説明

橋梁ジョイント構造

【課題】 鉄骨部材及び拘束部材から成る複合体を介して床版及び床版隣接部を一体化した橋梁ジョイント構造を提供すること。
【解決手段】 橋梁ジョイント20は、既設のフィンガージョイントの部品である一対の受台部材を再利用した一対の既設ベース11,12と、複数の鉄骨部材21及び拘束部材22とから成る複合体である。複数の鉄骨部材21は、床版5及び橋台パラペット8に固定されている既設ベース11,12に接合固定される。また、拘束部材22は、全ての鉄骨部材21を内部に被包拘束した後打ちコンクリートであり、かかる被包拘束により床版5及び橋台パラペット8同士を連接させている。連動構造体30は、橋梁ジョイント20を介した橋桁3及び橋台4の一体化により、橋桁3の変位挙動に連動して橋台4が一体的に変位挙動するようになっており、橋桁3の桁端の伸縮変位及び回転変位を、連動構造体30の全体的な変位挙動として吸収できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設の橋梁における橋桁の桁端と、それに隣接する別の橋桁の桁端、橋台その他の隣接物(以下「橋桁隣接物」という。)とを接続する橋梁ジョイント構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
既設の橋梁における橋桁とそれに隣接する第2の橋桁との接続部分、又は、橋桁とそれに隣接する橋台との接続部分には、通常、伸縮装置が設置されている。一般に、伸縮装置は、橋桁の温度変化、コンクリートのクリープ若しくは乾燥収縮、活荷重などによる橋桁の桁端の伸縮変位及び回転変位を吸収するものであり、フィンガージョイント、ゴムジョイント、切削目地、埋設ジョイントなど各種のものが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−328867号公報
【特許文献2】特開2003−309509号公報
【特許文献3】特開昭61−266704号公報
【特許文献4】特開昭61−261501号公報
【特許文献5】特開昭61−266703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したフィンガージョイント型の伸縮装置では、鋼製のフェイスプレート(「表面フェースプレート」ともいう。)が路面上に存在し、これらの材質がアスファルト製又はコンクリート製の舗装体と異なるため、そこを通過する走行車両の乗り心地を悪化させたり、雨天時などの濡れによる路面特性の変化により走行車両にスリップなどの予測不能な不安定な挙動を誘発させる虞があった。
【0005】
また、経年劣化その他の原因による破損に伴って部品や装置全体を交換する補修工事も必要だが、フィンガージョイント型の伸縮装置は、特に補修コストが高く、例えば、1箇所当たりに数百万円から一千万円を要することもあるため、耐用年数が概ね30〜50年と比較的長期ではあるものの、これを装備した道路橋が全国に多数存在することを考慮すれば、補修工事に膨大な費用が継続的に必要となるという問題点がある。
【0006】
また、フェイスプレート同士の継ぎ目や、フェイスプレートと舗装体との継ぎ目が路面上に段差を作り出すことから、かかる段差を走行車両が通過する際に、当該走行車両及び橋梁の双方に大きな衝撃が加わり、走行車両の乗り心地の低下や、フィンガージョイントの損傷を招き易いという問題点もある。
【0007】
また、フィンガージョイントは、橋桁同士間又は橋桁及び橋台間にある遊間の幅を伸縮させて、橋桁の伸縮変位及び回転変位を吸収するものであるため、遊間幅の伸縮により遊間に密嵌された封止材や止水材が剥離され易く、この剥離部分を通じて塩化物イオンを含んだ水が橋桁同士間又は橋桁及び橋台間にある遊間へ流れ込み、橋桁の桁端や支承の塩害等による腐食劣化を発生させるという問題点がある。
【0008】
さらに、フィンガージョイントが設けられる遊間には、上記した封止材や止水材ではなく排水樋が設置されることがあるが、このような排水樋は、その内部に土砂やゴミ等で詰まってしまう。すると、フェイスプレート同士の継ぎ目から流れ込んだ塩化物イオンを含んだ水は、排水樋から溢れて遊間内へ流れ込んでしまうため、橋桁の桁端や支障の塩害等による腐食劣化を発生させてしまうという問題点があった。
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、鉄骨部材及び拘束部材から成る複合体を介して床版及び床版隣接部を一体化した橋梁ジョイント構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために請求項1の橋梁ジョイント構造は、橋桁の床版と橋桁隣接物の床版隣接部との接続部分に設けられるものであり、床版及び床版隣接部間にある遊間を隔てて互いに対向配置され、その床版及び床版隣接部の一部となっている一対の既設構造材と、その一対の既設構造材の対向面間に配置され、その一対の既設構造材のうち少なくともどちらか一方に接合固定され、前記遊間の切れ目方向に複数設けられる鉄骨部材と、その複数の鉄骨部材を内部に被包拘束し変形阻止した状態で前記一対の既設構造材間に充填される後打ちコンクリートで形成され、その一対の既設構造材間に架設され当該一対の既設構造材を接合する拘束部材と、その拘束部材、複数の鉄骨部材及び一対の既設構造材により形成され、前記遊間を閉塞して前記床版及び床版隣接部同士を連接させる鉄骨鉄筋コンクリート製の複合体とを備えている。
【0011】
なお、前記橋桁に隣接する橋桁隣接物は、当該橋桁とは別体でかつこれに隣接する第2の橋桁、又は、前記橋桁の橋長方向端部を支持する橋台であり、この橋桁隣接物の床版隣接部は、当該橋桁隣接物である第2の橋桁の床版、又は、当該橋桁隣接物である橋台の橋台パラペットである。
【0012】
この請求項1の橋梁ジョイント構造によれば、床版及び床版隣接部の間にある遊間、即ち、床版及び床版隣接部の一部となっている一対の既設構造材の対向面間には、そこに充填された後打ちコンクリートで形成される拘束部材が架設されている。この拘束部材は、その内部に複数の鉄骨部材を被包拘束してその変形を阻止しており、一対の既設構造材と複数の鉄骨部材とを骨組みとした鉄骨鉄筋コンクリート製の複合体を構築している。
【0013】
この複合体によれば、床版及び床版隣接部の間にある遊間を閉塞するので、この複合体の上にも、床版の被舗装部及び床版隣接部の被舗装部に敷設されている舗装体と連続的な路面を成した舗装体を形成できる。さすれば、舗装体の路面上に段差や材質の異なる異物が存在することもないので、これらの存在による走行車両の走行性低下や橋梁への衝撃発生が防止される。
【0014】
また、複合体における既設構造材は、当該複合体を床版及び床版隣接部の連接固定するためのアンカー的機能を担う。このため、既設構造材は、床版及び床版隣接部の一部としてこれらに一体的に結合する物が好ましく、特に、床版及び床版隣接部の接続部分に既設の伸縮装置の部品、その部品の一部分を転用して再利用することで、施工コストの削減にも繋がる。
【0015】
さらに、複合体は、床版及び床版隣接部の間にある遊間を閉塞するので、凍結防止剤等の塩化物イオンを含んだ雨水、融雪水その他の水が舗装体を透過して複合体との境界まで浸透したとしても、この複合体に阻まれて、当該水が遊間へ流れ込むことが防止され、橋桁の桁端や支承の塩害等による腐食劣化が防止される。
【0016】
請求項2の橋梁ジョイント構造は、請求項1の橋梁ジョイント構造において、前記複合体を介して床版及び床版隣接部を一体化することにより、橋桁と橋桁隣接物とを一体的に変位挙動可能な連動構造体とするものである。
【0017】
この請求項2の橋梁ジョイント構造によれば、請求項1の橋梁ジョイント構造と同様に作用する上、床版及び床版隣接部が上記複合体を介して連接されて一体化されることにより、橋桁と橋桁隣接物とが一つの連動構造体となって、橋桁の変位挙動に連動して橋桁隣接物が一体的に変位挙動させられる。これにより、橋桁の変位挙動に伴って橋桁の桁端に生じた伸縮変位及び回転変位は、橋桁及び橋桁隣接物を一体化した連動構造体の全体的な変位挙動として吸収される。
【0018】
請求項3の橋梁ジョイント構造は、請求項1又は2の橋梁ジョイント構造において、前記一対の既設構造材は、前記遊間を隔てて互いに対向する一対のウェブプレートを有したフィンガージョイント用の受台部材、又は、その受台部材から不要部分を除去した残余部分、である。
【0019】
この請求項3の橋梁ジョイント構造によれば、請求項1又は2の橋梁ジョイント構造と同様に作用する上、伸縮装置の一種であるフィンガージョイント用の受台部材は、床版及び床版隣接部にそれぞれ締結固定され又は埋め込み固定され、アンカー的機能を具有している。しかも、この一対の受台部材は、上記複合体の形成により不要となるフィンガージョイントの部品であり、かつ、互いに備わるウェブプレートを床版及び床版隣接部間にある遊間を隔てて対向させるものであるので、一対の既設構造材として転用できる。
【0020】
ただし、受台部材が既設構造材として転用可能であっても、必ずしもその全体が必要な訳ではなく、橋梁ジョイント構造の施工に際して不要部分が存在するならば、その不要部分を除去した残余部分を、一対の既設構造材として転用することもできる。
【0021】
例えば、複合体の上面と床版及び床版隣接部の被舗装部の上面とを面一状にして、これらの上面に均一な厚さの舗装体を敷設するような場合は、受台部材の部位の中でも被舗装部の上面より上側にある部分が不要部分となるので、当該不要部分を除去した残余部分を一対の既設構造材として再利用もできる。
【0022】
ただし、一対の受台部材から不要部分を除去した残余部分は、一対の既設構造材として床版及び床版隣接部にそれぞれ未だ固定されており、アンカー的機能を未だ具有している状態にあることを要する。具体的には、上記不要部分の除去後も、上記残余部分が床版及び床版隣接部に締結手段を介して固定され、又は、当該残余部分の少なくとも一部が床版及び床版隣接部に埋設固定されることにより、アンカー的機能を未だ具有している状態にあることを要する。
【0023】
請求項4の橋梁ジョイント構造は、請求項1から3のいずれかの橋梁ジョイント構造において、前記鉄骨部材は、前記一対の既設構造材の対向面間で上側から下側へ向けて下降傾斜した姿勢で配置される鉄骨板と、その傾斜姿勢にある当該鉄骨板の前記遊間幅方向端部を前記既設構造材に接合固定する溶接継手とを備えている。
【0024】
この請求項4の橋梁ジョイント構造によれば、請求項1から3のいずれかの橋梁ジョイント構造と同様に作用する上、鉄骨部材の鉄骨板が下降傾斜姿勢で既設構造材同士の対向面間に配置される結果、既設構造材と鉄骨板の板面との継ぎ目は、鉄骨板が傾斜した分だけ路面側(上側)へと向けられ、かかる継ぎ目に溶接継手を加工する際に作業性が向上される。
【0025】
また、拘束部材の厚みを一定とした場合、その拘束部材により鉄骨板を内包する際、鉄骨板は、下降傾斜姿勢で配置される場合の方が、鉛直姿勢で配置される場合に比べて有効溶接長を長くできる。その結果、拘束部材の厚みを増加することなく、鉄骨板と既設構造材との接合する溶接継手について引張、曲げ及び捻りに関する必要な耐力を確保できる。
【0026】
