説明

橋梁塗装履歴管理システム

【課題】手書きで描かれる「塗装記録標示」を残さなくても、橋梁上に塗装記録が簡単に残せ、かつ、後日、必要に応じて簡単に書き換えることもできるようにする。
【解決手段】橋梁壁面に取り付けられ、橋梁壁面の塗装履歴に関する文字数字情報をコード化して記憶しておくメモリを有するICタグ1と、該ICタグ1のメモリに記憶されている前記情報を読み出し、この読み出した情報を出力する機能及びICタグ1に新たな情報を書き換える機能を有するリーダライタ2,3等の端末機器とを備える、橋梁壁面の塗装履歴を管理する橋梁塗装履歴管理システムシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川、渓谷、高速道路等における橋梁構造物の壁面塗装の履歴を管理する橋梁塗装履歴管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄製の橋梁構造物の表面には塗装が施され、この塗装で見栄えの向上と防錆等の役目を担っている。しかし、橋梁構造物は、常に過酷な気象条件にさらされている。このため、表面には経時的に変状が発生し、変状を放置しておくと見栄えの低下や、構造物の強度の低下を早めるおそれがある。そこで、橋梁構造物では、竣工時、及び竣工後も定期的に塗装がなされている。
【0003】
この塗装では、下塗り、中塗り、上塗り等の工程を経て仕上げられ、使用する塗料材料も工程毎に異なり、また塗装を請け負う業者も、前回の業者と今回の業者とで異なることも少なくなく、また長い橋梁では、橋梁を幾つかに分け、複数の業者で分担をして作業を行うこともある。
【0004】
そこで、塗装作業を終えた際、各業者は、自分で塗装を担当した橋梁部分の側面に、例えば図2に示す「塗装記録標示」を、橋梁側面とは別の色をした塗料で描き、これを塗装記録として残し、次回の塗装の参考に供するようにしている。
【0005】
なお、「塗装記録標示」の描き作業は、足場等に乗り、高い位置で、人手により描いているのが一般的であるが、この塗装記録標示を橋梁上に記録する方法及び装置に関する特許文献等は、調査をしたが見当たらなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来では、塗装作業を終えた各業者は、自分で塗装を担当した橋梁部分の側面に、塗装年月日、塗装会社名、塗装材料名、塗装製造会社名、色標番号等を記した「塗装記録票示」を設けるようにしているが、これは足場等に乗り、高い位置で、人手により描いていた。このため、作業性が悪く、「塗装記録標示」の作成に要する時間と労賃がコスト高の要因にもなっている。
【0007】
本発明は、上述のような従来の課題を解決するためになされたものであって、手書きで描かれる「塗装記録標示」を残さなくても、簡単に塗装記録が残せ、かつ、後日、必要に応じて簡単に書き換えることもできる橋梁塗装履歴管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)橋梁壁面の塗装履歴を管理する橋梁塗装履歴管理システムにおいて、前記橋梁壁面に取り付けられ、前記橋梁壁面の塗装履歴に関する文字数字情報をコード化して記憶しておくメモリを有するICタグと、前記ICタグのメモリに記憶されている前記コード化された情報を読み出し、該読み出した情報を出力する端末機器、とを備える。
【0009】
(2)上記(1)項において、上記端末機器を、上記ICタグのメモリに記憶されている上記情報の読み出しを行う機能及び上記ICタグのメモリを新たな情報に書き換える機能とを備える携帯型の端末機器として構成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、次のような効果を奏することができる。
請求項1記載の発明によれば、橋梁壁面の塗装作業が終わったら、この塗装作業に関する文字数字情報をコード化して記憶したメモリを有するICタグを、橋梁の壁面に取り付ける。後日、橋梁の管理者等は、ICタグのメモリに記憶されている文字数字情報を端末機器で読み取り、取得した情報を出力すると、文字数字情報を簡単に得ることができる。したがって、従来、手作業で、かつ、塗料を用いて橋梁側面に描いていた「塗装記録標示」が不要になり、コストの低減に寄与する。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、橋梁の管理者等は、携帯型の端末機器を用いて、ICタグのメモリに記憶されている過去の塗装履歴情報の読み出し及び今回の塗装に関する情報の書き換えを、現場等で簡単に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
図1に、本発明の実施の形態における橋梁塗装履歴管理システムの全体構成を示す。図1において、橋梁塗装履歴管理システムは、図示せぬ橋梁の壁面に取り付けられるICタグ1と、ICタグ1のメモリに記憶されている情報を読み出し・書き込み可能なリーダライタ2及び3と、ノート型パソコン4、インターネット網5、サーバ6、サーバ側端末7等で構成されている。
【0013】
