橋脚の構築方法
【課題】プレキャストコンクリートにより形成された型枠を用い、断面形状が矩形で内部に空間を有する橋脚を効率よく構築する。
【解決手段】橋脚の周方向に複数に分割されて橋脚の外周面を形成するプレキャストコンクリートからなるプレキャスト外型枠16,18と、橋脚の中空となった内周面を形成するプレキャスト内型枠17,19とを間隔をおいて対向させ、これらをトラス部材21で連結した型枠ユニットを形成する。プレキャスト外型枠及びプレキャスト内型枠には帯鉄筋13,14と、これらを連結する中間帯鉄筋15の両端部を埋め込んでおく。橋脚の既に形成された部分の上に型枠ユニットを載置し、橋脚の隅角部2aを除外して周方向に複数を配列する。隅角部には型枠ユニットから突き出した帯鉄筋13a,14aの延長線に沿ってU字鉄筋24を差し入れて配置する。
【解決手段】橋脚の周方向に複数に分割されて橋脚の外周面を形成するプレキャストコンクリートからなるプレキャスト外型枠16,18と、橋脚の中空となった内周面を形成するプレキャスト内型枠17,19とを間隔をおいて対向させ、これらをトラス部材21で連結した型枠ユニットを形成する。プレキャスト外型枠及びプレキャスト内型枠には帯鉄筋13,14と、これらを連結する中間帯鉄筋15の両端部を埋め込んでおく。橋脚の既に形成された部分の上に型枠ユニットを載置し、橋脚の隅角部2aを除外して周方向に複数を配列する。隅角部には型枠ユニットから突き出した帯鉄筋13a,14aの延長線に沿ってU字鉄筋24を差し入れて配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、プレキャストコンクリートからなる板状部材を型枠として用い、構築現場においてこれらのプレキャストコンクリートからなる型枠と一体となるようにコンクリートを打設して橋脚を構築する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
橋脚を構築する方法としては、形成された基礎上で鉄筋を組み立てるとともに、これらを囲むように設けられた型枠内にコンクリートを打設して構築する方法が広く採用されている。この方法では、基礎から上下方向に配置される主鉄筋を立ち上げ、主鉄筋を囲むように水平に配置されて主鉄筋を拘束する帯鉄筋、及び帯鉄筋を水平方向に連結する中間帯鉄筋等を組み立てる。そして、これらの鉄筋を囲むように型枠を設けて、この型枠内へコンクリートを打設する。
【0003】
また、プレキャストコンクリート板を型枠として使用し、これらのプレキャストコンクリート板と一体となるように構築現場でコンクリートを打設する橋脚の構築方法が、例えば特許文献1に記載されている。
この橋脚の構築方法は、断面が中空となった橋脚を構築するものであり、プレキャストコンクリートからなる内型枠及び外型枠を使用して、所定の高さごとにこれらの間にコンクリートを打設するものである。上記内型枠及び外型枠は橋脚の周方向に複数に分割されており、それぞれには主鉄筋を拘束する帯鉄筋を埋め込むとともに主鉄筋が仮支持されている。そして、これら内型枠及び外型枠を橋脚の基礎上又は橋脚の既に形成された部分の上で、周方向にほぼ連続するように配列する。隣接した内型枠又は外型枠に取り付けられた帯鉄筋は、隣接する内型枠間又は外型枠間で接続するとともに、仮支持された主鉄筋を下方の施工済みの橋脚又は基礎から突き出した主鉄筋に接合する。その後、内型枠及び外型枠で囲まれた空間内にコンクリートを打設し、内型枠、外型枠、主鉄筋、帯鉄筋を一体とする。コンクリートの硬化後、この硬化した橋脚の上部に、同様に内型枠及び外型枠を配列し、帯鉄筋及び主鉄筋を接合する工程、コンクリートを打設する工程を繰り返し、橋脚を上方に立ち上げて構築するものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−232212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、構築現場において主鉄筋や帯鉄筋の組立て及び接合、型枠の組み立て、脱型及び撤去等を行う構築方法では、構築現場で行う作業が多く、構築に要する期間が長くなってしまう。また、このような作業を行うために大掛かりな足場等の組立てが必要となり、作業効率が悪く、コストも高くなる。
【0006】
一方、特許文献1に記載の技術では、橋脚の外周面を形成するための外型枠と中空となった内周面を形成するための内型枠とを、所定の間隔で対向するように支持するとともに、これらに埋め込まれている帯鉄筋の双方に両端が係止された中間帯鉄筋を配置しなければない。帯鉄筋は、図16に示すようにプレキャストコンクリートからなる内型枠101と外型枠102に埋め込んでおくのが作業の効率化のために望ましく、このように帯鉄筋103がプレキャストコンクリートに埋め込まれていると、中間帯鉄筋104は両端部を分離して、それぞれ内型枠101と外型枠102の製作時にコンクリート中に埋め込んでおく必要がある。そして、構築現場においては内型枠101と外型枠102とを別個に吊り上げ、対向するように配置した後に、これらの間で中間帯鉄筋104を接続しなければならない。このとき分割された中間帯鉄筋104を一ヶ所で接続するためには端面を正確に突き合わせる必要があり、接続が難しくなる。このため、図16に示すように、長さを調整した短い鉄筋106を介在させ、二ヶ所に継ぎ手105を設けて接続することになる。したがって、中間帯鉄筋を接続するための作業量が多くなってしまう。
【0007】
また、プレキャストコンクリートからなる内型枠及び外型枠を現場に配列した後に、隣接して配置された内型枠又は外型枠に埋め込まれた帯鉄筋を接合するときにも、機械継ぎ手で全ての帯鉄筋を連結するために双方の内型枠又は外型枠から突き出した帯鉄筋の端面を正確に突き合わせることは難しい。さらに、上下に複数が配置された帯鉄筋のそれぞれの接続位置が、帯鉄筋の軸線方向において同じ位置となる。つまり、接続位置が上下に並ぶことになって、欠陥のないコンクリート部材を形成するために望ましくない。
【0008】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、プレキャストコンクリートにより形成された型枠を用い、断面形状が矩形で内部に空間を有する橋脚を効率よく構築する橋脚の構築方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 プレキャストコンクリートにより形成された型枠を用い、現場で打設されたコンクリートと前記型枠とを一体として、断面形状が矩形で内部に空間を有する橋脚を構築する方法であって、 所定の高さを有し、橋脚の周方向に複数が配列されて前記橋脚の外周面を形成するプレキャストコンクリートからなるプレキャスト外型枠と、該プレキャスト外型枠と所定の間隔をあけて該プレキャスト外型枠と連結され、前記橋脚の中空となった内周面を形成するプレキャストコンクリートからなるプレキャスト内型枠と、前記プレキャスト外型枠及びプレキャスト内型枠のそれぞれに水平方向に埋設される複数の帯鉄筋と、前記プレキャスト外型枠に埋め込まれた帯鉄筋とプレキャスト内型枠に埋め込まれた帯鉄筋とを水平方向に連結する中間帯鉄筋と、を備えた型枠ユニットを製作しておき、 前記橋脚の基礎又は前記橋脚の既に形成された部分の上に、立設された主鉄筋を前記プレキャスト外型枠と前記プレキャスト内型枠との間に挿通して前記型枠ユニットを載置し、該橋脚の隅角部を除外して周方向に複数の前記型枠ユニットを配列する工程と、 前記隅角部に水平方向の鉄筋を配置するとともに、該隅角部の型枠を現場で組み立てて、前記隅角部の前記型枠内及び前記プレキャスト外型枠とプレキャスト内型枠との間にコンクリートを打設する工程とを含み、 前記型枠ユニットを配列する工程と、前記隅角部の前記鉄筋を配置し、前記型枠を組み立てる工程と、前記コンクリートを打設する工程と、を繰り返して順次に上方に立ち上げることを特徴とする橋脚の構築方法を提供する。
【0010】
この橋脚の構築方法では、予め製造される型枠ユニットには、帯鉄筋及びこの帯鉄筋を水平方向に連結する中間帯鉄筋が支持されているので、構築現場における配筋作業が低減される。そして、互いに対向して配置されるプレキャスト内型枠とプレキャスト外型枠が一体に連結されており、橋脚の構築現場で中間帯鉄筋を接続する必要がなく、コンクリートを打設する位置に型枠ユニットを効率よく設置することができる。また、隅角部ではプレキャストコンクリートの型枠を用いることなく、他の部分に型枠ユニットを配置した後においても開放された領域が設けられる。そして、隅角部において橋脚の隣り合う2つの側面が開放され、多くの主鉄筋が既に立ち上げられていても隅角部に水平方向の鉄筋を効率よく配置することができる。さらに、型枠ユニットは隅角部の両側で離れて設置されるので、上下方向に複数が配置された帯鉄筋を接続するときは、型枠ユニット間で接続する位置を交互にずらして設けることができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の橋脚の構築方法において、 前記隅角部を除外し、該隅角部の両側で隣り合うように配置された前記型枠ユニットの一方は、前記プレキャスト外型枠及び前記プレキャスト内型枠のほぼ鉛直となった端面から前記隅角部に向かってそれぞれ水平に帯鉄筋の端部を突出させておき、 他方の型枠ユニットは、前記プレキャスト外型枠及び前記プレキャスト内型枠のほぼ鉛直となった端面から前記隅角部に向かってそれぞれ水平に突き出し、前記隅角部でU字状に連続した帯鉄筋を有するものとし、 前記型枠ユニットの配列後に前記隅角部に配置する水平方向の鉄筋として、後端部がフック状に曲げ加工された2本の所定長のフック付き鉄筋を用い、前記一方の型枠ユニットの端面から突出した前記帯鉄筋の延長線に沿って該突出した帯鉄筋の端面に向かって前記フック付き鉄筋を先端から差し入れ、該フック付き鉄筋と前記一方の型枠ユニットから突出した前記帯鉄筋の端部とを接続し、 前記フック付き鉄筋のフック状に曲げ加工された部分を、前記隅角部に埋め込んで定着するものとする。
【0012】
この構築方法では、一方の型枠ユニットから端部が突き出した帯鉄筋に対して、フック付き鉄筋を開放された隅角部から差し入れて効率よく接続することができる。そして、このフック付き鉄筋は隅角部で定着され、他方の型枠ユニットから突き出してU字状に曲げ加工された帯鉄筋とともに主鉄筋の変位を有効に拘束するものとなる。また、帯鉄筋を構築現場で接続する継ぎ手の数を少なくすることができる。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の橋脚の構築方法において、 前記隅角部を除外し、該隅角部の両側で隣り合うように配置された前記型枠ユニットの一方は、前記プレキャスト外型枠及び前記プレキャスト内型枠のほぼ鉛直となった端面から前記隅角部に向かってそれぞれ水平に帯鉄筋の端部を突出させておき、 他方の型枠ユニットは、前記プレキャスト外型枠及び前記プレキャスト内型枠のほぼ鉛直となった端面から前記隅角部に向かってそれぞれ水平に突き出し、前記隅角部でU字状に連続した帯鉄筋を有するものとし、 前記型枠ユニットの配列後に前記隅角部に配置する水平方向の鉄筋として、U字状に曲げ加工されたU字鉄筋を用い、該U字鉄筋の曲げ加工された部分の両側のほぼ平行となった部分を、前記一方の型枠ユニットの端面から突出した前記帯鉄筋の該延長線に沿って該突出した帯鉄筋の端面に向かって差し入れ、該U字鉄筋と前記一方の型枠ユニットから突出した前記帯鉄筋の端部とを接続し、 前記他方の型枠ユニットから突き出した前記帯鉄筋のU字状となるように曲げ回された部分と前記U字鉄筋の曲げ回された部分とで、前記隅角部に配置された前記主鉄筋を囲むものとする。
【0014】
この構築方法では、隅角部において橋脚の外周面付近に配置された帯鉄筋と内周面付近に配置された帯鉄筋とが連続し、主鉄筋を有効に拘束することができる。そして、一方の型枠ユニットから端部が突き出した帯鉄筋に対して、U字鉄筋を効率よく接続することができ、継ぎ手を設ける位置も少なくすることができる。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3までのいずれかに記載の橋脚の構築方法において、 前記プレキャスト外型枠と前記プレキャスト内型枠とは、鋼製のトラス部材によって所定の間隔で連結したものとし、 該トラス部材は、前記プレキャスト外型枠と前記プレキャスト内型枠とに密接し、鉛直方向に軸線を有する二つの弦材と、これらを斜め方向に連結する斜材と、前記二つの弦材のそれぞれに固着されるとともにプレキャスト外型枠又はプレキャスト内型枠のコンクリート中に埋め込まれる複数のアンカーを有し、 該アンカーは、上下方向に所定の間隔をおいて水平方向に配置される前記帯鉄筋の上下方向の間隔に合わせて設け、 前記型枠ユニットの製作時において、前記帯鉄筋は前記アンカーに支持させて配置するものとする。
