説明

樹脂組成物の製造方法

【課題】PPやPOMに代表される樹脂材料(プラスチック、エンジニアリングプラスチック)同士、あるいは、それら樹脂材料と異種材料(ガラス、金属及びセラミックス等)との間の接着剤又はシール材として用いられ、優れた接着性を有し、かつ耐薬品性、ガスバリア性、機械的強度、弾性、作業性にも優れた樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】樹脂材料同士、又は樹脂材料とガラス、金属及びセラミックスから選ばれる異種材料との間の接着剤として用いられる樹脂組成物の製造方法であって、シリコーン樹脂(A)及びポリオレフィン樹脂(B)を主成分とし、重量比(A):(B)が1:99〜90:10である原材料を、80〜200℃に加温しながら混練することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤又はシール材として用いられる樹脂組成物の製造方法に関する。さらに詳しくは、主に、ポリプロピレンやポリアセタール等の難接着性の樹脂材料(プラスチック、エンジニアリングプラスチック)同士、又は樹脂材料とガラス、金属もしくはセラミックス等の異種材料とを接合するための接着剤として、あるいは樹脂材料同士、又は樹脂材料と異種材料との間のシール材として用いられる樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン(PP)は、低比重、低コストであり、耐熱性、機械的性質、耐薬品性、供給面においても優れたプラスチック材料である。また、ポリアセタール(POM)は優れた機械的特性、摩耗・摩擦特性を兼ね備えたエンジニアリングプラスチックである。さらに、その他の樹脂材料についても、金属等の原材料の代替品として検討され始めており、その用途は近年ますます増加している。
【0003】
特に、汎用プラスチックの中心的材料であるPPはそれ自体で幅広い特性を持っているだけでなく、他の素材との複合化等によりさらに物性範囲を広げることができる。例えば、自動車のモジュール化の進展により各種モジュールの構造部品の金属代替材料としてガラス長繊維強化PPの採用が増加しており、燃費節減が課題である自動車分野での中心樹脂材料として発展していくことが期待される。その他の分野でも、熱可塑性樹脂の特長である良成形性を有しており、価格も比較的安価であるので、包装材料、繊維、容器、あるいは自動車部品、構造材等の工業用途に広く使用されている。また、PPは、CO排出源単位が再優良水準の樹脂であり、易リサイクル性を有し、サーマルリサイクルも容易である。これらの特徴を生かして、今後も新規用途への応用ととともに需要も拡大していくと考えられる。
【0004】
また、POMは、エンジニアリングプラスチックの一つであり、高い結晶性を有する樹脂である。優れた機械特性、摩耗・摩擦特性を兼ね備えており、成形加工も比較的容易であり、エンジニアリングプラスチックの中でも極めて摺動性に優れた特性を有している。代替の難しい樹脂であることから、自動車分野、電気・電子分野、OA分野等における需要が世界的に伸びている。
【0005】
これに伴い、樹脂材料の適用技術も多種多様化しており、樹脂材料を他の材料(ガラス、金属及びセラミックス等)に接合するような機会も増えている。
【0006】
しかし、樹脂材料の接合には接着剤が頻繁に使用されているが、PPやPOM等の難接着性の樹脂材料に対して良好な接合力を有する接着剤がないのが現状である。これは、それら樹脂材料の構造中に反応性官能基が乏しく化学結合を形成しにくいことが原因である。十分な接着性を得るためには、火炎処理、プラズマ放電処理、コロナ放電処理、UV処理、プライマー処理等を行い、被着材表面のエッチングや改質を行う必要があるが、製造コストや時間がかかるという欠点があった。
【0007】
樹脂材料同士であれば、熱接着による接合も頻繁に行われているが、熱変形する等の問題があり、異種材料(ガラス、金属及びセラミックス等)と接合する場合には十分な接着性が得られないという問題があった。異なる材料同士を接合するための接着剤として、例えば(特許文献1)には、少なくともフェニルヘプタメチルシクロテトラシロキサン及び2,6−シス−ジフェニルヘキサメチルシクロテトラシロキサンを含むシリコンレジンからなる接着剤が開示されている。この接着剤は、耐熱性に優れ、ガス発生が少ないという特性を有するが、200〜300℃の温度で硬化させる熱硬化型の接着剤であり、この加熱工程に耐える樹脂材料はスーパーエンジニアリングプラスチックのみであって、PPやPOM等の汎用プラスチック材料もしくはエンジニアリングプラスチック材料の接着には適しておらず、改良の余地があった。
