説明

機器・配管類用衝突緩和具

【課題】施工性が高く、保管スペース面及びコスト面でも有利に実施することができるものでありながら、機器・配管類を覆い包む緩衝用気体層による高い緩衝機能で機器・配管類を効果的に保護することができ、しかも、機器類の外部からの目視による状況確認の確実化、容易化を図る。
【解決手段】突出状態で設置されている機器・配管類Aに対して外装可能な収納空間1を形成する状態で袋状に接合される透視可能な合成樹脂フィルム製の内側保護袋2に、当該内側保護袋2の外側面及び底辺部との間に気体を封入可能な緩衝用気体封入空間3を形成する状態で透視可能な合成樹脂フィルム製の外側保護袋4を接合し、前記外側保護袋4の合成樹脂フィルムの接合部分の一部に、前記緩衝用気体封入空間3に対して外部から気体を供給する気体供給部5を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント工事現場や各種工場、各種発電設備などにおいて突出状態で設置されている各種の機器類や配管類に衝突した際の対人保護及び機器・配管類の保護を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、プラントの工事現場に設置される塔・槽類には多くのノズルを備えた機器や圧力計、温度計などの計器類が装備されているため、工事期間中の衝突に起因する損傷を防止する対策として、機器類をウエスで覆い包んだり、納品箱等の紙箱を被せる等の様々な対策が講じられている。
【0003】
一般的なウエス養生の場合は、機器類を保護するためのウエスの使用量が多くなるとともに、それに伴ってウエスの巻き付け作業に多くの手間を要する。
また、機器類の状況を確認する場合には、巻き付けられているウエスを一旦取り除く必要があり、しかも、機器類の状況確認後に再びウエスを巻き付ける必要があるため、機器類の状況確認作業に多くの手間を要している。
さらに、多量の嵩張るウエスを予め保管するための大きなスペースを確保する必要があるとともに、使用済みウエスは保管ができない場合には廃棄物として捨てられることもあり、スペース面及びコスト面で問題がある。
【0004】
また、機器類に紙箱を被せる場合は、注意を喚起することが主目的であるため、機器類の衝突等に起因する損傷を防止する機能は殆ど無い。
【0005】
そして、近年では、ウエスに代えて、重ね合わされた軟質の樹脂シートを、それらの対向面間に空気封入室を区画形成する状態で熱融着するとともに、この区画形成された空気封入室内に空気を密封してなる空気封入緩衝材を用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この場合、空気封入緩衝材の空気封入室内に封入された空気層による緩衝機能により、ウエスよりも高い緩衝機能を得ることができるとともに、空気封入緩衝材を構成する樹脂シートを透明にすることにより、機器類の状況を外部から容易に目視確認することができる。
【0007】
反面、空気が密封された空気封入緩衝材を機器類に巻き付ける必要があるため、ウエスに比べて巻き付け難く、しかも、空気封入緩衝材を復元力に抗して巻き付け姿勢に保持する必要があるため、空気封入緩衝材の巻き付け作業に多くの手間を要する問題があった。
【0008】
さらに、多量の嵩張る空気封入緩衝材を予め保管するための大きなスペースを確保する必要があり、しかも、使用済み空気封入緩衝材は保管ができない場合には廃棄物として捨てられることもあり、スペース面及びコスト面で問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−193220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の実状に鑑みて為されたものであって、その主たる課題は、従来に比して施工性が高く、保管スペース面及びコスト面でも有利に実施することができるものでありながら、機器・配管類を覆い包む緩衝用気体層による高い緩衝機能で機器・配管類を効果的に保護することができ、しかも、機器類の外部からの目視による状況確認の確実化、容易化を図ることのできる機器・配管類用衝突緩和具を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の機器・配管類用衝突緩和具による第1の特徴構成は、突出状態で設置されている機器・配管類に対して外装可能な収納空間を形成する状態で袋状に接合される透視可能な合成樹脂フィルム製の内側保護袋に、当該内側保護袋の外側面及び底辺部との間に気体を封入可能な緩衝用気体封入空間を形成する状態で透視可能な合成樹脂フィルム製の外側保護袋を接合し、前記外側保護袋の合成樹脂フィルムの接合部分の一部に、前記緩衝用気体封入空間に対して外部から気体を供給する気体供給部を設けてある点にある。
【0012】
上記構成によれば、突出状態で設置されている機器・配管類に対して内側保護袋を開口部側から外装して、該内側保護袋の収納空間内に機器・配管類を収納し、この状態で外側保護袋の合成樹脂フィルムの接合部分の一部に設けられた気体供給部から内側保護袋の外側面及び底辺部と外側保護袋の内面との間に形成されている緩衝用気体封入空間内に気体を供給することにより、この緩衝用気体封入空間の内圧で内側保護袋が機器・配管類の外面に沿って密着変形するとともに、外側保護袋が外方に膨張変形し、内側保護袋の外面と外側保護袋の内面との間に機器・配管類を覆い包む緩衝用気体層を形成することができる。
【0013】
それ故に、衝突緩和具を機器・配管類に外装状態で装着する際には、内側保護袋及び外側保護袋を構成する合成樹脂フィルムの柔軟性を利用して容易に外装することができるとともに、気体供給部から緩衝用気体封入空間内に気体を供給するだけで、機器・配管類を覆い包む緩衝用気体層を形成することができるから、従来に比して施工性が高く、保管スペース面及びコスト面でも有利に実施することができるものでありながら、機器・配管類を覆い包む緩衝用気体層による高い緩衝機能で機器・配管類を効果的に保護することができる。
【0014】
しかも、内側保護袋及び外側保護袋は透視可能であることと、緩衝用気体封入空間内への気体供給に伴って内側保護袋が機器・配管類の外面に沿って密着変形し、且つ、外側保護袋が外方に膨張して張った状態にあるため、機器・配管類の外部からの目視による状況確認の確実化、容易化を図ることができる。
【0015】
本発明による第2の特徴構成は、前記内側保護袋の底辺部には、収納空間側に折り込まれるマチ部が形成され、前記緩衝用気体封入空間への気体供給による外側保護袋の膨張変形に伴って前記マチ部が引き出される構成にしてある点にある。
【0016】
突出状態で設置されている機器・配管類に対して内側保護袋を開口部側から外装して、当該内側保護袋の収納空間内の所定位置に機器・配管類を収納しても、緩衝用気体封入空間内への気体供給に伴う外側保護袋の外方への膨張変形に連れて内側保護袋の底部が開口部側に突出する状態で凸状に湾曲変形して、機器・配管類に開口側に向けて押し出し力が作用するため、その反力で機器・配管類に外装した衝突緩和具が抜け出し移動し、機器・配管類の保護対象部位を確実に保護することができない事態が発生する可能性がある。
【0017】
しかし、本発明では、緩衝用気体封入空間内への気体供給に伴う外側保護袋の外方への膨張変形に伴って、内側保護袋の底辺部に設けたマチ部が引き出されるから、内側保護袋の収納空間内の機器・配管類に対して開口部側に向けた押し出し力が作用することを回避又は減少することができ、それの反力で機器・配管類に外装した衝突緩和具が抜け出し移動することを抑制して、機器・配管類の保護対象部位を確実に保護することができる。
【0018】
本発明による第3の特徴構成は、前記気体供給部が外側保護袋の底辺部に設けられている点にある。
【0019】
上記構成によれば、突出状態で設置されている機器・配管類に対して内側保護袋を開口部側から外装して、当該内側保護袋の収納空間内に機器・配管類を収納した状態では、外側保護袋の底辺部は機器・配管類の先端から最も離れた部位にあたるから、この部位に気体供給部を配設することにより、気体供給作業を他の構成に邪魔されることなく容易に行うことができる。
