説明

機能化ナノスフェア潤滑剤

【課題】機能化ナノスフェア潤滑剤を提供する。
【解決手段】潤滑剤の製造方法が開示される。この方法は、約500ナノメータ未満のサイズの硬質のナノスフェアを提供することを含む。この方法は、さらに、ナノスフェアの表面に機能性薬剤を少なくとも部分的に結合させるために、ナノスフェアを放射エネルギーに曝露することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般的には潤滑剤に関し、さらに詳細には機能化ナノスフェア潤滑剤に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑剤は、多くの場合液体で、2つの面間の摩擦または摩耗を低減するために2つの動く表面の間に導入される物質である。液体潤滑剤は、対向する面間に流体圧力を介して力を伝達することによって機能し、一方、固体潤滑剤は、対向する面間の接触または摩擦を低減することによって機能する。潤滑剤は、例えば、エンジン、歯車および油圧機器などの種々の動的システムにおける可動部品の運転寿命を維持しかつ延ばすために幅広く用いられている。
【0003】
潤滑動作の機構に基づいて種々のタイプの潤滑を概括的に定義できる。これらのタイプとして、流体潤滑、混合潤滑、境界潤滑、および極圧潤滑(enhanced pressure lubrication)が挙げられる。流体潤滑および混合潤滑は、それぞれ、潤滑剤の厚膜および薄膜によって、動く表面の分離を維持する。境界層および極圧タイプの潤滑は、動く部品の表面上に形成される潤滑剤の薄い固体層を利用する。いくつかの場合には、この薄い固体潤滑剤の層を、大きな潤滑剤粒子または流体潤滑剤に含まれる反応性添加剤の生成物からせん断破砕された材料によって形成することができる。
【0004】
ナノスフェア潤滑剤は、動く表面間に化学的または物理的に安定な潤滑を提供するように構成されるナノメータサイズの球状粒子である。ナノスフェアは、動く表面間の「ベアリング」における微小なボールとして機能することによって表面間の摩擦を低減できる。ナノスフェアの潤滑性は、部分的には、ナノスフェアの曲率および微小寸法に基づく。大型寸法の球状粒子の場合とは対照的に、ナノスフェアの微小寸法は、一般的に、動く表面間の分離には寄与しない。
【0005】
ナノ粒子ベースの潤滑剤の1つの適用例が、2007年1月4日に発行されたウェイニック(Waynick)の(特許文献1)に記載されている。(特許文献1)は一般的に潤滑油およびグリースに用いるナノ粒子の添加剤を記述している。この添加剤は、炭酸カルシウムなどの炭酸塩、カルボン酸塩、リン酸塩、硫酸塩、またはこれらの材料の2つ以上の組合せを含むことができる。(特許文献1)は、これらの材料を単独で用いる場合よりも優れた結果を実現するために、これら種々の材料を組み合わせて用いることを述べている。
【0006】
(特許文献1)は、ナノ粒子添加剤の有効範囲を記述しているが、限界が残っている。例えば、ナノ粒子の表面は化学的反応性が高く、このため粒子が好ましくない形で集塊化し、有効粒子径を増大させ、ナノ粒子の微小寸法の利点を減殺する可能性がある。さらに、ナノ粒子の化学組成が、耐腐食性または耐摩耗性に適した化学的性質を有する潤滑剤の形成を妨げる可能性がある。
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/004602号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は、先行技術のナノ粒子潤滑剤の1つ以上の欠点を克服することを目指す。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、1つの態様において、潤滑剤の製造方法に関する。この方法は、約500ナノメータ未満のサイズの硬質のナノスフェアを提供することを含む。この方法は、さらに、ナノスフェアの表面に機能性薬剤(functional agent)を少なくとも部分的に結合させるために、ナノスフェアを放射エネルギーに曝露することを含む。
【0010】
本開示は、別の態様において、約500ナノメータ未満の寸法の硬質のナノスフェアを含む潤滑剤に関する。この潤滑剤は、また、放射エネルギーによってナノスフェアの表面に少なくとも部分的に結合される機能性薬剤を含む。
【0011】
