説明

機能性酸化物多孔質層及びその製造方法

【課題】 低温焼成によって作製することができ、かつ、機能性層としての性能と、硬度および支持体への密着性とを両立させることが可能な機能性酸化物多孔質層、及び、空孔率を制御するのも容易な、その製造方法を提供すること。
【解決手段】 酸化物微粒子2と第1の化合物と第2の化合物を含有する塗液を形成する。第1の化合物は、加水分解して酸化物を生じる化合物であり、第2の化合物は、第1の化合物より加水分解しにくく、加水分解すると第1の酸化物より硬度の高い第2の酸化物を生じる化合物である。塗液の層を支持体5に被着させ、有機溶媒を蒸発させた後、焼成して、酸化物微粒子2間、および酸化物微粒子2と支持体5との間が第1の酸化物層3によって結着され、その結着が、硬度の高い第2の酸化物層4によって補強されている機能性酸化物多孔質層1を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電層や光触媒層などの機能性酸化物多孔質層及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、金属酸化物などを主成分とする薄層(以下、金属酸化物層と略記する。)を機能性材料として用いる研究・開発が盛んに行われている。金属酸化物層は、光機能性材料、電子機能性材料、および化学生体機能材料などとして用いることができ、透明導電層、光メモリ、電解質材料、および触媒材料などへの応用が報告されている。
【0003】
例えば、金属酸化物からなる透明導電層は、液晶表示装置やタッチパネルなど、光の出入りを伴うエレクトロニクス装置の透明電極や、塵埃の付着を嫌う光透過性部材(クリーンルームのパーティションなど)の静電気除去膜などとして用いられている。従来、透明導電膜の材料としては、主として、インジウム・スズ複合酸化物(ITO)や、フッ素がドープされたスズ酸化物(FTO)などが用いられてきた。とりわけ、ITOは可視光透過率および電気伝導度が高いことから、液晶ディスプレイなどの画像表示装置、タッチパネル、太陽電池、および光センサなどの透明導電層として広く用いられている。しかし、インジウムは資源量が少なく、将来、資源が不足するおそれがあることなどから、資源量が豊富で安価な酸化亜鉛層などでITO層を代替しようとする研究・開発も行われている。
【0004】
さて、ITO層や酸化亜鉛層などの金属酸化物層を支持体上に形成する方法としては、乾式法と湿式法とがある。乾式法では、真空蒸着法やスパッタリング法などによって金属酸化物材料などを支持体上に成膜する。これらの方法では、高品位の金属酸化物膜が得られるが、その製造には高価な真空装置などが必要であり、また、バッチ式の製造方法になるため、生産性が低くなる。これらの結果、製造コストが高くなる。また、支持体が高温に曝されるため、支持体の材料が耐熱性の高いガラス等に限定され、ガラス転移温度が低い有機樹脂に成膜することが難しい。また、高品位の成膜を行うには支持体の温度を比較的高く保つことが必要であるので、有機樹脂に比較的低い温度で成膜したとしても、導電層としての十分な性能が得られない。
【0005】
一方、湿式法には、金属微粒子または金属酸化物微粒子を有機溶媒中に分散させた塗液を塗布する方法や、金属アルコキシドの加水分解生成物からなるゾルを塗布するゾル・ゲル法などがある。湿式法では、真空装置などの高価な装置を用いずに、連続的に生産性よく金属酸化物層を形成することができるが、導電性など、金属酸化物層の性能は、乾式法で得られる金属酸化物層に劣ることが多い。例えば、金属微粒子または金属酸化物微粒子からなる層を形成する場合、塗液の層から溶媒を蒸発させるだけでは微粒子同士のつながりが十分ではない。従って、通常、所望の導電性を得るには、微粒子層を250℃以上の高温に加熱して、微粒子同士を融着させる加熱処理工程が必要である。また、ゾル・ゲル法でも、通常、所望の導電性を得るには、ゲル層を300℃以上の高温に加熱して結晶化させる加熱処理工程が必要である。このような加熱処理工程によって、生産工程に置けるエネルギー消費が増加することや、支持体の材料が耐熱性のある材料に限定され、有機樹脂フィルムなどを支持体として用いることができないことなどの問題が生じる。
【0006】