【0008】
一方、シール材は、水密性や気密性を得るために充填される材料として、自動車や電子機器等に幅広く使用されている。シール材には高い気密性が求められ、また使用用途によっては、その他の性能として、シールする被着材への接着性、シールした部分の動きに追従し変形するための弾性、さらにその動きに繰り返し耐えるための機械的強度等が求められる。
【0009】
電極基板や樹脂フィルムの間に薬品を封止する用途にもシール材が使用されている。例えば、色素増感型太陽電池では、ガラス板に透明導電膜を蒸着した2枚の電極基板の間に電解液を封入するためシール材が用いられている。したがって、シール材には電解液が漏れないようにするためのガスバリア性、電解液に侵食されないための耐薬品性等が求められる。すなわち、シール材には、接着性、弾性、機械的強度、ガスバリア性、耐薬品性等の様々な機能が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−182959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来の状況に鑑み、本発明は、PPやPOMに代表される樹脂材料(プラスチック、エンジニアリングプラスチック)同士、あるいは、それら樹脂材料と異種材料(ガラス、金属及びセラミックス等)との間の接着剤又はシール材として用いられ、優れた接着性を有し、かつ耐薬品性、ガスバリア性、機械的強度、弾性、作業性にも優れた樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題に対し、本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、シリコーン樹脂とポリオレフィン樹脂とを特定の温度条件下でブレンドすることによって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。すなわち本発明の要旨は以下の通りである。
【0013】
(1)樹脂材料同士、又は樹脂材料とガラス、金属及びセラミックスから選ばれる異種材料との間の接着剤として用いられる樹脂組成物の製造方法であって、シリコーン樹脂(A)及びポリオレフィン樹脂(B)を主成分とし、重量比(A):(B)が1:99〜90:10である原材料を、80〜200℃に加温しながら混練する前記樹脂組成物の製造方法。
(2)シリコーン樹脂(A)が、アルキル基、アリール基、ヒドロキシル基及び水素から選ばれる一以上の基が側鎖として主鎖のSiに結合した構造を有する前記(1)に記載の樹脂組成物の製造方法。
(3)シリコーン樹脂(A)の重量平均分子量が、1,000〜400,000である前記(1)又は(2)に記載の樹脂組成物の製造方法。
(4)ポリオレフィン樹脂(B)が、エチレン系ポリマー、又はプロピレン系ポリマーを含む前記(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【0014】
(5)重量比(A):(B)が70:30〜30:70である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
(6)樹脂組成物がホットメルト系の樹脂組成物である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
(7)樹脂組成物が、ペースト状、スティック状、ブロック状又はシート状に形成される前記(1)〜(6)のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
(8)樹脂組成物が、樹脂材料同士、又は樹脂材料とガラス、金属及びセラミックスから選ばれる異種材料との間のシール材として用いられる前記(1)〜(7)のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、樹脂材料(プラスチック、エンジニアリングプラスチック等)同士、あるいは樹脂材料と異種材料(ガラス、金属及びセラミックス等)との接着に際して優れた接着性を示す樹脂組成物を得ることができる。特に、本発明によって製造される樹脂組成物は、PP等の難接着性である樹脂材料に対してプライマー処理等を行うことなく適用することができる。
さらに、本発明によって製造される接着剤及びシール材は、耐薬品性、弾性、機械的強度、ガスバリア性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】接着剤の製造工程を説明するための模式図である。
