説明

樹脂組成物及び光ファイバケーブル

【課題】難燃性に優れると共に、火災時であっても有毒ガスを発生させる恐れの少ない樹脂組成物及び光ファイバケーブルを提供することを目的としている。
【解決手段】水酸化マグネシウム100質量部に対し、エチレン酢酸ビニル共重合体35〜65質量部、メラミンシアヌレート5〜25質量部含むことを特徴とする樹脂組成物及びそれで被覆された光ファイバケーブル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び光ファイバケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報伝送路として光ファイバを用いる光通信技術は急速に進歩し、広く普及している。この光ファイバには、長距離通信用の石英光ファイバと短距離通信用のプラスチック光ファイバの2種類がある。後者のプラスチック光ファイバは、素材としてポリメチルメタクリレート、ポリカーボネートのような透明性に優れた熱可塑性樹脂を用い、芯部分が鞘部分よりも屈折率が高くなるような同心型の形態を有し、その一端から入射した光を芯鞘の界面で全反射させながら、他端に伝送するものである。このようなプラスチック光ファイバは、通常耐熱性や強度を付与するために、裸線や素線を例えば6−ナイロン、6,6−ナイロンなどのポリアミド、高密度ポリエチレン、架橋ポリエチレン、ポリアセタール、ポリプロピレンなどの被覆材を用いて被覆している。プラスチック光ファイバケーブルはFA機器、OA機器、自動車、家電製品、パネル配線などに用いられている。
【0003】
ところで、近年、プラスチック製品を前記用途などに使用する場合、難燃化規制が厳しくなってきており、したがって、前記用途などに用いられるプラスチック光ファイバケーブルも良好な難燃性を有することが要望されている。プラスチック光ファイバケーブルに難燃性を付与するためには通常、被覆材として塩化ビニル樹脂を使用する手段がとられており、また、場合によってはハロゲン系難燃剤や水酸化マグネシウムや赤リンなどを添加したポリエチレン系樹脂などが用いられている。例えば、難燃剤に水酸化マグネシウムと赤リンとを所定の割合で含有するポリエチレン系樹脂組成物を用いたものとして、UL規格1581のVW−1フレーム(flame)試験に合格する難燃性を有するものが実用化されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−257105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、被覆材として塩化ビニル樹脂を用いる場合、得られるプラスチック光ファイバケーブルには良好な難燃性が付与されるものの、被覆材が燃えた場合に塩化水素ガス等の有毒ガスが発生してしまい、火災時の安全性に欠ける恐れがある。また廃棄処理時の環境負荷が問題となる場合もある。赤リンを配合した組成物の場合は、吸湿しやすく押出加工性が低下する上、加工時あるいは火災時の熱で有毒なホスフィンを発生する恐れがある。このように光ファイバケーブルの被覆材は難燃性のみではなく、火災時の安全性も同時に求められている。
上記事情のもと、本発明は難燃性に優れると共に、火災時であっても有毒ガスを発生させる恐れの少ない樹脂組成物及び光ファイバケーブルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、エチレン酢酸ビニル共重合体、水酸化マグネシウム、メラミンシアヌレートを所定の割合で含有する樹脂組成物が難燃性に優れること、そして該樹脂組成物が光ファイバの被覆層に好適に用いることが出来ることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]水酸化マグネシウム100質量部に対し、エチレン酢酸ビニル共重合体35〜65質量部、メラミンシアヌレート5〜25質量部含むことを特徴とする樹脂組成物。
[2]該樹脂組成物中に水酸化マグネシウム100質量部に対し、さらに15〜35質量部のエチレン・1−オクテン共重合体を含むことを特徴とする[1]に記載の樹脂組成物。
[3]該エチレン・1−オクテン共重合体中の1−オクテン成分の含有量がエチレン・1−オクテン共重合体全量に対し5〜30質量%であることを特徴とする[2]に記載の樹脂組成物。
[4]該樹脂組成物中に水酸化マグネシウム100質量部に対し、さらに1〜8質量部のエチレン・1−ブテン共重合体を含むことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[5]該エチレン・1−ブテン共重合体中の1−ブテン成分の含有量がエチレン・1−ブテン共重合体全量に対し5〜30質量%であることを特徴とする[4]に記載の樹脂組成物。
