説明

機能性グリコールゲル

【課題】吸水、吸湿性を抑制した機能性グリコールゲルの提供。
【解決手段】(a)グリコール系溶剤30〜98.4質量%
(b)ゲル化剤0.5〜3質量%
(c)水、及び
(d)機能性成分
を必須成分として含有する機能性グリコールゲルであって、
i)成分(a)のグリコール系溶剤に対する水の溶解度が50g/100g以上である場合、水の配合量を20〜50質量%とし、
ii)成分(a)のグリコール系溶剤に対する水の溶解度が50g/100g未満である場合、水の配合量を1質量%から該溶剤に対する水の溶解度に相当する量までとすることを特徴とする機能性グリコールゲル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水、吸湿性を抑制した機能性グリコールゲルに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、ゲル状の形態をした製品が数多く市場に出回っているが、その多くは水性ゲルであり、水性配合物を、カラギーナン、ジェランガム、ゼラチン、寒天などのゲル化剤でゲル化したものである。
水性ゲルの用途は、食品から家庭用芳香剤、昆虫の忌避剤に至るまで広範に渡り、洗浄成分、殺虫成分、香料、消臭成分等の機能性成分を含有させた機能性ゲルも多く知られている。一方、使用頻度は少ないがノルマルパラフィン、イソパラフィン、流動パラフィン、油脂、エステル類などの液状油剤をアルキルアルミニウムやイソバン、クレイトンなどを用いてゲル化した油性ゲルもある。
油性ゲルは、また、洗浄成分、殺虫成分、香料、消臭成分等の機能成分を含有させた機能性ゲルとして利用されている。
機能性ゲルの使用期間としては、1〜3ヶ月程度のものが多い。水性ゲルは、沸点100℃の水をベースとしているため、揮散速度が速く短期間の使用に向いており、長期間使用できるように設計すると、大型化する傾向がある。
一方、油性ゲルは沸点100℃前後のものから200数十℃の広範囲のものまで広い選択肢があり、適度な沸点のものを選択して使用することが可能で、揮散速度の遅い油剤を使用すれば、長期間使用できるように設計することも容易である。
いずれのゲル製剤においてもベースとなる水、或いは、油剤における機能性成分の溶解度が低く、殆どの場合、界面活性剤を用いて可溶化する必要がある。
【0003】
現在市場には殆ど存在しないが、ジベンジリデンソルビトールを用いて、グリコール系溶剤をゲル化することも可能である。ジベンジリデンソルビトールを用いたゲル化製剤としては、溶剤として、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン及びN,N−ジメチルアセトアミドを用い、DDVPをゲル化した蒸散性殺虫剤(特開平07−267809号公報)、香料成分をゲル化剤とともに多孔質支持体に含浸させ、多孔質支持体中で香料成分のオイルゲルを形成した固形芳香剤及び容器入り芳香剤(特開2007−111281号公報)、ヒドロキシ官能基化シリコーン、安定化剤及びジベンジリデンソルビトールとプロピレングリコール等の溶媒、並びに活性剤を組み合わせて製造したジベンジリデンソルビトール及び官能基化シリコーン類を含む化粧品組成物(特表2001−523703号公報)、ジベンジリデンソルビトール、誘導体化グアー、及び溶媒を含んでなる成分を組み合わせることにより製造される無水ゲル組成物からなるジベンジリデンソルビトールを有する発汗抑制剤(特表2001−523700号公報)、ジベンジリデンソルビトールを、発汗防止剤塩を含有する液状ビヒクルと混合して、加熱、冷却してゲルを形成させることを含む、ゲル状化粧用スティックを製造する方法(特表2002−505470号公報)、液体媒体、前記液体媒体に溶解した発汗抑制剤塩、及びジベンジリデンソルビトールに、更に、ヒドロキシアルキルセルロース及び/又はキレート化剤を含んでなるジベンジリデンアルジトールを含む透明な発汗抑制剤スティック(特表平11−501037号公報)等がある。
【0004】
グリコール系溶剤をゲル化する利点はグリコール系溶剤の可溶化力が高く、多くの機能性成分を可溶化できるため、界面活性剤を添加せずに機能性ゲルを製造することができることである。
界面活性剤の添加を必要としないことは、種々の界面活性剤の可溶化力を調べたり、界面活性剤配合による製剤の安定化(色調変化、異臭)を確認する必要が無く、そのメリッ