【図2】接着剤の塗布に使用するディスペンサーを示す側面図である。
【図3】被着材と被着材との接着物を示す断面図である。
【図4】ポリプロピレン樹脂と黒色セラミックペーストをガラスの表面に焼成したもの(以下、黒セラガラスという)との接着物を示す断面図である。
【図5】漏洩試験用のチャンバーの内部構造を示す斜視図である。
【図6】漏洩試験用のチャンバーを用いたリーク検査方法を示す断面図である。
【図7】耐薬品試験用のチャンバーを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物の製造方法は、シリコーン樹脂(A)及びポリオレフィン樹脂(B)を主成分とする原材料を、80〜200℃に加温しながらブレンド(混練)することを特徴とする。得られた樹脂組成物を接着剤又はシール材として用いることにより、樹脂材料同士、又は樹脂材料とガラス、金属及びセラミックスから選ばれる異種材料との間を良好に接合し、あるいはシールすることができる。その際、被着体の表面を予めプライマー処理等する必要がない。なお、「主成分とする」とは、シリコーン樹脂(A)及びポリオレフィン樹脂(B)の合計量が、樹脂組成物全体の50〜100重量%を占めることをいい、それ以外の成分として、後述するような種々の充填材や添加剤を含んでも良い。
【0018】
シリコーン樹脂(A)は、側鎖となるアルキル基、アリール基、ヒドロキシル基及び水素から選ばれる一以上の基が、シロキサン結合からなる主鎖のSiに結合した構造を有するものであれば良く、直鎖状もしくは分岐状のいずれのシリコーン樹脂も適用可能である。また、それらのシリコーン樹脂をアルキド、エポキシ、フェノール、アクリル、メラミン樹脂等により変性させた変性シリコーン樹脂も使用することができる。アルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであっても良く、好ましくは炭素数1〜30のアルキル基である。例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、t −ペンチル基、デシル基、イソデシル基、t−デシル基、n−イコシル基、イソイコシル基、t−イコシル基、n−トリアコンチル基、イソトリアコンチル基、t―トリアコンチル基等を挙げることができる。また、アリール基としては、ベンゼン環、2〜3個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環とヘテロ5員環が縮合環を形成したもの、あるいは、それらの任意の位置が上記アルキル基や、アルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基等によって置換された基が適用可能である。例として、フェニル基、ナフチル基、トリル基、メチルフェニル基、クロロフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、フルオロフェニル基、ヒドロキシナフチル基、アントリル基等を挙げることができる。このようなシリコーン樹脂(A)の例としては、ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリフルオロメチルシロキサン、ポリクロロフェニルシロキサン、ヘキサメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ポリオキシエチレンメチルシロキサン、ポリオキシプロピレンオレイルメチルシロキサン、又はこれらの一以上の物質の混合物もしくは共重合体を挙げることができる。
【0019】
シリコーン樹脂(A)の重量平均分子量は、良好な接着性、耐薬品性、機械的特性を得る観点から、1,000〜400,000、好ましくは200,000〜300,000とすることが好ましい。なお、重量平均分子量は、クロロホルムを溶媒とし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量をいう。また、シリコーン樹脂(A)の密度は0.80〜1.40g/cm(温度23℃での値)であることが好ましい。
【0020】
