説明

機能性傾斜材料、機能性傾斜材料の製造方法および管球

【課題】層間の結合を強固にすることによりクラックの発生を抑え、製造が容易な封止用機能性傾斜材料を得る。
【解決手段】酸化ケイ素を主成分とする絶縁性の第1の機能性材料層1と、酸化ケイ素および導電性物質の混合物からなり導電性を有する第2の機能性材料層2とを備え、これらの第1および第2の機能性材料層を相互に接触させた状態で、放電プラズマ焼結法により通電加圧することにより、前記酸化ケイ素を溶融、焼結し、以って層間を結合したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性傾斜材料、この機能性傾斜材料の製造方法およびこの機能性傾斜材料を封止手段として用いた管球に関する。
【背景技術】
【0002】
従来ハロゲン電球や高圧放電(HID)ランプなどの石英ガラスからなる発光管を備えた管球類においてはモリブデン箔を用いた気密容器の箔封止構造が一般に用いられている。近年、これらのランプに対する高効率化、小型化の要求が強まっている。この結果、HIDランプにおいては、小型化・電力密度の増加が進むことで、発光管にも一層の耐熱性、耐圧力性、耐薬品性が求まられている。一方、ハロゲンランプにおいても、高効率化・小型化により、封止部の温度上昇が顕著になり、Mo箔の酸化によるランプ短寿命が問題となっている。
【0003】
しかしながら、封着金属箔における許容電流値の限界などの理由から、封着金属箔に代えて機能性傾斜材料を用いようとする試みがなされている。
【0004】
このような問題の対策として、封止時を従来のバーナーに替わりレーザーを使用し、封止部形状を精密にコントロールすることで耐圧性、耐熱性、耐薬品性の改善を行っている。しかし、Mo箔を封着材料とした現在の封止方法では、封着強度は酸化温度、耐薬品性等のMoの材料特性に依存するところが大きく、Mo箔封着では封着強度および信頼性の大幅な向上は望めない。
【0005】
また、封着部の信頼性改善のため、機能性傾斜材を用いた封着材料が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし従来の機能性傾斜材料は、傾斜材料層の層間の結合強度が弱く、使用中にクラックが発生する等、十分な信頼性が得られていないため、実際の使用例はほとんどない。
【0006】
さらに、傾斜材料層の構造が多層となるため、封着部が大きくなる傾向があり製造も工程も複雑で高価であった。
【特許文献1】特開2000-260395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点を解決し、信頼性が高く、小型で製造も容易な機能性傾斜材料、この機能性傾斜材料を製造する方法およびこの機能性傾斜材料を用いて封止した管球を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために本発明の機能性傾斜材料は、酸化ケイ素を主成分とする絶縁性の第1の機能性材料層と、酸化ケイ素および粒径が15μm以下の導電性物質の混合物からなり導電性を有する第2の機能性材料層とを備え、これらの第1および第2の機能性材料層を相互に接触させた状態で、放電プラズマ焼結法により通電加圧することにより、前記酸化ケイ素を溶融、焼結し、以って層間を結合したことを特徴とするものである。粒径の加減としては制限は無く、現在実用化されているサブミクロンオーダーの粒径まで適切な範囲とする。
【0009】
また、本発明の機能性傾斜材料においては、前記第2の機能性材料における導電性物質はMoまたはWであり、この導電性物質の前記酸化ケイ素に対する容量混合比を15%以上としたことを特徴とするものである。
【0010】
さらに、本発明の機能性傾斜材料においては、前記第1の機能性材料層および前記第2の機能性材料層間に、酸化ケイ素および導電性物質からなる第3の機能性材料層を少なくとも1層以上備え、この第3の機能性材料層における前記導電性物質はMoまたはWからなり、この導電性物質の前記酸化ケイ素に対する導電物の容量混合比を15%以下とすることを特徴とするものである。
【0011】
