説明

機械式散気装置の代替用散気補助装置及び機械式散気装置の保守方法

【課題】 汚水処理場等の反応タンクに設置された機械式散気装置の保守・点検時に、電源や空気配管施工を必要とせずに、保守作業中にも反応タンク内の被処理液中の活性汚泥等を堆積させることがない程度に攪拌と曝気とを可能とした機械式散気装置の代替用散気補助装置と機械式散気装置の保守方法を提供する。
【解決手段】 筒状の補助ドラフトチューブ2の下端に多数の散気孔3cを穿設した散気管3を配し、該散気管3の中央部の主管3aに給気管12の吐出口12aと接続させる。補助ドラフトチューブ2の外側面に、給気管12とガイドパイプ13とに係脱する案内受け部4を設ける。該補助ドラフトチューブ2を主体とした代替用散気補助装置1を機械式散気装置10に替えて設置し、給気管12から空気を供給すると、散気孔3cから補助ドラフトチューブ2内に空気が噴出されて、被処理液が上昇し、反応タンク11内に被処理液の流れが発生して攪拌される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水処理施設等に用いられる好気槽等の反応タンク内の被処理液に対して、散気し攪拌する機械式散気装置の保守等を行う際に、該機械式散気装置を保守作業に供している間にも反応タンク内の活性汚泥等が堆積することがないようにする機械式散気装置の代替用散気補助装置及び機械式散気装置の保守方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理施設の好気槽などの反応タンクでは、被処理液に空気を供給しながら攪拌して好気処理が行われる。このとき、被処理液が攪拌されることにより浮遊物や微生物及び担体などが沈降したり底部に堆積することが防止されており、この空気の供給と攪拌とを行う装置として曝気装置や散気装置がある。この種の散気装置のうちの機械式散気装置は、一般に、モータの動力によって回転するロータにインペラが設けられて、該インペラの旋回運動によって吸込口から被処理液を吸い込んで吐出口から吐き出す際に、ロータの空気吐出口から噴出された空気を被処理液に混合させる構造を備えている。この被処理液に空気を混合させて流れを与えることにより、反応タンク内の被処理液を攪拌し、活性汚泥等が底部に堆積することを防止すると共に、好気処理が行われる。この機械式散気装置は被処理液中に浸漬されて設置され、前記モータも防水されて浸漬されている。
【0003】
この種の機械式散気装置としての好気性処理槽用曝気装置が、特許文献1に開示されている。この曝気装置は、ケーシングと該ケーシング内に形成された被処理液体の流路内に設けられた羽根車とを備え、羽根車の翼部と翼部が相対するケーシングとの間のクリアランスを担体の最大径又は最大寸法より大きく設定したものである。また、この種の曝気装置は、好気タンク内に鉛直方向を長手方向として配設した給気管に係合する係合部が備えられており、設置状態で安定するようにしてある。そして、該曝気装置を好気タンク内に配置させる際には、この給気管に案内させて下降させながら、該曝気装置の空気室と該給気管に連通させて設けた水平方向配管の吐出口とを接続させる。
【0004】
ところで、機械式散気装置は、駆動部分を備えているため、軸受等の消耗部品の交換や調整等のために、例えば3年に1回等のように定期的に保守・点検を行う必要がある。保守の際には散気装置が反応タンクから引き上げられるため、被処理液への空気の供給がなく、また攪拌されない。このため、被処理液に流れが生成されず、活性汚泥等が沈降し、堆積してしまって反応タンクが機能しなくなってしまう。また、堆積した活性汚泥等が腐敗してしまうおそれがあり、反応タンクの掃除をする必要が生じて、さらに運転停止時間が長くなってしまう。また、散気装置に故障が生じた場合でも同様に反応タンクが機能しなくなってしまう。
【0005】
このため、保守・点検中でも反応タンク内の活性汚泥等が沈降しないように対策を講じる必要がある。この対策として、従来は、同一の機械式散気装置を用意して、散気装置を交換したり、簡易型の曝気装置を用意し保守中は該簡易型曝気装置を使用したりしている。特に、前記特許文献1に記載された曝気装置では、給気管に案内されて反応タンク内に設置するから、曝気装置の交換作業が容易となり、交換用曝気装置を備えておく対策が執られやすい。
【0006】
