説明

機能性化合物の送達

【課題】マイクロカプセル化効率を高め、マイクロカプセル化された物質の不快な官能特性を低下させ、同時に所望の放出率およびエステル加水分解率をもたらすプロセスを提供する。
【解決手段】エステル化構成要素を含む機能性成分を、腸溶性マトリックス中にマイクロカプセル化することにより、マイクロカプセル化効率を高め、マイクロカプセル化された物質の不快な官能特性を低下させ、同時に所望の放出率およびエステル加水分解率をもたらし、このプロセスは、水中で乳濁液を形成するステップと、乳濁液を沈殿剤で滴定し、粒子状沈殿を生成するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸溶性マトリックスでマイクロカプセル化したエステル含有機能性成分、および同成分を作製する方法に関する。より特定すれば、該機能性成分は、有機溶媒を実質的に含まない水性環境中でマイクロカプセル化される方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食物送達用途における機能性物質の腸溶送達は制限されてきた。腸溶送達系は、通常、機能性物質または薬剤が低いpHに敏感であり、または他の方法では有効にマスクできない不快な香味および/もしくは風味特性を有することが知られている場合に利用される。一般に、腸溶送達は、錠剤およびゲルカプセルを用いて実現される。しかし、こうした特定の送達法は、食物用途にはあまり適していない。特に、錠剤もカプセルも、大部分の現用食品に組み込まれる大きさになっていない。
【0003】
腸溶送達の代替法は、マイクロカプセル化である。マイクロカプセル化は、一般に、特殊な設備を用いて、または有機溶媒を含んだ環境中で行われる。こうした方法は、追加の設備投資、および有機溶媒などの追加の物質の使用を必要とし、該物質は、その後のマイクロカプセル化サイクルで使用できることも、できないこともある。その結果、マイクロカプセル化法は、設備および有機溶媒の調達および廃棄の双方で投資を必要とする。
【0004】
マイクロカプセル化に伴う1つの問題は、この方法の回収率またはマイクロカプセル化効率である。一般に、マイクロカプセル化しようとする物質のある一定の相当な比率(%)は捕捉されない。非捕捉物質は、再使用のために回収し得るかもしくはリサイクルし得る、またはある比率(%)の非捕捉物質は、マイクロカプセル化微粒子の外表面に付着したままである。
【0005】
その結果、生成物は、非捕捉物質に伴うしばしば不快な風味プロファイルを有する傾向がある。このことは、非捕捉物質が、不飽和および多不飽和脂質などの被酸化性トリグリセリド、被酸化性の香味および精油、または自然に不快な風味および/もしくは香味を有し得る他の有機化合物を含む場合に特に当てはまる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願第12/479454号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0145462号明細書
【特許文献3】米国特許出願第12/479433号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の組成物は、腸溶性マトリックス中にマイクロカプセル化した機能性成分を含む(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる特許文献1参照)。腸溶性マトリックスは食品用高分子を含み、機能性成分は、リナロールおよびチモールなどの精油のエステルを含む。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態では、機能性成分は、腸溶性マトリックス材料の全体に亘って均一に分散されている。別の実施形態では、機能性成分は、リナロールおよびチモールのエステルなどのエステルを少なくとも約30%含む。
【0009】
本発明の方法は、活性または機能性成分をマイクロカプセル化する方法を包含する。この方法は、水、腸溶性マトリックス材料および乳化剤を撹拌または混合し、利用している腸溶性高分子の完全な溶解を維持するpHで、有機溶媒を実質的に含まない組合せを形成することを含む。エステルを含む機能性成分は、その組合せに添加し、均一化して、微細で安定な乳濁液を創出する。次いで、乳濁液を、制御された混合条件下、粒子状沈殿の形成に有効な量および速度で、酸、および/または使用している高分子に応じてカルシウムなどの他の架橋剤もしくは沈殿剤で処理する。更に、機能性成分を、沈殿の全体に亘り、機能性成分のマイクロカプセル化効率が改善されるように、均一に分散させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】機能性成分をマイクロカプセル化する方法を例示した図である。
【図2】少なくとも30%のエステルを含有していない機能性成分を含んだ1つの実験と、リナロールおよびチモールのエステルを少なくとも30%含有する機能性成分を含んだ第2の実験との間で、マイクロカプセル化効率を比較したチャート図である。
【図3】既知の実験式、水溶解度、蒸気圧、分配係数、および各種エステルの油対水比について親和性を比較した比を示す表形式の図である。
【図4】95%のシェラックおよび5%のゼインからなる腸溶性マトリックスと共に、エステルを含んでいない機能性成分の各種構成要素の放出率を例示したチャート図である。
【図5】95%のシェラックおよび5%のゼインからなる腸溶性マトリックスと共に、エステルを含んでいる機能性成分の各種構成要素の放出率を例示したチャート図である。
【図6】胃および小腸の条件を模倣した消化モデル内の、酢酸リナリルを含んでいる機能性成分の各種構成要素の放出率を例示したチャート図である。
【図7】胃および小腸の条件を模倣した消化モデル内の、酪酸リナリルを含んでいる機能性成分の各種構成要素の放出率を例示したチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
エステル化機能性成分および不活性担体(複数可)を、腸内で溶解する前の放出を最小限に抑える腸溶性マトリックス中へのマイクロカプセル化を開示している。一般に、エステル化機能性成分を含めることにより、風味および/または香味のマスキング、腸溶送達および持続送達、ならびに各機能性成分の生体利用率および効力を保証すると同時になされる、それら成分の適正な比率での保持といった、経験的問題が解決される。
【0012】
