説明

橋梁用移動走行装置

【課題】 ウェブ側面に所定間隔をおいて補強用フランジを突設形成している板桁をレールとして走行して、床版張り替え、点検補修、塗装等の諸作業を遂行するのに非常に便利な橋梁用移動走行装置を提供する。
【解決手段】 横梁1に設けた支持ブラケット7、7と、その横梁1にスライド可能に貫挿する走行軌条2に設けた走行用支持ブラケット8、8との一方に設けた盛り替え用ジャッキ27、27のジャッキアップ、ジャッキダウンで、横梁1を板桁下フランジb2上面に、また走行軌条2を板桁下フランジb2上面に交互に係合させて交互に反力部3を構成して、それに連係する走行用ジャッキの伸長、収縮による盛り替えで板桁に沿って走行させる。下フランジb2上面に対する非係合状態の走行用支持ブラケット8、8、支持ブラケット7、7をウェブb1’から離間する方向へ水平移動させておくことによって、ウェブb1’側面から突設する補強用リブb3との衝突を回避して走行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は板桁上に設置固定された床版(例えばコンクリート床版)を張り替えたり、板桁の塗装作業、点検補修する際等に橋梁に沿って移動する移動走行装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁用移動走行装置には、橋梁における板桁の下フランジを解除可能にクランプする前後一対のリフトアップダウン可能なクランプユニットと、そのクランプユニットとほぼ同一構成の足場付きの点検ユニットと、そのクランプユニット、点検ユニットを走行可能に支承するユニット用レールとを備え、前記下フランジに固定されたクランプユニット間を点検ユニットが走行することによって、橋脚等の点検を可能にし、板桁に沿っての移動時は、そのクランプユニット、点検ユニットを前記下フランジに対して固定してユニット用レールを移動させて行ったり、逆にクランプユニット、点検ユニットの下フランジに対する固定を解除してユニット用レール上を移動させることで行う構成のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この先行技術は、前記するユニット用レールを大型トラック等に搭載できることから、専用レールを布設したり、固定式足場を橋梁に架設する大掛かりな手段を必要とせず、点検ユニットを橋梁の自由な位置に移動することができるようになっている。
【0004】
ところで、車道、歩道等の基板となる床版(例えばコンクリート床版)を載置固定する板桁には、補強のために所定間隔おきにウェブ側面に補強用リブが突設形成されている。
しかしながら、先行技術では、クランプユニット、点検ユニット共に補強用リブを回避して走行可能できる構成にはなってはいない。
そして、先行技術の場合、クランプユニット、点検ユニットを走行可能に支承するユニット用レールが必要であり、大掛かりな設備構成を避けることができない。
その上、そのユニット用レールを搭載するトレーラー等の台車手段によって橋梁下部道路が長期に亘って占有され、交通規制による交通渋滞等の問題を残置してしまう。
【特許文献1】特開平7−145607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来事情に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、ウェブ側面に所定間隔をおいて補強用フランジを突設形成している板桁を吊持レールとして走行して、床版張り替え、点検補修、塗装等の諸作業を遂行する際に等しく有効利用できる非常に便利な橋梁用移動走行装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために講じた技術的手段は、橋梁下方で橋梁短手方向を向いて配置した横梁に、左右の板桁の長手方向各々に沿う走行軌条をスライド可能に貫挿し、走行軌条に設けた係止部の板桁下フランジ上面との係合と、横梁に