一方、仮に鉄骨板を水平姿勢で配置した場合には、当該鉄骨板自体が拘束部材となるフレッシュコンクリートの流れ込みを邪魔して、拘束部材となるコンクリートの打設不良を招来する虞がある。しかしながら、鉄骨板は、下降傾斜姿勢で配置されることによって、鉄骨板の板面がフレッシュコンクリートの流れ込みを下方へ向けてガイドするので、拘束部材となるコンクリートの充填不足も低減される。
【0027】
請求項5の橋梁ジョイント構造は、請求項1から4のいずれかの橋梁ジョイント構造において、前記鉄骨部材は、前記一対の既設構造材の対向面間に配置される鉄骨板と、その鉄骨板の前記遊間幅方向端部を前記既設構造材に接合固定する溶接継手とを備えており、前記複数の鉄骨部材は、前記鉄骨板が前記一の既設構造材に前記溶接継手を介して接合固定され前記他の既設構造材から分離されるものと、前記鉄骨板が前記他の既設構造材に前記溶接継手を介して接合固定され前記一の既設構造材から分離されるものとが、前記遊間の切れ目方向において交互に配置されている。
【0028】
この請求項5の橋梁ジョイント構造によれば、請求項1から4のいずれかの橋梁ジョイント構造と同様に作用する上、各鉄骨板はどれも一対の既設構造材のうちいずれか一方とは溶接継手により接合固定されるがもう一方からは分離されているため、この各鉄骨板と既設構造材との分離箇所は、複合体の中でも負荷が集中し易く、故に、優先的に破壊される。
【0029】
このため、複合体の引張、圧縮、曲げ又は捻りに関する耐力を超える過大な力が作用した場合、例えば、大規模な地震動が作用した場合には、複合体を優先的に破壊させて橋桁及び橋桁隣接物の繋がりを断絶させ、床版及び床版隣接部の破壊を回避できる。
【0030】
しかも、複数の鉄骨部材は、一の既設構造材に溶接継手を介して接合固定され他の既設構造材から分離される鉄骨板と、他の既設構造材に溶接継手を介して接合固定され一の既設構造材から分離される鉄骨板とが、遊間の切れ目方向に交互配置されるので、複合体に作用する外力が遊間の切れ目方向において均等に分散される。
【0031】
請求項6の橋梁ジョイント構造は、請求項1から5のいずれかの橋梁ジョイント構造において、前記鉄骨部材は、前記一対の既設構造材の対向面間に配置される鉄骨板と、その鉄骨板の前記遊間幅方向端部を前記既設構造材に接合固定する溶接継手とを備えており、前記鉄骨板は、その溶接継手により前記既設構造材に接合固定される固定端部と、前記既設構造材から分離される自由端部と、その自由端部側の部分に形成され前記拘束部材の内部で引っ掛かるアンカー部とを備えている。
【0032】
この請求項6の橋梁ジョイント構造によれば、請求項1から5のいずれかの橋梁ジョイント構造と同様に作用する上、鉄骨板は、その固定端部が溶接継手により既設構造材に接合固定され、その自由端部がアンカー部を介して拘束部材の内部で引っ掛って止まるので、一対の既設構造材間に引張力が作用した場合に、拘束部材内から鉄骨板が引き抜けることを防止でき、拘束部材による鉄骨板の拘束力が高められる。
【0033】
請求項7の橋梁ジョイント構造は、請求項6の橋梁ジョイント構造において、前記アンカー部は、前記鉄骨板の固定端部から自由端部へ向かう方向に対して対称方向へ当該自由端部から分岐延長して設けられている。このため、拘束部材から鉄骨板を引き抜く力が鉄骨板に対して作用したとしても、アンカー部の分岐延長部分が拘束部材内で引っ掛かり、鉄骨板が拘束部材から引き抜かれることを防止できる。
【0034】
請求項8の橋梁ジョイント構造は、請求項1から4のいずれかの橋梁ジョイント構造において、前記鉄骨部材は、前記一対の既設構造材の対向面間に配置される鉄骨板と、その鉄骨板の前記遊間幅方向両端部を前記一対の既設構造材にそれぞれ接合固定する溶接継手とを備えている。
【0035】
この請求項8の橋梁ジョイント構造は、請求項1から4のいずれかの橋梁ジョイント構造と同様に作用する上、鉄骨板が一対の既設構造材にそれぞれ溶接継手により接合固定されるので、複合体の引張、曲げ及び捻りに関する耐力を高めることができる。
【0036】
請求項9の橋梁ジョイント構造は、請求項1から4又は8のいずれかの橋梁ジョイント構造において、前記鉄骨部材は、前記一対の既設構造体の対向面間に差し渡され当該対向面間の幅に比べて長く形成される鉄骨板と、その鉄骨板の差し渡し方向両端部を前記一対の既設構造材の双方に接合固定する溶接継手とを備えている。
【0037】
この請求項9の橋梁ジョイント構造によれば、請求項1から4又は8のいずれかの橋梁ジョイント構造と同様に作用する上、鉄骨板が既設構造材同士の対向面間の幅に比べて長いことから、当該鉄骨板の両端部を各既設構造材にそれぞれ確実に当接つつ、当該鉄骨板を一対の既設構造材間に差し渡すことができる。よって、鉄骨板は、各既設構造材に対して非直角状にはなるが、各既設構造材に対して確実に溶接される。
【0038】
請求項10の橋梁ジョイント構造は、請求項1から4又は8若しくは9のいずれかの橋梁ジョイント構造において、前記鉄骨部材は、上側から下側へ向けて下降傾斜した姿勢で前記一対の既設構造材の対向面間に差し渡される鉄骨板と、その下降傾斜姿勢にある当該鉄骨板の差し渡し方向両端部を前記一対の既設構造材の双方に接合固定する溶接継手とを備えており、前記複数の鉄骨部材は、前記鉄骨板が前記遊間の切れ目方向一端側へ下降傾斜するものと、前記鉄骨板が前記遊間の切れ目方向他端側へ下降傾斜するものとが、当該遊間の切れ目方向において交互に配置されている。
【0039】
この請求項10の橋梁ジョイント構造によれば、請求項1から4又は8若しくは9のいずれかに記載の橋梁ジョイント構造と同様に作用する上、複数の鉄骨部材は、遊間の切れ目方向一端側へ下降傾斜する鉄骨板と、それとは逆に遊間の切れ目方向他端側へ下降傾斜する鉄骨板とが、遊間の切れ目方向に交互配置されるので、複合体に作用する外力が遊間の切れ目方向において均等に分散される。
【0040】
請求項11の橋梁ジョイント構造は、請求項1から10のいずれかの橋梁ジョイント構造において、前記拘束部材と前記一対の既設構造材との継ぎ目を密封する防水部材を備えている。
【0041】
請求項12の橋梁ジョイント構造は、請求項1から11のいずれかの橋梁ジョイント構造において、前記防水部材は、前記拘束部材と前記一対の既設構造材との継ぎ目に加え、その一対の既設構造材と床版及び床版隣接部との継ぎ目を密封するものである。
【0042】
この請求項11又は12の橋梁ジョイント構造によれば、請求項1から10のいずれかの橋梁ジョイント構造と同様に作用する上、拘束部材と一対の既設構造材との継ぎ目、又は、それに加えて一対の既設構造材と床版及び床版隣接部との継ぎ目は防水部材により密封される。
【0043】
このため、塩化物イオンを含んだ水が舗装体を透過して拘束部材との境界まで浸透したとしても、この水が上記した継ぎ目へ直接浸透することが防水部材により遮断される。したがって、仮に何らかの原因で上記継ぎ目に隙間ができたとしても、例えば、それが補修されるまでの間、その隙間へ上記した水が流れ込むことが阻止され、橋桁の桁端や支承の塩害等による腐食劣化が防止される。
【0044】
請求項13の橋梁ジョイント構造は、請求項1から12のいずれかの橋梁ジョイント構造において、前記複合体は、床版及び床版隣接部の被舗装部間にある前記遊間を閉塞して当該閉塞箇所に新たに形成される新設被舗装部と、床版及び床版隣接部の地覆部間にある前記遊間を閉塞して当該閉塞箇所に新たに形成される新設地覆部とを備えており、その新設地覆部は、新設被舗装部に敷設される舗装体の路面に比べて高く隆起している。
【0045】
この請求項13の橋梁ジョイント構造によれば、請求項1から12のいずれかの橋梁ジョイント構造と同様に作用する上、複合体の新設地覆部は、当該複合体の新設被舗装部上に敷設される舗装体の路面よりも高く隆起しているので、路面上の水が新設地覆部を乗り越えて遊間へ流れ込むことが更に防止される。
【0046】
請求項14の橋梁ジョイント構造は、請求項1から13のいずれかの橋梁ジョイント構造において、前記複合体は、床版及び床版隣接部の被舗装部間にある前記遊間を閉塞して当該閉塞箇所に新たに形成される新設被舗装部を備えており、その新設被舗装部は、前記床版及び床版隣接部の被舗装部と面一状に形成されている。
【0047】
この請求項14の橋梁ジョイント構造によれば、請求項1から13のいずれかの橋梁ジョイント構造と同様に作用する上、複合体の新設被舗装部が、床版及び床版隣接部の被舗装部に比べて隆起も凹みもせずに面一状に形成されるので、床版及び床版隣接部の被舗装部と複合体の新設被舗装部との上に舗装体を均等の厚さで敷設することができる。
【0048】
このため、上面増厚工法のように床版の上面に増厚コンクリートが凸設されて、その分、アスファルトなどの舗装体の厚みが減少することを防止でき、結果、舗装体の厚み減少に伴う舗装体の耐久性の低下を回避できる。しかも、舗装体の厚み減少による耐久性低下を補うため、高い耐久性を備えた高価な舗装材料を使用する必要もない分、施工コストを低減できる。
【0049】
請求項15の橋梁ジョイント構造は、請求項1から14のいずれかの橋梁ジョイント構造において、前記床版隣接物は橋台であり、前記床版隣接部は橋台パラペットであり、前記複合体における前記遊間に跨って架設される部分は、その断面積が橋桁の断面積及び橋台パラペットの断面積に比べて小さく、かつ、その断面係数が橋桁の断面係数及び橋台パラペットの断面係数に比べて小さく形成されている。
【0050】
請求項16の橋梁ジョイント構造は、請求項1から14のいずれかの橋梁ジョイント構造において、前記床版隣接物は前記橋桁に遊間を隔てて隣接する第2の橋桁であり、前記床版隣接部は第2の橋桁の床版であり、前記複合体における前記遊間に跨って架設される部分は、その断面積が橋桁の断面積及び第2の橋桁の断面積に比べて小さく、かつ、その断面係数が橋桁の断面係数及び第2の橋桁の断面係数に比べて小さく形成されている。
【0051】
この請求項15又は16の橋梁ジョイント構造によれば、請求項1から14のいずれかの橋梁ジョイント構造と同様に作用する上、複合体における遊間に跨って架設される部分は、その断面積及び断面係数が橋桁及び橋台パラペットのものに比べて小さく形成されるので、その分、橋桁及び橋台パラペットに比べて、引張耐力、圧縮耐力及び曲げ耐力が小さく、部材として弱く形成されている。
【0052】
このため、複合体における遊間に跨って架設される部分の引張耐力、圧縮耐力又は曲げ耐力を超える過大な力が作用した場合、床版及び床版隣接部ではなく、複合体に負荷が集中してこれが優先的に破壊される。さすれば、橋桁及び橋桁隣接物の繋がりは断絶されるので、地震時に橋桁及び橋桁隣接物が連動構造体として変位挙動することが回避される。
【0053】
つまり、橋桁と橋桁隣接物との変位挙動の連動が解消される結果、橋桁及び橋桁隣接物は、それぞれ固有の変位挙動を取り戻すので、大規模地震時のように過大な力が作用する状況下でも、連動構造体が一体的に変位挙動することを原因として発生するであろう床版又は床版隣接部の損傷や破壊を回避できる。
【0054】
なお、請求項1から16のいずれかの橋梁ジョイント構造において、前記一対の既設構造材及び複数の鉄骨部材は、床版及び床版隣接部内に配筋される筋材と分離独立した状態で床版及び床版隣接部のコンクリートに固定されているものであっても良い。かかる場合には、請求項1から16のいずれかの橋梁ジョイント構造と同様に作用する上、複合体の骨組みとなる一対の既設構造材及び複数の鉄骨部材は、床版及び床版隣接部に配筋される筋材と分離独立している。このため、複合体に負荷が集中してこれらが優先的に破壊される場合に、複合体の破壊に伴って床版及び床版隣接部の筋材まで破壊されることを防止でき、当該破壊に伴う被害の拡大を抑制し、復旧工事の規模縮小が図られる。
