説明

機械式駐車場装置

【課題】平面循環式のものにあって、自動車格納台数の低減を招くことなく、トレーの送り動作を高効率で行うことのできる機械式駐車場装置の提供。
【解決手段】トレー送り機構により1台又は複数台のトレー2が空スペースに向けて移動される送り動作が繰り返されて、所定のトレー2が所望の位置まで移動される機械式駐車場装置において、複数の格納スペース3のうち少なくとも1箇所に、複数の空トレー21を集積可能なトレーストックスペースSを設け、駐車場装置の利用状況に応じて可能な限り多くの空スペースを確保し、自動車格納台数が一定値未満である場合、トレー2をより少ない送り動作で効率良く所望の位置まで移動可能とするとともに、自動車格納台数が一定値を超えた場合、トレーストックスペースSから順次、空トレー21を供給し、空間利用効率を高めるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレーのない空スペースを利用してトレー横送り機構の交互作動によりトレー送り動作を行う機械式駐車場装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、狭隘な空間を立体的に利用し空間効率良く自動車を格納する機械式駐車場装置が一般的なものとなっている。このような機械式駐車場装置として、平面循環式と称されるものにあっては、一般に、複数の格納階層には、自動車が載置される複数のトレーがマトリックス状に配置されるとともに、これらのトレーを格納スペースに縦送り又は横送りするトレー送り機構が設置されており、これらのトレーが、トレー送り機構により、前後及び左右の4方向、あるいは前後又は左右の2方向に送られるようになっている。そして、複数の格納スペースのうち少なくとも1箇所にトレーのない空スペースが設定されており、この空スペースに隣接する1箇所又は複数箇所の格納スペースのトレー送り機構が起動され、その格納スペース上の1台又は複数台のトレーが横方向又は縦方向に移動する。また、この移動により新たに空いた空スペースに向けてさらに他のトレー又はトレー群が順次移動される。このように1台又は複数台のトレーがトレーの空スペースに向けて移動される動作が繰り返されて、所定のトレーが所望の位置まで移動される。
【0003】
また、従来、機械式駐車場装置にあって、各格納階層にトレーストックスペースを配置し、このトレーストックスペースに予備のトレーを待機させておいて、不具合の生じたトレーがあるときに替わりのトレーを供給するようにしたものや(例えば、特許文献1参照)、搬送装置の両側方に、貯蔵されている空トレーを必要に応じて取り出し、また回収されたトレーを貯蔵するためのトレーストックスペースを設けたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−131533号公報(段落番号0028、図3)
【特許文献2】特2597308号(段落番号0009、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、平面循環式の機械式駐車場装置は、前述したようにトレーのない空スペースを利用してトレーの送り動作を行うものであり、空スペースが多ければ、より少ない送り動作で効率良くトレーを所望の位置まで移動させることが可能となる。そこで、平面循環式の機械式駐車場装置に未使用の空トレーを集積するトレーストックスペースを設け、駐車場装置の利用状況に応じて可能な限り空スペースを確保し、トレーの送り動作を高効率に行うことが考えられる。なお、前述したように従来も機械式駐車場装置にトレーストックスペースを設けたものがあるが、前述の前者ものは、トレーストックスペースに予備のトレーを待機させておいて、不具合の生じたトレーがあるときに替わりのトレーを供給するようにしたものであり、平面循環式のものにあって空スペースを増やしトレーの送り動作を高効率に行うことを念頭に置いたものではない。また、後者のものは、リフト等の搬送装置近傍のトレーストックスペースに空トレーを集積しておき、空トレーを効率良く搬送装置に積載することが目的であり、平面循環式のものにあって空スペースを増やしトレーの送り動作を高効率に行うことを念頭に置いたものではなかった。
【0006】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、平面循環式のものにあって、自動車格納台数の低減を招くことなく、トレーの送り動作を高効率で行うことのできる機械式駐車場装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明は、各格納階層のそれぞれに、自動車が載置される複数のトレーと、これらのトレーを格納する格納スペースと、前記トレーを前記格納スペースに縦送り又は横送りするトレー送り機構とが備えられるとともに、複数の前記格納スペースのうち少なくとも1箇所にトレーのない空スペースが設定され、前記トレー送り機構により、1台又は複数台の前記トレーが前記空スペースに向けて移動される送り動作が繰り返されて、所定のトレーが所望の位置まで移動される機械式駐車場装置において、複数の前記格納スペースのうち少なくとも1箇所に、複数の空トレーを集積可能な集積手段が配置されるトレーストックスペースを設けたことを特徴としている。
【0008】
