説明

機密保護書類を印刷するための滲出性インク

【課題】滲出性インクを提供すること。
【解決手段】本発明の滲出性インクは、乾式又は湿式のオフセット印刷法又は凸版印刷法によって印刷することができる。インクは、有機溶媒及び他の薬品に対する感受性を有する少なくとも1つの染料を含んでおり、機密保護書類に印刷されて乾燥された場合に、贋造又は偽造をしようとする試みを阻止することができる。印刷されたインクは、エネルギ照射を受けた場合に、あるいは、酸素重合反応によって、上記書類の表面に重合された又は架橋された固体の結合剤マトリックスを形成する。このマトリックスは、ほぼ瞬時に形成され、また、酸素重合の場合には、24時間以内に形成される。これとは対照的に、通常の滲出性印刷インクのマトリックスは、実際に乾燥せず、基材の間隙の中で液体の状態で存在する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、印刷技術の分野に属し、新規で有用なインク、インクの製造方法、並びに、乾式又は湿式のオフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷及びグラビア印刷、若しくは、主として機密保護書類に使用される凸版印刷法によって特に印刷することのできるインクとしての組成物の使用方法を開示する。そのようなインクは、「変色性インク」とも呼ばれている。
【0002】
非常に多くの機密保護書類が現在知られている。そのような書類の例は、銀行小切手、振替指図書、IDカード、パスポート及び運転免許証の如き他の身分証明書、郵便切手、宝くじ券、航空券、株券、証明書、宣誓書等である。
【0003】
総ての機密保護書類は、贋造又は偽造から保護されなければならない。贋造又は偽造の主要な方法は、
書類全体を複製する全偽造、あるいは、
例えば、小切手の金額、運転免許証の署名、又は、パスポートの情報の如き情報を削除及び/又は書き換えることによって、書類を変更する贋造である。
【0004】
いずれの場合においても、上手く選択された機密保護印刷インクは、書類の機密保護に大きく貢献することができる。
【0005】
溶媒滲出性の印刷インクは、既に知られていて、機密保護インクの分野でかなり長い時間にわたって使用されてきた。機密保護書類の保護は、そのような書類が偽造試薬として使用される有機溶媒又は他の化学物質に接触した時の色の変化又は滲出による退色又は場合によっては色の消失によって、確立される。
【0006】
溶媒及び他の薬品に接触する滲出性又は変色性の印刷インクの応用方法及びその機能の原理は、以下の通りである。
【0007】
そのようなインクは、乾式又は湿式のオフセット印刷によって、スクリーン印刷、フレキソ印刷及びグラビア印刷によって、あるいは、凸版印刷によって、特に印刷することができる。上記インクは、鉱物油及びアルキド樹脂をその成分とするビヒクル又は結合剤と、有機溶媒中で可溶性であると共に上記薬品に対して感受性を有する物質である1又はそれ以上の染料と、種々の添加剤とから構成されている。上記染料は、主として、クロム錯体、コバルト錯体、又は、(銅)フタロシアニンブルーである。乾燥メカニズムは、純粋に物理的なメカニズムであって、主として、吸収性を有する繊維質の固体基材の中に浸透することによって進行する。実際に、乾燥が、液体の印刷インクが基材上で固体の固定膜に転換するものと定義された場合には、そのようなインクは、乾燥するのではなく、「液体」の状態を維持する。しかしながら、インクは、その移動性が大幅に低下するので、基材の繊維の隙間の中に十分に且つ永続的に捕捉される。そのような印刷インクの吸収は、部分的且つ漸進的なものであり、印刷された書類が明らかな乾燥状態を示すためには、印刷後に数日間(一般的には、5乃至7日間)を必要とする。その時点以降にだけ、印刷された基材を更に処理することができる。例えば、レーザプリンタ又はイオン蒸着プリンタによって、個人情報を付加することができる。また、基材の吸収能力は、品質及び乾燥時間を決定する。
【0008】
従って、今日知られている滲出性の印刷インクの作用原理は、インクのマトリックス(基質)が、有機溶媒及び他の薬品の中で可溶性を維持するという事実に基づいている。
