説明

樹脂製封入容器

【課題】補強リブの本数を少なくすることができ、且つ製造が容易な樹脂製封入容器を提供する。
【解決手段】表裏面に対して側面の幅が小さい扁平状容器において、表裏面11が容器の口部2と底部13とを結ぶ主軸方向10及びこれに垂直な方向に各々全体的に凸状をなしており、これら両方向の内の一方が曲率半径の小さい強湾曲、他方が曲率半径の大きい弱湾曲をなし、強湾曲方向における両端部寄り部分を弱湾曲方向に連ねて形成される領域を低強度領域11Lvとし、該低強度領域に弱湾曲の方向に沿って延びるリブ15を容器壁の微小凹部及び/又は微小凸部によって形成したことを特徴とする樹脂製封入容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を収容する樹脂製封入容器に関する。
【背景技術】
【0002】
内容物を収容する封入容器として、樹脂製のものが多用され、例えば、芳香剤に代表される揮散性薬剤、飲料、食品、調味料、薬品等、様々な内容物の封入に使用されている。樹脂製封入容器は、強度が高く、軽量であり、デザイン性にも優れている。
【0003】
一方、容器を構成する樹脂は、コストダウンの目的のみならず、廃棄後の非分解性や燃焼ガス発生の問題からも、容器あたりの使用量の低減が望まれている。しかしながら、容器の樹脂量を低減させると、容器壁は薄肉化せざるを得ず、これに伴って機械的強度の低下を招き、以下のような問題を生じる。
【0004】
機械的強度が低下した容器は、移動時の衝撃や手で把持される際の外力により変形し易く、変形は元の形状への復元を困難にしたり把持時の脆弱感を与えたりする。また、樹脂製封入容器は、内容物封入後の保管、輸送、展示、購入後の保存等の流通保管過程において極めて少量ずつではあるが、容器壁を通じて内容物中の気化成分を放出する性質がある。その結果、時間経過と共に、内容量がごく僅かずつ減少し、容器内の減圧により容器壁が凹入するように変形するという問題を引き起こす。この問題は、内容物が液体、ゲルの他、揮散性分を有する固体や粒状物の場合にも生じ、芳香剤(消臭剤を含む)等の揮散性薬剤の場合に特に影響が大きい。また、内容物によっては、容器への封入後に温度低下し内容物自体の容積が減少するものがあり、この場合にも、封入後の容器壁の凹入が問題となる。
【0005】
これらに対処するため、容器壁の一部を凹状又は凸状に曲折して縦方向や横方向の補強リブを形成し、壁強度を高めた構造が知られている(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【0006】
また、容器の目付重量、並びに胴部ラベル部の曲率半径と肉厚との値の積を所定範囲とすることにより、内部減圧による容器の変形を抑えようとするものが提案されている(特許文献4)。
【特許文献1】実開昭63−97607号公報
【特許文献2】特開2000−309329号公報
【特許文献3】特開2002−326619号公報
【特許文献4】特開2003−226316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の補強リブを設けた封入容器は、壁強度を高めるために多数本のリブを設けており、その結果、内容物に関する印刷やラベル貼りをするための表示部の面積が小さくなったり、容器外周をシュリンク包装で覆う場合にシュリンクフィルムに多数の皺が生じたりするという問題があった。
【0008】
また、容器の胴部ラベル部の曲率半径と肉厚との値の積を所定範囲とするものは、限られた範囲内で曲率半径と肉厚との調整が必要となる結果、肉厚の制御が複雑となり、特に薄肉の容器の場合にその制御が困難を伴った。
【0009】
本発明は、これら従来技術の問題を解決し、補強リブの本数を少なくすることができ、且つ製造が容易な樹脂製封入容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記目的を達成するため、表裏面に対して側面の幅が小さい扁平状容器において、前記表裏面が容器の口部と底部とを結ぶ主軸方向及びこれに垂直な方向に各々全体的に凸状をなしており、これら両方向の内の一方が曲率半径の小さい強湾曲、他方が曲率半径の大きい弱湾曲をなし、前記強湾曲方向における両端部寄り部分を前記弱湾曲方向に連ねて形成される領域を低強度領域とし、該低強度領域に前記弱湾曲の方向に沿って延びるリブを容器壁の微小凹部及び/又は微小凸部によって形成したことを特徴とする樹脂製封入容器を提供するものである。
【0011】
[作用]
