説明

橋梁床版の撤去方法

【課題】スタッドジベルを無傷の状態で残しながら鋼桁とコンクリート床版との縁切りを行ない、コンクリート床版を撤去できるようにする。
【解決手段】床版2の上面から鋼桁1の長さ方向に沿って高圧ウォータージェットによりコンクリートのみを除去して鋼桁1の幅よりも狭い幅の切削帯域を形成し、該切削帯域に鋼桁1上面のジベルおよびコンクリート床版2に埋設された鉄筋の一部を露出させて鋼桁1とコンクリート床版2との縁切りを行い、該縁切りされたコンクリート床版2を所要大きさのブロック片に切断し、上方に引き剥がして撤去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路橋等を構成する鋼製の主桁上に設置されたコンクリート製の床版、即ち橋梁床版を撤去する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にこの種の橋梁床版は、老朽化等によって取り替えることが要求されている。橋梁床版を取り替える場合に、主桁を残して老朽化した床版だけを撤去したいのであるが、コンクリート床版は、通常は鋼製の主桁上面に多数形成されたスタッドジベルまたは鉄筋で主桁と強固に結合されており、そのためにコンクリート床版を解体または撤去する場合に、その強固な結合が反って解体または撤去作業を困難にしている。現在、コンクリート床版の撤去工法として複数の方法が公知になっている。
【0003】
その公知に係る第1の従来技術として、鋼製の主桁にコンクリート製の床版が設置され、前記主桁の上面に設けられた複数のジベルによって前記床版が結合された合成桁における床版の撤去工法であって、主桁に支持された床版を一対の主桁の一側部に沿って橋軸方向へ切断し、さらに、この床版を橋幅方向へ切断することにより、複数の矩形状の床版ブロックとし、主桁上にジベルによって結合されている床版ブロックの両側部の切断面から側方へ向かってジベルの配設位置にコンクリートコア抜き機を用いて穴を形成して床版ブロックと主桁とのジベルによる結合状態を解除し、床版を主桁から取り外すことを特徴とする床版の撤去工法である(特開平9−158124号公報)。
【0004】
この撤去方法によれば、桁に立設されたジベルの配設位置近傍にて床版を切断し、その切断面から側方へジベルの配設位置に穴を形成することにより、ジベルを切断して、ジベルによる床版の結合を解除して、桁と床版とを分離させるので、従来のように床版を大きな力にて砕いて撤去する工法と比較して、騒音、振動を発生させたり破片、粉塵を散らばせることなく破損、老朽化した床版を撤去することができるというものである。
【0005】
また、公知に係る第2の従来技術としては、鋼主桁のフランジ上に鉄筋コンクリート床版を設置した橋梁において、前記鉄筋コンクリート床版を搬出可能な大きさの多数のブロックに切断すると共に、前記鉄筋コンクリート床版の前記フランジ真上の位置に多数の孔を形成し、次いで前記孔に静的破砕剤を水と混合して注入し、水との反応で静的破砕剤が膨張する圧力でコンクリートを破砕して前記鉄筋コンクリート床版と前記鋼主桁とを分離させ、その後前記鉄筋コンクリート床版のブロックを撤去することを特徴とする、橋梁の鉄筋コンクリート床版の解体方法である(特開2003-247212号公報)。
【0006】
この解体方法によれば、鉄筋コンクリート床版の鋼主桁フランジ真上部分とその近傍に静的破砕剤を注入しコンクリートを破砕して鉄筋コンクリート床版と鋼主桁とを分離させ、その後鉄筋コンクリート床版を撤去することによって、鉄筋コンクリート床版と鋼主桁フランジとの結合個所も含めて撤去することができるので、効率的な解体作業を行なうことが可能になるというものである。
【0007】
更に、床版を撤去する工法ではないが、コンクリート床版の端部下面を補修する工法として、ウォータージェット装置を用いて補修しようとする部分のハツリを行なうことが公知になっている。その補修工法は、橋台の床版支持座面と同支持座面に支持されたコンクリート床版の端部下面間に形成された横方向遊間を通じてウォータージェット装置の高圧水噴射ノズルを挿入し、該高圧水噴射ノズルによる高圧水噴射にて上記コンクリート床版の端部下面のコンクリート表層部を所要の帯域に亘りハツリ、該コンクリート表層部に埋設の鉄筋を露出させたハツリ帯域を形成する、上記コンクリート床版端面と上記橋台の床版支持座面内端の立ち上がり面との間に形成された縦方向遊間に上記横方向遊間を通じて曲げ弾性を有する型板をその曲げ弾性により挿入し、該型板を上記ハツリ帯域の前端開放面と上記横方向遊間の前端面に亘り立ち上げる、上記床版支持座面上にハツリ帯域の下部開放面を覆う型枠を設置し、該型枠の前端面を上記型板の表面に当接する、上記型板と型枠とによって画成された上記ハツリ帯域内へ補修セメントモルタルを充填する、上記補修セメントモルタルの硬化後上記型枠を除去し、上記型板を残存する、を含むコンクリート床版端部下面の補修工法である(特開2006-161314号公報)。