【0009】
次に、本発明の目的は、効果的に乾燥して固体マトリックスを形成するが、溶媒及び他の薬品に対する感受性を維持する印刷も形成する、上述の印刷技術用の印刷インクを提供することである。本発明の別の目的は、そのようなインクで少なくともその一部が印刷される滲出性の機密保護書類を提供することである。
【0010】
上述の目的を満足する本発明の滲出性印刷インク、印刷された層、印刷された基材、及び、インク組成物の製造方法が、請求の範囲の独立項に定義されている。インク組成物の新しい使用方法も、本発明の主題である。上記インク及び機密保護書類の特殊な実施例が、請求の範囲の従属項に定義されている。
【0011】
本発明は、インクの組成が、液体インクを基材の上で固体膜に転換させた時に形成される固体マトリックスに基づくものであり、上記固体膜自体が、乾燥後に、有機溶媒及び他の薬品に対する耐久性を有している場合であっても、上記溶媒及び薬品に接触した際に滲出する印刷インクを得ることが可能であるという、殆ど予期していない発見に基づくものである。滲出作用に対する所要の感受性を得るために必要な条件は、上記溶媒及び薬品に対する感受性を有する染料及び着色剤を使用することである。すなわち、上記可溶性の染料は、上記溶媒及び/又は薬品による化学変化を受け、一方、上記マトリックスは、変化しないままである。
【0012】
本発明のインクの製造は、上記染料を結合剤マトリックスの中に分散させてインク製品を形成するという作業に依存している。上記インク製品においては、実質的に均一に分布する染料分子と、染料分子の集合体と、実質的に溶解しておらず且つ実質的に均一に分布する染料粒子とが、共存することができる。染料粒子が溶解する程度は、主として、染料/結合剤の系に依存する。完全な染料溶液は、発色現像に、従って、印刷物の着色力に、強く能動的な影響を与えることになり、一方、溶解していない染料粒子は、上述の特性に悪影響を与えることになる。
【0013】
溶媒及び/又は薬品は、本発明のインクで印刷されて乾燥された印刷物に接触すると、結合剤マトリックスに拡散して染料分子及び染料粒子に到達し、これら染料分子及び染料粒子をそれぞれ洗い流したり溶解させたりして、いわゆる「滲出効果」を生ずることになる。上記染料が上記溶媒又は薬品に対して感受性を有している限り、滲出作用が必ず観察されるということは、本発明の驚くべき経験である。
【0014】
乾燥されたインク膜に存在する空隙及び欠陥の数は、結合剤マトリックスを硬化させる際に形成される高分子の網状組織を通って滲出剤の分子が純粋に拡散する場合よりも、上記溶媒又は薬品が浸透する場合の方が、多いと見積もられる。乾燥したインク膜は、どのような印刷技術を用いた場合でも、滲出剤の浸透経路を非常に多く有している、微小空隙、微小クラック、気泡等の如き、総ての種類の微小欠陥及び空隙を必然的に有している。
【0015】
また、基材の粗度は、インク膜の構造を乱すことによって、滲出効果に間接的に強い影響を与え、インク膜が非常に薄い状況においては、そのようなインク膜は、大きな固体インクのスポット(点)よりも上記溶媒及び薬品により容易に接近可能な不連続で接続されていない領域から実際に構成されることになる。これは、疑いなく、標準的な小切手又は証券用紙(これら小切手及び証券用紙においては、1乃至4μmの厚さのオフセットインクが、基材の少なくとも10μmの粗度を補償することができない)に対するオフセット印刷に応用される。
【0016】
上記結合剤マトリックスも、特に多孔質にすることができる。空隙は、種々の周知の技術によって形成することができる。例えば、蒸発してミクロ細孔を残す溶媒を用いることにより、非相溶性の化合物を混合することにより、ミクロ細孔を生成する添加剤を加えることにより、若しくは他の技術により、上記空隙を形成することができる。
【0017】
染料(分子及び/又は集合体及び/又は粒子)を結合剤マトリックスの中で実質的に均一に分布させることにより、実質的に均一に分布された染料を含むインク層が生ずる。これにより、染料の分子及び/又は集合体及び/又は粒子が、表面の上にも分布され、あるいは、溶媒がかなり容易に染料に拡散/到達することを可能にする結合剤マトリックスで殆ど被覆されない。