さらに別の態様において、本開示は潤滑剤に関する。この潤滑剤はベース油と潤滑剤の添加剤とを含む。この潤滑剤は、さらに、約500ナノメータ未満のサイズのセラミックのナノスフェアと、そのナノスフェアの表面にマイクロ波エネルギーによって少なくとも部分的に結合される機能性薬剤とを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書に組み込まれてその一部を構成する添付の図面は、本開示の実施例を示しており、以下の説明と共に、本開示のシステムの原理を説明する。
【0013】
図1は、互いに対して動く例としての2つの表面10と潤滑剤20とを示す。この場合、表面10間にはいくらかの摩擦接触が生じる。表面10は、機械的運転を遂行するように構成される構成要素または機械の一部とすることができる。表面10の非限定的な例として、エンジンの燃焼室内におけるピストンヘッドとシリンダ壁面との接触面、トランスミッション歯車装置の噛み合い面、油圧機器、または、相対的な動きに曝される他の対向表面を含めることができる。
【0014】
潤滑剤20は、少なくとも部分的に表面10上またはその間に介在させることができる。いくつかの場合には、潤滑剤20は、表面10上に保護膜を形成することによって摩擦を低減できる。いくつかの実施形態においては、潤滑剤20を燃料または他の種類の流体に加えることもできる。例えば、潤滑剤20を、ガソリン、ディーゼル燃料、2行程機関用燃料、バイオ燃料、または他の任意の燃焼可能流体に加えることができる。
【0015】
潤滑剤20は、表面10間の摩擦または摩耗を低減するために表面10間に導入される任意の液体物質とすることができる。いくつかの実施形態においては、潤滑剤20を数種類の異なる物質から構成することができる。潤滑剤20は、有機油(例えば、植物油、シード油および鉱油)、炭化水素ベース油(例えば、化石燃料ベース油)、合成液体(例えば、水素化ポリオレフィン、エステル、シリコーンおよびフルオロカーボン)、または他の適切なタイプの液体などの液体を含むことができる。潤滑剤20の組成は、潤滑される表面10の種類、運転条件、機械構成要素の期待運転寿命時間または他のパラメータに応じて変えることができる。
【0016】
潤滑剤20は、また、液体および固体潤滑剤の混合物を含むこともできる。いくつかの場合には、潤滑剤20を完全に固体潤滑剤から構成することができる。他の実施形態においては、潤滑剤20は、液体の媒体中に懸濁された固体潤滑剤を含むことができる。このような固体潤滑剤は、以下に詳しく述べるように、一般的にサブミクロンサイズの球状の粒子状物質を含むことができる。特に、固体潤滑剤は、硬質の、一般的に球形のナノメータサイズのセラミック粒子を含むことができる。いくつかの実施形態においては、これらの固体潤滑剤を、機能化すると共に潤滑剤20に関連する物理的または化学的性質を改善するために、マイクロ波エネルギーで処理することができる。
【0017】
さらに、種々の添加剤を潤滑剤20と混合することもできる。潤滑剤20の望ましい物理的または化学的特性を強化するために、1種類またはそれより多くの異なる添加剤を組み合わせることができる。例えば、いくつかの添加剤を、粘度、耐腐食または耐酸化性、耐摩耗性、熱伝達、または他の適当な性質を改善するために組み合わせることができる。
【0018】
図2は、図1の表面10の拡大図を示す。潤滑剤20は、表面10間に介在するように示され、液体の媒体40内部に複数のナノスフェア30を含む。ナノスフェア30は、前記の、また以下に詳しく述べる任意の固体潤滑剤を含むことができる。液体の媒体40は、有機油、炭化水素ベース油、合成液体および添加剤などの、前記の任意の液体の潤滑剤物質を含むことができる。液体の媒体40は、ナノスフェア30の集塊化を少なくとも部分的に防止するために、ナノスフェア30を溶液中に懸濁するように機能することができる。液体の媒体40は、また、流体潤滑または混合潤滑のタイプの潤滑における潤滑媒体として機能することもできる。いくつかの場合には、液体の媒体40は、表面10から少なくとも部分的に熱を取り去るように機能することができる。また、液体の媒体40は、表面10間のナノスフェア30を濃縮するために、少なくとも部分的に蒸発するように構成される揮発性の液体を含むことができる。さらに別の実施形態においては、液体の媒体40を潤滑剤20から省略することができる。
【0019】