【0016】
この橋脚の構築方法では、型枠ユニットの製作時においては、帯鉄筋をトラス部材に支持させた状態で配置することができるので、帯鉄筋を正確かつ迅速に配置して型枠ユニットを効率よく製造することが可能となる。また、トラス部材によってプレキャスト内型枠とプレキャスト外型枠とを連結して、構築される橋脚の所定位置に配置するために吊り支持したときの相対的な変位を抑制することが可能となる。
【0017】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4までのいずれかに記載の橋脚の構築方法において、 前記中間帯鉄筋は、水平方向に所定の間隔で設けるとともに、それぞれの帯鉄筋に対して上下方向に配列して設け、両端部を前記プレキャスト外型枠及びプレキャスト内型枠に埋め込むものとし、 上下方向に配列した前記帯鉄筋の側面に、斜め方向に軸線を有する斜め部材を当接し、複数の前記中間帯鉄筋に対して結合し、 該斜め部材によって前記プレキャスト外型枠とプレキャスト内型枠との相対的な変位を拘束するものとする。
【0018】
この方法では、中間帯鉄筋によってプレキャスト内型枠とプレキャスト外型枠とを連結するとともに、斜め部材と中間帯鉄筋とプレキャスト内型枠とプレキャスト外型枠とよってトラス構造が形成される。したがって、簡単な構造でプレキャスト内型枠とプレキャスト外型枠とを相対的な変位が抑制された状態で支持することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本願発明の橋脚の構築方法では、対向して配置される2枚のプレキャストコンクリートの板状部材に帯鉄筋及び中間帯鉄筋を一体として所定の位置に配置することができるので、構築現場における鉄筋の配置や連結等の配筋作業、型枠の設置や脱型等の作業が低減され、橋脚を効率よく構築することができる。
また、隅角部を開放した状態に型枠ユニットを配列し、この開放された位置から隅角部の帯鉄筋をほぼ水平に差し入れて型枠ユニット中の帯鉄筋に接続することができる。したがって、帯鉄筋の配置を効率よく行うことができるとともに、帯鉄筋の接合箇所を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本願発明に係る方法により構築された橋脚を備える橋梁の一例を示す概略側面図及び立断面図である。
【図2】図1に示す橋脚の平断面図である。
【図3】図1及び図2に示す橋脚を構築するために用いる型枠ユニットの概略配置図である。
【図4】図3に示す型枠ユニットの立断面図である。
【図5】図3に示す型枠ユニットの平断面図である。
【図6】型枠ユニットを拡大して示す立断面図及び平断面図である。
【図7】型枠ユニットを製作する方法を説明するための概略立断面図及び概略平断面図である。
【図8】橋脚の隅角部に帯鉄筋を配置する方法を示す概略平断面図である。
【図9】ほぼ長方形となった橋脚断面の長辺部分と隔壁との接合部に帯鉄筋を配置する方法を示す概略平面図である。
【図10】型枠ユニットに用いるトラス部材の他の例及びその機能を示す概略立断面図である。
【図11】型枠ユニットのプレキャスト型枠が相対的に変位するのを抑制する手段の他の例を示す概略立断面図である。
【図12】橋脚の隅角部に帯鉄筋を配置する方法の他の例を示す概略平断面図である。
【図13】橋脚の隅角部に帯鉄筋を配置する方法の他の例を示す概略平断面図である。
【図14】ほぼ長方形となった橋脚断面の長辺部分と隔壁との接合部に帯鉄筋を配置する方法の他の例を示す概略平面図である。
【図15】ほぼ長方形となった橋脚断面の長辺部分と隔壁との接合部に帯鉄筋を配置する方法の他の例を示す概略平面図である。
【図16】本発明が解決しようとする課題の一つを説明するために示すプレキャストコンクリートの型枠の概略立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本願発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本願発明に係る方法により構築された橋脚を備える橋梁の一例を示す概略側面図及び立断面図であり、図2は、図1に示す橋脚の平断面図である。
この橋梁は、コンクリートの橋桁1を2つの橋脚2及び2つの橋台3によって支持する3径間のラーメン橋である。
【0022】
橋脚2は、鉄筋コンクリートからなり、基礎として形成されたケーソン4又は直接基礎として形成されたフーチング5上に立ち上げられている。この橋脚の断面形状は、図2に示すようにほぼ長方形で、内部に空間が設けられた中空断面となっており、中空部を2分割する隔壁が設けられている。
この橋脚2の断面内の外周面に沿った位置及び内周面に沿った位置には上下方向に主鉄筋11,12が配列され、外周面に沿った位置に配列された主鉄筋11の外側つまり外周面側には、水平方向の帯鉄筋13が上下方向に所定の間隔を設けて配置されている。また、内周面に沿った位置に配置された主鉄筋12の内周面側にも帯鉄筋14が配置されている。これらの帯鉄筋13,14は、橋脚2に大きな曲げモーメントが発生し、主鉄筋11,12に降伏点応力に近い引張応力又は降伏点応力を超える引張応力が生じた後に圧縮応力が作用したときに、主鉄筋11,12が座屈してコンクリート部材の表面から膨らみ出すのを拘束するものとして配置されている。そして、外周面に沿って配置された帯鉄筋13と内周面に沿って配置された帯鉄筋14とに両端部が係止され、帯鉄筋がコンクリート部材の表面側に押し出されるのを拘束する中間帯鉄筋15が、水平方向に所定の間隔で、上下方向に配列された帯鉄筋13,14の全てに対して配置されている。
【0023】
橋脚2は、予め設定された施工区分ごとに型枠の設置、鉄筋の配置及びコンクリートの打設を繰り返し行い、上方に所定の高さまで構築するものである。そして、型枠にはプレキャストコンクリートで形成された板状部材を外型枠及び内型枠として用い、これらを構築現場で組み立てるメタルフォーム又は合板製の型枠と組み合わせて用いる。プレキャストコンクリートの型枠は、現場で打設されるコンクリートと一体となり、橋脚の一部となるものである。
【0024】
プレキャストコンクリートで形成された型枠は、図3に示すように矩形となった断面の隅角部2aを除外し、隅角部間の外周面部分と内周面部分及び隔壁の両側面部分に用いている。
ほぼ長方形となった断面の長辺部分に用いられるプレキャストコンクリートの型枠及び短辺部分に用いられるプレキャストコンクリートの型枠は、外周面を形成するプレキャスト外型枠16,18と内周面を形成するプレキャスト内型枠17,19とが、鋼製のトラス部材21によって連結され、それぞれAタイプの型枠ユニットUA又はBタイプの型枠ユニットUBとなっている。これらの型枠ユニットは吊り上げたときにも鋼製のトラス部材21によってプレキャスト外型枠とプレキャスト内型枠との相対的な変位が抑制されるものとなっており、一体にした状態で吊り上げて所定の位置に設置することができるものである。
【0025】
上記トラス部材21は鋼からなり、図4に示すように、プレキャスト外型枠16,18のコンクリートと接触する第1の弦材21aとプレキャスト内型枠17,19のコンクリートと接触する第2の弦材21bとを有し、これらがほぼ平行となるように斜材21cによって連結したものである。上記第1の弦材21a及び第2の弦材21bには、H形鋼、L型鋼等の型鋼を用いることができ、斜材にはL型鋼又は鋼プレート等を用いることができる。また、第1の弦材21a及び第2の弦材21bにはプレキャスト外型枠16,18及びプレキャスト内型枠17,19のコンクリートと接触する面に、複数のアンカー21dが突出するように取り付けられており、プレキャスト外型枠16,18又はプレキャスト内型枠17,19となるコンクリートに埋め込まれるものとなっている。
【0026】
一方、図3に示すように、隔壁部分に用いられるプレキャストコンクリートのプレキャスト型枠20も同様に、一方の立面を形成する第1のプレキャスト型枠20aと他方の立面を形成する第2のプレキャスト型枠20bとがトラス部材21によって連結され、一体として設置することができるCタイプの型枠ユニットUCとなっている。
【0027】
ほぼ長方形となった断面の長辺部分に用いられるAタイプの型枠ユニットUAは、図3に示すように、プレキャスト外型枠16が隣り合う一方の隅角部付近から他方の隅角部付近まで一枚のプレキャストコンクリート板となっており、これと対向するプレキャスト内型枠17は2つに分割され、分割されたプレキャスト内型枠17は相互間に所定の間隔を開けてほぼ同一仮想面上に配置されている。これら2枚のプレキャスト内型枠17の間の開放された部分に隔壁が設けられる。
【0028】
プレキャスト外型枠16とプレキャス内型枠17とには、図5(a)に示すようにそれぞれ帯鉄筋13,14が外周面又は内周面に沿って水平に埋め込まれ、上下に所定の間隔を開けて高さ方向の全領域に配置されている。プレキャスト外型枠16に埋め込まれた帯鉄筋13は、プレキャスト外型枠16の水平方向における一方の端面16aから露出し、U字状に曲げ回されて、プレキャスト内型枠17の一方の端面17aから突き出した帯鉄筋14と連続している。プレキャスト外型枠16及びプレキャスト内型枠17の他方の端面16b,17bからは、帯鉄筋13,14がそれぞれ所定の長さで突き出している。また、2枚に分割されたプレキャスト内型枠17の間の開放された部分からは、プレキャスト外型枠16の帯鉄筋13に先端が係止された鉄筋22が、プレキャスト内型枠17の表面とほぼ垂直に突き出している。
【0029】
また、中間帯鉄筋15は、図6に示すようにプレキャスト外型枠16に埋め込まれた帯鉄筋13とプレキャスト内型枠17に埋め込まれた帯鉄筋14とに、それぞれ両端が係止される。中間帯鉄筋15の両端には鋼からなるプレート15aが溶接又は加熱及び加圧して圧接されており、このプレート15aを帯鉄筋13,14の上側から側面に当接し、中間帯鉄筋15とプレート15aによって帯鉄筋13,14に掛け回して係止する。そして、コンクリートの打設により中間帯鉄筋15の両端部は帯鉄筋13,14とともにプレキャスト外型枠16又はプレキャスト内型枠17となるコンクリート中に埋め込まれ、両端部の間は2つのプレキャスト型枠間で露出している。
【0030】
ほぼ長方形となった断面の短辺部分に用いられるBタイプの型枠ユニットUBは、図5(b)に示すように、プレキャスト外型枠18とプレキャスト内型枠19とが対向し、トラス部材21によって連結されている。そして、プレキャスト外型枠18とプレキャスト内型枠19とのそれぞれに帯鉄筋13,14が配置され、中間帯鉄筋15がこれらを連結するように配置される。また、Aタイプの型枠ユニットUAと同様に、水平方向における一方の端部ではプレキャスト外型枠18の端面18aから突き出した帯鉄筋13がU字状に曲げ回されてプレキャスト内型枠19の端面19aから突き出した帯鉄筋14と連続している。他方の端部ではプレキャスト外型枠の端面18bとプレキャスト内型枠の端面19bとのそれぞれから所定長さの帯鉄筋13,14が突き出している。
【0031】
隔壁となる部分に用いられるCタイプの型枠ユニットUCは、図5(c)に示すように、2枚のプレキャスト型枠20a,20bが所定間隔をあけて対向し、これらがトラス部材21によって互いに連結されている。また、それぞれのプレキャスト型枠20a,20bに帯鉄筋23及び中間帯鉄筋15が配置され、水平方向における端面からは第1のプレキャスト型枠20a及び第2のプレキャスト型枠20bのそれぞれから帯鉄筋23が突き出している。
【0032】
上記のような型枠ユニットは、工場又は製作ヤードにおいて次のように製作することができる。なお、図7は、型枠ユニットを製作するために鉄筋を配置し、型枠を設置した状態を示す概略立断面図及び概略平断面図である。