トは大きい。しかしながら、グリコール系溶剤の高い吸水性によって、ゲルは大気中から水分を吸収、吸湿し、ゲルの表面を濡らすが、ゲル自体の吸水速度が遅いため、吸湿した水分をゲル内に取り込めず、ゲル表面に水が浮いた状態となり、ゲルの外観を損ねたり、浮いた水がこぼれて、ゲルが置かれた器財を汚損する。
【特許文献1】特開平07−267809号公報
【特許文献2】特開2007−111281号公報
【特許文献3】特表2001−523703号公報
【特許文献4】特表2001−523700号公報
【特許文献5】特表2002−505470号公報
【特許文献6】特表平11−501037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、吸水、吸湿性を抑制した機能性グリコールゲルの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、ゲル組成物からできる限り水を除くことにより該ゲルの吸水、吸湿性を抑制しようとする従来の発想とは逆に、ゲル組成物に意図的に特定量の水を予め添加したところ、驚くべきことにゲルの吸水、吸湿性を抑制できることを見出した。更に、使用するグリコール系溶剤に対する水の溶解度の違いにより、吸水、吸湿性を抑制し得る水の添加量の範囲が異なることを見出し本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下の構成を採用する。
(1)
(a)グリコール系溶剤30〜98.4質量%
(b)ゲル化剤0.5〜3質量%
(c)水、及び
(d)機能性成分
を必須成分として含有する機能性グリコールゲルであって、
i)成分(a)のグリコール系溶剤に対する水の溶解度が50g/100g以上である場合、水の配合量を20〜50質量%とし、
ii)成分(a)のグリコール系溶剤に対する水の溶解度が50g/100g未満である場合、水の配合量を1質量%から該溶剤に対する水の溶解度に相当する量までとすることを特徴とする機能性グリコールゲル。
(2)前記ゲル化剤が、1,3:2,4−ビス−O−ベンジリデン−D−グリシトール(ジベンジリデンソルビトール)であることを特徴とする前記(1)記載の機能性グリコールゲル。
(3)機能性成分が、洗浄成分、殺虫成分、昆虫忌避成分、殺ダニ成分、ダニ忌避成分、香料又は消臭成分から選択される少なくとも1種である前記(1)又は(2)記載の機能性グリコールゲル。
(4)前記グリコール系溶剤が、エチレングリコール系溶剤、プロピレングリコール系溶剤、エチレングリコール系エーテル類又はプロピレングリコール系エーテル類或いはこれらの混合溶剤である前記(1)ないし(3)の何れか1つに記載の機能性グリコールゲル。
尚、「溶剤に対する水の溶解度に相当する量まで」とは、例えば、使用するグリコール系溶剤に対する水の溶解度が10g/100gである場合、水の添加量は10質量%までとなることを意味する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の機能性グリコールゲルは、吸水、吸湿して外観を損ねたり、吸水した水が浮いて、ゲルが置かれている器財を汚損することのない有用な機能性ゲルである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明に用いられるグリコール系溶剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のエチレングリコール系溶剤、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、イソプレングリコール等のプロピレングリコール系溶剤、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル等のエチレングリコール系エーテル類、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル等のプロピレングリコール系エーテル類等が挙げられ、好ましくは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、イソプレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレンブチルエーテル等及びこれらの混合溶剤が挙げられる。
また、本発明の機能性ゲルでは、機能性成分とともに、グリコール系溶媒も揮散することを考慮すると、プロピレングリコール系溶剤やプロピレングリコール系エーテル類等の安全性の高い溶剤が好適に使用される。