【特許文献1】特開平10−192882号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、交換用の散気装置を備えておくことは、コスト面で不利となってしまい、また緊急時にも迅速に交換できるよう反応タンクの付近に交換用の散気装置の保管スペースを必要とする。また、交換用散気装置や簡易型曝気装置を設置するには、電気配線を変更する必要があり、また給気管との接続に手間がかかってしまう場合がある。このため、電力を必要としない散気管を設ける対策を講じる場合があるが、反応タンクによっては十分な流速を生じさせることができず、活性汚泥等の沈降を阻止できない場合がある。
【0008】
そこで、この発明は、特に機械式散気装置の故障等の緊急時や保守・点検時に該機械式散気装置に替えて、動力を必要とせず、既設の給気管との接続が容易な機械式散気装置の代替用散気補助装置を提供すると共に、該代替用散気補助装置を利用した機械式散気装置の保守方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するための技術的手段として、この発明に係る機械式散気装置の代替用散気補助装置は、被処理液を滞留させる反応タンクに配設された給気管の吐出口に接続する給気口を有する機械式散気装置に替えて設置する代替用散気補助装置において、前記給気管の吐出口に接続される給気口と、該給気口に連通した散気管と、前記散気管を底部に収容する補助ドラフトチューブと、からなることを特徴としている。
【0010】
すなわち、機械式散気装置の保守・点検時には、前記補助ドラフトチューブを用いて反応タンク内に被処理液の流れを生成させるものである。前記給気管を流通した空気は前記散気管から被処理液中に放出され、補助ドラフトチューブ内を上昇し、いわゆるガスホールドアップ作用によって該補助ドラフトチューブ内に被処理液の上昇流が生じる。このため、被処理液が補助ドラフトチューブの上端から放出され、補助ドラフトチューブの下端から反応タンク内の被処理液が流れ込むことになり、反応タンク内の全域にわたって流れが生じる。これにより、被処理液が攪拌されて、活性汚泥等の沈降が抑制され、堆積することを防止する。
【0011】
また、請求項2の発明に係る機械式散気装置の代替用散気補助装置は、前記機械式散気装置を設置する際に、該機械式散気装置を設置位置まで案内する案内手段を有しているものにあっては、該案内手段に係脱可能な案内受け手段を具備させたことを特徴としている。
【0012】
代替用散気補助装置を設置するために、機械式散気装置を設置するための設備を利用できる構造としたものである。機械式散気装置は、チェーンブロックやホイスト、クレーン等の荷役機械を用い、前記案内手段に案内させて前記給気口を吐出口に接続させて設置する。代替用散気補助装置を設置する場合にも、前記案内手段に案内受け手段を係合させた状態とすれば、該案内手段に案内されて下降させられ、給気口を給気管の吐出口に接続させることができる。また、代替用散気補助装置の昇降には、前記荷役機械を利用することができる。
【0013】
機械式散気装置へ空気を供給するためには給気管が設けられているから、この給気管が案内手段とされているものがあり、この種の構造では、代替用散気補助装置も該給気管に案内させて昇降するようにする。このため、前記案内受け手段は該給気管と係脱するものとされる。
【0014】
また、請求項3の発明に係る機械式散気装置の代替用散気補助装置は、前記機械式散気装置の下部に吸込案内筒が存する場合には、該吸込案内筒と前記補助ドラフトチューブとを接続させる接続手段を設けたことを特徴としている。
【0015】
機械式散気装置はブロワにより吹き込まれて空気が供給されるから、水深が大きい場所に設置する場合、空気を供給できなくなるおそれがある。このため、深度が大きい反応タンクに設置する場合には、吸込案内筒を設置しその上部に機械式散気装置が設置される構造が採用されるものがある。斯かる構造の場合には、前記吸込案内筒の上端に代替用散気補助装置を配することになる。このとき、補助ドラフトチューブと吸込案内筒とを接続手段によって接続できるようにしたものである。接続手段としては、例えば、吸込案内筒の上端に固定側フランジを設け、補助ドラフトチューブの下端に連結側フランジを設けて、これらフランジを当接させることにより、吸込案内筒に補助ドラフトチューブを載置させた状態で接続させるようにする構造とすることができる。接続手段を具備させずに、吸込案内筒に補助ドラフトチューブを載置させても構わないが、フランジを設けることによって代替用散気補助装置が安定して載置され、代替用散気補助装置の場合でも深部まで空気を供給できる。
【0016】