さらに、本発明の機能性傾斜材料においては、前記第1の機能性材料層を貫通し一端が前記第2の機能性材料層内に挿入された導電性電極軸を備えたことを特徴とするものである。
【0012】
さらに、本発明の機能性傾斜材料においては、一端が前記第2の機能性材料層内に挿入され、他端が前記第2の機能性材料層から外側に導出された導電性の給電軸を備えたことを特徴とするものである。
【0013】
本発明の管球は、上記の機能性傾斜材料を封着材料として用いたことを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の機能性傾斜材料の製造方法は、酸化ケイ素を主成分とする絶縁性の第1の機能性材料層を形成する工程と、酸化ケイ素および導電性物質の混合物からなり導電性を有する第2の機能性材料層を形成する工程と、これらの第1および第2の機能性材料層を相互に接触させた状態で、放電プラズマ焼結法により通電・加圧する工程とを備え、前記酸化ケイ素を溶融、焼結し、以って層間を結合することを特徴とするものである。
【0015】
また、機能性傾斜材料の製造方法は、酸化ケイ素を主成分とする絶縁性の第1の機能性材料層を形成する工程と、酸化ケイ素および導電性物質の混合物からなり導電性を有する第2の機能性材料層を形成する工程と、この第1の機能性材料層を貫通し第2の機能性材料層に挿入された導電性軸、又は前記導電性軸と第2の機能性材料層内に挿入され前記第2の機能性材料層から外側に導出された導電性軸を設ける工程と、前記第1および第2の機能性材料層を相互に接触させた状態で、放電プラズマ焼結法により通電・加圧する工程とを備え、前記酸化ケイ素を溶融、焼結し、以って層間を結合することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、放電プラズマ焼結法(SPS)を用いて第1および第2の機能性傾斜材料層を相互に接触させた状態で、通電・加圧し焼成を行うことにより、これらの機能性傾斜材料層に共通に含まれている酸化ケイ素を溶融・焼結することが可能となり、層間の結合強度を強くすることが可能である。この結果、信頼性が高く、小型で製造も容易で、管球の封着材料として十分に実用に供しえる機能性傾斜材料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0018】
図1は、本発明の機能性傾斜材料(以下FGMと呼ぶ。)を放電ランプの封止部に適用した場合の実施の形態を示す断面図である。本実施形態において、FGMは、酸化ケイ素(以下SiOという。)を主成分とする絶縁性の第1の機能性材料層1と、SiOおよび導電性物質の混合物からなり導電性を有する第2の機能性材料層2と、これらの第1の機能性材料層1および第2の機能性材料層3の間に介在する第3の機能性材料層3とから構成されている。第3の機能性材料層3は同じくSiOおよび導電性物質からなるが、第2の機能性材料層2よりも導電性物質の量が少なく、全体としては非導電性である。第2の機能性材料層2および第3の機能性材料層3に含まれる導電性物質は、モリブデン(以下Moという。)またはタングステン(以下Wという。)であり、SiOに対して所定の混合比により混合することにより、機能性材料層2には導電性を付与し、機能性材料層3には付与しない。所定の混合比は例えば、第2の機能性材料層2においては容量比で20%以上が望ましく、また、第3の機能性材料層3においては容量比で15%以下が望ましい。また、各機能性材料層1〜3において、SiOの粒径は20μm以下が望ましく、MoまたはWの粒径は15μm以下が望ましい。
【0019】
第1の機能性材料層1および第2の機能性材料層2の間に介在する第3の機能性材料層3は、両側の層1、2の熱膨張率の差を吸収する緩衝層として作用する。熱膨張率の調整は、SiOに対導電性物質の混合比を調整することにより行うことができる。緩衝層は1層のみでなく、複数層とすることもできる。この場合には、熱膨張率が絶縁層である第1の機能性材料層1から導電層である第2の機能性材料層2に向かって順次小さくなるように配列する。
【0020】