また、これらの方法では多孔性の酸化物層を形成することができない。例えば、光触媒層などとして用いる場合には、酸化物層が多孔性であることが望ましい。多孔質層では、外側表面の面積(投影面積)に比べて、多孔質層内部の空孔に面する構成微粒子の表面の面積が数倍〜数千倍の大きさに達する。従って、多孔質層における反応の進行は、主として、多孔質層内部の空孔に面する表面において行われる。なお、本明細書では、多孔質層内部の空孔に面する表面も含めて、多孔質層を構成する微粒子の全表面積を実表面積と呼んで、多孔質層の投影面積と区別する。
【0007】
そこで、低温で多孔性の酸化物層を形成する方法として、後述の特許文献1に、金属アルコキシドまたは金属塩から得られる金属酸化物ゾルを支持体上に塗布して金属酸化物ゲル薄膜を形成した後、該薄膜にプラズマ処理を行うことを特徴とする、金属酸化物含有皮膜およびその製造方法が提案されている。また、金属アルコキシドまたは金属塩、および有機化合物を混合して得られる金属酸化物ゾルを支持体上に塗布して、有機化合物を含有する金属酸化物ゲル薄膜を形成した後、該薄膜にプラズマ処理を行うことを特徴とする、金属酸化物含有皮膜およびその製造方法が提案されている。該有機化合物は、大気圧下での沸点が200℃以上の有機化合物を用いるのがよく、例えば、有機ポリマーを用いるのがよいとされている。特許文献1には、下記のように説明されている。
【0008】
従来、グロー放電(プラズマ)処理は、基材表面に親水性を付与させるなど、表面を改質する手段として知られてきた。しかし、発明者は、上記金属酸化物ゾルを基材上に塗布し、ゲル化させ、溶媒を蒸発させた後に、プラズマ処理すると、プラズマ処理が表面の改質だけでなく、膜中あるいは材料中の構造にも影響を及ぼすことを、発見した。すなわち、プラズマ処理時間が長くなるほど、膜の強度や屈折率が上昇し、プラズマ処理によって金属−酸素−金属結合による3次元架橋が形成されていることを確認した。しかも、プラズマ処理の過程において、基材の温度が低温に保たれていることを確認した。従って、この金属酸化物含有皮膜の製造方法は、耐熱性が低い基材に対しても適用できる。
【0009】
金属酸化物ゲルに添加する有機化合物は、金属酸化物との膜を形成できるものであれば使用可能であるが、大気圧下で沸点が200℃以上の化合物が好ましい。大気圧下での沸点が200℃未満の有機化合物では、金属酸化物のマトリックスができあがる前に揮発してしまい、十分な効果を得ることができない。
【0010】
これらの有機化合物のあるものは、その性質により、3次元架橋された金属酸化物のネットワーク中に、独立した有機相として分散した状態で存在し、プラズマ処理後の金属酸化物膜の構造や性質に影響を与える場合がある。例えば、チタン、ジルコニウム、インジウム、およびスズなどのアルコキシドを用いた場合には、ゲル薄膜は、プラズマ処理過程で有機化合物のほとんどを排除してしまい、有機化合物の痕跡は残らず、稠密で均一な金属酸化物膜が形成される。一方、ケイ素のアルコキシドを用いた場合には、シロキサンのマトリクスが特に強固な3次元架橋構造のゲルを作りやすいためと思われるが、プラズマ処理過程で有機物がゲル薄膜から抜け出ていった後も、有機相が占めていた領域が空孔として残り、多孔性の膜が形成されやすい。この性質は、多孔性シリカ層による低屈折率層の形成に利用することができる。
【0011】
また、後述の特許文献2には、金属酸化物微粒子と、該金属酸化物微粒子を接着するための金属アルコキシドとを混練してペーストとなし、該ペーストを導電性基板に塗布し、上記金属アルコキシドを加水分解することにより、上記導電性基板の表面に上記金属酸化物微粒子の多孔質膜を形成し、次いで、酸素雰囲気中において紫外線照射を行い、オゾンを発生させる、いわゆるUVオゾン処理を行い、次いで、該多孔質膜に増感色素を吸着させることを特徴とする色素増感型太陽電池の製造方法が提案されている。
【0012】
図9は、特許文献2に示されている金属酸化物多孔質層の作製工程を示すフロー図である。特許文献2には下記のように説明されている。
【0013】
金属酸化物多孔質層を作製するには、まず、粒子径が5〜100nmの金属酸化物微粒子を300〜500℃で加熱処理して、金属酸化物微粒子に吸着されている水分や有機物を除去する。この前処理によって、得られる色素増感型太陽電池の光電変換効率が向上する。また、紫外線照射によって金属酸化物微粒子から有機物を除去する前処理でも、色素増感型太陽電池の光電変換効率が向上する。
【0014】