また、請求項4の発明に係る代替用散気補助装置は、前記補助ドラフトチューブに高さ調整手段を具備させ、液面から該高さ調手段の上端までの距離を変更可能としたことを特徴としている。
【0017】
代替用補助散気装置の補助ドラフトチューブが十分なガスホールドアップ作用を果たすためには、該補助ドラフトチューブの上端から液面までの距離が、適宜なものであることが望ましい。この距離は、反応タンクの水深や、補助ドラフトチューブの直径、エア量等を考慮して定められる最適な値であって、30cm〜200cmとされ、より好ましくは50cm前後とされる。このため、補助ドラフトチューブを液面方向に延長する高さ調整手段を設けて、液面との間の距離を調整するようにしたものである。
【0018】
また、請求項5の発明に係る機械式散気装置の保守方法は、被処理液を滞留させる反応タンクに配設された給気管の吐出口に接続する給気口を有する機械式散気装置の保守方法において、前記給気管の吐出口に接続される給気口と、前記散気管を底部に収容する補助ドラフトチューブと、前記給気口に連通した散気管を底部に備えた補助ドラフトチューブとからなる代替用散気補助装置を、前記機械式散気装置を回収した後、前記案内受け手段を案内手段に案内させて被処理液中に浸漬させて、前記給気口を前記吐出口に接続させ、前記給気管から給気して散気管から空気を噴出させて、補助ドラフトチューブ内に空気を供給することを特徴としている。
【0019】
すなわち、機械式散気装置の保守・点検時には、代替用散気補助装置を該機械式散気装置に替えて設置するものである。保守・点検を行っている期間は、該代替用散気補助装置を介して被処理液に曝気され、被処理液が攪拌される。保守・点検に要する期間は一般的に2〜3日であり、この間は代替用散気補助装置により被処理液の攪拌を行わせることにより、活性汚泥等の堆積を防止するのに十分となるようにし、多少の好気処理も行えるようにしたものである。
【0020】
また、保守・点検作業は、機械式散気装置のメーカや専門業者が担当する場合が殆どであるから、代替用散気補助装置はこれらメーカや専門業者が保有するようにし、作業に際しては、該代替用散気補助装置を現場に搬入して、機械式散気装置を反応タンクから引き上げて代替用散気補助装置を設置するようにすることもできる。
【発明の効果】
【0021】
この発明に係る機械式散気装置の代替用散気補助装置によれば、補助ドラフトチューブのガスホールドアップ作用による上昇流により、動力を要することなく反応タンクに被処理液の流れを生成させることができる。このため、被処理液が攪拌され、活性汚泥等が堆積することを防止することができる。特に、通常処理時に運転される機械式散気装置の故障時のように緊急を要する場合や保守・点検のための短期間では、十分に活性汚泥等の堆積を抑制することができ、これらの腐敗等を生じさせることがない。
【0022】
また、請求項2の発明に係る代替用散気補助装置によれば、この代替用散気補助装置を設置するときには、機械式散気装置の設置の際に利用される荷役機械や案内手段を用いることができるから、設置作業を簡便に行うことができる。また、機械式散気装置に空気を供給するための給気管の吐出口と代替用散気補助装置の給気口とを接続させるから、特に、該給気管を案内手段とするようにすれば、これら吐出口と給気口との取り合い関係を容易に設定することができる。
【0023】
また、請求項3の発明に係る機械式散気装置の代替用散気補助装置によれば、反応タンクが深槽のものである場合には、機械式散気装置は吸込案内筒の上端に設置されることになるものがあるが、斯かる構造で代替用散気補助装置を設置しようとする場合、筒状の吸込案内筒の上端に筒状の補助ドラフトチューブが設置されることになる。このため、これらの接続状態がずれるおそれがある。これに対して、吸込案内筒と補助ドラフトチューブとを接続手段を介して接続させた場合には、補助ドラフトチューブが吸込案内筒に対して多少ずれが生じた場合でも、接続状態に不都合が生ぜず、代替用散気補助装置が安定して設置される。
【0024】
また、請求項4の発明に係る代替用散気補助装置によれば、該代替用散気補助装置の補助ドラフトチューブから液面までの距離を調整することができ、該補助ドラフトチューブにより確実にガスホールドアップ作用を行わせることができる。
【0025】
