本ユニカー(株)製)、UBEポリエチレン(商品名、宇部興産(株)製)などが挙げられる。
また、ポリエチレンの含有量は、樹脂成分(A)中、10〜85質量%、好ましくは15〜70質量%である。ポリエチレンが多すぎると十分な弾性率を得られなくなり、少なすぎると耐衝撃性が低下する恐れがあるためである。
【0008】
<ポリプロピレン>
本発明に用いられるポリプロピレンとしては、プロピレンの単独重合体やポリプロピレンとα−オレフィンとのブロック、ランダム、グラフト共重合体、またはこれらの混合物などが挙げられる。α−オレフィンとしてはエチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、4−メチルペンテンなどが挙げられる。具体的には、それに限定されるものではないが、例えば、BC4L(商品名、日本ポリケム(株)製)などが挙げられる。
また、ポリプロピレンの含有量は、樹脂(A)中、4〜85質量%、好ましくは10〜70質量%である。ポリプロピレンが多すぎると白化現象が起こりやすくなり、少なすぎると弾性率や衝撃強度が低下する恐れがあるためである。
【0009】
<ポリスチレン>
本発明に用いられるポリスチレンとしては、スチレンの重合体が使用でき、ポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(m−メチルスチレン)、ポリ(エチルスチレン)、ポリ(ジビニルベンゼン)などがあげられる。具体的には、それに限定されるものではないが、例えば、HF77(商品名、PSジャパン(株)社製)などが挙げられる。
また、ポリスチレンの含有量は、樹脂(A)中、5〜60質量%、好ましくは10〜50質量%である。ポリスチレンが多すぎると衝撃強度が低下する恐れがあり、少なすぎると弾性率が低下する恐れがあるためである。
【0010】
本発明においては、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレンを上記の量を含有する樹脂(A)を使用する。樹脂(A)としては、本発明の特性を損なわない範囲で他の樹脂成分を含有してもよい。他の樹脂成分としては例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸アルキル共重合体などが挙げられる。
【0011】
また、本発明においては、樹脂(A)の一部または全部として廃棄プラスチックを使用してもよい。廃棄プラスチックとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレンの少なくとも1種であっても良いし、すべてが廃棄プラスチックでもよい。また、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレンのそれぞれ単体を回収してなる廃棄プラスチックを配合して使用してもよいし、すでに廃棄物の回収段階でポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレンが混合されており、そのまま減容、ペレット化されている廃棄プラスチックを使用してもよい。すでに廃棄物の回収段階で各樹脂成分が混合されているものとしては、例えば、容器包装リサイクル法に基づいて、一般家庭からでる容器等を回収した廃棄プラスチックなどが挙げられる。廃棄プラスチックの含有量は、樹脂(A)中、好ましくは1〜100質量%であり、さらに好ましくは25〜100%である。
【0012】
<ポリオレフィン系ノンハロゲン難燃樹脂>
本発明に用いることができるポリオレフィン系ノンハロゲン難燃樹脂とは、ハロゲン化合物を含有せず、酸素指数値が23以上を有するポリオレフィン系樹脂であり、自動車用ワイヤーハーネスの被覆材に使用されているポリエチレン系ノンハロゲン難燃樹脂やポリプロピレン系ノンハロゲン難燃樹脂、エコ電線・ケーブルの被覆材に使用されているポリエチレン系ノンハロゲン難燃樹脂、架橋ポリオレフィン系難燃発泡体などが挙げられる。これらは製造時に発生するオーバーフロー材や使用後回収されたものを使用してもよい。
本発明におけるポリオレフィン系ノンハロゲン難燃樹脂の含有量は、樹脂(A)中、好ましくは1〜100質量%であり、より好ましくは2〜70質量%、さらに好ましくは2〜40質量%である。含有量が少なすぎると、衝撃強度が低く、難燃性が得られず、含有量が多すぎるとコストが高くなり、好ましくない。
【0013】
<無機物>
次に本発明の樹脂組成物の含有する無機物(B)の成分について説明する。
本発明における無機物(B)としては水酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸カルシウムなどが挙げられ、水酸化マグネシウム、または酸化チタンが好ましい。水酸化マグネシウムとしては、合成または天然、非結晶成長型水酸化マグネシウムのいずれでもよいが、好ましくは天然および非結晶型水酸化マグネシウムが好ましい。
【0014】