次に、金属酸化物微粒子と金属アルコキシドとを溶媒とともに混練して、ペースト状の塗液を調製する。
【0015】
次に、導電層などが設けられた導電性基板に、塗布法などによって上記塗液を被着させた後、溶媒を蒸発させる。このとき、金属アルコキシドが空気中の水分と反応し、下記の反応式で示すように、金属アルコキシドの加水分解によって金属酸化物が生成する。なお、反応式は金属アルコキシドがチタンアルコキシドである例を示し、式中、ORはアルコキシ基を表すものとする。
Ti(OR)4 + 4H2O → Ti(OH)4 + 4ROH
Ti(OH)4 → TiO2 + 2H2
【0016】
生成する金属酸化物はアモルファスで、金属酸化物微粒子の表面に付着し、金属酸化物微粒子間、および金属酸化物微粒子と導電性基板との間を接着する役割を果たす。この結果、導電性基板上に金属酸化物多孔質層が形成される。なお、金属酸化物微粒子が酸化チタン微粒子である場合、新たに生成させる金属酸化物も酸化チタンであるときに、色素増感型太陽電池の光電変換効率が高くなる。しかし、ジルコニウムやニオブなど、異種金属元素の酸化物を付着させることも可能である。
【0017】
次に、この金属酸化物多孔質層に酸素雰囲気中にて紫外線を照射してオゾンを発生させ、残留する有機物を酸化して除去する。さらに、この後、80〜200℃で加熱処理するのが好ましい。これらの後処理で、色素増感型太陽電池の光電変換効率が向上する。この後、金属酸化物多孔質層に光増感色素を吸着させる。
【0018】
金属酸化物微粒子の前処理や金属酸化物多孔質層の後処理によって、色素増感型太陽電池の光電変換効率が向上する原因としては、水分や有機物の除去によって、金属酸化物多孔質層に吸着される光増感色素の量が増加することが挙げられている。また、金属酸化物多孔質層中の有機物は電子の再結合中心として働くので、有機物の除去は、電子の再結合を抑制し、電子寿命を増大させ、量子効率を向上させる効果もあると説明されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
特許文献1に提案されている金属酸化物膜およびその製造方法では、金属アルコキシドの加水分解生成物からなるゾル状態の塗布液を用いる。金属アルコキシドの加水分解生成物は反応性が高いので、膜質の面内均一性が良好な塗膜をこの塗布液を用いて形成することは難しい。また、空孔率を制御することも難しい。
【0020】
特許文献2に示されている製造方法によれば、低温焼成で金属酸化物多孔質層からなる機能性酸化物多孔質層を作製することができる。この結果、製造工程におけるエネルギー消費を抑えることができ、また、軽量、安価で、フレキシブルなプラスチックフィルムなどの耐熱性の乏しい材料を支持体として用いることができるので、好ましい。
【0021】
しかしながら、特許文献2に示されている製造方法によれば、金属酸化物微粒子と金属アルコキシドとの混合比に関連して、二律背反の関係が存在する。すなわち、金属酸化物微粒子の量に比して金属アルコキシドの量が少なすぎる場合、金属アルコキシドの分解によって生じる金属酸化物が不足し、金属酸化物微粒子間、および金属酸化物微粒子と導電性基板との間の接着が不十分となって、金属酸化物多孔質層の機械的強度が不足したり、金属酸化物多孔質層が支持体から剥離したりしやすくなる。一方、金属酸化物微粒子の量に比して金属アルコキシドの量が多すぎる場合、金属酸化物微粒子表面がアモルファス金属酸化物層によって厚く被覆されてしまったり、金属酸化物微粒子の実表面積が減少したりして、電極としての性能が低下する。従って、電極としての性能を重視すると、金属酸化物多孔質層の硬度が不足したり、支持体への密着性が不十分になったりする。
【0022】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、低温焼成によって作製することができ、かつ、機能性層としての性能と、硬度および支持体への密着性とを両立させることが可能な機能性酸化物多孔質層、及び、空孔率を制御するのも容易な、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
即ち、本発明は、
支持体上に配置された酸化物微粒子と、
主として直接、前記酸化物微粒子及び前記支持体に結着している第1酸化物層と、
前記第1酸化物層を形成している第1の酸化物よりも硬度の高い第2の酸化物からな り、主として前記第1酸化物層を介して、前記酸化物微粒子及び前記支持体に結着して いる第2酸化物層と