設けた係止部の同下フランジ上面との係合との交互係合で反力部を形成し、横梁と係止部を備えた走行軌条とを走行用ジャッキで連絡して、下フランジに対する支持を、前記交互係合による反力部と、伸長、収縮する前記走行用ジャッキのその各作動とによる横梁、走行軌条への交互盛り替えで行うようになし、前記両係止部を前記板桁のウェブに対して水平方向に接近・離間するように移動可能に形成して、前記盛り替え時において、ウェブに間隔をおいて設けられている補強用リブとの衝突回避を非係合状態の係止部のウェブからの離間方向への水平移動で防止することを特徴とする橋梁用移動走行装置である(請求項1)。
【0007】
以上の手段によれば、橋梁下方で橋梁短手方向を向いて配した横梁と、その横梁に対してスライド可能に貫挿し板桁の長手方向各々に沿う走行軌条との各々に設けた係止部の板桁下フランジ上面への交互係合で反力部を構成し、その交互係合と、それに連係する走行用ジャッキの伸長、収縮の繰り返しで横梁と、走行軌条とに交互に盛り替えて、板桁に沿って走行させる。
その走行最中に板桁のウェブ側面から突設した補強用リブにその非係合状態の係合部が干渉するような態様になっても、係止部のウェブからの離間方向への水平移動で回避して、その走行を阻害しない。
【0008】
また、橋梁下方で橋梁短手方向を向いて配置した横梁に、左右の板桁の下フランジ上面に係合する支持ブラケットを設け、前記横梁をスライド可能に貫挿して前記板桁の長手方向に沿って設けた平行な左右の走行軌条に、前記下フランジ上面に係合する走行用支持ブラケットを前記支持ブラケットに対して板桁の長手方向に前後関係をもって配置し、前記横梁と、走行用支持ブラケットを備えた走行軌条とを走行用ジャッキで連絡すると共に前記支持ブラケット、走行用支持ブラケットを、その一方に盛り替え用ジャッキを設けてジャッキアップ時にその盛り替え用ジャッキが下フランジ上面に係合し且つそのジャッキダウン時に他方が下フランジ上面に係合するように構成して、前記下フランジに対する支持を、前記交互係合による反力部と、伸長、収縮する前記走行用ジャッキのその各作動とによる支持ブラケット、走行支持ブラケットへの盛り替えで交互に行うようになし、前記支持ブラケット、走行支持ブラケットを前記板桁のウェブに対して水平方向に接近・離間するように水平移動可能に形成し、その盛り替え時において、ウェブに間隔をおいて設けられている補強用リブとの衝突回避を下フランジ上面に対する非係合状態の走行用支持ブラケット、支持ブラケットのウェブからの離間方向への水平移動で防止する構成にしても良いものである(請求項2)。
この請求項2と共に請求項1は、前記横梁を左右の板桁間隔に対応するように長さ調整可能に形成している。
この手段では、横梁に設けた支持ブラケットと、その横梁にスライド可能に貫挿する走行軌条に設けた走行用支持ブラケットとの一方に設けた盛り替え用ジャッキのジャッキアップ、ジャッキダウンで、横梁を板桁下フランジ上面に、また走行軌条を板桁下フランジ上面に交互に係合させて反力部を構成して、それに連係する走行用ジャッキの伸長、収縮と、その交互係合で横梁と走行軌条とに交互に盛り替えて、その板桁に沿って走行させる。
板桁のウェブ側面から突設形成している補強用リブとの回避は、板桁下フランジ上面に対する非係合状態の走行用支持ブラケット、支持ブラケットのウェブからの離間方向への水平移動で対処する。
【0009】
そして、走行軌条または横梁に作業用足場を連結していると、板桁を塗装したり、保守点検する際に有効である(請求項3)。
【0010】
また、横梁に床版を押上げる押上げ用ジャッキ機構を備えていると、耐用期や損傷等によって床版を張り替える時に最適なものとなる(請求項4)。
床版(例えばコンクリート床版)B1は、図9に示すように、板桁b1の上フランジb4に対応する箇所に等間隔をおいて打設用の孔10が開孔され、その上フランジb4に載置した状態でその上フランジb4から立設したスタッドボルト100回りに打設材(コンクリート床版にあってはコンクリート材)200を打設して、板桁b1に固定されている。
