説明

橋構造

【課題】最短距離でない対岸の間を連結する場合に、邪魔になることなく、また、無効領域を無駄に形成することなく、さらに、自然破壊の少ない方式で、簡易かつ安価に設置することのできる橋構造を提供すること。
【解決手段】対岸p、fの間に挟まれている延在空間を横断する形態で連結する橋構造であって、前記延在空間に沿う前記対岸間の最短距離よりも橋で連結する箇所p1、f1の間の離隔距離が長い場合に、前記対岸fの前記連結箇所f1に連結されて該最短距離に配設されている横断橋11と、前記対岸pに沿って前記横断橋と前記連結箇所p1とを繋げる沿橋12と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋構造に関し、詳しくは、最短距離の対岸からずれている箇所の間を最適な経路で横断させることのできるものに関する。
【背景技術】
【0002】
河川や海が間に存在していたり、崖になっている箇所では、その対岸の間を横断可能にする場合、その対岸間が最短距離となる位置に橋を設置するのが一般的である(例えば、特許文献1、2)。この特許文献1、2に記載の発明は、人などが渡る際に利用する橋の構造であり、直線的に横断する構造に設計するのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−72808号公報
【特許文献2】特開2008−223291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、送電線などが対岸間を横断する必要がある場合には、(1)鉄塔などを立てて送電線を架線する方式、(2)川底などに送電線を沈める方式、(3)川底などの下にトンネルを設けて送電線を通す方式、(4)特許文献1、2に記載のような既設の橋に送電線を追加支持してもらう方式、(5)上述の構造の専用橋を新規に設置する方式、などが考えられる。
【0005】
しかるに、上記の各方式のいずれも一長一短があり、(1)架線方式では、海風や雨雪や日光などの自然環境に暴露されている状態であることから、劣化による事故や、往来する重機の接触事故などの可能性が他の方式よりも高い。また、この方式では、景観や風騒音や電波障害などにより周辺住民の同意を得ることが難しく、また、用地確保が困難で大規模な埋め立てが必要になる場合がある。
【0006】
(2)沈設方式では、船舶の錨などの川底などに至る部材により損傷する可能性があり、損傷した場合の復旧には特殊構造であるために時間がかかり、電力の供給先への影響が大きく、また、短期間ではあるが設置工事による環境破壊もある。
【0007】
(3)トンネル方式では、地盤や地層等を考慮すると、地下水位以下での工事になるため、工事に支障が出ないように薬液を使用する必要があり、水質汚染に繋がる可能性がある。また、この方式では、他の工作物との干渉の可能性があり、その干渉を回避するための余分な工事が必要になる場合がある。
【0008】
(4)既設橋への追加支持方式では、設計時に想定されていないことから、耐震基準などを満たすためには、その橋の補強が必要になり、その橋の改修などにより停電させる必要が生じる場合がある。また、この方式では、その橋のルート変更に伴って最初から設置工事をしなければならない場合もあり、さらに、その既設の橋までのルート確保も必要になり、上述の方式のいずれかを利用しなければならない場合もある。
【0009】
(5)新規専用橋方式では、その送電線を横断させる対岸の連結箇所(横断端部)が最短距離に位置する場合には上記のような問題も少なく最適な横断方式であるが、その対岸の最短距離の位置には既に他の構造物が構築されていて連結箇所として設定することができない場合がある。この場合には、その連結箇所として設定可能な位置の対岸間を斜めに横断する構造になり、例えば、河川を横断する場合には、距離が長くなるために橋脚が増加して洪水時の水の流れや船舶の航行に与える影響が大きく、また、既設の橋などの構造物の関係から斜行する橋と対岸との間の領域が利用し難くなるなどの無効領域(所謂、死に水域)となって補償問題となる場合がある。
【0010】