を含有し、前記第1酸化物層と前記第2酸化物層とによって、前記酸化物微粒子間及び前記酸化物微粒子と前記支持体との間が結着されてなる、機能性酸化物多孔質層に係わるものである。
【0024】
また、
酸化物微粒子と、加水分解すると第1の酸化物を生じる第1の化合物と、前記第1の 化合物より加水分解しにくく、かつ加水分解すると前記第1の酸化物より硬度の高い第 2の酸化物を生じる第2の化合物とを、有機溶媒に分散又は溶解させた塗液を調製する 工程と、
前記塗液の層を支持体に被着させる工程と、
前記塗液の層から前記有機溶媒を蒸発させる蒸発工程と、
前記蒸発工程後、温度を上昇させ、加熱処理する焼成工程と
を有し、
前記第1の酸化物の層が、主として直接、前記酸化物微粒子及び前記支持体に結着し 、
前記第2の酸化物の層が、主として前記第1の酸化物の層を介して、前記酸化物微粒 子及び前記支持体に結着し、
前記第1酸化物層と前記第2酸化物層とによって、前記酸化物微粒子間、及び前記酸 化物微粒子と前記支持体との間が結着されている酸化物多孔質層
を作製する、機能性酸化物多孔質層の製造方法に係わるものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明の機能性酸化物多孔質層の製造方法によれば、酸化物微粒子と、加水分解すると第1の酸化物を生じる第1の化合物と、前記第1の化合物より加水分解しにくく、かつ加水分解すると前記第1の酸化物より硬度の高い第2の酸化物を生じる第2の化合物とを、有機溶媒に分散又は溶解させた塗液を調製する。未精製の前記酸化物微粒子や前記有機溶媒には、通常、多かれ少なかれ吸着または吸蔵された水分が含まれている。この結果、前記塗液中で前記第1の化合物の加水分解が進行し、生成した前記第1の酸化物が前記酸化物微粒子の表面に結合し、前記酸化物微粒子間を連結して、前記塗液中で前記酸化物微粒子間のネットワークが形成されることがある。次に、前記塗液の層を支持体に被着させ、前記塗液の層から前記有機溶媒を蒸発させると、前記塗液に含まれていた前記第1の酸化物は、前記酸化物微粒子に結着する。また、空気中の水分との反応によって前記第1の化合物の加水分解がさらに進む。この結果、前記第1の化合物は、次の焼成工程に入る前に大部分が前記第1の酸化物に変化する。そして、前記酸化物微粒子間、および前記酸化物微粒子と前記支持体との間が、前記第1酸化物層によって結着された酸化物多孔質層が形成される。
【0026】
この後、前記焼成工程を行う。前記焼成工程までに加水分解される前記第2の化合物は少量で、大部分の前記第2の化合物が前記焼成工程において、空気中から供給される水分によって加水分解される。この場合、前記第2の化合物の加水分解によって生成する、硬度の高い前記第2の酸化物は、主として前記第1酸化物層の上に結着して前記第2酸化物層を形成し、前記酸化物微粒子間、および前記酸化物微粒子と前記支持体との間に結着している前記第1酸化物層を強固に補強する。この結果、機械的強度に優れ、前記支持体との密着性の高い、本発明の機能性酸化物多孔質層が得られる。
【0027】
本発明の製造方法によれば、低温焼成で機能性酸化物多孔質層を作製することができる。この結果、製造工程におけるエネルギー消費を抑えることができ、また、軽量、安価で、フレキシブルなプラスチックフィルムなどの、耐熱性の乏しい材料を支持体として用いることができる。また、ロール・ツー・ロール・プロセスで、さらに生産性よく安価に製造可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態1に基づく酸化物多孔質層の構造を示す断面図である。
【図2】同、酸化物多孔質層の作製工程を示すフロー図である。
【図3】本発明の実施の形態2に基づくカレンダー処理工程を説明する概略図である。
【図4】特許文献2に示されている金属酸化物多孔質層の作製工程を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0030】
本発明の機能性酸化物多孔質層において、前記酸化物微粒子の材料が半導体材料であるのがよい。この半導体材料は、例えば、酸化チタンTiO2、酸化亜鉛ZnO、酸化タングステンWO3、酸化ニオブNb25、チタン酸ストロンチウムSrTiO3、酸化スズSnO2及び酸化ケイ素SiO2からなる群から選ばれた少なくとも1種の酸化物であるのがよい。
