説明

機能性部材ならびにその製造のための方法および塗布液

調湿機能、有害化学物質および不快臭の除去機能、防汚性および汚れ隠蔽性、ならびに可撓性に優れた機能性部材の提供。 可撓性を有する基材上に形成された、無機多孔質体と有機物エマルジョンとを含む混合物の乾燥物からなる第一層と、第一層の表面の略全面にわたって、無機充填剤が有機物バインダーによって固定化された第二層とを有する機能性部材であって、有機物エマルジョンの有機物のガラス転移温度が−5〜−50℃であり、かつ、第二層における有機物バインダーの含有量が無機充填剤100体積部に対して30〜300体積部である、機能性部材。

【発明の詳細な説明】
発明の背景
発明の分野
本発明は、空間の相対湿度を自律的に制御する調湿機能、有害化学物質および生活不快臭の除去機能、防汚性および汚れ隠蔽性、ならびに可撓性等に優れた、機能性部材ならびにその製造のための方法および塗布液に関するものである。
【背景技術】
吸放湿性能を有する調湿建材が知られている。調湿建材は、空間の相対湿度を自律的に制御する建材であり、高湿度時には湿気を吸収し、低湿度時には湿気を放出することができる。特に、近年の居住環境は、断熱性および気密性の向上により、湿気が室内に溜まりやすい傾向にあるため、調湿建材の必要性が高まりつつある。
一方、近年、有害化学物質による室内環境汚染がシックハウス症候群等の健康障害を引き起こすことが問題となっている。また、トイレ臭、生ごみ臭、ペット臭などの生活不快臭に対する消臭の要望も依然として強い。したがって、調湿建材が、吸放湿性能のみならず、室内空気中の有害化学物質や不快臭を吸着して除去することができれば、なお望ましいと言える。また、このような調湿材料の表面が汚れにくいことが望ましいことは言うまでもない。
特開2000−117916号公報には、吸放湿性樹脂層の表面にポリエチレン等の透過性フィルムを積層して耐汚染性を付与した化粧材が開示されている。また、特開2001−1479号公報には、吸放湿性樹脂層の表面に透湿性ウレタン樹脂からなる表面保護層を形成して耐汚染性を付与した化粧材が開示されている。
特開平1−113236号公報には、調湿層上に連通気孔を有する化粧層を形成して意匠性を向上したセラミック板が開示されている。また、特開2000−43221号公報には、吸放湿性樹脂層上に装飾処理を施した透過性シートを積層して意匠性を向上した化粧材が開示されている。
発明の概要
本発明者らは、今般、可撓性を有する基材上に、無機多孔質体と特定の有機物エマルジョンとを含む混合物の乾燥物からなる第一層を形成し、その表面の略全面に無機充填剤および有機物バインダーを特定の割合で含む第二層を形成することにより、調湿機能、有害化学物質および生活不快臭の除去機能、防汚性および汚れ隠蔽性、ならびに可撓性に優れた機能性部材が得られるとの知見を得た。
したがって、本発明は、調湿機能、有害化学物質および生活不快臭の除去機能、防汚性および汚れ隠蔽性、ならびに可撓性に優れた機能性部材、その製造法、およびその製造のための塗布液を提供することをその目的としている。
そして、本発明による機能性部材は、
可撓性を有する基材と、
該基材上に形成された、無機多孔質体と有機物エマルジョンとを含む混合物の乾燥物からなる第一層と、
第一層の表面の略全面にわたって、無機充填剤が有機物バインダーによって固定化された第二層と
を有し、
前記有機物エマルジョンのガラス転移温度が−5〜−50℃であり、かつ、前記第二層における有機物バインダーの含有量が無機充填剤100体積部に対して30〜300体積部であるものである。
また、本発明による機能性部材の製造方法は、
可撓性を有する基材を用意し、
該基材上に、無機多孔質体と、有機物のガラス転移温度が−5〜−50℃である有機物エマルジョンとを含んでなる塗布液を塗布し、乾燥させて、第一層を形成し、
該第一層の表面の略全面にわたって、無機充填剤および有機物バインダーの混合物を塗布して第二層を形成させることを含んでなり、
前記第二層における有機物バインダーの含有量を無機充填剤100体積部に対して30〜300体積部とする方法である。
さらに、本発明による機能性部材の第一層を形成するための塗布液は、
無機多孔質体と、有機物エマルジョンとを含んでなり、
前記有機物エマルジョンの有機物のガラス転移温度が−5〜−50℃であるものである。
発明の具体的説明
機能性部材
図1に、本発明の機能性部材の一例を示す。本発明による機能性部材は、基材1と、第一層2と、第二層3とを含んでなる。可撓性を有する基材1上には、無機多孔質体と有機物エマルジョンとを含む混合物の乾燥物からなる第一層2が形成される。第一層2に用いる有機物エマルジョンの有機物のガラス転移温度は−5〜−50℃とする。その結果、第一層2は、水蒸気の吸放湿性能のみならず、室内の有害化学物質ガスおよび生活不快臭の吸着除去性能を発揮するとともに、充分な可撓性を有する。
この第一層2の表面の略全面にわたって、無機充填剤が有機物バインダーによって固定化された第二層3が形成される。第二層3における有機物バインダーの含有量は、無機充填剤100体積部に対して30〜300体積部とする。第二層3によれば、第一層2による水蒸気の吸放湿性能および汚染物の吸着除去性能を充分に確保しながら、タバコのヤニなどの汚染物に対する防汚性および汚れ隠蔽性を実現することができる。すなわち、この第二層3は、水蒸気の透過を阻害することなく汚染物の透過をある程度防止することにより防汚性を発揮する。しかし、第一層2の上記機能を最大限に発揮させるために、第二層3は汚染物の通過を完全に阻止するのではなく、むしろある程度の汚染物の通過を許容する。そして、たとえタバコのヤニ等の汚染物が第二層を透過して第一層に吸着された場合であっても、その汚れは第二層に所定量含まれる無機充填剤によって隠蔽され、汚れが目立たなくなる。すなわち、汚れ隠蔽性が得られる。このように、本発明の機能性材料によれば、吸放湿性能および汚染物の除去性能と、防汚性および汚れ隠蔽性との両立を安価に実現することが可能となる。さらに、本発明の機能性部材は、このような多機能を有する多層構成でありながら、可撓性を有する。このため、本発明の機能性部材は、建築物内装材、乗り物の内装材等を含む広範囲の用途に利用することができる。
基材
本発明における基材としては、可撓性を有する基材を用いるものとし、180°折り曲げても割れない性質を有するものが好ましい。好ましい基材の例としては、紙、合成樹脂シート、織布、不織布、ガラス繊維シート、金属繊維、難燃裏打紙、壁紙用基材紙、これらの複合または積層材料、その他ビニルクロスなどの壁紙に通常用いることができる基材等が挙げられる。
本発明の機能性部材を建築用壁紙として用いる場合には、価格および生産性の面から壁紙用基材紙を用いることが好ましく、より好ましくは、裏打紙、フィルム、および不織布の三層構造からなる基材紙が挙げられる。この基材紙の不織布上に第一層が形成されることによりいわゆるアンカー効果により、第一層の密着性が向上する。また、不織布と裏打紙との間にフィルムが配置されることにより、塗布液を基材に塗布する際に、基材紙におけるしわの発生を防止することができる。裏打紙としては、壁紙として通常の施工性を発揮させるために、吸水性を有する紙であることが好ましい。フィルムとしては、ポリエチレンなどの合成樹脂よりなり、防水層として作用する非透水性のラミネートフィルムが好ましい。裏打紙および不織布の中間に非透水性のラミネートフィルムの層を設けることにより、施工時に紙から第一層への水分の移動を抑制することが出来、通常のビニルクロスと遜色ない施工性が達成される。このような基材紙はほとんど有機物を主体とする可燃物であるので、防火性の観点から、重量が150g/m以下のものが好ましい。
第一層
本発明における第一層は、無機多孔質体と有機物エマルジョンとを含む混合物の乾燥物からなる。この第一層は無機多孔質体に起因して多孔質であり大きな表面積を有するため、水蒸気の吸放湿性能に優れ、かつ有害化学物質あるいは生活不快臭の吸着および除去機能にも優れる。
本発明における無機多孔質体は、水蒸気の吸脱着により吸放湿を行うことができる細孔を有するものであれば限定されないが、好ましい例としてはアルミナ−シリカキセロゲル多孔質体、シリカゲル、活性アルミナ、メソポーラスゼオライト、メソポーラスシリカ、多孔質ガラス、アパタイト、珪藻土、セピオライト、アロフェン、イモゴライト、活性白土などが挙げられる。
本発明の好ましい態様によれば、無機多孔質体の窒素ガス吸着により測定される細孔直径4〜14nmの細孔の容積が0.1ml/g以上であり、無機多孔質体の窒素ガス吸着により測定される細孔直径1〜200nmの全細孔容積が1.5ml/g以下であるのが好ましい。これにより、優れたヤニ汚れに対する防汚性および吸放湿性能を得ることができる。特に、最も快適とされる約40〜70%の相対湿度の範囲内で自律的に湿度を効率的に調整することができる。
無機多孔質体の細孔の直径および細孔容積は、窒素ガス吸着による吸脱着等温線の測定結果から、脱着等温線を用いてBarrett Joyner Halenda法により計測することができる。この方法に用いた比表面積/細孔分布測定装置は市販されており、そのような市販の装置を用いて、無機多孔質体の細孔の直径および細孔容積を測定することができる。
本発明の好ましい態様によれば、無機多孔質体の体積平均粒径は20〜60μmが好ましい。この平均粒径はレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置により測定することができる。これにより、クラックが発生することがなく、表面の凹凸もほとんど無く、良好な外観を得ることができる。
本発明における無機多孔質体は、市販される材料として入手可能であるが、以下のようにして製造することも可能である。
アルミナ−シリカキセロゲル多孔質体の製造方法の一例は以下の通りである。まず、硝酸アルミニウム9水和物とオルト珪酸テトラエチルを所定のSiO/Al比になるようにエタノールに溶解させる。このとき、必要に応じて所定量の水を加えて溶液を調整する。この溶液を3時間攪拌した後、25%アンモニア水を加え、共沈させ、ゲル化させる。こうして得られたゲル化物を急速に乾燥させた後、300℃で4時間焼成して、アルミナ−シリカキセロゲル多孔質体を得る。
活性アルミナの製造方法の一例としては、カオリン鉱物の選択溶解法が挙げられる。この方法にあっては、カオリン鉱物を900〜1200℃で仮焼し、非晶質シリカとスピネル層に相分離させる。仮焼温度はカオリン鉱物の不純物などにもよるが、通常950〜1050℃とするのが好ましく、さらに1〜24時間程度加熱を行うのが好ましい。このように熱処理により得られた相分離物質をアルカリまたはフッ酸で処理することにより、非晶質シリカが選択的に溶解され、その溶解部が細孔として形成される。
その際、アルカリ処理としては1〜5mol/l程度のKOH水溶液を用いることが好ましい。また、50〜150℃程度の加熱条件下で1〜100時間程度保持することにより非晶質シリカを完全に溶解させて、十分な容積の細孔を形成させることができる。
