説明

機密文書処理システム

【目的】機密文書の回収から処分に至るまで、回収にあたる者、運搬にあたる者、処分にあたる者いずれもが機密文書の内容を知り得ず、しかも機密文書の処理を委託した者が、容易に処理過程を知り得る機密文書処理システムを提供すること。
【構成】文書類が投入可能なスリット状であっていったん投入した文書類を取り出すことができない投入口を上部に有すると共に、開閉自在に設けられ、電子錠により施錠可能であり、いったん施錠されると処理場の処理ライン上に載置しない限り解錠できない底部を有する容器と、当該容器に付されるコードと、ネットワークに接続可能な通信端末に接続され、コードを読み込むローカルコードリーダーと、前記ローカルコードリーダが前記通信端末を介して送信した前記コードを受信するホストコンピュータとで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は機密文書処理システムに関し、より詳しくは機密文書が漏洩することなく、確実に廃棄処分可能な機密文書処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、企業のオフィスや市役所などの公共機関では、部外秘や社外秘などの機密文書を扱うことが多い。こうした機密文書は、第三者への漏洩を防止するために、厳重な管理のもとで一定期間保管されるのが通例である。また、一定期間経過後あるいはその他の理由で不要になった機密文書は、シュレッダーなどを用いて廃棄され処理業者に引き渡されるか、守秘契約を結んだ上で処理業者に引き渡されていた。
【0003】
かように処理を外部委託する場合、処理場までの運搬時のセキュリティ確保手段、処理時の立ち会いその他のセキュリティ確保手段など慎重に対処すべき課題がある。そこで係る課題に対処すべく、下記に示すような種々の機密文書処理システムが提案されている。
【0004】
オフィスに設置された機密文書回収ボックスに、収集した機密文書がある一定の重量になった際に信号を発信する重量センサーと、重量を感知し一定重量以上になった際に信号を送出する制御装置、ならびに通信回線と接続する通信ユニットを設け、回収ボックスが一定重量になった際に迅速に回収するよう構成した機密文書処理システムが下記特許文献1に記載されている。
【0005】
一旦投入した書類を投入口から取り出し難くすると共に、容易に盗み見ることができないようにした機密文書回収袋が、下記特許文献2に記載されている。
【0006】
排出企業端末と、運送事業者端末と、廃棄物処理場に設けられた廃棄物処理場端末と、インターネットを介して接続された機密情報廃棄管理センターコンピュータとから構成され、それぞれの端末は、IC記録媒体の読取書込装置が接続されて廃棄物梱包に取外し不能に貼付されたIC記録媒体に廃棄物梱包を個別に識別するID情報を書込記録し、運送・保管・廃棄処理の各工程でそれぞれの処理記録を該IC記録媒体に書込記録すると共
に、書込の記録を各端末に記録し、廃棄物処理場の廃棄物処理装置で、焼却・破砕・溶解処理された確認情報を記録するよう構成した機密文書処理システムが下記特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−301911号公報
【特許文献2】特開2004−315168号公報
【特許文献3】特開2006−256718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は機密文書の回収から処分に至るまで、回収にあたる者、運搬にあたる者、処分にあたる者いずれもが機密文書の内容を知り得ず、しかも機密文書の処理を委託した者が、容易に処理過程を知り得る機密文書処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成する本発明の構成は次の通りである。
【0010】
(1)請求項1に係る機密文書処理システムは、文書類が投入可能なスリット状であっていったん投入した文書類を取り出すことができない投入口を上部に有すると共に、開閉自在に設けられ、電子錠により施錠可能であり、いったん施錠されると処理場の処理ライン上に載置しない限り解錠できない底部を有する容器と、
当該容器に付されるコードと、
ネットワークに接続可能な通信端末に接続され、コードを読み込むローカルコードリーダーと、
前記ローカルコードリーダが前記通信端末を介して送信した前記コードを受信するホストコンピュータとを有する。
【0011】
(2)請求項2に係る機密文書処理システムは、請求項1におけるコードが一次元コード或いは二次元コードであることを特徴とする。