特に、マイクロカプセル化すべき機能性成分は、精油のエステル体を含むことができる。摂取され、腸管内で放出されると、機能性成分のエステル体は、親物質の非エステル体に加水分解され、非エステル化機能性成分をマイクロカプセル化し、消費した場合と同じ機能的有益性をもたらす。更に、機能性成分のエステル体は、以下で更に考察するように追加の有益性をもたらす。特に、エステル体の官能特性には味覚閾値の上昇が含まれ、その結果、表面上にあるエステル化機能性成分は、不快さが低下した香味プロファイルを生じる。更に、一般にエステルは、快さの増した香味を生じることが知られており、そのため生じた香味が、全く不快な官能香味プロファイルを生じることはなかろう。更に、エステル化機能性成分の水溶性が、特に非エステル化機能性親成分に対して低いため、下記の方法は、エステル化機能性成分が存在しない状態で認められた場合より、高いペイロードおよび保持率で示すことができるように、マイクロカプセル化効率を向上させることができる。
【0013】
本明細書に記載の方法により創製される生成物の使用例は、粉末ソフトドリンク(PSD)飲料における送達を目的としているが、生成物は、ビスケット、バー、アイスクリーム、スナックおよび即席ミールなどの他の食品にも使用することができる。
【0014】
機能性成分をマイクロカプセル化する方法は、図1に全体が示されている。食物マトリックス内での腸溶送達は、分散部分を、希釈トリグリセリドとの精油ブレンドなどの機能性成分の部分としたマトリックス粒子の形成により実現され、マトリックス部分は、シェラック、ゼイン、アルギン酸カルシウム、変性ホエータンパク質、およびマイクロカプセル化の当業者に公知のあらゆる食品用腸溶性高分子などの、食品用腸溶性高分子を単独または組合せとした部分である。
【0015】
図1に示すように、水、腸溶性マトリックス材料および乳化剤を、腸溶性マトリックス材料および乳化剤が水中に完全に分散するまで混合または撹拌する(100)。一般に、乳化剤および腸溶性マトリックス材料は、一緒に、またはいずれを最初に添加するにしろ別々に添加することができる。pHは、腸溶性材料の完全な可溶化を可能にする十分なレベルに維持する。例えば、シェラック、ゼインまたはそれらの組合せを使用する場合、分散液のpHは、一般に約7.2から9.0の間である。幾つかの実施形態では、水酸化ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムなどの塩基性物質を分散液に添加することにより、pHを約7.2から約12.0、好ましくは8.0から11.3の範囲内などに上昇させて、有機溶媒を使用せずに腸溶性高分子の完全な溶解を保証し、維持することができる。
【0016】
本明細書で使用する場合、「撹拌」または「撹拌された」とは、10000rpm未満の速度で運転する、羽根付き頂部導入型ミキサー(top entering mixer)またはローター/ステーター混合装置の使用を指す。
【0017】
本明細書で使用する場合、「有機溶媒を実質的に含まない」とは、イソプロパノールもしくはエタノールまたは他の任意の有機溶媒などの有機溶媒の添加量が、処理条件下で腸溶性材料の溶解性を可能にするのに必要な量より少ないことを指す。好ましくは、有機溶媒の添加量は、水、乳化剤および腸溶性材料の組合せに対して約0.1重量%未満である。
【0018】
一実施形態では、水は非イオン水である。
【0019】
本発明で使用する腸溶性マトリックス材料は、任意の食品用腸溶性高分子、または2種以上の食品用腸溶性高分子の組合せである。好ましくは、腸溶性マトリックス材料は、シェラック、ゼイン、アルギン酸カルシウムまたはそれらの組合せである。他の食品用腸溶性高分子には、変性ホエータンパク質が挙げられる。好ましくは、調製した腸溶性マトリックス材料は、有機溶媒を全く含まない。
【0020】
本明細書に記載の乳化剤は、任意の食品用乳化剤である。好ましい実施形態では、乳化剤は、ポリソルベート、ポリグリセロールエステル、スクロースステアレート、スクロースエステル、タンパク質、レシチンまたはそれらの組合せである。より特定すれば、乳化剤は、後に創製する乳濁液内に、より小さく最も均一に分散した油滴を創製するので、スクロースエステルが好ましい。
【0021】
一般に水は、重量で分散液の約50.0%から約95.0%、好ましくは約70.0から約95.0%、より好ましくは約80.0から約90.0%を占める。一般に乳化剤は、重量で分散液の約5.0%未満、好ましくは約0.01から約1.0重量%、より好ましくは分散液の約0.01から約0.1重量%を占める。好ましくは、腸溶性マトリックス材料は、重量で約1.0%から約10.0%、好ましくは約4.0から約7.0%、より好ましくは重量で分散液の約5.0%から約6.0%の範囲である。
【0022】
分散液を形成したとき、機能性成分および不活性担体を添加し(200)、撹拌して(300)、約10μm超の液滴サイズを有する粗大な乳濁液を得る。粗大乳濁液を形成した後、粗大乳濁液を均一化して(300)、微細で安定な乳濁液を創製する。微細で安定な乳濁液は、約10μm未満の液滴サイズを有する。微細な乳濁液内では、機能性成分および不活性担体が、全体に亘って微細液滴の形態で均一に分散している。好ましくは、機能性成分および不活性担体の組合せは、重量で乳濁液の約2.0から約7.0%の範囲の量で添加する。より好ましくは、機能性成分および不活性担体の組合せは、重量で乳濁液の約3.0から約6.0%の範囲の量で添加する。乳濁液は、約60.0から約95.0%の水を含む。
【0023】
本明細書で使用する場合、「均一化」または「均一化された」とは、ローター/ステーター混合装置の使用などで10000RPMを超える速度で、または500〜10000psi(3.45〜68.9MPa)の圧力で運転するバルブホモジナイザーなどで、高圧のより低い混合速度で混合することを指す。
【0024】
機能性成分は、好ましくは精油のエステルを含む。例えば、機能性成分は、酢酸チミルおよび酢酸リナリルなどのチモールおよびリナロールのエステルを含む。ブチレート、ラクテート、シンナメートおよびピルベートなどの他の許容できるエステルも、使用することができる。特に、機能性成分は、α−ピネン、パラ−シメン、チミルエステルおよびリナリルエステルを含む。下記の実施例で考察するように、1つの例示的ブレンドは、重量で約18.8%のキャノーラ油、約8.6%のα−ピネン、約39.8%のパラ−シメン、約5.4%の酢酸リナロール、および約27.4%の酢酸チミルを含む。
【0025】