活性アルミナの製造方法の他の一例としては、pHスイング合成法が挙げられる。この方法にあっては、アルミニウムの酸性塩と塩基性塩の水溶液を混合することにより、擬ベーマイトゲルを析出させる。具体的には、この混合は、pH=2、pH=10となるように、アルミニウムの酸性塩と塩基性塩とを交互に添加することにより行うのが好ましい。酸性塩の好ましい例としては、硝酸アルミニウムが挙げられ、塩基性塩の好ましい例としては、アルミン酸ソーダが挙げられる。このようにして生成される擬ベーマイトゲルは、pHスイングを繰り返すことで粒成長し、スイング回数およびスイングpHを制御することにより、擬ベーマイトゲルの析出粒子径を制御することができる。こうして得られる粒子径の制御された擬ベーマイトゲルを加熱焼成することにより、擬ベーマイトがγアルミナ化し、その粒子間隙より細孔が形成された活性アルミナが得られる。すなわち、擬ベーマイトゲルの析出粒子径を制御することで加熱焼成後の活性アルミナの細孔径を制御することができる。
本発明における有機物エマルジョンとしては、−5〜−50℃のガラス転移温度を有する樹脂等の有機物が水またはアルコール等の分散媒に分散されてなる有機物エマルジョンを用いる。これにより、機能性材料の可撓性を向上させることができる。好ましい有機物のガラス転移温度は−30℃以下である。有機物エマルジョンの好ましい例としては、アクリルエマルジョン、アクリルスチレンエマルジョン、アクリルシリコーンエマルジョン、エチレン酢酸ビニルエマルジョン、シリコーンエマルジョン、酢酸ビニルアクリルエマルジョン、酢酸ビニルエマルジョン、酢酸ビニルベオバエマルジョン、ウレタンアクリル複合エマルジョン、シリカ変性アクリル共重合エマルジョン、スチレンアクリルウレタン複合エマルジョン、エチレン酢酸ビニルアクリル複合エマルジョン、酢酸ビニルマレート共重合体水性エマルジョン、エチレン−ビニルエステル系共重合体水性エマルジョン、フッ素エマルジョンなどが挙げられる。
本発明の好ましい態様によれば、有機物エマルジョンの乾燥物重量100重量部に対して無機多孔質体が200〜500重量部配合されているのが好ましい。これにより、優れた吸放湿性能と可撓性とを得ることができる。
本発明の別の好ましい態様によれば、第一層を形成するための混合物中の配合比が、有機物のエマルジョン乾燥物100体積部に対し、無機多孔質体400〜1200体積部であるのが好ましい。これにより、優れた吸放湿性能が得られるとともに、乾燥後の表面にタック感が残りにくく、さらには可撓性にも優れる。したがって、住環境などの空間の相対湿度を快適な約40〜70%に自律的に調整することができ、かつ、可とう性を兼ね備えた機能性部材を、外観良く作製することが可能となる。
また、本発明のより好ましい態様によれば、無機多孔質体の窒素ガス吸着により測定される細孔直径4〜14nmの細孔の容積が0.2ml/g以上であり、かつ細孔直径1〜200nmの全細孔容積が1.3ml/g以下であるのが好ましい。これにより、空間の相対湿度を快適に自律的に調整するのに十分な性能を得ることができるとともに、有機物エマルジョン中の水分が細孔内へ充填されにくくなるため、塗布性が向上する。また、塗布液として好ましい粘性を得るための水分調整を行う場合において多量の水分を必要としないため、第一層を効率よく乾燥させることができ、生産性に優れる。さらに、乾燥時における第一層におけるクラックの発生も防止できる。細孔容積の範囲は1.0mg/l以下であるのが好ましい。
本発明のさらに別の好ましい態様によれば、第一層が非多孔性充填材をさらに含んでなるのが好ましい。本発明において非多孔性充填材とは、全細孔容積が0.05ml/g未満の充填材を意味する。非多孔性充填材の形状は、球状、多面体、薄片状、針状などのいずれであってもよい。非多孔性充填剤は吸水することが無いため、塗布液の水分調整が容易になるとともに、塗膜乾燥時における第一層におけるクラックの発生を抑制する。非多孔性充填材の好ましい例としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、タルク、マイカ、ウォラストナイトなどが挙げられる。
上記非多孔性充填材を用いる態様にあっては、第一層を形成するための混合物中の配合比が、有機物のエマルジョン乾燥物100体積部に対し、無機多孔質体が400〜1100体積部、非多孔性充填剤が50〜500体積部、無機多孔質体と非多孔性充填材の総量が400〜1200体積部であるのがより好ましい。これにより、塗布液の水分調整時に多量の水分を必要としないため、第一層を効率よく乾燥させることができ、生産性に優れる。また、乾燥時における第一層におけるクラックの発生も防止できる。
また、上記非多孔性充填材を用いる態様にあっては、無機多孔質体の窒素ガス吸着により測定される細孔直径4〜14nmの細孔の容積が0.4ml/g以上であり、かつ無機多孔質体の窒素ガス吸着により測定される細孔直径1〜200nmの全細孔容積が1.6ml/g以下であるのが好ましい。これにより、優れた吸放湿性能が得られるとともに、乾燥後の表面にタック感が残りにくく、さらには可撓性にも優れる。したがって、住環境などの空間の相対湿度を快適な約40〜70%に自律的に調整することができ、かつ、可とう性を兼ね備えた機能性部材を、外観良く作製することが可能となる。
本発明の好ましい態様によれば、非多孔性充填材の体積平均粒径が5〜60μmであるようにする。これにより、クラックが発生することがなく、表面の凹凸もほとんど無く、良好な外観を得ることができる。
本発明の好ましい態様によれば、第一層形成のための有機物エマルジョン中の有機物の粒子径が無機多孔質体の粒径よりも小さく、かつ数平均粒径が0.2μm以上であるのが好ましい。これにより、エマルジョン中の有機物が密になり過ぎるのを防止して、無機多孔質体への浸透経路を充分に確保して、吸放湿性を充分に発揮させることができる。好ましい有機物エマルジョンの粒径は1μm以下である。
本発明の好ましい態様によれば、無機多孔質体が略球状の粒子であるのが好ましい。流動性の良い略球状の粒子を用いることにより、膜内での無機多孔質体の充填率が増し、吸放湿性能を向上させることができる。
本発明の好ましい態様によれば、第一層の膜厚が50〜500μmであるのが好ましい。これにより、十分な吸放湿性が発揮されるとともに、単位面積あたりの重量が適度であり、可とう性も施工に適する。また、この範囲であれば、通常のビニルクロスの生産と同様のコンマコーターによる塗布方法を用いることができるので、生産性に優れる。
本発明の好ましい態様によれば、第一層形成のための乾燥前混合物100重量部中に抗菌剤または防カビ剤を0.1〜5重量部配合するようにする。これにより、機能性材料に優れた抗菌性や防カビ性を付与することができる。特に、本発明の機能性部材は吸放湿性に優れるが故に必然的に常に水蒸気を含んだ状態にあり、細菌やカビの発生しやすい材料でもある。このため、機能性部材の第一層に抗菌剤または防カビ剤を配合することが特に有効であると言える。また、抗菌剤および防カビ剤を併用してもよく、あるいは細菌およびカビの双方に有効な薬剤を使用してもよい。
本発明における抗菌剤および防カビ剤は、有機系および無機系のいずれもであってもよい。
有機系の抗菌剤および防カビ剤の例としては、トリアゾール系、アルコール系、フェノール系、アルデヒド系、カルボン酸系、エステル系、エーテル系、ニトリル系、過酸化物・エポキシ系、ハロゲン系、ピリジン・キノリン系、トリアジン系、イソチアゾロン系、イミダゾール・チアゾール系、アニリド系、ビグアナイド系、ジスルフィド系、チオカーバメート系、界面活性剤系、有機金属系の抗菌剤および防カビ剤が挙げられる。
無機系の抗菌剤および防カビ剤の例としては、オゾン系、塩素化合物系、ヨウ素化合物系、過酸化物系、ホウ酸系、イオウ系、カルシウム系、シリコフルオロトナトリウム系、金属イオン系の抗菌剤および防カビ剤が挙げられる。
本発明の好ましい態様によれば、抗菌剤または防カビ剤として、金属イオン系のものを用いるのが好ましい。このような抗菌金属イオンは、次亜塩素酸またはオゾン等と比較して、固形物内に保存固定しやすく、また、そこからイオン溶出速度の制御により必要量だけ取り出せるので、より長期の使用に適している。抗菌性金属イオンの好ましい例としては、銀イオン、銅イオン、亜鉛イオン等が挙げられる。
抗菌性金属イオンを放出する物質としては、乳酸銀、硝酸銀、酢酸銀、硫酸銀、酢酸第一銅、酢酸第二銅、硝酸銅、硫酸第一銅、硫酸第二銅、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛等の溶解性の抗菌性金属元素を含む化合物が挙げられる。特に、銀イオンは細菌類に対する効果に優れており、また、銅イオンは真菌に対する効果が優れているので、両イオンを適宜選択するか、双方併存させて使用するのが好ましい。また、抗菌成分の放出速度の制御等を目的として、無機酸化物等の担体の孔や結晶格子中に、抗菌成分である銀、銅、亜鉛等のイオン、それらの化合物、または金属単体コロイド等を担持させてもよい。そのための担体としては、アパタイト、リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸アルミニウム、チタニア、層状ケイ酸塩、層状アルミノケイ酸塩、ゼオライト等が挙げられる。また、塩素に対し反応性に富む銀イオンをアニオン化したチオスルファト銀錯体により耐塩素性を確保してもよい。
抗菌剤または防カビ剤の他の例としては、動物または植物から得られる天然物由来系が挙げられ、その具体例として、キチン・キトサン、アミノ配糖体化合物、ヒノキチオール、ヨモギエキス、アロエエキス、シソの葉エキス、ドクダミ、甘草、ツバキ科植物抽出物、天然イオウ、カラシ・ワサビ抽出物、竹抽出物等が挙げられる。また、光触媒も使用できる。一例としてアナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、三酸化タングステン、三酸化ビスマス、三酸化鉄、チタン酸ストロンチウム、酸化錫、酸化亜鉛等が挙げられる。それらは球状、鱗片状、繊維状の粉末又はゾル状でも良い。
本発明の好ましい態様によれば、第一層に添加される抗菌剤または防カビ剤が水溶性を有するのが好ましい。これにより、調湿性能を有し、かつ第一層が高含水率の状態であっても多層構造のすべての層にわたって十分な抗菌性または防カビ性を発揮する機能性部材を安価に提供することが可能となる。すなわち、第一層に水溶性抗菌剤または防カビ剤を添加することにより、第一層が水蒸気を吸着して高含水率の状態になっても、吸着した水を媒体として水溶性抗菌剤または防カビ剤が第一層全体に拡散される。その結果、第一層において十分な抗菌性または防カビ性を発揮させることができる。そして、この水溶性抗菌剤または防カビ剤は、第一層以外の他の層にも拡散される。その結果、第一層にのみ抗菌剤または防カビ剤を添加したにもかかわらず、機能性部材のすべての層にわたって十分な抗菌性または防カビ性を発揮させることができる。水溶性防カビ剤は主に有機系のものが好ましく、具体例としては、トリアゾール系、アルコール系、フェノール系、アルデヒド系、カルボン酸系、エステル系、エーテル系、ニトリル系、過酸化物・エポキシ系、ハロゲン系、ピリジン・キノリン系、トリアジン系、イソチアゾロン系、イミダゾール・チアゾール系、アニリド系、ビグアナイド系、ジスルフィド系、チオカーバメート系、界面活性剤系、有機金属系などの水溶性防カビ剤が挙げられる。
