説明

橋梁の補強方法及び補強構造

【課題】既設橋梁の添接部を補強する場合、効率が悪い。
【解決手段】複数の鋼製の桁部材2で構成され、桁部材2同士が添接板3を介してボルト締結されて構成された既設の橋梁1の補強方法であって、上記添接板3が取り付けられた桁部材2の長手方向の両側に設けられる応力導入プレート7、7と、その応力導入プレート7、7同士を連結して応力を伝達するバイパスリブ8とでバイパス部材6を構成し、そのバイパス部材6で添接板3を跨いで添接板3の両側にバイパス部材6をあてがうと共に応力導入プレート7、7を桁部材2にボルト10で締結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、桁部材同士が添接板を介してボルト締結されて構成された既設橋梁の補強方法及び補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、既設の橋梁を現行の耐震基準に合わせるための補強工事が種々行われている。図6及び図7に示すように、トラス橋からなる橋梁1には、複数の鋼製の桁部材2で構成され、桁部材2同士が添接板3を介してボルト締結されて構成されたものがある。かかる橋梁1の添接板3長手方向の桁部材2同士の耐震強度を高めるべく添接部を補強する場合、現地で添接板3のボルト(図示せず)を取り外し、既設の添接板3を厚い添接板(図示せず)に交換することで行っていた。
【0003】
【特許文献1】特開2006−231338号公報
【特許文献2】特開2003−328451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、添接板3を一旦取り外すこととなるため、桁部材2の四辺のそれぞれに多数のボルトで締結される添接板3を部分毎に交換する必要があり、効率が悪く、工程に問題があるという課題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、既設橋梁の添接部を効率よく補強できる橋梁の補強方法及び補強構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、複数の鋼製の桁部材で構成され、桁部材同士が添接板を介してボルト締結されて構成された既設の橋梁の補強方法であって、上記添接板が取り付けられた桁部材の長手方向の両側に設けられる応力導入プレートと、その応力導入プレート同士を連結して応力を伝達するバイパスリブとでバイパス部材を構成し、そのバイパス部材で添接板を跨いで添接板の両側にバイパス部材をあてがうと共に応力導入プレートを桁部材にボルトで締結するものである。
【0007】
上記バイパスリブが、上記応力導入プレート間に複数掛け渡して設けられるとよい。
【0008】
また、上記バイパスリブ間に上記ボルトの頭を収容する収容スペースが形成されるとよい。
【0009】
上記複数のバイパスリブが、上記応力導入プレート間で座屈防止プレートを介して接続されて補強されるとよい。
【0010】
上記座屈防止プレートに、ボルト締結用の工具を通すための作業用孔を形成するとよい。
【0011】
また、上記添接板でボルト締結された桁部材の一方に、この桁部材に対して交差する交差部材が取り付けられた橋梁を補強すべく、上記バイパス部材のバイパスリブを分割し、これら分割バイパスリブに上記交差部材と接合する接合フランジを形成し、これら接合フランジ同士を交差部材を介して一体にボルト締結するとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、既設橋梁の添接部を効率よく補強できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の好適実施の形態を添付図面を用いて説明する。
【0014】
図7は補強すべき既設橋梁の要部側面図であり、図1は図7の部分A(縦桁)の添接部をバイパス部材で補強した状態の斜視図であり、図2(a)は図1に示すバイパス部材の側面図であり、図2(b)は図2(a)の正面図である。
【0015】
図6及び図7に示すように、補強すべき既存橋梁1は、複数の鋼製の縦、横、斜めの桁部材2で構成され、桁部材2同士が添接板3を介してボルト締結されて構成されたトラス橋からなる。桁部材2は、鋼板4で外周の4辺を構成した断面矩形状の箱断面構造に形成されている。また、桁部材2には、作業員が内部に入れるようにするためのマンホール(図示せず)が設けられており、桁部材2の内部でもボルト締結等の作業が行えるようになっている。
【0016】
図1及び図2(a)、(b)に示すように、この橋梁1の添接板3長手方向の桁部材2同士の耐震強度を高める場合、添接部5の桁部材2に設けるためのバイパス部材6を作製する。
【0017】
バイパス部材6は、添接板3が取り付けられた桁部材2の長手方向の両側に設けられる一対の応力導入プレート7、7と、これら応力導入プレート7、7同士を連結して応力を伝達する複数のバイパスリブ8と、これらバイパスリブ8を補強すべく接続する座屈防止プレート9とを備えて構成される。
【0018】
応力導入プレート7、7は、それぞれ矩形状に形成されており、ボルト10を挿通させるための孔11を複数有する。孔11の数は、桁部材2に作用する力をバイパス部材6にその許容応力まで入力できるボルト10の数と同じに設定される。
【0019】