ICタグ1は、橋梁の壁面に直接に貼付、あるいはボルトの頭部等に貼付されて、ボルトと共に橋梁壁面に取り付けられるもので、内部には文字数字情報をコード化して記憶しておくメモリを有する。このメモリには、上述した従来における「塗装記録標示」内に書かれている情報、すなわち塗装年月日、塗装会社名、塗装材料名、塗装製造会社名、色標番号等の、文字数字情報をコード化して記憶できるようになっている。このICタグ1に書き込まれるデータは、橋梁維持管理データベースを有するサーバ6で管理される。
【0014】
リーダライタ2は、ICタグ1のメモリに記憶されている文字数字情報を読み出し及びメモリに新たな文字数字情報を書き込み可能な機能と、インターネット網5を通じてサーバ6とデータのやり取りを行うことが可能な通信機能とを備えた携帯型の端末機器である。なお、リーダライタ2は、上記文字情報を、可視情報として表示するための、例えば液晶表示装置等でなる表示部8を有する。
【0015】
リーダライタ3は、ICタグ1のメモリに記憶されている文字数字情報を読み出し及びメモリに新たな文字数字情報を書き込み可能な機能を有する携帯型の端末機器としてのリーダライタであり、読み出された文字数字情報をノート型パソコン4を通して管理する。また、サーバ6とデータをやりとりする場合は、ノート型パソコン4及びインターネット網5を通じてサーバ6に接続でき、この接続でサーバ6とデータのやり取りが可能になる。
【0016】
サーバ側端末7は、サーバ6及びインターネット網5介して、リーダライタ2及びリーダライタ3の管理等を行うためのコンピュータである。
【0017】
このように構成されたシステムでは、ICタグ1のメモリ内に記憶されている文字数字情報の読み出し及び書き換えは、リーダライタ2及びリーダライタ3のいずれでも行うことができる。
【0018】
そして、橋梁の塗装作業を終えたら、ICタグ1を橋梁壁面に取り付け、このICタグ1にリーダライタ2またはリーダライタ3を近接させ、このリーダライタ2またはリーダライタ3により、ICタグ1のメモリに所定の文字数字情報をコード化して記憶する。ここでの文字数字情報は、従来の「塗装記録票示」で記録していたのと同じ、塗装年月日、塗装会社名、塗装材料名、塗装製造会社名、色標番号等である。これにより、今回の塗装作業に関する情報がICタグ1に記憶される。また、これらの情報は、サーバ6でも管理される。
【0019】
また、数年後に再び塗装をする必要等が生じた場合は、橋梁壁面上に取り付けられているICタグ1のメモリに記憶されている前回の情報を、リーダライタ2またはリーダライタ3で読み取りると、前回に行った塗装作業に関する情報を知ることができる。また、新たに塗装作業をした後に、前回の情報に加えて今回の情報を、あるいは新たな情報だけを上書きすると、新たに情報を記憶させることができる。
【0020】
したがって、橋梁の塗装作業が終わったら、この塗装作業に関する文字数字情報をコード化してICタグ1のメモリに記憶し、後日、ICタグ1にリーダライタ2,3等を近づけ、メモリに記憶されている文字数字情報をリーダライタ2,3等で読み取ると、文字数字情報を簡単に得ることができるので、従来における橋梁側面に塗料を用いて描いていた「塗装記録標示」が不要になり、コストの低減に寄与することになる。
【0021】
なお、上記実施例で使用するICタグ1は、内蔵電池を有する能動タイプ、あるいは内蔵電池を持たない受動タイプのいずれであっても差し支えないものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態における橋梁塗装履歴管理システムの全体構成図である。
【図2】従来における塗装記録標示の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
1 ICタグ
2 リーダライタ
3 リーダライタ
4 ノート型パソコン
5 インターネット網
6 サーバ
7 サーバ側端末
8 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁壁面の塗装履歴を管理する橋梁塗装履歴管理システムにおいて、
前記橋梁壁面に取り付けられ、前記橋梁壁面の塗装履歴に関する文字数字情報をコード化して記憶しておくメモリを有するICタグと、
前記ICタグのメモリに記憶されている前記コード化された情報を読み出し、該読み出した情報を出力する端末機器、
とを備えたことを特徴とする橋梁塗装履歴管理システム。
【請求項2】
上記端末機器を、上記ICタグのメモリに記憶されている上記情報の読み出しを行う機能及び上記ICタグのメモリを新たな情報に書き換える機能とを備える携帯型の端末機器として構成したことを特徴とする請求項1記載の橋梁塗装履歴管理システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−224648(P2007−224648A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48313(P2006−48313)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(506065080)株式会社シー・エー・エヌ(CAN)システム (1)
【Fターム(参考)】