まず、トラス部材21を型枠ユニットUA,UBの製作台31上に設置する。そして、プレキャスト外型枠16,18及びプレキャスト内型枠17,19に埋め込む帯鉄筋13,14を配置する。帯鉄筋13,14は水平方向に配置し、上下方向に複数の帯鉄筋を所定の間隔で型枠ユニットUA,UBの高さ方向のほぼ全域に配列する。これらの帯鉄筋13,14はほぼ鉛直方向に組み立て筋を適切な間隔で設け、これらに支持させる。また、トラス部材21に支持させても良い。
帯鉄筋13,14が配置されると、プレキャスト外型枠16,18に埋め込む帯鉄筋13とプレキャスト内型枠17,19に埋め込む帯鉄筋14とに両端を係止し、中間帯鉄筋15を水平に配置する。この中間帯鉄筋15は、軸線がプレキャスト外型枠16,18及びプレキャスト内型枠17,19とほぼ垂直となるように対向する位置間で帯鉄筋13,14に係止する。そして、上下方向に配列した帯鉄筋13,14の全てについて同じ位置に設けて上下に複数を配列する。また、これらの中間帯鉄筋15を水平方向に所定の間隔で複数の位置に設け、橋脚の完成時には帯鉄筋13,14がコンクリート部材の表面側に押し出されるのを拘束できるものとする。
【0033】
帯鉄筋13,14及び中間帯鉄筋15が配置されると、帯鉄筋13,14の両側にこのプレキャスト外型枠16,18及びプレキャスト内型枠17,19のコンクリートを打設するための型枠を設ける。橋脚の構築現場で打設されるコンクリートと接触する面を形成する内側の型枠32は、トラス部材21の第1の弦材21aおよび第2の弦材21bと突き合わせるとともに、中間帯鉄筋15が貫通するように設ける。また、この内側の型枠32と対向し、橋脚となるコンクリート部材の外周面又は内周面を形成する外側の型枠33を設ける。そして、上記外側の型枠33と内側の型枠32との間にコンクリートを打設し、帯鉄筋13,14及び中間帯鉄筋15の両端部を埋め込むとともに、トラス部材21の2つの弦材21a,21bから突き出したアンカー21dを埋め込む。これにより、中間帯鉄筋15及びトラス部材21で連結されたプレキャスト外型枠16,18及びプレキャスト内型枠17,19を備えた型枠ユニットUA,UBが完成する。
なお、Cタイプの型枠ユニットUCについては、第1のプレキャスト型枠20aと第2のプレキャスト型枠20bに埋め込む帯鉄筋23の配置、中間帯鉄筋15の配置、内側及び外側の型枠の形成及びコンクリートの打設を同様に行って、Cタイプの型枠ユニットUCを製作することができる。
【0034】
次に上記型枠ユニットUA,UB,UCを用いた橋脚2の構築方法について説明する。
基礎となるケーソン4又はフーチング5を形成し、橋脚2の主鉄筋11,12の下端部を上記ケーソン4又はフーチング5に埋め込んで上方に突き出しておく。この主鉄筋11,12が立ち上げられた部分に橋脚2の下端部の第1の施工区分を構築する。図1(b)に示す橋脚2の下部のコンクリート部材厚が拡大された部分2bつまり内周面にテーパが設けられた部分は、構築現場において鉄筋の組み立て及び型枠の組み立てを行って、コンクリートを打設する。つまり、主鉄筋11,12の周囲を囲む帯鉄筋13及び内周面に沿った帯鉄筋14を配置するとともに中間帯鉄筋15を配置する。そして、外周面を形成するための外型枠、内周面を形成するための内型枠及び隔壁を形成するための型枠を設置して、これらの型枠に囲まれた範囲にコンクリートを打設する。
【0035】
橋脚の下端部における第1の施工区分が構築されると、図6に示すように、橋脚の既に形成された部分2e上に予め形成されている型枠ユニットUA,UB,UCを配置する。型枠ユニットUA,UB,UCはクレーン等によって吊り上げ、トラス部材21及び中間帯鉄筋15によってほぼ平行に連結された2つのプレキャストコンクリートの型枠の間に、既に立ち上げられている主鉄筋11,12を挿通させて設置する。一つの施工区分について型枠ユニットは、Aタイプの型枠ユニットUAを2つ、Bタイプの型枠ユニットUBを2つ、及び一つのCタイプの型枠ユニットUCを、図3に示すように配置する。これらの型枠ユニットUA,UB,UCはほぼ同じ高さで一施工区分の高さとなっており、ほぼ長方形となった断面形状の長辺部分にAタイプ、短辺部分にBタイプ及び隔壁の部分にCタイプを配置し、断面の隅角部2a及び長辺部分と隔壁部分との接合部2fでは、型枠ユニット間に間隔を開けて開放された領域を設けておく。
【0036】
上記断面の隅角部2aつまり図2中に示すA部分では、図8に示すように、隣り合うAタイプの型枠ユニットUAとBタイプの型枠ユニットUBとのいずれか一方(図8の例ではUB)は、プレキャスト外型枠18とプレキャスト内型枠19とから帯鉄筋13,14が突き出し、これらがU字状に連続している。そして、U字状に曲げ回された部分13bが隅角部2aの外周面に沿った位置となるように配置する。また、他方の型枠ユニット(図8の例ではUA)は、プレキャスト外型枠16とプレキャスト内型枠17とからそれぞれ帯鉄筋13,14の端部の所定長さが水平に該隅角部2aに向かって突き出すように配置する。
【0037】
水平に所定長が突き出した上記帯鉄筋13a,14aには、図8に示すようにU字状に曲げ加工がなされたU字鉄筋24を接続する。U字鉄筋24は、U字状の曲げ加工がされてほぼ平行となった直線部分24a,24bを、水平に突き出した上記帯鉄筋13a,14aの延長線上に支持し、この延長線に沿って隅角部から上記帯鉄筋13a,14aの端面に向かって差し入れる。このようにU字鉄筋24を差し入れることにより、隅角部2aに複数の主鉄筋11,12が立設されていても、これらに阻害されることなく、端面を型枠ユニットから突き出した帯鉄筋13a,14aの端面に突き合わせることができる。そして、このときU字鉄筋24の曲げ回された部分は橋脚断面の隅角部2aで外周面に沿って配置されるものとし、上記U字鉄筋24と水平に突き出した帯鉄筋13a,14aとを接続する。この接続作業は、隣り合う型枠ユニット間の開放された領域で行うことができる。
【0038】
上記U字鉄筋24と型枠ユニットUAから水平に突き出した帯鉄筋13a,14aとは、いずれもいわゆる異形鉄筋であって、これらの接続にはグラウト式の継ぎ手を用いるのが望ましい。つまり、鋼製の筒状部材の内側に両端から接続する鉄筋の端部を挿入し、この筒状部材内にモルタル又は合成樹脂のグラウトを注入して硬化させるものである。また、異形鉄筋の外周面の凸状部がねじ山となった全ねじ棒鋼を用い、このねじ山にねじり合わされた長いナット状の機械継ぎ手25によって上記U字鉄筋24と型枠ユニットUAから突き出した帯鉄筋13a,14aとを接続することもできる。さらに、帯鉄筋の機能を失わないものであれば他の態様の継ぎ手を用いることもできる。
【0039】
このように一方の型枠ユニットから突き出してU字状に曲げ回されている帯鉄筋13bと、他方の型枠ユニットから水平に突き出した帯鉄筋13a,14aと接続されたU字鉄筋24とが、隅角部2aにおいて重ね合わされ、これらが隅角部2aに配置された主鉄筋11,12を取り囲むものとなっており、これらの鉄筋は帯鉄筋として主鉄筋11,12が隅角部2aのコンクリートから外周面側に押し出されるのを拘束することができる。
【0040】
なお、本実施の形態では、上記型枠ユニットUAの帯鉄筋13a,14aの所定長さが水平に突き出した端面の位置は、橋脚断面の辺に沿った方向でずれた位置に設定されている。つまりプレキャスト外型枠16の端面はプレキャスト内型枠17より隅角部2aから離れた位置に設定されている。そして、プレキャスト外型枠16の端面から突き出した複数の帯鉄筋13aの長さが、長いものと短いものとが上下に交互となるように配列されている。これらの水平に突き出した帯鉄筋13aに接続するU字鉄筋の直線部分24aの長さは、上記帯鉄筋13aの突き出し長と対応するように交互に調整されており、帯鉄筋13aの継ぎ手位置が上下に配列された帯鉄筋13の全てで水平方向に同じ位置となるのを回避することができる。つまり帯鉄筋13aの継ぎ手位置が交互に水平にずれた位置となり、鉄筋の信頼性を向上するとともに、均質なコンクリートの打設が可能となる。一方、橋脚断面の内周面に沿った位置における帯鉄筋14aの継ぎ手は隅角部2aに近い位置に設けられ、水平方向の同じ位置となっているが、外周面に沿った帯鉄筋の継ぎ手と同様に、プレキャスト内型枠17の端面の位置を隅角部2aから離れた位置とし、交互に継ぎ手の位置をずらすように設定することもできる。
また、プレキャスト外型枠16及びプレキャスト内型枠17の双方について端面の位置を隅角部2aと近い位置に設定し、上下に複数が配置された帯鉄筋13,14の全てについて継ぎ手が同じ位置となるようにすることもできる。このようにプレキャスト外型枠16及びプレキャスト内型枠17の端面の位置を隅角部2aと近い位置に設定することにより、橋脚の構築現場で組み立てる型枠の面積を少なくすることができる。
【0041】
図2に示すB部分、つまりほぼ長方形となった橋脚断面の長辺部分と隔壁とが接合される部分は、図9に示すように、Aタイプの型枠ユニットUAのプレキャスト内型枠17が途切れた部分にCタイプの型枠ユニットUCが備えるプレキャスト型枠20の端面が間隔を開けて対向するように配置する。このとき、Cタイプの型枠ユニットUCが備えるプレキャスト型枠20の端面からは水平に帯鉄筋23の所定の長さが突き出している。この帯鉄筋23の端面を、Aタイプの型枠ユニットUAのプレキャスト内型枠17が途切れた部分から突き出している鉄筋22の端面と間隔を開けて対向させる。これらの鉄筋22,23の端面間には、図9に示すようにこれらの間隔に合わせて切断された鉄筋26を介在させ、これらの両端をAタイプの型枠ユニットUAから突き出した鉄筋22とCタイプの型枠ユニットUCから突き出した帯鉄筋23とに継ぎ手25によって連結する。その後、この連結部分に中間帯鉄筋15を配置する。この中間帯鉄筋15も端部にプレー15aが固着されたプレート定着型の中間帯鉄筋を使用し、上下方向に複数が配列された帯鉄筋23の全てについて配置する。
【0042】
このように、配列された型枠ユニット間の開放された部分を利用して、各隅角部2a並びにAタイプの型枠ユニットUAとCタイプの型枠ユニットUCの接合部2fへの配筋が終了すると、これらの開放された部分のそれぞれに型枠(図示しない)を設置する。
その後、これらの型枠内、プレキャスト外型枠16,18とプレキャスト内型枠17,19の間、及び隔壁の2つのプレキャスト型枠20a,20b間にコンクリートを打設し、露出している帯鉄筋13,14、中間帯鉄筋15、主鉄筋11,12及びトラス部材21等を埋め込むとともにプレキャスト型枠16,17,18,19,20と密着させる。このコンクリートが硬化することにより、必要な鉄筋が埋め込まれるとともにプレキャストコンクリートの型枠と一体となった橋脚の一施工区分が形成される。これを順次に繰り返し、上方に施工区分毎に橋脚を立ち上げる。橋脚の最上部のコンクリート部材厚が拡大された部分及び中実部分2cは下端部と同様に橋脚の構築現場で鉄筋及び型枠を組み立て、コンクリートを打設して形成する。このようにして完成した橋脚上に橋桁が構築される。
【0043】
本願発明の橋脚の構築方法は、以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本願発明の範囲内で他の形態として実施することもできる。
例えば、プレキャスト外型枠16とプレキャスト内型枠17とを連結するためのトラス部材21に設けるアンカーは、図10に示すように帯鉄筋13,14の上下方向のピッチに合わせて設けておき、型枠ユニットを形成するときに帯鉄筋13,14をこれらのアンカー21eに支持させて配置することができる。また、これらのアンカー21eの先端部は上方に曲折したものを用いることもできる。これにより帯鉄筋13,14の配置を効率よく行うことができる。
【0044】
また、トラス部材21を用いることなく、又はトラス部材21とともに中間帯鉄筋15を用いて対向するプレキャスト外型枠16とプレキャスト内型枠17を、相対的な変位を抑制して連結することができる。例えば、図11に示すように上下方向に配列された中間帯鉄筋15に斜め方向に軸線を有する鉄筋つまり斜め部材27を複数の中間帯鉄筋15にわたって固定する。これらの斜め部材27と帯鉄筋15と2つのプレキャストコンクリート板16,17とがトラス構造を形成し、これらで形成される型枠ユニットを吊り上げたときに、2つのプレキャストコンクリート板の相互間の変位を小さく抑制することが可能となる。