該エステルは、重量で機能性成分の約1.0から約99.0%を占める。好ましくは、該エステルは、重量で機能性成分の少なくとも約10.0%、より好ましくは重量で30%を占める。別の実施形態では、該エステルは、好ましくは重量で機能性成分の約25.0から約65.0%を占める。
【0026】
好ましい実施形態では、不活性担体および機能性成分のブレンドは、重量で約15.0から約30.0%のキャノーラ油、約1.0から約10.0%のα−ピネン、約5.0から約25.0%のパラ−シメン、約5.0から約20.0%のリナリルエステル、および約20.0から約60.0%のチミルエステルを含む。より好ましくは、不活性担体および機能性成分のブレンドは、重量で約20.0から約25.0%のキャノーラ油、約2.0から約7.0%のα−ピネン、約10.0から約20.0%のパラ−シメン、約7.0から約15.0%のリナリルエステル、および約35.0から約50.0%のチミルエステルを含む。
【0027】
一般に、チモールおよびリナロールなどの機能性成分の任意のエステル体を使用することができる。好ましくは、エステル体は、アセテートまたはブチレートである。より好ましくは、エステル体は、ブチレートと比較して加水分解速度が大きいので、アセテートである。
【0028】
機能性成分は、任意の精油の混合物を含むことができる。更に、機能性成分は、腸内で放出されるのが望ましい物質を含むように、選択することができる。例えば、機能性成分は、Enanの特許文献2に記載された組成物を含むことができる。例えば、機能性成分は、25〜35重量%のパラ−シメン、1〜10重量%のリナロール、1〜10重量%のα−ピネン、35〜45重量%のチモール、および20〜30重量%の大豆油を含む。
【0029】
特に、本明細書に記載の機能性成分は、抗寄生虫、抗原虫および抗真菌などの機能的性質を保有する化合物を含むことができる。好ましい実施形態では、その有機化合物は、α−ピネンおよびパラ−シメンを含む。
【0030】
好ましい一実施形態では、有機化合物は、脂質、脂肪酸、トリグリセリド、または大豆油もしくはキャノーラ油などの食品用油などの不活性担体とブレンドされる。
【0031】
一部の機能性成分の揮発性は、非常に低い嗅覚閾値をもたらす結果、現用の飲料/食物に不快な香味/風味が生じる。機能性成分の香味をマスクすることを目指して、本発明では、チモールおよびリナロールなどの機能性成分の水溶性が遥かに低下するエステル体を含めること、ならびにその最終成分から非カプセル化物質を除去する方法が必要である。エステルは、一般に、その各親化合物ほど、食物系の風味/香味に対して負の影響を及ぼさない。
【0032】
水溶性が低いので、エステルは、チモールおよびリナロールなどの非エステル化親化合物より、上記したように高いマイクロカプセル化効率を有することができる。その効率は、好ましくは、非エステル化機能性成分を用いた際に実測される効率に対して、約50から約200%、より好ましくは約100.0から約150.0%増加する。更に、エステルは、親化合物より高い嗅覚閾値を有するため、エステルの感知必要量は、エステル化されていないチモールおよびリナロールの量より多い。
【0033】
次いで、乳濁液は、酸、または架橋剤もしくは沈殿剤による滴定によって沈殿する(400)。沈殿形成中に、乳濁液に撹拌を加えることができる。一実施形態では、乳濁液は、1〜5%の塩化カルシウムと1〜5%のクエン酸との溶液で滴定される。別の実施形態では、pH約7.0などの等電点より低くpHを下げるのに有効な量の酸で、乳濁液を滴定して、相分離を起こし、腸溶性マトリックスの溶液からの析出を、その中に疎水性機能性成分をマイクロカプセル化した状態で引き起こし、その結果水溶液と沈殿とのスラリーを創製する。析出したスラリーは、約1.0から約1000.0μm、好ましくは約10.0から約500.0μm、より好ましくは約75.0から約250.0μmの粒径を有する。より好ましくは、沈殿形成は、約3.0から約6.0の範囲のpHで、または更に約3.8から約4.6の範囲にあるpHの間で行われる。
【0034】
理論に拘るつもりはないが、乳濁液のpHが等電点より低く下がると、シェラックおよびゼインなどの腸溶性材料の粒子は、類似の粒子または相互に架橋してマトリックスを形成し、機能性成分および不活性担体をマトリックス内にマイクロカプセル化し得ると考えられる。架橋の結果、機能性成分は、マトリックス中全体に均一に分散される。更に、マトリックスは、機能性成分にとってシールとなる。その結果、完成粉末の官能性品質に対する機能性成分の影響は、腸溶性マトリックスの外表面に付着したままの全機能性成分と相関している。
【0035】
使用される酸には、任意の食品用の酸を含むことができる。一実施形態では、その酸はクエン酸である。
【0036】
上記で触れたように、腸溶性マトリックス材料の組成は、溶解率、および腸溶性マトリックスが与える保護に影響する。
【0037】
沈殿を回収するために、スラリーをろ過し(500)、洗浄し(600)、乾燥する(700)。一実施形態では、スラリーをろ過し、次いで生成したスラリーケーキを洗浄し、再ろ過した後、乾燥する。
【0038】
あらゆるマイクロカプセル化プロセスにおいて、表面物質または非カプセル化物質が少なくとも僅かに残ることになろう。知覚閾値が低い化合物をマスクしたいと欲すれば、最終的な生成物マトリックスおよび/または溶液中の非カプセル化物質を、知覚できないレベルまで減らさなければならない。好ましくは、外表面の粒子沈殿上の機能性成分は、最終生成物に対して約1.0重量%未満である。
【0039】
好ましい実施形態では、ろ過後のスラリーに表面オイル除去剤を添加することにより、沈殿からの残存表面オイルの除去を補助する(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる特許文献3参照)。更に、表面オイル除去剤は、再ろ過ステップの前にも添加することができる。
【0040】
沈殿をろ過し、洗浄した後、沈殿を乾燥して粉末を形成する。乾燥は、粉末が、約10.0%未満の水分含量、好ましくは約2.0から約6.0%の水分含量、より好ましくは約3.0から約5.0%を有するように、行うことができる。
【0041】
更に、粉末は、既知の方法を用いて粉砕し、粉末沈殿の粒径を減らした後、更に流動床乾燥機を用いるなどの既知の方法により、5.0%未満の水分含量に乾燥することができる。生成した粒子は、約1.0から約1000.0μm、好ましくは約10.0から約500.0μm、より好ましくは約75.0から約250.0μmの範囲の粒径を有する。