第二層
本発明における第二層は、第一層の表面の略全面にわたって、無機充填剤が有機物バインダーによって固定化されてなる層である。この第二層は、水蒸気の透過を阻害することなく、タバコのヤニ等の汚染物の透過をある程度防止することが出来る。また、たとえタバコのヤニ等の汚染物が第二層を透過して第一層に吸着された場合であっても、第二層に所定量含まれる無機充填剤によって隠蔽されるので、第一層に付着した汚れが目立たないようにすることができる。したがって、防汚性および外観が向上する。
この第二層は、第一層の表面の略全面にわたって形成されることにより、機能性部材表面の略全面にわたって防汚性および外観が向上することができる。なお、本発明において、略全面とは、第一層の90%以上を被覆している状態を意味する。
本発明における第二層は、無機充填剤100体積部に対して30〜300体積部である。この範囲内であると、下層に対して十分な密着性が得られるとともに、第一層に付着した汚れの隠蔽性を向上して、外観を向上できる。また、コスト面においても有利である。
本発明の好ましい態様によれば、第二層の膜厚は1〜100μmであるのが好ましい。この範囲内であると、十分な防汚性が得られるとともに、水蒸気の透過の阻害が少なく、吸放湿量への影響も少ない。また、コスト面においても有利である。
本発明の好ましい態様によれば、無機充填剤の粒径が60μm以下であるのが好ましい。この範囲内であると、その粒子間も小さくなるため、防汚効果が良好であるとともに、外観上も表面が滑らかとなる。
本発明の好ましい態様によれば、無機充填剤が酸化チタンおよび炭酸カルシウムのいずれか一方を含むのが好ましい。これらの物質は、隠ぺい性に優れた白色材料であるので、第一層に吸着したヤニ汚れを効果的に隠蔽する。また、第二層を酸化チタンや炭酸カルシウムなどの白色の材料で形成することにより、第二層上に意匠性を付与する際に有利となる。また、第二層に着色顔料を添加して第二層に意匠層としても機能させることもでき、そのようにして意匠付与された第二層の表面にさらに意匠層を形成しても良い。
本発明の好ましい態様においては、有機物のバインダーが有機物エマルジョンの硬化物であるようにする。これにより、工業的に安価な方法で第二層を形成することが出来る。ここで、有機物エマルジョンとは、有機物成分が水中に安定に分散しているものを意味する。
本発明の好ましい態様においては、第二層形成のための有機物エマルジョン中の有機物のガラス転移温度が−10〜30℃であるようにする。ガラス転移温度が−10℃以上であれば、実使用条件、すなわち室温付近においてタック感が出ず、第二層へヤニが付着しにくい。また、ガラス転移温度が30℃以下であれば、第二層が柔軟性をもつので、クラックが入りにくく、可撓性のある基材でも折り曲げ跡が残らない。
本発明において第二層に用いる無機充填剤の好ましい例としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、アルミナ、ジルコニアなどのほか、珪砂、陶石粉砕物などの天然原料などを例示することができ、着色顔料としては、チタンイエロー、スピネルグリーン、亜鉛華、ベンガラ、酸化クロム、コバルトブルー、鉄黒などの金属酸化物系;アルミナホワイト、黄色酸化鉄などの金属水酸化物系、紺青などのフェロシアン化合物系;黄鉛、ジンクロメート、モリブデンレッドなどのクロム酸鉛系;硫化亜鉛、朱、カドミウムイエロー、カドミウムレッドなどの硫化物;セレン化合物系;バライト、沈降性硫酸バリウムなどの硫酸塩系;重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウムなどの炭酸塩系;含水珪酸塩、クレー、群青などの珪酸塩系;カーボンブラックなどの炭素系;アルミニウム粉、ブロンズ粉、亜鉛粉末などの金属粉系;雲母・酸化チタン系などのパール顔料系;フタロシアニン系;アゾ系顔料などが挙げられる。
本発明において第二層に用いる有機物バインダーの例としては、有機物エマルジョン、水溶性樹脂、光硬化性樹脂などが挙げられる。工業的に安価な方法で第二層を形成する観点から、有機物エマルジョンが特に好ましい。
第二層の形成に用いる有機物エマルジョンの好ましい例としては、アクリル、アクリルスチレン、アクリルシリコーン、エチレン酢酸ビニル、シリコーン、酢酸ビニルアクリル、酢酸ビニル、酢酸ビニルベオバ、ウレタンアクリル、スチレンアクリルウレタン複合系、エチレン酢酸ビニルアクリル複合系、酢酸ビニルマレート共重合体、エチレン−ビニルエステル系共重合体、フッ素、フルオロアクリレートなどの乳濁液が挙げられる。
本発明の好ましい態様においては、第二層および/または撥水層は抗菌剤および防カビ剤の少なくともいずれか一方をさらに含んでなることにより、さらに抗菌性能または防カビ性能も発揮することが出来る。第二層および/または撥水層に用いる抗菌剤または防カビ剤は、第一層に用いる抗菌剤または防カビ剤と同様のものを用いることができる。
本発明の好ましい態様においては、第二層が撥水性添加剤をさらに含んでなるのが好ましい。これにより、ヤニ汚れに対する防汚性と吸放湿性能と、液性汚れに対する防汚性も兼ね備えた機能性部材を容易に得ることができる。第二層における撥水性添加剤の好ましい含有量は、無機充填剤100重量部に対し、0.1〜100重量部である。
撥水性添加剤の好ましい例としては、シリコーン系又はフッ素樹脂系が挙げられる。シリコーン系の撥水性添加剤の具体例としては、ポリシロキサン、ポリメチルシロキサン、ポリジメチルシロキサン等の分子内にシロキサン鎖〔−Si(R,R)−O−Si(R,R)−O−(式中、R,Rは、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を表す。)〕、あるいは、シラン鎖〔−Si(R,R)−Si(R,R)−(式中、R,Rは、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を表す。)〕を有する珪素化合物、シリコーン樹脂等が挙げられる。
フッ素樹脂系の撥水性添加剤の具体例としては、原料モノマー中にフッ素原子を含む有機系樹脂が挙げられ、より具体的には、ポリ四フッ化エチレン、四フッ化−パーフロロアルコキシエチレン共重合体(PFA樹脂)、ポリ三フッ化塩化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、フッ化ゴム等のフッ素系樹脂やフッ素系界面活性剤等が挙げられる。これらのうち、撥水性能の点からはフッ素樹脂系添加剤を用いるのが好ましい。
意匠層
本発明の好ましい態様によれば、第二層の表面に意匠層がさらに形成されてなるのが好ましい。本発明において意匠層とは、柄、模様、エンボスなどが施された層であり、材質は限定されない。意匠層の形成は、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの、通常のビニルクロスの生産と同様の方法によって行うことができる。
本発明の好ましい態様によれば、意匠層の形成を発泡印刷により行うのが好ましい。これにより、意匠を付与すると同時に第二層と同様に第一層の汚染防止層としての作用を発揮させることができる。発泡印刷塗料としては、従来より壁紙用印刷塗料として用いられるものを特に制限なく使用することができ、具体的には、樹脂と発泡剤が混合された塗料が挙げられる。
樹脂成分の好ましい例としては、アクリル樹脂、アクリルスチレン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、酢酸ビニルアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルベオバ樹脂、ウレタンアクリル複合樹脂、シリカ変性アクリル共重合樹脂、スチレンアクリルウレタン複合樹脂、エチレン酢酸ビニルアクリル複合樹脂、酢酸ビニルマレート共重合体水性樹脂、エチレン−ビニルエステル系共重合体水性樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
発泡剤としては、従来から使用されている分解ガス発生性発泡剤、膨張性カプセル発泡剤などを用いることができる。分解ガス発生性発泡剤の好ましい例としては、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、パラトルエンスルホニルヒドラジド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等、膨張性カプセル発泡剤としては、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ウレタン等の熱可塑性樹脂を被膜とする微小粒子中にエタン、ブタン、ペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系の揮発性膨張成分が内包されたものが挙げられる。
本発明の好ましい態様によれば、発泡印刷層の第一層に対する面積被覆率が60%以上であるのが好ましい。これにより、汚染防止層としての作用が十分に発揮される。
本発明の好ましい態様によれば、発泡印刷層に脱臭剤が配合されるのが好ましい。これにより、第一層により得られる有害化学物質および生活不快臭などの除去機能をさらに高めることができる。脱臭剤としては、物理的吸着によって消臭する多孔性物質と、臭気物質を化学反応によって無臭化する酸化還元性物質および触媒物質とが挙げられる。物理的吸着によって消臭する多孔性物質の例としては、前述した無機多孔質体の他に、活性炭、添着活性炭、ベントナイト、シリカ−マグネシア等が挙げられる。酸化還元性物質および触媒物質の例としては、マンガン、銅、亜鉛、コバルト、マグネシウム、鉄、ニッケル、および亜鉛から選択される金属を含む、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、有機酸塩、酸化物、水酸化物、フタロシアニン錯体や他のキレート等の金属化合物;白金族金属化合物;鉄−マンガン系、チタン系、シリカ−アルミナ系、金属酸化物系光触媒等の無機系物質;有機系のアミン類;人工酵素;サイクロデキストリンやクラウンエーテル等の抱接化合物;フィトンチット、フラボノイド、タンニン、カテキン、精油等の植物抽出物などが挙げられる。
本発明のより好ましい態様によれば、意匠層の表面に樹脂コロイダルディスパージョンの乾燥物の被覆層がさらに形成されるのが好ましい。これにより、吸放湿性を阻害することなく、汚染防止層を形成することが可能となる。好ましい樹脂コロイダルディスパージョンは粒子径が1〜100nmのものであり、より好ましくは5〜100nmである。粒子径が5nm以上であると、吸放湿性能が阻害されることがほとんどなく、粒子径が100nm以下であるとタバコのヤニなどの汚れが透過しにくくなり、汚染防止層としての作用が得られる。樹脂コロイダルディスパージョンの好ましい例としては、アクリル、アクリルスチレン、アクリルシリコーン、エチレン酢酸ビニル、シリコーン、酢酸ビニルアクリル、酢酸ビニル、酢酸ビニルベオバ、ウレタンアクリル、スチレンアクリルウレタン複合系、エチレン酢酸ビニルアクリル複合系、酢酸ビニルマレート共重合体、エチレン−ビニルエステル系共重合体、フッ素、フルオロアクリレートなどのコロイダルディスパージョンを挙げることができる。