そして、耐用期や損傷等による床版の張り替えは、前記打設材200をハツリ、前記押上げ用ジャッキ機構6で床版B1を板桁b1の上フランジb4から剥すことによって行う。
【0011】
そして、押上げ用ジャッキ機構は、前記板桁の下フランジ上面にピストンロッドを突き当てて上昇するジャッキ本体と、横梁に設けられて前記ジャッキ本体をウェブに対して水平方向に接近・離間するように移動可能に連結するポストガイド部と、そのポストガイド部に抜き差しピンで段階的に高さ調整可能に案内する床版押上げポストとを備えていると好適なものである(請求項5)。
この手段にあっては、床版押上げポストを床版の裏面に当接または接近するように人為的に引き上げて高さ調整した後、ジャッキ本体をジャッキアップすることによって横梁と共に床版押上げポストを押上げて、床版を板桁の上フランジから剥離させ、小型ジャッキで床版の剥離を可能にする。
【0012】
また、横梁に床版を押上げる押上げ用ジャッキ機構を備え、前記押上げ用ジャッキ機構は、板桁の下フランジ上面にピストンロッドを突き当てて上昇する盛り替え用ジャッキと、横梁に設けられてその盛り替え用ジャッキをウェブに対して水平方向に接近・離間するように移動可能に連結するポストガイド部と、そのポストガイド部に抜き差しピンで段階的に高さ調整可能に案内する床版押上げポストとを備えていると、ジャッキアップで板桁下フランジ上面に係合して盛り替え時の係合抵抗を生成する盛り替え用ジャッキを、床版を押上げる押上げ用ジャッキ機構のジャッキ本体として兼務させる(請求項6)。
【0013】
そして、床版押上げポストの上端に押上げ実行体を螺嵌した構成を採用することによって、床版押上げポスト上端の押上げ端を微調整可能にすることができる(請求項7)。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以上のように構成したから下記の利点がある。
(請求項1、2)
左右の板桁の下フランジに吊持状に支持されてその下フランジを走行レールにしてウェブ側面から突設形成されている補強用リブとの衝突を回避しながら走行する橋梁用移動走行装置を提供することができる。
しかも、先行技術のような大掛かりなユニット用レールが全く不要であるし、そのユニット用レールを搭載するトレーラー等の台車手段で橋梁下部道路が占有される虞れもなく、交通規制による交通渋滞を全く考慮する必要がない。
(請求項3)
盛り替えで走行する走行軌条や横梁に作業用足場が連結されているから、その作業用足場を使用して板桁を塗装したり保守点検することができる。
(請求項4)
また、床版を押上げる押上げ用ジャッキ機構を備えているから、張替え時に床版を板桁から剥離することができる。
(請求項5)
しかも、床版押上げポストを床版に接近するように人為的に引き上げて高さ調整可能とし、ジャッキ本体をジャッキアップすることよって床版押上げポストを支持する横梁が押上げられる構成であるから、小型軽量なジャッキを使用して床版の張替えに対処できる。
(請求項6)
また、前記ジャッキ本体を、ジャッキアップで板桁下フランジ上面に係合して盛り替え時の係合抵抗を生成する盛り替え用ジャッキで構成しているから、押上げ用ジャッキ機構として専用のジャッキを付設する必要がなく、設備コストの低減に寄与することができる。
(請求項7)
その上、螺嵌する押上げ実行体を床版押上げポストの上端に設けた構成を採用して、床版裏面に、より接近したり当接するように微調整可能であり、押上げ用ジャッキ機構のジャッキ本体として兼務される、より小型軽量なストロークが小さな盛り替え用ジャッキを使用して床版を板桁の上フランジから剥離可能であり、板桁に吊持状に支持されて走行して自重を板桁に作用させる橋梁用移動走行装置として最適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