【発明の効果】
【0055】
本発明の橋梁ジョイント構造によれば、一対の既設構造材、複数の鉄骨部材及び拘束部材から成る複合体は、床版及び床版隣接部間にある遊間を閉塞し、かつ、床版及び床版隣接部の被舗装部同士を連接するので、床版及び床版隣接部の被舗装部の上に敷設される舗装体を当該複合体の上にも一続きに連続形成することができるという効果がある。
【0056】
これにより、橋桁及び橋桁隣接物の接続部分における舗装体の路面上から当該舗装体と異なる材質の異物を排除できるので、そこを通過する走行車両の乗り心地の悪化や予測不能な不安定な挙動を抑制できるという効果がある。しかも、舗装体の路面が橋桁及び橋桁隣接物の接続部分で途切れることなく連続するので、そこを走行車両が通過することによる衝撃発生が回避され、かかる衝撃による走行車両の乗り心地の悪化や橋梁設備の損傷を防止できるという効果がある。
【0057】
また、一対の既設構造材、複数の鉄骨部材及び拘束部材から成る複合体は、鉄骨鉄筋コンクリートを施工するという一般的な工事手法を用いて床版及び床版隣接部を直接繋ぎ合わせるものであるので、フィンガージョイント型の伸縮装置を設置する場合に比べて補修工事費を削減できるという効果もある。
【0058】
また、複合体により床版及び床版隣接部にある遊間が閉塞されるので、凍結防止剤等の塩化物イオンを含んだ雨水、融雪水その他の水が、当該遊間へ直接流れ込むことを防止でき、橋桁の桁端や支承の塩害等による腐食劣化を抑制できるという効果がある。
【0059】
また、複合体による連結によって橋桁及び橋桁隣接物を連結して遊間幅の伸縮を防止するので、従来の伸縮装置のように遊間の伸縮に伴った舗装体の亀裂や破断の発生を防止できるという効果がある。しかも、特に、請求項2の橋梁ジョイント構造によれば、橋桁の桁端の伸縮変位及び回転変位を、連動構造体全体の変位挙動として吸収するので、従来の伸縮装置のように遊間の伸縮に伴った舗装体の亀裂や破断の発生を防止できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施例である橋梁ジョイントが適用される橋梁について、その全体構造を示した側面図である。
【図2】橋梁ジョイントの施工前の橋梁について、その橋桁と橋台との接続部分を拡大視した橋軸方向断面図であって、(a)は、橋桁と橋台との接続部分に設置されるフィンガージョイントを示した図であり、(b)は、そのフィンガージョイントの各受台部材を改造した橋梁ジョイントの各既設ベースを示した図であり、(c)は、その既設ベースを用いて形成される橋梁ジョイントの型枠となる施工凹所を示した図である。
【図3】(a)は、施工凹所のある床版と橋台パラペットとの接続部分の平面図であって、施工凹所内に複数の鉄骨部材を設けた状態を図示したものであり、(b)は、(a)のC部の拡大図である。
【図4】鉄骨板の部品図であって、(a)は、その平面図であり、(b)は、その側面図である。
【図5】橋梁ジョイントの平面図であり、舗装体の施工前の状態を図示したものである。
【図6】図5のVI−VI線における橋梁の被舗装部の橋軸方向断面図である。
【図7】図5のVII−VII線における橋梁の被舗装部の橋軸方向断面図である。
【図8】橋梁ジョイントの内部構造を示した断面図であって、(a)は、舗装体を敷設した状態を示した橋軸直角方向断面図であり、(b)は、(a)のD部の拡大図である。
【図9】橋桁、橋台パラペット及び橋梁ジョイントの断面積及び断面係数を説明するために例示した橋梁モデルの模式図である。
【図10】橋梁ジョイントを施工した橋梁の変位挙動を示した模式図であって、(a)は、無変形状態にある橋梁を、(b)は、橋桁が撓み状態にある橋梁を、(c)は、橋桁の伸長状態にある橋梁を、(d)は、橋桁が収縮状態にある橋梁を、それぞれ図示したものである。
【図11】第2実施例の橋梁ジョイントにおける複数の鉄骨部材の配置状態に関する説明図であって、床版と橋台パラペットとの接続部分の平面図である。
【図12】第2実施例の橋梁ジョイントに関する、図11のXII−XII線における橋梁の被舗装部の橋軸方向断面図であり、舗装体を敷設した状態を図示したものである。
【図13】第2実施例の橋梁ジョイントの内部構造を示した断面図であって、(a)は、舗装体を敷設した状態を示した橋軸直角方向断面図であり、(b)は、(a)のE部の拡大図である。
【図14】第3実施例の橋梁ジョイントの内部構造を示した断面図であって、(a)は、舗装体を敷設した状態を示した橋軸直角方向断面図であり、(b)は、(a)のF部の拡大図である。
【図15】第4実施例の橋梁ジョイントの内部構造を示した断面図であって、舗装体を敷設した状態を示した橋軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、本発明の橋梁ジョイント構造についての好ましい実施の形態に関し、添付図面を参照して説明する。
【0062】
図1は、本発明の一実施例である橋梁ジョイント20が適用される橋梁1について、その全体構造を示した側面図である。図1に示すように、後述する橋梁ジョイント20の適用対象となる橋梁1は、主に、舗装体2と、橋桁3と、橋台4とを備えた既設の道路橋であり、特に、その橋桁3に使用されるコンクリートのクリープ及び乾燥収縮が収束状態にあるものがより好適である。
【0063】
また、橋梁ジョイント20の適用対象となる橋梁1は、概ね橋長が10m〜50m級のコンクリート橋(鉄筋コンクリート橋、プレストレストコンクリート橋を含む。以下同じ。)又は鋼橋である中規模の一径間単純桁橋である。更に言えば、後述する橋梁ジョイント20を適用する場合、橋梁1は、1年間の温度変化に伴う橋桁3の伸縮(橋軸方向の伸縮をいう。以下同じ)長が±13mm程度までの範囲(以下「伸縮許容範囲」ともいう。)で変化するものがより好適である。
【0064】
ここで、例えば、財団法人日本道路協会「道路橋示方書・同解説(平成14年3月発行)」59頁(表−2.2.16)に準拠すれば、コンクリート橋の年間温度変化が普通地方で−5℃〜+35℃、寒冷地方で−15℃〜+35℃であり、上路橋型の鋼橋の年間温度変化が普通地方で−10℃〜+35℃、寒冷地方で−20℃〜+40℃であるので、コンクリート橋の線膨張係数を10×10−6(m/℃)、鋼橋の線膨張係数を12×10−6(m/℃)、及び、橋長(最大長)を50mとするならば、コンクリート橋の橋桁3の伸縮長は、普通地方で±10mm、寒冷地方で±12.5mmとなり、鋼橋の橋桁3の伸縮長は、普通地方で±13.5mm、寒冷地方で±18mmとなる。
【0065】
つまり、このことは、橋長50m以下のコンクリート橋については、それが普通地方及び寒冷地方のいずれの地方に建設されていても、その全てが橋梁ジョイント20の適用対象に該当することを意味している。また、橋長50m以下の鋼橋のうち、普通地方及び寒冷地方に建設される一部については上記した伸縮許容範囲外となるものの、残る大半のものについては上記した伸縮許容範囲内に含まれることから、後述する橋梁ジョイント20の適用対象に該当するものといえる。
【0066】
橋梁1の舗装体2は、人、車両その他の交通荷重が直接載荷される道路などの輸送路であり、その表面部分が路面2aとなる。橋桁3は、道路などの輸送路を直接支持する上部構造である。橋台4は、橋桁3を支持するとともに基礎となる地盤Gに設置され、当該橋台4に加わる荷重を地面上にて保持する下部構造である。
【0067】
橋桁3は、主に、その床版5と主桁6とを備えている。床版5は、その上面に敷設される舗装体2を支持するコンクリート製(鉄筋コンクリート製を含む。以下同じ。)の構造物である。また、主桁6は、舗装体2及び床版5からなる橋床を下方から支持する構造物である。なお、橋桁3には、床版5と主桁6とが一体となったタイプのものと、床版5と主桁6とが別体となったタイプのものとがあるが、少なくとも床版5がコンクリート製であれば何れのタイプであっても良い。
【0068】
また、橋台4は、支承7を介して橋桁3の長手方向両端部を支持するコンクリート製の構造物である。橋台4には、その上部にパラペット(以下「橋台パラペット」という。)8が設けられており、この橋台パラペット8は、盛土土工部G1と橋桁3との間に介設され、交通荷重や土圧を受けるコンクリート製の構造物である。
【0069】
図2は、橋梁ジョイント20の施工前の橋梁1について、その橋桁3と橋台4との接続部分を拡大視した橋軸方向断面図であり、図中では橋桁3及び橋台4に配筋される鉄筋の図示を省略している。なお、図2は、橋梁1の橋軸方向一端側のみを図示しているが、当該橋梁1の橋軸方向他端側は、図2に図示したものと対称な構造となっている。
【0070】
ここで、図2(a)は、橋桁3と橋台4との接続部分に設置されるフィンガージョイント50を示した図であり、図2(b)は、そのフィンガージョイント50の受台部材51,51を改造した橋梁ジョイント20の既設ベース11,12を示した図であり、図2(c)は、その既設ベース11,12を用いて形成される橋梁ジョイント20の型枠となる施工凹所14を示した図である。
【0071】
図2(a)に示すように、フィンガージョイント50は、橋桁3の温度変化、コンクリートのクリープ若しくは乾燥収縮、活荷重などによる橋桁3の桁端の伸縮変位及び回転変位を吸収するための伸縮装置の一種である。このフィンガージョイント50は、一対の受台部材51,51と、一対のフェイスプレート52,52とを備えている。
【0072】
各フェイスプレート52は、その上面が舗装体2の上面と面一状となっており、かかる舗装体2とともに路面2aの一部を成している。また、各受台部材51は、フェイスプレート52を1枚ずつ別々に支持するとともにこれらを床版5と橋台パラペット8とに各々配置固定するための部品である。
【0073】
各受台部材51は、それぞれ同一形状のものが遊間9を挟んで床版5と橋台パラペット8とに対称に配置されている。また、一対の受台部材51,51は、遊間9を隔てて互いに対向するウェブプレート51a,51aをそれぞれ備えており、このウェブプレート51a,51a間にも、橋桁3及び橋台4を隔てる遊間9が存在している。
【0074】
また、各受台部材51は、ウェブプレート51aの他にも、例えば、複数枚のリブ51b、複数本のアンカーバー51c、及び、複数枚のアンカープレート51d等のように、床版5及び橋台パラペット8の既設コンクリート内に埋設固定される部材を備えている。
【0075】
各リブ51b及び各アンカーバー51cは、ウェブプレート51a,51aを床版5及び橋台4に固定しており、一対のウェブプレート51a,51aの非対向面に溶接継手(図示せず。)を介して接合固定されている。また、各アンカープレート51dは、フェイスプレート52の下面に上端が溶接継手(図示せず。)を介して連接固定され、その固定端から反遊間9側の下方へ傾斜延長されている。
【0076】
図2(b)に示すように、橋梁1は被舗装部Aと地覆部Bとを備えており、そのうち、被舗装部Aは舗装体2が敷設される部分であり、地覆部Bは被舗装部Aの幅員方向両側にそれぞれ設けられている。ここで、以下の説明(図示を含む。)では、「A」を被舗装部を示す表記として、「B」を地覆部を示す表記として用いる。
【0077】