【0031】
あるいは、前記酸化物微粒子の材料が絶縁体材料であるのがよい。この絶縁体材料は、例えば、前記絶縁体材料が、酸化チタンTiO2、酸化ケイ素SiO2、酸化ホウ素B23、酸化アルミニウムAl23、及び酸化ジルコニウムZrO2からなる群から選ばれた少なくとも1種の酸化物であるのがよい。
【0032】
また、前記第1酸化物層を構成している元素が、前記酸化物微粒子を構成している元素と同一の元素であるのがよい。
【0033】
また、前記硬度の高い第2酸化物層を構成している酸化物が、酸化ケイ素SiO2、酸化ホウ素B23、酸化アルミニウムAl23、及び酸化ジルコニウムZrO2からなる群から選ばれた少なくとも1種の酸化物であるのがよい。
【0034】
また、前記支持体の材料がプラスチック材料であるのがよい。
【0035】
本発明の機能性酸化物多孔質層の製造方法において、前記第1の化合物として塩又はアルコキシドを用いるのがよい。前記第1の化合物は、チタンTi、アルミニウムAl、ケイ素Si、バナジウムV、ジルコニウムZr、ニオブNb、及びタンタルTaからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素の化合物であるのがよい。また、前記第1の化合物として、前記酸化物微粒子及び/又は前記有機溶媒に通常含まれる少量の水分と室温において反応し、一部又は全部が前記塗液中で加水分解される化合物を用いるのがよい。
【0036】
また、前記第2の化合物として、ケイ素Si、ホウ素B、アルミニウムAl、及びジルコニウムZrからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素のアルコキシドを用いる
【0037】
また、前記蒸発工程中及び/又は前記蒸発工程後の温度を25〜200℃に保つのがよい。
【0038】
また、前記焼成工程中の温度を40〜200℃に保つのがよい。
【0039】
前記支持体の材料としてプラスチック材料を用いるのがよい。この際、前記支持体上に形成された前記機能性酸化物多孔質層のカレンダー処理を行うのがよい。
【0040】
以下、本発明の実施の形態に基づき、詳細を図面参照下に具体的に説明する。
【0041】
[実施の形態1]
実施の形態1では、請求項1〜8に記載した機能性酸化物多孔質層、および請求項9〜16に記載したその製造方法の例について説明する。
【0042】
図1(a)は、支持体5の上に形成された機能性酸化物多孔質層1の断面図である。機能性酸化物多孔質層1は、支持体5の上に配置された酸化物微粒子2間、および酸化物微粒子2と支持体5との間が、第1酸化物層3と第2酸化物層4とによって結着された酸化物多孔質層である。
【0043】
酸化物微粒子2は、機能性酸化物多孔質層の特性に応じて、酸化チタンTiO2、酸化亜鉛ZnO、酸化タングステンWO3、酸化ニオブNb25、チタン酸ストロンチウムSrTiO3、酸化スズSnO2、及び酸化ケイ素SiO2からなる群から選ばれた少なくとも1種の酸化物からなるのがよい。多くの場合、第1酸化物層3を構成する元素が、酸化物微粒子2を構成している元素と同一の元素であるのがよい。このようであると酸化物微粒子2と第1酸化物層3の密着性が最良になることが期待される。第1酸化物層3は、主として直接、酸化物微粒子2および支持体5に結着している。
【0044】
第2酸化物層4は、第1酸化物層3を形成している酸化物よりも硬度の高い第2の酸化物からなり、主として第1酸化物層3を介して酸化物微粒子2および支持体5に結着し、第1酸化物層3を補強している。第2酸化物層4を構成している酸化物は、酸化ケイ素SiO2、酸化ホウ素B23、酸化アルミニウムAl23、及び酸化ジルコニウムZrO2からなる群から選ばれた少なくとも1種の酸化物であるのがよい。
【0045】
図2は、機能性酸化物多孔質層1を作製する工程を示すフロー図である。以下、上述した特異な構造を有する機能性酸化物多孔質層1が、どのようにして形成されるのか、という点に重点をおいて説明する。
【0046】