横梁に設けた支持ブラケットと、その横梁にスライド可能に貫挿する走行軌条に設けた走行用支持ブラケットとの一方に設けた盛り替え用ジャッキのジャッキアップ、ジャッキダウンで、横梁を板桁下フランジ上面と、走行軌条を板桁下フランジ上面とに交互に係合させてその係合抵抗で反力部を構成する。
そして、その交互係合と走行用ジャッキの伸長、収縮を連係させて、横梁と、走行軌条とに交互に盛り替えて、盛り替えの度に板桁に沿って所定長さ宛走行させる。
走行時における板桁のウェブ側面に所定間隔をおいて突設する補強用リブとの衝突回避は、板桁下フランジ上面に対する非係合状態の走行用支持ブラケット、支持ブラケットのウェブからの離間方向への水平方向への移動で回避する。
【0016】
そして、押上げ用ジャッキ機構をジャッキアップして板桁の下フランジ上面に係合することによって、横梁と共に押し上げられる床版押上げポストで床版を押上げて板桁の上フランジに対する接着を剥す。
この剥離作業を、橋梁用移動走行装置を橋梁の板桁に沿って走行させつつ所定箇所で行って張替え対象になっている床版をクレーン等で持上げ可能に剥離する。
【実施例1】
【0017】
図1〜図9は本発明橋梁用移動走行装置の実施の形態を示し、符号Aはその橋梁用移動走行装置である。
図1に示す橋梁用移動走行装置の正面図以外の図面については、図1における橋梁用移動走行装置の左側半部もしくは左側半部の要部を抽出して示している。
この橋梁用移動走行装置Aは、橋梁Bの下方に橋梁Bの短手方向を向いて配された横梁1と、左右の板桁b1、b1の長手方向各々に沿うように前記横梁1にスライド可能に形成された左右の走行軌条2、2と、その横梁1と板桁b1の下フランジb2上面との間及び走行軌条2と板桁b1の下フランジb2上面との間に交互に形成される反力部3と、横梁1と走行軌条2各々とに亘って架設された走行用ジャッキ4と、走行軌条2各々に連結された作業用足場5と、その横梁1に設けた押上げ用ジャッキ機構6等を備えている。
【0018】
前記横梁1は、図1、図2等に示すように、橋梁Bのコンクリート床版B1における左右の板桁b1、b1の下方でその板桁b1、b1に直交するように配され床版B1長手方向に平行して隣設する左右二対のジャッキ支持フレーム11、11同士を中間フレーム21で連結し、そのジャッキ支持支持フレーム11、11の対向端部にウェブ間隔調整材31、31をスライド可能に嵌挿して抜き差し可能にピン41止めすることによって長さ調整可能に形成されている。
【0019】
また、前記横梁1は、図1、図4等に示すように左右二対のジャッキ支持フレーム11、11に上向き略コ字状の軌条支持ブラケット51、51を垂設すると共に、その軌条支持ブラケット51、51に走行軌条2をスライド可能に貫挿し、更にそのジャッキ支持フレーム11、11各々に、板桁b1の下フランジb2上面との係止部(後述では横梁側係止部と称する)7を設けている。
【0020】
前記横梁側係止部7は、板桁b1の下フランジb2幅寸法よりも広い間隔をおいて離間する内外位置に配置され、その離間位置からウェブb1’厚寸法よりも若干広い間隔まで水平方向に移動可能に構成されている。
【0021】
その外側の横梁側係止部7は、図2、図4等に示すように、ジャッキ支持フレーム11の外端部分に摺動可能に外嵌するブラケット17と、そのブラケット17に設けた盛り替え用ジャッキ27と、前記ジャッキ支持フレーム11外端面から外側に突設する支持台11aに設置されブラケット17を水平方向に移動可能とする第1開閉ジャッキ37とで形成されており、板桁b1の下フランジb2においてウェブb1’を挟む外半部の上面に係脱する外側の支持ブラケット(後述では符号7を付して説明する)を形成している。
【0022】
他方、内側の横梁側係止部7は、同図2、図4等に示すように前記ジャッキ支持フレーム11を貫挿する床版押上げポスト47を案内する同ジャッキ支持フレーム11上面に載置したポストガイド部57に、ピストンロッド27aを下向きにジャッキアップ可能とする盛り替え用ジャッキ27を設け、且つそのポストガイド部57を回動可能に構成することによって盛り替え用ジャッキ27を水平方向に旋回動可能とし、板桁b1の下フランジb2においてウェブb1’を挟む内半部の上面に係脱する内側の支持ブラケット(後述では符号7を付して説明する)を形成している。