撥水層
本発明の好ましい態様によれば、第二層または意匠層の表面に撥水層がさらに形成されるのが好ましい。本発明において撥水層とは、その表面の水との接触角が90度以上になる層である。これにより、水蒸気の透過性を阻害することなく、水が浸透しにくい表面を形成することができる。従って、コーヒーなどの液性の汚れに対する防汚性が向上する。撥水層の形成は、例えば、オレフィン系、シリコーン系、フッ素系などの撥水性樹脂やワックス等の撥水剤を塗布することにより行うことができる。
本発明の好ましい態様によれば、第二層の表面に意匠層を形成し、その表面にさらに撥水層を形成するのが好ましい。また、本発明のより好ましい態様によれば、撥水処理層は発泡印刷層上に形成されることが好ましい。これにより、発泡印刷層の凹凸と撥水処理による撥水性の相乗効果、すなわち所謂フラクタル効果により特に良好な撥水性が発揮され、液性の汚れに対する防汚性がより顕著に発揮される。
光触媒
本発明の好ましい態様によれば、機能性材料の最表層が光触媒をさらに含んでなるのが好ましい。このような最表層としては、第二層、意匠層、および撥水層が挙げられる。また、本発明の別の好ましい態様によれば、機能性材料の最表層に光触媒が固定されるものであってもよい。これにより、吸着した有害化学物質などの分解機能をも付与することができる。
光触媒の例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、酸化錫、酸化バナジウム、酸化タングステンが挙げられる。酸化チタンが材料自身の安定性、光触媒活性、および入手容易性等からより好ましく、特に好ましくはアナターゼ型酸化チタンである。本発明のより好ましい態様によれば、光触媒に、抗菌防カビ性能の付与や光触媒活性の向上のための金属を担持させるのが好ましい。そのような金属の例としては、金、銀、銅、亜鉛、白金などが挙げられる。
光触媒粒子を撥水層に添加する場合の添加量は、撥水層の固形分100重量部に対し、1〜40重量部とするのが好ましい。
用途
本発明の機能性部材の用途としては、特に限定されず極めて広範囲の用途が考えられるが、好ましい用途としては、壁、床、天井などの建築物内装材、および自動車、電車、船舶、航空機などの乗り物の内装材が挙げられ、より好ましくは建築用壁紙である。
本発明の機能性部材を建築用壁紙として利用する場合には、防火性を確保するために、第一層のための有機物エマルジョンの乾燥重量が100g/m以下であり、第二層のための有機物エマルジョンの乾燥重量が50g/m以下であり、基材を含む総有機物重量が300g/m以下であるのが好ましい。
機能性材料の製造のための方法および塗布液
本発明の機能性材料の製造方法にあっては、第一層を形成するための塗布液として、無機多孔質体と、ガラス転移温度が−5〜−50℃である有機物を含む有機物エマルジョンとを含んでなる混合物を用意する。この塗布液は、非多孔性充填材をさらに含むものであってよい。
次いで、この塗布液を、可撓性を有する基材上に塗布し、乾燥させて、第一層を形成させる。この塗布液の基材への塗布は、例えば、ディッピング法、スピンコート法、スプレー法、印刷法、フローコート法、ロールコート法、これらの併用等により行うことができる。第一層の膜厚の制御は、ディッピング法における引き上げ速度を変化させること、スピンコート法における基板回転速度を変化させること、あるいは塗布液の固形分濃度または粘度を変えること等により行うことができる。
第一層を形成するための塗布液をコンマコーター等で機械塗工する場合には、塗布液に含まれる水の量を、固形分を100重量部に対して20〜80重量部とし、粘度を2000〜8000mPa・sにすることが好ましい。これにより、基材表面に第一層を良好に被覆することができる。
第一層を形成するための塗布液の乾燥硬化方法は、常温乾燥、および強制加熱のいずれにより行ってもよい。強制加熱は、遠赤外線による加熱乾燥、温風加熱による乾燥等により行うことができ、その際の乾燥温度は生産性の面から100℃以上とするのが好ましい。
さらに、第一層の表面の略全面にわたって、無機充填剤および有機物バインダーの混合物を塗布して第二層を形成させる。この混合物は、有機物バインダーの含有量が無機充填剤100体積部に対して30〜300体積部となるように調製される。
第二層を形成するための混合物の塗布は、既知の塗布手段により行うことができるが、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、およびこれらの併用により行うのが好ましい。その際、膜厚は無機充填剤を含む塗布液の固形分濃度や粘度を調整することや、印刷速度の制御により調整することができる。なお、第二層を薄膜に製膜するためにはグラビア印刷法により行うのが好ましい。
第二層を形成するための塗布液の固形分濃度や粘度を調整するための好ましい希釈液としては、水、あるいはイソプロピルアルコール、エタノール等のアルコールが挙げられる。工業的にはアルコール希釈液を用いるのが好ましく、塗工後の乾燥温度をより低く、乾燥時間もより短くできる。
第二層を形成するための塗布液の乾燥硬化は、常温乾燥、および強制加熱のいずれにより行ってもよい。強制加熱は、遠赤外線による加熱乾燥、温風加熱による乾燥等により行うことができ、その際の加熱温度は生産性の面から100℃以上とするのが好ましい。
本発明の好ましい態様によれば、第二層の表面には意匠層あるいは撥水層形成のための塗布液をさらに塗布して乾燥させるのが好ましい。意匠層あるいは撥水層の形成は、既知の塗布手段により行うことができるが、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、これらの併用等により行うのが好ましい。撥水層の乾燥硬化は、常温乾燥および強制加熱のいずれにより行ってもよいが、生産性の面から強制加熱により行うのが好ましい。強制加熱は、遠赤外線による加熱乾燥、温風加熱による乾燥等により行うことができ、その際の加熱温度は生産性の面から100℃以上とするのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の機能性材料の層構造の一例を示す図であり、実施例A1で作製されたサンプルに対応する。この機能性材料は、基材1上に第一層2が形成され、第一層2上に第二層3がさらに形成されてなる。
図2は、実施例A1〜A3およびA7、ならびに比較例A1およびA3〜A5で作製されたサンプルの吸放湿性能の評価結果を示す図である。
図3は、実施例A2で作製された機能性材料の層構造を示す図であり、この機能性材料は、基材1上に第一層2および第二層3が形成され、第二層3上に撥水層4がさらに形成されてなる。
図4は、実施例A3で作製された機能性材料の層構造を示す図であり、この機能性材料は、基材1上に第一層2および第二層3が形成され、第二層3上に意匠層5および撥水層4がさらに形成されてなる。
図5は、実施例A4で作製された機能性材料の層構造を示す図であり、この機能性材料は、基材1上に第一層2および第二層3が形成され、第二層3中に抗菌剤6が添加されてなる。
図6は、実施例A5で作製された機能性材料の層構造を示す図であり、この機能性材料は、基材1上に第一層2および第二層3が形成され、第二層3中に防カビ剤7が添加されてなる。
図7は、実施例A6で作製された機能性材料の層構造を示す図であり、この機能性材料は、基材1上に第一層2および第二層3が形成され、第二層3上に撥水層4がさらに形成されてなり、撥水層4中に光触媒8が添加されてなる。
図8は、実施例A7で作製された機能性材料の層構造を示す図であり、この機能性材料は、基材1上に第一層2および第二層3が形成され、第二層3中に撥水性添加剤9が添加されてなる。
図9は、実施例A8で作製された機能性材料の層構造を示す図であり、この機能性材料は、基材1上に第一層2が形成され、第一層2上に着色された第二層10がさらに形成されてなる。
図10は、実施例A9で作製された機能性材料の層構造を示す図であり、この機能性材料は、基材1上に第一層2および着色された第二層10が形成され、着色された第二層10上に意匠層5および撥水層4がさらに形成されてなる。
図11は、比較例A1で作製された材料の層構造を示す図であり、この材料は、基材1上に第一層2が形成されてなる。
図12は、比較例A2で作製された材料の層構造を示す図であり、この材料は、基材1上に第一層2が形成され、第一層2上に撥水層4がさらに形成されてなる。
図13は、比較例A3で作製された材料の層構造を示す図であり、この材料は、基材1上に第一層2が形成され、第一層2上にラミネートフィルム11がさらに形成されてなる。
図14は、比較例A4で作製された材料の層構造を示す図であり、この材料は、基材1上に第一層2が形成され、第一層2上にウレタン樹脂12がさらに形成されてなる。
【実施例】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例および比較例において、原料の物性値の測定方法は以下の通りとした。
測定1:無機多孔質体の細孔径および細孔容積の測定
試料約0.2gについて、比表面積/細孔分布測定装置(ASAP2000、マイクロメリティックス社製)を用いて、細孔径および細孔容積の測定を行った。この測定装置には、各試料の窒素ガス吸脱着等温線を測定し、Barrett Joyner Halenda法により、脱着側の等温線を用いて細孔径および細孔容積を計測するものである。なお、測定に先立ち、装置内を110℃で10−3Torr未満になるまで加熱および脱気することにより、水蒸気等の吸着成分を除去した。
測定2:無機多孔質体および無機充填剤の平均粒径の測定
レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(レーザーマイクロンサイザーLMS−30、セイシン企業製)を用いて、体積平均粒径の測定を行った。
測定3:無機多孔質体、非多孔性充填材、および無機粒状物の嵩密度の測定:
タップ密度測定器(タップデンサーKYT−4000、セイシン企業製)を用いて、嵩密度の測定を行った。
測定4:有機物エマルジョンの平均粒径の測定
レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(レーザーマイクロンサイザーLMS−30、セイシン企業製)を用いて、数平均粒径の測定を行った。
測定5:樹脂コロイダルディスパージョンの平均粒径の測定
動的光散乱法による日機装(株)のマイクロトラップUPA150を用いて、数平均粒径の測定を行った。
測定6:有機物エマルジョンおよび樹脂コロイダルディスパージョンのガラス転移温度の算出
実施例において用いた有機物エマルジョン中に分散される有機物、あるいは実施例において用いた樹脂コロイダルディスパージョン中に分散される樹脂が共重合体の場合には、有機物および樹脂のガラス転移温度Tgを、ホモポリマーのガラス転移温度を用いて、次式に従って算出した。