また、請求項5の発明に係る機械式散気装置の保守方法によれば、保守・点検作業中も代替用散気補助装置により反応タンク内の被処理液が攪拌され続けるから、保守・点検作業中に活性汚泥等が堆積することがなく、時間の制約を受けずに、確実な保守・点検作業を行うことができる。しかも、代替用散気補助装置には駆動部分がないので電源を必要とせず、また配管の接続作業等も要しないから、設置が容易で、迅速な保守・点検作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図示した好ましい実施形態に基づいて、この発明に係る機械式散気装置の代替用散気補助装置と、該代替用散気補助装置を用いた機械式散気装置の保守方法を具体的に説明する。
【0027】
まず、図2を参照して既存の機械式の散気装置10の取付状態について説明する。なお、図2は深槽の反応タンク11に設置する状態を示している。反応タンク11には鉛直方向を長手方向とした給気管12と同じくガイドパイプ13とが設けられている。なお、これら給気管12とガイドパイプ13とにより、散気装置10を設置する際に、該散気装置10の案内手段を構成している。また、散気装置10は反応タンク11の高さ方向の中間位置に配設されるため、反応タンク11には吸込案内筒14が設けられ、該吸込案内筒14の上側に配されるようにしてある。前記給気管12はこの吸込案内筒14の上端から内側に折曲されて、前記ガイドパイプ13との中間位置で折曲され、先端部が上方を指向させて適宜長さ伸長されており、先端部が開放されて給気管12の吐出口12aとされている。この吐出口12aが散気装置10の散気ロータ10aに連繋されて、給気管12から供給された空気が散気ロータ10a内に放出されるようにしてある。この散気装置10は、前記散気ロータ10aがモータ15によって回転し、該散気ロータ10aに設けられたインペラ10bが旋回することにより、被処理液が吸込口10cから吸い込まれ、吐出口10dから吐き出されるものであり、散気ロータ10aの空気吐出口から空気が吹き出されて、吐出口10dに向かう被処理液に空気を供給するようにしてある。
【0028】
そして、前記散気装置10の側面には、側方に張り出させて一対の案内受け部16が設けられており、この案内受け部16が前記給気管12とガイドパイプ13とにそれぞれ係脱するようにしてある。また、散気装置10には吊り金具17が取り付けられており、該散気装置10を設置する場合にはこの吊り金具17にチェーンブロックやホイスト、クレーン等の図示しない荷役機械を連繋させて、吊り下げることにより行う。すなわち、荷役機械に吊り下げられた散気装置10を、その案内受け部16を給気管12とガイドパイプ13とのそれぞれに係合させ、荷役機械を作動させて下降させる。この下降は給気管12とガイドパイプ13とに案内されてなされる。設置位置まで下降すると、給気管12の前記吐出口12aに散気装置10の散気ロータ10aが連繋する。したがって、吐出口12aから吐出される空気は散気ロータ10a内に放出される。また、散気装置10が設置された状態で、前記吸込案内筒14に散気装置10が連繋して、吸込案内筒14内の被処理液が吸込口10cから散気装置10に吸い込まれるようにしてある。
【0029】
図1はこの発明に係る機械式散気装置の代替用散気補助装置の構造を示しており、同図(a)は平面図、(b)は一部を切断して示す正面図である。この代替用散気補助装置1は円筒状の補助ドラフトチューブ2を主体として構成されている。なお、筒状であれば円形のものには限らない。該補助ドラフトチューブ2の下端側の内部に散気管3が配されている。この散気管3は、補助ドラフトチューブ2の中心に主管3aが位置し、該主管3aから適宜本数の枝管3bが放射状に伸張させてあり、該枝管3bの先端が補助ドラフトチューブ2の内壁面に固定されている。なお、枝管3bは放射状に限らず、格子状等に配してもよく、被処理液に空気を適宜に曝気できるものであればよい。主管3aと枝管3bはいずれも中空とされており、主管3aの下端で開放されて、該開放された開口が給気口3dとされている。そして、枝管3bには多数の散気孔3cが穿設されており、前記給気口3dと散気孔3cとが主管3aと枝管3bの内部を介して連通されている。また、該給気口3dは、前記給気管12の吐出口12aと接続されるようにしてある。さらに、補助ドラフトチューブ2の外側面の適宜高さ位置には、ほぼ180°で離隔した位置に一対の案内受け部4が設けられている。これら案内受け部4は、前記給気管12とガイドパイプ13のそれぞれに係脱することができるようにしてある。また、補助ドラフトチューブ2の下端部には、接続手段を構成する連結側フランジ5が取り付けられている。なお、この連結側フランジ5は必要に応じて設ければよく、該連結側フランジ5を設ける場合には、前記吸込案内筒14の上端部には、図3〜図5に示すように、この連結側フランジ5と組み合わされる接続手段を構成するための固定側フランジ14aが設けられる。なお、これら固定側フランジ14aと連結側フランジ5とに互いに係合する凸部と凹部とが形成されていれば、これらの連繋状態が確実となるので好ましい。