【0018】
発色現像が乏しいと、未処理の領域と滲出を受けた領域との間のコントラストが強化されることによって、強い滲出効果が与えられることに注意する必要がある。
【0019】
染料の間のあらゆる組み合わせが、種々の溶媒又は薬品に対する感受性を示すことも関心のある事項である。これは、種々の化学薬品を用いて行われる試みに対するいたずらを立証し、従って、書類の偽造に対する保護を強化する。
【0020】
そのような染料及び通常の顔料の組み合わせは、興味のある可能性も提供する。青の変色性染料と赤の耐変色性の染料との組み合わせは、溶解して青の染料を抽出することのできる溶媒又は薬品に接触すると、赤に変化し、これにより、詐欺行為を明らかにする。
【0021】
この新しいタイプの滲出性インクは、上述の重大な欠点を有している周知の滲出性インクと同等の又はそれよりも良好な保護効果を機密保護書類に与える。また、固体マトリックスを構成する化合物が良好な耐摩耗性を有していることが判明した。
【0022】
本発明の滲出性の印刷インクは、吸収性の基材に印刷することができるが、非吸収性の基材にも印刷することができる。その理由は、本発明の印刷インクは、乾燥するために、あるいは、見掛け上乾いた状態を確保するために、基材の中に浸透する必要がないからである。この効果的な性質は、周知の滲出性インクに比較して、印刷する基材に関してかなり広い選択肢をユーザに与える。
【0023】
また、上に既に述べた最も効果的な性質は、印刷作業の時点から乾燥作業及び印刷された基材が一般的に受けるあらゆる後処理作業までに必要とされる時間を大幅に減少させることである。既存の滲出性インクは、乾燥作業に数日(平均的には、5乃至7日)を必要とするが、本発明の印刷インクは、UV光線(紫外線)又は電子ビームの如き放射線エネルギによって乾燥するような成分から構成された場合には、印刷作業の直後に、あるいは、酸素重合(oxypolymerization)によって乾燥される場合には、約24時間後に、処理することができる。
【0024】
上に既に述べたように、周知の滲出性印刷インクは、マトリックス又は結合剤の系を含んでおり、上記マトリックス又は結合剤の系は、乾燥作業の後でも、有機溶媒及び他の薬品の中で液体の可溶性の状態で留まっている。これとは対照的に、本発明の滲出性印刷インクは、乾燥作業時にマトリックスを形成して固体になり、耐薬品性を有するようになる。印刷物が乾燥される(すなわち、紫外線又は電子ビームの下で硬化又は架橋される)場合には、上記マトリックスは、1又はそれ以上の放射線硬化性の化合物を含む結合剤系統から構成される。これらの化合物は、上記放射線によって開始される化学的な重合反応の後に、固体であり耐薬品性を有するマトリックスを形成する。
【0025】
放射線によって硬化又は架橋される化合物は、インク製造の専門家には周知である。これらの化合物は、主として、高い粘度又は低い粘度を有するオリゴマーである。上記化合物が極めて高い粘度を有する物質である場合には、そのような物質は、粘度調節剤として作用する放射線硬化可能な液体モノマーと混合される。これらのモノマーは、不揮発性であって、そのようなモノマーが固体になる重合反応に関与する。
【0026】
重合のメカニズムは、フリー・ラジカル、陽イオン性又は両方であって、ハイブリッドと呼ばれている。
【0027】
滲出性印刷インクを紫外線で乾燥させる場合には、そのような印刷インクは、重合反応を開始させるために、フォトイニシエーション(photoinitiation)組織を含む必要がある。そのような組織は、インク製造の専門家には広く知られている。
【0028】
フリー・ラジカル誘導される重合においては、フォトイニシエータ(photoinitiator)が、光劈開を受ける(Norrish type Iのフォトイニシエータ)か、あるいは、適宜なドナーからの水素の抽出を行い(Norrish type IIのフォトイニシエータ)、フリー・ラジカルを発生させる。このようにして生成された化学反応性のフリー・ラジカル種は、それぞれのエネルギをインク結合剤の不飽和成分がもたらす炭素−炭素間二重結合に伝達し、その後、連鎖成長段階及び連鎖停止段階が生ずる。上記インク結合剤は、アクリル酸不飽和モノマー、及び/又は、改質することもできるオリゴマーを含まなければならないことを理解する必要がある。