【0042】
粉末を乾燥する際、温度は、約25℃から約70℃、好ましくは約35℃から約65℃の間に維持すべきである。他の処理ステップ中には、約4℃から約40℃、より好ましくは約4℃から約30℃、更に好ましくは約15℃から約28℃の間に温度を維持することが好ましい。
【0043】
以下で更に考察し、図2に示すように、チミルおよびリナリルエステルを含めると、そのオイルブレンドの水溶性が低下するので、最終成分中のペイロードが約5.0から約50.0%などに増加する。全ての実施例では、多量の水が使用され、チモールおよびリナロールのエステル化によって、湿潤または乾燥形態の粒子からのこうした濯ぎ洗いによる溶出が、減少する。処理中の損失を制限できるので、食物系内の機能性化合物の最終比を制御可能にするが、これは、特許文献2(Enan,E.ら)において重要であることが示されている。チモールは室温で結晶性でもあり、例えば酢酸チミルを代用すれば、全ての機能性成分がその配合物中で液状になると思われるので、処理の容易化が可能となろう。
【実施例1】
【0044】
乳化剤の評価および選択
【0045】
各種の乳化剤を非イオン水と60℃で組み合わせて、2%溶液を生成した。生成した溶液を、非イオン水と重量比50:50の精油ブレンド組成物(α−ピネン4%、パラ−シメン30%、リナロール7%およびチモール35%、ならびに大豆油24%)と組み合わせ、水中油型の乳濁液を創製した。評価した乳化剤は、Glycosperse S−20 KFG(Lonza;Fairlawn,NJ)、Polyaldo 10−1−O KFG(Lonza;Fairlawn,NJ)、Aldosperse MS−20 KFG(Lonza;Fairlawn,NJ)、Polyaldo 10−2−P KFG(Lonza;Fairlawn,NJ)、Ryoto糖エステル(S−1570,Mitsubishi−Kagaku Food Corp.;東京、日本)、Precept 8120(Central Soya;Fort Wayne,IN)、およびカゼイン酸ナトリウム(Alanate−180,New Zealand Dairy Board;ウエリントン、ニュージーランド)であった。スクロースエステル(S−1570)は、乳濁液内に最小で最も均一分散した油滴を創製したので、最良の乳化剤であると確認された。スクロースエステルで創製した乳濁液は、室温で24時間の保存後に最大の安定性も示した。
【実施例2】
【0046】
75%シェラック/25%ゼインマトリックス中に数種のエステル化構成要素を含有する、機能性成分のマイクロカプセル化
【0047】
蒸留イオン水(D.I.H2O)2400.0gをビーカーに添加し、四分岐羽根の付いたStedFast Stirrer SL1200(Yamato Scientific;東京、日本)を用いて、設定速度5から6の間で混合した。ジェットミル粉砕ゼイン(F4000,Freeman Industries;Tuckahoe,NY)の粉末37.5gをビーカーに添加し、均一分散するまで混合した。次に、10%NaOH水溶液をpHが11.3に達するまで添加した。ゼイン−水混合物は、ゼイン粉末が完全に溶解し、溶液が半透明になるまで、撹拌した。次に、水酸化アンモニウム溶液(固体25%)中の作りおきシェラック(Temuss#594;Ajax,ON.、カナダ)450.0gを添加し、5〜10分間混合した。最後に、スクロースステアレートS−1570(Mitsubishi−Kagaku Food Corp.;東京、日本)の1.4gを、均一混合が行われるまで5〜10分などの間混合しながら添加した。
【0048】
次に、精油ブレンド(キャノーラ油18.8%、α−ピネン8.6%、パラ−シメン39.8%、酢酸リナリル5.4%および酢酸チミル27.4%)80.0gを添加し、5〜10分間混合した。PowerGen 700D(Thermo Fisher Scientific;Waltham,MA)を用いて、15000rpmで4分間、次いで20000rpmで更に1分間ブレンドすることにより、混合物を均一化して、安定な乳濁液を創製した。続いて、3%クエン酸溶液を用いた乳濁液の酸滴定を、速度設定最高のMaster Flexポンプ(Barnant Corp.;Barrington,IL)を用いて、中程度にオーバーヘッド混合をしながらpHが3.8に達するまで行い、それによりスラリーを創製した。
【0049】
SiO2 AB−D(PPG Industries;Pittsburg,PA)10gをスラリーに添加し、20〜30分間混合し続けた。混合物を、#200メッシュ(75μm)の篩を用いてろ過した。別の清浄な4000mlプラスチックビーカー中で、D.I.H2Oを2000.0gおよびSiO2 AB−Dを2.5g混合して、溶液を創製した。ケーキをこの溶液中に再懸濁し、3〜5分間混合した。混合物を、#200メッシュの篩を用いてろ過した。
【0050】
別の清浄な4000mlプラスチックビーカー中で、D.I.H2Oを2000.0gおよびSiO2 AB−Dを2.5g混合して、別の溶液を創製した。ケーキを再び再懸濁し、3〜5分間混合した。ろ過物を、チーズクロスを用いて圧搾し、余分な水分を除いた。次いで、ろ過物を大きなトレーのクッキングシート上に均一に広げ、カバーをせずに室温で終夜乾燥した。
【0051】
乾燥粒子を、Magic Bullet MB1001(Sino Link International Trading Co.;浙江、中国)を用いて粉砕した。75から250μmの間の粒子を、#60メッシュおよび#200メッシュの篩を用いて分離した。水分含量は、CEM Smart System 5(CEM Corp.;Matthews,NC)を用いて測定した。水分含量を約6.0%未満に減らすために、ろ過物を、UniGlatt流動床乾燥機(Glatt Air Techniques;Ramsey,NJ)の中で40℃で、5分毎に確認しながら乾燥した。その結果、最終生成物は、約6.0%未満の水分含量を有していた。この分画を#60メッシュの篩を通すことにより、篩い分け、#200メッシュの篩上に集め、その結果、250μm未満で75μmを超えるサイズの粒子が生成した。得られた生成物の組成、ペイロードおよび表面オイルは、下記の表に例示してある。
【0052】
【表1】

【実施例3】
【0053】
75%シェラック/25%ゼインマトリックス中に数種のエステル化構成要素を含有する、機能性成分のパイロットプラント規模でのマイクロカプセル化
【0054】