【0030】
以上により構成された代替用散気補助装置1について、機械式散気装置10の保守・点検作業の際における設置作業と、その作用を以下に説明する。
【0031】
機械式散気装置10は、荷役機械によって吊り上げることにより反応タンク11から引き上げられて、図3に示すように、吸込案内筒14が残った状態となる。この状態で、機械式散気装置10を吊り上げた荷役機械に代替用散気補助装置1を供し、図4に示すように、前記案内受け部4を給気管12とガイドパイプ13にそれぞれ係合させて、下降させる。この下降によって代替用散気補助装置1は、図5に示すように、吸込案内筒14に載置された状態となる。また、この状態で、散気管3の主管3aの給気口3dが給気管12の吐出口12aと接続される。しかも、代替用散気補助装置1が下降する際には案内受け部4を係合させた給気管12とガイドパイプ13とに案内されるから、主管3aの給気口3dと吐出口12aとは確実に接続される。また、吸込案内筒14の上端に固定側フランジ14aが設けられ、補助ドラフトチューブ2の下端に連結側フランジ5が設けられている場合には、これら固定側フランジ14aと連結側フランジ5とが連繋することによって、代替用散気補助装置1は安定した状態で吸込案内筒14に載置された状態となる。また、これら固定側フランジ14aと連結側フランジ5とに互いに係合する凸部と凹部とが形成されていれば、これら凸部と凹部の係合により、固定側フランジ14aと連結側フランジ5との連繋状態が確実となる。
【0032】
補助ドラフトチューブ2の散気管3が給気管12の吐出口12aに接続した状態で該給気管3を介して空気を供給すると、散気管3の前記散気孔3cから空気が補助ドラフトチューブ2内に放出される。この空気は補助ドラフトチューブ2内を上昇するから、この上昇に伴われてガスホールドアップ作用により補助ドラフトチューブ2内の被処理液に上昇流が生じて、補助ドラフトチューブ2の上端から被処理液が反応タンク11内に流出する。この上昇流に対して、補助ドラフトチューブ2の下端から被処理液が該補助ドラフトチューブ2の内部に流入する。。なお、補助ドラフトチューブ2は前記吸込案内筒14に載置されているから、補助ドラフトチューブ2に流入する被処理液は該吸込案内筒14の内部を上昇して供給される。このため、反応タンク11内では下降流が生じることになり、この流れによって反応タンク11内の被処理液が攪拌される。これにより、被処理液中の浮遊物や微生物、担体などが反応タンク11の底部に堆積することが防止される。なお、この代替用散気補助装置1が使用されるのは、機械式散気装置10の保守・点検中の場合や機械式散気装置10の故障などの緊急時における場合であるから、短期間であるため、活性汚泥等の堆積があったとしても、腐敗するまでには至らない。
【0033】
機械式散気装置10の保守・点検が完了したならば、代替用散気補助装置1を引き上げて、該機械式散気装置10を設置して、該機械式散気装置10の運転を再開させる。
【0034】
保守・点検作業は反応タンク11が設置されている処理施設の依頼等によって機械式散気装置10のメーカーや専門業者が施工するのが一般的である。このため、前記代替用散気補助装置1をこれらメーカーあるいは専門業者が保有し、保守・点検作業を行う際に、該代替用散気補助装置1を処理施設に持ち込んで行うことができる。したがって、処理施設では、該代替用散気補助装置1や予備の機械式散気装置10、あるいは簡易型散気装置等を保有する必要がなく、これらの保管スペースが必要ない。
【0035】
図6に代替用散気補助装置1を設置した場合と、設置しない場合の反応タンク11内の一断面に関して、流速をコンピュータによってシミュレーションしたものを示している。同図(a)は代替用散気補助装置1を設置した場合を、(b)は設置しない場合を示しており、斜線を施した部分が流速0.1m/s以下の部分である。(a)においては、流速の小さい部分が反応タンク11の、主として左右上隅の部分と既設の吸込案内筒14の下部に分布している。これに対して、(b)においては、流速0.1m/sの部分は、左右の上隅から内壁面に掛けての部分と、吸込案内筒14の側面全域にわたった部分に分布している。すなわち、代替用散気補助装置1を設置した場合の方が、反応タンク11内に流速を生じやすく、被処理液が攪拌される。