そこで、本発明は、最短距離でない対岸の間を連結する場合に、邪魔になることなく、また、無効領域を無駄に形成することなく、さらに、自然破壊の少ない方式で、簡易かつ安価に設置することのできる橋構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する橋構造の発明は、対岸の間に挟まれている延在空間を横断する形態で連結する橋構造であって、前記延在空間に沿う前記対岸間の最短距離よりも橋で連結する箇所の間の離隔距離が長い場合に、該最短距離に配設されている横断橋と、前記対岸に沿って前記横断橋と前記連結箇所とを繋げる沿橋と、が連結されており、前記対岸の前記連結箇所の一方に前記横断橋が連結されているとともに他方に前記沿橋が連結、あるいは、前記対岸の前記連結箇所の双方に前記沿橋が連結されていることを特徴とするものである。
【0012】
この発明では、対岸間の最短距離に横断橋が設置されて、その横断橋に沿橋が繋げられて、その横断橋または沿橋が対岸の連結箇所に連結される。したがって、対岸間の連結箇所を直線的に横断して最短距離となる構造にすることにより、無駄に対岸間の橋脚を多くすることを回避するとともに、また、対岸との間に無効領域(所謂、死に水域)となる領域を作ってしまうことなく、簡易な構造で対岸間を横断する橋を安価に新設することができる。
【発明の効果】
【0013】
このように本発明によれば、対岸の連結箇所を繋ぐように横断橋と沿橋を設置するだけで、周辺に与える影響が少なくなるように対岸間の最短距離を横断して、所望の連結位置までその対岸に沿橋を沿わせて連結することができる。したがって、各種方式による欠点を解消しつつ、横断橋と沿橋の簡易な構造で安価に横断可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る橋構造の一実施形態を示す図であり、その設置箇所を説明する平面図である。
【図2】その全体構成を示す平面図である。
【図3】その要部構造を示す縦断面図である。
【図4】その要部構造を示す立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態としては、上記の課題解決手段のように、対岸の間に挟まれている延在空間を横断する形態で連結する橋構造であって、前記延在空間に沿う前記対岸間の最短距離よりも橋で連結する箇所の間の離隔距離が長い場合に、該最短距離に配設されている横断橋と、前記対岸に沿って前記横断橋と前記連結箇所とを繋げる沿橋と、が連結されており、前記対岸の前記連結箇所の一方に前記横断橋が連結されているとともに他方に前記沿橋が連結、あるいは、前記対岸の前記連結箇所の双方に前記沿橋が連結されていることを基本構成とするのに加えて、次の構成を備えてもよい。
【0016】
第1の形態としては、前記横断橋および前記沿橋は、内部に送電線を収納するハウジング形状に形成されていてもよい。
【0017】
この形態では、(1)架線方式、(2)沈設方式、(3)トンネル方式、(4)既設橋への追加支持方式のいずれでもなく、(5)新規専用橋方式により、対岸間の最短距離に設置する横断橋内や対岸に沿う沿橋内に送電線などを収納することができ、雨水の浸入や日光の照射などの自然環境に暴露されて早期に劣化してしまうことを回避することができるとともに、内部の送電線などの存在を不必要に知られて悪戯されてしまうことを回避することができる。
【0018】
第2の形態としては、前記沿橋は、前記対岸に立つ人の目線以上の高さに設置されていてもよい。
【0019】
この形態では、内部に送電線などを収納するハウジング形状を、横断橋や沿橋を対岸の人の目線以上の高さに設置することができ、その内部を容易に覗き込むことができないようにすることができる。
【0020】
第3の形態としては、前記横断橋および前記沿橋は、天井面および前記対岸に近接して目視可能な面以外の少なくとも一面以上に給排気可能な開口が形成されていてもよい。
【0021】
この形態では、天井面からの雨水の浸入や日光の照射をなくして、また、対岸側などの目視可能な面から内部が見えてしまうことを制限するとともに、それ以外の面から内部空気の循環を促すことができる。したがって、自然環境による送電線などの早期の劣化や、内部の送電線などの悪戯をより確実に回避する環境にすることができるとともに、送電や日光により温度の上昇する内部空気を排気して温度上昇により送電に支障が出てしまうことを回避することもできる。
【0022】
第4の形態としては、前記横断橋および前記沿橋は、風上側から風下側に向かって上昇する方向に傾斜する天井面を有していてもよい。
【0023】
この形態では、風上からの風圧を傾斜する天井面で受けて逃がすことができ、風力による負荷を浮き上がる方向ではなく下方に加えて押さえることができる。また、雨水などが天井側に溜まってしまうことなく流すことができる。
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1〜図4は本発明に係る橋構造の一実施形態を示す図である。