水12kgおよびスクロースステアレート(S−1570、Mitsubishi−Kagaku Food Corp.;東京、日本)7.5gを混合タンクに添加し、1〜2分間混合した。次いで、水酸化アンモニウム溶液(固体25%)中の作りおきシェラック溶液(Temuss#594;Ajax,ON.、カナダ)2.25kgを添加した後、ゼイン粉末(F4000,Freeman Industries;Tuckahoe,NY)187.5gを添加した。10%水酸化ナトリウムを、pHが11.3に達するまで測り入れた(ゼインを可溶化するため)。ゼインおよびシェラックが完全に溶解した後、精油ブレンド(キャノーラ油13%、α−ピネン10%、パラ−シメン25%、酢酸リナリル12%および酢酸チミル40%)400gを添加した。この混合物を5分間撹拌して、乳濁液を創製した。
【0055】
乳濁液を、pHが3.9に達するまで3.0%クエン酸溶液で滴定した。SiO2 AB−D(PPG Industries;Pittsburg,PA)75gを添加し、約20〜30分間混合した。次いで、スラリーを、200メッシュ(75μm)の篩を用いてろ過した。篩上のろ過ケーキを、SiO2 AB−D50gと共に水9.1kg中に懸濁し、およそ5分間混合した後、#200メッシュの篩上で再ろ過した。濯ぎ洗いをもう一度繰り返し、最終的なろ過ケーキをトレー上に広げ、室温で終夜乾燥した。翌日、生成物をWaringブレンダー(Waring Lab Science;Torrington,CT)中で粉砕し、UniGlatt流動床(Glatt Air Techniques;Ramsey,NJ)の中で40℃で乾燥し、所望のサイズに篩い分けた(75〜250μm)。得られた生成物のペイロードおよび表面オイルは、下記の表に例示してある。
【0056】
【表2】

【実施例4】
【0057】
ホエータンパク質を乳化剤として含有するシェラック/ゼインマトリックス中に、オイル担持量が増加した数種のエステル化構成要素を含有する機能性成分のマイクロカプセル化
【0058】
蒸留イオン水(D.I.H2O)2400.0gをビーカーに添加し、4分岐羽根の付いたStedFast Stirrer SL1200(Yamato Scientific;東京、日本)を用いて、設定速度5から6の間で混合した。ジェットミル粉砕ゼイン(F4000,Freeman Industries;Tuckahoe,NY)の粉末32.5gをビーカーに添加し、均一分散するまで混合した。10%NaOH水溶液をpHが11.3に達するまで添加し、ゼイン粉末が完全に溶解し、溶液が半透明になるまで、混合した。BiPro WPI(Davisco Foods International;Eden Prairie,MN)粉末20.0gを次に添加し、粉末が完全に溶解するまで混合した。次に、水酸化アンモニウムを含有する固形分25%の作りおきシェラック溶液(Temuss#594;Ajax,ON.、カナダ)390.0gを添加し、溶液が均一になるまで5〜10分間混合した。
【0059】
精油ブレンド(キャノーラ油13%、α−ピネン10%、パラ−シメン25%、酢酸リナリル12%および酢酸チミル40%)151.4gを添加し、5〜10分間混合した。PowerGen 700D(Thermo Fisher Scientific;Waltham,MA)を用いて、15000rpmで4分間、次いで20000rpmで更に1分間、混合物を均一化して、安定な乳濁液を創製した。3%クエン酸溶液を、Master Flexポンプを用いて、pHが3.8に達するまで乳濁液中に滴定し、それによりスラリーを創製した。
【0060】
SiO2 AB−D(PPG Industries;Pittsburg,PA)10gをスラリーに添加し、20〜30分間混合した。混合物を、#200メッシュの篩を用いてろ過した。別の清浄な4000mlプラスチックビーカー中で、D.I.H2Oを2000.0g添加し、StedFast Stirrerを用いて混合した。pHは、3%クエン酸溶液の添加によって3.8+/−0.2に調整した。スクロースステアレートS−1570(Mitsubishi−Kagaku Food Corp.;東京、日本)の1gを添加し、完全に溶解するまで混合した後、SiO2 AB−Dを2.5g添加した。ケーキをこの溶液中に再懸濁し、3〜5分間混合した。混合物を、#200メッシュ(75μm)の篩を用いてろ過した。別の清浄な4000mlプラスチックビーカー中で、D.I.H2Oを2000.0g混合し、3.0%クエン酸溶液の添加によって、pHを3.8+/−0.2に調整した。スクロースステアレート1gを添加し、完全に溶解するまで混合した後、SiO2 AB−Dを2.5g添加した。ケーキをこの溶液中に再懸濁し、3〜5分間混合した。混合物を、#200メッシュ(75μm)の篩を用いて再びろ過した。
【0061】
得られたろ過物を、チーズクロスを用いて圧搾し、水分含量を減らした。ろ過物を大きなトレーのクッキングシート上に均一に広げ、カバーをせずに室温で終夜乾燥した。
【0062】
得られた乾燥粒子を、Magic Bullet MB1001(Sino Link International Trading Co.;浙江、中国)を用いて粉砕した。サイズ250μm未満の粒子を、#60メッシュの篩を用いた残渣から分離した。水分含量を約6.0%未満に減らすために、ろ過物を、UniGlatt流動床乾燥機(Glatt Air Techniques;Ramsey,NJ)の中で40℃で、5分毎に確認しながら乾燥した。その結果、最終生成物は、約6.0%未満の水分含量を有していた。得られた生成物の組成、ペイロードおよび表面オイルは、下記の表に例示してある。
【0063】
【表3】

【実施例5】
【0064】
48%アルギン酸塩/40%シェラックおよび乳化剤として12%ホエータンパク質を含有するマトリックス中に、数種のエステル化構成要素を含有する機能性成分のマイクロカプセル化
【0065】