【0036】
また、図7は代替用散気補助装置1を設置した場合と、設置しない場合の反応タンク11内の全容積について、流速の大きさの割合をコンピュータによってシミュレーションして棒グラフに示したものである。同図(a)は代替用散気補助装置1を設置した場合で、(b)は設置しない場合である。全容積に対して流速0.1m/s以下の部分が、(a)では9.7%以下であり、(b)では同じく42.2%以下となっている。また、(a)では、流速0.5m/sの部分が50%前後で存しているのに対して、(b)では流速0.5%の部分は存していない。すなわち、代替用散気補助装置1を設置した場合の方が比較的に広い範囲で大きな流速が生じ、反応タンク11内の被処理液が攪拌されている。
【0037】
以上に説明した実施形態では、代替用散気補助装置1の補助ドラフトチューブ2を単一の筒状のものとして、そのガスホールドアップ作用によって被処理液の流れを生成するものとして説明したが、被処理液を攪拌するのに十分なガスホールドアップ作用を果たさせるためには、補助ドラフトチューブ2の上端部が被処理液の液面から30cm〜200cmとされ、より望ましくは約50cm前後の位置にあるのがよいとされる。そこで、補助ドラフトチューブ2の上端の位置を変更し、液面からの距離を調整できることが好ましい。図8は液面Sからの位置を調整することができるようにした構造を示している。すなわち、前記補助ドラフトチューブ2の上端に、該補助ドラフトチューブ2と等しい径の筒状に形成されて、補助ドラフトチューブ2を液面方向に延長する高さ調整手段としての高さ調整用ドラフトチューブ18を積み重ねて載置する。この高さ調整用ドラフトチューブ18の高さを、この高さ調整用ドラフトチューブ18を載置させた状態で、上端部から液面Sまでの距離が十分なガスホールドアップ作用を果たすことができる距離となるようにしてある。また、補助ドラフトチューブ2の上端部にフランジ2aを、高さ調整用ドラフトチューブ18の下端部に18aをそれぞれ設け、これらフランジ2a、18aが合致することにより、補助ドラフトチューブ2に高さ調整用ドラフトチューブ18を安定して載置させることができる。さらに、高さ調整用ドラフトチューブ18の上端部にフランジ18bを設けて、複数段に高さ調整ドラフトチューブ18を重ねることもできるようにしてある。また、前記案内受け部4と同様な案内受け部18cを設けて、給気管12とガイドパイプ13とに案内されるようにしてある。
【0038】
さらに、図9には別の実施形態を示してある。この実施形態は、伸縮可能な構造の補助ドラフトチューブとして、該補助ドラフトチューブを設置した状態で液面Sからの位置を調整できるようにしたものである。図9に示すように、補助ドラフトチューブ20を内筒21と外筒22との二重構造とし、内筒21に係合ピン21aを植設する。他方、外筒22には下端部からスリット部22aを形成し、このスリット部22aの適宜位置に外筒22の周方向の係止用スリット部(図示せず)を形成する。そして、係合ピン21aをスリット部22aと一致させてこれら内筒21と外筒22とが連結させ、次いで外筒22を内筒21に対して回動させることにより、係合ピン21aを図示しない係止用スリット部に係合させれば内筒21と外筒22との位置関係が固定される。このため、前記係止用スリット部を高さ方向で複数箇所に形成し、前記係合ピン21aと係合させる位置を変更することにより、補助ドラフトチューブ22の上端部と被処理液の液面Sとの距離を調整する。
【0039】
また、深槽に機械式散気装置を設置する場合について示しているが、浅槽に設置された機械式散気装置に替えてこの発明に係る代替用散気補助装置を用いることもできる。浅槽においては、該機械式散気装置は反応タンクの底部に設置されるから、下方に吸込案内筒が存しない。すなわち、この代替用散気補助装置も反応タンクの底部に設置されることになる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
