説明

機械パルプの製造方法

【課題】 機械パルプの製造において、木材チップ前処理段階若しくはリファイニング前に添加されるアルカリ性過酸化水素の反応効率アップによる白色度を向上、さらにリファイニング時の熱で過酸化水素が分解された場合にも残存した水酸化ナトリウムによるアルカリ焼けを抑制する。
【解決手段】 木材チップにアルカリ性過酸化水素薬液を含浸させる工程(a)、常圧または加圧下で該木材チップをリファイニングしてパルプを製造する工程(b)を含む機械パルプ製造方法において、少なくとも前記(a)、(b)のいずれかの工程において酸素を添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は前処理段階若しくはリファイナー中に酸素を添加することを特徴とする、アルカリ性過酸化水素薬液を含浸させた木材チップから、従来のケミサーモメカニカルパルプを製造する方法より高白色度の機械パルプを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷用紙等の製造における不透明度や印刷適性といった観点から、針葉樹に比べてリグニンが少なく比較的高白色なパルプが得られる広葉樹を原料としたケミサーモメカニカルパルプ(CTMP:Chemi-thermomechanical pulp)の使用が増加している。しかし、一般的に広葉樹は針葉樹に比べて容積重が高く材自体が硬いことから繊維化が困難であった。そこで、チップの柔軟化を促進させるため、水酸化ナトリウムと過酸化水素を併用したアルカリパーオキサイドサーモメカニカルパルプ(APTMP:Alkaline peroxide thermomechanical pulp)法やアルカリパーオキサイドメカニカルパルプ(APMP:Alkaline peroxide mechanical pulp)法が採用されるようになった。これらの製造法は、チップにアルカリ性過酸化水素を添加して加温することにより、リグニンを溶出させてスムーズなリファイニングを可能にする。また、同時に酸化漂白を行うことから、従来のCTMP法に比べて白色度の高いパルプを得ることができる。
【0003】
このような製造法の改良による品質向上と嵩高、高不透明度等といった特徴的性質から、広葉樹を原料としたサーモメカニカルパルプは印刷・筆記用紙を中心として利用範囲が広がってきている。それに伴って、より高白色なパルプに対する要求も高まってきているのが現状である。
【0004】
最近ではチップ前処理によってチップの薬液浸透を向上させ、より高白色な機械パルプを得る技術が多く検討されてきている。しかし、チップの薬液浸透を向上させても、リファイニング時(特に一次リファイニングを加圧下で行う場合)、熱で過酸化水素が分解され残存した苛性ソーダによってアルカリ焼けが起こり、白色度が低下してしまう恐れがある。よって、リファイニング時において完全に消費されない十分量の過酸化水素を添加したり、後段の漂白工程にその白色度を上げる分だけの負荷がかかってしまったり等といった問題があった。
【0005】
一方、化学パルプの製造においては、すでに酸素漂白法が多段式漂白の初段に適用され、塩素処理やアルカリ抽出と同様に蒸解に続く脱リグニン工程となっている。この酸素漂白法はアルカリ性薬液を浸透させたパルプに酸素を添加するものであるが、薬液としてアルカリ性過酸化水素ではなく苛性ソーダのみを使用するのが一般的であること、対象が蒸解によってある程度の脱リグニン処理されたパルプであることから、本発明に直接繋がるものではないと言える。
【0006】
特表2003−522845号公報(特許文献1)では、高歩留まりパルプ化法の前に少なくとも一つの酸素原子を含むガス化合物を含む脱リグニンガスで処理するリグニン除去方法について報告されている。しかし、脱リグニンガスとして主に二酸化塩素に注目しており、酸素添加による効果については記載が無い。さらに、効果としてリファイニングにおける消費電力低下の記載はあるが、アルカリ性過酸化水素と併用した場合の白色度向上効果については全く触れられていない。
【0007】
また、特表平8−506627号公報(特許文献2)では、磨砕チャンバー内に収容された砕木機により木材を磨砕し、該チャンバー内を加圧した状態に維持し、木材上に水を噴霧することを特徴とするケミメカニカルパルプの製造方法について報告されている。この技術は噴霧水を介して酸素を磨砕チャンバーに供給することを特徴としており、噴霧水に過酸化水素を加えたり、噴霧水をアルカリ性にすることが好ましいとの記載もある。しかし、噴霧水に対する酸素の溶解性も限られている上、噴霧水自体のパルプへの混合も不十分である。
【0008】
【特許文献1】特表2003−522845号公報