【0020】
本発明による第4の特徴構成は、前記気体供給部が、前記緩衝用気体封入空間と外部とを連通する通気路と緩衝用気体封入空間の内圧で前記通気路を遮断可能な逆止弁膜とを備えた合成樹脂フィルム製の筒状の逆止弁体から構成されているとともに、前記逆止弁体の逆止弁膜が、当該逆止弁体の通気路に対して外部側から挿入される気体供給管又は気体排出管によって押し開き可能に構成されている点にある。
【0021】
上記構成によれば、緩衝用気体封入空間内に供給された気体の流出を防止するための逆止弁が合成樹脂フィルム製の筒状に構成されているため、外側保護袋の合成樹脂フィルムの接合時に逆止弁体も同時に能率良く接合することができる。
【0022】
しかも、このような逆止弁体を設けながらも、機器・配管類に外装した衝突緩和具を撤去する場合には、逆止弁体の通気路に対して逆止弁膜を押し広げる状態で外部側から気体排出管を挿入することにより、緩衝用気体封入空間内の気体を外部にスムーズに排出することができるから、衝突緩和具の撤去作業を能率良く容易に行うことができるとともに、使用後の衝突緩和具をコンパクトに折畳んだ状態で保管することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の機器・配管類用衝突緩和具の正面図
【図2】図1におけるII−II線断面図
【図3】図1におけるIII−III線断面図
【図4】衝突緩和具の接合前の分解斜視図
【図5】機器・配管類に衝突緩和具を外装したときの斜視図
【図6】緩衝用気体封入空間内に空気を供給したときの斜視図
【図7】機器・配管類に衝突緩和具を外装したときの断面図
【図8】緩衝用気体封入空間内に空気を供給したときの断面図
【図9】緩衝用気体封入空間内に空気が充満したときの断面図
【図10】機器・配管類用衝突緩和具の製造方法を示す斜視図
【図11】機器・配管類用衝突緩和具の製造方法を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔第1実施形態〕
図1〜図4は、プラント工事現場や各種工場、各種発電設備などにおいて突出状態で設置されている各種の機器類や配管類に装着して、衝突したときの対人保護及び機器・配管類Aの保護を図る衝突緩和具を示す。
【0025】
この機器・配管類用衝突緩和具は、保護対象の機器・配管類Aに対して外装可能な大きさの収納空間1を形成する状態で袋状に接合される内側保護袋2に、当該内側保護袋2の外側面2a及び底辺部2bとの間に気体の一例である空気を封入可能な緩衝用気体封入空間3を形成する状態で外側保護袋4が接合され、外側保護袋4の接合部分の一部である底辺部には、緩衝用気体封入空間3に対して外部から空気を供給する気体供給部5が接合されている。
【0026】
内側保護袋2を構成する合成樹脂フィルム2A及び外側保護袋4を構成する合成樹脂フィルム4A,4Bは、外側保護袋4及び内側保護袋2を通して保護対象の機器・配管類Aを外部から透視可能な透明に構成されている。
【0027】
尚、外側保護袋4の合成樹脂フィルム4A,4B又は内側保護袋2の合成樹脂フィルム2Aに文字や図形等が印刷されていない場合は、保護対象の機器・配管類Aの全体を透視することができるが、文字や図形等が印刷されている場合では、印刷以外の部位を通して保護対象の機器・配管類Aを外部から視認することになる。
【0028】
内側保護袋2は、保護対象の機器・配管類Aを覆い包むことが可能な大きさで二つ折りにされた柔軟な矩形状の合成樹脂フィルム2Aのうち、左右の側辺部に沿って厚み方向で対面する第1側縁部分2c(図1の斜線H1で示す帯状熱融着部位)同士を後述の外側保護袋4と一緒に同時に熱融着にて接合することにより、重ね合わされた合成樹脂フィルム2Aの対向面間に収納空間1が形成されるとともに、上辺部に沿って厚み方向で対面する上縁部分2d間には収納空間1の開口部1aが形成される。
【0029】