【0008】
上記コンクリート床版端部下面の補修工法によれば、上記ウォータージェット装置により橋台又は橋脚に支持されたコンクリート床版の端部下面を所要の深さ、所要の幅に亘り適切にハツリ、埋設鉄筋を露出させることができ、補修セメントモルタルの充填に先立ったハツリ作業を健全に遂行できる。又上記縦方向遊間内へ挿入した型板と床版支持座面上に設置した型枠とが協働して補修セメントモルタルの充填スペースを確保でき、補修セメントモルタルをハツリ帯域内へ空洞等を生成することなく均密に充填し、補修効果を確保できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−158124号公報
【特許文献2】特開2003−247212号公報
【特許文献3】特開2006−161314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記第1の従来技術においては、主桁に立設されたジベルの配設位置近傍にて床版をブロック状に切断し、その切断面から側方へジベルの配設位置に穴を形成することにより、主桁に立設して一体に設けたジベルを切断して、ジベルによる床版との結合を解除して、主桁と床版とを分離させて床版を撤去しているので、新たな床版を形成するためには主桁上に新たなスタッドジベル等の結合材を一体に取り付けなければならず、その分作業性が悪くなるばかりでなく新たなジベルを使用する分だけ材料無駄が生ずるという問題点を有している。
【0011】
また、前記第2の従来技術においては、鉄筋コンクリート床版の鋼主桁フランジ真上部分とその近傍に静的破砕剤を注入しコンクリートを破砕して鉄筋コンクリート床版と鋼主桁とを分離させ、その後鉄筋コンクリート床版を撤去することによって、鉄筋コンクリート床版と鋼主桁フランジとの結合個所も含めて撤去することができるとしているが、コンクリート床版内には多数本の鉄筋が入っており、また、鋼主桁の上面には多数本のスタッドジベルが設けられていて強い結合力で結合しているので、静的破砕剤が水と反応して生ずる膨張圧は閉鎖または密閉強度の一番弱い方向に集中すると思われるので、注入する孔の開放端側が一番弱いので膨張圧はその開放端側から無制限に逃げることになり、スタッドジベルとの結合部分のコンクリートが破砕される確立は少ないと認められ、簡単には鉄筋コンクリート床版を鋼主桁から剥離することは困難であると推測される。
【0012】
そして、鉄筋コンクリート床版の鋼主桁フランジ真上部分に千鳥状に多数の孔をあけたこと、およびそれら多数の孔の開口側が膨張圧で多少破砕されることにより弱くなっていると認められるので、切断されたブロック毎にクレーン等を用いて強く引き上げても、スタッドジベルとの結合部分は強く抵抗するのであり、それでも強引に引き剥がそうとすれば大型のクレーンが必要であるばかりでなく、大型のクレーンで結合部分のコンクリートを破砕して引き剥がすことはできるが、その衝撃で破砕したコンクリート破片の多くが落下して環境に悪影響を与えるのであり、特に、河川上ではコンクリート破片の落下防止のための設備を足場に設けなければならないのであり、また、強引に引き剥がすことで鋼主桁フランジの変形や一部のスタッドジベルが損傷したり、またはコンクリートの一部がスタッドジベル間に残ったりするのであり、落下したコンクリート破片の回収作業等を含めてその後の処置が極めて厄介であるという問題点を有している。
【0013】
さらに、前記第3の従来技術においては、あくまでもコンクリート床版端部下面を補修することが課題であって、そのために、ウォータージェット装置を使用し、橋台の床版支持座面との間に形成された横方向遊間を通じて高圧水噴射ノズルを挿入し、該高圧水噴射ノズルによる高圧水噴射にてコンクリート床版の端部下面のコンクリート表層部を所要の帯域に亘りハツリ、該コンクリートに埋設の鉄筋を露出させたハツリ帯域を形成し、そのハツリ帯域を縦方向遊間に装着した弾性の型板と下部開放面を覆う型枠で囲い、ハツリ帯域に補修セメントモルタルを充填するのであり、このコンクリート床版と橋台の床版支持座面との間を結合させるための結合用ジベルについては一切言及されていないのである。