【0023】
そして、前記第1開閉ジャッキ37を伸長し、更にポストガイド部57を90度旋回動させて、両盛り替え用ジャッキ27、27を板桁b1の下フランジb2においてウェブb1’を挟む内外半部の上面に臨ませ、その状態からジャッキアップしてピストンロッド27a、27aがウェブb1’を挟む下フランジb2の内外半部上面各々に係合する係合抵抗で反力部3を構成するようになっている。
【0024】
前記軌条支持ブラケット51は、その内面にスライド可能に貫挿される走行軌条2を上下左右にガタツクことなく案内する複数の案内ローラ51a…を左右対向面や上面に備えている。
【0025】
前記走行軌条2は、図2、図5に示すように、その両端に支持フレーム12を交差するように設置し、その支持フレーム12各々に板桁b1の下フランジb2上面との係止部(後述では軌条側係止部と称する)8を設けている。
【0026】
この軌条側係止部8は、前記横梁側係止部7と同様に板桁b1の下フランジb2幅寸法よりも広い間隔をおいて離間する内外位置に配置され、その離間位置からウェブb1’厚寸法よりも若干広い間隔まで水平方向に移動可能に構成されている。
【0027】
その外側の軌条側係止部8は、図2、図5等に示すように支持フレーム12の外端部分に摺動可能に外嵌する逆L字状ブラケット18を、支持フレーム12外端面から外側に突設する支持台28に設置された第2開閉ジャッキ38で水平移動可能に形成して、板桁b1の下フランジb2においてウェブb1’を挟む外半部の上面に係脱する外側の走行用支持ブラケット(後述では符号8を付して説明する)を形成している。
【0028】
他方、内側の軌条側係止部8は、図2、図5等に示すように前記支持フレーム12にポスト48を回動可能に設け、該ポスト48に支持アーム58を回動可能に取付けて、板桁b1の下フランジb2においてウェブb1’を挟む内半部の上面に係脱する内側の走行用支持ブラケット(後述では符号8を付して説明する)を形成している。
【0029】
そして、前記第2開閉ジャッキ38を伸長して前記外側の走行用支持ブラケット8の逆L字状ブラケット18先端の水平部18aを板桁b1の下フランジb2においてウェブb1’を挟む外半部の上面上に臨ませ、ポスト48を90度回動させて内側の走行用支持ブラケット8先端の支持アーム58を同下フランジb2においてウェブb1’を挟む内半部の上面上に臨ませた状態で、前記盛り替え用ジャッキ27、27をジャッキダウンすることによってウェブb1’を挟む下フランジb2の内外半部上面各々にその水平部18a、支持アーム58が係合して係合抵抗による反力部3を構成するようになっている。
【0030】
前記内外の支持ブラケット7、7は、盛り替え用ジャッキ27、27をジャッキダウンして内外の走行用支持ブラケット8、8が、ウェブb1’を挟む下フランジb2の内外半部上面各々に係合されて反力部3を構成することによって、非係合状態となり、その状態時に第1開閉ジャッキ37の収縮、ポストガイド部57の90度逆回動の実行で、ウェブb1’内外側から突設する補強用リブb3の正面視域から外れる位置まで前記盛り替え用ジャッキ27、27を離間できるようになっている。
【0031】
また、内外の走行用支持ブラケット8、8は、盛り替え用ジャッキ27、27のジャッキアップで内外の支持ブラケット7、7が下フランジb2の内外半部上面各々に係合し、扛上して反力部3を構成することによって、非係合状態となり、その状態時に第2開閉ジャッキ38の収縮、ポスト48の90度逆回動の実行で、ウェブb1’内外側から突設する補強用リブb3の正面視域から外れる位置まで水平部18a、支持アーム58を離間できるようになっている。
【0032】