内側保護袋2の底辺部2bを構成する合成樹脂フィルム2Aの二つ折り部には、収納空間1側にV字状又はU字状に折り込まれたマチ部2Bが形成されているとともに、このマチ部2Bの左右の側辺部に沿う第2側縁部分2eも、第1側縁部分2cと一緒に熱融着にて接合され、緩衝用気体封入空間3への空気供給による外側保護袋4の外方側への膨張変形に伴って内側保護袋2のマチ部2Bの左右方向中間部分が引き出される構成にしてある。
【0030】
このマチ部2Bの左右方向中間部分の引き出しによって、内側保護袋2の底辺部2bが開口部1a側に突出する状態で凸状に湾曲変形することを抑制することにより、内側保護袋2の収納空間1内の機器・配管類Aに対して開口部1a側に向けた押し出し力が作用することを回避又は減少することができ、この反力で機器・配管類Aに外装した衝突緩和具が抜け出し移動することを抑制して、機器・配管類Aの保護対象部位を確実に保護することができる。
【0031】
外側保護袋4は、内側保護袋2の外側面2a及び底辺部2bとの間に緩衝用気体封入空間3を現出可能な大きさに構成された柔軟な矩形状の二枚の合成樹脂フィルム4A、4Bを、それの上辺部を構成する上縁部分4b及び左右の両側辺部を構成する側縁部分4cを内側保護袋2の上辺部を構成する上縁部分2d及び左右の両側辺部を構成する両側縁部分2c,2eに合致させた状態で重ね合わせ、この重ね合わされた両合成樹脂フィルム4A,4Bのうち、左右の側縁部分(図1の斜線H1で示す帯状熱融着部位)同士を、内側保護袋2の合成樹脂フィルム2Aの両側縁部分2c,2eと一緒に熱融着にて接合する。
【0032】
外側保護袋4の両合成樹脂フィルム4A,4Bの底辺部に沿って厚み方向で対面する下縁部分4a(図1の斜線H2で示す帯状熱融着部位)同士を、気体供給部5の一例である合成樹脂フィルム製の偏平筒状の逆止弁体5Aと一緒に熱融着にて接合するとともに、外側保護袋4の両合成樹脂フィルム4A,4Bにおける上縁部分4bの内面とこれに対面する内側保護袋2の合成樹脂フィルム2Aにおける上縁部分2dの外面(図1の斜線H3で示す帯状熱融着部位)とを熱融着にて接合し、外側保護袋4の内面と内側保護袋2の外面との間に、内側保護袋2の収納空間1内に収納した機器・配管類Aを衝突時の衝撃から保護するための緩衝用気体封入空間3を形成してある。
【0033】
逆止弁体5Aは、重ね合わされた二枚の薄膜状の合成樹脂フィルム5a,5bを偏平筒状に熱融着して、両合成樹脂フィルム5a,5b間に、緩衝用気体封入空間3と外側保護袋4の外部とを連通する通気路5cを形成するとともに、緩衝用気体封入空間3内に位置する両合成樹脂フィルム5a,5bの内側筒状形成部分を、緩衝用気体封入空間3の内圧で密着して通気路5cを遮断する逆止弁膜5dに構成してある。
【0034】
前記逆止弁体5Aの逆止弁膜5dは、当該逆止弁体5Aの通気路5cに対して外側保護袋4の外部側から挿入される気体供給管6又は気体排出管7(図6参照 但し、空気の流動方向を示す矢印は逆になる)によって押し開き可能に構成されているとともに、両合成樹脂フィルム5a,5bの外側筒状形成部分の端部位置を、図1、図3に示すように、筒軸芯方向で寸法Lだけ位置齟齬させ、気体供給管6又は気体排出管7の挿入時における両合成樹脂フィルム5a,5bの外側筒状形成部分の端部開口操作の容易化を図っている。
【0035】
当該実施形態では、気体供給管6として、人が口で空気を吹き込み可能な合成樹脂製のパイプが使用され、また、気体排出管7は、気体供給管6と同じパイプが兼用使用される。
【0036】
尚、気体供給管6としては、送気ポンプ等で空気を供給する空気供給機の空気供給ノズルであってもよく、さらに、気体排出管7としては、脱気ポンプ等で空気を強制排出する空気排出機の空気排出ノズルであってもよい。
【0037】
次に、機器・配管類(本実施形態では、流体管Pに付設された圧力計等の計器を示している)Aに衝突緩和具を装着する方法について簡単に説明する。
図5、図7に示すように、機器・配管類Aに対して衝突緩和具を開口部1a側から外装し、内側保護袋2の収納空間1内の所定位置に機器・配管類Aを収納する。
【0038】