【0014】
そうすると、この第3の従来技術は、主桁とコンクリート床版とがジベルで結合されている一般的な橋梁あるいは高架橋におけるコンクリート床版の撤去に適用できるまでは示唆されていないのである。そして、仮に、適用するとしても具体的にどのようにするかについては、それなりに新規に開発しなければならないのである。
【0015】
従って、従来技術においては、環境に悪影響を及ぼさず、作業効率が良好で且つスタッドジベルを無傷の状態で残しながら鋼桁とコンクリート床版との縁切りを行なって、コンクリート床版を撤去できるようにすることに解決課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、前述の従来例の課題を解決する具体的手段として、道路橋等を構成する鋼製の主桁上に鉄筋コンクリート製の床版が設置され、前記鋼製の主桁の上面に設けられた複数の結合材によって結合された前記コンクリート床版を撤去方法であって、前記結合材がジベルとし、前記床版の上面から前記鋼桁の長さ方向に沿って高圧ウォータージェットによりコンクリートのみを除去して鋼桁の幅よりも狭い幅の切削帯域を形成し、該切削帯域に鋼桁上面のジベルおよびコンクリート床版に埋設された鉄筋の一部を露出させて鋼桁とコンクリート床版との縁切りを行い、該縁切りされた前記コンクリート床版を所要大きさのブロック片に切断し上方に引き剥がして撤去することを特徴とする橋梁床版の撤去方法を提供するものである。
【0017】
この発明においては、前記結合材は鉄筋であること;前記ブロック片の切断は、コンクリート床版を橋幅方向への切断と、前記切削帯域に露出した鉄筋および/または結合筋とを切断して行なうこと;切削帯域の形成において、鋼桁上面の幅B、形成される切削帯域の幅a、残留掛かり代cとした場合に、B=a+2cで、a<B、cは少なくとも5cmであること、を付加的な要件として含むものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る橋梁床版の撤去方法によれば、高圧ウォータージェットによりコンクリートのみを除去して鋼桁の幅よりも狭い幅の切削帯域を形成し、該切削帯域にジベルおよび床版内に配設した鉄筋を露出させて鋼桁と床版との縁切りを行い、鋼桁上面のジベルをそのまま残してコンクリート床版を所要大きさのブロック片に切断して撤去するものであるため、作業効率が良好であると共に、コンクリート破片が飛散しないため、環境に悪影響を及ぼさないという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る橋梁床版の撤去方法を略示的に示した斜視図である。
【図2】同実施の形態に係る橋梁床版の撤去方法おいて高圧ウォータージェットでコンクリート床版を切削除去する状況を示す要部の略示的断面図である。
【図3】同実施の形態に係る橋梁床版の撤去方法おいて高圧ウォータージェットでコンクリート床版を切削除去する状況を示す要部の略示的平面図である。
【図4】同実施の形態に係る橋梁床版の撤去方法おいて高圧ウォータージェットでコンクリート床版を切削除去する状況を示す要部の略示的側面図である。
【図5】同実施の形態に係る橋梁床版の撤去方法おいて高圧ウォータージェットでコンクリート床版のコンクリートのみを切削除去して形成した切削帯域を示す要部の略示的側面図である。
【図6】同実施の形態において橋梁床版をブロックに切断して撤去する状況を略示的に示す説明図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る橋梁床版の撤去方法を略示的に示した斜視図である。
【図8】同実施の形態において橋梁床版をブロックに切断して撤去する状況を略示的に示す説明図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る橋梁床版の撤去方法を略示的に示した斜視図である。
【図10】同実施の形態に係る橋梁床版の撤去方法おいて高圧ウォータージェットでコンクリート床版のコンクリートのみを切削除去して形成した切削帯域を示す要部の略示的側面図である。