図2(a)から図2(c)に示すように、橋梁ジョイント20の施工前の状態にあっては、橋梁1には、床版5の被舗装部5A及び地覆部5Bと、橋台パラペット8の被舗装部8A及び地覆部5Bとをが設けられている。そして、床版5の被舗装部5A及び地覆部5Bと、橋台パラペット8の被舗装部8A及び地覆部5Bとの間には、上記した遊間9が存在している。
【0078】
ここで、明細書及び図面における、「A」に関する表記は、床版5の被舗装部5A、橋台パラペット8の被舗装部8A若しくは後述する橋梁ジョイント20の被舗装部20A(図5から図8参照。)のいずれかを示す表記又はこれらの総称を示す表記を意味し、「B」に関する表記は、床版5の地覆部5B、橋台パラペット8の地覆部8B若しくは後述する橋梁ジョイント20の地覆部20B(図5から図8参照。)のいずれかを示す表記又はこれらの総称を示す表記を意味する。
【0079】
次に、図2(a)及び図2(b)を参照して、拘束部材22となる後打ちコンクリートの打設前に行う必要がある一対の既設ベース11,12の製造工程について説明する。
【0080】
まず、図2(a)に示した既設の橋梁1における橋桁3と橋台4との接続部分から、当該接続部分に敷設される舗装体2の一部と、そこに当初設置されていたフィンガージョイント50の中から各フェイスプレート52を含めた不要部分とが、それぞれ除去されて、図2(b)に示す状態へと変更される。具体的は、図2(b)中において2点鎖線で図示する部分がそれぞれ撤去される。
【0081】
この舗装体2の部分的撤去により、床版5の被舗装部5A、橋台パラペット8の被舗装部8A及び遊間9が路面2a側に露出される。また、フィンガージョイント50の中から不要部分を除去することにより、各受台部材51,51の残余部分が、橋梁ジョイント20に用いられる一対の既設ベース11,12へと改造される。
【0082】
ここで、フィンガージョイント50の中の不要部分とは、各受台部材51の一部分と、各フェイスプレート52全体と、各フェイスプレート52と床版5及び橋台パラペット8の被舗装部5A,8Aの上面との間に介在する無収縮モルタル製の土台53であり、これらが橋桁3及び橋台4の接続部分から除去される。
【0083】
特に、各受台部材51の不要部分は、各受台部材51の上端部であって、床版5及び橋台パラペット8の被舗装部5A,8Aの上面より上側に存在するものであり、具体的には、被舗装部5A,8Aの上面より上側に存在している、各ウェブプレート51aの一部分、各リブ51bの一部分、及び、各アンカープレート51dの一部分が、それぞれ該当する。
【0084】
さらに、この各受台部材51からの不要部分の除去によって、各ウェブプレート51a、各リブ51b及び各アンカープレート51dの上端は、床版5及び橋台パラペット8の被舗装部5A,8Aの上面と面一状となる。
【0085】
これらの一連の撤去及び除去によって、被舗装部5A,8Aの上面より下側に存在する部分、即ち、各ウェブプレート51aの一部分、床版5及び橋台パラペット8の既設コンクリート内に複数埋設されている各リブ51b、各アンカーバー51c及び各アンカープレート51dの一部分、並びに、各受台部材51を床版5又は橋台パラペット8に締結固定するための各台座プレート51eのみが、床版5及び橋台パラペット8に残される。
【0086】
ここで、各受台部材51の残余部分は、アンカープレート51dの残余部分を除いて、各ウェブプレート51a、各リブ51b及び各アンカーバー51cの各残余部分並びに各台座プレート51eが一体の部材として存在することから、この各受台部材51の残余部分のうち一体の部材として残った部分が、既設ベース11,12として再利用されることとなる。
【0087】
次に、図2(b)を参照して、一対の既設ベース11,12について説明する。
【0088】
図2(b)に示すように、一対の既設ベース11,12は、床版5及び橋台パラペット8間にある遊間9を隔てて互いに対向配置されている。これら一対の既設ベース11,12は、床版5に配置固定される既設ベース(以下「床版ベース」ともいう。)11と、橋台パラペット8に配置固定される既設ベース(以下「橋台ベース」ともいう。)12とを備えている。また、床版ベース11は床版5の一部となっており、橋台ベース12は橋台パラペット8の一部となっている。
【0089】
床版ベース11及び橋台ベース12は、ウェブプレート51aの残余部分から成る板状の前板部10aと、各リブ51bの残余部分からなる板状のリブ板部10bと、各アンカーバー51cから成る棒状のアンカー軸部10cと、各台座プレート51eから成る台座板部10dとを備えている。
【0090】
床版ベース11及び橋台ベース12の双方の前板部10aは、遊間9を隔てて互いに平行に対向配置されており、当該前板部10a,10a同士の対向面は双方とも平面状に形成されている。各前板部10aの反遊間9側の板面には、複数枚のリブ板部10bと、複数本のアンカー軸部10cとが設けられている。
【0091】
各リブ板部10bは、前板部10aの上端から下端まで連続した一枚板で形成されており、その前板部10aの横幅方向(遊間9の切れ目方向と等しく、本実施例では橋軸直角方向に一致する。以下同じ。)に所定間隔で複数配置されている。また、各アンカー軸部10cは、前板部10aの板面に上下に1本ずつ対を成して配置されており、その前板部10aの横幅方向に所定間隔で複数対設けられている。
【0092】
各リブ板部10b及び各アンカー軸部10cはいずれも、それらが接合固定される前板部10aにおける反遊間9側の板面に溶接継手(図示せず。)により接合固定され、当該接合固定された部分から当該前板部10aの板面に対する垂直方向(本実施例では橋軸方向に一致する。以下同じ。)へ突出されている。
【0093】
また、各リブ板部10bは、前板部10aにおける横幅方向に、所定の間隔で設けられている。さらに、上下一対の各アンカー軸部10cは、前板部10aにおける隣り合うリブ板部10b,10b同士の間にある板面に所定の間隔で設けられている。そのうえ、これらの各リブ板部10b及び各アンカー軸部10cは、いずれも床版5又は橋台パラペット8の既設コンクリート内に埋め込まれ固定されている。
【0094】
橋桁3及び橋台パラペット8の既設コンクリート部分の対向面間には、所定幅(例えば150m〜160mm程度)の遊間9がもともと設けられており、この遊間9を介して橋桁3と橋台パラペット8とは分断されている。床版5と橋台パラペット8とは遊間9を隔てて互いに近接して設けられており、かかる遊間9は、上記したフェイスプレート52,52の撤去により路面2a側に露出された状態となっている。
【0095】
また、遊間9は、一対の既設ベース11,12の各前板部10aの対向面間にある部分と、橋桁3及び橋台パラペット8の既設コンクリート部分の対向面間にある部分とが上下に通じ合って設けられており、前者(各前板部10a,10aの対向面間にあるもの)の方が、後者(既設コンクリート部分の対向面間にあるもの)に比べて、その対向面間の幅(距離)が大きくなっている。
【0096】
次に、図2(c)を参照して、一対の既設ベース11,12について説明する。
【0097】
図2(c)に示すように、各既設ベース11,12を隔てる遊間9には、図示しない固定部材を介して、型枠板13が配置固定されている。この型枠板13は、各既設ベース11,12の上面から所定深さHの位置に水平配置される底板13aを備えており、この底板13aが遊間9の切れ目方向に延設されている。
【0098】
型枠板13は、その底板13aにおける遊間9の切れ目方向両端部に立設される側板13b,13bも備えており(図3、図4及び図8参照。)、前板部10a,10a間に存在する遊間9を塞いでいる。
【0099】
この型枠板13と一対の既設ベース11,12の各前板部10a,10aとにより囲まれた部分は、その上方が開放された側面視凹字形の凹所に形成されており、当該凹所が施工凹所14となっている。
【0100】
施工凹所14は、鉄骨鉄筋コンクリートの複合体である橋梁ジョイント20を形成するため、その拘束部材22となる後打ちコンクリートの打設施工用の型枠として機能する凹所である。この施工凹所14は、型枠板13により遊間9を塞ぐことによって、当該施工凹所14に充填される後打ちコンクリートが各既設ベース11,12の前板部10a,10a間から遊間9の下側に流出することを防止している。
【0101】
なお、型枠板13は、後打ちコンクリートの打設養生後も遊間9から撤去せずに橋梁ジョイント20の一部として埋め込んだまま放置しても良いが、後打ちコンクリートの打設養生後に撤去しても良い。
【0102】
図3(a)は、施工凹所14のある床版5と橋台パラペット8との接続部分の平面図であって、施工凹所14内に複数の鉄骨部材21を設けた状態を図示したものであり、図3(b)は、図3(a)のC部の拡大図である。
【0103】
図3に示すように、施工凹所14には、床版ベース11及び橋台ベース12の対向面間に存在する遊間9内に、その遊間9の切れ目方向に所定幅W1(例えば、200mm程度)の間隔で、複数の鉄骨部材21が配置されている。複数の鉄骨部材21は、床版ベース11又は橋台ベース12のうち少なくともどちらか一方に接合固定されている。
【0104】
また、各鉄骨部材21は、当該鉄骨部材21の本体となる鉄骨板21aを備えており、この鉄骨板21aは、床版ベース11又は橋台ベース12の一方に溶接継手21bにより接合固定される固定端部と、床版ベース11又は橋台ベース12の他方から分離されている自由端部とを備えている。
【0105】
そして、複数の鉄骨板21aのうち、その固定端部が床版ベース11に接合固定されてその自由端部が橋台ベース12から分離される鉄骨板21aと、その固定端部が橋台ベース12に接合固定されてその自由端部が床版ベース11から分離されている鉄骨板21aとが、遊間9の切れ目方向において交互に配置されている。
【0106】
ところで、上記したように鉄骨板21aの全ては、その固定端部が既設ベース11,12のどちらか一方に接合固定されるものの、その自由端部が既設ベース11,12のどちらかもう一方から分離されている。つまり、拘束部材22となる後打ちコンクリートが硬化する迄の間は、たとえ全ての鉄骨部材21が取り付けられても一対の既設ベース11,12は以前として分離したままの状態であり、橋桁3と橋梁隣接物である橋台4とは互いに独立して挙動する。
【0107】
したがって、橋梁ジョイント20の施工時において、橋梁1上に設けられる道路を車両が通行すると、その車両を原因とした交通荷重によって橋桁3の振動し、それに伴って各鉄骨部材21が動いている状況となる。
【0108】
ところが、拘束部材22となる後打ちコンクリートは、コンクリートの一般的な性質として、その内部に埋設される各鉄骨部材21が振動などにより動いている状態にあっても支障なく硬化するものである。
【0109】
したがって、橋梁ジョイント20を施工する場合に、交通荷重により橋桁3が撓んで振動して各鉄骨部材21が動いている状況下にあっても、拘束部材22となるフレッシュコンクリートを硬化させて、当該拘束部材22により鉄骨部材21を拘束する状態を創り出すことができる。このため、橋梁1上に設けられる一部車線を通行可能に開放したままでも、フレッシュコンクリートを硬化させて拘束部材22とすることができ、橋梁ジョイント20の施工に際して、橋梁上の道路を通行止めにする必要がないものと考えられる。
【0110】