【0029】
陽イオンで誘導される重合においては、フォトイニシエータは、重合を開始させるイオン種を生成する。陽イオンによるメカニズムによって硬化する物質としては、例えば、エポキシド、及び、ビニルエーテルを挙げることができる。連鎖成長は、環開放状態の複素環及び/又はビニルの炭素−炭素間二重結合の分解によって行われる。
【0030】
ハイブリッド硬化組織を提供することができる。すなわち、フリー・ラジカルのメカニズム及び陽イオンのメカニズムの両方によって、硬化作用を行わせることができる。
【0031】
滲出性インクを電子ビーム放射線によって乾燥させる場合には、フォトイニシエーション組織を添加することは、一般的に必要がない。
【0032】
酸素重合によって乾燥される本発明の滲出性印刷インクにおいては、化学物質に対する耐性を有する上記固体マトリックスは、酸化によってインクを乾燥させる場合と同様の結合剤組織から得られる。その乾燥メカニズムは、酸化であって、これは、大気中の酸素によって不飽和脂肪酸の鎖がラジカル誘導される重合反応であることを意味している。この反応は、印刷インクの組成に含まれなければならない乾燥剤すなわちドライヤーによって、触媒作用で加速させることができる。
【0033】
本発明の滲出性印刷インク又は変色性印刷インクは、有機溶媒及び他の薬品に対して感受性を有する試薬として、1又はそれ以上の染料を含んでいる。これらの染料は、一般的に、周知の滲出性インクに通常使用されている染料と同じ染料である。
【0034】
一般的に、本発明の滲出性印刷インクの結合剤組織は、インクの全重量の約40重量%乃至約85重量%を構成する。薬品に対する感受性を有する試薬としての上記単数又は複数の染料は、一般的に、インクの全重量の約5重量%から約20重量%を構成する。
【0035】
本印刷インクが紫外線の下で乾燥するように設計される場合には、上記フォトイニシエータ組織は、イニシエーター(開始剤)を含み、また、選択に応じて、コ・イニシエーター(共開始剤)を含むことができる。そのような化合物は、インクの約2重量%乃至約15重量%を占める。
【0036】
インクの別の成分(例えば、増量剤、TiO2又はCaCo3の如き顔料、安定剤、粘度調節剤等)の量は、印刷インクの0重量%乃至15重量%を占める。
本発明の滲出性インクは、周知のインクに比較して、同程度の又はより良好な保護を機密保護書類に与えるが、有機溶媒及び他の薬品の分解に抵抗し、周知のインクよりもかなり短い乾燥時間で得られる結合剤マトリックスを含んでいる。また、周知の滲出性インクは、実際には乾燥せず、インクが基材の繊維の間隙の間に侵入し続ける、印刷物を生ずる。これとは対照的に、本発明のインクを用いて得られる印刷物は、安定であり、実際に乾燥し、基材の中又は基材に侵入することができない。更に、本発明のインクは、プラスチックフィルムの如き非吸収性の基材に極めて良好に印刷することができる。
【0037】
以下の例は、単に説明の目的で示すものであって、いかなる意味においても、本発明を限定するものと解釈してはならない。下の例においては、総てのパーセンテージ(割合)は、重量%で示されている。
【0038】
例 1:
紫外線(UV光線)により乾燥する滲出性インクを、湿式オフセット印刷のために準備し、以下の成分を三段式のローラミルで混合した。
【0039】
【表1】

【0040】
この印刷インクを用いて、150m/分の速度で紙を連続的に印刷し、240W/cm(線方向)の全出力を有する3つの紫外線ランプ(UVランプ)の下で乾燥させた。
【0041】
印刷された紙を、有機溶媒及び他の化学物質(例えば、アセトン及び/又はエタノール)を用い、印刷の直後に、また、その4週間後に検査した。印刷されたインクの乾燥後の滲出及び変色に対する感受性は、完全であった。これらの検査は、以下のようにして行った。
【0042】
20×30mmの寸法を有する複数のサンプルを乾燥後の印刷された紙片から切り取った。これらのサンプルを種々の有機溶媒(例えば、アセトン、エタノール、高沸点アルコール、トリクロロエチレン等)の中に5分間浸漬させ、その間に間欠的に攪拌した。5分後に上記サンプルを取り出して乾燥させ、それぞれのサンプルの色を未処理の紙片と比較した。