【0025】
図1において、橋10は、道路Sなどが敷設されている一般の地域P側から工場の敷地F内に送電線D(図3を参照)を引き込む専用橋であり、一般地域Pと工場敷地Fの河川Rを挟む対岸p、f間の空中(延在空間)を横断して送電線Dを設置可能な経路を連結している。
【0026】
橋10は、対岸p、f間の最短距離となる箇所同士を連結する経路に設置するのが最適である。しかるに、一般地域Pの対岸pの陸地側には、コンクリート製の排水路のカルバートボックスCが埋設されているために、送電線DはカルバートボックスCの出口に隣接する突端地p1から引き出すしかない。また、河川Rには、一般地域Pと工場敷地Fとの間を車両や人が行き来可能な一般橋B1や、石油輸送パイプの設置されている専用橋B2がその河川Rに沿う対岸p、f間の最短距離となる箇所付近に既に設置されていることから、一般地域Pの突端地p1からその隣接箇所f1に送電線Dを引き込むのが敷設可能で最も短い架設距離となるが、対岸p、f間の最短距離に架設する場合よりも連結箇所間の離隔距離が長くなることから、橋10は屈曲する形態にして設置されている。
【0027】
具体的には、橋10は、河川Rの専用橋B2に隣接する対岸p、f間の最短距離となる隣接箇所f1に架設して連結する横断橋11と、河川RのカルバートボックスCの出口に隣接する突端地p1から対岸pに沿って一般橋B1側(隣接箇所f1側)に向かう沿橋12と、を連結することにより構築されている。
【0028】
横断橋11と沿橋12は、略直角に屈曲する状態で連結することから、図2に示すように、それぞれの隣接箇所f1と突端地p1から離隔する屈曲箇所でも送電線Dを緩やかに湾曲させて挿通させることができるように三角連結部13が設けられて連結されている。また、横断橋11と沿橋12は、隣接箇所f1と突端地p1の連結箇所では片持ち支持されており、横断橋11は、短いことから河川Rの中間に橋脚を配置することなく、沿橋12に連結される一方、その沿橋12は、長い距離で対岸pに沿わせていることから、横断橋11との屈曲箇所の三角連結部13と共にその途中の均等2箇所に橋脚14を設置して支持させるようになっている。なお、本実施形態では、河川Rの対岸f側の隣接箇所f1に横断橋11を直接連結しているが、対岸p側のように横断橋11が隣接箇所f1に直接連結できない場合には、その対岸f側にも沿橋12を設置して横断橋11に連結するようにすればよい。
【0029】
これにより、橋10は、河川Rを実質的に横断するのは最短距離の横断橋11のみにして対岸p、fの隣接箇所f1と突端地p1とを連結することができ、河川R内に無駄に橋脚14を設置することなく、また、対岸p、fとの間に無効領域(所謂、死に水域)となる領域を作ってしまうことを回避することができるとともに、後述するように、横断橋11と沿橋12を簡易なハウジング15(図4を参照)で作製するとともに橋脚14で支持するだけなので安価に架設することができる。
【0030】
橋10の横断橋11と沿橋12は、図3に示すように、橋脚14の頂部に載置されて支持されているハウジング15内に送電線Dを収納して一般地域P側対岸pの突端地p1から工場敷地F側の対岸fの隣接箇所f1に延長することにより電力供給を可能にしており、橋脚14は、一般地域Pの対岸pや一般橋B1、専用橋B2から人Mが乗ることができない程度以上に離隔するとともに、その対岸pの堤防Tや一般橋B1、専用橋B2に立つ人Mの頭部mの位置程度以上にハウジング15が位置するように設定されている。
【0031】
これにより、橋10は、ハウジング15を関係者以外の人Mの目線以上の高さにして対岸pなどから内部を覗き込むことができないようにしており、そのハウジング15を開けてメンテナンス等を行う場合でも、内部の送電線Dが人Mの目に晒されるのを制限することができ、送電線Dに対して何かをしようという気が起きることを未然に回避することができる。
【0032】
また、ハウジング15は、送電線Dを挿通設置する内部空間が長方形の縦断面形状になるように底板21、側板22、23、天板24がフレーム20に固定されて形状維持するように作製されており、対岸pや一般橋B1、専用橋B2側の側板23や、天板24以外の、すなわち、少なくとも底板21に、また、対岸fなどから遠隔している場合の側板22に、パンチングメタルを選択して作製することにより内部空間の空気が外気と効率よく循環可能になっている。
【0033】
