説明

橋桁の分割撤去工法

【課題】都市連続高架橋や立体交差橋の分割解体撤去において、仮支柱を不要とし、大型クレーンの作業時間を短縮し安全性を高め、工事費用の低減を目指した橋桁の解体撤去方法を提供する。
【解決手段】橋桁をゲルバーヒンジ部11近傍の機械切断可能な桁切断部分12で切り離し撤去する際、該桁切断部分12を中心として撤去桁と桁柱頭部9の断面上部に梁1を渡し、それと該撤去桁の端部を固定金具2と鋼棒3及びナット4で締め付け一体とし、反対側の桁柱頭部9の梁端部には受け台5及び調整用クサビ6を取り付け安定させることによって、桁切断部分12で切断後も桁は落下しない。 また、桁切断部分12の切断面は、従来のように垂直にせず逆ハの字状の傾斜角にすることによって吊り上げ撤去作業の効率を上げ、吊金具が万一機能しない場合の安全装置としての役割を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋桁の撤去に関するものである。
【背景技術】
【0002】
桁橋の撤去工法の中で、急速施工を必要とする場合に大型クレーンを用いて1径間の桁をそのまま撤去する大型分割解体工法がある。単純桁の場合は支承構造にもよるが比較的容易に撤去が可能であるが、連続桁の中間支点部分及びラーメン橋の柱頭部また、ゲルバーヒンジ部分については桁の内部に補強用の大口径鉄筋やアンカーボルトなどが密に配置されているために、これらの部分の解体作業はハンドブレーカーによる人力解体となり作業工程のネックとなっている。したがって大型分割解体においては、比較的容易にワイヤソーや超高圧水によって切断・撤去できる場所は橋脚から外れた位置となる。
したがってその位置に仮支柱を設けて撤去部分の桁を支持するか大型クレーン車又はクレーン船で撤去部の桁を仮吊りした状態で切断作業が採用されている。
これには以下のような欠点があった。
(例えば、非特許文献1参照、特許文献1 )
【0003】
仮支柱を設ける場合、高架橋の場合は街路の通行制限などが必要となり又、河川橋の場合は渇水期施工に限定されなどの制約があった。
【0004】
トラッククレーンやクレーン船の場合も立地条件によって左右され工事費用が高額となることであった。
【非特許文献1】「橋梁撤去技術マニュアル」北陸橋撤去技術協会 2000年p.46
【特許文献1】特許第3861100号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、橋桁の分割解体作業において、仮支柱を不要とし、大型クレーンの作業時間を短縮し作業の安全性を高め工事費用の低減を目指した撤去作業を実施することを目的としたものでる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そして、本発明は上記目的を達成するための工法として、都市連続高架橋や立体交差橋の撤去などの時間の制約から急速解体を要求される現場の有力工法としても提供する。
本工法は連続桁の支承部分や連続ラーメン橋、特殊な構造としてゲルバーヒンジを有する桁橋の解体において支柱が設置できない場合やクレーン作業の時間短縮を必要とする現場に威力を発揮することを特徴とする。
【0007】
作業の手順は以下の通りである。
橋桁の切断部分を中心として撤去桁と柱頭部の断面上部に梁を渡し、それと撤去桁の端部を固定金具と鋼棒及びナットで締め付け一体とし、反対側の柱頭部の梁端部には受け台及び調整用クサビを取り付け安定させる。
【0008】
ワイヤソーや超高圧水で桁を切断する。なお、切断側面は従来のように垂直にせず逆ハの字状の傾斜角で切断する。
【0009】
トラッククレーンやクレーン船により桁を吊り上げ中央径間桁の撤去を完了する。
【0010】
なお、柱頭部は補強用の大口径鉄筋やアンカーボルトなどが密に配置されているために、解体作業はハンドブレーカーによる人力解体撤去を行う。
【発明の効果】
【0011】
上述したように本発明の橋桁撤去工法は、従来の工法に比較し短時間で安全性の高い施工法を提供する。さらに切断後も固定金具により落下しない構造で安定しているのでクレーンによる仮吊や仮支柱が不要となり作業効率及び安全性が向上し工事費用の大幅な低減が出来る。
【0012】
側面の切断が逆ハの字形状となっているためクレーン吊り上げ時に切断面の干渉を減少させ、万一固定金具が何らかの原因で外れた場合でも楔作用により桁の落下を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図6に基づいて説明する。
【0014】
撤去する桁8の端部上面に配置した梁1と、桁の端部下面に配置した固定金具2を鋼棒3及びナット4で緊結する。
【0015】
張出し状態となった梁1と柱頭部桁9の間に受け台5及び調整用クサビ6で梁1と固定する。
【0016】
予め指定した桁の切断予定面12に沿って、ワイヤソーや超高圧水を用いて逆ハの字状に傾斜角をつけ切断する。
【0017】
切断した撤去桁8をトラッククレーン7にて撤去する。
【0018】
連続桁の中間支点部分及びラーメン橋の柱頭部桁9の解体作業はハンドブレーカーによる人力解体となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態を示す桁の切断部分の側面図
【図2】本発明の実施形態を示す桁の切断部分の断面図
【図3】本発明の実施形態を示すクレーンによる桁撤去の説明図
【図4】本発明の実施形態を示すゲルバー橋ヒンジ部側面図
【図5】本発明の実施形態を示す連続橋桁径間中央部撤去完了の概念図
【図6】仮支柱を設置して解体する従来工法の説明図
【符号の説明】
【0020】
1 梁
2 固定金具
3 鋼棒
4 ナット
5 受け台
6 調整用クサビ
7 トラッククレーン
8 撤去桁
9 桁柱頭部
10 桁径間中央部
11 ゲルバーヒンジ部
12 桁切断部分
13 仮支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋桁の解体撤去における切断部分を中心として橋桁の上面に渡した梁の一端と撤去桁とを固定金具及び鋼棒とナットで締め付け一体とし、梁の一端は柱頭部上面の間に受け台及び調整用クサビを取り付け締め付け安定した状態で桁を切断する。
したがって予め仮支柱の設置やクレーンによる仮吊状態での切断が不要となることを特徴とする橋桁の解体工法。
【請求項2】
撤去桁が逆梯形となるように切断側面は逆ハの字状にすることによって抜け勾配が形成され桁吊上撤去が容易となると同時に、切断形状が楔状となっているためクレーンや吊装置の故障等で桁が落下する危険を防止することが出来ることによってクレーン作業の安全率を向上させることを特徴とする橋桁の解体工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−285981(P2008−285981A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159517(P2007−159517)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(505083966)有限会社 松岡知的所有権事務所 (3)
【出願人】(503381017)株式会社国土 (4)
【Fターム(参考)】