いくつかの実施形態においては、液体の媒体40は化合物(図示されていない)を含むことができる。この化合物は、耐摩耗性または耐腐食性などの、潤滑剤20の望ましい化学的または物理的性質を提供または強化するように構成できる。例えば、この化合物は、ナノスフェア30の表面エネルギーを低減し、その集塊化傾向を減退させるための表面安定化剤として作用することができるであろう。適切な化合物として、リン酸塩ベース、アミンベース、硫酸塩ベースまたはホウ素ベースの材料を含むことができる。化合物として用いることができる材料の非限定的な例として、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)、トリポリリン酸ナトリウム、二リン酸カリウムおよび2−エチルヘキシルジチオリン酸モリブデンを含めることができる。当該技術分野で知られているように、1種類より多くの化合物を使用することもできる。
【0020】
潤滑剤20は、任意の一般的に球形形状の複数のナノスフェア30を含むことができる。本明細書で規定するように、ナノスフェアは、約500ナノメータ未満のサイズの任意の一般的な球形粒子を含むことができる。ナノスフェアは一般的に球形形状であるので、サイズは、ナノスフェアのおよその外径またはおよその幅を指すことができる。いくつかの実施形態においては、ナノスフェア30は、約500ナノメータ未満のサイズ範囲を有する母集団を含むことができる。他の実施形態においては、ナノスフェア30の大多数が約500ナノメータ未満のサイズを有することができる。さらに他の実施形態においては、ナノスフェア30が、約200ナノメータ以下の平均サイズを有する母集団を含むことができる。
【0021】
ナノスフェア30は、永久変形に対して実質的な抵抗力を有する硬質のものとすることができる。硬質粒子は、例えば、ゲル、あるいは、弾性または塑性変形の性質を有する他の材料などの軟質粒子よりも、変形に対して実質的に高い抵抗力を有する。
【0022】
いくつかの実施形態においては、ナノスフェア30を、一般的に一様な最密充填の物質を有する粒子に形成することができる。他の実施形態においては、ナノスフェア30を多孔質にすることができ、その場合は、内部の空所または空洞が、一般的に一様な構造のナノスフェア30の内部に存在する。さらに、ナノスフェア30の空洞(図示されていない)には、少なくとも部分的に、例えば前記の化合物などの他の材料を充填することができる。他の実施形態においては、ナノスフェア30の空洞の表面を、以下に詳細に述べるように機能化することができる。
【0023】
ナノスフェア30は、例えばセラミック材料などの、硬質粒子を形成し得る任意の適切な材料から構成できる。このような材料は、当該技術分野で知られる材料、固体潤滑剤として普通に用いられる材料、あるいは、一般的に硬質で球形のナノサイズ粒子を形成し得る材料を含むことができる。例えば、セラミック材料は、単一の酸化物、炭化物、窒化物または金属間材料を含むことができるであろう。単一酸化物材料は、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、チタニア(TiO)、酸化マグネシウム(MgO)、シリカ(SiO)、ムライト(3Al・2SiO)、スピネル(MgO・Al)または同類の材料を含むことができる。炭化物材料は、炭化ケイ素(SiC)、炭化ホウ素(BC)、炭化チタン(TiC)または同類の材料を含むことができる。窒化物材料は、窒化ホウ素(BN)、窒化ケイ素(Si)または同類の材料を含むことができる。金属間材料は、ニッケルアルミナイド(NiAl、NiAl)、チタンアルミナイド(TiAl、TiAl)、二ケイ化モリブデン(MoSi)または同類の材料を含むことができる。
【0024】
いくつかの実施形態においては、ナノスフェア30は、1つ以上の焼結された表面35を含むことができる。焼結表面35はナノスフェア30の任意の面積を含むことができる。例えば、焼結表面35は、図2に示すように、ナノスフェア30の周囲面積の少なくとも一部分に拡がるナノスフェア30の面積を含むことができる。ナノスフェア30は内部の空洞を含むことができるので、焼結表面35は、ナノスフェア30の1つ以上の内部表面(図示されていない)を含むことができる。
【0025】
焼結表面35は、以下に詳しく述べるような適切な製造方法を用いて、1つ以上のナノスフェア30上に形成することができる。焼結表面35は、ナノスフェア30の適切な機能化をもたらすことができる。機能化は、一般的に、化学的な官能基をナノスフェア30の表面に結合する処理を指している。ナノスフェア30の機能化は、それ自体として、ナノスフェア30の内部および/または外部表面の少なくとも一部分に化学的な官能基を添加することを含むことができる。
【0026】