次に、図6、図8に示すように、外側保護袋4の底辺部の左右中央位置に接合されている逆止弁体5Aの通気路5cに対して外側保護袋4の外部側から気体供給管6を挿入する。この挿入された気体供給管6の先端部で逆止弁膜5dを構成する両合成樹脂フィルム5a,5bの内側筒状形成部分を押し開き、この気体供給管6を通して外側保護袋4の内面と内側保護袋2の外面との間に形成されている緩衝用気体封入空間3内に空気を供給する。
【0039】
この緩衝用気体封入空間3内への空気供給に伴って外側保護袋4が外方に膨張変形するとともに、内側保護袋2が緩衝用気体封入空間3の内圧で機器・配管類Aの外面に沿って密着変形する。
このとき、図7、図8に示すように、緩衝用気体封入空間3内への空気供給に伴う外側保護袋4の外方への膨張変形に連れて、内側保護袋2の底辺部2bを構成する合成樹脂フィルム2Aの二つ折り部に設けたマチ部2Bが引き出されるから、内側保護袋2の収納空間1内の機器・配管類Aに対して開口部1a側に向けた押し出し力が作用することを回避又は減少することができ、この反力によって機器・配管類Aに外装された衝突緩和具が抜け出し移動することを抑制して、機器・配管類Aの保護対象部位を確実に保護することができる。
【0040】
そして、緩衝用気体封入空間3内に十分な空気が充填された時点で気体供給管6を引抜き操作すると、図9に示すように、緩衝用気体封入空間3内の空気圧で逆止弁体5Aの逆止弁膜5dを構成する両合成樹脂フィルム5a,5bの内側筒状形成部分が密着され、逆止弁体5Aの通気路5cが遮断される。
【0041】
それ故に、衝突緩和具を機器・配管類Aに外装状態で装着する際には、内側保護袋2及び外側保護袋4を構成する合成樹脂フィルム2A,4A,4Bの柔軟性を利用して容易に外装することができるとともに、逆止弁体5Aから緩衝用気体封入空間3内に空気を供給するだけで、機器・配管類Aを覆い包む緩衝用気体層を形成することができるから、従来に比して施工性が高く、保管スペース面及びコスト面でも有利に実施することができるものでありながら、機器・配管類Aを覆い包む緩衝用気体層による高い緩衝機能で機器・配管類Aを効果的に保護することができる。
【0042】
しかも、内側保護袋2及び外側保護袋4を構成する合成樹脂フィルム2A,4A,4Bが透明で外部から透視可能であることと、緩衝用気体封入空間3内への空気供給に伴って内側保護袋2が機器・配管類Aの外面に沿って密着し、且つ、外側保護袋4が外方に膨張した張った状態にあるため、機器・配管類Aの外部からの目視による状況確認の確実化、容易化を図ることができる。
【0043】
機器・配管類Aから衝突緩和具を取り外す場合には、外側保護袋4の底辺部に設けられている逆止弁体5Aの通気路5cに対して外側保護袋4の外部側から気体排出管7(図6参照 但し、空気の流動方向を示す矢印は逆になる)を挿入し、この気体排出管7の先端部で逆止弁膜5dを構成する両合成樹脂フィルム5a,5bの内側筒状形成部分を押し開く。
この状態で外側保護袋4に適度の圧力を加えて当該外側保護袋4の内面と内側保護袋2の外面との間に形成されている緩衝用気体封入空間3内の空気を排出する。
【0044】
次に、機器・配管類用衝突緩和具の製造方法について説明する。
図10、図11に示すように、合成樹脂フィルム2Aの二つ折り部にV字状又はU字状のマチ部2Bが折り込み形成されている内側保護袋2を第1搬送経路に沿って搬送し、当該第1搬送経路で搬送される内側保護袋2の合成樹脂フィルム2A両側に、第1搬送経路の両側脇の第2・第3搬送経路に沿って搬送される外側保護袋4の合成樹脂フィルム4A,4Bを重合状態で供給する。
【0045】
この外側保護袋4の合成樹脂フィルム4A,4Bの重合直前において、両合成樹脂フィルム4A,4Bの下縁部分4a間に、弁供給装置により合成樹脂フィルム製の偏平筒状の逆止弁体5Aを袋搬送方向に対して直行する方向から供給する。
【0046】
このとき、逆止弁体5Aの通気路5cには、外側保護袋4の両合成樹脂フィルム4A,4Bの下縁部分4aでの熱融着時に、両合成樹脂フィルム5a,5bの通気路形成面側での熱融着を防止するためのテフロンシート8を挿入しておき、熱融着後に引抜く。