[6]該エチレン酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル成分の含有量がエチレン酢酸ビニル共重合体全量に対し20〜50質量%であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[7]該樹脂組成物のメルトフローインデックスが0.01g/10分ないし1.0g/10分である[1]〜[6]のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[8]裸線が[1]〜[7]のいずれか1項に記載の樹脂組成物で被覆されていることを特徴とする光ファイバケーブル。
[9]樹脂を主成分とする芯と、該芯の周囲を取り囲む上記芯を構成する樹脂よりも屈折率の低い樹脂を主成分とする鞘と、該鞘の周囲を取り囲む被覆層と、を有するプラスチック光ファイバケーブルであって、該被覆層が、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の樹脂組成物から形成されることを特徴とするプラスチック光ファイバケーブル。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、難燃性に優れると共に、火災時であっても有毒ガスを発生させる恐れの少ない樹脂組成物及び光ファイバケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態のプラスチック光ファイバケーブルの一態様の断面図である。
【図2】本実施形態のプラスチック光ファイバケーブルの一態様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0011】
本発明のプラスチック光ファイバケーブル(図1)、または、多芯プラスチック光ファイバケーブル(図2)の概略図は図1、図2のようになる。
光ファイバ裸線1の周囲を被覆する被覆層2が、エチレン酢酸ビニル共重合体、水酸化マグネシウム、メラミンシアヌレートを所定の割合で含有する樹脂組成物からなる被覆層であると、難燃性に優れたプラスチック光ファイケーブルとなる。
【0012】
樹脂組成物中に含まれるエチレン酢酸ビニル共重合体の含有量は、水酸化マグネシウム100質量部に対し35〜65質量部であることが好ましい。より好ましくは45〜55質量部である。樹脂組成物中のエチレン酢酸ビニル共重合体の含有量が上記範囲であると、水酸化マグネシウムや以下に説明するメラミンシアヌレートといった難燃剤や難燃助剤を均一に分散させることができ、難燃性に優れた被覆層とすることができる。また、樹脂組成物中に含まれるエチレン酢酸ビニル共重合体と水酸化マグネシウムの添加量の比率が上記範囲であると、難燃性の付与効果が十分に発揮され、被覆材成型時の樹脂組成物の流動性を十分に確保することができ、更に、被覆材の機械的強度も十分に確保することが出来るため好ましい。また、エチレン酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル成分の含有量が、エチレン酢酸ビニル共重合体全量に対し20〜50質量%であると、難燃剤の分散がより均一になり、高い成型性と高い屈曲性を備えることが出来るため好ましい。より好ましくは30〜40質量%である。樹脂組成物中の水酸化マグネシウム含有量は樹脂組成物中のマグネシウム含有量を元素分析で測定することによって測定することができる。
【0013】
樹脂組成物中に含まれるメラミンシアヌレートは水酸化マグネシウム100質量部に対し5〜25質量部であることが好ましい。より好ましくは10〜20質量部である。メラミンシアヌレートの添加量が水酸化マグネシウム100質量部に対し5質量部以上であると、燃焼不活性ガスである窒素ガスの発生が有意となり、難燃助剤としての効果が十分に発揮される。また、25質量部以下であると水酸化マグネシウムと難燃性の相乗効果を発揮しつつ、被覆材の機械的強度も十分に確保することが出来る。樹脂組成物中のメラミンシアヌレート含有量は樹脂組成物中のトータル窒素含有量を元素分析で測定することによって測定することができるため好ましい。
【0014】
また、水酸化マグネシウムとメラミンシアヌレートとを組み合わせることにより、水酸化マグネシウム単独の場合に比べて、優れた難燃性が付与することが可能となる。更に、水酸化マグネシウムとメラミンシアヌレートとを組み合わせることにより、水酸化マグネシウムの添加量を低く抑えることができるため、被覆層成形時の樹脂組成物の流動性が高くなり、成形温度を低くし得る上に、得られる光ファイバケーブルの伝送損失は光ファイバ裸線自体の伝送損失に比べてあまり増大しないという利点もある。また、該光ファイバケーブルの長期間にわたる高温高湿下の環境試験においても、伝送特性に対してほとんど悪影響を及ぼすことはないため好ましい。尚、水酸化マグネシウムとメラミンシアヌレートとを均質に分散させるために適当な分散剤を添加してもよい。