ナノスフェア30の機能化は、潤滑剤20の種々の化学的または物理的性質を提供あるいは強化することができる。例えば、いくつかの官能基をナノスフェア30に加えると安定性を改善することができ、それによって、ナノスフェア30の集塊化の傾向を部分的に抑えることができる。さらに、熱伝達、ノイズ減衰、耐腐食性または潤滑剤20の他の望ましい性質を改善するために、官能基をナノスフェア30に加えることができる。
【0027】
いくつかの実施形態においては、1つ以上の官能基をナノスフェア30に添加できる。さらに、種々のサイズまたは多孔度のナノスフェア30を、種々の量の官能基を保持するように、従って機能化の種々の程度を呈するように構成することができる。例えば、高多孔度のナノスフェア30は、同様のサイズであるが多孔度の低いナノスフェア30よりも多くの官能基で機能化できるであろう。このように多様な性質によって、以下に述べるように、ナノスフェア30を特定の用途用として正確に適合させることができる。
【0028】
図3はナノスフェア30の製造方法45を示す。未処理のナノスフェア50を処理チャンバ60に装入できる。チャンバ60は、未処理のナノスフェア50を放射エネルギーで処理するように構成される任意の装置を含むことができる。いくつかの実施形態においては、放射エネルギーはマイクロ波エネルギーを含むことができる。例えば、チャンバ60は、マイルストーン(Milestone)社(コネティカット州モンロー(Monroe,CT))が製造している「Ethos 1600」装置を含むことができるであろう。特に、放射エネルギーは、主として、放射の大部分がマイクロ波スペクトルの範囲内にあるマイクロ波エネルギーを含むことができる。マイクロ波エネルギーは、約30cm〜約1mmの範囲の波長を有する任意のエネルギーを含むことができる。
【0029】
いくつかの実施形態においては、方法45は、未処理のナノスフェア50の表面を少なくとも部分的に焼結するためにマイクロ波エネルギーを用いることができる。焼結操作は、ナノスフェアの表面と1種以上の選定された機能性薬剤70との間の結合をもたらすことができる。マイクロ波エネルギーの照射、未処理ナノスフェア50のマイクロ波エネルギー照射時間および表面の焼結処理に関連する他のパラメータはチャンバ60の内部で調整できる。この処理は、ナノスフェアの表面に十分な熱を生じさせるように構成できる。熱は、反応物質の活性化エネルギーに打ち勝ってナノスフェアの表面への結合反応を引き起こすために要求できる。例えば、チャンバ60は、要求される表面反応の程度に応じて、反応物質を、10分間150℃に、または20〜60分間200℃に、または30〜60分間250℃に加熱できればよいであろう。これによって、機能性薬剤70の官能基をナノスフェアの表面に結合させることができ、処理後のナノスフェア30が機能化される。さらに、チャンバ60の内部で形成される1つ以上の反応物質も、ナノスフェア30に結合してなんらかの機能化をもたらすことができる。ナノスフェア30は、種々のトライボロジーおよび潤滑用途における特殊な用途用として管理的に製造可能である。
【0030】
チャンバ60は、未処理のナノスフェア50を1種類以上の機能性薬剤70と結合するように構成することもできる。機能性薬剤70は、上記のように、未処理のナノスフェア50と反応して機能化ナノスフェア30を形成し得る1つ以上の官能基を含む化合物を含むことができる。機能性薬剤70は、防食、防錆、圧力、摩耗またはナノスフェア30の他の特性の1つ以上の特性を強化するように未処理のナノスフェア50を機能化するために用いることができる。例えば、機能性薬剤70は、ジチオリン酸金属、ジチオカルバミン酸金属、スルホン酸金属、チアジアゾール、硫化テルペン、アルキルアミン、リン酸アルキルアミン、アルケニルコハク酸、脂肪酸、酸性リン酸エステル、硫化アルキル、ポリスルフィド、硫化脂肪油、塩素化脂肪油、塩素化パラフィンワックス、亜リン酸アルキル、リン酸アルキル、無灰ジチオリン酸塩、カルボン酸塩、三ホウ酸金属、塩素化ワックス、ナフテン酸鉛、またはこれらの組合せの1つ以上を含むことができる。機能性薬剤70は、固体、液体、気体、またはゼラチン状の材料とすることができる。
【0031】
いくつかの実施形態においては、商業的に入手可能な未処理のナノスフェア50を、チャンバ60内で1種以上の機能性薬剤70と結合させることができる。この混合物は、放射エネルギーによる混合物の処理前、処理後または処理中に、1回以上の加熱および/または冷却ステップにかけてもよい。また、処理を、未処理のナノスフェア50および機能性薬剤70を連続的にまたは間欠的に攪拌または混合しながら行うことも考えられる。