この実施の形態では、ポストガイド部57の回動、支持アーム58の回動については人為的に行うように構成されているが、所要のアクチュエータで制御するようにしても良いものである。
【0033】
また、前記横梁1と、走行用支持ブラケット8を備えた走行軌条2とは走行用ジャッキ4で連絡されている。
【0034】
前記押上げ用ジャッキ機構6は、内側の支持ブラケット7の盛り替え用ジャッキ27をシリンダ本体として兼用できるようになっている。
【0035】
その押上げ用ジャッキ機構6は、図4、図9等に示すようにジャッキ支持フレーム11、11各々に、高さ方向に等間隔をおいて差し込み孔47aを開孔した床版押上げポスト47を上下動可能に貫挿すると共に、その床版押上げポスト47に前記ポストガイド部57を遊嵌し、前記床版押上げポスト47上端に操作ハンドル47b’付きの押上げ実行体47bを螺嵌し、その押上げ実行体47bを床版B1の裏面に接近するように人為的に高さ調整した状態でポストガイド部57に開孔されている挿し入れ孔57aから差し込み孔47aに抜き差しピン9を抜差し可能に差込係止した後、操作ハンドル47b’の回転操作で押上げ実行体47bを床版B1の裏面に当接間係になるように微調整可能に構成されている。
【0036】
また、橋梁用移動走行装置Aには、左右の走行軌条2、2に亘って作業用足場5が架設状に連結されている。
【0037】
次に本実施の形態橋梁用移動走行装置Aの作動状態を説明すると、図6は、図2の長孔状の二点鎖線の部分を抽出して示しており、図6(a)(図8(a))は、第2開閉ジャッキ38を伸長し、ポスト48を90度回動させて内外の走行用支持ブラケット8、8先端の水平部18a、支持アーム58がウェブb1’を挟む下フランジb2の内外半部上面各々に係合してその係合抵抗で反力部3を構成している。この時、内外の支持ブラケット7、7は盛り替え用ジャッキ27、27をジャッキダウンしてピストンロッド27a、27aが収縮状態にあり、下フランジb2の上面に対して非係合状態になっている。
【0038】
そして、この図6(a)(図8(a))に示す状態から第1開閉ジャッキ37を収縮し、ポストガイド部57を90度回動させて内外の支持ブラケット7、7の盛り替え用ジャッキ27、27をウェブb1’内外側から突設する補強用リブb3の正面視域から外れる位置まで離間させてから、走行用ジャッキ4を伸長させて、前記反力部3の係合抵抗で補強用リブb3との衝突を回避しながら床版押上げ用ジャッキ機構6を備えた横梁1を、補強用リブb3を避けてコンクリート床版B1の長手方向に走行させる(図6(b)(図8(b)))。
【0039】
補強用リブb3を避けて横梁1を走行させた後、図6(c)(図8(c))に示すように第1開閉ジャッキ37を伸長し、ポストガイド部57を90度逆回動させてから、内外の支持ブラケット7、7の盛り替え用ジャッキ27、27をジャッキアップしてピストンロッド27aを下フランジb2上面に係合し扛上させて反力部3を構成し、それによって内外の走行用支持ブラケット8、8先端の水平部18aと、支持アーム58を下フランジb2上面から浮上させる。
【0040】
そして、その反力部3を係合抵抗として、走行用ジャッキ4を収縮することによって、長手方向両端に支持ブラケット7、7を備えた走行軌条2が前記軌条支持ブラケット51でガイドさせて横梁1と同方向に走行する図6(d)(図8(d))。
そして、盛り替え用ジャッキ27、27をジャッキダウンして、図6(a)(図8(a))に示す初期状態に戻し、図6(b)(図8(d))、図6(c)(図8(c))、図(d)(図8(d))を繰り替えして作業用足場5を有する橋梁用移動用走行装置Aを、板桁b1をレール手段にして走行用ジャッキ4のストローク宛走行させることができる。
【0041】