【0045】
一方、隅角部に配置する水平方向の鉄筋は、上記実施の形態のようにU字鉄筋24に限定されるものではなく、図12又は図13に示すように鉄筋を水平に配置することもできる。
図12に示す例では、L字状に曲げ加工がなされたL字鉄筋28と、一端がフック状に曲げ加工されたフック付き鉄筋29を用いるものである。また、隅角部2aで隣り合う一方の型枠ユニットUAが有するプレキャスト外型枠16の帯鉄筋13とプレキャスト内型枠17の帯鉄筋14とは、図8に示す実施の形態と同様に、水平方向に所定長を付き出しておく。他方の型枠ユニットUBが有するプレキャスト外型枠18の帯鉄筋13は、端面から所定長を突き出しておき、プレキャスト内型枠19の帯鉄筋14は、橋脚の隣り合う側面2d付近まで伸長して先端にフック状の曲げ加工を施しておく。
【0046】
上記L字状鉄筋28は、一方の型枠ユニットUAのプレキャスト外型枠16から突き出した帯鉄筋13aの延長線に沿って先端を上記帯鉄筋13aの端面に向かって差し入れる。そして、他方の型枠ユニットUBのプレキャスト内型枠19から突き出した帯鉄筋14bの先端部に設けられたフック部分が係止されるものとし、先端が突き合わされた上記帯鉄筋13aに継ぎ手25によって接続する。一方、L字状に曲げ加工された後端部28aは他方の型枠ユニットUBのプレキャスト外型枠18から突き出した帯鉄筋13cに接続する。また、フック付き鉄筋29は、一方の型枠ユニットUAのプレキャスト内型枠17から突き出した帯鉄筋14aの延長線に沿って差し入れ、先端を該帯鉄筋14aに接続するとともに、後端部のフック部分を他方の型枠ユニットUBのプレキャスト外型枠18から突き出した帯鉄筋13cに係止する。
【0047】
図13に示す例は、後端部がフック状に曲げ加工された2本のフック付き鉄筋41,42を用いるものである。
隅角部2aで隣り合う一方の型枠ユニットUAが有するプレキャスト外型枠16の帯鉄筋13とプレキャスト内型枠17の帯鉄筋14とは、図8に示す実施の形態と同様に、水平方向に所定長を付き出しておく。ただし、この例では型枠ユニットUAのプレキャスト外型枠16とプレキャスト内型枠17の端面16b,17bの位置が帯鉄筋13,14を配置する方向において揃えられた位置になっている。一方、型枠ユニットUBが有するプレキャスト外型枠18及びプレキャスト内型19から突き出した帯鉄筋13bは、図8に示す例と同様にU字状に曲げ加工されて連続するものとなっている。
【0048】
上記フック付き鉄筋41は、一方の型枠ユニットUAのプレキャスト外型枠16から突き出した帯鉄筋13aの延長線に沿って先端を上記帯鉄筋13aの端面に向かって差し入れる。そして、他方の型枠ユニットUBのプレキャスト外型枠18及びプレキャスト内型枠19から突き出してU字状に曲げ回された帯鉄筋13bの一部と重ね合わせ、先端が突き合わされた上記帯鉄筋13aに継ぎ手25によって接続する。もう一本のフック付き鉄筋42は、プレキャスト内型枠17から突き出した帯鉄筋14aの延長線に沿って先端を上記帯鉄筋14aの端面に向かって差し入れ、上記帯鉄筋14aと接続する。これらのフック付き鉄筋41,42の後端部に設けられたフック状に曲げ加工した部分は、他方の型枠ユニットUBから突き出したU字状の帯鉄筋13bの一部と重ね合わせ、隅角部のコンクリート中に定着する。
なお、上記L字状鉄筋28及びフック付き鉄筋29,41,42と帯鉄筋との接続には機械継ぎ手を用いるのが、作業効率を向上させるために望ましい。
このように水平方向の鉄筋を配置しても、作業量を低減することができるともに、鉄筋の継ぎ手の箇所を少なくすることが可能となる。
【0049】
一方、ほぼ長方形となった橋脚断面の長辺部分と隔壁とが接合される部分についても、図9に示すように水平方向の鉄筋を配置する方法の他に、例えば図14又は図15に示すように水平方向の鉄筋を配置することもできる。
図14に示す例は、図9に示す例と同様にAタイプの型枠ユニットUA’のプレキャスト内型枠17が途切れた部分に、隔壁の帯鉄筋と接続する鉄筋51を突き出しておく。ただし、この例ではAタイプの型枠ユニットUA’のプレキャスト内型枠17は、途切れた部分で隔壁の側面に沿った方向に曲折し、隔壁に沿った方向に所定長が突き出している。そしてこの突き出した端面から上記鉄筋51が突き出している。
一方、隔壁を形成するためのCタイプの型枠ユニットUCは、対向するように配置された2つのプレキャスト型枠20,20からそれぞれ帯鉄筋23が突き出し、これらがU字状に曲げ回されて連続している。このU字状となって突き出した帯鉄筋の先端部23aは、Aタイプの型枠ユニットUA’から突き出した上記鉄筋51の先端と重ならない位置に設定しておく。そして、Aタイプの型枠ユニットUA’から突き出した上記鉄筋51には、図14に示すように側方からフック付き鉄筋52を継ぎ手53によって接続する。このフック付き鉄筋52がU字状となった帯鉄筋と重ね合わされるとともにフック状に曲げ加工された部分が橋脚の構築現場で打設されたコンクリート内に埋め込まれることによって帯鉄筋23の引張力が伝達されるとともに鉛直方向の鉄筋の変位を拘束することができる。
【0050】
図15に示す例は、橋脚断面の長辺部分に用いる型枠ユニットUA”が隔壁と接合される部分で2つに分割されており、分割された型枠ユニットUA”のそれぞれを所定の位置に配置した後にプレキャスト外型枠16とプレキャスト内型枠17に埋め込んである帯鉄筋13,14を継ぎ手54によって接続するものとなっている。なお、この継ぎ手54には管状部材の両端から接続する鉄筋の端部を挿入してグラウトを管状部材内に注入するグラウト式の継ぎ手を用いるのが望ましい。
【0051】
一方、隔壁部分に用いられる型枠ユニットUCは、図9に示す例と同様に2つのプレキャスト型枠20から帯鉄筋23の端部を突き出しておく。そして、型枠ユニットUA”及び型枠ユニットUCを配置した後、2つのプレキャスト型枠20の端面からそれぞれ突き出した帯鉄筋23bの延長線に沿って、橋脚の外周面の外側から2本のフック付き鉄筋55の先端を差し入れる。このフック付き鉄筋55は、図15に示すように後端部にフック状の曲げ加工が施されたものである。このフック付き鉄筋55の先端をプレキャスト型枠20の端面から突き出した帯鉄筋23bと継ぎ手56によって接続し、後端部のフック状に曲げ加工された部分を橋脚の構築現場で打設されるコンクリート中に埋め込んで定着する。
このような構成で、ほぼ長方形となった橋脚断面の長辺部分と隔壁とが接合される部分に水平方向の鉄筋を配置しても、効率の良い作業を実現することができる。
【符号の説明】
【0052】
1:橋桁、 2:橋脚、 2a:橋脚断面の隅角部、 3:橋台、 4:ケーソン、 5:フーチング、
11:外周面に沿った位置の主鉄筋、 12:内周面に沿った位置の主鉄筋、 13:外周面に沿った位置の帯鉄筋、 14:内周面に沿った位置の帯鉄筋、 15:中間帯鉄筋、 16:プレキャスト外型枠、 17:プレキャスト内型枠、 18プレキャスト外型枠、 19:プレキャスト内型枠、 20:隔壁部分のプレキャスト型枠、 21:トラス部材、 22:Aタイプの型枠ユニットから突き出した鉄筋、 23:隔壁部分に配置される帯鉄筋、 24:U字鉄筋、 25:継ぎ手、 26:連結鉄筋、 27:斜め部材、 28:L字鉄筋、 29:フック付き鉄筋、
31:製作台、 32:内側の型枠、 33:外側の型枠、
41,42:フック付き鉄筋、
51:隔壁の帯鉄筋と接続する鉄筋、 52:フック付き鉄筋、 53:継ぎ手、 54:継ぎ手、 55:フック付き鉄筋、 56:継ぎ手、
UA:Aタイプの型枠ユニット、 UB:Bタイプの型枠ユニット、 UC:Cタイプの型枠ユニット
【技術分野】
【0001】
本願発明は、プレキャストコンクリートからなる板状部材を型枠として用い、構築現場においてこれらのプレキャストコンクリートからなる型枠と一体となるようにコンクリートを打設して橋脚を構築する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
橋脚を構築する方法としては、形成された基礎上で鉄筋を組み立てるとともに、これらを囲むように設けられた型枠内にコンクリートを打設して構築する方法が広く採用されている。この方法では、基礎から上下方向に配置される主鉄筋を立ち上げ、主鉄筋を囲むように水平に配置されて主鉄筋を拘束する帯鉄筋、及び帯鉄筋を水平方向に連結する中間帯鉄筋等を組み立てる。そして、これらの鉄筋を囲むように型枠を設けて、この型枠内へコンクリートを打設する。
【0003】
また、プレキャストコンクリート板を型枠として使用し、これらのプレキャストコンクリート板と一体となるように構築現場でコンクリートを打設する橋脚の構築方法が、例えば特許文献1に記載されている。
この橋脚の構築方法は、断面が中空となった橋脚を構築するものであり、プレキャストコンクリートからなる内型枠及び外型枠を使用して、所定の高さごとにこれらの間にコンクリートを打設するものである。上記内型枠及び外型枠は橋脚の周方向に複数に分割されており、それぞれには主鉄筋を拘束する帯鉄筋を埋め込むとともに主鉄筋が仮支持されている。そして、これら内型枠及び外型枠を橋脚の基礎上又は橋脚の既に形成された部分の上で、周方向にほぼ連続するように配列する。隣接した内型枠又は外型枠に取り付けられた帯鉄筋は、隣接する内型枠間又は外型枠間で接続するとともに、仮支持された主鉄筋を下方の施工済みの橋脚又は基礎から突き出した主鉄筋に接合する。その後、内型枠及び外型枠で囲まれた空間内にコンクリートを打設し、内型枠、外型枠、主鉄筋、帯鉄筋を一体とする。コンクリートの硬化後、この硬化した橋脚の上部に、同様に内型枠及び外型枠を配列し、帯鉄筋及び主鉄筋を接合する工程、コンクリートを打設する工程を繰り返し、橋脚を上方に立ち上げて構築するものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−232212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、構築現場において主鉄筋や帯鉄筋の組立て及び接合、型枠の組み立て、脱型及び撤去等を行う構築方法では、構築現場で行う作業が多く、構築に要する期間が長くなってしまう。また、このような作業を行うために大掛かりな足場等の組立てが必要となり、作業効率が悪く、コストも高くなる。
【0006】
一方、特許文献1に記載の技術では、橋脚の外周面を形成するための外型枠と中空となった内周面を形成するための内型枠とを、所定の間隔で対向するように支持するとともに、これらに埋め込まれている帯鉄筋の双方に両端が係止された中間帯鉄筋を配置しなければない。帯鉄筋は、図16に示すようにプレキャストコンクリートからなる内型枠101と外型枠102に埋め込んでおくのが作業の効率化のために望ましく、このように帯鉄筋103がプレキャストコンクリートに埋め込まれていると、中間帯鉄筋104は両端部を分離して、それぞれ内型枠101と外型枠102の製作時にコンクリート中に埋め込んでおく必要がある。そして、構築現場においては内型枠101と外型枠102とを別個に吊り上げ、対向するように配置した後に、これらの間で中間帯鉄筋104を接続しなければならない。このとき分割された中間帯鉄筋104を一ヶ所で接続するためには端面を正確に突き合わせる必要があり、接続が難しくなる。このため、図16に示すように、長さを調整した短い鉄筋106を介在させ、二ヶ所に継ぎ手105を設けて接続することになる。したがって、中間帯鉄筋を接続するための作業量が多くなってしまう。
【0007】
また、プレキャストコンクリートからなる内型枠及び外型枠を現場に配列した後に、隣接して配置された内型枠又は外型枠に埋め込まれた帯鉄筋を接合するときにも、機械継ぎ手で全ての帯鉄筋を連結するために双方の内型枠又は外型枠から突き出した帯鉄筋の端面を正確に突き合わせることは難しい。さらに、上下に複数が配置された帯鉄筋のそれぞれの接続位置が、帯鉄筋の軸線方向において同じ位置となる。つまり、接続位置が上下に並ぶことになって、欠陥のないコンクリート部材を形成するために望ましくない。