ポリオレフィン樹脂(B)としては、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体等のエチレン系ポリマー、ポリプロピレン(アタクチック、アイソタクチック)、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−ジエン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体等のプロピレン系ポリマー、ポリ−4−メチルペンテン、4−メチル−1−ペンテンと他のα−オレフィンとの共重合体等の4−メチルペンテン系ポリマー、ポリブテン等のブテン系ポリマー、ポリシクロオレフィン等、あるいはこれらの一種以上の混合物等を挙げることができる。また、ポリエチレンワックス等のポリオレフィンワックスも適用可能である。その中でも、ポリエチレン又はポリプロピレンに対し、エチレン、プロピレン、ブテン等の炭化水素レジン、及び/又は第三成分を共重合させたポリエチレン共重合体又はポリプロピレン共重合体が好ましく用いられる。
【0021】
シリコーン樹脂(A)及びポリオレフィン樹脂(B)の重量比(A):(B)は、1:99〜90:10、好ましくは20:80〜80:20、より好ましくは30:70〜70:30である。特に、40:60〜50:50であると、樹脂組成物を使用する際の作業性と接着強度とのバランスに優れるため最も好ましい。(A):(B)が90:10より大きい(例えば95:5)の場合は、シリコーン樹脂(A)及びポリオレフィン樹脂(B)が分離して相溶せず、得られる樹脂組成物の接着強度が不十分となるため不適である。
【0022】
上記シリコーン樹脂(A)及びポリオレフィン樹脂(B)に対し、必要に応じて、さらに種々の充填材や添加剤を加えても良い。このような充填材及び添加剤の例としては、無機充填材、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、熱安定剤、離型剤、造核剤、可塑剤、導電性付与剤、帯電防止剤、着色防止剤、着色剤、顔料、染料、シランカップリング剤等を挙げることができる。充填材及び添加剤の量は、合計量として樹脂組成物中50重量%以下とすることが好ましい。
【0023】
シリコーン樹脂(A)、ポリオレフィン樹脂(B)、並びに必要に応じて他の充填材及び添加剤を所定の割合で容器内に入れ、80℃〜200℃、好ましくは160〜180℃で加温しながら混練を行い、樹脂組成物を製造する。シリコーン樹脂の軟化温度が30〜40℃、ポリオレフィン樹脂の軟化温度が90〜150℃であるため、200℃を超える温度で加温を行うと、シリコーン樹脂が硬化し始め、相溶性が悪化し、ポリオレフィン樹脂が分解を生じる等の問題が起こるため不適である。混練する際は、撹拌機等の装置を用いて行い、混練時間は0.5〜3時間程度とすることが好ましい。その後、好ましくは、真空チャンバー中で真空排気しながら1,000Pa〜1Pa範囲の減圧下でブレンド時に混入した気泡を脱泡処理し、160℃における生成物の粘度を100Pa・s以下に調整し、ペースト状の樹脂組成物を得る。あるいは、接着剤・シール材としての取扱い性、作業性を考慮して、樹脂組成物をスティック状、ブロック状、又はシート状に成形することができる。
【0024】
本発明によって得られる樹脂組成物は、常温では固体であり、加熱溶融することで液状化し、これを被着体に塗布し冷却固化させることによって接合が形成される熱可塑性(ホットメルト系)の接着剤及びシール材である。したがって、高温による熱変形等が憂慮される樹脂材料の接着・封止に適している。また、ポリプロピレン等の難接着性材料に適用した場合でも、良好な接着性を得ることができる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳述するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される範囲内での各要素の置換や設計変更、工程順の変更等がなされたものをも包含する。
【0026】
以下の実験におけるシリコーン樹脂として、シロキサン結合の主鎖にメチル基、フェニル基、及びヒドロキシル基の側鎖を有し、重量平均分子量が200,000〜300,000、密度が1.22g/cmであるiシールN(商品名;株式会社エス・エフ・シー社製)を用いた。
【0027】
(実施例1)
iシールNと、主成分がエチレン−プロピレン−ジエン共重合体からなるポリオレフィン樹脂を、図1に示すような容器1にiシールN:ポリオレフィン樹脂の重量比が40:60になるように加えた。次いで、真空チャンバー2中でホットプレート3を160℃に加熱し、iシールNとポリオレフィン樹脂を軟化させた状態で2時間ブレンド(混練)を行い、その後、ホットプレート3上で160℃に加熱しながら1,000Pa程度の真空度で10分間真空排気して脱泡処理を行い、粘度を約50〜100Pa・sに調整した。次に、ホットプレート3を冷却しながら雰囲気を大気に戻し、接着剤として用いる固体状の樹脂組成物4を製造した。
【0028】
(実施例2)