図7は、補強用リブb3を避けて走行軌条2を走行させる状態を示し、走行用ジャッキ4を収縮させる前に第2開閉ジャッキ38を収縮し、ポスト48を90度回動させて内外の走行用支持ブラケット8、8先端の水平部18aと、支持アーム58をウェブb1’内外側から突設する補強用リブb3の正面視域から外れる位置まで離間させた後、盛り替え用ジャッキ27、27をジャッキアップしてピストンロッド27a、27aを下フランジb2上面に係合し扛上させて反力部3を構成してから、走行用ジャッキ4を収縮することによって、走行軌条2を、補強用リブb3を避けて走行させることができる。
【0042】
コンクリート床版B1は、適宜間隔をおいて開孔されている孔10に配置される板桁b1の上フランジb4に立設するスタッドボルト100を隠すようにその孔10にコンクリート材(打設材)200を打設して板桁b1に固定されている。
【0043】
そして、コンクリート材200をハツった後、図9に示すようにハツリ残し近傍に床版押上げポスト47が位置するように横梁1を前記のように下フランジb2に沿って走行させる。
次に、床版押上げポスト47を、上端の押上げ実行体47bがコンクリート床版B1の裏面に接近するように人為的に高さ調整して、抜き差しピン9でその高さに保持してから、操作ハンドル47b’を回転操作して押上げ実行体47bをコンクリート床版B1の裏面に当接するように微調整し、盛り替え用ジャッキ27を、下フランジb2上面を係合面とするようにジャッキアップさせて横梁1と共に床版押上げポスト47を押上げることによって、コンクリート床版B1と上フランジb4との接着を剥して、その床版B1の張替えが行えるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本実施の形態橋梁用移動走行装置の使用状態を示す正面図で一部切欠して示す。
【図2】同橋梁用移動走行装置の拡大平面図で、一半部を示す。
【図3】図2の拡大側面図。
【図4】図2の(4)−(4)線断面図。
【図5】図2の(5)−(5)線断面図。
【図6】橋梁用移動走行装置において横梁の支持ブラケットがウェブに設けた補強用リブを避けて走行する状態を、図2の長孔状の二点鎖線の部分を抽出して示し、(a)は、内外の支持ブラケットをウェブに設けた補強用リブの正面視域から外れる位置まで離間させた状態を、(b)は、走行用ジャッキを伸長して補強用リブとの衝突を回避して横梁を走行させた状態を、(c)は、盛り替え用ジャッキをジャッキアップして反力部を変更する状態を、(d)は走行用ジャッキを収縮して走行軌条を走行させる状態を各々示している。
【図7】橋梁用移動走行装置において走行軌条の走行支持ブラケットがウェブに設けた補強用リブを避けて走行する状態を、図2の長孔状の二点鎖線の部分を抽出して示し、(a)は、走行軌条の走行用支持ブラケットをウェブに設けた補強用リブの正面視域から外れる位置まで離間させた状態を、(b)は、走行用ジャッキを収縮して走行軌条を走行させる状態を各々示している。
【図8】橋梁用移動走行装置の走行状態を示す側面図で、(a)は、図6(a)、(b)は、図6(b)、(c)は、図6(c)(d)は、図6(d)に各々対応して示す。
【図9】押上げ用ジャッキ機構の正面図で一部切欠して示し、(a)は、高さ調整前の状態を示す、(b)は、高さ調整後の状態を示す、(c)は、押上げ実行体を回転操作して微調整した状態を示す。
【符号の説明】
【0045】
A:橋梁用移動走行装置 B:橋梁
B1:床版(コンクリート床版) 1:横梁
b1:板桁 2:走行軌条
7:係止部(横梁側係止部、支持ブラケット)
8:係止部(軌条側係止部、走行用支持ブラケット)
b1’:ウェブ b2:下フランジ
b4:上フランジ 4:走行用ジャッキ
27:盛り替え用ジャッキ b3:補強用リブ
5:作業用足場 6:押上げ用ジャッキ機構
27a:ピストンロッド(盛り替え用ジャッキのピストンロッド)
57:ポストガイド部 9:抜き差しピン
47:床版押上げポスト 47b:押上げ実行体
3:反力部 10:孔