【0012】
(3)請求項3に係る機密文書処理システムは、請求項2における一次元コードが一次元バーコードであり、二次元コードがQRコード(登録商標)であることを特徴とする。
【0013】
(4)請求項4に係る機密文書処理システムは、請求項1乃至請求項3いずれかに記載の機密文書処理システムにおいて、コードとして容器IDを記したコードと、顧客IDを記したコードの2枚のコードを、容器に付したことを特徴とする。
【0014】
(5)請求項5に係る機密文書処理システムは、請求項4に係る機密文書処理システムにおいて、容器を顧客事務所等の設置場所に設置した際に、容器に付した2枚のコードををコードリーダーで読み取り、設置日時をホストコンピューターに送信するよう構成した。
【0015】
(6)請求項6に係る機密文書処理システムは、請求項5に係る機密文書処理システムにおいて、前記容器を顧客事務所等の設置場所に設置した際に、設置担当者に付したコードをコードリーダーで読み取り、設置担当者情報をホストコンピューターに送信するように構成した。
【0016】
(7)請求項7に係る機密文書処理システムは、請求項4乃至請求項6いずれかに記載の機密文書処理システムにおいて、前記容器を設置場所から回収する際に容器に付した2枚のコードをコードリーダーで読み取り、回収日時をホストコンピューターに送信するよう構成した。
【0017】
(8)請求項8に係る機密文書処理システムは、請求項7に係る機密文書処理システムにおいて、前記容器を設置場所から回収する際に、回収担当者に付したコードをコードリーダーで読み取り、回収担当者情報をホストコンピューターに送信するように構成した。
【0018】
(9)請求項9に係る機密文書処理システムは、請求項4乃至請求項8いずれかに記載の機密文書処理システムにおいて、前記容器を処理場に搬入した際に容器に付した2枚のコードをコードリーダーで読み取り、搬入日時をホストコンピューターに送信するよう構成した。
【0019】
(10)請求項10に係る機密文書処理システムは、請求項9に係る機密文書処理システムにおいて、前記容器を処理場に搬入した際に、搬入担当者に付したコードをコードリーダーで読み取り、搬入担当者情報をホストコンピューターに送信するように構成した。
【0020】
(11)請求項11に係る機密文書処理システムは、請求項4乃至請求項8いずれかに記載の機密文書処理システムにおいて、機密文書の処理を委託したものが、ネットワークを介してホストコンピューターにアクセス可能に構成した。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る発明では、いったん容器に機密文書を廃棄・投入すると、当該容器を処理場の処理ライン上に載置しない限り解錠できず、つまりは投入した機密文書を取り出せず、しかも解錠した際には底部が開き、収納された機密文書は処理ライン上に落下していくことになる。かようにして、回収にあたる者、運搬にあたる者、処分にあたる者いずれもが機密文書の内容を知り得ないシステムの提供が可能となるのである。
【0022】
また、上記容器にはローカルコードリーダーで読み取り可能なコードが付されており、読み取ったコードは通信ネットワークを介してホストコンピューターに送信可能に構成されている。これにより管理者はコストコンピューターを通じて、処理状況を一元管理することが可能になる。
【0023】
上記コードとして請求項2、請求項3に係る発明では、バーコードやQRコードといった汎用の一次元コードや二次元コードを利用しており、低廉にシステムを構築することが可能となる。
【0024】
請求項4に係る発明では、容器IDを記したコードと、顧客IDを記したコードの2枚のコードを容器に付すことで容器ごとの履歴を管理し、あるいは顧客ごとの履歴を管理することが可能となる。
【0025】
請求項5乃至請求項10に係る発明によれば容器を設置した日時、設置担当者、回収日時、回収担当者、容器の処理場への搬入日時、搬入担当者に関する情報をホストコンピュータで一元管理することが可能となる。
【0026】
請求項11に係る発明では、機密文書の処理を委託したものが、上記ホストコンピューターにアクセスすることで、容器を設置した日時、設置担当者、回収日時、回収担当者、容器の処理場への搬入日時、搬入担当者に関する情報等の処理過程を容易に知りうることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】機密文書廃棄処理システムの全体構成を示す説明図
【図2】容器の概略斜視図
