説明

樹脂製二重床上に合成樹脂製タイルを敷設する方法

【課題】 床下地上に設備空間を形成するための樹脂製二重床上に樹脂タイルを敷設するにあたり、安価で、施工が簡便であり、アースを必要としないで高い帯電防止性を有する、樹脂製二重床上に樹脂タイルを敷設する方法の提供。
【解決手段】 床下地上に設備空間を形成するための樹脂製二重床上に樹脂タイルを敷設するにあたり、二重床と樹脂タイルとの間に導電性シート層を設け、アースを必要としないことを特徴とする樹脂製二重床上に樹脂タイルを敷設する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製二重床上に合成樹脂製タイルを敷設するにあたり、その中間に導電層を設けることにより、アースを設けることなく静電気障害を低減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
OA機器の普及により、樹脂製二重床上に合成樹脂製タイルを敷設することが広く実施されている。
絶縁性の樹脂製二重床や組み床の上に施工された帯電防止処理を施してない合成樹脂タイル上を歩行した際の人体の帯電位は、コンクリート上に施工された合成樹脂タイル上よりかなり高電位となり、静電気障害が発生しやすく、この障害を取り除くために多くの提案がなされている。例えば、
(1)帯電防止性能がある床材を使用することにより、表面放散、下地への漏洩促進による帯電位の低減を図る。
(2)金属製二重床を使用することにより、下地への漏洩促進による帯電位の低減を図る。
(3)室内環境の整備、例えば加湿により人体帯電位低減を図る。
等があるが、従来の樹脂製二重床構造と床タイルをそのままで対応できるのは(3)のみである。しかし、この方法は、空間に対し十分な加湿ができない場合があったり、継続的にその効果を発揮することができない場合がある。
【0003】
特許文献1には、カーボンブラック粉末等の導電性充填剤を混合してなる導電性熱可塑性樹脂裏面層の表面に、黒鉛質炭素繊維を混合してなる着色導電性熱可塑性樹脂粒子と帯電防止界面滑性剤を混合してなる着色帯電防止性熱可塑性樹脂粒子とを混ぜ合わせた混合粒子を多重に積層/融着した混合粒子層を設けた導電性床材について示されている。
しかし、このように導電性付与に必要な量で導電性付与材が床材成分中に混合されると、床材が本来必要とする物性に悪影響があるのみならず、導電性粒子の色が床材の色合いに強く影響するようになり、床材の色合いに大きな障害となる恐れがある。
特許文献2には、目地形成用空隙部を設けて導電性の長尺床材を敷設した後、該空隙部に導電性の目地材を充填して目地を形成し、導電性の長尺床材間を電気的に一体化する導電性床の施工方法について記載され、少ないアース端子で導電性床を施工する方法を提供するものであることが示されている。
引用文献3には、シート状基材上に導電性塗料層または導電樹脂層を、さらにその上に帯電防止層を設けた合成樹脂製シート状床材であって、該シート状床材には貫通孔を設け、該貫通孔に導電性端子を挿入したものであることを特徴とする帯電防止性合成樹脂床材について記載されているがこの場合にもアースを設けることが示されている。
このように、引用文献2及び3記載の床材は何れもアースを設けることを前提としている。
【0004】
【特許文献1】実開平5−61342号公報
【特許文献2】特開平5−25917号公報
【特許文献3】特開2000−1977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、床下地上に設備空間を形成するための樹脂製二重床上に樹脂タイルを敷設するにあたり、安価で、施工が簡便であり、アースを必要としないで人体帯電位の低減性能を有する、樹脂製二重床上に樹脂タイルを敷設する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、従来広く使用されている樹脂タイルをそのまま使用することができ、且つ、アースのような特別の手段を必要としないで高い帯電防止性を有する、樹脂製二重床上に樹脂タイルを敷設する方法について鋭意検討した結果、本発明に達した。即ち、
本発明の第1は、床下地上に設備空間を形成するための樹脂製二重床上に樹脂タイルを敷設するにあたり、二重床と樹脂タイルとの間に導電性シート層を設け、アースを必要としないことを特徴とする樹脂製二重床上に樹脂タイルを敷設する方法に関する。
本発明の第2は、導電性シート層が、導電性を有するシート状物に保護フィルムを持ってラミネートされた積層物であることを特徴とする請求項1記載の樹脂製二重床上に樹脂タイルを敷設する方法に関する。
【0007】
樹脂製二重床は、近年のOA機器の普及と発展に伴い広く使用されており、高さ調整機能を有するものやそのような機能を有しないものがあるが、本発明における樹脂製二重床は何れでも良い。