本発明に係る樹脂製封入容器は、表裏面に対して側面の幅が小さい扁平状容器に、容器壁の微小凹部及び/又は微小凸部によってリブを形成するにあたり、リブによる補強効果を極めて効率よく得るものである。これにより、少ない本数のリブで高い強度の容器が得られる。その結果、表裏面に大きな表示用面積を確保することができる。また、容器をシュリンク包装で覆う場合に、リブによってシュリンクフィルムに皺が発生するのを防止乃至抑制することができる。
【0012】
容器の扁平形状は、表裏面の大きな表示面積の確保、把持のし易さ、収納箱等への多数個の収納効率、美観等、様々な点から要求される。一方、容器内方に向かって作用する外力に対する容器壁の強度(撓み難さ)は、容器壁の凸形状の曲率半径が小さい方が優れているが、これは容器の扁平度合いを弱める方向に導く。その強度はまた、容器壁の壁厚が厚い方が優れているが、これは樹脂の使用量の増大を招く。
【0013】
これらに対し、本発明では、容器の主軸方向及びこれに垂直な方向の内の一方を曲率半径の大きい弱湾曲とすることにより凸形状を制限し、これにより、扁平形状を確保する。そして、他方の方向は、曲率半径の小さい強湾曲とするが、その両端部寄り部分を前記弱湾曲方向に連ねて形成される領域を低強度領域とする。この低強度領域は、凸形状の曲率半径を調整したり壁厚を薄くしたりする等、樹脂使用量の少ない扁平状容器の実現に有利な形態とすることができる。そして、この低強度領域に前記弱湾曲の方向に沿って延びるリブを容器壁の微小凹部及び/又は微小凸部によって形成することにより、該領域の強度を高め、容器全体の強度を確保することができる。
【0014】
このように本発明によれば、表裏面の両端部寄り部分に設ける少ない本数のリブで高い強度の容器が得られる。その結果、表裏面の中央部に大きな表示用面積を確保することができる。また、容器をシュリンク包装で覆う場合に、リブによってシュリンクフィルムに皺が発生するのを防止乃至抑制することができる。
【0015】
この樹脂製封入容器は、上記特定領域に容器壁の微小凹部及び/又は微小凸部によってリブを形成すればよいので、製造が容易である。
【0016】
この少ない本数のリブ形成による強度確保は、容器の扁平形状を確保する上で効果的であり、容器両側面の最大離反距離が容器表裏面の最大離反距離の80%以下である場合に特に効果的であり、70%以下の場合にさらに効果的である。この割合が上限を越えた分厚い形状である場合は、容器の凸形状に対する制限が低く、凸形状による強度確保を行なうことができるので、リブ形成による効果が低い。また、この割合は、容器の容量、容器壁の厚さ、デザイン性などに応じて適宜決められるが、容器壁を薄くし、リブの数や設置範囲を制限し、且つ実用的な容量の容器とするには、40%以上とするのが望ましく、50%以上とするのがさらに望ましい。
【0017】
上記強湾曲及び弱湾曲に関して、主軸方向及びこれに垂直な方向の曲率半径というのは、これらの方向における容器の全体的な形状での曲率半径を意味しており、局部的な装飾や補強のための凹凸形状は対象外とする。
【発明の効果】
【0018】
上に述べたように、本発明によれば、補強リブの本数を少なくすることができ、且つ製造が容易な樹脂製封入容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。図面中の同一又は同種の部分については、同じ番号を付して説明を一部省略する。図1〜4は、本発明に係る樹脂製封入容器の一実施形態を示しており、図1は正面図、図2は側面図、図3は平面図、図4は底面図である。
【0020】
この樹脂製封入容器は、胴部1と口部2とを備え、口部2は、雄ねじ部21とキャップ3の雌ねじ31との螺合及びその解除により開閉される。図1では、キャップ3を外した状態を示し、キャップ3は断面で示している。図2では、キャップ3により容器口部を閉じた状態を示している。
【0021】
胴部1は、表裏面11,側面12,底面13を有し、垂直方向に扁平な形状をなしている。表裏面は、胴部の表側の面及び裏側の面が区別される場合、及び区別されない場合の双方において、表側の面及び裏側の面を総称する。
【0022】
表裏面11は、次のような凸形状を有している。すなわち、容器の口部2と底面13との各中心部を結ぶ主軸10に沿う方向(この実施形態では垂直方向)及びこれに垂直な方向(この実施形態では水平方向)に各々全体的に凸状をなしている。そして、垂直方向Vの湾曲は、曲率半径が大きい弱湾曲とされ、水平方向Hの湾曲は、曲率半径が小さい強湾曲とされている。この実施形態では、以下に詳述するように、容器の高さ方向の各位置における水平断面において、水平方向Hの湾曲は表裏面の幅全体11Aに亙ってほぼ一定の曲率に形成されている。