【0043】
同じ溶媒を用いて「滴下試験(溶媒/薬品の液滴を印刷物に載せる)」を行う場合には、印刷されたパターンを包囲する印刷されていない領域の色付きで、滲出作用を観察する。
例 2:
酸素重合によって乾燥する滲出性インクを乾式及び湿式のオフセット印刷のために準備し、下記の成分を三段式のローラミルで混合した。
【0044】
【表2】

【0045】
上記ワニスは、フェノール樹脂(HoechstのAlbertol KP 648)と、脱色あまに油と、鉱物油(HaltermannのPKWF 28/31)とから構成されている。
【0046】
上記インクをオフセット印刷プロセスで紙片に印刷し、印刷された紙を開放空気中で乾燥させた。乾燥は約24時間後完了した。印刷された紙片のサンプルに対して有機溶媒及び他の化学物質による検査を24時間後及び4週間後に行った。乾燥したインクの滲出作用及び変色作用に対する感受性は、極めて良好であった。これらの検査は、例1に述べた方法に従って行った。
【0047】
例 3:
以下の組成に従って、紫外線乾燥されるスクリーン印刷用の滲出性インクを準備した。
【0048】
【表3】

【0049】
上記インクをフラットベット型のスクリーン印刷機を用いて印刷した。アセトン及びエタノールを用いる滴下試験は、明らかに目視可能な滲出作用及び色付きを示した。
【0050】
本発明の滲出性インクで印刷される機密保護書類は、上述の本発明の新規な滲出性インクで完全に印刷することができるが、変色が予期される箇所又は領域だけを印刷することも可能である。
【0051】
なお、本発明は以下の態様を含む。
【0052】
1. 機密保護書類を印刷するための滲出性インクであって、結合剤マトリックスを形成することのできる少なくとも1つの化合物と、有機溶媒及び/又は他の化学物質に対して感受性を有する少なくとも1つの染料とを含み、前記結合剤マトリックスを形成する単数又は複数の化合物は、重合作用及び/又は架橋作用によって固体の結合剤マトリックスを形成することのできる化合物から選択されることを特徴とする滲出性インク。
【0053】
2. 1の滲出性インクにおいて、前記染料は、前記結合剤マトリックスの中に実質的に均一に分布された染料及び/又は顔料の粒子を含み、前記化合物は、前記粒子を包囲する溶媒透過性及び/又は薬品透過性の結合剤マトリックスを形成することができることを特徴とする滲出性インク。
【0054】
3. 2の滲出性インクにおいて、前記化合物は、結合剤マトリックスの多孔質層を形成することのできる群から選択されることを特徴とする滲出性インク。
【0055】
4. 1乃至3のいずれかの滲出性インクにおいて、前記染料は、当該インクの約5重量%乃至20重量%を占めることを特徴とする滲出性インク。
【0056】
5. 1乃至4のいずれかの滲出性インクにおいて、前記結合剤マトリックスを形成する化合物は、エネルギ放射の影響下で硬化又は架橋することができ、前記放射によって誘導される重合反応は、フリー・ラジカルメカニズム、陽イオンメカニズム、又は、これらが複合されたハイブリッドメカニズムに基づくことを特徴とする滲出性インク。
【0057】
6. 1乃至4のいずれかの滲出性インクにおいて、前記結合剤マトリックスを形成する単数又は複数の化合物は、酸素重合反応によって硬化することのできる群から選択されることを特徴とする滲出性インク。
【0058】
7. 5の滲出性インクにおいて、前記結合剤マトリックスを形成する単数又は複数の化合物として、アクリル酸エポキシ、アクリル酸ポリエステル、及び、アクリル酸ポリウレタンから選択される少なくとも1つの物質を含み、前記アクリル酸化合物は、選択に応じて改質される、エポキシ樹脂、ビニルエステル、及び、これらの混合物であることを特徴とする滲出性インク。
【0059】
8. 5又は7の滲出性インクにおいて、更に、放射線エネルギによって重合及び/又は架橋することのできる少なくとも1つの液体モノマー化合物を含むことを特徴とする滲出性インク。
【0060】