各鉄骨部材21は、長方形状の鋼板が鉄骨板21aに使用されており、例えば、隣り合う鉄骨板21aの固定端部同士の間隔が上記所定幅W1である。また、り、各鉄骨板21aの自由端部の先端とそれから分離した床版ベース11又は橋台ベース12の前板部10aとの間には、拘束部材22となるフレッシュコンクリートが流動し易いように所定幅C1(例えば、30mm程度)の隙間が設けられている。
【0111】
また、各鉄骨板21aは、一対の既設ベース11,12の各前板部10aの板面に対する垂直方向に向かって延出されており、その各鉄骨板21aの自由端部の先端部には、拘束部材22の内部で引っ掛かる一対のアンカー片21a1,21a1が形成されている。なお、塩害等による腐食劣化を防止するため、既設ベース11,12の各前板部10aと、各鉄骨部材21の表面に、亜鉛メッキやエポキシ樹脂塗装による防錆処理を施しても良い。
【0112】
図4は、鉄骨板21aの部品図であって、図4(a)は、その平面図であり、図4(b)は、その側面図である。図4(a)に示すように、鉄骨板21aは、上記固定端部となる端部(図4(a)左側)から上記自由端部となる端部側(図4(b)右側)へ向けて平面視直線状に形成されており、その自由端部となる端部に一対のアンカー片21a1,21a1が折り曲げ形成されている。
【0113】
一対のアンカー片21a1,21a1は、鉄骨板21aの固定端部となる端部から自由端部となる端部へ向かう直線L方向に対し、所定の鋭角状の角度αを成し、かつ、鉄骨板21aの自由端部となる端部から互いに対称な方向へ分岐して延長するように設けられている。
【0114】
図4(b)に示すように、鉄骨板21aは、その自由端部となる端部先端から入れられた切込みによって、当該自由端部となる端部が上下等幅に二分割されており、この上下二分割されたそれぞれの部分から一対のアンカー片21a1,21a1が形成されている。
【0115】
図5は、橋梁ジョイント20の平面図である。なお、図5は、橋梁ジョイント20の上面に敷設される舗装体2の施工前の状態を図示したものであり、当該舗装体2の図示を省略するとともに、床版5及び橋台パラペット8に配筋される鉄筋の図示を省略している。
【0116】
図5に示すように、橋梁1は、橋梁ジョイント20を介して床版5及び橋台パラペット8同士が互いに繋がれ連接されており、この結果、図10に示すように、床版5及び橋台パラペット8が一体化した構造体(以下「連動構造体」という。)30を具備したものとなる。
【0117】
ここで、橋梁ジョイント20は、橋桁3の床版5と橋台5の橋台パラペット8との接続部分に設けられる鉄骨鉄筋コンクリート製の構造体であり、上記した一対の既設ベース11,12と、上記した施工凹所14内に構築される複数の鉄骨部材21及び拘束部材22とによって形成されている。
【0118】
そして、この橋梁ジョイント20は、床版5及び橋台パラペット8と同様に、被舗装部20Aと地覆部20Bとを備えている。橋梁ジョイント20の被舗装部20Aは、床版5及び橋台パラペット8の被舗装部5A,8A間にある遊間9を閉塞して当該閉塞箇所に新たに設けられたものであり、床版5及び橋台パラペット8の被舗装部5A,8Aと面一に形成されている。
【0119】
また、橋梁ジョイント20の地覆部20Bは、床版5及び橋台パラペット8の地覆部5B,8B間にある遊間9を閉塞して当該閉塞箇所に新たに設けられたものであり、床版5及び橋台パラペット8の地覆部5B,8Bと連接して形成されている。なお、かかる地覆部20Bを形成する場合、当然に、地覆部20Bを成型するためコンクリート型枠も必要となるが、図2、図3及び図5では、当該コンクリート型枠の図示を省略している。
【0120】
この橋梁ジョイント20は、上記した一対の既設ベース11,12及び複数の鉄骨部材21と、下記する拘束部材22とから成る複合体であり、拘束部材22は、その内部に複数の鉄骨部材21を被包拘束している。この拘束部材22は、このように複数の鉄骨部材21を内部に被包拘束することにより複数の鉄骨部材21の変形を阻止するとともに、舗装体2の支持に加えて止水機能を発揮するものである。
【0121】
そのうえ、この拘束部材22は、各鉄骨部材21同士の間に介在することで、橋桁3の変形及びその変形に伴う力を、橋桁隣接物である橋台4の橋桁隣接部である橋台パラペット8に対して伝達する媒体として機能する。つまり、各鉄骨部材21は、上記したように一対の既設ベース11,12を互いに連結する機能を持ち合わせていないため、橋桁3と橋桁隣接部である橋台8との連接は、拘束部材22であるコンクリートを媒体として達成されるのである。
【0122】
また、拘束部材22は、床版ベース11の前板部10a及び橋台ベース12の前板部10aの間、即ち、施工凹所14内に充填される後打ちコンクリートで形成されている。さらに、この拘束部材22は、床版ベース11及び橋台ベース12の間に架設されており、床版ベース11及び橋台ベース12を接合している。
【0123】
ここで、拘束部材22の素材となるコンクリートには、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント又は超早強ポルトランドセメントを用いたコンクリートが使用される(JIS−R5210:2009)。
【0124】
また、橋梁ジョイント20は、既設の橋梁1に対して施工されるため、当該道路橋の交通規制が必要となることがある。かかる場合には、橋梁ジョイント20の施工時間を短縮化して交通障害を最小限に抑制するため、拘束部材22用のコンクリートとして、硬化(養生)期間が比較的短い超速硬セメント(上記「コンクリート便覧(第2版)」48頁−49頁参照。)を使用しても良い。
【0125】
橋梁ジョイント20に高い耐久性が必要な場合には、拘束部材22のひび割れ分散や靭性向上を図るため、拘束部材22の素材として、コンクリートに短繊維補強材を混ぜ込んだ短繊維補強コンクリート(JIS−R5210:2009)を使用しても良い。
【0126】
短繊維補強コンクリートは、未硬化状態のフレッシュコンクリート(土木学会コンクリート委員会コンクリート標準示方書改訂小委員会「コンクリート標準示方書(2007年制定・施工編)(平成14年3月発行)」6頁、21頁参照。以下同じ。)に短繊維補強材を混ぜ込み、この短繊維補強材ごと硬化させたたものであり、短繊維補強材としては、例えば、鋼繊維、炭素繊維、ガラス繊維、プラスチック繊維その他の短繊維からなる補強材が用いられている。
【0127】
次に、図6及び図7を参照して、橋梁ジョイント20の内部構造について説明する。図6は、図5のVI−VI線における橋梁1の被舗装部5A,8A,20Aの橋軸方向断面図であり、図5と同様に、橋梁ジョイント20の被舗装部5A,8A,20Aの上面に敷設される舗装体2の施工前の状態を図示し、当該舗装体2の図示を省略している。
【0128】
また、図7は、図5のVII−VII線における橋梁1の被舗装部5A,8A,20Aの橋軸方向断面図であり、橋梁ジョイント20の被舗装部5A,8A,20Aの上面に舗装体2を敷設した状態を図示し、床版5及び橋台パラペット8に配筋される鉄筋の図示を省略している。
【0129】
図6及び図7に示すように、各鉄骨板21aと型枠板13の底板13aとの間には、フレッシュコンクリートが流動可能な隙間が確保される結果、各鉄骨板21aの下側へフレッシュコンクリートが流れ込み易くなっている。また、全ての鉄骨部材21は、後打ちコンクリート製の拘束部材22の内部に被包されており、特に、各鉄骨板21aの上下には所定厚み(例えば最低でも30mm程度)以上のかぶりが確保されている。なぜならば、橋梁ジョイント20における鉄骨部材21への拘束部材22の付着力を確保し、かつ、防錆を図るためである。
【0130】
また、橋梁ジョイント20の被舗装部20Aは、その厚みtが全体的に均一(例えば110mm程度)に形成されており、何処の部位においても床版5の被舗装部5Aの厚みT1に比べて小さく形成されている(図6及び図8参照)。この橋梁ジョイント20の被舗装部20Aの厚みtは、後述するように、コンクリートの充填性、耐荷性および防錆能力を総合的に勘案して決定されている。
【0131】
床版ベース11及び橋台ベース12の前板部10a,10aの対向面は、施工凹所14の内面を構成しているが、この施工凹所14の内面のうち前板部10a,10aの対向面全体には、打継ぎ用接着剤が塗布されている。この打継ぎ用接着剤には、エポキシ樹脂系又はアクリル樹脂系の打継ぎ用接着剤が使用されており、例えば、ショーボンド建設株式会社製の2液エポキシ樹脂系打継ぎ用接着剤である商品名「ショーボンド♯202」が使用される。
【0132】
施工凹所14の内面への打継ぎ用接着剤の塗布は、施工凹所14の形成後、橋梁ジョイント20の拘束部材22となる後打ちコンクリートの打設前に、刷毛、ゴムベラその他の塗布用具を用いて、所定の可使時間内に行われる。
【0133】
この打継ぎ用接着剤の塗布後、当該接着剤について定められている所定の打設有効時間内に、拘束部材22となる後打ちコンクリートが施工凹所14内へと打設される。これによって、床版ベース11の前板部10a及び橋台ベース12の前板部10aと拘束部材22との接合部が、打継ぎ用接着剤の接着継手25を介して接合される。
【0134】
このようにして、橋梁ジョイント20は、打継ぎ用接着剤が硬化した接着継手25を介在させて、一対の既設ベース11,12の前板部10a,10aである鋼板と拘束部材22である後打ちコンクリートとの境界(継ぎ目)を接合するので、橋梁ジョイント20と床版5と橋台パラペット8との付着力を更に強固なものとできる。
【0135】
しかも、一対の既設ベース11,12と拘束部材22との継ぎ目は、このように接着継手25により密封されることにより水密性が確保されるので、橋桁3の桁端や支承7への塩化物イオンを含んだ水の漏水を防止でき、それ故、塩化物イオンの浸透を原因とした橋桁3の桁端や支承7の腐食劣化を防止できる。
【0136】
なお、橋梁ジョイント20に要求される耐久性が小さい場合には、必ずしも一対の既設ベース11,12の前板部10a,10aである鋼板と拘束部材22となる後打ちコンクリートとの接合部に接着継手25を介在させる必要はなく、施工凹所14へ拘束部材22となる後打ちコンクリートを直接打設しても良い。
【0137】
橋梁ジョイント20の被舗装部20Aの上面には、床版5及び橋台パラペット8の各被舗装部5A,8Aの上面に跨って、防水工によって被舗装部5A,8A,20Aの上面に敷設されるシート状又は塗布形性される塗膜状の防水材26が設けられている。
【0138】
この防水材26は、被舗装部5A,8A,20Aの上面に存在する床版5と床版ベース11との継ぎ目、床版ベース11と拘束部材22との継ぎ目、拘束部材22と橋台ベース12との継ぎ目、及び、橋台ベース12と橋台パラペット8との継ぎ目を密封し、これらの水密性を更に高めることで、舗装体2を浸透しきた塩化物イオンを含んだ水が当該継ぎ目から橋桁3の桁端や支承7へ漏水してこれらを腐食劣化させることを防止している。
【0139】
さらに、床版5の地覆部5B及び橋台パラペット8の地覆部8Bと橋梁ジョイント20の地覆部20Bとの間にある継ぎ目についても、上記した接着継手25若しくは防水材26又はこれらの双方により密封されており、その水密性の向上が図られている。
【0140】
もっとも、防水材26を地覆部5B,8B,20Bに施工する場合には、これらに防水材26を跨げて面的に設ける必要は必ずしもなく、当該防水材26を、床版5及び橋梁ジョイント20の継ぎ目の目地と、橋台パラペット8及び橋梁ジョイント20の継ぎ目の目地とにのみ設ければ良い。