これらの機能性材料層1〜3はそれぞれほぼ円柱状に成型され、それらの中心軸に沿って、導電性の電極軸4および導電性の給電軸5が挿入されている。これらの電極軸4および給電軸5はMoまたはWにより構成されている。電極軸4はその一端4aが第2の機能性材料層2内に挿入され、第1の機能性材料層1および第3の機能性材料層3を貫通して、他端は後述するように、放電ランプの気密容器内に設けられた放電電極に接続されている。給電軸5はその一端5aが第2の機能性材料層2内に挿入され、他端は第2の機能性材料層2の外側に導出されている。第2の機能性材料層2内に挿入された電極軸4および給電軸5の端部4a、5aは互いに離間配置されている。
【0021】
図2は上記FGMを製造するための放電プラズマ焼結(SPS)装置の一例を示す概略構成図である。水冷真空チャンバー21内には、グラファイト製の円筒状焼結ダイ22が配置され、その内部には図1に示したFGMが充填される。焼結ダイ22の上下には内部に充填された被加工物であるFGMを上下から加圧するための上部パンチ23および下部パンチ24が設けられている。これらの上部パンチ23および下部パンチ24には、上部パンチ電極25および下部パンチ電極26がそれぞれ接触するように配置されている。上部パンチ電極25および下部パンチ電極26の上端部及び下端部は水冷真空チャンバー21の外部に導出されている。上部パンチ電極25および下部パンチ電極26間には、焼結用パルス電源27から大電流のパルス電流が供給される。このパルス電流は、上部パンチ23および下部パンチ24を介してFGMに供給され、通電される。また、上部パンチ電極25および下部パンチ電極26には、焼結用加圧機構28により下方向および上方向の圧力Pが印加される。上部パンチ電極25および下部パンチ電極26は上下方向に移動可能に設けられており、それぞれ圧力Pにより下方および上方に移動する。上部パンチ23および下部パンチ24のシリンダ部はそれぞれ焼結ダイ22の中空部上端および下端から挿入され、上部パンチ電極25および下部パンチ電極26により圧力Pが伝達され、焼結ダイ22内部に充填されたFGMを上下から圧縮する。制御装置29は焼結用パルス電源27および焼結用加圧機構28を制御し、FGMに対して供給するパルス電流および加圧圧力を制御する。
【0022】
図3は、電極軸4および給電軸5が一体的に焼結形成された軸一体型FGMの製造装置の要部を拡大して示す断面図である。この装置の構成は全体として図2の装置と共通しているため、同図においては、図2の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付している。焼結ダイ22の中空部の上下には上部パンチ23および下部パンチ24が挿入されている。上部パンチ23は焼結ダイ22の中空部内で上下方向に移動するが、下部パンチ24は中空部内では上下方向に対しては固定されている。上部パンチ23にはその下端部に開口する細孔23−1が形成されており、その内部にFGM内に挿入された電極軸4の端部4bが挿入されている。細孔23−1はFGMのSPS焼結の開始の際には、上部に端部4bが上方に移動可能な空間が形成されている。下部パンチ24には上端部に開口する細孔24−1が形成されており、その内部にFGM内に挿入された給電軸5の端部5bが挿入されている。給電軸5の端部5bは下部パンチ24の細孔24−1の底部に当接するように挿入されている。
【0023】
焼結ダイ22の中空部内には、SPS焼結の開始前において、前述した機能性材料層1〜3が粉末状態で充填される。すなわち、先ず、上部パンチ23を取り外して焼結ダイ22の中空部内に上方から給電軸5を導入し、その端部を細孔24−1内に挿入して、中空部内でそのほぼ中心軸に沿って直立させる。次に、機能性材料層2を構成するSiOおよびMoを75%対25%の容量比で混合した粉体を充填する。次いで、機能性材料層3を構成するSiOおよびMoを90%対10%の容量比で混合した粉末を焼結ダイ22の中空部内に充填し、機能性材料層2の上に積層する。この場合、機能性材料層2は給電軸5の上端5aが、機能性材料層2内に止まるような厚さで積層充填する。さらに、機能性材料層1を構成するSiO100%粉末を焼結ダイ22の中空部内に充填し、機能性材料層3の上に積層する。その後、積層充填された機能性材料層1粉末内に機能性材料層1、3を貫通し、機能性材料層1に端部4aが届くように電極軸4を挿入する。その後、上部パンチ23により焼結ダイ22の中空部上端を閉塞する。この際、上部パンチ23は、電極軸4の端部4aが細孔23−1に挿入されるように中空部上端を閉塞する。