グリコール系溶剤の配合量は、機能性グリコールゲルの質量に基づき、30ないし98.4質量%の範囲である。
尚、グリコール系溶剤の中で、該溶剤に対する水の溶解度が50g/100g以上となるものとしては、エチレングリコール系溶剤、プロピレングリコール系溶剤が挙げられ、グリコール系溶剤の中で、該溶剤に対する水の溶解度が50g/100g未満となるものとしては、エチレングリコール系エーテル類、プロピレングリコール系エーテル類が挙げられる。
【0009】
本発明に使用するゲル化剤としては、ジベンジリデンソルビトール類(ゲルオールDシリーズ;新日本理化株式会社)が挙げられ、中でもジベンジリデンソルビトールが好適に使用される。
ゲル化剤の配合量は、機能性グリコールゲルの質量に基づき、0.5ないし3質量%の範囲である。
【0010】
本発明に添加される水の種類に付いては特に制限はなく、水道水、井戸水、精製水等が使用できるが、特に、脱イオン水、逆浸透水等の精製水は不純物が少ないため、好適に使用される。
水の添加量は、使用されるグリコール系溶剤の種類及び添加量と、該溶剤に対する水の溶解度及び該溶剤の水に対する溶解度によって、適宜増減する必要があり、配合されるグリコール系溶剤(a)に対する水の溶解度が50g/100g以上のときは、水の配合量を20〜50質量%とし、配合されるグリコール系溶剤(a)に対する水の溶解度が50g/100g未満のときは、水の配合量を1質量%から該溶剤に対する水の溶解度に相当する量までとする。
溶剤に対する水の溶解度は、ゲルに配合される水の量(ゲルにおける水の含有量)に制限を与え、溶剤に対する水の溶解度及び溶剤の水に対する溶解度の両方は、該溶剤と水との相溶性、親和性を反映し、吸水力の大きさを示す。溶剤に対する水の溶解度及び溶剤の水に対する溶解度の両方が無限大となるグリコール系溶剤である、エチレングリコール系溶剤(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等)、プロ
ピレングリコール系溶剤(プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、イソプレングリコール等)は、ゲル化すると大きな吸水力(吸湿性)を示すため、その吸水力を抑制するためには、多量に水を配合しなければならない。また、エチレングリコール系エーテル類やプロピレングリコール系エーテル類のように水の溶解度が小さくても、水を含有しないゲルを作製すると、そのゲルは吸水性を示し、ゲルの水吸収力が弱いため、吸湿した水を吸収できず、ゲルの表面に水が浮いてしまう。元来、水の溶解度が小さく、水の配合量に制限があるが、水の溶解度が小さいグリコール系溶剤をゲル化した場合は、エチレングリコール系溶剤やプロピレングリコール系溶剤よりも比較的少ない水添加量で吸水力を抑制することができる。更に、添加される機能性成分の種類や量によっても吸水力を抑制するに十分な量の水添加量は変化し、また、水の配合によって消防法上の危険性も低下させ得る等、他の要素も勘案して、配合されるグリコール系溶剤に応じて、上記の範囲内で、適宜、それぞれの処方に応じた吸水力の抑制に十分な水添加量が決定される。
【0011】
本発明に添加される機能性成分は、ゲル状の製品として使用可能であれば特に制限はないが、メトフルトロン、プロフルトリン、エムペントリン等のピレスロイド系殺虫成分、DEET、昆虫忌避性植物成分、昆虫忌避香料等の昆虫忌避成分、殺ダニ成分、ダニ忌避香料等のダニ忌避成分、香料、消臭成分等の機能性成分が好適に配合される。
また、機能性成分は、上記機能性成分の2種以上を混合して用いることもできる。
機能性成分の配合量は、機能性グリコールゲルの質量に基づき、0.01ないし50質量%の範囲であり、好ましくは、0.01ないし30質量%の範囲である。
【0012】
本発明の機能性グリコールゲルには、更に、含有される機能性成分の揮散を調整したり、他の機能を付加する目的で、界面活性剤、グリコール系以外の溶剤、防腐剤、紫外線吸収剤等を添加してもよい。
【0013】
溶剤に対する水の溶解度が50g/100g以上となるグリコール系溶剤を用いて製造される機能性グリコールゲルにおける各成分の配合比(含有量)は以下の範囲とするのが好ましい。
(a)グリコール系溶剤:30ないし79質量%
(b)ゲル化剤:0.5ないし3質量%
(c)水:20ないし50質量%
(d)機能性成分:0.01ないし30質量%