機能性酸化物多孔質層1を作製するには、まず、酸化物微粒子2を適当な有機溶媒に分散させ、ペースト状の分散液を調製する。分散方法としては、公知の方法、例えば、攪拌処理、超音波分散処理、ビーズ分散処理、混錬処理、およびホモジナイザー処理などを好ましく用いることができる。酸化物微粒子2の配合量は、後述する第1の化合物および第2の化合物を添加して形成される塗液の質量の、1〜50質量%、例えば20質量%程度とする。1質量%未満である場合には、塗布法によって、十分な厚さを有する酸化物微粒子層を形成することができない不都合がある。一方、50質量%よりも大きい場合には、塗液の粘度が高くなりすぎて、塗布法などによって酸化物微粒子層を形成する際の、取り扱いが困難になる不都合がある。
【0047】
溶媒としては、酸化物微粒子2を分散させることができ、かつ、第1の化合物および第2の化合物を溶解させることができるものを適宜選択して用いる。具体的には、例えば、アルコール類、ケトン類、炭化水素類、アミド類、およびスルフィド類などから選択して用いる。
【0048】
次に、上記分散液に第1の化合物および第2の化合物を添加し、攪拌して溶解させ、均一な塗液とする。第1の化合物と第2の化合物とを添加する順序はどちらが先でもよい。第1の化合物は、加水分解して第1の酸化物を生じる化合物である。第2の化合物は、第1の化合物より加水分解しにくく、かつ加水分解すると上記第1の酸化物より硬度の高い第2の酸化物を生じる化合物である。
【0049】
具体的には、第1の化合物として、塩又はアルコキシドを用いるのがよい。この第1の化合物は、例えば、チタンTi、アルミニウムAl、ケイ素Si、バナジウムV、ジルコニウムZr、ニオブNb、およびタンタルTaからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素の化合物であるのがよい。また、未精製の金属酸化物半導体微粒子や有機溶媒には、通常、多かれ少なかれ吸着または吸蔵された水分が含まれているが、第1の化合物として、これらの水分と室温において反応し、一部又は全部が塗液中で加水分解される化合物を用いるのが好ましい。この場合、塗液の調製中に粘度が増加するのが観察される。これは、第1の化合物と酸化物微粒子および有機溶媒との混合が進むと、第1の化合物が水分と反応し、第1の化合物の加水分解によって生成した第1の酸化物が酸化物微粒子2の表面に結合し、酸化物微粒子2間を連結していくためであると考えられる。
【0050】
一方、第2の化合物としては、ケイ素Si、ホウ素B、アルミニウムAl、およびジルコニウムZrからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素のアルコキシドを用いるのがよい。
【0051】
第1の化合物の配合量は、塗液の質量の0.01〜20質量%とする。また、第2の化合物の配合量は、塗液の質量の0.01〜20質量%とする。第1の化合物および第2の化合物の配合量は、機能性酸化物多孔質層1の、所望の硬度と支持体への密着性とを得るために、酸化物微粒子2の材料や分散性、第1の化合物および第2の化合物の材料種に応じて、上記範囲内において適宜選択する。第1の化合物および第2の化合物の配合量が上記の範囲外である場合、機能性酸化物多孔質層1の硬度と支持体5への密着性とを両立させることが難しくなる傾向がある。
【0052】
次に、公知の方法、例えば、塗布法または印刷法などによって、支持体5の上に上記塗液の層を被着させる。塗布方法としては、例えば、マイクログラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ダイレクトグラビアコート法、ダイコート法、ディップ法、スプレーコート法、リバースロールコート法、カーテンコート法、コンマコート法、ナイフコート法、スピンコート法などを用いることができる。また、印刷方法としては、例えば、凸版印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、凹版印刷法、ゴム版印刷法、およびスクリーン印刷法などを用いることができる。
【0053】
次に、塗液の層から溶媒を蒸発させて除去し、第1の化合物、第2の化合物、および第1の酸化物を含有する酸化物微粒子層を形成する。溶媒を蒸発させる方法としては、室温で蒸発させてもよいし、加熱して蒸発させてもよい。溶媒が蒸発して除かれると、塗液に含まれていた第1の酸化物は、酸化物微粒子2に結着する。第1の化合物は空気中の水分と反応して加水分解する。この結果、第1の化合物は、次の焼成工程に入る前に大部分が第1の酸化物に変化する。そして、酸化物微粒子2間、および酸化物微粒子2と支持体5との間が、第1酸化物層3によって結着された酸化物多孔質層が形成される。この際、第1の化合物の加水分解を促進するために、蒸発工程中及び/又は蒸発工程後の温度を25〜200℃、例えば80℃程度に保ってもよい。