【図11】同実施の形態において橋梁床版をブロックに切断して撤去する状況を略示的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を図示の実施の形態に基づいて詳しく説明する。まず、図1〜6は、本発明に係る第1の実施の形態に係る橋梁床版の撤去方法を示すものであり、一般的に道路橋等の橋梁あるいは高架橋は概ね複数の鋼製の主桁(以下、鋼桁という)1上に鉄筋コンクリート製の床版(以下、コンクリート床版という)2が設置され、該コンクリート床版2は一般的に現場打ちされるものであって、鋼桁1の上面に設けられた複数の結合材であるスタッドジベル3によって鋼桁1に強固に結合されている。
【0021】
このように構成されている橋梁のコンクリート床版2は、老朽化等により取り替える場合に、鋼桁1を残して老朽化したコンクリート床版2を解体して撤去する必要がある。そこで、本発明は、高圧ウォータージェット装置(図示せず)を用いて、鋼桁1の長さ方向上面に沿ってコンクリート床版2のコンクリートのみを所要幅および長さに亘って切削除去し、ジベル3とコンクリート床版2内に埋設してある鉄筋4の一部とを露出させた切削帯域5を形成することによって鋼桁1とコンクリート床版2との縁切りを行なう。その後に、形成した切削帯域5の長さ範囲内においてコンクリート床版2を適宜のコンクリートカッター等で所要大きさのブロック状に切断し、該ブロックを適宜手段により上方に引き剥がして撤去する。この引き剥がし手段として、例えば、クレーン等で吊り上げて撤去する。
【0022】
この場合に、図2〜図4に示したように、高圧ウォータージェットのノズル6でコンクリート床版2の上面から鋼桁1の長さ方向に沿って所要幅の切削帯域5を形成すべく、高圧水7を噴射させてコンクリートのみを切削除去し、鋼桁1に設けたジベル3とコンクリート床版2内に配設された鉄筋4の一部とを切削帯域5内に露出させて鋼桁1とコンクリート床版2との結合を分離させるであるが、高圧水7による切削済みのコンクリート粒子等の不純物を含む汚れた水は、垂れ流しにすると周囲に迷惑または周囲の環境に悪影響を与えるので垂れ流しにしないで回収するのである。
【0023】
その回収手段として、切削帯域5を形成しようとするコンクリート床版2の端部側に鉄板等による止水板8を当接させて取り付ける。該止水板8の当接面側には、例えば、ゴムラバーが貼着してあり、その反対面側の下端部にはL字状のアングル材9が設けてあって、該アングル材9と鋼桁1の上面との間で仮止め、例えば、点溶接やボルトまたは接着固定するとかあるいはフランジ部1aとの間で適宜の挟持時具により挟持させて仮固定したり、あるいはアングル材9をマグネットで形成して吸着固定するものであっても良く、その仮固定に際しては適宜の手段が用いられるのである。
【0024】
そして、止水板8にはポンプ10付きの排水用ホースまたはパイプ11が連接され、該ホースまたはパイプは工事現場に持ち込んだ排水処理装置(図示せず)に連接されており、ポンプを駆動させながら、切削帯域5を高圧水7で切削除去して汚れた水が順次ホースまたはパイプ11を介して排水処理装置に回収される。
【0025】
回収された汚れている水は、アルカリ性のコンクリート粒子および破片等を含んでいるので、排水処理装置において浄化処理、即ち中和処理と濾過処理とを行って水を浄化した後に廃水するか、または該浄化した水を所要の水槽に貯留しておいて、再度高圧ウォータージェットの高圧水として使用することができるのである。
【0026】
また、図5と図6に示したように、コンクリート床版2に形成される切削帯域5の所要幅aは、鋼桁1の上面幅Bよりも小さく(a<B)形成することによって、切削帯域5の形成後におけるコンクリート床版2は鋼桁1に対して載置状態を維持するために、最小限の残留掛かり代cを両側に残さなければならないのであり、その条件を数式で示すとB=a+2cとなり、上記残留掛かり代cは少なくとも5cm程度が必要である。
【0027】
そして、コンクリート床版2は、図1で示した切断線12a、12bに沿って、適宜のコンクリートカッター等で所要大きさのブロック状に切断して撤去されるのである。このブロック状の切断については、コンクリート床版2の橋幅方向の広さによって異なるが、例えば、鋼桁1が存在しないほぼ中間付近で切断線12aに沿って切断し、橋幅方向についてはトラック等で搬出できる大きさになるようにコンクリート床版2の橋幅方向の切断線12bで切断し、全体として長方形のコンクリートブロック片にする。また、コンクリートブロック片の撤去については、2箇所の切削帯域5に露出した鉄筋4に吊り下げ用のワイヤー13を係止させてクレーン等で吊り上げれば、コンクリートブロック片は鋼桁1から簡単に剥がれて全体をほぼ水平に吊り上げて撤去することができ、搬送用のトラックに積み込む際に、好都合である。