【0008】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、プレキャストコンクリートにより形成された型枠を用い、断面形状が矩形で内部に空間を有する橋脚を効率よく構築する橋脚の構築方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 プレキャストコンクリートにより形成された型枠を用い、現場で打設されたコンクリートと前記型枠とを一体として、断面形状が矩形で内部に空間を有する橋脚を構築する方法であって、 所定の高さを有し、橋脚の周方向に複数が配列されて前記橋脚の外周面を形成するプレキャストコンクリートからなるプレキャスト外型枠と、該プレキャスト外型枠と所定の間隔をあけて該プレキャスト外型枠と連結され、前記橋脚の中空となった内周面を形成するプレキャストコンクリートからなるプレキャスト内型枠と、前記プレキャスト外型枠及びプレキャスト内型枠のそれぞれに水平方向に埋設される複数の帯鉄筋と、前記プレキャスト外型枠に埋め込まれた帯鉄筋とプレキャスト内型枠に埋め込まれた帯鉄筋とを水平方向に連結する中間帯鉄筋と、を備えた型枠ユニットを製作しておき、 前記橋脚の基礎又は前記橋脚の既に形成された部分の上に、立設された主鉄筋を前記プレキャスト外型枠と前記プレキャスト内型枠との間に挿通して前記型枠ユニットを載置し、該橋脚の隅角部を除外して周方向に複数の前記型枠ユニットを配列する工程と、 前記隅角部に水平方向の鉄筋を配置するとともに、該隅角部の型枠を現場で組み立てて、前記隅角部の前記型枠内及び前記プレキャスト外型枠とプレキャスト内型枠との間にコンクリートを打設する工程とを含み、 前記型枠ユニットを配列する工程と、前記隅角部の前記鉄筋を配置し、前記型枠を組み立てる工程と、前記コンクリートを打設する工程と、を繰り返して順次に上方に立ち上げることを特徴とする橋脚の構築方法を提供する。
【0010】
この橋脚の構築方法では、予め製造される型枠ユニットには、帯鉄筋及びこの帯鉄筋を水平方向に連結する中間帯鉄筋が支持されているので、構築現場における配筋作業が低減される。そして、互いに対向して配置されるプレキャスト内型枠とプレキャスト外型枠が一体に連結されており、橋脚の構築現場で中間帯鉄筋を接続する必要がなく、コンクリートを打設する位置に型枠ユニットを効率よく設置することができる。また、隅角部ではプレキャストコンクリートの型枠を用いることなく、他の部分に型枠ユニットを配置した後においても開放された領域が設けられる。そして、隅角部において橋脚の隣り合う2つの側面が開放され、多くの主鉄筋が既に立ち上げられていても隅角部に水平方向の鉄筋を効率よく配置することができる。さらに、型枠ユニットは隅角部の両側で離れて設置されるので、上下方向に複数が配置された帯鉄筋を接続するときは、型枠ユニット間で接続する位置を交互にずらして設けることができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の橋脚の構築方法において、 前記隅角部を除外し、該隅角部の両側で隣り合うように配置された前記型枠ユニットの一方は、前記プレキャスト外型枠及び前記プレキャスト内型枠のほぼ鉛直となった端面から前記隅角部に向かってそれぞれ水平に帯鉄筋の端部を突出させておき、 他方の型枠ユニットは、前記プレキャスト外型枠及び前記プレキャスト内型枠のほぼ鉛直となった端面から前記隅角部に向かってそれぞれ水平に突き出し、前記隅角部でU字状に連続した帯鉄筋を有するものとし、 前記型枠ユニットの配列後に前記隅角部に配置する水平方向の鉄筋として、後端部がフック状に曲げ加工された2本の所定長のフック付き鉄筋を用い、前記一方の型枠ユニットの端面から突出した前記帯鉄筋の延長線に沿って該突出した帯鉄筋の端面に向かって前記フック付き鉄筋を先端から差し入れ、該フック付き鉄筋と前記一方の型枠ユニットから突出した前記帯鉄筋の端部とを接続し、 前記フック付き鉄筋のフック状に曲げ加工された部分を、前記隅角部に埋め込んで定着するものとする。
【0012】
この構築方法では、一方の型枠ユニットから端部が突き出した帯鉄筋に対して、フック付き鉄筋を開放された隅角部から差し入れて効率よく接続することができる。そして、このフック付き鉄筋は隅角部で定着され、他方の型枠ユニットから突き出してU字状に曲げ加工された帯鉄筋とともに主鉄筋の変位を有効に拘束するものとなる。また、帯鉄筋を構築現場で接続する継ぎ手の数を少なくすることができる。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の橋脚の構築方法において、 前記隅角部を除外し、該隅角部の両側で隣り合うように配置された前記型枠ユニットの一方は、前記プレキャスト外型枠及び前記プレキャスト内型枠のほぼ鉛直となった端面から前記隅角部に向かってそれぞれ水平に帯鉄筋の端部を突出させておき、 他方の型枠ユニットは、前記プレキャスト外型枠及び前記プレキャスト内型枠のほぼ鉛直となった端面から前記隅角部に向かってそれぞれ水平に突き出し、前記隅角部でU字状に連続した帯鉄筋を有するものとし、 前記型枠ユニットの配列後に前記隅角部に配置する水平方向の鉄筋として、U字状に曲げ加工されたU字鉄筋を用い、該U字鉄筋の曲げ加工された部分の両側のほぼ平行となった部分を、前記一方の型枠ユニットの端面から突出した前記帯鉄筋の該延長線に沿って該突出した帯鉄筋の端面に向かって差し入れ、該U字鉄筋と前記一方の型枠ユニットから突出した前記帯鉄筋の端部とを接続し、 前記他方の型枠ユニットから突き出した前記帯鉄筋のU字状となるように曲げ回された部分と前記U字鉄筋の曲げ回された部分とで、前記隅角部に配置された前記主鉄筋を囲むものとする。
【0014】
この構築方法では、隅角部において橋脚の外周面付近に配置された帯鉄筋と内周面付近に配置された帯鉄筋とが連続し、主鉄筋を有効に拘束することができる。そして、一方の型枠ユニットから端部が突き出した帯鉄筋に対して、U字鉄筋を効率よく接続することができ、継ぎ手を設ける位置も少なくすることができる。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3までのいずれかに記載の橋脚の構築方法において、 前記プレキャスト外型枠と前記プレキャスト内型枠とは、鋼製のトラス部材によって所定の間隔で連結したものとし、 該トラス部材は、前記プレキャスト外型枠と前記プレキャスト内型枠とに密接し、鉛直方向に軸線を有する二つの弦材と、これらを斜め方向に連結する斜材と、前記二つの弦材のそれぞれに固着されるとともにプレキャスト外型枠又はプレキャスト内型枠のコンクリート中に埋め込まれる複数のアンカーを有し、 該アンカーは、上下方向に所定の間隔をおいて水平方向に配置される前記帯鉄筋の上下方向の間隔に合わせて設け、 前記型枠ユニットの製作時において、前記帯鉄筋は前記アンカーに支持させて配置するものとする。
【0016】
この橋脚の構築方法では、型枠ユニットの製作時においては、帯鉄筋をトラス部材に支持させた状態で配置することができるので、帯鉄筋を正確かつ迅速に配置して型枠ユニットを効率よく製造することが可能となる。また、トラス部材によってプレキャスト内型枠とプレキャスト外型枠とを連結して、構築される橋脚の所定位置に配置するために吊り支持したときの相対的な変位を抑制することが可能となる。
【0017】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4までのいずれかに記載の橋脚の構築方法において、 前記中間帯鉄筋は、水平方向に所定の間隔で設けるとともに、それぞれの帯鉄筋に対して上下方向に配列して設け、両端部を前記プレキャスト外型枠及びプレキャスト内型枠に埋め込むものとし、 上下方向に配列した前記帯鉄筋の側面に、斜め方向に軸線を有する斜め部材を当接し、複数の前記中間帯鉄筋に対して結合し、 該斜め部材によって前記プレキャスト外型枠とプレキャスト内型枠との相対的な変位を拘束するものとする。
【0018】
この方法では、中間帯鉄筋によってプレキャスト内型枠とプレキャスト外型枠とを連結するとともに、斜め部材と中間帯鉄筋とプレキャスト内型枠とプレキャスト外型枠とよってトラス構造が形成される。したがって、簡単な構造でプレキャスト内型枠とプレキャスト外型枠とを相対的な変位が抑制された状態で支持することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本願発明の橋脚の構築方法では、対向して配置される2枚のプレキャストコンクリートの板状部材に帯鉄筋及び中間帯鉄筋を一体として所定の位置に配置することができるので、構築現場における鉄筋の配置や連結等の配筋作業、型枠の設置や脱型等の作業が低減され、橋脚を効率よく構築することができる。
また、隅角部を開放した状態に型枠ユニットを配列し、この開放された位置から隅角部の帯鉄筋をほぼ水平に差し入れて型枠ユニット中の帯鉄筋に接続することができる。したがって、帯鉄筋の配置を効率よく行うことができるとともに、帯鉄筋の接合箇所を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本願発明に係る方法により構築された橋脚を備える橋梁の一例を示す概略側面図及び立断面図である。
【図2】図1に示す橋脚の平断面図である。
【図3】図1及び図2に示す橋脚を構築するために用いる型枠ユニットの概略配置図である。
【図4】図3に示す型枠ユニットの立断面図である。
【図5】図3に示す型枠ユニットの平断面図である。
【図6】型枠ユニットを拡大して示す立断面図及び平断面図である。
【図7】型枠ユニットを製作する方法を説明するための概略立断面図及び概略平断面図である。
【図8】橋脚の隅角部に帯鉄筋を配置する方法を示す概略平断面図である。
【図9】ほぼ長方形となった橋脚断面の長辺部分と隔壁との接合部に帯鉄筋を配置する方法を示す概略平面図である。
【図10】型枠ユニットに用いるトラス部材の他の例及びその機能を示す概略立断面図である。
【図11】型枠ユニットのプレキャスト型枠が相対的に変位するのを抑制する手段の他の例を示す概略立断面図である。
【図12】橋脚の隅角部に帯鉄筋を配置する方法の他の例を示す概略平断面図である。
【図13】橋脚の隅角部に帯鉄筋を配置する方法の他の例を示す概略平断面図である。
【図14】ほぼ長方形となった橋脚断面の長辺部分と隔壁との接合部に帯鉄筋を配置する方法の他の例を示す概略平面図である。
【図15】ほぼ長方形となった橋脚断面の長辺部分と隔壁との接合部に帯鉄筋を配置する方法の他の例を示す概略平面図である。
【図16】本発明が解決しようとする課題の一つを説明するために示すプレキャストコンクリートの型枠の概略立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本願発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本願発明に係る方法により構築された橋脚を備える橋梁の一例を示す概略側面図及び立断面図であり、図2は、図1に示す橋脚の平断面図である。
この橋梁は、コンクリートの橋桁1を2つの橋脚2及び2つの橋台3によって支持する3径間のラーメン橋である。
【0022】
橋脚2は、鉄筋コンクリートからなり、基礎として形成されたケーソン4又は直接基礎として形成されたフーチング5上に立ち上げられている。この橋脚の断面形状は、図2に示すようにほぼ長方形で、内部に空間が設けられた中空断面となっており、中空部を2分割する隔壁が設けられている。
この橋脚2の断面内の外周面に沿った位置及び内周面に沿った位置には上下方向に主鉄筋11,12が配列され、外周面に沿った位置に配列された主鉄筋11の外側つまり外周面側には、水平方向の帯鉄筋13が上下方向に所定の間隔を設けて配置されている。また、内周面に沿った位置に配置された主鉄筋12の内周面側にも帯鉄筋14が配置されている。これらの帯鉄筋13,14は、橋脚2に大きな曲げモーメントが発生し、主鉄筋11,12に降伏点応力に近い引張応力又は降伏点応力を超える引張応力が生じた後に圧縮応力が作用したときに、主鉄筋11,12が座屈してコンクリート部材の表面から膨らみ出すのを拘束するものとして配置されている。そして、外周面に沿って配置された帯鉄筋13と内周面に沿って配置された帯鉄筋14とに両端部が係止され、帯鉄筋がコンクリート部材の表面側に押し出されるのを拘束する中間帯鉄筋15が、水平方向に所定の間隔で、上下方向に配列された帯鉄筋13,14の全てに対して配置されている。
【0023】