【特許文献2】特表平8−506627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、機械パルプの製造において、アルカリ性過酸化水素が存在する前処理段階若しくはリファイナー中においてより効率的な白色化(漂白)を行うことで、ポスト漂白における負荷を軽減できる機械パルプの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、アルカリ性過酸化水素薬液を含浸させた木材チップを常圧または加圧下でリファイニングする際、木材チップにアルカリ性過酸化水素薬液を含浸させる前処理段階、若しくはリファイニング工程中に酸素を添加することによって、白色度の高いパルプが得られることを見い出した。
【発明の効果】
【0011】
本発明の機械パルプの製造方法によれば、通常のサーモメカニカルパルプに比べて高白色度のパルプを得ることができる。さらに、リファイナー中等に過酸化水素が消費された場合でも、アルカリ焼けによる白色度低下を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明において、原料として使用する木材チップは特に限定されるものではないが、アスペン、バーチ、メープルといった広葉樹が好ましく、特に好ましくはユーカリグロビュラスである。広葉樹が針葉樹に比べて適している理由としては、含有しているリグニンが比較的少なく、過酸化水素による漂白効率が高いことが挙げられる。また、ユーカリグロビュラスでは嵩高で、強度の高いパルプが得られる。
【0013】
本発明においては、木材チップにアルカリ性過酸化水素薬液を含浸させる工程を有することが重要であって、木材チップ前処理が必ずしも必要というわけではないが、酸素を添加する位置としては木材チップ前処理段階がより好ましい。以下に木材チップ前処理の1例を示すが、この方法が本発明を限定するものではない。
【0014】
すなわち、木材チップを圧縮する工程(c)、前記木材チップを圧縮した状態、若しくは圧縮状態から解放した状態にてキレート剤を含有する薬液を木材チップに含浸させる工程(d)、前記キレート剤を含浸させた木材チップを再度圧縮する工程(e)、前記キレート剤を含浸させた木材チップを圧縮した状態、若しくは圧縮状態から解放した状態にてアルカリ性過酸化水素薬液を木材チップに含浸させる工程(f)、常圧または加圧下で該木材チップをリファイニングしてパルプを製造する工程(g)、を含む機械パルプの製造方法において、少なくとも前記(d)〜(g)のいずれかの工程において酸素を添加することを特徴とする機械パルプの製造方法である。つまり、酸素を添加する際に、木材チップにアルカリ性過酸化水素薬液が含浸されている状態である必要があり、これによってアルカリ性過酸化水素の反応効率アップによって白色度を向上させることが可能であり、さらにリファイニング時の熱で過酸化水素が分解された場合にも残存した水酸化ナトリウムによるアルカリ焼けを抑制することができる。
【0015】
前記キレート剤を含む薬液を含浸させる工程(d)、あるいはアルカリ性過酸化水素薬液を含浸させる工程(f)は、木材チップを圧縮した状態、若しくは圧縮状態から解放した状態で薬液に浸漬し、その後圧を開放してチップを膨張させながら含浸させる。この木材チップの圧縮及び薬液含浸は、アンドリッツ(Andritz)社製のMSDインプレッサファイナー(MSD Impressafiner)を用いて行うのが好ましい。別法として、バルメット(Valmet)社製のプレックススクリュー(Prex screw)等を用いて行うことも可能である。さらに、この木材チップの圧縮及び薬液の含浸は、圧縮前にチップを水蒸気で処理することによりさらに容易にすることが可能であり、所望に応じて圧縮工程を間に挟んだ2段または3段の含浸工程で行うことができる。薬液中に含まれるキレート剤は、チップ中または工程から持ち込まれる金属イオンと錯体を形成し、後工程でのアルカリ性過酸化水素による木材チップの漂白において、好ましくない過酸化水素の分解反応を抑制する。また、木材チップの圧縮比は、圧縮前の木材チップの体積に対して圧縮後の木材チップの体積が1/2〜1/4となる範囲が好ましい。
【0016】
本発明で使用するアルカリ性過酸化水素薬液は、アルカリ性薬剤として水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを使用することが好ましい。また、その組成は、絶乾木材チップ重量に対して、アルカリ性薬剤を0.2〜10重量%、過酸化水素を0.2〜5.0重量%、珪酸ナトリウムを0.2〜5.0重量%、キレート剤を0.05〜1.0重量%含有することが好ましい。さらに硫酸マグネシウムを0.01〜0.2重量%含有することが望ましい。なお、キレート剤としては、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸(HEDTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン)酢酸、あるいはそれらのアルカリ金属塩を使用することができる。