【0024】
このような状態において、SPS装置の制御装置29の制御の下に焼結用パルス電源27および焼結用加圧機構28が動作を開始し、FGMのSPS焼結が開始される。すなわち、焼結ダイ22の中空部FGMには、上部パンチ電極25および下部パンチ電極26を介して焼結用パルス電源27から大電流のパルス電流が供給される。このパルス電流は、上部パンチ23および下部パンチ24を介して焼結ダイ22の中空部に充填積層された粉末状のFGMに供給され、通電される。また、上部パンチ電極25には、焼結用加圧機構28により下方向の圧力Pが印加される。上部パンチ電極25は上下方向に移動可能にもうけられており、圧力Pにより下方に移動して上部パンチ23を介してFGMを押し下げる。下部パンチ24および下部パンチ電極26は上下方向に対しては固定されているため、FGMは上方からの圧力Pにより圧縮される。FGMに大電流パルス電流を流すことにより、圧粉体粒子間隙に生ずる火花放電およびジュール熱により、FGMの各層に含まれるSiOを均一に加熱溶融焼結する。これによってFGMを構成する機能性材料層1〜3間の強固な結合が可能となる。
【0025】
SPS法は、従来の常圧焼結法やHIP法のように外部から加熱せず、試料に通電することで試料温度を上げ焼成を行うため、絶縁物としてSiO粒子を使用した場合、SiO粒子の温度を溶融温度以上に上げることができる。このため、SiOからなる絶縁性の第1の機能性材料層と、SiOとMoまたはWの混合物からなる非導電性の第3の機能性材料層との結合部、あるいは、第3の機能性材料層と第2の機能性材料層2との結合部においてもSiOが融解し結合し合い、二つの層を強く結合することが可能となり、従来の方法では得られなかった強度の強い機能性傾斜材料を得ることができる。
【0026】
さらに、本発明の機能性傾斜材料の製造方法によれば、電極軸4あるいは給電軸5をFGMの軸方向に挿入した状態においても、機能性傾斜材料の焼結が可能となるため、封止用の機能性傾斜材料の製造が極めて容易になる。従来の常圧焼結法やHIP法では、電極軸4あるいは給電軸5を挿入した状態において機能性傾斜材料の焼結を行うと、機能性傾斜材料の一部に割れあるいはクラックが発生するため、焼成後に機能性傾斜材料の一部に貫通孔を形成しその貫通孔に電極軸4あるいは給電軸5を挿入する等、複雑な製造工程を要した。
【0027】
上述した機能性傾斜材料の製造に際し、各層の組成、平均粒径、焼成温等について最適な製造条件を見出すため、の種々の実験を行った。以下にこれらの実験結果について説明する。なお、これらの実験においては、電極軸4あるいは給電軸5を挿入せずに、複数の機能性傾斜材料層のみのFGMを焼結作成した。この場合、図2のSPS製造装置としては、図3に示すような細孔23−1あるいは24−1を有する上部パンチ23あるいは下部パンチ24を用いる必要はない。また、焼結用加圧機構28により下部パンチ24に上方向の圧力Pを同時に印加してもよい。
【0028】
(実験例1)
平均粒径5μmSiOに平均粒径3μmのMoを混合し、SiOに対するMoの容量比を5−30%間で変化させた2層構造のFGMを放電プラズマ焼結法(SPS法)で焼成し6個の試料を作成した。試料の焼成温度(表面温度)は1000℃としている。焼成温度は赤外線温度計で測定している。焼成された各資料の導電を確認した結果を表1に示す。同表から、Moの容量混合比が20%以上で導通が得られた。このため、導電層は15%以上の導電物を含む必要があることが分かった。また、この容量比15%を重量比に換算すると、MoのSiOに対する重量は約0.67倍、Wの場合は約1.28倍以上となる。
【表1】

【0029】
(実験例2)