橋脚2は、予め設定された施工区分ごとに型枠の設置、鉄筋の配置及びコンクリートの打設を繰り返し行い、上方に所定の高さまで構築するものである。そして、型枠にはプレキャストコンクリートで形成された板状部材を外型枠及び内型枠として用い、これらを構築現場で組み立てるメタルフォーム又は合板製の型枠と組み合わせて用いる。プレキャストコンクリートの型枠は、現場で打設されるコンクリートと一体となり、橋脚の一部となるものである。
【0024】
プレキャストコンクリートで形成された型枠は、図3に示すように矩形となった断面の隅角部2aを除外し、隅角部間の外周面部分と内周面部分及び隔壁の両側面部分に用いている。
ほぼ長方形となった断面の長辺部分に用いられるプレキャストコンクリートの型枠及び短辺部分に用いられるプレキャストコンクリートの型枠は、外周面を形成するプレキャスト外型枠16,18と内周面を形成するプレキャスト内型枠17,19とが、鋼製のトラス部材21によって連結され、それぞれAタイプの型枠ユニットUA又はBタイプの型枠ユニットUBとなっている。これらの型枠ユニットは吊り上げたときにも鋼製のトラス部材21によってプレキャスト外型枠とプレキャスト内型枠との相対的な変位が抑制されるものとなっており、一体にした状態で吊り上げて所定の位置に設置することができるものである。
【0025】
上記トラス部材21は鋼からなり、図4に示すように、プレキャスト外型枠16,18のコンクリートと接触する第1の弦材21aとプレキャスト内型枠17,19のコンクリートと接触する第2の弦材21bとを有し、これらがほぼ平行となるように斜材21cによって連結したものである。上記第1の弦材21a及び第2の弦材21bには、H形鋼、L型鋼等の型鋼を用いることができ、斜材にはL型鋼又は鋼プレート等を用いることができる。また、第1の弦材21a及び第2の弦材21bにはプレキャスト外型枠16,18及びプレキャスト内型枠17,19のコンクリートと接触する面に、複数のアンカー21dが突出するように取り付けられており、プレキャスト外型枠16,18又はプレキャスト内型枠17,19となるコンクリートに埋め込まれるものとなっている。
【0026】
一方、図3に示すように、隔壁部分に用いられるプレキャストコンクリートのプレキャスト型枠20も同様に、一方の立面を形成する第1のプレキャスト型枠20aと他方の立面を形成する第2のプレキャスト型枠20bとがトラス部材21によって連結され、一体として設置することができるCタイプの型枠ユニットUCとなっている。
【0027】
ほぼ長方形となった断面の長辺部分に用いられるAタイプの型枠ユニットUAは、図3に示すように、プレキャスト外型枠16が隣り合う一方の隅角部付近から他方の隅角部付近まで一枚のプレキャストコンクリート板となっており、これと対向するプレキャスト内型枠17は2つに分割され、分割されたプレキャスト内型枠17は相互間に所定の間隔を開けてほぼ同一仮想面上に配置されている。これら2枚のプレキャスト内型枠17の間の開放された部分に隔壁が設けられる。
【0028】
プレキャスト外型枠16とプレキャス内型枠17とには、図5(a)に示すようにそれぞれ帯鉄筋13,14が外周面又は内周面に沿って水平に埋め込まれ、上下に所定の間隔を開けて高さ方向の全領域に配置されている。プレキャスト外型枠16に埋め込まれた帯鉄筋13は、プレキャスト外型枠16の水平方向における一方の端面16aから露出し、U字状に曲げ回されて、プレキャスト内型枠17の一方の端面17aから突き出した帯鉄筋14と連続している。プレキャスト外型枠16及びプレキャスト内型枠17の他方の端面16b,17bからは、帯鉄筋13,14がそれぞれ所定の長さで突き出している。また、2枚に分割されたプレキャスト内型枠17の間の開放された部分からは、プレキャスト外型枠16の帯鉄筋13に先端が係止された鉄筋22が、プレキャスト内型枠17の表面とほぼ垂直に突き出している。
【0029】
また、中間帯鉄筋15は、図6に示すようにプレキャスト外型枠16に埋め込まれた帯鉄筋13とプレキャスト内型枠17に埋め込まれた帯鉄筋14とに、それぞれ両端が係止される。中間帯鉄筋15の両端には鋼からなるプレート15aが溶接又は加熱及び加圧して圧接されており、このプレート15aを帯鉄筋13,14の上側から側面に当接し、中間帯鉄筋15とプレート15aによって帯鉄筋13,14に掛け回して係止する。そして、コンクリートの打設により中間帯鉄筋15の両端部は帯鉄筋13,14とともにプレキャスト外型枠16又はプレキャスト内型枠17となるコンクリート中に埋め込まれ、両端部の間は2つのプレキャスト型枠間で露出している。
【0030】
ほぼ長方形となった断面の短辺部分に用いられるBタイプの型枠ユニットUBは、図5(b)に示すように、プレキャスト外型枠18とプレキャスト内型枠19とが対向し、トラス部材21によって連結されている。そして、プレキャスト外型枠18とプレキャスト内型枠19とのそれぞれに帯鉄筋13,14が配置され、中間帯鉄筋15がこれらを連結するように配置される。また、Aタイプの型枠ユニットUAと同様に、水平方向における一方の端部ではプレキャスト外型枠18の端面18aから突き出した帯鉄筋13がU字状に曲げ回されてプレキャスト内型枠19の端面19aから突き出した帯鉄筋14と連続している。他方の端部ではプレキャスト外型枠の端面18bとプレキャスト内型枠の端面19bとのそれぞれから所定長さの帯鉄筋13,14が突き出している。
【0031】
隔壁となる部分に用いられるCタイプの型枠ユニットUCは、図5(c)に示すように、2枚のプレキャスト型枠20a,20bが所定間隔をあけて対向し、これらがトラス部材21によって互いに連結されている。また、それぞれのプレキャスト型枠20a,20bに帯鉄筋23及び中間帯鉄筋15が配置され、水平方向における端面からは第1のプレキャスト型枠20a及び第2のプレキャスト型枠20bのそれぞれから帯鉄筋23が突き出している。
【0032】
上記のような型枠ユニットは、工場又は製作ヤードにおいて次のように製作することができる。なお、図7は、型枠ユニットを製作するために鉄筋を配置し、型枠を設置した状態を示す概略立断面図及び概略平断面図である。
まず、トラス部材21を型枠ユニットUA,UBの製作台31上に設置する。そして、プレキャスト外型枠16,18及びプレキャスト内型枠17,19に埋め込む帯鉄筋13,14を配置する。帯鉄筋13,14は水平方向に配置し、上下方向に複数の帯鉄筋を所定の間隔で型枠ユニットUA,UBの高さ方向のほぼ全域に配列する。これらの帯鉄筋13,14はほぼ鉛直方向に組み立て筋を適切な間隔で設け、これらに支持させる。また、トラス部材21に支持させても良い。
帯鉄筋13,14が配置されると、プレキャスト外型枠16,18に埋め込む帯鉄筋13とプレキャスト内型枠17,19に埋め込む帯鉄筋14とに両端を係止し、中間帯鉄筋15を水平に配置する。この中間帯鉄筋15は、軸線がプレキャスト外型枠16,18及びプレキャスト内型枠17,19とほぼ垂直となるように対向する位置間で帯鉄筋13,14に係止する。そして、上下方向に配列した帯鉄筋13,14の全てについて同じ位置に設けて上下に複数を配列する。また、これらの中間帯鉄筋15を水平方向に所定の間隔で複数の位置に設け、橋脚の完成時には帯鉄筋13,14がコンクリート部材の表面側に押し出されるのを拘束できるものとする。
【0033】
帯鉄筋13,14及び中間帯鉄筋15が配置されると、帯鉄筋13,14の両側にこのプレキャスト外型枠16,18及びプレキャスト内型枠17,19のコンクリートを打設するための型枠を設ける。橋脚の構築現場で打設されるコンクリートと接触する面を形成する内側の型枠32は、トラス部材21の第1の弦材21aおよび第2の弦材21bと突き合わせるとともに、中間帯鉄筋15が貫通するように設ける。また、この内側の型枠32と対向し、橋脚となるコンクリート部材の外周面又は内周面を形成する外側の型枠33を設ける。そして、上記外側の型枠33と内側の型枠32との間にコンクリートを打設し、帯鉄筋13,14及び中間帯鉄筋15の両端部を埋め込むとともに、トラス部材21の2つの弦材21a,21bから突き出したアンカー21dを埋め込む。これにより、中間帯鉄筋15及びトラス部材21で連結されたプレキャスト外型枠16,18及びプレキャスト内型枠17,19を備えた型枠ユニットUA,UBが完成する。
なお、Cタイプの型枠ユニットUCについては、第1のプレキャスト型枠20aと第2のプレキャスト型枠20bに埋め込む帯鉄筋23の配置、中間帯鉄筋15の配置、内側及び外側の型枠の形成及びコンクリートの打設を同様に行って、Cタイプの型枠ユニットUCを製作することができる。
【0034】
次に上記型枠ユニットUA,UB,UCを用いた橋脚2の構築方法について説明する。
基礎となるケーソン4又はフーチング5を形成し、橋脚2の主鉄筋11,12の下端部を上記ケーソン4又はフーチング5に埋め込んで上方に突き出しておく。この主鉄筋11,12が立ち上げられた部分に橋脚2の下端部の第1の施工区分を構築する。図1(b)に示す橋脚2の下部のコンクリート部材厚が拡大された部分2bつまり内周面にテーパが設けられた部分は、構築現場において鉄筋の組み立て及び型枠の組み立てを行って、コンクリートを打設する。つまり、主鉄筋11,12の周囲を囲む帯鉄筋13及び内周面に沿った帯鉄筋14を配置するとともに中間帯鉄筋15を配置する。そして、外周面を形成するための外型枠、内周面を形成するための内型枠及び隔壁を形成するための型枠を設置して、これらの型枠に囲まれた範囲にコンクリートを打設する。
【0035】
橋脚の下端部における第1の施工区分が構築されると、図6に示すように、橋脚の既に形成された部分2e上に予め形成されている型枠ユニットUA,UB,UCを配置する。型枠ユニットUA,UB,UCはクレーン等によって吊り上げ、トラス部材21及び中間帯鉄筋15によってほぼ平行に連結された2つのプレキャストコンクリートの型枠の間に、既に立ち上げられている主鉄筋11,12を挿通させて設置する。一つの施工区分について型枠ユニットは、Aタイプの型枠ユニットUAを2つ、Bタイプの型枠ユニットUBを2つ、及び一つのCタイプの型枠ユニットUCを、図3に示すように配置する。これらの型枠ユニットUA,UB,UCはほぼ同じ高さで一施工区分の高さとなっており、ほぼ長方形となった断面形状の長辺部分にAタイプ、短辺部分にBタイプ及び隔壁の部分にCタイプを配置し、断面の隅角部2a及び長辺部分と隔壁部分との接合部2fでは、型枠ユニット間に間隔を開けて開放された領域を設けておく。
【0036】
上記断面の隅角部2aつまり図2中に示すA部分では、図8に示すように、隣り合うAタイプの型枠ユニットUAとBタイプの型枠ユニットUBとのいずれか一方(図8の例ではUB)は、プレキャスト外型枠18とプレキャスト内型枠19とから帯鉄筋13,14が突き出し、これらがU字状に連続している。そして、U字状に曲げ回された部分13bが隅角部2aの外周面に沿った位置となるように配置する。また、他方の型枠ユニット(図8の例ではUA)は、プレキャスト外型枠16とプレキャスト内型枠17とからそれぞれ帯鉄筋13,14の端部の所定長さが水平に該隅角部2aに向かって突き出すように配置する。
【0037】
水平に所定長が突き出した上記帯鉄筋13a,14aには、図8に示すようにU字状に曲げ加工がなされたU字鉄筋24を接続する。U字鉄筋24は、U字状の曲げ加工がされてほぼ平行となった直線部分24a,24bを、水平に突き出した上記帯鉄筋13a,14aの延長線上に支持し、この延長線に沿って隅角部から上記帯鉄筋13a,14aの端面に向かって差し入れる。このようにU字鉄筋24を差し入れることにより、隅角部2aに複数の主鉄筋11,12が立設されていても、これらに阻害されることなく、端面を型枠ユニットから突き出した帯鉄筋13a,14aの端面に突き合わせることができる。そして、このときU字鉄筋24の曲げ回された部分は橋脚断面の隅角部2aで外周面に沿って配置されるものとし、上記U字鉄筋24と水平に突き出した帯鉄筋13a,14aとを接続する。この接続作業は、隣り合う型枠ユニット間の開放された領域で行うことができる。
【0038】