(式中、Tg:共重合体のTg(K)
Tgi:共重合モノマーのホモポリマーのTg(K)
Wi:共重合モノマーの重量分率)
なお、共重合モノマーのホモポリマーのTg、すなわちTgiとしては、日本エマルジョン工業会による基準を用いた。
測定7:有機物エマルジョンの乾燥物の嵩密度の測定
有機物エマルジョン分散液を乾燥させ、その乾燥物をアルキメデス法により、嵩密度を測定した。その際、溶媒は灯油を用い、再溶解しないように測定した。
以下の実施例および比較例において、作製された機能性材料サンプルの評価試験方法は以下の通りとした。
試験1:タバコのヤニ付着促進試験
容積3600cmの下部のみが開放した箱を用意した。この箱の側面にサンプル(5×5cm)を貼り付けた。箱の下部よりタバコの煙を入れて、30分間、サンプルにヤニを付着させ、ヤニ付着前後の汚染状態を色差計(ND−300A、日本電色工業(株)製)を用いて測定した。タバコとしては、JT製マイルドセブン5本(タール12mg/本、ニコチン0.9mg/本)を用いた。
試験2:吸放湿特性の測定方法
まず、測定サンプルを23℃、33%R.H.の恒温恒湿槽中で平衡にさせた。次に、サンプルを23℃、93%R.H.の恒温恒湿槽に入れて、吸湿量を24時間にわたって測定した。そして、23℃、33%R.H.の恒温恒湿槽中に再度入れて放湿量を測定した。
試験3:耐汚染性評価試験
サンプル表面(第二層を形成した面)に、汚染性物質を滴下し、24時間経過後にJKワイパー(150−S、株式会社クレシア製)にて拭き取り試験を行った。評価基準は以下の通りとした。
汚染性物質は、コーヒー、醤油、水性青インクを用いた。
◎:水拭きにより汚れの痕跡がなくなった。
○:水拭きでは汚れが落ちないが、合成洗剤原液を含ませて丁寧に拭き取った後さらに水で拭き取り、乾拭きで汚れの痕跡がなくなった。
×:合成洗剤原液を含ませて丁寧に拭き取った後さらに水で拭き取り、乾拭きしても、なお汚れの痕跡が残った。
試験4:抗菌性の評価
JIS Z 2801(2000年)に規定されるフィルム密着法に従って抗菌評価を行った。使用する菌株はJIS Z 2801(2000年)に従い、グラム陽性菌として黄色ブドウ球菌を、グラム陰性菌として大腸菌を用いた。結果の判定方法もすべてJIS Z 2801に準拠し、抗菌活性値2.0以上を抗菌性ありとして判定した。
試験5:防カビ性の評価
日本健康住宅協会が定める防カビ試験方法のうち、栄養付加湿式法に準拠して試験を行った。菌株としては、Aspergillus nigerを用いた。結果の判定方法も、すべて日本健康住宅協会が定める防カビ試験方法に準拠して行った。具体的には、評価基準は、以下の通りとした。
5:菌糸の発育なく、40倍顕微鏡下でも発育は認められない。
4:肉眼では菌糸の発育なく、40倍顕微鏡下ではわずかな菌糸の発育が認められる。
3:肉眼で間欠的に発育が認められ、40倍の顕微鏡下では、菌糸の発育が顕著に認められる。
2:肉眼で明白にカビの集落発生が全試験片面の1/2に認められる。
1:肉眼で明白にカビの発育が認められ、全試験片面にカビの発育が拡大している。
試験6:可撓性の評価
サンプルを180度折り曲げ、曲げ部分の外観を目視で評価した。評価基準は以下の通りとした。
○:ひび割れなし
△:一部ひび割れあり
×:全面にひび割れあり
試験7:防火性の評価
建築基準法に規定されるコーンカロリーメーター試験を行った。結果の判定も建築基準法に従い、8MJ/m以下を合格とした。
試験8:製膜状態の外観評価
第一層の製膜状態を目視で評価した。評価基準は以下の通りとした。
○:良好
△:やや劣る
×:不良
試験9:接触角の測定方法
サンプル表面に蒸留水10μl滴下した時の接触角を、接触角測定機(CA−X型、協和界面化学(株)製)を用いて測定した。
実施例A1
基材として、裏打紙、フィルム、および不織布の3層構造からなる壁紙用原紙を用意した。壁紙用原紙の重量は111g/mであった。無機多孔質体として、活性アルミナを用意した。この活性アルミナについて、測定1および2を行った。その結果、細孔直径は4〜14nmの細孔容積は0.41ml/g、全細孔容積は0.50ml/g、平均粒子径は30μmであった。有機物のエマルジョンとして、アクリルエマルジョンを用意した。このエマルジョンについて、測定4および6を行った。その結果、ガラス転移温度は−43℃、平均粒径は0.25μm、有効成分は60%であった。
表1に示される配合に基づいて原料を混練機に投入し、混練して、塗布液を得た。この塗布液をコンマコーターを用いて、乾燥後の第一層の厚みが350μmとなるように基材上に塗布し、150℃で乾燥させて第一層を形成した。乾燥後の有機物重量は80g/mであった。