【0028】
次に、図7〜図8に示した第2の実施の形態について説明する。なお、前記第1の実施の形態と同一部分については説明が重複するので同一符号を付してその詳細は省略する。この第2の実施の形態については、各鋼桁1の長さ方向上面に沿ってコンクリート床版2を高圧ウォータージェットにより、コンクリートのみを切削除去して所要幅の切削帯域5を形成しジベル3と鉄筋4とを露出させて鋼桁1とコンクリート床版2との結合を切り離すこと、および切削済みの汚れた水を回収し排水処理装置において浄化処理する工程までは一致しているのである。
【0029】
そして、その後にコンクリート床版2をブロック状に切断する工程において、切断位置を変えてブロック片の大きさを異なるようにしただけである。即ち、コンクリート床版2における両側の鋼桁1に形成した切削帯域5についてはそのままで、中間に位置する各鋼桁1に形成した切削帯域5に露出している鉄筋4を中央部で切断することによって、各鋼桁1間毎に、即ち、一区間毎にコンクリートブロック片にして撤去する。この場合に、使用される切断手段としては、例えば、手動の小型軽量なガス切断機等を用いることができる。
【0030】
要するに、撤去するコンクリートブロック片は、コンクリート床版2の広さおよび厚さによってブロック片にした時に、撤去および搬送に支障を来たさない大きさ・重量にしなければならないのであって、コンクリート床版2と鋼桁1との結合を切り離す切削帯域5を形成した後に、ブロック状に切断する位置はその現場の状況とによって制約を受けるのである。さらに、一区間毎にブロック片を撤去する場合に、鋼桁1の片側にまだ残っているブロック片の重量で鋼桁1が捩じれを生ずる恐れがあれば、鋼桁1の両側近傍に支保工などのサポート材14を設けてブロック片の撤去が行なわれるまで、コンクリート床版2を安定状態に支持させる措置を講じる必要がある。
【0031】
前記いずれの実施の形態における橋梁床版の撤去方法においても、鋼桁1上にジベル3を残存させた状態で効率よく床版2を撤去できるのであり、残存させたジベル3はそのまま新たに設置されるコンクリート床版との結合材として利用できるので、費用も手間も著しく軽減できるのである。
【0032】
さらに、図9〜図11に示した第3の実施の形態について説明する。この第3の実施の形態は、前記第1および第2の実施の形態とは鋼桁1に設けた結合材がスタッドジベルではなく鉄筋(結合筋15)である点で相違するが、他の構成部分については実質的に同一であるので、その同一部分については説明が重複するので同一符号を付してその詳細は省略する。
【0033】
この第3の実施の形態についても、各鋼桁1の長さ方向上面に沿ってコンクリート床版2を高圧ウォータージェットにより、コンクリートのみを切削除去して所要幅の切削帯域5を形成し鉄筋4と結合筋15とを露出させて鋼桁1とコンクリート床版2との結合を切り離す工程と、切削済みの汚れた水を回収し排水処理装置において浄化処理する工程までは前記第1および第2の実施の形態と同じである。
【0034】
鋼桁1に設けられた結合筋15は、直立するスタッドジベルと違って逆台形状に形成し、該逆台形状の頂部を鋼桁1上に溶接して左右脚部を上方に伸ばすと共に、その先端が横方向に伸びて鋼桁1の幅よりも長く形成されているので、鋼桁1の幅Bよりも狭い幅aに形成された切削帯域5からはみ出してコンクリート床版2内に収まっており、切削帯域5を形成することで鋼桁1とコンクリート床版2とは大半の部分で縁切りされるが、まだ結合筋15の一部が繋がっているため完全には縁切りされていない状態になっている(図10参照)。
【0035】
そこで、切削帯域5内において、例えば、露出した結合筋15の繋がっている部分をガス切断機で切断する上で、切削帯域5内に露出した鉄筋4が邪魔にならなければ、結合筋15を切断して縁切りを行なう。そうでなければ、切削帯域5を形成した後で、コンクリートブロック片に切断する際に、まずコンクリートカッター等で切断線12bに沿ってブロック片としての幅方向を切断し、次に、例えば、手動の小型軽量なガス切断機等を用いて切削帯域5に露出している鉄筋4と結合筋15を切削帯域5の両側面に沿って切断(溶断)すると、結合筋15の一部が鋼桁1上に残ってブロック片が完全に縁切りされる。
【0036】