【図3】処理ラインの概略説明図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ概説する。
【0029】
図1は本発明に係る機密文書廃棄処理システムの全体構成を示す説明図である。この実施形態においては、容器の設置業者3、容器の収集・運搬業者4、処理場5にローカルコードリーダーが付与される。このローカルコードリーダーはインターネットに設続可能な通信端末に接続されており、処理作業全般を請け負う管理業者の管理センター6に設置されたホストコンピューター7に読み取ったコードを送信するものである。
【0030】
ホストコンピューター7は本発明に係る機密文書処理システムの全データを管理しており、インターネットに接続されたWebサーバと、機密情報管理のための情報処理を行うアプリケーションサーバと、廃棄処理情報を記録管理するデータベースサーバとを備え、前記設置業者端末、収集・運搬業者端末、廃棄物処理場端末のそれぞれの端末から送信されるコード読み取り情報を記録することを特徴とする。
【0031】
顧客の依頼を受けた管理業者の指示に基づき、設置業者3は機密文書を投入する容器2を、機密文書を排出する顧客の事務所1等に設置する。容器2にはもともとコード10が貼付されているが、設置の際に設置業者3は前記コード10とは別に、コード9を貼付する。
【0032】
コード10は貼付される当該容器2専用のコードであり、当該容器2固有のIDが付与される。コード9は機密文書処理作業が行われる各回ごとに付与されるものであり依頼人たる事業者IDが付与される。
【0033】
尚、コード9,10はバーコード等の一次元コード、QRコード、SPコード、ベリコード等の二次元コード何れも使用可能である。また、コード9,10を読み取るローカルコードリーダーとしては、バーコードリーダーやQRコードリーダー等の光学的情報読取装置を使用する。
【0034】
設置業者3は設置の際にローカルコードリーダーでコード9,10を読み取る。読み取ったコードはインターネット回線を通じてホストコンピュータ7に送信され、データ管理ファイルに容器2のID、事業者名、設置日などが書き込まれる。
【0035】
更には、設置業者自身に付与されたコードもコードリーダーで読み取り、設置業者名も併せてデータ管理ファイルに記載される。このコードはコード9,10と同じく、バーコード等の一次元コード、QRコード、SPコード、ベリコード等の二次元コード何れも使用可能である。
【0036】
顧客事務所1に容器2を設置してから一定期間経過後、あるいは顧客の回収希望日に、管理業者の指示に基づき収集・運搬業者4が顧客事務所1から容器2を回収する。収集・運搬業者4は回収の際にローカルコードリーダーでコード9,10を読み取る。読み取ったコードはインターネット回線を通じてホストコンピュータ7に送信され、データ管理ファイルに容器2のID、事業者名、回収日などが書き込まれる。
【0037】
更には、収集・運搬業者4自身に付与されたコードもコードリーダーで読み取り、収集・運搬業者名も併せてデータ管理ファイルに記載される。このコードはコード9,10と同じく、バーコード等の一次元コード、QRコード、SPコード、ベリコード等の二次元コード何れも使用可能である。
【0038】
収集・運搬業者4は回収した容器2を処理場5に搬入する。搬入の際に搬入担当者はローカルコードリーダーでコード9,10を読み取る。読み取ったコードはインターネット回線を通じてホストコンピュータ7に送信され、データ管理ファイルに容器2のID、事業者名、搬入日などが書き込まれる。
【0039】
更には、搬入担当者自身に付与されたコードもコードリーダーで読み取り、搬入担当者名も併せてデータ管理ファイルに記載される。このコードはコード9,10と同じく、バーコード等の一次元コード、QRコード、SPコード、ベリコード等の二次元コード何れも使用可能である。
【0040】
処理場5は機密文書を溶融し再生してリサイクルする処理場、あるいは破砕処理を行う処理場などである。
【0041】
機密文書の処理を委託した顧客はインターネットを介してホストコンピューター7のデータベースサーバにアクセスし、上記データ管理ファイルを閲覧できるものである。むろん、顧客にはID、パスワードが付与され、顧客以外の者の閲覧は拒絶されるものである。
【0042】
図2は容器の概略斜視図である。容器2は上面に開口部8を有する箱体である。処理対象の機密文書は開口部8より容器2内に投入される。開口部8の形状は図示されるように細長スリット状に設け、その幅は人の指が入らない程度に形成してある。