平均粒径5μmのSiOからなる絶縁層の第1の機能性材料層と、平均粒径5μmのSiOと平均粒径3μmのMoを25vol%混合した導電性の第2の機能性材料層とを、平均粒径5μmのSiOに平均粒径3μmのMoを混合した第3の機能性材料層により繋いだ3層構造のFGM試料を作成した。中間層である第3の機能性材料層のMoの容量比を1−25%の間で変化させ、同一の容量比の資料を4個(No.1−No.4)作成し、焼成された資料に割れ(クラック)が生じたか否かを調べた。その結果を表2に示す。試料の焼成温度(表面温度)は1000℃としている。焼成温度は赤外線温度計で測定している。表2の試料の焼成状況に示されるように、Mo容量混合比が15%以下では、試料に割れはなく良好であったが、17%以上となると絶縁層である第1の機能性材料層と中間層である第3の機能性材料層の間で割れが発生してしまった。このように、絶縁層である第1の機能性材料層と結合可能な中間層における導電性物質Moの混合比は15%以下であることが分かる。また、このMoのSiOに対する容量比15%を重量比に換算すると約0.67倍である。なお、Wの場合の重量比は約1.28倍となる。
【表2】

【0030】
(実験例3)
平均粒径5μmのSiOからなる絶縁層である第1の機能性材料層と、平均粒径3μmのMoを10vol%、平均粒径5μmのSiOを90vol%混合した第2の機能性材料層を結合した2層構造のFGM試料を焼成温度(表面温度)を700℃から1300℃まで変えながら焼成した。各温度に対して4個(No.1−No.4)のFGM試料を焼成した。焼成温度は赤外線温度計で測定している。焼成状況結果を表3に示す。焼成温度700℃と800℃では試料は割れ、このときの内断面を観察したところ、SiOが溶融せず粒子として残っている状態であった。焼成温度900℃以上では、試料断面はSiOが完全に溶融し、アモルファス状のSiOの中にMoが均一に存在していた。
【表3】

【0031】
(実験例4)
平均粒径が25、20、15、10、5、および1μmのMoを25vol%と平均粒径5μmのSiOを75vol%混合した6種類の1層構造のFGM試料を焼成・作成した。焼成は焼成温度(表面温度)を1000℃に固定している。作成されたFGM試料の導通状態を示す抵抗値あるいは導通の有無を表4に示す。Mo粒径10μm以下では導通があったが、15μm以上では導通がなかった。これは、Mo粒径が大きくなるとSiOの中に存在しているMoの相互の接触がなくなるため導通がとれなくなるものと考えられる。下限値については制限は無く、粒径が小さいほど導通がとれやすくなる。現在実用化されているサブミクロンの導電物質で使用可能である。
【表4】

【0032】
図4は、本発明の管球の一実施形態を示す図で、上記の機能性傾斜材料を封止用に用いた管形ハロゲン電球の要部断面図である。図において、管形ハロゲン電球BPは、気密容器11、管球作動部材12(フィラメント)および封止用機能性傾斜材料FGMを具備している。
【0033】
気密容器11は、封止されるべき開口11aを備えている。そして、開口11aは、封止用機能性傾斜材料FGMにより封止される。本形態の気密容器11は、照明用管球の場合であるから、透光性で、かつ、耐火性の物質、例えば石英ガラスや透光性アルミナセラミックスなどからなるが、石英ガラス製で真っ直ぐな円筒状をなしていて、その両端が一対の開口部11aとなっている。
【0034】
管球作動部材12は、気密容器11の内部に気密に収納されていて、管球BPとして所要の作動を行うもので、多様な構成であることが許容される。すなわち、管球BPが外部から給電され、気密容器1内で所望の電気的動作を行う部材であり、一例を示せば、ハロゲン電球の場合は、白熱フィラメントおよび付随的部材である。また、高圧放電ランプの場合は、放電電極および付随的部材である。
【0035】
また、図示の管球作動部材12は、白熱フィラメントを主体として、その両端からフィラメントレグ部12a(一端のみ示す。)が延在し、フィラメントレグ部12aが気密容器11の両端に配置される一対の電極軸4(一方のみ示す。)に溶接などによって接続されることにより、気密容器11の内部に張架されている。なお、フィラメントは、2重コイルフィラメントからなり、点灯中の下垂を防止するために複数のリングアンカー12bが付設されている。
【0036】