アルギン酸ナトリウム(ULV−L3G、Kimica Corp;東京、日本)2.1gおよびアルギン酸ナトリウム(I−3G−150、Kimica Corp;東京、日本)11.2gを水551.32gに添加した。10%BiPro(Davisco Foods International;Eden Prairie,MN)単離ホエータンパク質の溶液70g、および水酸化アンモニウム溶液(25%固体)中の作りおきシェラック(Temuss#594;Ajax,ON.、カナダ)56gを添加した。次に、精油ブレンド(キャノーラ油17.41%、α−ピネン6.65%、パラ−シメン26.58%、酢酸リナリル7.91%および酢酸チミル41.46%)を添加し、Horiba粒径分析器(Horiba Industries;Irvine,Ca)で確認した目標液滴サイズ4〜7μmを有する均一乳濁液が形成されるまで、混合した。次いで、その溶液を2.5%CaCl2および2.5%クエン酸を含有する水溶液浴の中に噴霧し、25〜300μm間の中程度の小球を創製した。この球体を25μmの篩上に載せて、浴溶液を除いた後、目標の水分(5〜6%)に達するまで、MiniGlatt流動床乾燥機(Glatt Air Techniques;Ramsey,NJ)の中で40℃で乾燥した。その粒子を500μm未満で75μmを超えるサイズに揃えた。得られた生成物の組成、ペイロードおよび表面オイルは、下記の表に例示してある。
【0066】
【表4】

【実施例6】
【0067】
アルギン酸塩/シェラックマトリックス中にマイクロカプセル化した非エステル化機能性成分
【0068】
アルギン酸ナトリウム(ULV−L3G、Kimica Corp;東京、日本)48.0gおよびアルギン酸ナトリウム(I−3G−150、Kimica Corp;東京、日本)10.0gを水840.0gに添加した。次いで、固形分25%入りの作りおきシェラック溶液(Marcoat 125,Emerson Resources;Norristown,PA)80gを添加した。次に、精油ブレンド(大豆油24%、α−ピネン4%、パラ−シメン30%、リナロール7%およびチモール35%)48gを添加し、混合し、微細で安定な乳濁液が形成されるまで均一化した。二液ノズルを用いて、その溶液を2.5%CaCl2および2.5%クエン酸を含有する水溶液硬化浴の中に噴霧し、25〜300μmの中程度の小球を創製した。粒子が架橋された後、この粒子を25μmの篩上で篩い分け、目標の水分(5〜6%)に達するまで、MiniGlatt流動床乾燥機(Glatt Air Techniques;Ramsey,NJ)の中で40℃で乾燥した。その粒子を212μm未満のサイズに揃えた。
【0069】
下記の表に見られるように、ペイロードは低く、モデル飲料系で味見をしたところ、粒子は、精油の不快な風味/香味をマスクすることができなかった。得られた生成物の組成およびペイロードは、下記の表に例示してある。
【0070】
【表5】

【実施例7】
【0071】
75%アルギン酸塩/25%シェラックマトリックス中に数種のエステル化構成要素を含有する精油ブレンドのマイクロカプセル化
【0072】
アルギン酸ナトリウム(ULV−L3G、Kimica Corp;東京、日本)5.5gおよびアルギン酸ナトリウム(I−3G−150、Kimica Corp;東京、日本)11.0gを水495gに添加した。次いで撹拌下で、水酸化アンモニウム溶液(25%固体)中の作りおきシェラック(Temuss#594;Ajax,ON.、カナダ)22.0gを添加した。次に、精油ブレンド(キャノーラ油18.50%、α−ピネン5.48%、パラ−シメン32.39%、リナロールの酪酸エステル(酪酸リナリル)11.26%およびチモールの酢酸エステル(酢酸チミル)32.37%)を添加し、Horiba粒径分析器(Horiba Industries;Irvine,Ca)で確認した目標液滴サイズ4〜7μmを有する、微細で安定な乳濁液が形成されるまで混合し、均一化した。その溶液を2.5%CaCl2および2.5%クエン酸を含有する水溶液硬化浴の中に噴霧し、25〜300μm間の中程度の小球を創製した。次いで、この粒子を25μmの篩上で篩い分けて、浴溶液を除いた後、目標の水分(5〜6%)に達するまで、MiniGlatt流動床乾燥機(Glatt Air Techniques;Ramsey,NJ)の中で40℃で乾燥した。その粒子を212μm未満に揃えた。
【0073】
下記の表に示され、実施例6と比較されるように、エステル化構成要素を含有する機能性成分を用いると、ペイロードが有意に増加した。特に図2に見ることができるように、エステル化構成要素を使用したことの意外な有益性は、非エステル化構成要素のペイロードも、エステル化構成要素の存在下で増加したことである。更に、エステル化構成要素は、実施例6で形成された生成物ほど、風味/香味の負の影響を生じなかった。得られた生成物の組成、ペイロードおよび表面オイルは、下記の表に例示してある。
【0074】
【表6】

【実施例8】
【0075】
75%アルギン酸塩/25%シェラックマトリックス内における、非エステル化およびエステル化機能性成分のペイロード保持率の比較
【0076】
元の精油ブレンド(非エステル化構成要素:α−ピネン、パラ−シメン、リナロール、チモールおよびキャノーラ油を含有する)で生成した粒子、および数種のエステル化構成要素を含有する精油ブレンド(α−ピネン、パラ−シメン、酪酸リナリル、酢酸チミルおよびキャノーラ油)で生成した粒子の比較を図2に例示する。粒子は、エステル化対非エステル化機能性成分は別として、同じプロセス条件および組成を用いて生成した。この図では、リナロールの量(組合せ)は、リナロールの測定値、および分子組成に基づく酢酸リナリルの測定値のリナロール当量値を合計することにより、計算される。
【0077】
図2に示すように、精油ブレンドに数種のエステル化構成要素を使用すると、ペイロード保持率が約130%増加し、ペイロード保持率の増加が、機能性成分のエステル化および非エステル化双方の構成要素に見られたことが明らかである。
【実施例9】
【0078】
エステル化機能性成分の胃内放出に対する効果
【0079】
この実施例は、インビトロ消化モデルを用いた胃腸模倣試験の間における、エステル化機能性成分に対する非エステル化機能性成分の放出を比較する。
【0080】
図3は、当該化合物の既知の性質を示す。図3に示すように、エステル化合物(酢酸リナリル、酪酸リナリルおよび酢酸チミル)の溶解度の値は、親化合物(リナロールおよびチモール)より有意に低い。それに加え、エステル化合物の分配係数は、親化合物より大きい。こうした係数は、エステル化合物が、疎水性担体および不溶性マトリックス材料に対して、親化合物より大きな親和性を有することを示す。図4および5は、模倣胃液中での滞留時間を表す−0.5〜0.0時間の間の放出が、何らかのエステル化機能性成分を含有する粒子では大いに減少することを示している。図4のリナロールおよびチモールの放出を図5の酢酸リナリルおよび酢酸チミルの放出と比較すると、減少率が極めて明白である。モデル胃内での安定性のこの改善は、酸性飲料などの他の低pH系における安定性の増加を示唆し、更に、機能性成分の首尾よいマイクロカプセル化および腸溶放出にとって、エステルが重要であることを例示している。