【0043】
また、容器2の底部はスライドさせることで開閉自在となっており、しかも電子錠で施錠されており、解錠しない限り底部をスライドさせ開くことはできない構造となっている。かように投入された機密文書は解錠されない限り、容器2より取り出し或いは排出することは不可能なものである。しかも、解錠に必要な鍵を処理場の処理ライン上にのみ存置させることで、いったん投入された機密文書を何人の目にも触れさせずに処理することが可能となるのである。
【0044】
図3は処理場における処理ラインの概略説明図である。上下及び左右方向に移動可能な搬送装置により解錠位置Aに載置された容器2は、鍵12により解錠される。より詳しくは出没自在な鍵12が延出し、容器2の底部に存する鍵穴にはまり解錠されるものである。
【0045】
解錠後、容器2は搬送装置11によりホッパー13の上部位置Bに載置される。この段階で容器2の底部がスライド開放され、収容された機密文書はホッパー13内に落下していく。ホッパー13内に落下した機密文書は溶融処理装置あるいは破砕処理装置に搬送されていくものである。
【0046】
機密文書が排出された容器2は底部がスライド閉鎖されたうえで、搬送装置11により搬出位置Cに載置されるものである。
【符号の説明】
【0047】
1・・顧客事務所
2・・容器
3・・設置業者
4・・収集・運搬業者
5・・処理場
6・・管理センター
7・・ホストコンピューター
8・・投入口
9,10・・コード
11・・搬送装置
12・・鍵
13・・ホッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
文書類が投入可能なスリット状であっていったん投入した文書類を取り出すことができない投入口(8)を上部に有すると共に、開閉自在に設けられ、電子錠により施錠可能であり、いったん施錠されると処理場の処理ライン上に載置しない限り解錠できない底部を有する容器(2)と、
当該容器(2)に付されるコードと、
ネットワークに接続可能な通信端末に接続され、コードを読み込むローカルコードリーダーと、
前記ローカルコードリーダーが前記通信端末を介して送信した前記コードを受信するホストコンピューター(7)と、
により成る機密文書処理システム。
【請求項2】
前記コードは一次元コード或いは二次元コードである請求項1記載の機密文書処理システム。
【請求項3】
前記一次元コードは一次元バーコードであり、前記二次元コードはQRコードである請求項2記載の機密文書処理システム。
【請求項4】
前記容器(2)に、顧客IDを記したコード(9)と容器IDを記したコード(10)の、2枚のコードを付した請求項1乃至請求項3いずれかに記載の機密文書処理システム。
【請求項5】
前記容器を顧客事務所等の設置場所に設置した際に、コード(9)とコード(10)をコードリーダで読み取り、設置日時をホストコンピューター(7)に送信するよう構成した請求項4記載の機密文書処理システム。
【請求項6】
前記容器を顧客事務所等の設置場所に設置した際に、設置担当者に付したコードをコードリーダで読み取り、設置担当者情報をホストコンピューター(7)に送信するように構成した請求項5記載の機密文書処理システム。
【請求項7】
前記容器を設置場所から回収する際にコード(9)とコード(10)をコードリーダで読み取り、回収日時をホストコンピューター(7)に送信するよう構成した請求項4乃至請求項6いずれかに記載の機密文書処理システム。
【請求項8】
前記容器を設置場所から回収する際に、回収担当者に付したコードをコードリーダで読み取り、回収担当者情報をホストコンピューター(7)に送信するように構成した請求項7記載の機密文書処理システム。
【請求項9】
前記容器を処理場に搬入した際にコード(9)とコード(10)をコードリーダで読み取り、搬入日時をホストコンピューター(7)に送信するよう構成した請求項4乃至請求項8いずれかに記載の機密文書処理システム。
【請求項10】
前記容器を処理場に搬入した際に、搬入担当者に付したコードをコードリーダで読み取り、搬入担当者情報をホストコンピューター(7)に送信するように構成した請求項9記載の機密文書処理システム。
【請求項11】
機密文書の処理を委託したものが、ネットワークを介してホストコンピューター(7)にアクセス可能とした請求項1乃至請求項10いずれかに記載の機密文書処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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