【0023】
表裏面の離反距離が最も大きい位置、すなわち、胴部の上下方向の中央よりやや上方の位置P0(図1参照)においては、弯曲は表裏面の幅全体11Aに亙って曲率半径がRC0でほぼ一定になっている。図5にその位置P0における容器の水平断面を示す。位置P0より上方及び下方へ行くほど、曲率半径は小さくなるが、各水平断面では曲率半径はほぼ一定である。図6は、位置P0より僅かに下の位置P1(図1参照)における容器の水平断面を示しており、曲率半径はRC1でほぼ一定になっている。また、容器壁の厚さも表裏面の幅全体に亘ってほぼ一定であり、均一状となっている。
【0024】
なお、容器の表裏面の曲率半径がほぼ一定であるというのは、所定の曲率半径に対する変動が小さい均一状の状態をいい、その変動の幅は5%以内であるのが望ましく、2%以内であるのがより望ましい。
【0025】
垂直方向Vの弱湾曲は、この実施形態では、図2に示すように、上部11Pの曲率半径Rpが下部11Qの曲率半径Rqより僅かに小さい。尤も、弱湾曲の曲率半径は、全体でほぼ一定とする等、種々設定することができる。
【0026】
上記構成の結果、容器内方に向く外力に対する容器壁の強度は、次のようになる。図7に示すように、表裏面11の一箇所に外力が作用すると、その箇所での容器壁の凹みに応じて、隣接する領域が、図に破線で示すように隆起する。なお、図は、理解を容易にするために、変形量を拡大して示している。図7(a) に示すように、表裏面11の幅方向中央(強湾曲方向の中央)に外力F1が作用した場合は、隆起を許容する範囲は、主として容器両側付近(強湾曲方向の両側付近)の領域L1である。一方、図7(b) に示すように、表裏面11の幅方向端部寄り(強湾曲方向の端部寄り)の位置に外力F2が作用した場合は、隆起を許容する範囲は、主として表裏面11の幅方向(強湾曲方向)の半分以上を占める領域L2である。
【0027】
このように、表裏面11の端部寄りの位置に外力が作用した場合の方が、中央に外力が作用した場合より、容器壁の隆起を許容する範囲が大きい。したがって、表裏面11の端部寄りに外力が作用する場合の方が、中央部に外力が作用する場合より、容器壁が隆起し易いのであり、その結果、前者の場合の方が外力作用箇所での凹みが生じ易い。また、表裏面11は、高さ方向の各位置における水平断面の曲率半径が各々ほぼ一定であるので、端部寄りの凹み易い領域は容器高さ方向(弱湾曲の方向)に連なって存在し、低強度領域11Lvを形成する。本発明では、この低強度領域11Lvに容器壁の微小凹部及び/又は微小凸部によってリブを形成することにより、該領域の強度を高め、容器全体の強度を確保することができる。なお、「低強度領域」との語は、リブがなければ強度が低いという意味で、低強度と表現しているのであって、リブの形成により、同領域の強度は十分に高いものとなっている。
【0028】
図示の樹脂製封入容器の主な寸法は、以下の通りである。
・容器全高Ah:156mm
・胴部の高さ1h:110mm
・表裏面の幅11w:94mm
・側面の幅12w:18mm
・底面から位置P0までの高さP0h:68mm
・底面から位置P1までの高さP1h:40mm
・弱湾曲(垂直方向V)の曲率半径Rp:420mm
・弱湾曲(垂直方向V)の曲率半径Rq:840mm
・位置P0での曲率半径RC0:60mm
・位置P1での曲率半径RC1:45mm
・リブ15の上下方向の長さ15h:90mm
・リブ15の最大幅15w:3.7mm
・リブ15の最大深さ15d:2.5mm
・表裏面11の壁厚:0.6±0.1mm
【0029】
図示の容器は、主軸10方向(垂直方向V)及びこれに垂直な方向(水平方向H)の湾曲を上記のように弱湾曲、強湾曲及び異曲率部分によって構成することと、強湾曲方向での曲率半径をほぼ一定とすることにより形成される低強度領域11Lvにリブ15を設けることにより、容器の扁平形状を確保しつつ、表裏面での合計が4本という少ない本数のリブで容器の高い強度が得られる。その結果、表裏面11に大きな表示用面積を確保することができる。また、容器をシュリンク包装で覆う場合に、リブによってシュリンクフィルムに皺が発生するのを防止乃至抑制することができる。
【0030】
リブ15は、容器壁の微小凹部(及び/又は微小凸部)によって形成するので、容器の製造は、インジェクションブロー成形等の通常の製造方法を採用することができ、製造が容易である。容器の製造に用いる樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等とすることができる。
【0031】