このように縁切り切断することによって、前記第2の実施の形態と同様に、一区間毎にブロック片に分割して撤去するのであり、その撤去に際して、片側にまだ残っているブロック片の重量で鋼桁1が捩じれを生ずる恐れがあれば、前記同様に支保工などのサポート材14を設けてブロック片の撤去が行なわれるまで、コンクリート床版2を安定状態に支持させる措置を講じる。そして、吊り上げて撤去する際に、例えばブロック片にインサート16を打ち込んで吊り金物として使用し、適宜の係止治具を挿通してワイヤー13を連結して吊り上げて撤去するのである。
【0037】
以上に示した実施例における各構成については、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が自在であり、前記実施例の各構成に限定されるものではない。
例えば、切削帯域の幅aに沿って、先にコンクリートカッター等でコンクリート床版2を所要深さ(厚さの中間付近または鋼桁1の上面に達する)まで切削してから、その後に切削した切削帯域の幅a内における床版2のコンクリートを高圧水7で除去しても良いのである。要するに、作業効率を考慮して、先に切削帯域の幅aをコンクリートカッター等で切削する工程と、その後に切削した幅に沿って高圧水でコンクリートを除去する工程とを行うことは、本願発明の主旨に沿って同様な効果を得られるものであって、発明の範囲に入るのである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係るいずれの実施例における橋梁床版の撤去方法も、高圧ウォータージェットによりコンクリートのみを除去して鋼桁の幅よりも狭い幅の切削帯域を形成し、該切削帯域にジベルおよび床版内に配設した鉄筋を露出させて鋼桁と床版との縁切りを行い、鋼桁上面のジベルをそのまま残してコンクリート床版を所要大きさのブロック片に切断して撤去するものであるため、作業効率が良好であると共に、コンクリート破片が飛散しないため、環境に悪影響を及ぼさないばかりでなく、使用機材も小型のものが使用でき、作業員の負担も軽減できるので、この種橋梁床版の撤去技術に広く利用できる。
【符号の説明】
【0039】
1 鋼桁
1a フランジ部
2 コンクリート床版
3 スタッドジベル
4 鉄筋
5 切削帯域
6 ノズル
7 高圧水
8 止水板
9 脚部エルボ
10 ポンプ
11 ホースまたはパイプ
12a、12b 切断線
13 ワイヤー
14 サポート材
15 結合筋
16 インサート
a 切削帯域の幅
B 鋼桁上面の幅
c 残留掛かり代

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路橋等を構成する鋼製の主桁上に鉄筋コンクリート製の床版が設置され、前記鋼製の主桁の上面に設けられた複数の結合材によって結合された前記コンクリート床版を撤去方法であって、
前記結合材がジベルとし、前記床版の上面から前記鋼桁の長さ方向に沿って高圧ウォータージェットによりコンクリートのみを除去して鋼桁の幅よりも狭い幅の切削帯域を形成し、
該切削帯域に鋼桁上面のジベルおよびコンクリート床版に埋設された鉄筋の一部を露出させて鋼桁とコンクリート床版との縁切りを行い、
該縁切りされた前記コンクリート床版を所要大きさのブロック片に切断し上方に引き剥がして撤去すること
を特徴とする橋梁床版の撤去方法。
【請求項2】
前記結合材は鉄筋であること
を特徴とする請求項1に記載の橋梁床版の撤去方法。
【請求項3】
前記ブロック片の切断は、コンクリート床版を橋幅方向への切断と、前記切削帯域に露出した鉄筋および/または結合筋とを切断して行なうこと
を特徴とする請求項1または2に記載の橋梁床版の撤去方法。
【請求項4】
切削帯域の形成において、鋼桁上面の幅B、形成される切削帯域の幅a、残留掛かり代cとした場合に、B=a+2cで、a<B、cは少なくとも5cmであること
を特徴とする前記請求項1乃至3のいずれかに記載の橋梁床版の撤去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−207388(P2012−207388A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71935(P2011−71935)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【特許番号】特許第4875775号(P4875775)
【特許公報発行日】平成24年2月15日(2012.2.15)
【出願人】(000170772)黒沢建設株式会社 (57)
【Fターム(参考)】