9. 5の滲出性インクにおいて、前記結合剤マトリックスを形成する単数又は複数の化合物は、照射される紫外線の影響下で硬化又は架橋することができることを特徴とする滲出性インク。
10. 5の滲出性インクにおいて、前記結合剤マトリックスを形成する単数又は複数の化合物は、照射される電子ビームの影響下で硬化又は架橋することができることを特徴とする滲出性インク。
11. 6の滲出性インクにおいて、前記結合剤マトリックスを形成する単数又は複数の化合物は、フェノール樹脂及び乾性油を含み、当該インクは、更に、少なくとも1つの乾燥剤を含むことを特徴とする滲出性インク。
12. 11の滲出性インクにおいて、更に、酸素によって重合可能なアルキド樹脂を含むことを特徴とする滲出性インク。
13. 1乃至12のいずれかのインクで少なくとも部分的に印刷された基材であって、前記化合物は、重合された及び/又は架橋された固体の結合剤マトリックスを含むことを特徴とする基材。
14. 13の基材において、エネルギ照射によって乾燥して硬化する9又は10の滲出性印刷インクで少なくとも部分的に印刷されていることを特徴とする基材。
15. 13の基材において、酸素重合反応によって乾燥して硬化する6の滲出性印刷インクで少なくとも部分的に印刷されていることを特徴とする基材。
16. 滲出性インク組成物から成る印刷されたインク層であって、重合された及び/又は架橋された結合剤マトリックスと、有機溶媒及び/又は他の薬品に対して感受性を有する少なくとも1つの染料とを含んでおり、該染料は、前記結合剤マトリックスの中で実質的に均一に分布しており、前記結合剤マトリックスは、前記溶媒及び/又は薬品を透過させることができることを特徴とするインク層。
17. 結合剤マトリックスを形成することのできる少なくとも1つの化合物と、実質的に均一に分布していると共に有機溶媒及び/又は他の薬品に対して感受性を有する少なくとも1つの染料とを含む組成物の使用方法であって、前記結合剤マトリックスを形成する単数又は複数の化合物は、重合作用及び/又は架橋作用によって固体の結合剤マトリックスを形成することのできる化合物から選択されていて、機密保護書類を印刷するための組成物の使用方法。
18. 17の組成物の使用方法において、前記染料は、染料の集合体及び/又は染料の粒子を含んでおり、前記化合物は、前記集合体又は粒子を包囲する溶媒透過性及び/又は薬品透過性の結合剤マトリックスを形成することができることを特徴とする組成物の使用方法。
19. 1乃至18のいずれかに記載の滲出性インク組成物の製造方法であって、重合作用及び/又は架橋作用によって結合剤マトリックスを形成することのできる少なくとも1つの化合物を準備する工程と、該化合物を染料と実質的に均一に混合する工程とを備え、前記染料は、前記化合物に対して実質的に不活性であると共に、有機溶媒及び/又は他の薬品に対して感受性を有することを特徴とする滲出性インク組成物の製造方法。
20. 19の製造方法において、前記化合物は、溶媒透過性及び/又は薬品透過性のマトリックスを形成することのできる群から選択されることを特徴とする製造方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの有機溶媒に可溶性である、印刷インクの総重量の5乃至20重量%の範囲内の少なくとも1つの染料と、UV放射線又は大気中の酸素の影響下で架橋して固化し耐薬品性になる、印刷インクの総重量の40乃至85重量%の範囲内の少なくとも1つの印刷インク結合剤と、フォトイニシエータ及び乾燥剤からなる群から選ばれる添加剤と、を含む、機密保護書類を印刷するための滲出性印刷インク。

【公開番号】特開2007−284686(P2007−284686A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149087(P2007−149087)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【分割の表示】特願平9−538575の分割
【原出願日】平成9年4月25日(1997.4.25)
【出願人】(500269417)シクパ・ホールディング・ソシエテ・アノニム (23)
【Fターム(参考)】