容器壁の強度を確保するためのリブは、低強度領域11Lvに設けられていればよく、図1に示すように、領域11Lv以外の部分を通り、2つの領域11Lvに跨って延びていてもよい。図8(a), (b) は、リブ15の他の例を示している。すなわち、リブ15aのように、領域11Lvの両端間に延びる形態、リブ15bのように領域11Lvを越えて延びる形態、リブ15cのように必要な補強効果が得られる長さをもって領域11Lvの内部に留まる形態、リブ15dのように領域11Lvの方向に対して斜めに延びる形態等とすることができ、リブ15dのように複数本設けることもできる。リブの全体形状は、直線状、曲線状、波形等とすることができ、連続的に延びるものでも、断続的に延びるものでもよい。
【0032】
図9〜図12は、本発明の他の実施形態に係る樹脂製封入容器を示しており、図9は正面図、図10は側面図、図11は平面図、図12は底面図である。
【0033】
この容器は、基本的な構造は先の実施形態と同じであり、胴部1、特にその表裏面11の形状を異にする。
【0034】
この実施形態の表裏面11は、主軸10に沿う方向(垂直方向)及びこれに垂直な方向(水平方向)に各々全体的に凸状をなしているが、曲率半径が大きい弱湾曲の方向と、曲率半径が小さい強湾曲の方向とが、先の実施形態と逆になっている。すなわち、主軸方向(垂直方向V)の湾曲が、曲率半径の小さい強湾曲とされ、これに垂直な方向(水平方向H)の湾曲が、曲率半径の大きい弱湾曲(表裏面の離反距離が最も大きい位置での曲率半径=Rp’)とされている。そして、垂直方向Vの湾曲は、次のように形成されている。
【0035】
図10は、表裏面11における幅方向中央での垂直断面を一部に示している。図示のように、表裏面11は、高さ方向のほぼ全体11Bに亙って曲率半径がRC1’でほぼ一定になっている。幅方向中央の位置より端部側へ行くほど、垂直断面における曲率半径は小さくなるが、各垂直断面では曲率半径はほぼ一定である。また、容器壁の厚さも表裏面の幅全体に亘ってほぼ一定である。
【0036】
この場合も、図7を参照して説明したのと同様に、表裏面11の上下方向における端部寄りの位置に外力が作用した場合の方が、中央部に外力が作用した場合より、外力作用箇所での凹みを生じ易い。そして、表裏面11は、幅方向における各位置における垂直断面の曲率半径が各々ほぼ一定であるので、端部寄りの凹み易い領域は容器幅方向(弱湾曲の方向)に連なって存在し、低強度領域を形成する。そして、この実施形態では、各表裏面11のリブ15は、上側部分に1本、下側部分に2本設けられている。
【0037】
したがって、この実施形態においても、容器の扁平形状を確保しつつ、少ない本数のリブで容器の高い強度が得られ、表裏面11に大きな表示用面積を確保することができる。また、容器をシュリンク包装で覆う場合に皺が発生するのを防止乃至抑制することができる。
【0038】
図13〜図16は、本発明の他の実施形態に係る樹脂製封入容器を示しており、図13は正面図、図14は側面図、図15は平面図、図16は底面図である。
【0039】
この容器も、基本的な構造は先の実施形態と同じであり、胴部1、特にその表裏面11の形状を異にする。この実施形態の表裏面11は、容器の口部2と底面13との各中心部を結ぶ主軸10に沿う方向(垂直方向)及びこれに垂直な方向(水平方向)に各々全体的に凸状をなしている。そして、垂直方向Vの湾曲は、曲率半径が大きい弱湾曲とされ、水平方向Hの湾曲は、曲率半径が小さい強湾曲とされている。垂直方向Vの弱湾曲は、先の実施形態について図2で示したのと同様である。この実施形態においては、水平方向Hの湾曲は、次のように形成されている。
【0040】
表裏面の離反距離が最も大きい位置、すなわち、胴部の上下方向の中央よりやや上方の位置P0(図13参照)においては、弯曲は表裏面の幅全体11Aに亙ってほぼ一定の曲率(曲率半径=R0)になっている。図17にその位置P0における容器の水平断面を示す。一方、位置P0より上方及び下方では、胴部幅方向における中心部の曲率半径が小さく、両側部の曲率半径が大きい形状となっている。すなわち、表裏面の強湾曲の形状が異曲率部分からなっている。図18は、位置P0より僅かに下の位置P1(図1参照)における容器の水平断面を示しており、図示のように、湾曲は、表裏面の幅方向における中央部が曲率半径の小さい部分11S(曲率半径=R1)、その両側部分が曲率半径の大きい部分11L(曲率半径=R2)とされている。これらの曲率半径R0,R1,R2は、この実施形態では、各々60mm,45mm,60mmとなっている。
【0041】