上記U字鉄筋24と型枠ユニットUAから水平に突き出した帯鉄筋13a,14aとは、いずれもいわゆる異形鉄筋であって、これらの接続にはグラウト式の継ぎ手を用いるのが望ましい。つまり、鋼製の筒状部材の内側に両端から接続する鉄筋の端部を挿入し、この筒状部材内にモルタル又は合成樹脂のグラウトを注入して硬化させるものである。また、異形鉄筋の外周面の凸状部がねじ山となった全ねじ棒鋼を用い、このねじ山にねじり合わされた長いナット状の機械継ぎ手25によって上記U字鉄筋24と型枠ユニットUAから突き出した帯鉄筋13a,14aとを接続することもできる。さらに、帯鉄筋の機能を失わないものであれば他の態様の継ぎ手を用いることもできる。
【0039】
このように一方の型枠ユニットから突き出してU字状に曲げ回されている帯鉄筋13bと、他方の型枠ユニットから水平に突き出した帯鉄筋13a,14aと接続されたU字鉄筋24とが、隅角部2aにおいて重ね合わされ、これらが隅角部2aに配置された主鉄筋11,12を取り囲むものとなっており、これらの鉄筋は帯鉄筋として主鉄筋11,12が隅角部2aのコンクリートから外周面側に押し出されるのを拘束することができる。
【0040】
なお、本実施の形態では、上記型枠ユニットUAの帯鉄筋13a,14aの所定長さが水平に突き出した端面の位置は、橋脚断面の辺に沿った方向でずれた位置に設定されている。つまりプレキャスト外型枠16の端面はプレキャスト内型枠17より隅角部2aから離れた位置に設定されている。そして、プレキャスト外型枠16の端面から突き出した複数の帯鉄筋13aの長さが、長いものと短いものとが上下に交互となるように配列されている。これらの水平に突き出した帯鉄筋13aに接続するU字鉄筋の直線部分24aの長さは、上記帯鉄筋13aの突き出し長と対応するように交互に調整されており、帯鉄筋13aの継ぎ手位置が上下に配列された帯鉄筋13の全てで水平方向に同じ位置となるのを回避することができる。つまり帯鉄筋13aの継ぎ手位置が交互に水平にずれた位置となり、鉄筋の信頼性を向上するとともに、均質なコンクリートの打設が可能となる。一方、橋脚断面の内周面に沿った位置における帯鉄筋14aの継ぎ手は隅角部2aに近い位置に設けられ、水平方向の同じ位置となっているが、外周面に沿った帯鉄筋の継ぎ手と同様に、プレキャスト内型枠17の端面の位置を隅角部2aから離れた位置とし、交互に継ぎ手の位置をずらすように設定することもできる。
また、プレキャスト外型枠16及びプレキャスト内型枠17の双方について端面の位置を隅角部2aと近い位置に設定し、上下に複数が配置された帯鉄筋13,14の全てについて継ぎ手が同じ位置となるようにすることもできる。このようにプレキャスト外型枠16及びプレキャスト内型枠17の端面の位置を隅角部2aと近い位置に設定することにより、橋脚の構築現場で組み立てる型枠の面積を少なくすることができる。
【0041】
図2に示すB部分、つまりほぼ長方形となった橋脚断面の長辺部分と隔壁とが接合される部分は、図9に示すように、Aタイプの型枠ユニットUAのプレキャスト内型枠17が途切れた部分にCタイプの型枠ユニットUCが備えるプレキャスト型枠20の端面が間隔を開けて対向するように配置する。このとき、Cタイプの型枠ユニットUCが備えるプレキャスト型枠20の端面からは水平に帯鉄筋23の所定の長さが突き出している。この帯鉄筋23の端面を、Aタイプの型枠ユニットUAのプレキャスト内型枠17が途切れた部分から突き出している鉄筋22の端面と間隔を開けて対向させる。これらの鉄筋22,23の端面間には、図9に示すようにこれらの間隔に合わせて切断された鉄筋26を介在させ、これらの両端をAタイプの型枠ユニットUAから突き出した鉄筋22とCタイプの型枠ユニットUCから突き出した帯鉄筋23とに継ぎ手25によって連結する。その後、この連結部分に中間帯鉄筋15を配置する。この中間帯鉄筋15も端部にプレー15aが固着されたプレート定着型の中間帯鉄筋を使用し、上下方向に複数が配列された帯鉄筋23の全てについて配置する。
【0042】
このように、配列された型枠ユニット間の開放された部分を利用して、各隅角部2a並びにAタイプの型枠ユニットUAとCタイプの型枠ユニットUCの接合部2fへの配筋が終了すると、これらの開放された部分のそれぞれに型枠(図示しない)を設置する。
その後、これらの型枠内、プレキャスト外型枠16,18とプレキャスト内型枠17,19の間、及び隔壁の2つのプレキャスト型枠20a,20b間にコンクリートを打設し、露出している帯鉄筋13,14、中間帯鉄筋15、主鉄筋11,12及びトラス部材21等を埋め込むとともにプレキャスト型枠16,17,18,19,20と密着させる。このコンクリートが硬化することにより、必要な鉄筋が埋め込まれるとともにプレキャストコンクリートの型枠と一体となった橋脚の一施工区分が形成される。これを順次に繰り返し、上方に施工区分毎に橋脚を立ち上げる。橋脚の最上部のコンクリート部材厚が拡大された部分及び中実部分2cは下端部と同様に橋脚の構築現場で鉄筋及び型枠を組み立て、コンクリートを打設して形成する。このようにして完成した橋脚上に橋桁が構築される。
【0043】
本願発明の橋脚の構築方法は、以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本願発明の範囲内で他の形態として実施することもできる。
例えば、プレキャスト外型枠16とプレキャスト内型枠17とを連結するためのトラス部材21に設けるアンカーは、図10に示すように帯鉄筋13,14の上下方向のピッチに合わせて設けておき、型枠ユニットを形成するときに帯鉄筋13,14をこれらのアンカー21eに支持させて配置することができる。また、これらのアンカー21eの先端部は上方に曲折したものを用いることもできる。これにより帯鉄筋13,14の配置を効率よく行うことができる。
【0044】
また、トラス部材21を用いることなく、又はトラス部材21とともに中間帯鉄筋15を用いて対向するプレキャスト外型枠16とプレキャスト内型枠17を、相対的な変位を抑制して連結することができる。例えば、図11に示すように上下方向に配列された中間帯鉄筋15に斜め方向に軸線を有する鉄筋つまり斜め部材27を複数の中間帯鉄筋15にわたって固定する。これらの斜め部材27と帯鉄筋15と2つのプレキャストコンクリート板16,17とがトラス構造を形成し、これらで形成される型枠ユニットを吊り上げたときに、2つのプレキャストコンクリート板の相互間の変位を小さく抑制することが可能となる。
【0045】
一方、隅角部に配置する水平方向の鉄筋は、上記実施の形態のようにU字鉄筋24に限定されるものではなく、図12又は図13に示すように鉄筋を水平に配置することもできる。
図12に示す例では、L字状に曲げ加工がなされたL字鉄筋28と、一端がフック状に曲げ加工されたフック付き鉄筋29を用いるものである。また、隅角部2aで隣り合う一方の型枠ユニットUAが有するプレキャスト外型枠16の帯鉄筋13とプレキャスト内型枠17の帯鉄筋14とは、図8に示す実施の形態と同様に、水平方向に所定長を付き出しておく。他方の型枠ユニットUBが有するプレキャスト外型枠18の帯鉄筋13は、端面から所定長を突き出しておき、プレキャスト内型枠19の帯鉄筋14は、橋脚の隣り合う側面2d付近まで伸長して先端にフック状の曲げ加工を施しておく。
【0046】
上記L字状鉄筋28は、一方の型枠ユニットUAのプレキャスト外型枠16から突き出した帯鉄筋13aの延長線に沿って先端を上記帯鉄筋13aの端面に向かって差し入れる。そして、他方の型枠ユニットUBのプレキャスト内型枠19から突き出した帯鉄筋14bの先端部に設けられたフック部分が係止されるものとし、先端が突き合わされた上記帯鉄筋13aに継ぎ手25によって接続する。一方、L字状に曲げ加工された後端部28aは他方の型枠ユニットUBのプレキャスト外型枠18から突き出した帯鉄筋13cに接続する。また、フック付き鉄筋29は、一方の型枠ユニットUAのプレキャスト内型枠17から突き出した帯鉄筋14aの延長線に沿って差し入れ、先端を該帯鉄筋14aに接続するとともに、後端部のフック部分を他方の型枠ユニットUBのプレキャスト外型枠18から突き出した帯鉄筋13cに係止する。
【0047】
図13に示す例は、後端部がフック状に曲げ加工された2本のフック付き鉄筋41,42を用いるものである。
隅角部2aで隣り合う一方の型枠ユニットUAが有するプレキャスト外型枠16の帯鉄筋13とプレキャスト内型枠17の帯鉄筋14とは、図8に示す実施の形態と同様に、水平方向に所定長を付き出しておく。ただし、この例では型枠ユニットUAのプレキャスト外型枠16とプレキャスト内型枠17の端面16b,17bの位置が帯鉄筋13,14を配置する方向において揃えられた位置になっている。一方、型枠ユニットUBが有するプレキャスト外型枠18及びプレキャスト内型19から突き出した帯鉄筋13bは、図8に示す例と同様にU字状に曲げ加工されて連続するものとなっている。
【0048】
上記フック付き鉄筋41は、一方の型枠ユニットUAのプレキャスト外型枠16から突き出した帯鉄筋13aの延長線に沿って先端を上記帯鉄筋13aの端面に向かって差し入れる。そして、他方の型枠ユニットUBのプレキャスト外型枠18及びプレキャスト内型枠19から突き出してU字状に曲げ回された帯鉄筋13bの一部と重ね合わせ、先端が突き合わされた上記帯鉄筋13aに継ぎ手25によって接続する。もう一本のフック付き鉄筋42は、プレキャスト内型枠17から突き出した帯鉄筋14aの延長線に沿って先端を上記帯鉄筋14aの端面に向かって差し入れ、上記帯鉄筋14aと接続する。これらのフック付き鉄筋41,42の後端部に設けられたフック状に曲げ加工した部分は、他方の型枠ユニットUBから突き出したU字状の帯鉄筋13bの一部と重ね合わせ、隅角部のコンクリート中に定着する。
なお、上記L字状鉄筋28及びフック付き鉄筋29,41,42と帯鉄筋との接続には機械継ぎ手を用いるのが、作業効率を向上させるために望ましい。
このように水平方向の鉄筋を配置しても、作業量を低減することができるともに、鉄筋の継ぎ手の箇所を少なくすることが可能となる。
【0049】
一方、ほぼ長方形となった橋脚断面の長辺部分と隔壁とが接合される部分についても、図9に示すように水平方向の鉄筋を配置する方法の他に、例えば図14又は図15に示すように水平方向の鉄筋を配置することもできる。
図14に示す例は、図9に示す例と同様にAタイプの型枠ユニットUA’のプレキャスト内型枠17が途切れた部分に、隔壁の帯鉄筋と接続する鉄筋51を突き出しておく。ただし、この例ではAタイプの型枠ユニットUA’のプレキャスト内型枠17は、途切れた部分で隔壁の側面に沿った方向に曲折し、隔壁に沿った方向に所定長が突き出している。そしてこの突き出した端面から上記鉄筋51が突き出している。
一方、隔壁を形成するためのCタイプの型枠ユニットUCは、対向するように配置された2つのプレキャスト型枠20,20からそれぞれ帯鉄筋23が突き出し、これらがU字状に曲げ回されて連続している。このU字状となって突き出した帯鉄筋の先端部23aは、Aタイプの型枠ユニットUA’から突き出した上記鉄筋51の先端と重ならない位置に設定しておく。そして、Aタイプの型枠ユニットUA’から突き出した上記鉄筋51には、図14に示すように側方からフック付き鉄筋52を継ぎ手53によって接続する。このフック付き鉄筋52がU字状となった帯鉄筋と重ね合わされるとともにフック状に曲げ加工された部分が橋脚の構築現場で打設されたコンクリート内に埋め込まれることによって帯鉄筋23の引張力が伝達されるとともに鉛直方向の鉄筋の変位を拘束することができる。
【0050】
図15に示す例は、橋脚断面の長辺部分に用いる型枠ユニットUA”が隔壁と接合される部分で2つに分割されており、分割された型枠ユニットUA”のそれぞれを所定の位置に配置した後にプレキャスト外型枠16とプレキャスト内型枠17に埋め込んである帯鉄筋13,14を継ぎ手54によって接続するものとなっている。なお、この継ぎ手54には管状部材の両端から接続する鉄筋の端部を挿入してグラウトを管状部材内に注入するグラウト式の継ぎ手を用いるのが望ましい。
【0051】
一方、隔壁部分に用いられる型枠ユニットUCは、図9に示す例と同様に2つのプレキャスト型枠20から帯鉄筋23の端部を突き出しておく。そして、型枠ユニットUA”及び型枠ユニットUCを配置した後、2つのプレキャスト型枠20の端面からそれぞれ突き出した帯鉄筋23bの延長線に沿って、橋脚の外周面の外側から2本のフック付き鉄筋55の先端を差し入れる。このフック付き鉄筋55は、図15に示すように後端部にフック状の曲げ加工が施されたものである。このフック付き鉄筋55の先端をプレキャスト型枠20の端面から突き出した帯鉄筋23bと継ぎ手56によって接続し、後端部のフック状に曲げ加工された部分を橋脚の構築現場で打設されるコンクリート中に埋め込んで定着する。