【0015】
前記樹脂組成物にさらにエチレン・1−ブテン共重合体を添加することが好ましく、水酸化マグネシウム100質量部に対しエチレン・1−ブテン共重合体1〜8質量部添加することが好ましい。より好ましくは2〜5質量部である。エチレン・1−ブテン共重合体の添加量が上記範囲であると光ファイバケーブルの曲げ強度と引っ張り強度を向上させることができ、好ましい。また、エチレン・1−ブテン共重合体中の1−ブテン成分の含有量がエチレン・1−ブテン共重合体全量に対し5〜30質量%であると、難燃剤の分散がより均一になり、高い成型性と高い屈曲性を備えることができ、好ましい。より好ましくは10〜25質量%である。
【0016】
前記樹脂組成物にさらにエチレン・1−オクテン共重合体を添加することが好ましく、水酸化マグネシウム100質量部に対しエチレン・1−オクテン共重合体15〜35質量部添加することが好ましい。より好ましくは20〜30質量部である。エチレン・1−オクテン共重合体の添加量が上記範囲であると光ファイバケーブルの曲げ強度と引っ張り強度を向上させることができるため好ましい。また、エチレン・1−オクテン共重合体中の1−オクテン成分の含有量が、1−オクテン成分単位で5〜30質量%であると、難燃剤の分散がより均一になり、高い成型性と高い屈曲性を備えることが出来る。より好ましくは10〜20質量%である。
【0017】
前記樹脂組成物中の水酸化マグネシウム、エチレン酢酸ビニル共重合体及びメラミンシアヌレートの総量は樹脂組成物全量に対し50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、特に好ましくは85質量%である。前記樹脂組成物には他に一般的に使用されている各種の添加剤、例えば、抗酸化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、金属不活性剤、滑剤、難燃(助)剤、充填剤などを本発明の目的を損なわない範囲で適宜含有させることができる。
【0018】
該樹脂組成物のメルトフローインデックスは、ASTM D−1238に準拠し、荷重2.16kg、オリフィス長さ8mm、オリフィス直径2mm、温度190℃の条件で測定した値が0.01g/10分ないし1.0g/10分、好ましくは0.02g/10分ないし0.5g/10分の範囲にあることが好ましい。メルトフローインデックスが0.01g/10分以上であると成形温度を低く保つことが出来、伝送損失を抑えることが出来る。また1.0g/10分以下であると、十分な機械的強度を確保することが出来る。
【0019】
次に本発明の光ファイバケーブルについて説明する。
本発明の光ファイバケーブルは芯と鞘とからなる裸線を、上記の本発明の難燃性の樹脂組成物で形成された被覆層で被覆したものである。被覆層は裸線上に直接被覆する構造でも良く、又、裸線に保護層を設け、その上に被覆層を設ける構造であってよい。
使用する光ファイバの種類に制限は無く、本発明の樹脂組成物による被覆層は石英光ファイバやプラスチック光ファイバ等、全ての光ファイバの種類に好適に用いることができる。特に、プラスチック光ファイバと本発明の樹脂組成物から形成される被覆層とは密着性が高く、好ましい。
【0020】
プラスチック光ファイバ裸線は、透明な芯樹脂と、芯を取り囲み該芯を構成する透明樹脂よりも屈折率の低い透明樹脂からなる少なくとも1層以上の鞘層を有する。芯樹脂としてあらゆる透明な樹脂を用いることが可能であるが、特に好ましいのはPMMA系樹脂である。即ちメチルメタクリレートを50重量%以上含んだ共重合体で、共重合可能な成分としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸エステル類、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸シクロヘキシルなどのメタクリル酸エステル類、イソプロピルマレイミドのようなマレイミド類、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンなどがあり、これらの中から一種以上適宜選択して共重合させたものなどであり、その分子量が重量平均分子量として8万〜20万程度のものが好ましく、特に10万〜12万が好ましい。