【実施例10】
【0081】
マイクロカプセル化粒子からの放出およびエステル化構成要素の加水分解の調節
【0082】
この実施例は、エステル化用の各種酸の選択が、その結果としての親化合物の送達率に影響し得ることを示す。実施例9は、数種のエステル化化合物を含めた結果として、胃モデル内における粒子からの放出率に対する効果を示した。図4および5で明らかなように、胃内放出率が減少すると共に、小腸での滞留時間を表す0〜24.5時間の放出率も減少した。図6および7は、胃および小腸の条件および滞留時間を模倣した消化モデル内における、2種のリナロールエステル、図6の酢酸リナリルおよび図7の酪酸リナリルの放出率を示す。それに加え、消化モデル中に存在する親化合物の経時的な量も測定した。親化合物リナロールの存在は、酢酸リナリルが加水分解した結果である。図6に見られるように、リナロールの初期放出率は、約5%であって、約20%に増加するが、これは、酢酸リナリルがリナロールへ約33%加水分解したことに相関する。図7では、リナロールの初期放出率は、約2%であって、約4%に増加するが、これは、酪酸リナリルがリナロールへ約5%加水分解したことに相関した。こうした結果から、機能性成分を様々な比率の酢酸リナリル対酪酸リナリルで処方することにより、胃管および小腸を介したリナロールの放出発生量を調節できることを理解することができる。
【実施例11】
【0083】
エステル化および非エステル化機能性成分を含むモデル飲料系の比較
【0084】
2種のモデル飲料の風味プロファイルを非公式に比較した。一方の飲料は、非エステル化機能性成分を含む粒子で調製し、他方の飲料は、あるエステル化機能性成分、即ち酢酸リナリルおよび酢酸チミルを含む粒子で調製した。粒子は、実施例2と同様にして創製した。粉末飲料ミックス一杯分量を、等しく2つ分け取った。第1の部分に、非エステル化機能性成分を含む十分量の粒子を、機能性成分が70mg投与されるように添加した。第2の部分に、あるエステル化機能性成分を含む十分量の粒子を、機能性成分が70mg投与されるように添加した。次いで、各粉末/粒子混合物を冷水200mlに添加し、十分に混合した。
【0085】
各モデル飲料の試料を味見したとき、審査団は、あるエステル化機能性成分からなる粒子を含有するモデル飲料が、不快な風味および/または香味プロファイルを有意に減少させ、総合的な感覚的経験を改善させているとの結論を下した。
【0086】
方法および生成物の特定の実施形態に特に関して、本発明を格別に説明してきたが、多様な変化、改変および適合が、本開示に基づいてなし得るものであり、以下の特許請求の範囲に規定するような、本発明の趣旨および範囲に入ることを意図していることは、理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性成分と、
不活性担体と、
機能性成分および不活性担体をマイクロカプセル化し、食品用腸溶性高分子を含んだ腸溶性マトリックスと
を含み、機能性成分は、少なくとも約10%のエステルを含むことを特徴とする
組成物。
【請求項2】
機能性成分は、リナロールおよびチモールのエステルを含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
チミルエステル対リナリルエステルの比は、約2:1から約6:1に及ぶことを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
機能性成分は、少なくとも約20%のエステルを含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
機能性成分は、少なくとも約50%のエステルを含むことを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
機能性成分は、α−ピネンおよびパラ−シメンを更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
不活性担体は、脂質を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
脂質は、トリグリセリドであることを特徴とする、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
トリグリセリドは、大豆油およびキャノーラ油を含む群から選択されることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
微粒子中における機能性成分対腸溶性マトリックス材料の比は、約1:19から約1:1に及ぶことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
マイクロカプセル化された機能性成分および不活性担体は、微粒子を構成することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
微粒子は、約6.0%未満の水分含量を有することを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
微粒子は、約1000.0μm未満の粒径を有することを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
腸溶性マトリックスは、食品用高分子であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
腸溶性マトリックスは、ゼイン、シェラック、アルギン酸カルシウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
約5.0から約50.0%に及ぶペイロードを有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
約1.0重量%未満の非カプセル化物質を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
所望の加水分解率をもたらすのに有効である、機能性成分のエステルが選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
特定の腸溶放出率をもたらすのに有効である、機能性成分のエステルが選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