【0017】
本発明で使用するキレート剤を含む薬液は、キレート剤のみを含むものでもよいが、上述のアルカリ性過酸化水素薬液と同様の組成のものを用いてもよい。キレート剤としては、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸(HEDTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン)酢酸、あるいはそれらのアルカリ金属塩を使用することができる。また、薬液中のキレート剤の含有量は、絶乾木材チップ重量に対して0.05〜1.0重量%であることが好ましい。
【0018】
アルカリ性過酸化水素薬液を含浸させた木材チップはその柔軟化を目的として、150℃以下の温度で十分な時間保持することが好ましい。保持時間としては、木材チップの種類や大きさ、温度等に応じて5分〜180分行うのが好ましい。この保持において木材チップは軟化し、その後のリファイニング工程で繊維の分離が容易になる。さらに、含浸された薬液中の過酸化水素との反応によって、チップの白色化(漂白)が進行する。このように、薬液をチップに含浸させた後で一定の滞留時間を確保できる場合においては、この段階で酸素を添加することが望ましい。
【0019】
木材チップにアルカリ性過酸化水素薬液を含浸させる工程において、酸素を添加する場合の酸素の添加量は、対木材チップ絶乾重量に対して0.3〜3.0重量%が好ましい。酸素の添加量が0.3重量%未満であると、酸素が木材チップまたはパルプに十分吸収されないことから白色度の向上効果が十分ではない。一方、酸素の添加量が3.0%を超えると過剰添加となり、添加量に相応した効果が得られない上、高い酸素圧に伴って装置等にも制約を受ける。この工程における酸素添加はアルカリ性過酸化水素薬液の存在下だけでなく、滞留時の熱によって過酸化水素が分解された場合にも、アルカリ焼けによる白色度低下を抑制するという効果が期待される。
【0020】
前記アルカリ性過酸化水素薬液を含浸させた木材チップ、あるいは前処理後の漂白された木材チップは、常圧または加圧下で1次リファイニングが行われる。リファイニング装置は、一般的な常圧型もしくは加圧型解繊装置でよいが、好ましくはシングルディスクリファイナー、コニカルディスクリファイナー、ダブルディスクリファイナー、ツインディスクリファイナー等である。また、このリファイニング工程におけるチップ濃度は約20〜60%で実施することが好ましい。酸素を添加するのはチップ前処理段階だけではなく、このリファイニング工程(リファイナー中)でも良い。
【0021】
リファイニング工程において酸素を添加する場合、対木材チップ絶乾重量に対して酸素の添加量は0.3〜3.0重量%が好ましい。酸素の添加量が0.3重量%未満であると酸素がチップまたはパルプに十分吸収されないことから白色度向上効果が低減する。一方、酸素の添加量が3.0重量%を超えると過剰添加となり、添加量に相応した効果が得られないうえ、高い酸素圧に伴って装置等にも制約を受ける。この工程における酸素添加はアルカリ性過酸化水素薬液の存在下だけでなく、リファイニング時の熱によって過酸化水素が分解された場合にも、アルカリ焼けによる白色度低下を抑制するという効果が期待される。また、リファイニング直前においてキレート剤を含むアルカリ性過酸化水素を添加することによって、さらに白色度向上効果を高めることも可能である。
【0022】
解繊された前記パルプは、さらに1つ以上の公知であるリファイニング工程で精砕し、所望のパルプ濾水度に調整することができる。この工程は常圧または加圧下で行い、リファイニング装置は一般的な常圧型あるいは加圧型叩解装置を用いるのが好ましく、パルプ濃度は4〜60重量%で実施すればよい。
【0023】
より高い白色度、例えば、ISO白色度で65%以上が望ましい場合、1つ以上の公知である漂白工程によりパルプをさらに漂白することができる。この場合には、過酸化水素、オゾン、過酢酸等の酸化剤、あるいはハイドロサルファイト(亜二チオン酸ナトリウム)、硫酸水素ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、ホルムアミジンスルフィン酸(FAS)等の還元剤を用いることができる。
【0024】