封止用FGMは、図1に示すように第1の機能性傾斜材料層1、第2の機能性傾斜材料層2および第3の機能性傾斜材料層3から構成され、絶縁層である第1の機能性傾斜材料層1の部分で気密容器11の内壁に溶接されている。第1の機能性傾斜材料層1はSiO100%で構成されているため、気密容器11と熱膨張率が同じであり、ハロゲン電球の使用中に熱膨張率の差によるクラックを生ずる恐れがない。
【0037】
なお、図4に示す管球BPは、ハロゲン電球であるので、気密容器11の内部に適量のハロゲンとして、例えばヨウ素または臭素などの有機ハロゲン化物とアルゴン(Ar)が適当な圧力で封入されている。また、気密容器11の外面には所望により赤外光反射・可視光透過形のダイクロイック反射膜を形成することができる。
【0038】
図5は本発明の他の実施形態を示すFGMの断面図である。この実施形態においては、MoまたはWからなる給電軸5が、非導電性の第1および第3の機能性傾斜材料層1、3内においてその軸径(a)が、他の部分(b)より大きく形成されている。給電軸5の軸径が拡大されている部分は、そこを流れる電流に対する抵抗が小さくなるため、発熱も少なくなる。この結果、管球の点灯中に導電性の第1の機能性傾斜材料層1と非導電性の第3の機能性傾斜材料層3との結合部軸付近で生ずる発熱を減少させ、熱衝撃による内部クラックを防止することができる。このことは実験的にも確認された。なお、給電軸5の第1の機能性傾斜材料層1と第3の機能性傾斜材料層3との結合部の軸径および第2の機能性傾斜材料層2の取り出し部近傍の軸径はほぼ同じ(b)に形成されている。すなわち、非導電層である第1の機能性傾斜材料層1と第3の機能性傾斜材料層3の軸方向の長さ(A)に対して、軸径が(a)に拡大された部分の軸方向の長さ(B)は、短く形成されている。
【0039】
図6は、本発明のさらに他の実施形態を示すFGMの断面図である。この実施形態においては、MoまたはWからなる電極軸4および給電軸5の端部が特殊な形状に形成されている。例えば、電極軸4の第2の機能性傾斜材料層2内における端部5aは、図7の(C)に示すように、その径(b)がテーパー状に小さくなり、先端部はより小径(c)で平坦になっている。このような形状により、第2の機能性傾斜材料層2内における軸方向の発熱量の変化を緩やかにすることにより熱衝撃を緩和し、第2の機能性傾斜材料層2内における歪とこれに基づくクラックの発生を防止することができる。
【0040】
また、給電軸5の第2の機能性傾斜材料層2内における端部4aは、図8の(C)に示すように、軸径(b)が階段的に拡大(d)するとともに、先端部に向かってテーパー状に小さくなり、先端部は平坦になっている。このような形状により、FGMの製造時における圧縮焼結時あるいは風止部材として装着された管球の使用時において振動等により、給電軸5が第2の機能性傾斜材料層2内から移動しあるいはFGMから抜け落ちることを防止することができる。
【0041】
図7は電極軸端部の種々の形状を示す図であり、図8は給電軸端部の種々の形状を示す図である。図7(A)の電極軸の端部は、軸径が端部に向かってテーパー状に小さくなり、先端は平坦ではなく、尖っている。図7(B)の電極軸の端部は球状に形成されている。図8(A)の給電軸端部は前述した図8の(C)と同様に、軸径(b)が階段的に拡大(d)するとともに、先端部に向かってテーパー状に小さくなるが、先端部は平坦ではなく、尖っている。図8(B)の給電軸端部は同様に、軸径が(b)階段的に拡大(d)するとともに、端部に向かってテーパー状に小さくなるが、先端部は球状に形成されている。
【0042】
以上本発明を種々の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内の種々の変形例についても適用し得るものである。例えば、本発明のFGMの層数は少なくとも第1の機能性傾斜材料層および第2の機能性傾斜材料層からなり、これらの層間に必要に応じて介在させる第3の機能性傾斜材料層は1層に限らず複数層設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の機能性傾斜材料(以下FGMと呼ぶ。)を放電ランプの封止部に適用した場合の実施の形態を示す断面図である。