所望の放出率をもたらすのに有効である、機能性成分のエステルが選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
含有担持率の増加に有効である、機能性成分のエステルが選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
胃における所望の安定性をもたらすのに有効である、機能性成分のエステルおよび腸溶性マトリックス材料が、選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
a)水、腸溶性マトリックス材料および乳化剤の組合せを適切なpHで撹拌し、腸溶性マトリックス材料を可溶化するステップであって、前記組合せが有機溶媒を実質的に含まないステップと、
b)機能性成分を前記組合せに添加するステップであって、活性成分が少なくとも10%のエステルを含むステップと、
c)前記組合せおよび機能性成分を混合して、乳濁液を創製するステップと、
d)撹拌しながら、粒子状沈殿の形成に有効な量の架橋剤または沈殿剤で、乳濁液を滴定するステップと
を含み、機能性成分は、沈殿全体に亘り均一に分散される、
ことを特徴とする方法。
【請求項24】
機能性成分のマイクロカプセル化効率は、少なくとも約60%であることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
機能性成分は、リナロールおよびチモールのエステルを含むことを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記活性成分は、パラ−シメンおよびα−ピネンを更に含むことを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
不活性担体を前記組合せに添加するステップを含むことを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
不活性担体は、脂質であることを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
不活性担体は、トリグリセリドであることを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
乳化剤は、食品用乳化剤であることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
乳化剤は、スクロースエステル、スクロースステアレートおよびホエータンパク質からなる群から選択されることを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
腸溶性マトリックス材料は、食品用高分子を含むことを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
食品用高分子は、シェラック、ゼイン、アルギン酸カルシウム、変性ホエータンパク質およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
乳濁液は、約3.0から約6.0の範囲のpHに酸滴定されることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項35】
乳濁液は、約3.8から約4.6の範囲のpHに酸滴定されることを特徴とする、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
乳濁液は、塩化カルシウム1〜5%およびクエン酸1〜5%の溶液で滴定されることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項37】
(e)前記沈殿をろ過し、洗浄し、乾燥して、乾燥粉末を生成するステップを、更に含むことを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項38】
(d1)残存表面オイルの減少に有効な量の表面オイル除去剤を前記沈殿に添加するステップを、更に含むことを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項39】
ステップ(a)の間に塩基を添加して、pHを約7.2から約12.0に調整するステップを更に含むことを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項40】
pHを約8.0から約11.3の範囲に調整するステップを含むことを特徴とする、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
機能性成分および前記組合せを撹拌して、粗製乳濁液を創製するステップを更に含むことを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項42】
粗製乳濁液を均一化して、微細で安定な乳濁液を創製するステップを更に含むことを特徴とする、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
機能性成分および前記組合せを均一化して、微細で安定な乳濁液を創製するステップを更に含むことを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項44】
乳濁液は、60〜95%の水を含むことを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項45】
乳濁液は、機能性成分および不活性担体を約2.0から約7.0重量%含むことを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項46】
粒子沈殿は、約1.0から1000.0ミクロンの範囲の粒径を有することを特徴とする、請求項23に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−279354(P2010−279354A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−126986(P2010−126986)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(508247877)クラフト・フーヅ・グローバル・ブランヅ リミテッド ライアビリティ カンパニー (53)
【Fターム(参考)】