表2の配合に基づいて塗布液を調製した。この塗布液を第一層上に、乾燥後の第二層の厚みが10μmとなるように、スクリーン印刷により塗布した。続いて、150℃で乾燥して、図1に示される層構造を有するサンプルを得た。乾燥後の有機物重量は10g/mであった。無機充填剤としては酸化チタンと炭酸カルシウムを用いた。酸化チタンの平均粒子径5μm、炭酸カルシウムの平均粒子径3μmであった。有機物バインダーとしては、エチレン酢酸ビニルの有機物エマルジョンを用いた。この有機物エマルジョンの有機物のガラス転移温度は0℃であった。

実施例A2
表3の配合に基づいて塗布液を調製した。撥水性添加剤としては、ザ・インテック(株)製フルオロアクリレート系撥水性添加剤オーデKCRDOPニス[有効成分15wt%]を、イソプロピルアルコールおよび水からなるザ・インテック(株)製オーデKS溶剤で希釈したものを用いた。この塗布液を実施例A1で得られたサンプルの第二層上に、乾燥後の第二層の厚みが0.2μmとなるように、グラビア印刷により塗布した。続いて、150℃で乾燥して、撥水層がさらに形成された図3に示されるサンプルを得た。

実施例A3
実施例A1で得られたサンプルの第二層上にグラビア印刷法により絵柄を印刷し、意匠層を作製した。この意匠層上に、実施例A2と同様にして、撥水層を形成して図4に示されるサンプルを得た。
実施例A4
第二層を形成するための塗布液68.6重量部にゼオライトに銀が担持された市販の抗菌剤を3重量部添加したこと以外は実施例1と同様にして、図5に示されるサンプルを作製した。
実施例A5
第二層を形成するための塗布液68.6重量部に市販のトリアゾール系防カビ剤を0.5重量部添加したこと以外は、実施例A1と同様にして図6に示されるサンプルを作製した。
実施例A6
撥水層を形成するための塗布液130重量部に市販の光触媒酸化チタン粉末を5重量部添加したこと以外は、実施例A2と同様にして図7に示されるサンプルを作製した。
実施例A7
第二層を形成するための塗布液68.6重量部にフッ素樹脂系撥水性添加剤を5重量部添加したこと以外は、実施例A1と同様にして図8に示されるサンプルを作製した。
実施例A8
第二層を形成するための塗布液68.6重量部に着色顔料としてフタロシアニンブルーを1重量部添加したこと以外は、実施例A1と同様にして図9に示されるサンプルを作製した。
実施例A9
実施例A8で得られたサンプルの第二層上にグラビア印刷法により絵柄を印刷し、意匠層を作製した。この意匠層上に、実施例A2と同様にして撥水層を形成して図10に示されるサンプルを得た。
比較例A1
第二層を形成しなかったこと以外は実施例A1と同様にして、第一層のみが形成された図11に示されるサンプルを作製した。
比較例A2
比較例A1で得られたサンプルの第一層上に、実施例A2と同様にして撥水層を形成して図12に示されるサンプルを得た。
比較例A3
第二層を形成しなかったこと以外は実施例A1と同様にして、第一層のみが形成されたサンプルを作製した。この第一層上に、透湿・防水性フィルムを熱ラミネートして図13に示されるサンプルを作製した。透湿・防水性フィルムとしては、ポリエチレン系多孔質フィルム(トクヤマ(株)製、商品名ポーラムPUH35,厚み35μm,最大細孔径1.1μm)を用いた。
比較例A4
第二層を形成しなかったこと以外は実施例A1と同様にして、第一層のみが形成されたサンプルを作製した。この第一層上に、水性ウレタン樹脂を、乾燥後の厚みが5μmとなるようにグラビア印刷法により塗布し、乾燥して図14に示されるサンプルを得た。水性ウレタン樹脂としては、大日精化工業(株)製商品名ダイプラコートAQW用表面処理剤を用いた。
比較例A5
市販のビニルクロスをサンプルとして用いた。
得られた実施例A1〜A9および比較例A1〜A5の各サンプルについて、試験1〜7を行った。その結果は以下に示される通りであった。

