説明

橋脚の建て替え方法

【課題】工期の短縮とコスト縮減を図ることができるほか、施工に際して高い安全性を確保することができる橋脚の建て替え方法を提供することを目的とする。
【解決手段】建て替え対象となる既存の橋脚5に隣接した位置に、当該既存の橋脚5を挟み込むように、橋軸方向両側に新規橋脚10a,10bを建て、それらの新規橋脚10a,10bによって橋梁の上部構造2が支持される状態とした後、既存の橋脚5を撤去することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路橋等の橋梁の上部構造(主桁、主構、床版等)を支持する既存の橋脚を、新規のものに建て替えるための工法に関し、特に、橋梁の上部構造を架け替えることなく、橋脚のみを建て替える方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の橋梁において、橋脚が老朽化した場合や、事後的に耐震性能を向上させる必要が生じたような場合、或いは、道路を拡幅しようとする場合において、既存の橋脚では対応できないような場合に、橋梁自体を架け替えるのではなく、橋脚のみを、新規のものに建て替えるという工事が実施されている。
【0003】
橋脚の建て替え工事を行う場合、まず、建て替えの対象となる既存の橋脚に近接した位置に、当該橋脚の代わりに橋梁の上部構造を支持するための仮設ベントを構築する。次に、仮設ベントによって橋梁の上部構造を支持できるような状態としたうえで、当該既存の橋脚を解体し、撤去する。そして、同じ場所に新たに橋脚を建設し、橋梁の上部構造を、その新たに建設した橋脚に支持させ、その後、仮設ベントを解体し、撤去する。
【特許文献1】特開平10−121416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来方法による場合、最終的に仮設ベントを撤去する必要があるなど、工程数が多く、短期間で施工することができないという問題がある。このため、より短期間、低コストで実施でき、施工時の地震時リスク回避ができる施工方法が従来より求められていた。
【0005】
特に、なるべく通行止めとせずに、一般車両を通行させながら建て替え工事を行おうとする場合、仮設ベントの性能(耐震性、安全性等)や、基礎の構造についても、永久構造物と同等とする必要があるため、一般的な仮設構造物に比べ、非常にコスト高となる。また、仮受けをする支承が永久構造物と同等のコストとなり、工事後は売却、或いは、全損となる。更に、仮設ベントを設置する際と撤去する際には、多少なりとも通行止めを行わなければならず、交通渋滞を招き、渋滞社会的損失が大きい。また、仮設ベントの占用面積が大きく、高架橋の下に街路がある場合には、街路の交通規制の期間が長く、渋滞社会的損失が大きい。
【0006】
尚、橋脚には様々なタイプのものがあり、T字形状をした一般的なタイプの橋脚のほか、上部構造を上下2層に支持する、「ラケット型」と呼ばれる橋脚も存在しているが(図1参照)、ラケット型の橋脚の場合、上層の上部構造を支持するため仮設ベントが大掛かりとなり、占用面積が大きくなってしまうため、一般車両を通行させながら建て替え工事を行うことは非常に困難である。従って、ラケット型の橋脚に関して建て替え工事が行われたという事例は過去に存在しない。
【0007】
本発明は、かかる従来技術の問題を解決すべくなされたものであって、ベント(上部構造を支持する構造物)を安全性が高く、安価なものとすることができ、工事に伴う交通規制(通行止め、車線規制)を最小限に抑えることができ、建設副産物、廃材を少なくすることができるほか、常設の仮設構造物の占用面積を小さくすることができる橋脚の建て替え方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の橋脚の建て替え方法は、建て替え対象となる既存の橋脚を挟み込むように、橋軸方向両側に新規橋脚を一つずつ建て、それらの新規橋脚によって橋梁の上部構造が支持される状態とした後、前記既存の橋脚を撤去することを特徴としている。
【0009】
尚、この橋脚の建て替え方法は、特に、上部構造を上下2層に支持するラケット型の橋脚を対象とする建て替え工事において好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の橋脚の建て替え方法によれば、従来方法と比べ、短期間で施工することができ、施工コストも縮減できる。また、常時、地震時などの想定される荷重状態に対して、施工時においても現況以上の安全性が確保することができ、施工時に大規模地震が発生しても、安全性を確保することができる。
【0011】
