説明

機能性履物

本発明は、靴底と甲革とからなる履物において、前記靴底のアウトソールとミッドソールはそれぞれトウ部の位置する前底がヒール部の位置する後底に比べて長手方向に斜め上向きに傾斜した傾斜部が形成されている構造であることを特徴とする機能性履物に関する。上記の構造を有する本発明に係る機能性履物は、歩行時に身体のバランスが取れて安定的に着地でき、且つ、歩行者が足に力を入れなくてもミッドソールの傾斜角による自然な体重の移動により歩行が容易であり、歩行者の下半身の筋肉を発達させて運動量を増大させるとともに持久力、推進力と敏捷性などを高められるといった効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴底のアウトソールとミッドソールにおいて、それぞれトウ部の位置する前底がヒール部の位置する後底に比べて長手方向に斜め上向きに傾斜した傾斜部が形成されている構造の機能性履物であって、歩行時に身体のバランスが取れて安定的に着地でき、且つ、歩行者が足に力を入れなくてもミッドソールの傾斜角による自然な体重の移動により歩行が容易であり、歩行者の下半身の筋肉を発達させて運動量を増大させるとともに持久力、推進力と敏捷性などを高められる機能性履物に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、大変人気を集めている、マサイ族の歩き方を参考にしたシューズは足の疲労感を低減できるようにした構造の機能性ウォーキングシューズであって、大韓民国登録特許第10−800060号公報、大韓民国登録特許第10−786556号公報、大韓民国登録特許第10−8000061号などに公知されているように、多種多様な構造の機能性ウォーキングシューズが登録されている。従来技術によれば、図1に示すように、これらの機能性ウォーキングシューズは前底のトウ部が位置する部分の高さと後底のヒール部が位置する部分の高さとがそれぞれアウトソール底面の中心部に比べてそれぞれh、hに見合う分だけ高く形成されている構造になっている。ところが、かような従来のマサイ族の歩き方を参考にした機能性シューズは、普段平地を履いて歩行するに際してはあまり問題がないとはいえ、傾斜面や階段などを登ったり降りたりするときにはアウトソール底面の中心部の着地点が不安であるため身体のバランスを取り難く足に力が入ってしまう結果足が疲労し易く、しかも、次の歩幅のための事前動作が不安定になるなどの問題点があった。
一方、本発明者は、歩行時における足の疲労感を減らすために、大韓民国登録特許登録番号第10−533575号をもって、図2に示すように、ミッドソール100が水平に形成されているヒール部と水平に形成されるトウ部と、前記ヒール部から前記トウ部まで緩やかに斜め上向きに傾斜した傾斜部とからなる機能性履物に対して特許登録を受けている。しかしながら、従来技術によると、上記の如き機能性履物の場合にはトウキャップ200の高さが高くて歩行時にはトウキャップが地面に頻繁にぶつかってしまうため自然な歩行ができないといった問題点があった。
従って、本発明者は、上記の如き問題点を解消するための方案として、履物のアウトソールとミッドソールの構造を同時に改善し、トウキャップを低めた機能性履物を製造することにより、上記の如き問題点を改善して本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来技術における上記の問題点を解決するためになされたものであり、靴底のアウトソールとミッドソールにおいて、それぞれトウ部の位置する前底がヒール部の位置する後底に比べて長手方向に斜め上向きに傾斜した傾斜部が形成されている構造の機能性履物であって、歩行時に身体のバランスが取れて安定的に着地でき、且つ、歩行者が足に力を入れなくてもミッドソールの傾斜角による自然な体重の移動により歩行が容易であり、歩行者の下半身の筋肉を発達させて運動量を増大させるとともに持久力、推進力と敏捷性などを高められる機能性履物を提供するところにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解消するために、本発明は、靴底と甲革とからなる履物において、前記靴底のアウトソールとミッドソールはそれぞれトウ部の位置する前底がヒール部の位置する後底に比べて長手方向に斜め上向きに傾斜した傾斜部が形成されている構造のものであることを特徴とする機能性履物を提供する。