試験1:表4に示されるように、第一層および第二層を有する実施例A1〜A9のサンプルは、第二層を有しない比較例A1およびA2のサンプルと比較して、優れたタバコのヤニ防汚性が得られることが分かる。
試験2:表4に示されるように、実施例A1〜A9のサンプルは、第二層を有しない比較例A1のサンプルと比較して、吸放湿特性はほとんど低下していないことが分かる。また、図1に示されるように、吸放湿速度もほとんど低下していないことが分かる。
また、第二層に抗菌剤または防カビ剤を配合した実施例A4および実施例A5においても、抗菌剤または防カビ剤の添加にもかかわらず、ヤニ防汚性および吸放湿性能ともに良好であった。また、第二層と撥水層の間に意匠層を形成した実施例A3、第二層に着色顔料を添加した実施例A8、実施例A8のサンプルにさらに意匠層と撥水層を形成した実施例A9においても、ヤニ防汚性および吸放湿性能ともに良好であった。
透湿防水性フィルムが積層された比較例A3のサンプル、ウレタン樹脂を用いた比較例A4のサンプルでは、ヤニ防汚性はある程度発揮されているものの、実施例と比べて効果が小さく、また吸放湿性能も低下している。また、図1から明らかなように、吸放湿速度の低下が著しい。
試験3:表4に示されるように、第二層上に撥水層を形成した実施例A2およびA6、第二層上に意匠層および撥水層を形成した実施例A3およびA9、ならびに第二層に撥水性添加剤を配合した実施例A7にあっては、コーヒーなどの液性の汚れに対する防汚性にも優れることが分かる。
試験4:表5に抗菌性能の評価結果を示す。

表5から明らかなように、抗菌剤を配合した実施例A4のサンプルは、黄色ブドウ球菌、大腸菌のいずれに対しても、抗菌活性値が2.0を大きく上回り、良好な抗菌性が確認された。一方、抗菌剤を配合していない比較例A1、および比較例A5の市販ビニルクロスでは抗菌性は認められなかった。
試験5:表6に防カビ性能の評価結果を示す。

表6から明らかなように、防カビ剤を配合した実施例A5のサンプルにあっては、40倍の顕微鏡下でも菌糸の発育は認められず、良好な防カビ性能が確認された。一方、防カビ剤を配合していない比較例A1、および比較例A5の市販ビニルクロスにあっては、防カビ性能は認められなかった。
試験6:可撓性の評価
実施例A1〜A9のサンプルの評価結果はすべて「○(ひび割れなし)」であった。
試験7:防火性の評価
実施例A1〜A9のサンプルはすべて総発熱量8MJ/m以下であり、結果はすべて「合格」であった。
実施例B1
基材として、裏打紙、フィルム、不織布の3層構造からなる壁紙用原紙を用意した。壁紙用原紙の重量は111g/mであった。水溶性防カビ剤として市販のトリアゾール系防カビ剤を用意した。無機多孔質体として、市販の活性アルミナを用意した。この活性アルミナについて、測定1および2を行った。その結果、4〜14nmの細孔容積は0.41ml/g、全細孔容積は0.50ml/g、平均粒子径は30μmであった。有機物エマルジョンとして、市販のアクリルエマルジョンを用意した。このエマルジョンについて、、測定4および6を行った。その結果、ガラス転移温度は−43℃、平均粒径は0.25μm、有効成分は60%であった。
表7に示される配合に基づいて原料を混練機に投入し、混練して、塗布液を得た。この塗布液をコンマコーターを用いて、乾燥後の厚みが350μmとなるように製膜し、150℃で乾燥させて第一層を形成した。

表8の配合に基づいて塗布液を調製した。この塗布液を第一層上に、スクリーン印刷により塗布して、第二層を形成した。

次いで、表9の配合に基づいて発泡印刷塗料を調製した。この塗料をスクリーン印刷により塗布した後、150℃にて加熱して塗料を発泡させて、第二層上に意匠層がさらに形成された機能性壁紙を得た。