本発明において、人体帯電位を低減できる理論的な根拠については後述するが、本発明においては人体に帯電した電荷をアースを通じて地中に逃がすことによって人体帯電位を低減するものではない。したがって本発明の樹脂製二重床は帯電防止性能あるいは導電性を有している必要が無い。逆に言えば帯電防止性能や導電性のない二重床に対して適用できることが本発明の最大の特徴である。しかしこのことは帯電防止性能あるいは導電性を有している樹脂製二重床を排除することを意味するものではない。絶縁性のものから表面抵抗値あるいは体積抵抗値が104Ω・cm以上の二重床が本発明の対象となる。
【0008】
樹脂タイルとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ホモジニアスビニル床タイル、コンポジションビニル床タイル、更に、発泡層を有するもの、織布、不織布を積層したもの、カーペットタイル等を含むことができる。
カーペットタイルの表層であるカーペットに使用される繊維としては、ナイロン繊維のようなポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリプロピレンのようなポリオレフィン系繊維等の合成繊維を挙げることができる。
カーペットは基布にこのような繊維をタフティング等により植設したタフトカーペットや短繊維ウエブをニードルパンチにより起毛させたニードルパンチカーペットがある。
カーペットタイルはこのようなカーペットを表層とし、裏打ち層を接着層により一体化せしめたものである。
【0009】
導電性シート層としては、アルミニウム、アルミニウム合金等金属又は合金、導電性ポリマー、カーボン等を含む導電性のあるフィルム、ネット状物、不織布からなる。
このような導電性を有するシート状物は、保護フィルムを持ってラミネートし、補強することにより、数度の剥がし、張替えが可能となる。このような保護フィルムとしては、塩化ビニル樹脂フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン等からなる。例えば、アルミニウム箔/ポリエチレンフィルム/ポリエチレンクロスからなる積層物が好ましい。
この導電性シート層の厚さは、仕上げ材表面に凹凸として目立たないような厚さが好ましく、通常、0.05〜0.5mm、好ましくは0.10〜0.20mmである。
また、この導電性シート層の表面電気抵抗値は、10−5Ω以下、特に10−6Ω程度のものが望ましい。
樹脂製二重床上に樹脂タイルを敷設する場合、あらかじめこの導電性シートを樹脂製二重床上に載置し、樹脂タイルを置き敷きしても良いし、またそれらを粘着剤で固定するようにしても良い。その場合、導電性シートを敷き込むにあたり、隣接する導電性シート同士を電気的に接続する必要はない。
【0010】
本発明において人体帯電位を低減できる理論的な根拠は必ずしも明確になってはいないが、次のように考えられる。
床面の歩行による人体帯電位については次の関係式が知られている。
(1)Q=C×V ここでQ:クーロン量、C:静電容量、V:人体帯電位
(2)C=ε×(S/L) ここでε:固有定数、S:足裏面積、L:靴底と導体までの距離
履物と床タイルの組み合わせが同じであれば発生するQは変わるはずがないが、式(1)においてC:静電容量が増加すれば自ずとV:人体帯電位は低下する。Cを大きくするには、式(2)においてL:靴底と導体までの距離を小さくすればよいことがわかる。
即ち、通常の二重床の高さは50〜300mmでこの上に厚みが約5mm前後の樹脂タイルが敷設されている。そしてこの場合、靴底と導体(コンクリート床下地は実質的に導体と見て差し支えない。)までの距離Lは55〜305mmとなる。これを、樹脂製の二重床と樹脂製床タイルとの間に導電層を設ければ前述の靴底と導体までの距離Lは5mmとなり、相対的に見かけの人体帯電位Vは10〜30分の1に低減されることとなる。理屈上は帯電位を5kV(3kV以上で電撃が生じるといわれている)溜めている人でも本発明の床面に乗れば人体帯電位は瞬時に170〜500Vに下げられる仕組みである。
そして、この効果は直土間に直接合成樹脂タイルを施工した場合(静電気障害はまったく発生しない)と同レベルにまで改善される。
【0011】
図1〜3は、本発明の効果と前記の理論を確認するために実施したものである。
まず樹脂製の二重床(高さ45mm)と樹脂製床タイルの構成(従来の床構造)からなる床面上を歩行してその際の人体帯電位を測定し、その上で歩行をやめて放電による人体帯電位の低下の様子を測定したのが図1である。自然放電による減衰はなだらかになっていることが解る。
次に、図2は、まず樹脂製の二重床(高さ45mm)と樹脂製床タイルの構成(従来の床構造)からなる床面上を歩行してその際の人体帯電位を測定し(A−B間)、直ちに樹脂製の二重床(高さ45mm)、導電層、樹脂製床タイルの構成(本発明の床構造)からなる床面上に移行しその瞬間の人体帯電位を測定し(B点)、その上で歩行して人体帯電位を測定し(B−C間)さらに従来の床構造からなる床面上に戻った場合の人体帯電位を測定し(C点)たものである。本発明の床構造部に移行した瞬間に人体帯電位は低減し、その上で歩行した後従来の床構造に戻った瞬間に人体帯電位が高くなる様子が理解できる。
図3はモルタル下地に樹脂製の床タイルを接着した床面上を歩行してその際の人体帯電位を同様にして測定したものである。モルタル下地に直接樹脂製の床タイルを接着した場合は静電障害の問題が生じるような帯電レベルにはならないことが理解できる。