さらに、ハウジング15は、天板24が河川R上の風を受ける側板22側から反対側の側板23に向かって上昇する傾斜面24aと、その側板23を延長して傾斜面24aに連続する延長面24bとを備える縦断面三角形状に形成されている。
【0034】
これにより、ハウジング15は、対岸pなどから内部が見えてしまうことを制限しつつ内部に日光が差し込んで送電線Dを早期に劣化させてしまうことを回避するとともに、天板(天井面)24の表面で雨水を溜まることなく確実に流してハウジング自体が劣化してしまうことも回避することができる。
【0035】
また、このハウジング15は、送電線Dに流れる電流により温度上昇する内部空間の空気を底板21や側板22のパンチングメタルの複数の開口穴を介して外気と循環させることができるとともに、その開口穴からは河川R上を流れる風(外気)を内部に進入させて排気・循環させることができ、内部空間が送電線Dの送電に支障が生じるほどの高温になってしまうことを回避することができる。
【0036】
さらに、ハウジング15は、天板24が河川R側から上昇する傾斜面24aを備えているので、風上からの風圧を傾斜する天板24の傾斜面(天井面)24aで受けて逃がすことができ、浮き上がってしまう力となってしまうことなく、下方に押さえて安定する状態に作用させることができる。
【0037】
このように本実施形態においては、対岸pの突端地p1に沿橋12を連結するとともに対岸fの隣接箇所f1に横断橋11を連結して繋ぐだけで、対岸p、f間の最短距離を横断橋11で横断して無効領域にするなどの周辺に与える影響を少なくするとともに、所望の連結位置まで沿橋12を対岸pに沿わせて連結することができる。したがって、上述した、(1)架線方式、(2)沈設方式、(3)トンネル方式、(4)既設橋への追加支持方式のいずれでもなく、(5)新規専用橋方式を採用して、屈曲させただけで簡易な構造の横断橋11と沿橋12のハウジング15内に送電線Dを収納して河川Rを横断させることができる。この結果、橋10は、安価かつ安全に、また、劣化少なく、また、容易にメンテナンス可能に、環境破壊を少なく短期間に設置して、送電線Dを架線することができ、工場敷地F内に電力供給することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0039】
10……橋 11……横断橋 12……沿橋 13……三角連結部 14……橋脚 15……ハウジング 20……フレーム 21……底板 22、23……側板 24……天板 24a……傾斜面 24b……延長面 B1……一般橋 B2……専用橋 C……カルバートボックス D……送電線 F……工場敷地 f、p……対岸 f1……隣接箇所 M……人 m……頭部 P……一般地域 p1……突端地 R……河川 S……道路 T……堤防

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対岸の間に挟まれている延在空間を横断する形態で連結する橋構造であって、
前記延在空間に沿う前記対岸間の最短距離よりも橋で連結する箇所の間の離隔距離が長い場合に、該最短距離に配設されている横断橋と、前記対岸に沿って前記横断橋と前記連結箇所とを繋げる沿橋と、が連結されており、
前記対岸の前記連結箇所の一方に前記横断橋が連結されているとともに他方に前記沿橋が連結、あるいは、前記対岸の前記連結箇所の双方に前記沿橋が連結されていることを特徴とする橋構造。
【請求項2】
前記横断橋および前記沿橋は、内部に送電線を収納するハウジング形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の橋構造。
【請求項3】
前記沿橋は、前記対岸に立つ人の目線以上の高さに設置されていることを特徴とする請求項2に記載の橋構造。
【請求項4】
前記横断橋および前記沿橋は、天井面および前記対岸に近接して目視可能な面以外の少なくとも一面以上に給排気可能な開口が形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の橋構造。
【請求項5】
前記横断橋および前記沿橋は、風上側から風下側に向かって上昇する方向に傾斜する天井面を有することを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の橋構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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