このように構成した本発明の請求項1に係る発明では、複数の格納スペースのうち少なくとも1箇所に設けられるトレーストックスペースの集積手段に、未使用の空トレーを集積し、駐車場装置の利用状況に応じて可能な限り多くの空スペースを確保する。これにより、自動車格納台数が一定値未満である場合、トレーをより少ない送り動作で所望の位置まで移動し、トレーの送り動作を高効率で行うことができる。一方、自動車格納台数が一定値を超えた場合、トレーストックスペースから順次、空トレーが供給され、自動車が載置されたトレーが格納スペースに格納されることで、自動車格納の観点で空間利用効率を高めることができる。
【0009】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記トレーストックスペースは、前記空トレーが出払った状態で、自動車が載置された前記トレーを格納可能な格納スペースとなることを特徴としている。
【0010】
このように構成した本発明の請求項2に係る発明では、自動車格納台数が一定値を超え、トレーストックスペースの集積手段から順次、空トレーが供給され、最終的に空トレーが出払うと、このトレーストックスペースは、自動車が載置されたトレーを格納可能な格納スペースとなる。これによって、空間利用効率をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、トレーの送り動作を高効率で行うことができ、入出庫時における利用者の待ち時間を低減し、サービス性の向上を図ることができるとともに、より少ない送り動作でトレーを所望の位置まで移動させることが可能となることから、省エネ化を図ることもできる。また、自動車格納台数の低減を招くことがなく、空間利用効率を高めるという機械式駐車場装置が有する本来の目的を損なうこともない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る機械式駐車場装置の一実施例を示す正面図である。
【図2】本実施例における機械式駐車場装置の側面図である。
【図3】本実施例における機械式駐車場装置の概略上面図である。
【図4】本実施例における機械式駐車場装置の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る機械式駐車場装置の実施例を図に基づき説明する。
【0014】
本実施例の機械式駐車場装置は、図3および図4に示すように、平面循環式と称されるものであり、地上に入出庫口1、地下スペースに、第1の格納階層A及び第2の格納階層Bがそれぞれ設置されている。また、第1の格納階層A及び第2の格納階層Bには、自動車が載置される複数のトレー2がマトリックス状に配置されるとともに、これらのトレー2を格納スペース3に縦送り又は横送りする図示しないトレー送り機構が設置されており、トレー2がトレー送り機構により、前後及び左右の4方向、あるいは前後又は左右の2方向に送られるようになっている。さらに、各格納階層A、Bの循環移送路における所定位置との間でトレー2を受け渡し可能な昇降台41を有し、地上の入出庫口1と地下の収納階層A、Bとの間で昇降可能なリフト4が設けられている。
【0015】
また、トレー2下面の四隅には、図1に示すように、それぞれ横方向車輪51及び縦方向車輪52が近接して軸支されるとともに、格納階層A、Bには、図3に示すように、トレー2の横方向、及び縦方向の各車輪51、52が走行可能な横方向レール61及び縦方向レール62がマトリックス状に敷設される。そして、これら横方向レール61及び縦方向レール62で区画された複数の格納スペース3上に、それぞれトレー送り機構が設置される。さらに、複数の格納スペース3のうち少なくとも1箇所にトレー2のない空スペースEが設定され、その他の格納スペース3上に複数のトレー2が配置される。
【0016】
そして、本実施例では、各格納階層A、Bの複数の格納スペース3のうち1箇所に、複数の空トレー21を集積可能なトレーストックスペースSが設けられている。このトレーストックスペースSには、図1及び図2に示すように、空トレー21を集積する集積手段7が設けられており、この集積手段7は、例えば、トレーストックスペースS上部に懸架される上枠81に取付けられるモータ71と、上枠81の長手方向に沿って2箇所配置され、モータ71により駆動される駆動スプロケット72と、トレーストックスペースS下部に懸架される下枠82の長手方向に沿って2箇所配置される従動スプロケット73と、無端状に連結されるとともに、駆動スプロケット72と従動スプロケット73に巻き掛けられるチェーン74と、このチェーン74に固定され、空トレー21の側端を支持可能な支持部材75とを備えている。なお、本実施例に示す集積手段7にあっては、チェーン74に5つの支持部材75が固定されており、最大5台の空トレー21を集積可能となっている。
【0017】
本実施例にあっては、自動車格納台数が一定値未満である場合、図1のトレーストックスペースS1に示すように、未使用の空トレー21を集積し、可能な限り多くの空スペースEを確保する。例えば、あらかじめ各格納階層A、Bに、1箇所の空スペースEが設定されているものの場合、集積手段7に最大集積数である5台の空トレー21が集積された状態で、各格納階層A、Bには計6箇所の空スペースEが確保されることになる。そして、自動車Cを入庫する場合、対象となる空トレー21(以下、入庫トレー22と称する)を入出庫口1に呼び出す。この呼び出しに応じ、図示されない制御手段に予め格納されたプログラムに従って、トレー送り機構が作動され、入庫トレー22を水平面上の縦方向又は横方向に送り駆動する。すなわち、空スペースEに隣接する1箇所又は複数箇所の格納スペース3のトレー送り機構が起動され、その格納スペース3上の1台又は複数台のトレー2が横方向又は縦方向に送られ、トレー2は横方向車輪51又は縦方向車輪52の横方向レール61上又は縦方向レール62上の走行により移動される。この移動により新たに空いた空スペースEに向けてさらに他のトレー2又はトレー2群が順次移動される。このように1台又は複数台のトレー2がトレー2の空スペースEに向けて移動される動作が繰り返されて、入庫トレー22はリフト4まで移動される。入庫トレー22がリフト4の昇降台41に載せられると、昇降台41は入出庫口1まで上昇する。なお、入庫トレー22があらかじめ入出庫口1にあって待機状態となっている場合、前述したような入庫トレー22の移動が不要であることは言うまでもない。次いで、入出庫口1に位置した入庫トレー22に自動車Cを乗り入れる。この後、昇降台41を格納階層A、Bのいずれかまで下降し、トレー送り機構が作動され、入庫トレー22を水平面上の縦方向又は横方向に送り駆動し、所定の格納スペース3に位置させる。