また、以下の範囲とするのがより好ましい。
(a)グリコール系溶剤:30ないし79質量%
(b)ゲル化剤:0.5ないし3質量%
(c)水:20ないし50質量%
(d)機能性成分:0.01ないし20質量%
溶剤に対する水の溶解度が50g/100g未満となるグリコール系溶剤を用いて製造される機能性グリコールゲルにおける各成分の配合比(含有量)は以下の範囲とするのが好ましい。
(a)グリコール系溶剤:(47−X)ないし98.4質量%
(Xは、溶剤に対する水の溶解度に相当する量(質量%))
(b)ゲル化剤:0.5ないし3質量%
(c)水:1ないしX質量%
(Xは、溶剤に対する水の溶解度に相当する量(質量%))
(d)機能性成分:0.01ないし50質量%
また、以下の範囲とするのがより好ましい。
(a)グリコール系溶剤:(67−X)ないし98.4質量%
(Xは、溶剤に対する水の溶解度に相当する量(質量%))
(b)ゲル化剤:0.5ないし3質量%
(c)水:1ないしX質量%
(Xは、溶剤に対する水の溶解度に相当する量(質量%))
(d)機能性成分:0.01ないし30質量%
【実施例】
【0014】
次に、具体的な実施例に基づいて、本発明の機能性グリコールゲルについて、更に詳細に説明する。
試験例
ゲル化剤(ゲルオールD:新日本理化株式会社製)と種々のグリコール系溶剤を表1に記載の配合量で配合するか又は前記2成分と精製水を表1に記載の配合量で配合し、加熱溶解した後、冷却してグリコール系ゲルを作製し、その吸湿性を調べた。
【表1】

【0015】
結果:
上記1ないし16の試験例のグリコールゲルは、全てゲル化した。しかしながら、精製水を配合していない試験例1、2、3、6、9ないし13及び15は、ゲルを屋内に静置すると、水分を吸収して重量が増加し、吸湿した水分がゲルに吸収されず、ゲル表面に水が浮いた状態となった。
一方、精製水を配合した試験例5、8、14及び16では、吸湿による水の浮きは観られなかった。
また、試験例4、7では、溶剤に対する水の溶解度が50g/100g以上となるグリコール系溶剤である、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールを用いたため、精製水10質量%の配合では、吸水力を十分に抑制することができず、結果として、ゲル表面に水が浮いた状態となった。
また、ゲル化剤の配合量を0.2%にした試験例17では、ゲル化しなかった。
また、グリコール系溶剤の代わりに水を用いた試験例18でも、ゲル化剤は水に溶解せず、ゲル化はできなかった。
【0016】
図1にプロピレングリコールを用いて製造したゲル(水の添加量が異なる)の写真(図1の左:試験例3のゲル、図1の中央:試験例4のゲル、図1の右:試験例5のゲル)を提示した。
試験例3及び4のゲル(左及び中央)ではゲル表面に水が浮き、ゲルの底辺部に水が溜まっているのに対し試験例5のゲル(右)では、ゲル表面に水が浮いておらず、ゲルの底辺部に水が溜まっていないことが判る。
図2にジプロピレングリコールを用いて製造したゲル(水の添加量が異なる)の写真(図2の左:試験例6のゲル、図2の中央:試験例7のゲル、図2の右:試験例8のゲル)を提示した。
試験例6及び7のゲル(左及び中央)ではゲル表面に水が浮き、ゲルの底辺部に水が溜まっているのに対し試験例8のゲル(右)では、ゲル表面に水が浮いておらず、ゲルの底辺部に水が溜まっていないことが判る。
図3にジプロピレングリコールプロピルエーテルを用いて製造したゲル(水の添加量が異なる)の写真(図3の左:試験例13のゲル、図3の右:試験例14のゲル)を提示した。
試験例13のゲル(左)ではゲル表面に水が浮き、ゲルの底辺部に水が溜まっているのに対し試験例14のゲル(右)では、ゲル表面に水が浮いておらず、ゲルの底辺部に水が溜まっていないことが判る。
図4にジプロピレングリコールブチルエーテルを用いて製造したゲル(水の添加量が異なる)の写真(図4の左:試験例15のゲル、図4の右:試験例16のゲル)を提示した。
試験例15のゲル(左)ではゲル表面に水が浮き、ゲルの底辺部に水が溜まっているのに対し試験例16のゲル(右)では、ゲル表面に水が浮いておらず、ゲルの底辺部に水が溜まっていないことが判る。
【0017】
実施例1ないし6及び比較例1ないし3
グリコール系溶剤、ゲル化剤、精製水、機能性成分、その他の成分を表2に記載の配合量で配合し、加熱溶解した後、冷却して実施例1ないし6及び比較例1ないし3のゲルを作製し、その吸湿性を調べた。