但し、前記アウトソールは、後底から前底まで長手方向に斜め上向きに傾斜した真っ直ぐな傾斜部が形成される構造のものであることを特徴とし、前記ミッドソールは、ヒール部からトウ部まで長手方向に緩やかに斜め上向きに傾斜した真っ直ぐな傾斜部が形成されている構造のものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
上記の課題解決手段による本発明は、靴底のアウトソールとミッドソールはそれぞれトウ部の位置する前底がヒール部の位置する後底に比べて長手方向に斜め上向きに傾斜した傾斜部が形成されている構造の機能性履物に関するものであり、歩行時に身体のバランスが取れて安定的に着地でき、且つ、歩行者が足に力を入れなくてもミッドソールの傾斜角による自然な体重の移動により歩行が容易であり、歩行者の下半身の筋肉を発達させて運動量を増大させるとともに持久力、推進力と敏捷性などを高められるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】従来の履物のアウトソール特性を示すために機能性ウォーキングシューズを切断して示す断面図であり、
【図2】従来の履物のミッドソール特性を示すために機能性履物を切断して示す断面図であり、
【図3】本発明に係る機能性履物の技術的思想を説明するための履物の側面図であり、
【図4】本発明の好適な実施形態による機能性履物のアウトソールとミッドソールを長手方向に切断した断面を示す断面図であり、
【図5】本発明の好適な実施形態による機能性履物のミッドソールを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、靴底と甲革とからなる履物において、前記靴底のアウトソールとミッドソールはそれぞれトウ部の位置する前底がヒール部の位置する後底に比べて長手方向に斜め上向きに傾斜した傾斜部が形成されている構造のものであることを特徴とする機能性履物に関するものである。
本発明に係る機能性履物は、後底の底面が水平に形成されていることから、歩行時に身体のバランスが取れて安定的に着地でき、且つ、歩行者が足に力を入れなくてもミッドソールの傾斜角による自然な体重の移動により歩行が容易であり、歩行者の下半身の筋肉を発達させて運動量を増大させるとともに持久力、推進力と敏捷性などを高められるという特徴がある。
本発明における「前底」と「後底」について、前底と後底が連結されていることを前提として定義する。すなわち、上向き傾斜部が始まる個所を境界面として、この境界面の前部のトウ部が位置する部分の底を前底OFLといい、ヒール部が位置する部分の底を後底OBLという。なお、上記において、トウ部とは、靴底における足指の接触部分のことをいい、ヒール部とは、靴底におけるかかとの接触部分のことをいう。
また、本発明においては、添付図面中において、便宜上、ミッドソールを中心としてトウ部とヒール部を具体的に示して符号を付しているが、アウトソールの場合にも前記ミッドソールと対応する位置の部分がそれぞれトウ部とヒール部であるとしてこの明細書を記述している。
さらに、本発明において、身体の足指部は趾骨と対応する足底部位を指し示し、身体の土踏まず部は中足骨と対応する足底部位を指し示し、身体のかかと部は足根骨と対応する足底部位を指し示すものとする。なお、トウ部は前記足指部が置かれる靴底の上面部分をいい、傾斜部は前記土踏まず部が置かれる靴底の上面部分をいい、ヒール部は前記かかと部が置かれる靴底の上面部分をいう。
以下、添付図面に基づき、本発明に係る機能性履物の構成を詳述する。
添付の各図面はこの分野における通常の知識を持った者が通常的に理解可能な構成要素については図示を省略あるいは簡略化して表示し、本発明と関連する構成要素を中心に示している。特に、構成要素間のサイズ比がやや異なるように表現される部分もあるが、このような図面の相違点はこの分野における通常の知識を持った者が容易に理解可能な部分であるため別途の説明は省略する。
本発明において、図3は本発明に係る機能性履物の技術的思想を説明するための履物の側面図であり、図4は本発明の好適な実施形態による機能性履物のアウトソールとミッドソールを長手方向に切断した断面を示す断面図であり、図5は本発明の好適な実施形態による機能性履物のミッドソールを示す斜視図である。