機械式散気装置の保守・点検時にも、この機械式散気装置の代替用散気補助装置を用いることにより、反応タンク内の被処理液を攪拌して、活性汚泥等の沈降と堆積を抑制するから、保守・点検作業に必要な時間を費やして確実な作業を行うことができるとともに、電源を必要とせず、また、空気配管の変更等を行わずに、機械式散気装置に替えて設置でき、しかも、設置の際に既設の荷役機械等を利用できるので、既存の処理施設に対しても利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明に係る代替用散気補助装置の概略の構造を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図2】この発明に係る代替用散気補助装置を利用するのに適した反応タンクの一例と、該反応タンクに設置された機械式散気装置の設置状態を説明する図で、反応タンクの内部を示している。
【図3】図2に示す機械式散気装置を引き上げた状態を説明する図である。
【図4】機械式散気装置が引き上げられた図2に示す状態にある反応タンクに代替用散気補助装置を設置する作業を説明する図である。
【図5】機械式散気装置に替えて代替用散気補助装置を設置した状態を説明する図である。
【図6】この発明に係る代替用散気補助装置を設置した場合と、設置しない場合について、反応タンク内の被処理液の流れの状態をコンピュータを用いてシミュレーションした断面図であり、(a)が設置して送気した状態を、(b)が設置せずに送気した状態を示している。
【図7】この発明に係る代替用散気補助装置を設置した場合と、設置しない場合について、反応タンク内の被処理液に流れの状態をコンピュータを用いてシミュレーションした場合の、全容積に対して流速の分布割合を示す棒グラフである。
【図8】代替用散気補助装置の他の実施形態を説明する図である。
【図9】代替用散気補助装置の別の実施形態を説明する図である。
【符号の説明】
【0042】
1 代替用散気補助装置
2 補助ドラフトチューブ
3 散気管
3a 主管
3b 枝管
3c 散気孔
4 案内受け部
5 連結側フランジ
10 機械式散気装置
10a 散気ロータ
10b インペラ
10c 吸込口
10d 吐出口
11 反応タンク
12 給気管
12a 吐出口
13 ガイドパイプ
14 吸込案内筒
14a 固定側フランジ
15 モータ
16 案内受け部
18 高さ調整用ドラフトチューブ
20 補助ドラフトチューブ
21 内筒
22 外筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液を滞留させる反応タンクに配設された給気管の吐出口に接続する給気口を有する機械式散気装置に替えて設置する代替用散気補助装置において、
前記給気管の吐出口に接続される給気口と、
該給気口に連通した散気管と、
前記散気管を底部に収容する補助ドラフトチューブと、
からなることを特徴とする代替用散気補助装置。
【請求項2】
前記機械式散気装置を設置する際に、該機械式散気装置を設置位置まで案内する案内手段を有しているものにあっては、該案内手段に係脱可能な案内受け手段を具備させたことを特徴とする請求項1に記載の代替用散気補助装置。
【請求項3】
前記機械式散気装置の下部に吸込案内筒が存する場合には、該吸込案内筒と前記補助ドラフトチューブとを接続させる接続手段を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の機械式散気装置の代替用散気補助装置。
【請求項4】
前記補助ドラフトチューブに高さ調整手段を具備させ、液面から該高さ調手段の上端までの距離を変更可能としたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の代替用補助散気装置。
【請求項5】
被処理液を滞留させる反応タンクに配設された給気管の吐出口に接続する給気口を有する機械式散気装置の保守方法において、
前記給気管の吐出口に接続される給気口と、
前記散気管を底部に収容する補助ドラフトチューブと、
前記給気口に連通した散気管を底部に備えた補助ドラフトチューブとからなる代替用散気補助装置を、
前記機械式散気装置を回収した後、前記案内受け手段を案内手段に案内させて被処理液中に浸漬させて、前記給気口を前記吐出口に接続させ、前記給気管から給気して散気管から空気を噴出させて、補助ドラフトチューブ内に空気を供給することを特徴とする機械式散気装置の保守方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−272043(P2006−272043A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−90971(P2005−90971)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】