iシールNと、主成分がエチレン−プロピレン−ジエン共重合体からなるポリオレフィン樹脂を、図1に示すような容器1にiシールN:ポリオレフィン樹脂の重量比が40:60になるように加えた。次いで、真空チャンバー2中でホットプレート3を160℃に加熱し、iシールNとポリオレフィン樹脂を軟化させた状態で2時間ブレンド(混練)を行い、その後、ホットプレート3上で160℃に加熱しながら1,000Pa程度の真空度で10分間真空排気して脱泡処理を行い、粘度を約50〜100Pa・sに調整し、ペースト状の樹脂組成物4を得た。このペースト状の樹脂組成物4をテフロンシート上に平滑に塗布し、樹脂組成物を−20℃以下に冷却した後、テフロンシートから剥離し、室温に戻して厚さ200μmのシート状の樹脂組成物を得た。また、ペースト状の樹脂組成物4をテフロンで作製したいくつかの型に流し込み、樹脂組成物を−20℃以下に冷却し、テフロンの型から樹脂組成物を取り出し、室温に戻して長さ30mm、φ25mmのブロック状の樹脂組成物、及び長さ50mm、10mm角のスティック状の樹脂組成物を得た。
【0029】
(試験例1:接着強度評価)
得られた樹脂組成物を用いて、下記の各被着材の組合せにおける引張接着強度を評価した。
【0030】
a)被着材の組合せ1
ポリプロピレン角柱(□12.7mm×長さ38mm)とポリプロピレン角柱(□12.7mm×長さ38mm)。
b)被着材の組合せ2
ポリプロピレン角柱(□12.7mm×長さ38mm)とテフロン(登録商標)角柱(□12.7mm×長さ38mm)。
c)被着材の組合せ3
ポリプロピレン角柱(□12.7mm×長さ38mm)とSUS304角柱(□12.7mm×長さ38mm)。
d)被着材の組合せ4
ポリプロピレン角柱(□12.7mm×長さ38mm)とA5052角柱(□12.7mm×長さ38mm)。
e)被着材の組合せ5
ポリアセタール角柱(□12.7mm×長さ38mm)とポリアセタール角柱(□12.7mm×長さ38mm)。
f)被着材の組合せ6
ポリアセタール角柱(□12.7mm×長さ38mm)とテフロン角柱(□12.7mm×長さ38mm)。
g)被着材の組合せ7
ポリアセタール角柱(□12.7mm×長さ38mm)とSUS304角柱(□12.7mm×長さ38mm)。
h)被着材の組合せ8
ポリアセタール角柱(□12.7mm×長さ38mm)とA5052角柱(□12.7mm×長さ38mm)。
i)被着材の組合せ9
ポリエチレン角柱(□12.7mm×長さ38mm)とポリエチレン角柱(□12.7mm×長さ38mm)。
j)被着材の組合せ10
ABS角柱(□12.7mm×長さ38mm)とABS角柱(□12.7mm×長さ38mm)。
k)被着材の組合せ11
PBT角柱(□12.7mm×長さ38mm)とPBT角柱(□12.7mm×長さ38mm)。
【0031】
(比較例1)
上記の試験例1に対する比較例として、ポリオレフィン系ホットメルト接着剤966P(三洋貿易株式会社製)を用いて、下記の被着材の組合せにおける引張接着強度を評価した。
【0032】
l)被着材の組合せ12
ポリプロピレン角柱(□12.7mm×長さ38mm)とポリプロピレン角柱(□12.7mm×長さ38mm)。
【0033】
(比較例2)
上記の試験例1に対する比較例として、ポリオレフィン系ホットメルト接着剤777V2(加越株式会社製)を用いて、下記の被着材の組合せにおける引張接着強度を評価した。
【0034】
m)被着材の組合せ13
ポリプロピレン角柱(□12.7mm×長さ38mm)とポリプロピレン角柱(□12.7mm×長さ38mm)。
【0035】
(比較例3)
上記の試験例1に対する比較例として、ポリオレフィン系ホットメルト接着剤MZ282(コニシ株式会社製)を用いて、下記の被着材の組合せにおける引張接着強度を評価した。
【0036】
n)被着材の組合せ14
ポリプロピレン角柱(□12.7mm×長さ38mm)とポリプロピレン角柱(□12.7mm×長さ38mm)。
【0037】
(1)試験片作製方法
接着剤として上記実施例2で得たブロック状の樹脂組成物4を用いた。まず、図2に示す装置を用い、樹脂組成物4をディスペンサーのシリンジ5の中に入れ、温度コントローラー6で160℃に制御したヒーター7で加熱し、樹脂組成物4を軟化させて、ペースト状とした。次いで、シリンジ5内に圧力をかけ、ステージ8上に置いた被着材9に樹脂組成物4を塗布し、接着面積が12.7mm×12.7mmとなるように2本の被着材9をすばやく貼り合わせ、固定し、室温まで冷却して図3に示すような接着試験片を作製した。また、シリンジ内の接着剤を変更する以外は比較例1〜3も同様にして接着試験片を作製した。
【0038】
(2)引張接着強度測定