バイパスリブ8は、応力導入プレート7、7間の桁部材2側の端部に添接板3を回避するための切欠12を有してコ字状又はアーチ状に形成された板材からなり、一対の応力導入プレート7、7に対して直交して配置されると共に、両端を溶接にて一体に固定される。切欠12の大きさは、バイパスリブ8が添接板3に干渉せず、かつ、添接板3から大きく離れないように添接板3の板厚に応じて設定される。バイパス部材6と桁部材2が離れているとバイパス部材6に偏心曲げ等の不要な力が働くためである。また、複数のバイパスリブ8は、一対の応力導入プレート7、7の離間方向に沿って平行に配置される。バイパスリブ8間に形成される間隙のいずれかには、添接板3を留めるボルト13の頭14を収容する収容スペース15が形成される。収容スペース15は、いずれかのバイパスリブ8間の間隔をボルト13の頭14の直径よりも大きくすることで形成される。バイパスリブ8の板厚と枚数は、バイパス部材6に求められる許容応力に応じて決定される。
【0020】
座屈防止プレート9は、応力導入プレート7、7と同等又は応力導入プレート7、7より小さな幅寸法に形成されており、切欠12とは反対側のバイパスリブ8に溶接にて一体に固定される。収容スペース15に臨む座屈防止プレート9には、電動レンチ等のボルト締結用の工具(図示せず)を通すための作業用孔16が形成されており、桁部材2からバイパス部材6を取り外さなくとも収容スペース15内のボルト13を増し締めする等のメンテナンスができるようになっている。
【0021】
バイパス部材6を作製したら、応力導入プレート7、7に形成された孔11のピッチに応じて添接板3両側の桁部材2にボルト孔(図示せず)を穿ち、バイパス部材6で添接板3を跨いで添接板3の両側にバイパス部材6をあてがうと共に、応力導入プレート7、7を桁部材2にボルト10で締結する。これにより、バイパス部材6は添接板3やボルト13に干渉することなく桁部材2に近接して取り付けられ添接部5が補強される。
【0022】
このように、添接板3が取り付けられた桁部材2の長手方向の両側に設けられる応力導入プレート7、7と、その応力導入プレート7、7同士を連結して応力を伝達するバイパスリブ8とでバイパス部材6を構成し、そのバイパス部材6で添接板3を跨いで添接板3の両側にバイパス部材6をあてがうと共に応力導入プレート7、7を桁部材2にボルト10で締結して添接部5を補強するため、桁部材2から既設の添接板3や添接板3を留める多数のボルト13を取り外すことなく添接部5を補強することができ、効率よく作業できる。また、取り外したボルト13等の部品を管理する必要がなく、添接部5の強度が低下する瞬間もないため、安全に作業を行うことができる。
【0023】
バイパスリブ8が、応力導入プレート7、7間に複数掛け渡して設けられるものとしたため、バイパスリブ8の枚数を変えることで強度の異なる複数種類のバイパス部材6を容易に作製でき、バイパス部材6を安価なものにできる。
【0024】
バイパスリブ8間にボルト13の頭14を収容する収容スペース15が形成されるものとしたため、簡単な構造でボルト13を回避でき、バイパス部材6を安価なものにできる。
【0025】
複数のバイパスリブ8が、応力導入プレート7、7間で座屈防止プレート9を介して接続されて補強されるものとしたため、簡単な構造でバイパスリブ8を強固に補強することができる。
【0026】
座屈防止プレート9に、ボルト締結用の工具を通すための作業用孔16を形成したため、バイパス部材6が桁部材2に取り付けられた状態のままでも添接板3を留めるボルト13のメンテナンスを行うことができる。
【0027】
なお、応力導入プレート7、7は矩形状に形成されるものとしたが、これに限るものではなく、桁部材2の幅形状に応じた形状に形成するとよい。
【0028】
次に他の実施の形態について述べる。
【0029】
図3及び図4に示すように、突き合わせて配置されると共に添接板3でボルト締結される2つの桁部材2の一方に、この桁部材2に対して交差する桁部材2aが取り付けられ、上述のバイパス部材6では交差する桁部材2aの鋼板4かならなる交差部材20が邪魔となって桁部材2にバイパス部材6を取り付けられない場合、まず、上述のバイパス部材6のバイパスリブ8を応力導入プレート7、7間で分割して一対の分割バイパス部材21、22を形成し、これら分割バイパス部材21、22の分割バイパスリブ23、24の分割端に交差部材20と接合する接合フランジ25を形成したバイパス部材26を作製する。桁部材2a内に配置される下側の分割バイパス部材22は、桁部材2a内での取り扱いを容易にするために幅方向に分割されてなる。
【0030】
つぎに、添接板3の交差部材20側とは反対側の桁部材2に応力導入プレート7、7に形成された孔11のピッチに応じてボルト孔(図示せず)を穿つと共に、交差部材20を形成する桁部材2a内の桁部材2に同様にボルト孔(図示せず)を穿つ。
【0031】
この後、それぞれの分割バイパス部材21、22の応力導入プレート7、7を桁部材2にあてがうと共にそれぞれの接合フランジ25を交差部材20にあてがって一対の接合フランジ25で交差部材20を挟むようにし、応力導入プレート7、7をそれぞれ桁部材2にボルト締結すると共に、接合フランジ25同士を交差部材20を介して一体にボルト締結する。これにより、桁部材2にバイパス部材26を交差部材20に邪魔されることなく取り付けることができ、交差部材20に近接する添接部5であっても容易かつ確実に補強できる。
【0032】