【0021】
鞘層を構成する透明樹脂としては、ビニリデンフロライド系樹脂、例えばビニリデンフロライドとテトラフロロエチレンの共重合体やビニリデンフロライドとヘキサフロロプロペンの共重合体、ビニリデンフロライドとテトラフロロエチレンとヘキサフロロプロペンの共重合体などが好ましく用いられる。そのほか、フルオロアルキルメタクリレ−ト系樹脂も鞘樹脂として好ましい。フルオロアルキルメタクリレートとしては下記一般式(1)で示される化合物であり、当該一般式で示されるフルオロアルキルメタクリレートモノマーの1種類以上と、他の共重合可能なフルオロアルキルアクリレートやアルキルメタクリレートやアルキルアクリレートなどとの共重合体である。プラスチック光ファイバ裸線の鞘樹脂が上記鞘樹脂であると、特に本発明の樹脂組成物から形成される被覆層との密着性が高く、好ましい。
【0022】
従来の難燃性光ファイバケーブルにおいては、その被覆材として通常、赤リンを含むポリエチレン系被覆材が用いられていた。その為、被覆材は赤褐色に着色されており、着色剤により着色が困難な為、内装やインテリア、デザイン家電等に用いる素材としてはおよそ不向きな素材であった。しかし、本発明に使用される難燃性樹脂組成物は白色系の自然色であるため、着色剤による自由な色への着色が可能であり、内装やインテリア等、デザイン家電に好適に用いることできる。また、通常の光ファイバケーブルのように、耐光性を付与し、光の散乱による障害を避けるために、カーボンブラック等を配合してもよい。
従来の難燃性光ファイバケーブルの被覆材はハロゲン系難燃剤や赤リンなどを添加した樹脂組成物からなる被覆材が用いられていた為、難燃性は良好であるものの、火災時に熱で有毒ガスが発生する恐れがあり、安全性に欠けるという問題があった。また、廃棄処理時の環境負荷が問題とされている。本願発明のプラスチック光ファイバケーブルの被覆材はハロゲン系難燃剤や赤リンといった難燃剤を使用しなくとも十分な難燃性を有する為、難燃性に優れるだけでなく安全性にも優れる。また、廃棄処理時の環境負荷を大幅に低減することができる。
【0023】
本発明のプラスチック光ファイバケーブルにおいては、プラスチック光ファイバ裸線の周囲を、前記樹脂組成物で被覆するが、該プラスチック光ファイバ裸線の種類については、ポリメチルメタクリレートを主体とする樹脂を芯とするものであればよく、特に制限されず、公知のプラスチック光ファイバ裸線を用いることができる。前記プラスチック光ファイバ裸線としては、通常外径0.2〜3.0mm程度のものが用いられ、また該樹脂組成物からなる被覆層の層厚は、通常0.2〜2.0mmの範囲で選ばれる。本発明の難燃性プラスチック光ファイバケーブルは、実用性の点でUL規格1581のVW−1フレーム試験に合格可能な難燃性を有することが特徴となっているが、プラスチック光ファイバ裸線外径が1mmの場合、被覆層の層厚が0.5〜0.6mmという薄い場合においてもこの試験に合格する。
本願発明のプラスチック光ファイバケーブルは、短距離の光伝送媒体として、例えばFA機器、OA機器、自動車、家電製品などに好適に用いることができる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0025】
<実施例1>
水酸化マグネシウム100質量部に対して、酢酸ビニル単位35質量%を含有するエチレン酢酸ビニル共重合体49質量部、メラミンシアヌレート15質量部、1−ブテン単位18質量%を含有するエチレン・1−ブテン共重合体3質量部、1−オクテン単位15質量%を含有するエチレン・1−オクテン共重合体25質量部、を押出し混練して、メルトフローインデックスが0.07g/10分である樹脂組成物を調製した。樹脂組成物は白色系の自然色であった。また、JIS K 7201により測定した酸素指数は35であった。
【0026】
次に、この樹脂組成物を被覆材として用い、プラスチック光ファイバ裸線ルミナスTB−1000[旭化成イーマテリアルズ(株)製、PMMA芯線径1.0mm]の周囲を成形温度180℃で図2のプラスチック光ファイバケーブルを作成した。このプラスチック光ファイバケーブル一次被覆線径は2.2mm、ダブル被覆線径は4.4mmであった。
【0027】