天然水酸化マグネシウムとしては天然ブルーサイト鉱石等の天然鉱物を粉砕、表面処理した水酸化マグネシウムが挙げられる。また、非結晶成長型水酸化マグネシウムとしては、例えば海水やにがりに含まれるマグネシウム塩水溶液を消石灰などのアルカリと反応させて作られたもので、結晶成長せずにコロイド状沈殿物を適宜洗浄、ろ過乾燥して得られるものが挙げられる。これは、合成品のため、砒素やアスベスト等の不純物の混入がなく、価格も水酸化マグネシウムの中で最も安い。
非結晶成長型水酸化マグネシウムを電子顕微鏡で観察すると、粒径が0.01〜1.99μmの1次粒子が凝集してできた2次凝集物が多く、粒径が一般に3μm以上のものが多い。非結晶成長型水酸化マグネシウムは、粒径が2〜40μmの大きすぎるサイズのもを多量に含むため、樹脂への添加・分散が困難であるが、粒径が2〜40μmと粒径が0.01〜1.99μmの水酸化マグネシウムが質量比で25:75〜99:1の範囲内の場合、そこに表面処理材を併用することにより樹脂への分散が容易にできる。
【0015】
表面処理されていない非結晶成長型水酸化マグネシウムは凝集しやすい為、樹脂(A)への分散性が悪くなり衝撃強度の低下、難燃性試験1難燃性の基準を満たさないことがある。そのため、非結晶成長型水酸化マグネシウムは表面処理されたものが好ましい。この表面処理剤としては飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤など一般的に使用されている表面処理剤であれば特に問題ない。なお、天然水酸化マグネシウムの表面処理も同様である。
【0016】
本発明の樹脂組成物における無機物(B)の含有量は、樹脂(A)100質量部に対し、30〜150質量部であり、好ましくは30〜120質量部である。含有量が少なすぎると必要な難燃性が得られず、またその成形体の収縮率も大きくなる。含有量が多すぎると成形性が悪くなり、衝撃性も低くなる。
【0017】
また、本発明においては、ポリオレフィン系ノンハロゲン難燃樹脂と無機物として水酸化マグネシウムの併用が耐衝撃性、曲げ弾性率、難燃性の向上の点で好ましい。
【0018】
本発明においては、無機物として酸化チタンを樹脂(A)100質量部に対し0.7〜25質量部配合するのが好ましく、さらに好ましくは1〜25質量部である。酸化チタンを所定量配合することにより、耐候性を向上させ、色調を調整することが可能となる。本発明における酸化チタンとしては、ルチル型結晶構造を有する酸化チタン(以下、ルチル型酸化チタンと略す)、あるいは、ルチル型酸化チタンとアナターゼ型結晶構造を有する酸化チタン(以下、アナターゼ型酸化チタンと略す)とが含まれているものがある。好ましくはルチル型酸化チタンである。また酸化チタン表面を表面処理剤で処理したものであることが好ましい。ここで、表面処理剤としては、例えば、アルミニウムおよびシリカ、有機シロキサンなどが挙げられる。
【0019】
次に、樹脂組成物および成形体について説明する。
本発明の樹脂組成物は、その成形体として評価した場合に、JIS Z 8729における明度を65以上にするのが好ましい。明度を65以上とすることにより、コンクリートの色調に近い樹脂組成物を得ることができる。前記明度を調整する手段としては、特に限定しないが、例えば、無機物としての酸化チタンの配合により調整することが可能である。明度は65〜80が好ましく、66〜80がさらに好ましい。
【0020】
本発明の樹脂組成物は、前記ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンを所定量含有する樹脂にポリオレフィン系ノンハロゲン難燃樹脂および無機物を配合することにより、耐衝撃性、曲げ弾性率、難燃性に優れた樹脂組成物とすることが可能である。さらに、無機物として酸化チタンを含有させることにより、コンクリートに近い色調の樹脂組成物を得ることが可能となる。通常、相溶性の低い樹脂同士を混合すると、もろくなってしまい、曲げ弾性率や耐衝撃性に劣る結果となるが、本発明においては、ポリエチレン、ポリプロピレンといった極性をもたないポリオレフィン樹脂と、ポリスチレンとが混合されている樹脂に、ポリオレフィン系ノンハロゲン難燃樹脂を使用することにより、耐衝撃性や曲げ弾性率を向上させる効果が顕著に現れる。さらに、無機物として、水酸化マグネシウム、を使用した場合は難燃特性が大幅に改善され、特に天然水酸化マグネシウムや表面処理された非結晶成長型水酸化マグネシウムを使用した場合は、難燃性が改善できそのうえ低コスト化できる。
【0021】
本発明の樹脂組成物には、通常樹脂に添加される酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤などの添加剤などを本発明の特性を損なわない範囲で適宜配合してもよい。
【0022】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば混練ロール、ニーダー、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー等の混練装置を単独でもしくは組み合わせて使用することが出来る。
【0023】