【0032】
別の実施形態においては、チャンバ60が、ナノスフェアの製造を多段で実行し得るようにナノスフェアを処理する形に構成される多重区画を含むことができる。例えば、第1チャンバ(図示されていない)を、未処理のナノスフェア50を選定された条件の下で放射エネルギーに曝露するように構成できるであろう。続いて、ナノスフェアを1つ以上の機能性薬剤70に曝露し、一定時間選択的に加熱することができる。ナノスフェア30の適正な製造を確実にするために、監視、サンプリングまたは他の品質管理技法を用いることができるであろう。例えば、ナノスフェア30のサイズを全体として揃えるために、種々のフィルタ(図示されていない)を用いることができる。
【0033】
いくつかの実施形態においては、潤滑剤20のすべてまたは実質的にすべてをナノスフェア30とすることができる。例えば、一般的に固体潤滑剤が要求される場合は、チャンバ60から操出されるナノスフェア30を潤滑剤20として用いることができる。液体の潤滑剤が必要な他の実施形態においては、潤滑剤20を、ナノスフェア30と液体の媒体40とによって形成することができる。
【0034】
方法45は、チャンバ60で調製されるナノスフェア30を混合機80内で液体の媒体40と混合して潤滑剤20を生成することを任意選択的に含むことができる。混合機80は、ナノスフェア30および液体の媒体40を混合するように構成される任意の適切な装置を含むことができる。例えば、混合機80は、機械ミキサ、超音波ミキサまたは当該技術分野で知られる他の任意のミキサを含むことができる。
【0035】
液体の媒体40は、前記のような任意の有機油、炭化水素ベース油または合成液体を含むことができる。種々の添加剤(図示されていない)を液体の媒体40と混合することもできる。これらの添加剤は、潤滑剤20の1つ以上の望ましい性質を強化することができる。例えば、添加剤は、表面10を発錆および/または摩耗から保護し、特定の用途に対する潤滑剤20の性質を強化し、潤滑剤20の酸化を防止するように機能することができる。これらの添加剤は、酸中和剤、消泡剤、酸化防止剤、防錆剤、腐食防止剤、界面活性剤、分散剤、乳化剤、極圧添加剤、油性強化剤、流動点降下剤、粘着剤、粘度指数向上剤および/または当該技術分野で知られる他の任意の潤滑剤添加剤を含むことができる。
【0036】
いくつかの実施形態においては、潤滑剤20にさらに各種の製造工程(図示されていない)を加えることができる。例えば、潤滑剤20の粘度、ナノスフェア含有率、潤滑性等などの種々の物理的および/または化学的特性を測定する監視工程を適用することができる。いくつかの実施形態においては、潤滑剤20の幾分かを、監視工程からの出力に基づいてさらに処理するために、チャンバ60または他の処理ステップに戻すことができる。他の処理は清浄化処理を含むことができるであろう。これによって、汚染物質および他の好ましくない材料を潤滑剤20から除去できる。このような処理は、好ましくないサイズまたは性質の種々のサイズのナノスフェア30をろ過して除外することを含むことができるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0037】
ナノスフェア30は、潤滑剤、燃料、他の流体媒体またはこれらの組合せに加えることができる。前記のように、潤滑剤20は、あらゆる可動部品間の摩擦または摩耗を低減するために用いることができる。潤滑剤20は、種々の可動部品の表面10の分離を少なくとも部分的に維持するように機能し得る硬質のナノスフェア30を含むことができる。ナノスフェア30は、表面10間の「ボールベアリング」インターフェースにおける「ボール」として作用することによって、表面10間の摩擦も低減することができる。潤滑剤20のトライボロジーの性質は、また、ナノスフェア30の寸法および/または機能化された表面から生じるナノスフェア30の新規の性質によっても高めることができる。
【0038】
各種の流体が、本明細書に記述するナノスフェア30を含むことができる。この場合、ナノスフェア30は1つ以上の官能基を含むことができる。官能基は、このような流体の種々の望ましい性質を付与または強化するように構成される化合物を含むことができる。例えば、官能基は、摩耗または摩擦関連の性質、熱伝達、耐腐食性、排出物質の低減、ノイズ減衰または潤滑剤20の他の性質を強化することができる。特に、これらの官能基は、ナノスフェア30の集塊化傾向を減退させる表面安定化剤として機能することができる。