上記の各被着材の組合せa〜nを用いて、上記(1)に従って試験片を作製し、その後24時間養生を行い、養生後の試験片についてJIS K6849による引張接着強度の測定を行った。測定は(株)島津製作所社製オートグラフを用い、引張速度10mm/分、測定雰囲気温湿度23℃(50%)で行い、ピーク強度を接着強度とした。測定結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
(比較結果)
表1の結果から、本発明の樹脂組成物(試験例1)は、比較例1〜3に比べて良好な接着性を示した。
また、本発明の樹脂組成物は、プライマー処理等を行うことなく、樹脂材料同士、あるいは樹脂材料と異種材料との接着に対して良好な接着性を示すことが明らかとなった。
【0041】
(試験例2)
図4に示すように、被着材として厚さ3.4mm、30mm角の、黒セラガラス10と接着面の直径が16mmのピン形状のポリプロピレン樹脂11を用いて接着試験用の試料を作製した。作製は次の手順で行った。接着剤として上記実施例2で得たブロック状の樹脂組成物4を用いた。まず、図2に示す装置を用い、樹脂組成物4をディスペンサーのシリンジ5の中に入れ、温度コントローラー6で160℃に制御したヒーター7で加熱し、樹脂組成物4を軟化させて、ペースト状とした。次いで、シリンジ5内に圧力をかけ、ピン形状のポリプロピレン樹脂11に樹脂組成物4を塗布し、すばやく黒セラガラス10に貼り合わせ、固定し、室温まで冷却して接着試験用の試料を得た。試料作製後、24時間養生を行い、垂直方向の引張強度を測定したところ、負荷が200Nを超えたところでピン形状のポリプロピレン樹脂が破断した。この結果から、ピン形状のポリプロピレン自体の樹脂強度より接着強度が優れていることがわかった。
【0042】
(試験例3)
図5に示すように、被着材として厚さ1.8mm、50mm角の、直径2mmの穴の開いた青板ガラス12と、厚さ1.8mm、50mm角の青板ガラス13と、厚さ0.15mm、5mm角のスペーサー14(スライドガラス)とを用いて接着試験用の試料を作製した。作製は次の手順で行った。接着剤として上記実施例2で得たブロック状の樹脂組成物4を用いた。まず、図2に示す装置を用い、樹脂組成物4をディスペンサーのシリンジ5の中に入れ、温度コントローラー6で160℃に制御したヒーター7で加熱し、軟化させた。続いて、青板ガラス13をディスペンサーのステージ8上に設置し、加温しながらシリンジ5内に圧力をかけ、青板ガラス13の外周に樹脂組成物4を塗布した。次に、青板ガラス13上の、樹脂組成物4を塗布した領域の内側にスペーサー14を設置し、穴の開いた青板ガラス12と青板ガラス13とを重ね合わせ接着し、漏洩試験用試料として真空排気可能なチャンバー15を作製した。図6に示すように、漏洩試験用試料であるチャンバー15を室温にてヘリウムリークディテクター16(ASM180、ALCATEL社製)に接続し、ヘリウムガスをチャンバー15の周辺に吹きかけてリーク検査を行った。その結果、検出限界以下の真空気密性が確認された。さらに、この漏洩試験試料を、有機溶媒としてアセトニトリルに60分間浸した後、再び室温にてリーク検査を行ったところ、有機溶媒に浸す前と同程度の検出限界以下の真空気密性が確認でき、耐薬品性にも優れていることが確認された。
【0043】
(試験例4)
図7に示すように、被着材として厚さ1.8mm、50mm角の、直径2mmの穴が2箇所開いた青板ガラス17と、厚さ1.8mm、50mm角の青板ガラス13と、厚さ0.15mm、5mm角のスペーサー14とを用いて接着試験用の試料を作製した。作製は次の手順で行った。接着剤及びシール材として上記実施例2で得たシート状の樹脂組成物4を用いた。まず、上記実施例2で得たシート状の樹脂組成物4を青板ガラス13の形状に合わせ、厚さ200μm、50mm角の、中央部がくり抜かれた四角形状(各辺の幅2mm)に裁断した。続いて、この四角形状の樹脂組成物4を青板ガラス13の外周に合わせて設置し、ホットプレート上で加熱し、樹脂組成物4を軟化させることによって塗布した。次に、青板ガラス13上の、樹脂組成物4を塗布した領域の内側にスペーサー14を設置し、穴の開いた青板ガラス17と青板ガラス13とを重ね合わせ接着し、耐薬品試験用試料として溶液の注入可能なチャンバー18を作製した。そして、青板ガラス17の直径2mmの穴から溶液19(アセトニトリル)を注入し、チャンバー18内を溶液19で満たした後、青板ガラス17の直径2mmの穴を樹脂組成物4で封止した。この試料について耐薬品性を検査した結果、3ヶ月以上にわたり、内部からの溶液19の漏洩はなく、また、樹脂組成物4の溶解、浸透、膨潤もなく、ガスバリア性、耐薬品性に優れていることが確認された。