【図2】図1に示すFGMを製造するための放電プラズマ焼結(SPS)装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】電極軸4および給電軸5を一体的に焼結作成する、軸一体型FGMの製造装置の要部を拡大して示す断面図である。
【図4】本発明の管球の一実施形態を示す図で、上記の機能性傾斜材料を封止用に用いた管形ハロゲン電球の要部断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態を示すFGMの断面図である。
【図6】本発明のさらに他の実施形態を示すFGMの断面図である。
【図7】図7は電極軸端部の種々の形状を示す図である。
【図8】図8は給電軸端部の種々の形状を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1…第1の機能性傾斜材料層、
2…第2の機能性傾斜材料層、
3…第3の機能性傾斜材料層、
4…電極軸
5…給電軸、
FGM…機能性傾斜材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ケイ素を主成分とする絶縁性の第1の機能性材料層と、酸化ケイ素および粒径が15μm以下の導電性物質の混合物からなり導電性を有する第2の機能性材料層とを備え、これらの第1および第2の機能性材料層を相互に接触させた状態で、放電プラズマ焼結法により通電加圧することにより、前記酸化ケイ素を溶融、焼結し、以って層間を結合したことを特徴とする機能性傾斜材料。
【請求項2】
前記第2の機能性材料における導電性物質はMoまたはWであり、この導電性物質の前記酸化ケイ素に対する容量混合比を15%以上としたことを特徴とする請求項1記載の機能性傾斜材料。
【請求項3】
前記第1の機能性材料層および前記第2の機能性材料層間に、酸化ケイ素および導電性物質からなる第3の機能性材料層を少なくとも1層以上備え、この第3の機能性材料層における前記導電性物質はMoまたはWからなり、この導電性物質の前記酸化ケイ素に対する導電物の容量混合比を15%以下とすることを特徴とする請求項2に記載の機能性傾斜材料。
【請求項4】
前記第1の機能性材料層を貫通し一端が前記第2の機能性材料層内に挿入された導電性電極軸を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の機能性傾斜材料。
【請求項5】
一端が前記第2の機能性材料層内に挿入され、前記第2の機能性材料層から導出する導電性の給電軸を備えたことを特徴とする請求項4に記載の機能性傾斜材料。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載された機能性傾斜材料を封着材料として用いた管球。
【請求項7】
酸化ケイ素を主成分とする絶縁性の第1の機能性材料層を形成する工程と、酸化ケイ素および導電性物質の混合物からなり導電性を有する第2の機能性材料層を形成する工程と、これらの第1および第2の機能性材料層を相互に接触させた状態で、放電プラズマ焼結法により通電加圧する工程とを備え、前記酸化ケイ素を溶融、焼結し、以って層間を結合することを特徴とする機能性傾斜材料の製造方法。
【請求項8】
酸化ケイ素を主成分とする絶縁性の第1の機能性材料層を形成する工程と、酸化ケイ素および導電性物質の混合物からなり導電性を有する第2の機能性材料層を形成する工程と、これらの第1および第2の機能性材料層のいずれか一方を貫通し、一端が機能性材料層内に挿入された導電性軸を設ける工程と、前記第1および第2の機能性材料層を相互に接触させた状態で、放電プラズマ焼結法により通電加圧する工程とを備え、前記酸化ケイ素を溶融、焼結し、以って層間を結合することを特徴とする機能性傾斜材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−112642(P2007−112642A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303215(P2005−303215)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】