【0141】
また、図7に示すように、橋梁ジョイント20、床版5及び橋台パラペット8の各被舗装部5A,8Aの上には、これら全体を覆う舗装体2が覆設されている。この舗装体2は、橋梁ジョイント20の拘束部材22となる後打ちコンクリートの打設養生後であって、防水材26の敷設又は塗布形成の後に、かかる防水材26越しに、橋梁ジョイント20の被舗装部20Aの上面に敷設されたものである。
【0142】
この舗装体2の舗装材料には、床版5及び橋台パラペット8の被舗装部5A,8A上に敷設される既存の舗装体2と同じものが使用されており、例えば、既存の舗装体2(図2及び図3参照。)がアスファルト製である場合は、これと同じアスファルトが使用されている。この結果、走行車両が橋梁ジョイント20の被舗装部20Aの上方に敷設される舗装体2を通過する際に路面2aの特性変化がなく、走行車両の乗り心地を向上できる。
【0143】
なお、橋梁ジョイント20の施工時間に制約がある場合には、一旦、既存の舗装体2の路面2aと面一まで橋梁ジョイント20の拘束部材22となる後打ちコンクリートを打設した上で、これを養生した後、この橋梁1を交通荷重に開放し、その後、別の機会に、橋梁ジョイント20の拘束部材22を床版5及び橋台パラペット8の被舗装部5A,8Aの上面と同程度の深さまで一部除去して、その除去部分に舗装材料により舗装体2を再生するようにしても良い。
【0144】
図8は、橋梁ジョイント20の内部構造を示した断面図であり、特に、図8(a)は、橋梁ジョイント20の被舗装部5A,8A,20Aの上面に舗装体2を敷設した状態を示した橋軸直角方向断面図であり、図8(b)は、図8(a)のD部の拡大図である。なお、図8は、床版5に配筋される鉄筋の図示を省略している。
【0145】
図8に示すように、橋梁ジョイント20には、床版5及び橋台パラペット8と同様に、舗装体2の敷設部分となる被舗装部20Aと、この被舗装部20Aの橋軸直角方向両側に形成される地覆部20Bとが形成されており、橋桁3と橋台4との遊間9は、これらの橋梁ジョイント20の被舗装部20A及び地覆部20Bにより塞がれている。
【0146】
しかも、橋梁ジョイント20の地覆部20Bは、舗装体2の路面2aよりも高く隆起しているので、路面2a上の水が地覆部20Bを乗り越えて遊間9へ流れ込むことも防止される。
【0147】
また、複数の鉄骨板21aは、上記したように、床版ベース11及び橋台ベース12の対向面間における遊間9内に配置されている訳であるが、これらの鉄骨板21aはいずれも、その上側から下側へ向けて下降傾斜した姿勢で配置されている。ここで、各鉄骨板21aは、いずれも鉛直方向(図8の上下方向)に対して所定の傾斜角θ1(例えば30°程度)を成して傾斜され、なおかつ、互いに平行となる傾きを成している。
【0148】
このように鉄骨板21aを傾斜姿勢した場合、同じ厚みの拘束部材22内に鉛直姿勢で鉄骨板21aを配置する場合に比べて、鉄骨板21aを接合固定する溶接継手21bの有効溶接長を大きくでき、当該溶接継手21bの伝達力が高められる。しかも、当該有効溶接長を確保しつつ、各鉄骨板21aと型枠板13の底板13aとの間の隙間も拡大できるので、当該隙間への拘束部材22となるフレッシュコンクリートを流れ込み易くできる。
【0149】
そのうえ、鉄骨板21aを傾斜姿勢にすることで鉄骨板21aの固定端部と前板部10aとの接合部が遊間9の上方へ向けられる結果、鉄骨板21aを鉛直姿勢にして前板部10aに溶接する場合に比べて、溶接継手21bによる被溶接部分が溶接し易くなり、溶接作業性が向上される。このため、橋梁1という屋外の現場で行われる溶接作業であっても、溶接継手21bの品質を維持しつつ、溶接継手21bによる接合固定を行うことができる。
【0150】
次に、図9を参照して、橋桁3、橋台パラペット8及び橋梁ジョイント20の断面積及び断面係数の関係について説明する。図9は、橋桁3、橋台パラペット8及び橋梁ジョイント20の断面積及び断面係数を説明するために例示した橋梁モデル100の模式図である。
【0151】
ここで、橋桁3の断面積とは、橋桁3についての橋軸に直角な断面(以下「橋軸直角断面」という。)の面積を、橋台パラペット8の断面積とは、橋台パラペット8についての鉛直方向に直角な断面(以下「鉛直直角断面」という。)の面積を、橋梁ジョイント20の断面積とは、橋梁ジョイント20についての橋軸直角断面の面積を、それぞれいうものとする。
【0152】
また、橋桁3の断面係数とは、橋桁3についての橋軸直角断面の断面係数を、橋台パラペット8の断面係数とは、橋台パラペット8についての鉛直直角断面の断面係数を、橋梁ジョイント20の断面係数とは、橋梁ジョイント20についての橋軸直角断面の断面係数を、それぞれいうものとする。
【0153】
上記した橋桁3、橋台パラペット8及び橋梁ジョイント20の断面積及び断面係数に関する定義を前提として、これらの関係について、以下に説明する。
【0154】
まず、上記した橋梁ジョイント20によれば、その断面積は、橋桁3の断面積及び橋台パラペット8の断面積の各々に比べて最も小さくなっている。このため、橋軸方向に引張荷重が作用する場合において、橋梁ジョイント20は、その引張耐力が橋桁3の引張耐力及び橋台パラペット8の引張耐力に比べて小さく、かつ、その圧縮耐力が橋桁3の圧縮耐力及び橋台パラペット8の圧縮耐力に比べて小さく、引張及び圧縮作用に対して弱く形成される。
【0155】
しかも、橋梁ジョイント20によれば、上記した通り、その断面積が橋桁3及び橋台パラペット8のものに比べて小さくなる結果、鉄骨板21aの鋼材量に関しても橋桁3及び橋台パラペット8のものに比べて少なくなるため、このことが橋桁3及び橋台パラペット8に比べて引張耐力が小さくなる更なる要因となっているものと考えられる。
【0156】
また、橋梁ジョイント20の断面係数は、橋桁3の断面係数及び橋台パラペット8の断面係数の各々に比べて最も小さくなっている。このため、橋軸直角断面に曲げモーメントが作用する場合において、橋梁ジョイント20は、その曲げ耐力が橋桁3の曲げ耐力及び橋台パラペット8の曲げ耐力に比べて小さく、曲げ作用に対して弱く形成される。
【0157】
したがって、橋梁ジョイント20の引張耐力、圧縮耐力又は曲げ耐力のうち少なくともいずれかを超える過大な力、例えば、レベル2地震動により作用する慣性力が発生させる荷重(以下、当該慣性力により発生される荷重を「慣性荷重」といい、この慣性荷重には、例えば、引張作用を伴う引張荷重、圧縮作用を伴う圧縮荷重、曲げ作用を伴う荷重が含まれるものとする。)が加わった場合には、床版5及び橋台パラペット8ではなく、拘束部材22及びそれに被包される鉄骨部材21に負荷が集中してこれらが優先的に破壊されることとなる。
【0158】
なお、仮に隣接する橋桁3同士の床版5同士を橋梁ジョイント20により連結するような場合にあっては、橋梁ジョイント20の断面積及び断面係数は、この橋梁ジョイント20により連結される両方の橋桁3の断面積及び断面係数のいずれに比べても小さくなる。
【0159】
図9に例示した橋梁モデル100は、橋桁3、橋台パラペット8及び橋梁ジョイント20のそれぞれが同じ横幅bと異なる縦幅h1,h2,h3(但し、h1>h2>h3としる。)とを有しており、かつ、その橋軸直角方向の断面形状が矩形状に近似されるものである。このため、橋桁3の断面積及び断面係数は、次式で表されるものとなる。なお、下記式において「・」は乗算演算子を、「/」は除算演算子を意味している(以下同じ)。
橋桁3の断面積 : b・h1
橋桁3の断面係数 : (b・h1)/6
【0160】
また、橋台パラペット8の断面積及び断面係数は、次式で表されるものとなる。
橋台パラペット8の断面積 : b・h2
橋台パラペット8の断面係数 : (b・h2)/6
【0161】
そして、橋梁ジョイント20の断面積及び断面係数は、次式で表されるものとなる。
橋台パラペット8の断面積 : b・h3
橋台パラペット8の断面係数 : (b・h3)/6
【0162】
図9に例示した橋梁モデル100の場合、橋軸直角方向の幅、即ち、橋桁3、橋台パラペット8及び橋梁ジョイント20は、その横幅bがいずれも等しいため、橋桁3、橋台パラペット8及び橋梁ジョイント20の縦幅h1〜h3の大小関係がこれらの引張耐力、圧縮耐力及び曲げ耐力の大きさに直接的に影響することとなり、縦幅h1〜h3の値が最も小さい部位が優先的に破壊されることとなる。
【0163】
ここで、橋桁3、橋台パラペット8及び橋梁ジョイント20の縦幅h1〜h3の間には、上記したように「h1>h2>h3」の大小関係があることから、橋桁3の縦幅h1が最も大きく、次に橋台パラペット8の縦幅h2が大きく、橋梁ジョイント20の縦幅h3が最も小さくなる。つまり、橋梁ジョイント20の断面積及び断面係数が、他の橋桁3及び橋台パラペット8のものに比べて最も小さくなり、故に、橋梁ジョイント20が橋桁3及び橋台パラペット8よりも優先的に破壊されることとなる。
【0164】
図10は、橋梁ジョイント20を施工した橋梁1の変位挙動を示した模式図であり、図10(a)は、無変形状態にある橋梁1を、図10(b)は、橋桁3が撓み状態にある橋梁1を、図10(c)は、橋桁3の伸長状態にある橋梁1を、図10(d)は、橋桁3が収縮状態にある橋梁1を、それぞれ図示したものである。
【0165】
図10に示すように、連動構造体30は、橋梁ジョイント20を介した床版5及び橋台パラペット8の一体化によって、橋桁3及び橋台4が一体化される結果、これらの橋桁3の変位挙動に連動して橋台4が一体的に変位挙動するようになっており、橋桁3の桁端の伸縮変位及び回転変位を、連動構造体30の全体的な変位挙動として吸収することができる。
【0166】
図10(a)に示すように、床版5の橋軸方向両側の桁端は、橋梁ジョイント20により橋台パラペット8とそれぞれ連接されており、図10(b)に示すように、交通荷重である車両が橋梁1を通過することにより橋桁3に活荷重が作用すると、この橋桁3の撓み変形に連動して橋台パラペット8が橋桁3側に引き寄せられ、橋台4全体が橋桁3側へ向けて倒れ込むように地盤G上で回転する格好となって、連動構造体30全体として変位挙動する。
【0167】
また、図10(c)に示すように、橋桁3の温度変化等により橋桁3が橋軸方向に伸長すると、この橋桁3の伸長変形に連動して橋台パラペット8が盛土土工部G1側へ押動され、橋台4全体が反橋桁3側(盛土土工部G1側)へ向けて倒れ込むように地盤G上で回転する格好となって、連動構造体30全体として変位挙動する。
【0168】
また、図10(d)に示すように、橋桁3の温度変化等により橋桁3が橋軸方向に収縮すると、この橋桁3の収縮変形に連動して橋台パラペット8が橋桁3側に引き寄せられ、橋台4全体が橋桁3側へ向けて倒れ込むように地盤G上で回転する格好となって、連動構造体30全体として変位挙動する。
<水密性>
以上のように構成された橋梁ジョイント20によれば、凍結防止剤等の塩化物イオンを含んだ雨水、融雪水その他の水が舗装体2を透過して被舗装部5A,8A,20Aの上面まで浸透したとしても、橋梁ジョイント20及び防水材26並びに接着継手25に阻まれて、当該水が遊間9へ流れ込むことが防止される。しかも、橋梁ジョイント20の地覆部20Bは、舗装体2の路面2aよりも高く隆起しているので、路面2a上の水が地覆部20Bを乗り越えて遊間9へ流れ込むことも防止される。
【0169】