この異曲率部分の内、曲率半径の大きい部分11Lを、弱湾曲方向(垂直方向V)に沿って分布させることにより、その分布部分を中心として低強度領域11Lv(図13及び図14に斜線を施した領域)を形成する。この領域は、主軸方向(垂直方向V)にもこれに垂直な方向(水平方向H)にも他の領域に比べて曲率半径が大きいので、そのままでは容器内方へ向かう力に対する強度が低くなる。また、これに加えて図7を参照して説明した変形性によっても、表裏面11の幅方向端部寄りにある曲率半径の大きい部分11Lは容易に変形する。これに対して、この低強度領域11Lvに容器壁の微小凹部によってリブ15を形成することにより、強度を向上させることができる。
【0042】
したがって、この実施形態においても、表裏面11の両端部寄り部分に設ける少ない本数のリブ15で高い強度の容器が得られる。その結果、表裏面11の中央部に大きな表示用面積を確保することができる。また、容器をシュリンク包装で覆う場合に、リブによってシュリンクフィルムに皺が発生するのを防止乃至抑制することができる。
【0043】
上記効果を得るには、上記曲率半径R1は20〜100mmとするのが望ましく、40〜70mmとするのがより好ましい。また、曲率半径R2は、曲率半径R1に対して、
(R1+5mm)<R2<(R1+40mm) の範囲とするのが望ましく、
(R1+10mm)<R2<(R1+25mm) の範囲とするのがより望ましい。
【0044】
曲率半径R1,R2が上記上限を越えて大きくなると、凸形状による表裏面の強度が得難くなる。また、曲率半径R1,R2が上記下限を越えて小さくなると、凸形状が強くなり、容器の扁平形状が損なわれる。
【0045】
図19は、図13〜図18に示した実施形態における低強度領域11Lvの他の形態を示している。すなわち、表裏面11の幅方向端部寄りの低強度領域を、強湾曲方向での曲率の大小で形成するのに代えて、容器壁の厚さを変えて形成している。表裏面の離反距離が最も大きい位置P0(図13参照)においては、図19に示すように、弯曲は表裏面の幅全体11Aに亙ってほぼ一定の曲率(曲率半径=RC0)になっている。そして、表裏面11の幅方向中央部11Cの壁厚T1を厚くし、端部寄り部分11Dの壁厚T2を薄くしている。なお、図では理解を容易にするために壁厚を拡大して示している。
【0046】
この壁厚の厚い部分及び薄い部分を、各々弱湾曲方向(垂直方向V)に沿って分布させる。これにより、壁厚の薄い領域が低強度領域11Lv(前述の図13の斜線領域に対応する)として形成される。この低強度領域は、そのままでは容器内方へ向かう力に対する強度が低い。また、これに加えて図7を参照して説明した変形性によっても、表裏面11の幅方向端部寄りにある曲率半径の大きい部分11Lは容易に変形する。これに対して、この低強度領域11Lvに容器壁の微小凹部によってリブ15を形成することにより、強度を向上させることができる。
【0047】
これらの壁厚は、例えば、表裏面11の壁厚T1を0.7mm、壁厚T2を0.3mmと設定することができる。なお、側壁12及び底壁の壁厚は、1〜1.5mmとすることができる。
【0048】
この実施形態においても、表裏面11の両端部寄り部分に設ける少ない本数のリブ15で高い強度の容器が得られる。その結果、表裏面11の中央部に大きな表示用面積を確保することができる。また、容器をシュリンク包装で覆う場合に、リブによってシュリンクフィルムに皺が発生するのを防止乃至抑制することができる。また、この実施形態によれば、壁厚を表裏面の端部寄り部分で薄くするので、樹脂の使用量をより低減することができる。
【0049】
なお、前述の実施形態において示した低強度領域の形成形態に、この実施形態における壁厚の変化(低強度領域で壁厚を薄くする形態)を組み合わせてもよい。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、リブは補強効果を得るために必要な本数を備えることができ、また、表裏面の平滑面の確保等の機能が満たされる限り、装飾目的のためのリブを付加的に設けることもできる。リブの形成は、容器壁の微小凹部の他、微小凸部によって形成することもでき、また、これを組み合わせて形成してもよい。リブの断面形状は、円弧状、三角形や四角形等の角形、波形等、種々の形状とすることができる。
【0051】
容器の全体形状は、正面視において、矩形や三角形等の角形、円形や楕円形などの丸形等とし、側面視において矩形や三角形等の角形、楕円形等とするというように、種々の形状とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る樹脂製封入容器の一実施形態の正面図である。