【0044】
(比較例4)
上記実施例1と同様のシリコーン樹脂とポリオレフィン樹脂とを、実施例1と同じ重量比で配合し、これを60℃及び220℃に加温しながら2時間ブレンド(混練)し、樹脂組成物を作製した。
【0045】
比較例4の樹脂組成物は、実施例1による樹脂組成物と比較して、60℃で混練した場合にはシリコーン樹脂及びポリオレフィン共重合体の相溶性が悪く、得られる樹脂組成物の性能にばらつきが見られた。また、220℃で混練した場合にはシリコーン樹脂がゲル化し、またポリオレフィン共重合体が酸化等を起こし、樹脂組成物全体のゲル化や変色等の性能劣化が見られた。
【0046】
以上の結果から、シリコーン樹脂及びポリオレフィン系樹脂を主成分とする原材料を80℃〜200℃に加温しながら混練することによって、樹脂組成物における相溶性が向上し、性能が安定化することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の方法は、樹脂材料(プラスチック、エンジニアリングプラスチック)同士の接着剤、樹脂材料とガラス、金属、セラミックス等の異種材料との接着剤の製造に用いることができる。また、樹脂材料からなるジグを固定するための樹脂組成物や、シール材・封止材の製造に用いることができる。さらに、包装・電気・電子・自動車・玩具・装飾・皮革・家具・木工・建築・インテリア・製造組立分野等における接着剤、シール材の製造に利用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 容器
2 真空チャンバー
3 ホットプレート
4 樹脂組成物
5 シリンジ
6 温度コントローラー
7 ヒーター
8 ステージ
9 被着材
10 黒セラガラス
11 ピン形状のポリプロピレン樹脂
12 穴の開いた青板ガラス
13 青板ガラス
14 スペーサー
15 チャンバー
16 ヘリウムリークディテクター
17 2箇所穴の開いた青板ガラス
18 チャンバー
19 溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料同士、又は樹脂材料とガラス、金属及びセラミックスから選ばれる異種材料との間の接着剤として用いられる樹脂組成物の製造方法であって、シリコーン樹脂(A)及びポリオレフィン樹脂(B)を主成分とし、重量比(A):(B)が1:99〜90:10である原材料を、80〜200℃に加温しながら混練する前記樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
シリコーン樹脂(A)が、アルキル基、アリール基、ヒドロキシル基及び水素から選ばれる一以上の基が側鎖として主鎖のSiに結合した構造を有する請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
シリコーン樹脂(A)の重量平均分子量が、1,000〜400,000である請求項1又は2に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
ポリオレフィン樹脂(B)が、エチレン系ポリマー、又はポリプロピレン系ポリマーを含む請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
重量比(A):(B)が70:30〜30:70である請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
樹脂組成物がホットメルト系の樹脂組成物である請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
樹脂組成物が、ペースト状、スティック状、ブロック状又はシート状に形成される請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
樹脂組成物が、樹脂材料同士、又は樹脂材料とガラス、金属及びセラミックスから選ばれる異種材料との間のシール材として用いられる請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−26477(P2011−26477A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174639(P2009−174639)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(500357552)株式会社エス・エフ・シー (20)
【Fターム(参考)】