このようにして橋桁3と橋台4との接続部分における水密性が確保されるので、橋桁3の桁端や支承7への塩化物イオンを含んだ水の漏水を防止でき、それ故、塩化物イオンの浸透を原因とした橋桁3の桁端や支承7の腐食劣化を防止できる。
【0170】
<走行性>
また、橋梁1から経年劣化した既設のフィンガージョイント50を撤去でき、その後に別の新たなフィンガージョイント50に交換することが不要となり、工事費を大幅に削減できる。また、フィンガージョイント50のフェイスプレート52,52が撤去されることから、これらが路面2a上に存在することに起因する弊害、例えば、走行車両の段差通過に伴う車両及び橋梁1の双方への衝撃発生、その衝撃に伴う騒音の発生、雨天時のスリップを回避できる。
【0171】
<供用時の伸縮に対する耐荷性>
しかも、橋桁3の桁端の伸縮変位及び回転変位に伴う応力により橋梁ジョイント20が破壊することを防止するため、拘束部材22は、その弾性係数が床版5及び橋台パラペット8のそれと同等又はそれ以上に形成される。このため、拘束部材22には、上記したように床版5及び橋台パラペット8と同じセメントを主成分とするコンクリートや繊維強化コンクリートが用いられている。
【0172】
なお、本実施例では、拘束部材22の素材として床版5及び橋台パラペット8と同じくセメントを主成分とするコンクリートを用いたが、拘束部材22の素材は必ずしもこれに限定されるものではなく、橋梁ジョイント20の弾性係数が床版5及び橋台パラペット8のものと同等又はそれ以上であれば、樹脂コンクリートその他の素材であっても良い。
【0173】
このように、拘束部材22は、床版5及び橋台パラペット8と同等又はそれ以上の弾性係数を有するので、温度変化等に伴う橋桁3の伸長により橋桁3及び橋台パラペット8間で圧縮されても圧潰されず、なおかつ、温度変化等に伴う橋桁3の収縮や活荷重等による橋桁3の撓みに伴って橋桁3及び橋台パラペット8間で引っ張られても破壊されない。
【0174】
しかも、このように拘束部材22は、それ自体が床版5及び橋台パラペット8間に存在していても、橋桁3の桁端の伸縮変位及び回転変位による圧潰し又は破断することが防止される結果、当該拘束部材22で被包されている鉄骨部材21の各鉄骨板21aの変形を阻止でき、連動構造体30の変位挙動において鉄骨部材21が担う圧縮及び引張に対する耐力を高めることができる。
【0175】
そのうえ、一対の既設ベース11,12は、床版5又は橋台パラペット8のいずれかに締結固定及び埋め込み固定されており、床版5と橋台パラペット8の一部として一体化されている。さらに、各既設ベース11,12の前板部10a,10aと拘束部材22との接合面は、打継ぎ用接着剤の接着継手25を介して接合されているので、橋梁ジョイント20と床版5及び橋台パラペット8との接合部に生じるせん断滑りに対しても抵抗できる。
【0176】
<床版5及び橋台パラペット8に比べた破壊容易性>
もっとも、上記したように、橋梁ジョイント20は、その断面積及び断面係数が床版5及び橋台パラペット8の断面積及び断面係数に比べて部材として弱く形成されている。これは、橋梁ジョイント20自体の引張耐力、圧縮耐力又は曲げ耐力を超える過大な力が作用した場合、例えば、大規模地震の直撃を受けたような場合に、当該橋梁ジョイント20(特に、溶接継手21bの部分)に負荷を集中させて、橋梁ジョイント20を優先的に破壊させるためである。
【0177】
橋梁ジョイント20が破壊されることにより、床版5及び橋台パラペット8の繋がりが断絶されるので、地震時に連動構造体30が全体として変位挙動することは回避される。つまり、橋桁3と橋台4との変位挙動の橋梁ジョイント20を介した連動が解消される結果、橋桁3及び橋台4は、それぞれ固有の変位挙動を取り戻すことができる。
【0178】
さすれば、大規模地震時のように過大な力が作用する状況下で、連動構造体30が一体的に変位挙動することを原因として発生するであろう不要な弊害、例えば、橋梁ジョイント20により床版5及び橋台パラペット8が一体化されるが故に生じるであろう床版5及び橋台4の損傷や破壊を回避できる。
【0179】
このように橋梁ジョイント20を優先的に破壊させるには、橋梁ジョイント20の引張耐力、圧縮耐力又は曲げ耐力がレベル2地震動により作用する慣性荷重を下回ること、即ち、レベル2地震動により作用する慣性荷重によって橋梁ジョイント20のみが破壊される一方で、橋桁3及び橋台パラペット8については破壊されずに既存状態が維持されるものであることが好ましい。
【0180】
さらに言えば、橋桁3、橋台パラペット8及び橋梁ジョイント20の引張耐力、圧縮耐力及び曲げ耐力については、いずれもレベル1地震動により作用する慣性荷重を上回ること、即ち、レベル1地震動により作用する慣性荷重では、橋梁ジョイント20を含めて橋桁3及び橋台パラペット8のいずれも破壊されずに既存状態を維持するものであることがより好ましい。
【0181】
次に、図11から図15を参照して、上記実施形態の変形例について説明する。図11は、第2実施例の橋梁ジョイント40における複数の鉄骨部材41の配置状態に関する説明図であって、床版5と橋台パラペット8との接続部分の平面図であり、橋梁ジョイント40の一部を部分的に断面視したものである。
【0182】
この第2実施例の橋梁ジョイント40は、上記した第1の実施例の橋梁ジョイント20に対し、鉄骨部材の形態を変更したものである。以下、第1実施例と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0183】
図11に示すように、第2実施例の橋梁ジョイント40を施工するため、施工凹所14には、床版ベース11及び橋台ベース12の対向面間に存在する遊間9内に、その遊間9の切れ目方向に所定幅W2(例えば、400mm程度)間隔で、複数の鉄骨部材41が配置されている。複数の鉄骨部材41は、複数枚の鉄骨板41aと、溶接継手41bとを備えている。
【0184】
各鉄骨部材41は、その鉄骨板41aが既設ベース11,12の前板部10a.10aの対向面間に差し渡されており、その両端部が前板部10a,10aに溶接継手41b,41b介して接合固定されている。つまり、複数の鉄骨部材41はいずれも、床版ベース11及び橋台ベース12の双方に対して一体的に接合固定されている。
【0185】
このように各鉄骨部材41はその両端部が床版ベース11及び橋台ベース12にそれぞれ接合固定されている。このため、橋梁ジョイント40を施工する場合、橋梁1上に設けられる道路を通行する車両を原因とする交通荷重によって橋桁3の振動する状況下では、各鉄骨部材41を床版ベース11及び橋台ベース12に溶接により接合固定することすら困難であることが想定される。したがって、橋梁ジョイント40を施工する場合には、橋梁1上の道路を通行止めにすることにより、交通荷重を原因とした橋桁3の撓み及び振動を抑制することが好ましい。
【0186】
各鉄骨板41aは、一対の既設ベース11,12の前板部10a,10aの対向面間に差し渡されているが、その差し渡し長さ(鉄骨板41aの長手方向の板長)が、当該前板部10a,10aの対向面間にある遊間9の幅に比べて大きく形成されている。
【0187】
その理由としては、これらの鉄骨板41aは既設ベース11,12に対して現場で溶接されるものであることから遊間9の幅に対する寸法管理を厳格に行うことが難しく、かつ、鉄骨板41aの接合固定前に遊間9の幅が橋軸方向に拡大したりすると、鉄骨板41aの両端部を各既設ベース11,12に対して確実に当接して接合固定できないこともあるためである。
【0188】
それ故、各鉄骨板41aの両端部は、各前板部10aの板面に対して非直角状に傾いた姿勢で当接する格好となる。しかも、遊間9の切れ目方向において隣り合う鉄骨板41a,41a同士が非平行状に姿勢が傾けられ、平行状に傾いた鉄骨板41aが、遊間9の切れ目方向において1枚おきに配置されている。
【0189】
このため隣り合う鉄骨板41a,41a同士の間隔は、各鉄骨板41aの差し渡し方向における中点位置では所定幅W2であるが、両鉄骨板41a,41aの両端部の間隔は、当該鉄骨板41aの差し渡し方向一端側では所定幅W2より狭く、逆に他端側では所定幅W2より広くなっている。
【0190】
図12は、図11のXII−XII線における橋梁1の被舗装部5A,8A,40Aの橋軸方向断面図であり、橋梁ジョイント40の被舗装部5A,8A,40Aの上面に舗装体2を敷設した状態を図示し、床版5及び橋台パラペット8に配筋される鉄筋の図示を省略している。
【0191】
図12に示すように、鉄骨部材41は、その鉄骨板41aの遊間9の幅方向両端部(図12左右両側)が、床版ベース11及び橋台ベース12の前板部10a,10aにそれぞれ当接されており、いずれの端部もそれが当接する前板部10aに対して溶接継手41bを介して接合固定されている。
【0192】
図13は、橋梁ジョイント40の内部構造を示した断面図であり、特に、図13(a)は、第2実施例の橋梁ジョイント40の被舗装部5A,8A,40Aの上面に舗装体2を敷設した状態を示した橋軸直角方向断面図であり、図13(b)は、図13(a)のE部の拡大図である。なお、図13は、床版5に配筋される鉄筋の図示を省略している。
【0193】
複数の鉄骨板41aはいずれも、その上側から下側へ向けて下降傾斜した姿勢で配置されている。ここで、各鉄骨板41aのうち遊間9の切れ目方向において隣り合うもの同士は、鉛直方向(図13の上下方向)に対して互いに対称な向きに傾斜している。そして、各鉄骨板41aは、いずれも当該鉛直方向に対して所定の傾斜角θ2(例えば45°程度)を成して傾斜されている。
【0194】
つまり、複数の鉄骨板41aの中には、遊間9の切れ目方向一端側(図13(a)の左上側から右下側)へ下降傾斜する鉄骨板41aと、遊間9の切れ目方向他端側(図13(a)の右上側から左下側)へ下降傾斜する鉄骨板41aとがあり、前者の鉄骨板41aと後者の鉄骨板41aとが遊間9の切れ目方向において交互に配置されている。
【0195】
図14は、第3実施例の橋梁ジョイント60の内部構造を示した断面図であって、図14(a)は、橋梁ジョイント60の被舗装部5A,8A,60Aの上面に舗装体2を敷設した状態を示した橋軸直角方向断面図であり、図14(b)は、図14(a)のF部の拡大図である。なお、図中では、床版5に配筋される鉄筋の図示を省略している。
【0196】
なお、図14に関する説明では、第1実施例と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0197】
図14に示すように、第3実施例の橋梁ジョイント60は、上記第1実施例の橋梁ジョイント20において鉄骨板21aの姿勢が上側から下側へ向けて下降傾斜したものであったのに対し、鉄骨板61aの板面を水平方向に正対させて鉛直方向に立設した姿勢(以下「鉛直姿勢」ともいう。)としたものである。仮に、鉄骨板61aの有効溶接長を充分に確保でき、かつ、その溶接作業が簡便に行えるならば、このようにしても良い。
【0198】
なお、この第3実施例の橋梁ジョイント60における鉄骨板61aを鉛直姿勢とすることを、上記第2実施例の橋梁ジョイント40の鉄骨板41aに対して適用しても良い。
【0199】
図15は、第4実施例の橋梁ジョイント80の内部構造を示した断面図であり、橋梁1の被舗装部5A,8A,80Aの橋軸方向断面図であり、橋梁ジョイント80の被舗装部5A,8A,80Aの上面に舗装体2を敷設した状態を図示し、床版5及び橋台パラペット8に配筋される鉄筋の図示を省略している。