なお、バイパス部材6及びバイパス部材26の配置は上述の実施の形態に限るものではなく、必要に応じて適宜の位置に配置するとよい。例えば、桁部材2の4辺全てにバイパス部材6又はバイパス部材26を取り付けてもよい。また、桁部材2に車両が衝突するなどして一箇所だけ補修が必要になった場合などには、桁部材2の一辺にのみバイパス部材6又はバイパス部材26を取り付けてもよい。
【0033】
また、図1に示すように交差部材20がない場合の補強と、図3に示すように突き合わせて配置される2つの桁部材2の一方にのみ交差部材20がある場合の補強とについて述べたが、両方の桁部材2に交差部材20がある場合であっても、適宜バイパス部材6を分割するなどして対応して分割したバイパス部材6を桁部材2と交差部材20とに取り付けるとよい。具体的には、図5に示すように、バイパス部材6を応力導入プレート7、7間で3分割して3つの分割バイパス部材30、31、32を形成し、これら分割バイパス部材30、31、32の分割バイパスリブ33、34、35の分割端に交差部材20と接合する接合フランジ25を形成したバイパス部材36を作製して用いるとよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の好適実施の形態を示す橋梁の添接部の斜視図である。
【図2】(a)はバイパス部材の側面図であり、(b)はバイパス部材の正面図である。
【図3】他の実施の形態を示す橋梁の添接部の斜視図である。
【図4】他の実施の形態を示すバイパス部材の側面図である。
【図5】他の実施の形態を示すバイパス部材の側面図である。
【図6】既設橋梁の添接部の斜視図である。
【図7】既設橋梁の要部側面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 橋梁
2 桁部材
3 添接板
6 バイパス部材
7 応力導入プレート
8 バイパスリブ
9 座屈防止プレート
10 ボルト
13 ボルト
14 頭
15 収容スペース
16 作業用孔
20 交差部材
23 分割バイパスリブ
24 分割バイパスリブ
25 接合フランジ
26 バイパス部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鋼製の桁部材で構成され、桁部材同士が添接板を介してボルト締結されて構成された既設の橋梁の補強方法であって、上記添接板が取り付けられた桁部材の長手方向の両側に設けられる応力導入プレートと、その応力導入プレート同士を連結して応力を伝達するバイパスリブとでバイパス部材を構成し、そのバイパス部材で添接板を跨いで添接板の両側にバイパス部材をあてがうと共に応力導入プレートを桁部材にボルトで締結することを特徴とする橋梁の補強方法。
【請求項2】
上記バイパスリブが、上記応力導入プレート間に複数掛け渡して設けられた請求項1記載の橋梁の補強方法。
【請求項3】
上記バイパスリブ間に上記ボルトの頭を収容する収容スペースが形成された請求項2記載の橋梁の補強方法。
【請求項4】
上記複数のバイパスリブが、上記応力導入プレート間で座屈防止プレートを介して接続されて補強された請求項2又は3記載の橋梁の補強方法。
【請求項5】
上記座屈防止プレートに、ボルト締結用の工具を通すための作業用孔を形成した請求項4記載の橋梁の補強方法。
【請求項6】
上記添接板でボルト締結された桁部材の一方に、この桁部材に対して交差する交差部材が取り付けられた橋梁を補強すべく、上記バイパス部材のバイパスリブを分割し、これら分割バイパスリブに上記交差部材と接合する接合フランジを形成し、これら接合フランジ同士を交差部材を介して一体にボルト締結する請求項1〜5のいずれかに記載の橋梁の補強方法。
【請求項7】
複数の鋼製の桁部材で構成され、桁部材同士が添接板を介してボルト締結されて構成された既設の橋梁の補強構造であって、上記添接板が取り付けられた桁部材の長手方向の両側に設けられる応力導入プレートと、その応力導入プレート同士を連結して応力を伝達するバイパスリブとでバイパス部材が構成され、そのバイパス部材が添接板を跨いで添接板の両側にあてがわれると共に、応力導入プレートが桁部材にボルト締結されることを特徴とする橋梁の補強構造。
【請求項8】
上記バイパスリブが、上記応力導入プレート間に複数掛け渡して設けられた請求項7記載の橋梁の補強構造。
【請求項9】
上記バイパスリブ間に上記ボルトの頭を収容する収容スペースが形成された請求項8記載の橋梁の補強構造。
【請求項10】
上記複数のバイパスリブが、上記応力導入プレート間で座屈防止プレートを介して接続されて補強された請求項8又は9記載の橋梁の補強構造。
【請求項11】
上記座屈防止プレートには、ボルト締結用の工具を通すための作業用孔が形成された請求項10記載の橋梁の補強構造。
【請求項12】
上記添接板でボルト締結された桁部材の一方に、この桁部材に対して交差する交差部材が取り付けられた橋梁を補強すべく、上記バイパス部材のバイパスリブが分割され、これら分割バイパスリブに上記交差部材と接合する接合フランジが形成され、これら接合フランジ同士が交差部材を介して一体にボルト締結される請求項7〜11のいずれかに記載の橋梁の補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−167716(P2009−167716A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7879(P2008−7879)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】