このような構成で、ほぼ長方形となった橋脚断面の長辺部分と隔壁とが接合される部分に水平方向の鉄筋を配置しても、効率の良い作業を実現することができる。
【符号の説明】
【0052】
1:橋桁、 2:橋脚、 2a:橋脚断面の隅角部、 3:橋台、 4:ケーソン、 5:フーチング、
11:外周面に沿った位置の主鉄筋、 12:内周面に沿った位置の主鉄筋、 13:外周面に沿った位置の帯鉄筋、 14:内周面に沿った位置の帯鉄筋、 15:中間帯鉄筋、 16:プレキャスト外型枠、 17:プレキャスト内型枠、 18プレキャスト外型枠、 19:プレキャスト内型枠、 20:隔壁部分のプレキャスト型枠、 21:トラス部材、 22:Aタイプの型枠ユニットから突き出した鉄筋、 23:隔壁部分に配置される帯鉄筋、 24:U字鉄筋、 25:継ぎ手、 26:連結鉄筋、 27:斜め部材、 28:L字鉄筋、 29:フック付き鉄筋、
31:製作台、 32:内側の型枠、 33:外側の型枠、
41,42:フック付き鉄筋、
51:隔壁の帯鉄筋と接続する鉄筋、 52:フック付き鉄筋、 53:継ぎ手、 54:継ぎ手、 55:フック付き鉄筋、 56:継ぎ手、
UA:Aタイプの型枠ユニット、 UB:Bタイプの型枠ユニット、 UC:Cタイプの型枠ユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレキャストコンクリートにより形成された型枠を用い、現場で打設されたコンクリートと前記型枠とを一体として、断面形状が矩形で内部に空間を有する橋脚を構築する方法であって、
所定の高さを有し、橋脚の周方向に複数が配列されて前記橋脚の外周面を形成するプレキャストコンクリートからなるプレキャスト外型枠と、該プレキャスト外型枠と所定の間隔をあけて該プレキャスト外型枠と連結され、前記橋脚の中空となった内周面を形成するプレキャストコンクリートからなるプレキャスト内型枠と、前記プレキャスト外型枠及びプレキャスト内型枠のそれぞれに水平方向に埋設される複数の帯鉄筋と、前記プレキャスト外型枠に埋め込まれた帯鉄筋とプレキャスト内型枠に埋め込まれた帯鉄筋とを水平方向に連結する中間帯鉄筋と、を備えた型枠ユニットを製作しておき、
前記橋脚の基礎又は前記橋脚の既に形成された部分の上に、立設された主鉄筋を前記プレキャスト外型枠と前記プレキャスト内型枠との間に挿通して前記型枠ユニットを載置し、該橋脚の隅角部を除外して周方向に複数の前記型枠ユニットを配列する工程と、
前記隅角部に水平方向の鉄筋を配置するとともに、該隅角部の型枠を現場で組み立てて、前記隅角部の前記型枠内及び前記プレキャスト外型枠とプレキャスト内型枠との間にコンクリートを打設する工程とを含み、
前記型枠ユニットを配列する工程と、前記隅角部の前記鉄筋を配置し、前記型枠を組み立てる工程と、前記コンクリートを打設する工程と、を繰り返して順次に上方に立ち上げることを特徴とする橋脚の構築方法。
【請求項2】
前記隅角部を除外し、該隅角部の両側で隣り合うように配置された前記型枠ユニットの一方は、前記プレキャスト外型枠及び前記プレキャスト内型枠のほぼ鉛直となった端面から前記隅角部に向かってそれぞれ水平に帯鉄筋の端部を突出させておき、
他方の型枠ユニットは、前記プレキャスト外型枠及び前記プレキャスト内型枠のほぼ鉛直となった端面から前記隅角部に向かってそれぞれ水平に突き出し、前記隅角部でU字状に連続した帯鉄筋を有するものとし、
前記型枠ユニットの配列後に前記隅角部に配置する水平方向の鉄筋として、後端部がフック状に曲げ加工された2本の所定長のフック付き鉄筋を用い、前記一方の型枠ユニットの端面から突出した前記帯鉄筋の延長線に沿って該突出した帯鉄筋の端面に向かって前記フック付き鉄筋を先端から差し入れ、該フック付き鉄筋と前記一方の型枠ユニットから突出した前記帯鉄筋の端部とを接続し、
前記フック付き鉄筋のフック状に曲げ加工された部分を、前記隅角部に埋め込んで定着することを特徴とする請求項1に記載の橋脚の構築方法。
【請求項3】
前記隅角部を除外し、該隅角部の両側で隣り合うように配置された前記型枠ユニットの一方は、前記プレキャスト外型枠及び前記プレキャスト内型枠のほぼ鉛直となった端面から前記隅角部に向かってそれぞれ水平に帯鉄筋の端部を突出させておき、
他方の型枠ユニットは、前記プレキャスト外型枠及び前記プレキャスト内型枠のほぼ鉛直となった端面から前記隅角部に向かってそれぞれ水平に突き出し、前記隅角部でU字状に連続した帯鉄筋を有するものとし、
前記型枠ユニットの配列後に前記隅角部に配置する水平方向の鉄筋として、U字状に曲げ加工されたU字鉄筋を用い、該U字鉄筋の曲げ加工された部分の両側のほぼ平行となった部分を、前記一方の型枠ユニットの端面から突出した前記帯鉄筋の延長線に沿って該突出した帯鉄筋の端面に向かって差し入れ、該U字鉄筋と前記一方の型枠ユニットから突出した前記帯鉄筋の端部とを接続し、
前記他方の型枠ユニットから突き出した前記帯鉄筋のU字状となるように曲げ回された部分と前記U字鉄筋の曲げ回された部分とで、前記隅角部に配置された前記主鉄筋を囲むことを特徴とする請求項1に記載の橋脚の構築方法。
【請求項4】
前記プレキャスト外型枠と前記プレキャスト内型枠とは、鋼製のトラス部材によって所定の間隔で連結したものとし、
該トラス部材は、前記プレキャスト外型枠と前記プレキャスト内型枠とに密接し、鉛直方向に軸線を有する二つの弦材と、これらを斜め方向に連結する斜材と、前記二つの弦材のそれぞれに固着されるとともにプレキャスト外型枠又はプレキャスト内型枠のコンクリート中に埋め込まれる複数のアンカーを有し、
該アンカーは、上下方向に所定の間隔をおいて水平方向に配置される前記帯鉄筋の上下方向の間隔に合わせて設け、
前記型枠ユニットの製作時において、前記帯鉄筋は前記アンカーに支持させて配置することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の橋脚の構築方法。
【請求項5】
前記中間帯鉄筋は、水平方向に所定の間隔で設けるとともに、それぞれの帯鉄筋に対して上下方向に配列して設け、両端部を前記プレキャスト外型枠及びプレキャスト内型枠に埋め込むものとし、
上下方向に配列した前記帯鉄筋の側面に、斜め方向に軸線を有する斜め部材を当接し、複数の前記中間帯鉄筋に対して結合し、
該斜め部材によって前記プレキャスト外型枠とプレキャスト内型枠との相対的な変位を拘束することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の橋脚の構築方法。
【請求項1】
プレキャストコンクリートにより形成された型枠を用い、現場で打設されたコンクリートと前記型枠とを一体として、断面形状が矩形で内部に空間を有する橋脚を構築する方法であって、
所定の高さを有し、橋脚の周方向に複数が配列されて前記橋脚の外周面を形成するプレキャストコンクリートからなるプレキャスト外型枠と、該プレキャスト外型枠と所定の間隔をあけて該プレキャスト外型枠と連結され、前記橋脚の中空となった内周面を形成するプレキャストコンクリートからなるプレキャスト内型枠と、前記プレキャスト外型枠及びプレキャスト内型枠のそれぞれに水平方向に埋設される複数の帯鉄筋と、前記プレキャスト外型枠に埋め込まれた帯鉄筋とプレキャスト内型枠に埋め込まれた帯鉄筋とを水平方向に連結する中間帯鉄筋と、を備えた型枠ユニットを製作しておき、
前記橋脚の基礎又は前記橋脚の既に形成された部分の上に、立設された主鉄筋を前記プレキャスト外型枠と前記プレキャスト内型枠との間に挿通して前記型枠ユニットを載置し、該橋脚の隅角部を除外して周方向に複数の前記型枠ユニットを配列する工程と、
前記隅角部に水平方向の鉄筋を配置するとともに、該隅角部の型枠を現場で組み立てて、前記隅角部の前記型枠内及び前記プレキャスト外型枠とプレキャスト内型枠との間にコンクリートを打設する工程とを含み、
前記型枠ユニットを配列する工程と、前記隅角部の前記鉄筋を配置し、前記型枠を組み立てる工程と、前記コンクリートを打設する工程と、を繰り返して順次に上方に立ち上げることを特徴とする橋脚の構築方法。
【請求項2】
前記隅角部を除外し、該隅角部の両側で隣り合うように配置された前記型枠ユニットの一方は、前記プレキャスト外型枠及び前記プレキャスト内型枠のほぼ鉛直となった端面から前記隅角部に向かってそれぞれ水平に帯鉄筋の端部を突出させておき、
他方の型枠ユニットは、前記プレキャスト外型枠及び前記プレキャスト内型枠のほぼ鉛直となった端面から前記隅角部に向かってそれぞれ水平に突き出し、前記隅角部でU字状に連続した帯鉄筋を有するものとし、
前記型枠ユニットの配列後に前記隅角部に配置する水平方向の鉄筋として、後端部がフック状に曲げ加工された2本の所定長のフック付き鉄筋を用い、前記一方の型枠ユニットの端面から突出した前記帯鉄筋の延長線に沿って該突出した帯鉄筋の端面に向かって前記フック付き鉄筋を先端から差し入れ、該フック付き鉄筋と前記一方の型枠ユニットから突出した前記帯鉄筋の端部とを接続し、
前記フック付き鉄筋のフック状に曲げ加工された部分を、前記隅角部に埋め込んで定着することを特徴とする請求項1に記載の橋脚の構築方法。
【請求項3】
前記隅角部を除外し、該隅角部の両側で隣り合うように配置された前記型枠ユニットの一方は、前記プレキャスト外型枠及び前記プレキャスト内型枠のほぼ鉛直となった端面から前記隅角部に向かってそれぞれ水平に帯鉄筋の端部を突出させておき、
他方の型枠ユニットは、前記プレキャスト外型枠及び前記プレキャスト内型枠のほぼ鉛直となった端面から前記隅角部に向かってそれぞれ水平に突き出し、前記隅角部でU字状に連続した帯鉄筋を有するものとし、
前記型枠ユニットの配列後に前記隅角部に配置する水平方向の鉄筋として、U字状に曲げ加工されたU字鉄筋を用い、該U字鉄筋の曲げ加工された部分の両側のほぼ平行となった部分を、前記一方の型枠ユニットの端面から突出した前記帯鉄筋の延長線に沿って該突出した帯鉄筋の端面に向かって差し入れ、該U字鉄筋と前記一方の型枠ユニットから突出した前記帯鉄筋の端部とを接続し、
前記他方の型枠ユニットから突き出した前記帯鉄筋のU字状となるように曲げ回された部分と前記U字鉄筋の曲げ回された部分とで、前記隅角部に配置された前記主鉄筋を囲むことを特徴とする請求項1に記載の橋脚の構築方法。
【請求項4】
前記プレキャスト外型枠と前記プレキャスト内型枠とは、鋼製のトラス部材によって所定の間隔で連結したものとし、
該トラス部材は、前記プレキャスト外型枠と前記プレキャスト内型枠とに密接し、鉛直方向に軸線を有する二つの弦材と、これらを斜め方向に連結する斜材と、前記二つの弦材のそれぞれに固着されるとともにプレキャスト外型枠又はプレキャスト内型枠のコンクリート中に埋め込まれる複数のアンカーを有し、
該アンカーは、上下方向に所定の間隔をおいて水平方向に配置される前記帯鉄筋の上下方向の間隔に合わせて設け、
前記型枠ユニットの製作時において、前記帯鉄筋は前記アンカーに支持させて配置することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の橋脚の構築方法。
【請求項5】
前記中間帯鉄筋は、水平方向に所定の間隔で設けるとともに、それぞれの帯鉄筋に対して上下方向に配列して設け、両端部を前記プレキャスト外型枠及びプレキャスト内型枠に埋め込むものとし、
上下方向に配列した前記帯鉄筋の側面に、斜め方向に軸線を有する斜め部材を当接し、複数の前記中間帯鉄筋に対して結合し、
該斜め部材によって前記プレキャスト外型枠とプレキャスト内型枠との相対的な変位を拘束することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の橋脚の構築方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−2238(P2013−2238A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137345(P2011−137345)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】
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