【0200】
なお、図15に関する説明では、第1実施例と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0201】
図15に示すように、第4実施例の橋梁ジョイント80は、フィンガージョイント50から一対のフェイスプレート52,52を分離除去して残った一対の受台部材51,51全体(但し、アンカープレート51dを除く。)を一対の既設ベース81,82として再利用したものである。
【0202】
なお、この第4実施例の橋梁ジョイント80における一対の受台部材51,51全体を一対の既設ベース81,82として再利用することを、上記第2実施例の橋梁ジョイント40の鉄骨板41aに対して適用しても良い。
【0203】
以上、実施例に基づき本考案を説明したが、本考案は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本考案の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0204】
例えば、上記実施例では、橋梁ジョイント20,40,60,80を一径間単純桁橋の橋軸方向両端部に設けた場合について説明したが、橋梁ジョイントの適用対象となる橋梁は必ずしもこれに限定されるものではなく、橋軸方向の中間部に1又は2以上の橋脚を有する多径間単純桁橋又は多径間複数桁橋の橋軸方向両端部に適用するようにしても良い。
【0205】
また、上記実施例では、橋梁ジョイント20,40,60,80を単純桁橋の橋軸方向両端部に適用したが、橋梁ジョイントの適用対象箇所は、必ずしも単純桁橋の橋軸方向両端部に適用対象箇所が限定されるものではなく、例えば、全橋長が30m〜50m級の多径間複数桁橋に関し、その途中に存在する中間橋脚部で隣接し合う橋桁3,3同士の接合部分おいて、その橋桁3,3の床版5,5同士を連結するために適用しても良い。
【0206】
また、上記実施例では、鉄骨部材21が鉄骨板21aと溶接継手21bとを備えたものであったが、かかる鉄骨部材の構成は必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、板状の鉄骨板に代えて、棒状又はH型、L型その他の異形状の鋼材を鉄骨部材の本体として用い、この本体を溶接継手、ボルトナットなどの締結継手、接着剤を用いた接着継手その他の接合手段を用いて各既設ベース11,12のいずれか一方又はその双方に接合固定するようにしても良い。
【符号の説明】
【0207】
1 橋梁
2 舗装体
3 橋桁
4 橋台(橋桁隣接物)
5 床版
5A 床版の被舗装部
5B 床版の被舗装部
7 支承
8 橋台パラペット(床版隣接部)
8A 橋台パラペットの被舗装部
8B 橋台パラペットの地覆部
9 遊間
10a,10a 前板部
11,81 既設ベース(床版ベース)(既設構造材)
12,82 既設ベース(橋台ベース)(既設構造材)
13 型枠板
14 施工凹所
20,40,60,80 橋梁ジョイント(複合体)
20A,40A,60A,80A 橋梁ジョイントの被舗装部(新設被舗装部)
20B,40B,60B,80B 橋梁ジョイントの地覆部(新設地覆部)
21,41,61 鉄骨部材
21a,41a,61a 鉄骨板
21a1,21a1 アンカー片(アンカー部)
21b,41b 溶接継手
22 拘束部材
25 接着継手(防水部材の一種)
26 防水材(防水部材の一種)
30 連動構造体
50 フィンガージョイント
51,51 受台部材
51a,51a ウェブプレート
52,52 フェイスプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋桁の床版と橋桁隣接物の床版隣接部との接続部分に設けられる橋梁ジョイント構造において、
床版及び床版隣接部間にある遊間を隔てて互いに対向配置され、その床版及び床版隣接部の一部となっている一対の既設構造材と、
その一対の既設構造材の対向面間に配置され、その一対の既設構造材のうち少なくともどちらか一方に接合固定され、前記遊間の切れ目方向に複数設けられる鉄骨部材と、
その複数の鉄骨部材を内部に被包拘束し変形阻止した状態で前記一対の既設構造材間に充填される後打ちコンクリートで形成され、その一対の既設構造材間に架設され当該一対の既設構造材を接合する拘束部材と、
その拘束部材、複数の鉄骨部材及び一対の既設構造材により形成され、前記遊間を閉塞して前記床版及び床版隣接部同士を連接させる鉄骨鉄筋コンクリート製の複合体とを備えていることを特徴とする橋梁ジョイント構造。
【請求項2】
前記複合体を介して床版及び床版隣接部を一体化することにより、橋桁と橋桁隣接物とを一体的に変位挙動可能な連動構造体とするものであることを特徴とする請求項1記載の橋梁ジョイント構造。
【請求項3】
前記一対の既設構造材は、前記遊間を隔てて互いに対向する一対のウェブプレートを有したフィンガージョイント用の受台部材、又は、その受台部材から不要部分を除去した残余部分、であることを特徴とする請求項1又は2に記載の橋梁ジョイント構造。
【請求項4】
前記鉄骨部材は、前記一対の既設構造材の対向面間で上側から下側へ向けて下降傾斜した姿勢で配置される鉄骨板と、その傾斜姿勢にある当該鉄骨板の前記遊間幅方向端部を前記既設構造材に接合固定する溶接継手とを備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の橋梁ジョイント構造。
【請求項5】
前記鉄骨部材は、前記一対の既設構造材の対向面間に配置される鉄骨板と、その鉄骨板の前記遊間幅方向端部を前記既設構造材に接合固定する溶接継手とを備えており、
前記複数の鉄骨部材は、前記鉄骨板が前記一の既設構造材に前記溶接継手を介して接合固定され前記他の既設構造材から分離されるものと、前記鉄骨板が前記他の既設構造材に前記溶接継手を介して接合固定され前記一の既設構造材から分離されるものとが、前記遊間の切れ目方向において交互に配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の橋梁ジョイント構造。
【請求項6】
前記鉄骨部材は、前記一対の既設構造材の対向面間に配置される鉄骨板と、その鉄骨板の前記遊間幅方向端部を前記既設構造材に接合固定する溶接継手とを備えており、
前記鉄骨板は、その溶接継手により前記既設構造材に接合固定される固定端部と、前記既設構造材から分離される自由端部と、その自由端部側の部分に形成され前記拘束部材の内部で引っ掛かるアンカー部とを備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の橋梁ジョイント構造。
【請求項7】
前記アンカー部は、前記鉄骨板の固定端部から自由端部へ向かう方向に対して対称方向へ当該自由端部から分岐延長して設けられていることを特徴とする請求項6記載の橋梁ジョイント構造。
【請求項8】
前記鉄骨部材は、前記一対の既設構造材の対向面間に配置される鉄骨板と、その鉄骨板の前記遊間幅方向両端部を前記一対の既設構造材にそれぞれ接合固定する溶接継手とを備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の橋梁ジョイント構造。
【請求項9】
前記鉄骨部材は、前記一対の既設構造体の対向面間に差し渡され当該対向面間の幅に比べて長く形成される鉄骨板と、その鉄骨板の差し渡し方向両端部を前記一対の既設構造材の双方に接合固定する溶接継手とを備えていることを特徴とする請求項1から4又は8のいずれかに記載の橋梁ジョイント構造。
【請求項10】
前記鉄骨部材は、上側から下側へ向けて下降傾斜した姿勢で前記一対の既設構造材の対向面間に差し渡される鉄骨板と、その下降傾斜姿勢にある当該鉄骨板の差し渡し方向両端部を前記一対の既設構造材の双方に接合固定する溶接継手とを備えており、
前記複数の鉄骨部材は、前記鉄骨板が前記遊間の切れ目方向一端側へ下降傾斜するものと、前記鉄骨板が前記遊間の切れ目方向他端側へ下降傾斜するものとが、当該遊間の切れ目方向において交互に配置されていることを特徴とする請求項1から4又は8若しくは9のいずれかに記載の橋梁ジョイント構造。
【請求項11】
前記拘束部材と前記一対の既設構造材との継ぎ目を密封する防水部材を備えていることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の橋梁ジョイント構造。
【請求項12】
前記防水部材は、前記拘束部材と前記一対の既設構造材との継ぎ目に加え、その一対の既設構造材と床版及び床版隣接部との継ぎ目を密封するものであることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の橋梁ジョイント構造。
【請求項13】
前記複合体は、床版及び床版隣接部の被舗装部間にある前記遊間を閉塞して当該閉塞箇所に新たに形成される新設被舗装部と、床版及び床版隣接部の地覆部間にある前記遊間を閉塞して当該閉塞箇所に新たに形成される新設地覆部とを備えており、
その新設地覆部は、新設被舗装部に敷設される舗装体の路面に比べて高く隆起していることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の橋梁ジョイント構造。
【請求項14】
前記複合体は、床版及び床版隣接部の被舗装部間にある前記遊間を閉塞して当該閉塞箇所に新たに形成される新設被舗装部を備えており、
その新設被舗装部は、前記床版及び床版隣接部の被舗装部と面一状に形成されていることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の橋梁ジョイント構造。
【請求項15】
前記床版隣接物は橋台であり、
前記床版隣接部は橋台パラペットであり、
前記複合体における前記遊間に跨って架設される部分は、その断面積が橋桁の断面積及び橋台パラペットの断面積に比べて小さく、かつ、その断面係数が橋桁の断面係数及び橋台パラペットの断面係数に比べて小さく形成されていることを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載の橋梁ジョイント構造。
【請求項16】
前記床版隣接物は前記橋桁に遊間を隔てて隣接する第2の橋桁であり、
前記床版隣接部は第2の橋桁の床版であり、
前記複合体における前記遊間に跨って架設される部分は、その断面積が橋桁の断面積及び第2の橋桁の断面積に比べて小さく、かつ、その断面係数が橋桁の断面係数及び第2の橋桁の断面係数に比べて小さく形成されていることを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載の橋梁ジョイント構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−41708(P2012−41708A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182779(P2010−182779)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(391007460)中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋株式会社 (47)
【出願人】(505398952)中日本高速道路株式会社 (94)
【Fターム(参考)】