更に、高架道路の交通規制を最小限に抑えることができ、また、設置する橋脚の形状を既設橋脚と同形状とすることができるため、柱基部の占用面積を小さくすることができ、路下の施工ヤードを広く確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面に沿って、本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は、主桁3及び床版4からなる上部構造2と、これを支持する橋脚5からなる道路橋1の構成例を示す図であり、図2〜4は、本発明の第1の実施形態に係る「橋脚の建て替え方法」を、図1の道路橋1に適用した場合における説明図である。尚、上部構造2は、図1〜4においては、説明の便宜上、一部(各図中右手前側)が省略されている。
【0013】
本実施形態に係る方法によって橋脚5(既存の橋脚)を新しいものに建て替える場合、上部構造2を支持するための仮設ベントを構築する必要はなく、図2に示すように、既存の橋脚5に隣接した位置、より詳細には、橋軸方向(道路橋1の長手方向)側へ隣接した位置に、新規橋脚の脚柱6aを設置する。更に、一方側のみならず、既存の橋脚5を挟んでその反対側にも、新規橋脚の脚柱6bを設置する。つまり、本実施形態においては、既存の橋脚5を中心として、これを挟み込むように、橋軸方向両側に、新規橋脚の脚柱6a,6bをそれぞれ一つずつ設置する。
【0014】
そして、図3、図4に示すように、各脚柱6a,6bの上方へ、下層梁7a、側柱8a,8b,8c、上層梁9a,9bを設置する。このようにして、既存の橋脚5を挟み込むように、橋軸方向両側に、新規橋脚10a,10bを設置したら、上層梁9a,9b、及び、下層梁7aの上面に支承を設置し、それらの支承を介して、上部構造2が新規橋脚10a,10bによって支持される状態とする。そして最後に、既存の橋脚5を撤去する。新規橋脚10a,10bと支承は、永久構造物とする。
【0015】
尚、新規橋脚10a,10bの基礎は、既存の橋脚5の基礎を利用する。但し、耐力が不足している場合には、基礎を適宜増設する。また、既存の橋脚5の上層梁を撤去する場合、その両側の新規橋脚10a,10bの上層梁9a,9bを利用して引き出すことにより、作業を容易に、安全に行うことができる。
【0016】
尚、本実施形態においては、図1に示したような道路橋1(上下二段に構成された上部構造と、それらのいずれをも支持できるように、梁が二段構成となっているラケット型の橋脚とからなる道路橋)に対して本発明に係る方法を適用した場合について説明したが、このような構造の道路橋のみならず、上部構造及び梁がいずれも一段の道路橋、鉄道橋等をはじめとして、あらゆる構造の橋梁に対して適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】上部構造2(主桁3及び床版4)と、これを支持する橋脚5からなる道路橋1の構成例を示す図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る「橋脚の建て替え方法」を、図1の道路橋1に適用した場合における説明図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る「橋脚の建て替え方法」を、図1の道路橋1に適用した場合における説明図。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る「橋脚の建て替え方法」を、図1の道路橋1に適用した場合における説明図。
【符号の説明】
【0018】
1:道路橋、
2:上部構造、
3:主桁、
4:床版、
5:既存の橋脚、
6a,6b:脚柱、
7a:下層梁、
8a,8b,8c:側柱、
9a,9b:上層梁、
10a,10b:新規橋脚、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建て替え対象となる既存の橋脚を挟み込むように、橋軸方向両側に新規橋脚を一つずつ建て、それらの新規橋脚によって橋梁の上部構造が支持される状態とした後、前記既存の橋脚を撤去することを特徴とする橋脚の建て替え方法。
【請求項2】
前記既存の橋脚、及び、前記新規橋脚が、いずれもラケット型の橋脚であることを特徴とする、請求項1に記載の橋脚の建て替え方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−303698(P2008−303698A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289342(P2007−289342)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(505389695)首都高速道路株式会社 (47)
【出願人】(396007890)大日本コンサルタント株式会社 (9)
【Fターム(参考)】