【0047】
外側保護袋4の両合成樹脂フィルム4A,4Bの底辺部に沿って厚み方向で対面する下縁部分4a(図1の斜線H2で示す帯状熱融着部位)同士を、気体供給部5の一例である合成樹脂フィルム製の偏平筒状の逆止弁体5Aと一緒に熱融着にて接合するとともに、外側保護袋4の両合成樹脂フィルム4A,4Bにおける上縁部分4bの内面とこれに対面する内側保護袋2の合成樹脂フィルム2Aにおける上縁部分2dの外面(図1の斜線H3で示す帯状熱融着部位)とを熱融着にて接合し、外側保護袋4の内面と内側保護袋2の外面との間に、内側保護袋2の収納空間1内に収納した機器・配管類Aを衝突時の衝撃から保護するための緩衝用気体封入空間3を形成する。
【0048】
このとき、内側保護袋2の合成樹脂フィルム2Aにおける上縁部分2dの内面同士が熱融着しないように、この合成樹脂フィルム2Aにおける上縁部分2dの内面間にテフロンシート(図示せず)を挿入しておき、熱融着後に引抜く。
【0049】
内側保護袋2の合成樹脂フィルム2Aと外側保護袋4の両合成樹脂フィルム4A,4Bとを、ヒートシール装置により内側保護袋2及び外側保護袋4の設定左右幅に相当する一定ピッチで袋搬送方向に対して直行する方向に沿って熱融着すると同時に、外側保護袋4の両合成樹脂フィルム4A,4Bの底辺部に沿って厚み方向で対面する下縁部分4aを逆止弁体5Aの合成樹脂フィルム5a,5bと一緒に袋搬送方向に沿って熱融着する。
【0050】
袋搬送方向に対する直行方向での熱融着により、内側保護袋2の合成樹脂フィルム2Aの左右の両側辺部に沿う第1側縁部分2cと、マチ部2Bの両第2側縁部分2e、及び、外側保護袋4の両合成樹脂フィルム4A,4Bの左右の両側辺部に沿う側縁部分4cとが帯状に同時に熱融着される。
【0051】
この帯状の熱融着部位の幅は、隣接する衝突緩和具の側辺部分を同時に製作するため、図1の斜線H1で示す帯状熱融着部位の2倍の幅となり、図7に示すように、熱融着後に帯状熱融着部位の幅方向中央位置を通る切断分離線cに沿って切断分離する。
【0052】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の第1実施形態では、逆止弁体5Aを、偏平筒状に熱融着された二枚の薄膜状の両合成樹脂フィルム5a,5bのうち、緩衝用気体封入空間3に位置する内側筒状形成部分を、緩衝用気体封入空間3の内圧で密着して通気路5cを遮断する逆止弁膜5dに構成したが、偏平筒状に熱融着された二枚の両合成樹脂フィルム5a,5b間に薄膜状の合成樹脂フィルム製の専用の逆止弁膜5dを設けて実施してもよい。
【0053】
(2)上述の第1実施形態では、緩衝用気体封入空間3に対して外部から空気を供給する逆止弁体5Aを、外側保護袋4の両合成樹脂フィルム4A,4Bにおける下縁部分4aの横幅方向中央位置に設けたが、この下縁部分4aの中央位置から横幅方向の一側方に偏倚した部位に逆止弁体5Aを設けてもよく、さらに、逆止弁体5Aを、外側保護袋4の両側辺部を構成する側縁部分4cに設けてもよい。
また、逆止弁体5Aを、外側保護袋4の側縁部分4cに設ける場合には、機器・配管類に気体供給作業が邪魔され難い底部側に設けるのが好ましい。
【0054】
(3)上述の第1実施形態では、緩衝用気体封入空間3に対して外部から空気を供給する気体供給部5を合成樹脂フィルム製の偏平筒状の逆止弁体5Aから構成したが、緩衝用気体封入空間3と外部とを連通する通気路5cを構成する合成樹脂製の通気筒体と、この通気筒体を挾持して通気路を遮断する挾持部材とから構成してもよい。
また、緩衝用気体封入空間3に供給する気体として不活性ガスを用いてもよい。
【0055】
(4)上述の第1実施形態では、内側保護袋2を構成する一枚の合成樹脂フィルム2Aを二つ折りにし、その底部側の二つ折り部を更に収納空間1側にV字状又はU字状に折り込んで、緩衝用気体封入空間3への空気供給による外側保護袋4の外方側への膨張変形に伴って引き出されるマチ部2Bを構成したが、内側保護袋2を構成する二枚の合成樹脂フィルム2Aの下側縁に、V字状又はU字状に折り込み形成された別体の合成樹脂フィルム製のマチ部2Bを熱融着によって接合してもよい。