200:打設材(コンクリート材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁下方で橋梁短手方向を向いて配置した横梁に、左右の板桁の長手方向各々に沿う走行軌条をスライド可能に貫挿し、走行軌条に設けた係止部の板桁下フランジ上面との係合と、横梁に設けた係止部の同下フランジ上面との係合との交互係合で反力部を形成し、横梁と係止部を備えた走行軌条とを走行用ジャッキで連絡して、下フランジに対する支持を、前記交互係合による反力部と、伸長、収縮する前記走行用ジャッキのその各作動とによる横梁、走行軌条への交互盛り替えで行うようになし、前記両係止部を前記板桁のウェブに対して水平方向に接近・離間するように移動可能に形成して、前記盛り替え時において、ウェブに間隔をおいて設けられている補強用リブとの衝突回避を非係合状態の係止部のウェブからの離間方向への水平移動で防止することを特徴とする橋梁用移動走行装置。
【請求項2】
橋梁下方で橋梁短手方向を向いて配置した横梁に、左右の板桁の下フランジ上面に係合する支持ブラケットを設け、前記横梁をスライド可能に貫挿して前記板桁の長手方向に沿って設けた平行な左右の走行軌条に、前記下フランジ上面に係合する走行用支持ブラケットを前記支持ブラケットに対して板桁の長手方向に前後関係をもって配置し、前記横梁と、走行用支持ブラケットを備えた走行軌条とを走行用ジャッキで連絡すると共に前記支持ブラケット、走行用支持ブラケットを、その一方に盛り替え用ジャッキを設けてジャッキアップ時にその盛り替え用ジャッキが下フランジ上面に係合し且つそのジャッキダウン時に他方が下フランジ上面に係合するように構成して、前記下フランジに対する支持を、前記交互係合による反力部と、伸長、収縮する前記走行用ジャッキのその各作動とによる支持ブラケット、走行支持ブラケットへの盛り替えで交互に行うようになし、前記支持ブラケット、走行支持ブラケットを前記板桁のウェブに対して水平方向に接近・離間するように水平移動可能に形成し、その盛り替え時において、ウェブに間隔をおいて設けられている補強用リブとの衝突回避を下フランジ上面に対する非係合状態の走行用支持ブラケット、支持ブラケットのウェブからの離間方向への水平移動で防止することを特徴とする橋梁用移動走行装置。
【請求項3】
前記走行軌条または横梁に作業用足場を連結したことを特徴とする請求項1または2記載の橋梁用移動走行装置。
【請求項4】
前記横梁に床版を押上げる押上げ用ジャッキ機構を備えたことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の橋梁用移動走行装置。
【請求項5】
前記押上げ用ジャッキ機構は、前記板桁の下フランジ上面にピストンロッドを突き当てて上昇するジャッキ本体と、横梁に設けられて前記ジャッキ本体をウェブに対して水平方向に接近・離間するように移動可能に連結するポストガイド部と、そのポストガイド部に抜き差しピンで段階的に高さ調整可能に案内する床版押上げポストとを備えていることを特徴とする請求項4記載の橋梁用移動走行装置。
【請求項6】
前記横梁に床版を押上げる押上げ用ジャッキ機構を備え、前記押上げ用ジャッキ機構は、板桁の下フランジ上面にピストンロッドを突き当てて上昇する盛り替え用ジャッキと、横梁に設けられてその盛り替え用ジャッキをウェブに対して水平方向に接近・離間するように移動可能に連結するポストガイド部と、そのポストガイド部に抜き差しピンで段階的に高さ調整可能に案内する床版押上げポストとを備えていることを特徴とする請求項2記載の橋梁用移動走行装置。
【請求項7】
前記床版押上げポストの上端に押上げ実行体を螺嵌したことを特徴とする請求項5または6記載の橋梁用移動走行装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−188824(P2006−188824A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−382007(P2004−382007)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(390027513)大瀧ジャッキ株式会社 (26)
【Fターム(参考)】