【0054】
次に、酸化物多孔質層を焼成して、酸化物微粒子2間の電子的な接続を向上させ、また、酸化物多孔質層の機械的強度と、基板との密着性とを向上させる。焼成温度に特に制限はないが、温度が高すぎると支持体5が熱で劣化することもあるので、焼成温度は40〜1000℃であり、通常、300〜600℃程度であるのが好ましい。支持体5の材料としてプラスチック材料を用いる場合には、そのガラス転移点以下、通常、40〜200℃であるのが好ましい。また、焼成時間に特に制限はないが、通常、1分間〜10時間程度である。
【0055】
この際、焼成工程までに加水分解される第2の化合物の割合は少く、大部分の第2の化合物が、焼成工程において空気中から供給される水分によって加水分解されることが好ましい。このようであると、第2の化合物の加水分解によって生成する第2の酸化物は、主として第1酸化物層3の上に結着して第2酸化物層4を形成し、酸化物微粒子2間、および酸化物微粒子2と支持体5との間に結着している第1酸化物層3を強固に補強する。この結果、機械的強度に優れ、支持体5との密着性の高い機能性酸化物多孔質層1が得られる。
【0056】
なお、第1の化合物のみでは、機能性酸化物多孔質層1と支持体5との密着性が不十分になりやすい。なぜなら、加水分解が起こりやすい第1の化合物は、塗液を支持体5に被着させる前にかなりの部分が加水分解する。この、塗液を支持体5に被着させる以前に生成した第1の酸化物は、酸化物微粒子2間を連結し、酸化物多孔質層1の機械的強度を高める上では寄与するが、支持体5との密着性を高める上では寄与しないからである。これに対し、第2の化合物の加水分解は大部分が塗液を支持体5に被着させた後に起こるので、第2の酸化物は、酸化物多孔質層1の機械的強度の向上にも、支持体5との密着性の向上にも、同様に寄与する。ただし、第2の化合物だけでは、表層剥がれや傷つきが生じやすい。これは、第2の化合物は金属酸化物半導体微粒子2の表面との反応性が第1の化合物に比べて低いので、第2の化合物だけでは微粒子2間のネッキング数が少なくなり、強度不足になりやすいからである。すなわち、機能性酸化物多孔質層1の機械的強度と支持体5への密着性とを両立させるには、第1の化合物と第2の化合物との両方が必要である。
【0057】
焼成後、酸化物多孔質層の実表面積を増大させたり、酸化物微粒子2間のネッキングを高めたりする目的で、例えば四塩化チタン水溶液やチタンアルコキシドを用いたネッキング処理を行ってもよい。
【0058】
支持体5の材料としてプラスチック材料を用いる場合は、加熱加圧プレスによって機能性酸化物多孔質層1を支持体5に圧着することも可能である。
【0059】
以下、機能性酸化物多孔質層1およびその製造方法について、さらに詳述する。
【0060】
機能性酸化物多孔質層1を半導体層として用いる場合には、下記の通りである。酸化物微粒子2の材料として、各種の金属酸化物や、ペロブスカイト構造を有する化合物などを用いることができる。この際、酸化物微粒子2の材料が、光励起下で伝導帯電子がキャリアとなり、アノード電流を生じるn型材料であることが好ましい。このような材料は、具体的に例示すると、TiO2、ZnO、WO3、Nb25、SrTiO3、およびSnO2などであり、これらの中でTiO2がとくに好ましい。ただし、酸化物微粒子2の材料はこれらに限定されるものではない。また、これらの材料を2種類以上混合して用いることもできる。酸化物多孔質層1の厚さは1〜30μmであるのがよい。酸化物微粒子2の形状は、球状、紡錘状、棒状、チューブ状から選択される少なくとも1種類以上であることが望ましい。
【0061】
酸化物微粒子2の材料として酸化チタンを用いる場合、その結晶型はルチル型、アナターゼ型、およびブルッカイト型の中から選択される1種類でよく、2種類以上の混合物でもよい。市販品としては、例えば、デグサ社製のP25、石原産業(株)製のST01、ST21、ST41、およびPT501(以上、商品名)、昭和タイタニウム(株)製のスーパータイタニアG・Fシリーズ(以上、商品名)、堺化学工業(株)製のSSP−25、SSP−20、SSP−M、STR−100N、およびSTR−60N(以上、商品名)、テイカ(株)製のMTシリーズ、JAシリーズ、およびJRシリーズ(以上、商品名)、富士チタン工業(株)製のTAシリーズおよびTRシリーズ(以上、商品名)などを用いることができる。また、四塩化チタンやチタンアルコキシドなどを加水分解処理または水熱処理するなどの公知の方法によって、所定の粒径のものを形成してもよい。