本発明の樹脂組成物は成形体として評価した場合に、「電気用品の技術上の基準を定める省令別表第二附表第二十四の耐燃性試験」または「地中電線を収める管又はトラフの『自消性のある難燃性』試験方法JESC E7003(2005)」において、すなわち本発明の樹脂組成物を成形してなる成形体から得られた試験試料の炎が、60秒以内に消えるものである。ここで、「電気用品の技術上の基準を定める省令」とは昭和37年8月14日通商産業省令第85号の平成16年10月27日経済産業省令第103号改正の省令をいう。また、「地中電線を収める管又はトラフの「自消性のある難燃性」試験方法JESC E7003(2005)」とは、日本電気技術規格委員会規格のものをいい、日本電気技術規格委員会のウェブサイhttp://www.jesc.gr.jp/standard/quotation/jesc_e7003_05.htmから当該規格をダウンロードすることができる。
【0024】
本発明の成形体は、その形状は制限されるものではないが、例えば、トラフ、ケーブルダクト、排水溝、ピット蓋等が挙げられる。本発明の成形体の成形方法は、成形する物品の種類、形状、サイズ等により適宜選択することができ、例えば、プレス成形、射出成形、圧縮成形および押出成形等が挙げられる。
【0025】
本発明の成形体は耐衝撃性、曲げ弾性率、難燃性に優れるため、コンクリート製のトラフと比しても遜色なく、トラフとして使用することが可能である。さらにコンクリート製のトラフと、本発明のトラフとを併用した場合であっても、本発明のトラフはコンクリートの色調に近いため、美観を損ねることがない。さらに本発明のトラフはコンクリートよりも軽量なため設置しやすく、落としても割れないなどハンドリング性もよい。さらに、廃棄プラスチックを使用することもできるので、低コストである。よって、本発明の成形体は特にトラフとして好適に使用することができる。本発明のトラフは、上記の樹脂組成物を用い、例えば、通常のプレス成形により製造することができる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
実施例および比較例
表1〜2に示す各材料を表示の割合(表中の数値は質量部を示す)で配合した混合物を同方向噛み合い型二軸押出機にて混練りし、各熱可塑性樹脂組成物を得た。その後プレス成形を行い、各試験片を作製した。
なお、使用した材料は下記の通りである。
【0028】
〔樹脂〕
・廃棄プラスチックA
容器包装リサイクル法で回収された一般廃棄プラスチック(ポリエチレン35質量%、ポリプロピレン45質量%、ポリスチレン20質量%)
・廃棄プラスチックB
容器包装リサイクル法で回収された一般廃棄プラスチック(ポリエチレン70質量%、ポリプロピレン20質量%、ポリスチレン10質量%)
・ポリエチレン
低密度ポリエチレン NUC9060(商品名、日本ユニカ株式会社製)
【0029】
〔無機物〕
・天然水酸化マグネシウム
マグシーズW−H4(商品名、神島化学(株)社製)(高級脂肪酸により表面処理されたもの)
・非結晶成長型水酸化マグネシウム
微粉水酸化マグネシウム(日本海水化工(株)社製)を脂肪酸で表面処理したもの、又は表面処理しないもの
・酸化チタン
R103(商品名、デュポン社製)
【0030】
〔ポリオレフィン系ノンハロゲン難燃樹脂〕
・PP系ノンハロゲン難燃樹脂
自動車用ワイヤーハーネスの被覆材として使用されている材料
・PE系ノンハロゲン難燃樹脂
エコ電線のシース材として使用されている材料
【0031】
また、使用した混練設備は下記の通りである。
〔混練装置〕
同方向噛み合い型二軸押出機(58mmφ)、スクリュー回転数100rpm
【0032】
また、得られた各実施例、比較例の試験片について、下記の試験を行い、その結果を表1〜2に示した。
【0033】
〔アイゾット衝撃試験〕
JIS K7110に準拠しサンプル厚さ4mm、ノッチ2mmの試験片にて測定を行った。
【0034】
〔曲げ試験〕
JIS K7171に準拠しサンプル厚さ4mm、曲げ速度2mm/minにて曲げ弾性率を測定した。
【0035】
〔難燃性試験1〕
「電気用品の技術上の基準を定める省令別表第二附表第二十四の耐燃性試験」に準拠しサンプル長さ約150mm、幅約10mm、厚さ約5〜15mmを垂直にし、その下端を炎の長さが約15mmのブンゼンバーナーの酸化炎の先端で1分間燃焼させその炎を取り去ったとき、自然に消えるまでの時間を測定した。
合否判定は炎を取り去ったとき、60秒以内に消えたものを合格とした。
【0036】
〔難燃性試験2〕
「日本電気技術規格委員会規格 地中電線を収める管又はトラフの『自消性のある難燃性』試験方法JESC E7003(2005)」に準拠し、加熱源はブンゼンバーナーとし、酸化炎の長さ約130mm、還元炎の長さ約35mmに調整した。試験試料は本来完成品から切出すが、今回は完成品とほぼ同様のリブ付き平板(長さ約300mm、幅200mm、厚さ15mm)を作成した。試料を水平に支持し、試料の平面部を着火するまで燃焼させ、炎を取り去ったとき、60秒以内に消えたものを合格とした。
【0037】
〔色調測定〕
ミノルタ製「色彩色差計CR−300」にてL表色系で測定を行いL(明度)を測定した。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