【0039】
ナノスフェア30は、これら種々の官能基の1つ以上を含む焼結された表面35を有することができる。焼結操作は、放射エネルギー、特にマイクロ波エネルギーによるナノスフェアの処理を含むことができる。機能性薬剤70および未処理のナノスフェア50の混合物に照射されるマイクロ波エネルギーが焼結表面を生成することができる。これによって、官能基がナノスフェア30の内部または外部表面に結合される。製造工程を制御および変更して、1種類以上の官能基を種々の濃度で有するナノスフェア30を形成することができる。適切に形成されたナノスフェア30を異なる量で存在させることによって、潤滑剤20の多様な物理的または化学的性質を付与または強化することができる。
【0040】
開示されたナノスフェア30または潤滑剤20に対して種々の修正および変更をなし得ることは当業者にとって明らかであろう。開示されたナノスフェア30または潤滑剤20の詳細および実践を検討することによって、他の実施形態が当業者には明らかになるであろう。明細書の記述および実施例は典型的事例としてのみ見做されるように意図されており、本発明の真の範囲は、特許請求の範囲およびその均等物によって示される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】互いに対して動きかつ本開示の実施例による潤滑剤を含む2つの表面を示す。
【図2】図1の2つの表面の拡大図を示す。
【図3】本開示の実施例によるナノスフェアの製造工程を示す。
【符号の説明】
【0042】
10 表面
20 潤滑剤
30 ナノスフェア
35 焼結表面
40 液体の媒体
45 製造方法
50 未処理のナノスフェア
60 チャンバ
70 機能性薬剤
80 混合機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約500ナノメータ未満のサイズの硬質のナノスフェアを提供することと、
ナノスフェアの表面に機能性薬剤を少なくとも部分的に結合させるために、ナノスフェアを放射エネルギーに曝露することと
を含むことを特徴とする潤滑剤の製造方法。
【請求項2】
放射エネルギーがマイクロ波エネルギーを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ナノスフェアがセラミック材料を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
セラミック材料が、単一酸化物、炭化物、窒化物および金属間物質の少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ナノスフェアを流体と混合することをさらに含み、流体がベース油および燃料の少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
約500ナノメータ未満の寸法の硬質のナノスフェアと、
放射エネルギーによってナノスフェアの表面に少なくとも部分的に結合された機能性薬剤と
を含むことを特徴とする潤滑剤。
【請求項7】
放射エネルギーがマイクロ波エネルギーを含むことを特徴とする、請求項6に記載の潤滑剤。
【請求項8】
ナノスフェアがセラミック材料を含むことを特徴とする、請求項6に記載の潤滑剤。
【請求項9】
セラミック材料が、単一酸化物、炭化物、窒化物および金属間物質の少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項8に記載の潤滑剤。
【請求項10】
流体をさらに含み、流体がベース油および燃料の少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項6に記載の潤滑剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−274283(P2008−274283A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118610(P2008−118610)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(391020193)キャタピラー インコーポレイテッド (296)
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
【Fターム(参考)】