本発明の効果はこれと同等のレベルにまで見かけ上の人体帯電位の低減効果が得られることが解る。
以上の実験から本発明の効果ならびに前述の理論が裏付けられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、導体シートはアースの設置を必要とせず、また導体シートに切れ目が入ってもその効果は変わらず、また、特に導電性接着剤等導電性塗布剤を必要としないため、既存二重床、床材をそのまま使用でき、廃棄物発生の抑止、過大なコスト発生の抑止が可能であり、使用環境要因に左右されずに持続的効果が得られ、手直しが容易である樹脂製二重床上に樹脂タイルを敷設する方法を提供することができた。
【実施例】
【0013】
以下実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0014】
実施例1
モルタル下地上に、高さ45mmのポリプロピレン樹脂製の二重床を配置し、更にその上に合成樹脂製タイル(床材1〜6)を敷設した床面(A)上において3mを3往復した試験者がそのまま二重床と合成樹脂製タイル(床材1〜6)との間にアルミニウム箔/ポリエチレンフィルム/ポリエチレンクロスからなる0.2mmの厚さを有する導電性シートを設けた床面(B)に移り、5秒間歩行を続けた際の人体帯電位低減効果について実験を行った。
使用した床材は、
床材1 非帯電防止性置き敷きホモジニアスビニル床タイル LF−2000(株式会社タジマ製)
床材2 非帯電防止性置き敷きホモジニアスビニル床タイル LF−3000(株式会社タジマ製)
床材3 非帯電防止性置き敷きホモジニアスビニル床タイル LF−5000(株式会社タジマ製)
床材4 非帯電防止性ホモジニアスビニル床タイル マティル5000(株式会社タジマ製)
床材5 非帯電防止性ポリプロピレン製パイルのカーペットタイル タピスプレーヌII(株式会社タジマ製)
床材6 非帯電防止性置き敷きホモジニアスビニル床タイル 試作品(株式会社タジマ製)である。
[試験条件]
気温:20℃ 湿度:32%
試験者の着衣:作業服(ポリエステル65%、綿35%) 靴:皮底紳士靴
電位計:宍戸電気工業(株)製 スタティックボルトメーター TYPE MH
記録計:東亜電波工業(株)製 エレクトリックポリレコーダー EPR−111A
試験結果を表1に示す。
【0015】
【表1】

【0016】
実施例2
実施例1と同様の方法で、床材1を用いた床面(A)および床面(B)を準備し、床面(A)上において3mを3往復した試験者の帯電位と、床面(B)上において3mを3往復した試験者の帯電位を測定した結果を表2に示す。
【0017】
【表2】

【0018】
比較例1
実施例1と同様の方法で、高さ45mmのポリプロピレン樹脂製の二重床を配置し、更にその上に合成樹脂製タイル(床材1)を敷設した床面(A)と、モルタル下地上に直接合成樹脂製タイル(床材1)を敷設した床面(C)を準備し、床面(A)上において3mを3往復した試験者の帯電位と、床面(C)上において3mを3往復した試験者の帯電位を測定した結果を表3に示す。
【0019】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】樹脂製の二重床(高さ45mm)と樹脂製床タイルの構成からなる床面上を歩行し、その歩行を中止した際の人体帯電位の変化を示す図である。
【図2】樹脂製の二重床(高さ45mm)と樹脂製床タイルの構成からなる床面上を歩行した際の人体帯電位 (A−B間)、直ちに樹脂製の二重床(高さ45mm)、導電層、樹脂製床タイルの構成(本発明床)からなる床面上に移行しその瞬間の人体帯電位(B点)、その上で歩行した人体帯電位 (B−C間)、更に、従来床からなる床面上に戻った場合の人体帯電位 (C点) の変化を示す図である。
【図3】モルタル下地に樹脂製の床タイルを接着した構成からなる床面上を歩行した場合の帯電位をを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下地上に設備空間を形成するための樹脂製二重床上に樹脂タイルを敷設するにあたり、二重床と樹脂タイルとの間に導電性シート層を設け、アースを必要としないことを特徴とする樹脂製二重床上に樹脂タイルを敷設する方法。
【請求項2】
導電性シート層が、導電性を有するシート状物に保護フィルムを持ってラミネートされた積層物であることを特徴とする請求項1記載の樹脂製二重床上に樹脂タイルを敷設する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−16902(P2006−16902A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197546(P2004−197546)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000133076)株式会社タジマ (34)
【Fターム(参考)】