表1〜2に示すとおり、難燃性試験1および2に合格する実施例1〜6は、ポリエチレン10〜85質量%、ポリプロピレン4〜85質量%およびポリスチレン5〜60質量%を含有する樹脂(A)100質量部に対し、天然水酸化マグネシウムおよび/または表面処理された非結晶成長型水酸化マグネシウム(B)30〜150質量部を含有し、耐衝撃性、曲げ弾性率に優れ、更に「電気用品の技術上の基準を定める省令別表第二附表第二十四の耐燃性試験」(難燃性試験1)、「地中電線を収める管又はトラフの「自消性のある難燃性」試験方法JESC E7003(2005)」(難燃性試験2)において、前記樹脂組成物を成形してなる成形体から得られた試験試料の炎が60秒以内に消える優れた難燃性を示した。また、実施例1〜6は酸化チタンを前記樹脂(A)100質量部に対し0.7〜25質量部含有させることで、明度も65以上と高く、コンクリートに近い色調のものであった。
【0041】
それに対して、比較例1及び5は、ポリエチレン10〜85質量%、ポリプロピレン4〜85質量%およびポリスチレン5〜60質量%を含有する樹脂(A)100質量部に対し、天然水酸化マグネシウム(B)が30質量部に満たない例であるが、曲げ弾性率に優れるものの、耐衝撃性が悪く、また、「電気用品の技術上の基準を定める省令別表第二附表第二十四の耐燃性試験」(難燃性試験1)、「地中電線を収める管又はトラフの「自消性のある難燃性」試験方法JESC E7003(2005)」(難燃性試験2)において、前記樹脂組成物を成形してなる成形体から得られた試験試料の炎が60秒以内には消えず、難燃性も悪いものであった。
【0042】
比較例2は、樹脂(A)に変えてポリエチレンを用いた例だが、耐衝撃性、曲げ弾性率がともに悪く、また、「電気用品の技術上の基準を定める省令別表第二附表第二十四の耐燃性試験」(難燃性試験1)において、前記樹脂組成物を成形してなる成形体から得られた試験試料の炎が60秒以内には消えず、難燃性も悪いものであった。つまり、樹脂中にポリプロピレンおよびポリスチレンを含有しないと、耐衝撃性および曲げ弾性率の両方とも悪くなった。
【0043】
比較例3は、ポリエチレン10〜85質量%、ポリプロピレン4〜85質量%およびポリスチレン5〜60質量%を含有する樹脂(A)100質量部に対し、天然水酸化マグネシウム(B)が150質量部を超える例であるが、成形が困難であった。
【0044】
比較例4は、天然水酸化マグネシウムおよび/または表面処理された非結晶成長型水酸化マグネシウム(B)に変えて表面処理されてない非結晶成長型水酸化マグネシウム非結晶成長型水酸化マグネシウムを用いた例だが、曲げ弾性率に優れるものの、耐衝撃性が悪く、また、「電気用品の技術上の基準を定める省令別表第二附表第二十四の耐燃性試験」(難燃性試験1)において、前記樹脂組成物を成形してなる成形体から得られた試験試料の炎が60秒以内には消えず、難燃性も悪いものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン10〜85質量%、ポリプロピレン4〜85質量%およびポリスチレン5〜60質量%を含有する樹脂(A)100質量部に対し、無機物(B)30〜150質量部を含有する樹脂組成物あって、「電気用品の技術上の基準を定める省令別表第二附表第二十四の耐燃性試験」または「地中電線を収める管又はトラフの「自消性のある難燃性」試験方法JESC E7003(2005)」において、前記樹脂組成物を成形してなる成形体から得られた試験試料の炎が60秒以内に消えることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂(A)が、廃棄プラスチックおよび/またはポリオレフィン系ノンハロゲン難燃樹脂を1〜100質量%含むことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記無機物(B)が、水酸化マグネシウムを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記無機物(B)が、天然水酸化マグネシウム及び/又は表面処理された非結晶成長型水酸化マグネシウムを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂組成物を成形してなる成形体がJIS Z 8729における明度が65以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記無機物(B)が、酸化チタンを樹脂(A)100質量部に対し0.7〜25質量部含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。
【請求項8】
トラフであることを特徴とする請求項7に記載の成形体。

【公開番号】特開2008−63558(P2008−63558A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127399(P2007−127399)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】