得られた実施例B1のサンプルについて、試験1、2、5、および6を行った。その結果は以下の通りであった。
試験1:タバコ汚れ試験の結果は、色差ΔE*が8.4であった。
試験2:吸湿性は101g/m、放湿性は100g/mであった。
試験5:防カビ性の評価は「5」であった。
試験6:可撓性の評価は「○(ひび割れなし)」であった。
比較例B1
実施例B1の水溶性防カビ剤のかわりに、酸化チタンに銅が固定化された市販の水難溶性防カビ剤を用いたこと、および第二層の形成を行わなかったこと以外は、実施例B1と同様にして第一層を形成した。
得られた比較例B1のサンプルについて、試験1、2、5、および6を行った。その結果は以下の通りであった。
試験1:タバコ汚れ試験の結果は、色差ΔE*が15.8であった。
試験2:吸湿性は100g/m、放湿性は99g/mであった。
試験5:防カビ性の評価は「1」であった。
試験6:可撓性の評価は「○(ひび割れなし)」であった。
実施例C1
可撓性を有する基材として、裏打紙、ラミネートフィルム、不織布の3層構造からなる壁紙原紙を用意した。無機多孔質体として、市販の活性アルミナを用意した。この活性アルミナについて、測定1〜3を行った。その結果、無機多孔質体の細孔直径4〜14nmの細孔容積0.46ml/g、全細孔容積0.50ml/g、嵩密度680g/L、平均粒径30μmであった。有機物エマルジョンは、市販のアクリルエマルジョンを用いた。このエマルジョンについて、測定4および6を行った。その結果、ガラス転移温度は−43℃、有効成分は60%、乾燥物の嵩密度1200g/L、平均粒径0.2μmであった。
表10の配合に基づいて原料を混練機に投入し、混練して、塗布液を得た。この塗布液をコンマコーターを用いて、乾燥後の膜厚が300μmとなるように基材上に塗布し、第一層を形成した。

無機粒状物として、酸化チタンと炭酸カルシウムを用意した。この無機粒状物について測定2を行ったところ、酸化チタンの平均粒子径5μm、炭酸カルシウムの平均粒子径3μmであった。有機物バインダーとして、有機物エマルジョン(エチレン酢酸ビニル)を用意した。この有機物エマルジョンについて測定6を行ったところ、ガラス転移温度は0℃であった。次いで、表11の配合に基づいて塗布液を調製した。この塗布液を第一層上に、乾燥後の第二層の厚みが10μmとなるように、スクリーン印刷により塗布した。続いて、150℃で乾燥して、第一層上に第二層が形成された機能性部材を得た。

実施例C2
実施例C1と同様にして、第一層上に第二層が形成された機能性部材を作製した。次いで、表12の配合に基づき、発泡印刷塗料を調製した。この塗料をスクリーン印刷により塗布した後、150℃で加熱して塗料を発泡させて、第二層上に意匠層がさらに形成された機能性部材を得た。

実施例C3
実施例C2と同様にして、第一層上に第二層および意匠層が形成された機能性部材を作製した。次いで、表13の配合に基づき、撥水処理剤を調製した。この撥水処理剤をグラビア印刷により塗布して、意匠層上に撥水処理層がさらに形成された機能性部材を得た。

得られた実施例C1〜C3のサンプルについて、試験1〜3、6、8、および9を行った。その結果は下記表に示される通りであった。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する基材と、
該基材上に形成された、無機多孔質体と有機物エマルジョンとを含む混合物の乾燥物からなる第一層と、
第一層の表面の略全面にわたって、無機充填剤が有機物バインダーによって固定化された第二層と
を有する機能性部材であって、
前記有機物エマルジョンの有機物のガラス転移温度が−5〜−50℃であり、かつ、前記第二層における有機物バインダーの含有量が無機充填剤100体積部に対して30〜300体積部である、機能性部材。
【請求項2】
前記第二層の膜厚が1〜100μmである、請求項1に記載の機能性部材。
【請求項3】
前記無機充填剤の粒径が60μm以下である、請求項1または2に記載の機能性部材。
【請求項4】
前記無機充填剤が酸化チタンおよび炭酸カルシウムの少なくともいずれか一方を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の機能性部材。
【請求項5】
前記有機物バインダーが有機物エマルジョンの硬化物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の機能性部材。
【請求項6】
前記第二層のための前記有機物エマルジョン中の有機物のガラス転移温度が−10〜30℃である、請求項5に記載の機能性部材。
【請求項7】
前記第二層の表面に意匠層がさらに形成されてなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の機能性部材。
【請求項8】
前記第二層の表面または前記意匠層の表面に撥水層がさらに形成されてなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の機能性部材。
【請求項9】
前記第二層が抗菌剤および防カビ剤の少なくともいずれか一方をさらに含んでなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の機能性部材。
【請求項10】
前記撥水層が抗菌剤および防カビ剤の少なくともいずれか一方をさらに含んでなる、請求項8または9に記載の機能性部材。
【請求項11】
前記第二層が光触媒をさらに含んでなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の機能性部材。
【請求項12】
前記撥水層が光触媒をさらに含んでなる、請求項8〜11のいずれか一項に記載の機能性部材。
【請求項13】
前記第二層が撥水性添加剤をさらに含んでなる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の機能性部材。
【請求項14】
前記無機多孔質体の窒素ガス吸着により測定される細孔直径4〜14nmの細孔の容積が0.1ml/g以上であり、かつ前記無機多孔質体の窒素ガス吸着により測定される細孔直径1〜200nmの全細孔容積が1.5ml/g以下である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の機能性部材。
【請求項15】
前記第一層が、有機物エマルジョンの乾燥物重量100重量部に対して、200〜500重量部の無機多孔質体を含んでなる、請求項1〜14に記載の機能性部材。
【請求項16】
前記第一層のための前記有機物エマルジョンの乾燥重量が100g/m以下であり、前記第二層のための前記有機物エマルジョンの乾燥重量が50g/m以下であり、基材を含む総有機物重量が300g/m以下である、請求項5〜15のいずれか一項に記載の機能性部材。
【請求項17】
前記第一層が水溶性防カビ剤をさらに含んでなる、請求項1〜16のいずれか一項に記載の機能性部材。
【請求項18】
前記第一層が、有機物エマルジョンの乾燥物100体積部に対し、400〜1200体積部の無機多孔質体を含んでなる、請求項1〜17のいずれか一項に記載の機能性部材。
【請求項19】
前記無機多孔質体の窒素ガス吸着により測定される細孔直径4〜14nmの細孔の容積が0.2ml/g以上であり、かつ細孔直径1〜200nmの全細孔容積が1.3ml/g以下である、請求項18に記載の機能性部材。
【請求項20】
前記第一層が非多孔性充填材をさらに含んでなる、請求項1〜17のいずれか一項に記載の機能性部材。
【請求項21】
前記第一層が、有機物エマルジョンの乾燥物100体積部に対し、400〜1100体積部の無機多孔質体、および50〜500体積部の非多孔性充填剤を含んでなり、無機多孔質体および非多孔性充填材の総量が400〜1200体積部である、請求項20に記載の機能性部材。
【請求項22】
前記無機多孔質体の窒素ガス吸着により測定される細孔直径4〜14nmの細孔の容積が0.4ml/g以上であり、かつ前記無機多孔質体の窒素ガス吸着により測定される細孔直径1〜200nmの全細孔容積が1.6ml/g以下である、請求項20または21に記載の機能性部材。
【請求項23】
前記意匠層の表面に樹脂コロイダルディスパージョンの乾燥物の被覆層が形成されている、請求項7〜22のいずれか一項に記載の機能性部材。
【請求項24】
最表層に光触媒が固定されている、請求項1〜23のいずれか一項に記載の機能性部材。
【請求項25】
前記基材が、紙、合成樹脂シート、織布、不織布、ガラス繊維シート、金属繊維、難燃裏打紙、壁紙用基材紙、およびこれらの複合または積層材料からなる群から選択される、請求項1〜24のいずれか一項に記載の機能性部材。
【請求項26】
請求項1〜25に記載の機能性部材の第一層を形成するための塗布液であって、無機多孔質体と、有機物エマルジョンとを含んでなり、
前記有機物エマルジョンの有機物のガラス転移温度が−5〜−50℃である、塗布液。
【請求項27】
非多孔性充填材をさらに含んでなる、請求項26に記載の塗布液。
【請求項28】
請求項1〜25のいずれか一項に記載の機能性部材を製造する方法であって、
可撓性を有する基材を用意し、
該基材上に、請求項25または26に記載の塗布液を塗布し、乾燥させて、第一層を形成し、
該第一層の表面の略全面にわたって、無機充填剤および有機物バインダーの混合物を塗布して第二層を形成させることを含んでなり、
前記第二層における有機物バインダーの含有量が無機充填剤100体積部に対して30〜300体積部である、方法。

【国際公開番号】WO2004/085151
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【発行日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504111(P2005−504111)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004246
【国際出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】