【0018】
また、自動車格納台数が増え、一定値を超えた場合、図示されない制御手段に予め格納されたプログラムに従って、トレーストックスペースSの集積手段7から順次、空トレー21が格納スペース3に供給される。すなわち、トレー送り機構が作動してトレーストックスペースSから1台の空トレー21が格納スペース3に移動すると、モータ71が駆動されてチェーン74が回動し、次の空トレー21は支持部材75から解放されるとともに、トレー送り機構と係合状態となる。この状態でトレー送り機構が作動されると、トレーストックスペースSから当該空トレー21が格納スペース3に移動する。この動作が繰り返されることで集積手段7から順次、空トレー21が格納スペース3に供給される。そして、図1のトレーストックスペースS2に示すように、集積手段7から最終的に空トレー21が出払うと、このトレーストックスペースS2は、自動車が載置されたトレー2を格納可能な格納スペース3となる。
【0019】
さらに、自動車Cの出庫要請があったときは、通常の操作と同様に出庫作業が行われる。すなわち、前述と同様、1台又は複数台のトレー2が空区画に向けて縦方向又は横方向に向けて移動するトレー2の送り動作が繰り返されることにより、出庫トレー23はリフト4まで移動される。そして、出庫トレー23がリフト4の昇降台41に載せられると、昇降台41は入出庫口1まで上昇し、この後、自動車Cは出庫される。
【0020】
本実施例によれば、各格納階層A、Bに設けられるトレーストックスペースSに未使用の空トレー21を集積し、駐車場装置の利用状況に応じて可能な限り多くの空スペースEを確保することで、自動車格納台数が一定値未満である場合、より少ない送り動作で効率良く所望の位置まで移動し、トレー2の送り動作を高効率で行うことができる。これによって、入出庫時における利用者の待ち時間を低減し、サービス性の向上を図ることができるとともに、より少ない送り動作でトレーを所望の位置まで移動させることが可能となることから、省エネ化を図ることもできる。また、自動車格納台数が一定値を超えた場合、トレーストックスペースSから順次、空トレー21が供給されることで、自動車格納台数の低減を招くことがなく、したがって、空間利用効率を高めるという機械式駐車場装置が有する本来の目的を損なうこともない。さらに、トレーストックスペースSから順次、空トレー21が供給され、最終的に空トレー21が出払うと、このトレーストックスペースSは、自動車が載置されたトレー2を格納可能な格納スペース3となることで、空間利用効率をさらに高めることができる。
【0021】
なお、前述した実施例では、各格納階層A、Bの複数の格納スペース3のうち1箇所に、複数の空トレー21を集積可能なトレーストックスペースSを設けた例を示したが、各格納階層A、BにおけるトレーストックスペースSの数は、機械式駐車場装置の仕様や、顧客の要望に応じて任意に設定できる。
【符号の説明】
【0022】
1 入出庫口
2 トレー
3 格納スペース
4 リフト
7 集積手段
21 空トレー
22 入庫トレー
23 出庫トレー
41 昇降台
51、52 車輪
61、62 レール
71 モータ
72 駆動スプロケット
73 従動スプロケット
74 チェーン
75 支持部材
81 上枠
82 下枠
A、B 格納階層
C 自動車
E 空スペース
S トレーストックスペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各格納階層に、自動車が載置される複数のトレーと、これらのトレーを格納する格納スペースと、前記トレーを前記格納スペースに縦送り又は横送りするトレー送り機構とが備えられるとともに、複数の前記格納スペースのうち少なくとも1箇所にトレーのない空スペースが設定され、前記トレー送り機構により、1台又は複数台の前記トレーが前記空スペースに向けて送り移動される動作が繰り返されて、所定のトレーが所望の位置まで移動される機械式駐車場装置において、
複数の前記格納スペースのうち少なくとも1箇所に、複数の空トレーを集積可能な集積手段が配置されるトレーストックスペースを設けたことを特徴とする機械式駐車場装置。
【請求項2】
前記トレーストックスペースは、前記空トレーが出払った状態で、自動車が載置された前記トレーを格納可能な格納スペースとなることを特徴とする請求項1記載の機械式駐車場装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−47169(P2011−47169A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195439(P2009−195439)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000227043)日精株式会社 (68)
【Fターム(参考)】