本発明の製造方法で得られた高白色度の機械パルプは、各種印刷用紙に配合することができる。その場合の印刷用紙は公知の抄紙機にて抄造されるが、抄造条件については特に規定されるものではない。また、タルク、カオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム等といった填料の他に、一般に使用されている各種のアニオン性、カチオン性、ノニオン性あるいは両性の歩留まり向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤や内添サイズ剤等の抄紙用内添助剤を必要に応じて使用することができる。さらに、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等を必要に応じて添加しても何ら問題は無い。
【実施例】
【0025】
以下、実施例にて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で製造したパルプはJIP P 8222に従って手抄き紙を作成し、JIS P 8148に従って白色度を測定した。
【0026】
[実施例1]
薬液含浸装置を用いて、ユーカリグロビュラスの木材チップにアルカリ性過酸化水素薬液(対木材チップ絶乾重量当たり、NaOH:1.5重量%、H:2.0重量%、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA):0.2重量%)を含浸させた。取り出したチップを遠心脱水してから濃度を25重量%に調整し、耐圧容器に入れて酸素(対木材チップ絶乾重量当たり1.5重量%)を添加した。その後、バッチ式2.5L容回転型オートクレーブ(マルチダイジェスター)を用いて85℃で30分間加熱したブロー後木材チップについて、ラボ用加圧リファイナー(熊谷理器工業BRP45-300SS)を用いて133℃、5分間の予熱を行い、引き続いて1次リファイニング処理を行い、パルプを得た。
【0027】
[実施例2]
加熱温度を100℃にした以外は、実施例1と同様に処理を行った。
【0028】
[実施例3]
加熱温度を133℃にした以外は、実施例1と同様に処理を行った。
【0029】
[実施例4]
ラボ用加圧リファイナーによるリファイニング直前の予熱を100℃、10秒で行った以外は、実施例1と同様に処理を行った。
【0030】
[実施例5]
木材チップとしてラジアータパインを使用した以外は、実施例1と同様に処理を行った。
【0031】
[比較例1]
薬液含浸装置を用いて、ユーカリグロビュラスの木材チップにアルカリ性過酸化水素薬液(対木材チップ絶乾重量当たり、NaOH:1.5重量%、H:2.0重量%、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA):0.2重量%)を含浸させた。取り出した木材チップを遠心脱水してから濃度を25重量%に調整した後、ラボ用加圧リファイナー(熊谷理器工業BRP45-300SS)を用いて133℃、5分間の予熱を行い、引き続いて1次リファイニング処理を行った。
【0032】
[比較例2]
薬液含浸装置を用いて、ユーカリグロビュラスの木材チップにアルカリ性過酸化水素薬液(対木材チップ絶乾重量当たり、NaOH:1.5重量%、H:2.0重量%、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA):0.2重量%)を含浸させた。取り出した木材チップを遠心脱水してから濃度を25重量%に調整し、バッチ式2.5(L)容回転型オートクレーブ(マルチダイジェスター)を用いて85℃で30分間加熱した。その後、ブロー後木材チップについて、ラボ用加圧リファイナー(熊谷理器工業BRP45-300SS)を用いて133℃、5分間の予熱を行い、引き続いて1次リファイニング処理を行った。
【0033】
[比較例3]
加熱温度を100℃にした以外は、比較例2と同様に処理を行った。
【0034】
[比較例4]
加熱温度を133℃にした以外は、比較例2と同様に処理を行った。
【0035】
[比較例5]
ラボ用加圧リファイナーによるリファイニング直前の予熱を100℃、10秒で行った以外は、比較例2と同様に処理を行った。
【0036】
[比較例6]
木材チップとしてラジアータパインを使用した以外は比較例2と同様に処理を行った。
【0037】
実施例1〜5で得られた各1次リファイニング処理後パルプの白色度を表1に示した。
【0038】
【表1】


比較例1〜6で得られた各1次リファイニング処理後パルプの白色度を表2に示した。
【0039】
【表2】


表1と表2の結果から、木材チップにアルカリ性過酸化水素薬液を含浸させる工程において酸素を添加することによって、1次リファイニング処理後のパルプの白色度の向上効果が認められた。