【図2】図1に示す樹脂製封入容器の側面図である。
【図3】図1に示す樹脂製封入容器の胴部の平面図である。
【図4】図1に示す樹脂製封入容器の底面図である。
【図5】図1に示す樹脂製封入容器の1所における切断端面図である。
【図6】図1に示す樹脂製封入容器の他の箇所における切断端面図である。
【図7】図1に示す樹脂製封入容器の変形に関する説明図である。
【図8】リブの種々の形態を容器の正面図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る樹脂製封入容器の正面図である。
【図10】図9に示す樹脂製封入容器の側面図である。
【図11】図9に示す樹脂製封入容器の平面図である。
【図12】図9に示す樹脂製封入容器の底面図である。
【図13】本発明に係る樹脂製封入容器の他の実施形態の正面図である。
【図14】図13に示す樹脂製封入容器の側面図である。
【図15】図13に示す樹脂製封入容器の平面図である。
【図16】図13に示す樹脂製封入容器の底面図である。
【図17】図13に示す樹脂製封入容器の1所における切断端面図である。
【図18】図13に示す樹脂製封入容器の他の箇所における切断端面図である。
【図19】本発明のさらに他の実施形態に係る樹脂製封入容器の1所における切断端面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 胴部
2 口部
3 キャップ
10 主軸
11 表裏面
11S 曲率半径の小さい部分
11L 曲率半径の大きい部分
11Lv 曲率半径の大きい部分が弱湾曲方向に沿って延びる領域
11Lh 曲率半径の大きい部分が弱湾曲方向に沿って延びる領域
12 側面
13 底面
15,15a,15b,15c,15d リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏面に対して側面の幅が小さい扁平状容器において、前記表裏面が容器の口部と底部とを結ぶ主軸方向及びこれに垂直な方向に各々全体的に凸状をなしており、これら両方向の内の一方が曲率半径の小さい強湾曲、他方が曲率半径の大きい弱湾曲をなし、前記強湾曲方向における両端部寄り部分を前記弱湾曲方向に連ねて形成される領域を低強度領域とし、該低強度領域に前記弱湾曲の方向に沿って延びるリブを容器壁の微小凹部及び/又は微小凸部によって形成したことを特徴とする樹脂製封入容器。
【請求項2】
前記低強度領域が、容器壁を前記強湾曲の方向に均一状の曲率半径とすることにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製封入容器。
【請求項3】
前記低強度領域が、容器壁の曲率半径を、該低強度領域において前記強湾曲方向における他の領域より大きくすることにより、該曲率半径の領域を中心に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製封入容器。
【請求項4】
前記低強度領域が、容器壁の壁厚を、該低強度領域において前記強湾曲方向における他の領域より薄くすることにより形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂製封入容器。
【請求項5】
前記主軸方向が弱湾曲をなし、前記主軸方向に垂直な方向が強湾曲をなしていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂製封入容器。
【請求項6】
前記主軸方向が強湾曲をなし、前記主軸方向に垂直な方向が弱湾曲をなしていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂製封入容器。
【請求項7】
前記リブが弱湾曲方向に沿って延びていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂製封入容器。
【請求項8】
容器両側面の最大離反距離が容器表裏面の最大離反距離の80%以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂製封入容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−137898(P2010−137898A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317287(P2008−317287)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】