【表2】

【0018】
結果:
溶剤に対する水の溶解度が50g/100g以上となるグリコール系溶剤(プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、イソプレングリコール)を用い、水の配合量を20ないし50質量%とした実施例1ないし4は何れも吸湿による水の浮きは観られなかった。
また、溶剤に対する水の溶解度が50g/100g未満となるグリコール系溶剤(プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル)を用い、水の配合量を1質量%から使用した溶剤に対する水の溶解度に相当する量まで(5質量%、4質量%)とした実施例5,6も吸湿による水の浮きは観られなかった。
一方、溶剤に対する水の溶解度が50g/100g以上となるグリコール系溶剤(プロピレングリコール、ジプロピレングリコール)を用い、水の配合量を20ないし50質量%よりも少ない10質量%とした比較例1,2では、ゲル表面に水が浮いた状態となった。
また、溶剤に対する水の溶解度が50g/100g未満となるグリコール系溶剤(ジプロピレングリコールブチルエーテル)を用い、水の配合量を1質量%から使用した溶剤に対する水の溶解度(10g/100g)に相当する量(10質量%)よりも多い20質量%とした比較例3では、水の一部が分離した状態でゲル化が起こり、部分ゲルとなり、溶液全体のゲル化はできなかった。
尚、参考として、典型的なグリコール系溶剤の水に対する溶解度及び水の溶解度を表3に示した。
【表3】

【0019】
実用試験例
実施例2で作成した機能性グリコールゲルを屋内用芳香剤として使用したところ、ゲル表面に水が浮くことなく、十分な香り立ちがあった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】プロピレングリコールを用いて製造したゲル(水の添加量が異なる)の写真である(左:試験例3のゲル、中央:試験例4のゲル、右:試験例5のゲル)。
【図2】ジプロピレングリコールを用いて製造したゲル(水の添加量が異なる)の写真である(左:試験例6のゲル、中央:試験例7のゲル、右:試験例8のゲル)。
【図3】ジプロピレングリコールプロピルエーテルを用いて製造したゲル(水の添加量が異なる)の写真である(左:試験例13のゲル、右:試験例14のゲル)。
【図4】ジプロピレングリコールブチルエーテルを用いて製造したゲル(水の添加量が異なる)の写真である(左:試験例15のゲル、右:試験例16のゲル)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)グリコール系溶剤30〜98.4質量%
(b)ゲル化剤0.5〜3質量%
(c)水、及び
(d)機能性成分
を必須成分として含有する機能性グリコールゲルであって、
i)成分(a)のグリコール系溶剤に対する水の溶解度が50g/100g以上である場合、水の配合量を20〜50質量%とし、
ii)成分(a)のグリコール系溶剤に対する水の溶解度が50g/100g未満である場合、水の配合量を1質量%から該溶剤に対する水の溶解度に相当する量までとすることを特徴とする機能性グリコールゲル。
【請求項2】
前記ゲル化剤が、1,3:2,4−ビス−O−ベンジリデン−D−グリシトール(ジベンジリデンソルビトール)であることを特徴とする請求項1記載の機能性グリコールゲル。
【請求項3】
機能性成分が、洗浄成分、殺虫成分、昆虫忌避成分、殺ダニ成分、ダニ忌避成分、香料又は消臭成分から選択される少なくとも1種である請求項1又は2記載の機能性グリコールゲル。
【請求項4】
前記グリコール系溶剤が、エチレングリコール系溶剤、プロピレングリコール系溶剤、エチレングリコール系エーテル類又はプロピレングリコール系エーテル類或いはこれらの混合溶剤である請求項1ないし3の何れか1項に記載の機能性グリコールゲル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−100762(P2010−100762A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274702(P2008−274702)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000207584)大日本除蟲菊株式会社 (184)
【Fターム(参考)】