【0040】
[実施例6]
実施例1で得られた1次リファイニング処理後のパルプの一定量をビニール袋に採取し、これに漂白薬液(対木材チップ絶乾重量当たり、NaSiO:5.0重量%、NaOH:3.0重量%、H:2.2重量%)を添加した後、パルプ濃度が10重量%となるように水を加えた。パルプと漂白薬液が十分混合されるよう揉み、ビニール袋の口を閉じてから、70℃に設定した恒温槽中において180分間保持して、漂白処理した。その後、ビニール袋から取り出したパルプを洗浄、脱水した。
【0041】
[実施例7]
実施例2で得られた1次リファイニング処理後のパルプを実施例6と同様に漂白処理した。
【0042】
[実施例8]
実施例3で得られた1次リファイニング処理後のパルプを実施例6と同様に漂白処理した。
【0043】
[実施例9]
実施例4で得られた1次リファイニング処理後のパルプを実施例6と同様に漂白処理した。
【0044】
[実施例10]
実施例5で得られた1次リファイニング処理後のパルプを実施例6と同様に漂白処理した。
【0045】
[比較例7]
比較例1で得られた1次リファイニング処理後のパルプの一定量をビニール袋に採取し、これに漂白薬液(対木材チップ絶乾重量当たり、NaSiO:5.0重量%、NaOH:3.0重量%、H:2.2重量%)を添加した後、パルプ濃度が10重量%となるように水を加えた。パルプと漂白薬液が十分混合されるよう揉み、ビニール袋の口を閉じてから、70℃に設定した恒温槽中において180分間保持して、漂白処理した。その後、ビニール袋から取り出したパルプを洗浄、脱水した。
【0046】
[比較例8]
比較例2で得られた1次リファイニング処理後のパルプを比較例7と同様に漂白処理した。
【0047】
[比較例9]
比較例3で得られた1次リファイニング処理後のパルプを比較例7と同様に漂白処理した。
【0048】
[比較例10]
比較例4で得られた1次リファイニング処理後のパルプを比較例7と同様に漂白処理した。
【0049】
[比較例11]
比較例5で得られた1次リファイニング処理後のパルプを比較例7と同様に漂白処理した。
【0050】
[比較例12]
比較例6で得られた1次リファイニング処理後のパルプを比較例7と同様に漂白処理した。
【0051】
実施例6〜10で得られた漂白後パルプの到達白色度を表3に示した。
【0052】
【表3】


比較例7〜12で得られた漂白後パルプの到達白色度を表4に示した。
【0053】
【表4】


表3と表4の結果から、木材チップにアルカリ性過酸化水素薬液を含浸させる工程において酸素を添加することによって製造された1次リファイニング処理後のパルプは、さらに漂白処理してもパルプの白色度の向上効果が維持されていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材チップにアルカリ性過酸化水素薬液を含浸させる工程(a)、常圧または加圧下で該木材チップをリファイニングしてパルプを製造する工程(b)を含む機械パルプの製造方法において、少なくとも前記(a)、(b)のいずれかの工程において酸素を添加することを特徴とする機械パルプの製造方法。
【請求項2】
木材チップを圧縮する工程(c)、前記木材チップを圧縮した状態、若しくは圧縮状態から解放した状態にてキレート剤を含有する薬液を木材チップに含浸させる工程(d)、前記キレート剤を含有する薬液を含浸させた木材チップを再度圧縮する工程(e)、前記キレート剤を含有する薬液を含浸させた木材チップを圧縮した状態、若しくは圧縮状態から解放した状態にてアルカリ性過酸化水素薬液を木材チップに含浸させる工程(f)、常圧または加圧下で該木材チップをリファイニングしてパルプを製造する工程(g)、を含む機械パルプの製造方法において、少なくとも前記(d)〜(g)のいずれかの工程において酸素を添加することを特徴とする機械パルプの製造方法。
【請求項3】
木材チップが広葉樹である請求項1ないし2記載の機械パルプの製造方法。
【請求項4】
木材チップがユーカリグロビュラスである請求項1〜3のいずれかに記載の機械パルプの製造方法。
【請求項5】
酸素の添加量が対木材チップ絶乾重量当たり0.3〜3.0重量%である請求項1〜4のいずれかに記載の機械パルプ製造方法。

【公開番号】特開2006−283237(P2006−283237A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−105321(P2005−105321)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】