さらに、内側保護袋2と外側保護袋4とを一枚の合成樹脂フィルムの折り込みによって構成してもよい。
【0056】
(5)上述の第1実施形態では、内側保護袋2の底辺部に形成したマチ部2Bにより、緩衝用気体封入空間3への空気供給による外側保護袋4の外方側への膨張変形に伴って内側保護袋2の底辺部2bが開口部1a側に突出する状態で凸状に湾曲変形することを抑制し、内側保護袋2の収納空間1内の機器・配管類Aに対して開口部1a側に向けた押し出し力が作用することを回避又は減少するように構成したが、内側保護袋2の底辺部とこれに対向する外側保護袋4とを部分的に熱融着等で接合して、緩衝用気体封入空間3への空気供給による外側保護袋4の外方側への膨張変形に伴って内側保護袋2の底辺部2bが開口部1a側に突出する状態で凸状に湾曲変形することを抑制するように構成してもよい。
【0057】
(6)上述の第1実施形態では、圧力計等の計器を含む機器を中心に説明したが、機器・配管類Aとしては配管の端部であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上説明したように、施工性が高く、保管スペース面及びコスト面でも有利に実施することができるものでありながら、機器・配管類を覆い包む緩衝用気体層による高い緩衝機能で機器・配管類を効果的に保護することができ、しかも、機器類の外部からの目視による状況確認の確実化、容易化を図ることのできる機器・配管類用衝突緩和具を提供することができる。
【符号の説明】
【0059】
A 機器・配管類
1 収納空間
2 内側保護袋
2B マチ部
2a 外側面
2b 底辺部
3 緩衝用気体封入空間
4 外側保護袋
4A 合成樹脂フィルム
4B 合成樹脂フィルム
5 気体供給部
5A 逆止弁体
5c 通気路
5d 逆止弁膜
6 気体供給管
7 気体排出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
突出状態で設置されている機器・配管類に対して外装可能な収納空間を形成する状態で袋状に接合される透視可能な合成樹脂フィルム製の内側保護袋に、当該内側保護袋の外側面及び底辺部との間に気体を封入可能な緩衝用気体封入空間を形成する状態で透視可能な合成樹脂フィルム製の外側保護袋を接合し、前記外側保護袋の合成樹脂フィルムの接合部分の一部に、前記緩衝用気体封入空間に対して外部から気体を供給する気体供給部を設けてある機器・配管類用衝突緩和具。
【請求項2】
前記内側保護袋の底辺部には、収納空間側に折り込まれるマチ部が形成され、前記緩衝用気体封入空間への気体供給による外側保護袋の膨張変形に伴って前記マチ部が引き出される構成にしてある請求項1記載の機器・配管類用衝突緩和具。
【請求項3】
前記気体供給部が外側保護袋の底辺部に設けられている請求項1又は2記載の機器・配管類用衝突緩和具。
【請求項4】
前記気体供給部が、前記緩衝用気体封入空間と外部とを連通する通気路と緩衝用気体封入空間の内圧で前記通気路を遮断可能な逆止弁膜とを備えた合成樹脂フィルム製の筒状の逆止弁体から構成されているとともに、前記逆止弁体の逆止弁膜が、当該逆止弁体の通気路に対して外部側から挿入される気体供給管又は気体排出管によって押し開き可能に構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の機器・配管類用衝突緩和具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−96556(P2013−96556A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242750(P2011−242750)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000191319)新菱冷熱工業株式会社 (78)
【出願人】(000138417)株式会社ヤマモン (1)
【Fターム(参考)】