このようにして得られた光ファイバケーブルは、その伝送損失が使用した光ファイバ裸線のそれが129dB/kmと130dB/kmであったのに対し、136dB/kmと137dB/kmであり、大きな伝送損失の増加はなく、高性能のものであった。また、該光ファイバケーブルを温度85℃、湿度85%の環境下に168時間放置したところ、その伝送損失は152dB/kmと159dB/kmであり、安定した値を示した。なお、伝送損失は、入射開き角0.15ラジアン、650nmの波長にて、20mと2mのカットバック法で測定した。また、該プラスチック光ファイバケーブルの難燃性の試験をUL規格1581のVW−1フレーム試験に準じて行ったところ、10サンプルについてのテストですべて危なげなく合格した。さらに、このプラスチック光ファイバケーブルの引張試験を行った。チャック間距離100mmで引張速度100mm/分の条件でケーブルの伸び率が150%のところで破断した。
【0028】
<比較例1>
水酸化マグネシウム100質量部に対して、酢酸ビニル単位35質量%を含有するエチレン酢酸ビニル共重合体75質量部、メラミンシアヌレート15質量部、1−ブテン単位18質量%を含有するエチレン・1−ブテン共重合体13質量部、1−オクテン単位15質量%を含有するエチレン・1−オクテン共重合体45質量部として実施例1と同じ寸法のプラスチック光ファイバケーブルを製作した。
該プラスチック光ファイバケーブルの難燃性の試験をUL規格1581のVW−1フレーム試験に準じて行ったところ、10サンプルについてのテストで、5サンプルが燃焼時に融解物が滴下し、不合格であった。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の樹脂組成物は難燃性に優れた光ファイバケーブルの被覆材として、そして本願発明の光ファイバケーブルは難燃性に優れた短距離の光伝送媒体として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 プラスチック光ファイバ裸線
2 被覆層
3 一次被覆線径
4 ダブル被覆線径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化マグネシウム100質量部に対し、エチレン酢酸ビニル共重合体35〜65質量部、メラミンシアヌレート5〜25質量部含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
該樹脂組成物中に水酸化マグネシウム100質量部に対し、さらに15〜35質量部のエチレン・1−オクテン共重合体を含むことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
該エチレン・1−オクテン共重合体中の1−オクテン成分の含有量がエチレン・1−オクテン共重合体全量に対し5〜30質量%であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
該樹脂組成物中に水酸化マグネシウム100質量部に対し、さらに1〜8質量部のエチレン・1−ブテン共重合体を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
該エチレン・1−ブテン共重合体中の1−ブテン成分の含有量がエチレン・1−ブテン共重合体全量に対し5〜30質量%であることを特徴とする請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
該エチレン酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル成分の含有量がエチレン酢酸ビニル共重合体全量に対し20〜50質量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
該樹脂組成物のメルトフローインデックスが0.01g/10分ないし1.0g/10分である請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
裸線が請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物で被覆されていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項9】
樹脂を主成分とする芯と、該芯の周囲を取り囲む上記芯を構成する樹脂よりも屈折率の低い樹脂を主成分とする鞘と、該鞘の周囲を取り囲む被覆層と、を有するプラスチック光ファイバケーブルであって、該被覆層が、請求項1〜7のいずれか一項に記載の樹脂組成物から形成されることを特徴とするプラスチック光ファイバケーブル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−148849(P2011−148849A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8719(P2010−8719)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】