本発明に係る機能性履物は、着用者が歩行するときに地面に着地される底面と着用者の足底が置かれる上面とからなる靴底と、前記靴底と結合され、着用者の足指、かかと、足の甲及び足首を全体的に覆う甲革と、を有する通常の履物において、前記靴底のアウトソール10とミッドソール20はそれぞれトウ部の位置する前底がヒール部の位置する後底に比べて長手方向に斜め上向きに傾斜した傾斜部が形成される構造のものであることを特徴とする。
このため、上記の構造を有する機能性履物は後底の底面が水平に形成されることにより、従来のマサイ族の歩き方を参考にしたシューズに比べて安定的に着地可能であることから、傾斜した地面や階段などを歩行するときであっても何ら不便さを感じることなく安定的に歩行することができ、平地における歩行時には歩行者が足に力を入れなくてもミッドソールの傾斜角による自然な体重の移動により歩行が容易であるという特徴がある。
以下、添付図面に基づき、本発明における前記アウトソールの構造を詳述する。
本発明に係るアウトソール10は、後底OBLから前底OFLまで長手方向に斜め上向きに傾斜した真っ直ぐな傾斜部が形成される構造のものであり、後底OBLの長さ対前底OFLの長さが53〜56対44〜47である個所において傾斜部が形成され、傾斜部はその傾斜角αが13〜17°の上向き構造であることが好ましい。本発明においては、前底OFLの全長が傾斜部を形成している。
上記において、傾斜部の形成個所と傾斜角の大きさは人体工学的に設計されており、傾斜部の形成個所が上記において限定した範囲よりも前部に形成されたり、あるいは、傾斜角が小さな場合には歩行に際して着地時に身体のバランスが取れて安定的であるが、歩行時に前底の傾斜角が小さくて自然な弾力動作が正常に行われないため足に多くの力が入ってしまい、且つ、傾斜部の形成個所が上記において限定した範囲よりも後部に形成されたり、あるいは、傾斜角が大きな場合には前底の傾斜角が大きくて次回の足取りをするための事前動作のために足に多くの力が入ってしまい、さらに、歩行に際して着地点に着地時に身体のバランスが崩れてしまって歩行者が疲労感を感じてしまう。
以下、添付図面に基づき、本発明における前記ミッドソールの構造を詳述する。
本発明に係るミッドソール20は、本発明が大韓民国登録特許登録番号第10−533575号をもって既に特許登録を受けている機能性履物のミッドソール構造を改良して採択したところに特徴があり、着用時に歩行者にできる限り疲労感を感じさせないように設計されている。
このため、本発明に係るミッドソール20は、ヒール部23からトウ部21まで長手方向に緩やかに斜め上向きに傾斜した真っ直ぐな傾斜部が形成される構造のものであり、前記ミッドソールは、トウ部MTLの長さ対ミッドソールの全長MLが0.2〜0.3対1であることが好ましい。トウ部の長さが0.2未満である場合には着用者の土踏まず部がトウ部21から傾斜部22にかけて置かれるため着用感が低下され、0.3を超える場合には着用者の足指部がトウ部21から傾斜部22にかけて置かれるため着用感が低下するという問題点が発生する恐れがある。
また、ヒール部23の長さMHL対ミッドソールの全長MLが0.15〜0.21対1の割合になるように形成することが好ましい。ヒール部23の長さMHLが0.15未満である場合には人体の足をなす骨格のうち足根骨に相当する部分であるかかとの全体が前記ヒール部23に当たらず、傾斜部22からヒール部23にかけて当たるため着用感に劣るという問題があり、0.21を超える場合には着用者の土踏まず部が傾斜部22からヒール部23にかけて置かれるため着用感が低下するという問題点が発生する恐れがある。
そして、前記ミッドソール20は、ヒール部23からトウ部21への傾斜度βが2.5〜4.0°の緩傾斜の真っ直ぐな上向き斜めの傾斜構造を形成することにより、歩行時にかかとが滑ることなく足指部が自然に置かれることにより着用感が向上され、歩行および運動をするのに適した傾斜度を有していて長時間に亘って歩行、運動などをしてもアキレス鍵に無理がなく効果的に運動量を増大させることができるという特徴を有する。
前記傾斜部22の傾斜度βが2.5°未満である場合にはアキレス鍵の弛緩の度合いがあまり高くなくて運動量が少ないため普段簡単な運動により効果的に運動量を増やそうとする現代人の欲求を満たすことができないという問題があり、4.0°を超える場合にはアキレス鍵の弛緩の度合いが高いため運動量が大幅に増大するというメリットはあるが、着用感が低下してバランスを崩して倒れる恐れがあり、且つ、アキレス鍵に無理を与えるという問題点が発生する恐れがある。
本発明において、前記アウトソール10とミッドソール20に使用する素材は、通常的に、履物用アウトソールとミッドソールに使用する素材であって、ポリウレタン(PU)またはEVA発泡体であることが好ましく、上記において限定した発泡体素材に加えて、同等以上の物性を有する発泡体素材である場合にはその素材の種類を問わずに使用可能である。
このため、上記の構造を有する機能性履物は靴底のアウトソール10とミッドソール20が両方ともトウ部がヒール部に比べて緩やかに上向き斜めに傾斜した構造を有することにより、歩行時に身体のバランスが取れて安定的に着地でき、且つ、ミッドソールの傾斜角による自然な体重の移動により歩行が容易であり、歩行者の下半身の筋肉を発達させて運動量を増大させるとともに持久力、推進力と敏捷性などを高められる。
以上述べたように、本発明は添付図面を中心として本発明の優秀性を説明してきたが、本発明は必ずしも添付図面により限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の置換、変形及び変更が可能である。
上記の課題を解決するための本発明は、靴底と甲革とからなる履物において、前記靴底はアウトソールとミッドソールにおいてそれぞれトウ部の位置する前底がヒール部の位置する後底に比べて長手方向に斜め上向きに傾斜した傾斜部が形成される構造であることを特徴とする機能性履物を提供する。
但し、前記アウトソールは、後底から前底まで長手方向に斜め上向きに傾斜した真っ直ぐな傾斜部が形成される構造のものであることを特徴とし、前記ミッドソールは、ヒール部からトウ部まで長手方向に緩やかに斜め上向きに傾斜した真っ直ぐな傾斜部が形成されている構造のものであることを特徴とする。
【産業上の利用可能性】
【0008】
本発明は、靴底のアウトソールとミッドソールにおいて、それぞれトウ部の位置する前底がヒール部の位置する後底に比べて長手方向に斜め上向きに傾斜した傾斜部が形成されている構造の機能性履物であって、歩行時に身体のバランスが取れて安定的に着地でき、且つ、歩行者が足に力を入れなくてもミッドソールの傾斜角による自然な体重の移動により歩行が容易であり、歩行者の下半身の筋肉を発達させて運動量を増大させるとともに持久力、推進力と敏捷性などを高められる機能性履物に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴底と甲革とからなる履物において、
前記靴底のアウトソールとミッドソールは、それぞれトウ部の位置する前底がヒール部の位置する後底に比べて長手方向に斜め上向きに傾斜した傾斜部が形成されている構造であることを特徴とする機能性履物。
【請求項2】
前記アウトソールは、前記アウトソールの全長に対して前記後底の長さOBL対前記前底の長さOFLが53〜56対44〜47となる個所において傾斜部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の機能性履物。
【請求項3】
前記傾斜部は、傾斜角αが13〜17°の上向き構造であることを特徴とする請求項2に記載の機能性履物。
【請求項4】
前記ミッドソールは、前記トウ部の長さMTL対前記ミッドソールの全長MLが0.2〜0.3対1であり、且つ、前記ヒール部の長さMHL対前記ミッドソールの全長MLが0.15〜0.21対1の構造であることを特徴とする請求項1に記載の機能性履物。
【請求項5】
前記ミッドソールは、前記ヒール部から前記トウ部への傾斜度βが2.5〜4.0°の実質的な緩傾斜角をもって真っ直ぐに斜め上向きに傾斜した構造であることを特徴とする請求項4に記載の機能性履物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−506034(P2011−506034A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539273(P2010−539273)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【国際出願番号】PCT/KR2008/002083
【国際公開番号】WO2009/125888
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(510162584)
【Fターム(参考)】