【0062】
酸化物微粒子2の材料として酸化亜鉛を用いる場合、市販品としては、例えば、テイカ(株)製のMZ−300およびMZ−500(以上、商品名)、石原産業(株)製のFZO−50(商品名)、シーアイ化成(株)製のNanoTek Powderシリーズ(商品名)などを用いることができる。酸化物微粒子2の材料として酸化スズを用いる場合、市販品としては、例えば、Johnson Matthey(株)製の平均粒径15nmのものや、シーアイ化成(株)製のNanoTek Powderシリーズ(商品名)などを用いることができる。
【0063】
酸化物微粒子2の材料として酸化タングステンおよび酸化ニオブを用いる場合、市販品としては、例えば、三津和化学薬品(株)製の酸化タングステン(VI)および酸化ニオブ(V)<1.47μ>を用いることができる。また、チタン酸ストロンチウムは富士チタン工業(株)製のST、HPST、およびHSTシリーズ(商品名)のものを用いることができる。
【0064】
なお、上記の酸化物微粒子2の材料は、適宜混合して用いることも可能である。
【0065】
機能性酸化物多孔質層2を絶縁体層として用いる場合には、絶縁体材料は、例えば、前記絶縁体材料が、酸化チタンTiO2、酸化ケイ素SiO2、酸化ホウ素B23、酸化アルミニウムAl23、及び酸化ジルコニウムZrO2からなる群から選ばれた少なくとも1種の酸化物であるのがよい。
【0066】
第1の化合物として塩またはアルコキシドのうち、有機溶媒に溶解させることができるものを用いることができる。この第1の化合物は、Ti、Al、Si、V、Zr、Nb、およびTaなどの、少なくとも一種の元素の化合物であるのがよい。また、多くの場合、上記元素が酸化物微粒子2を構成している元素と同一の元素であり、第1の化合物から生成する第1の酸化物と、酸化物微粒子2を構成している酸化物とが同種であるのがよい。このようであると酸化物微粒子2と第1酸化物層3との密着性が最良になると期待できる。
【0067】
また、第1の化合物として、酸化物微粒子2及び/又は有機溶媒に通常含まれる水分によって室温で加水分解される化合物を用いるのがよい。この場合、前述したように、塗液中で第1の化合物の加水分解が始まり、生成した第1の酸化物によって金属酸化物半導体微粒子2間が連結されていくので、微粒子2間の強固なネットワークが形成されやすい。
【0068】
塩としては、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、ハロゲン化物などのうち、溶媒に溶解するものを用いることができる。具体的には、TiOSO4、Zr(CH3COO)2O、Zr(CH3COO)4、Al(NO3)3、Al(CH3COO)3、Al2(SO4)3、TiCl4、AlCl3、Ti(C24)2、Zr(C24)2、およびAl2(C24)3などを用いることができる。
【0069】
また、用いることのできるアルコキシドは、下記の一般式のように表すことができる。
アルコキシドの一般式:
【化1】

【0070】
上記一般式で、アルコキシドは、モノマー(m=0)、オリゴマー(m=1〜10)、およびポリマー(m>10)のいずれでもよく、2種類以上を混合して用いることもできる。アルコキシ基としては、メトキシ基(n=1)、エトキシ基(n=2)、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基(以上、n=3)、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基(以上、n=4)や、2−エチルヘキソキシ基、その他の低級および高級アルコール由来のアルコキシ基を用いることができる。また、アルコキシドがアセチルアセトンなどのβ−ジケトン類で修飾されていてもよい。アルコキシ基の一部がヒドロキシ基で置換されていてもよい。
【0071】
市販品としては、例えば、下記のものを用いることができる。すなわち、日本曹達株式会社製のA−1、B−1、TOT、TOG、T−50、T−60、A−10、B−2、B−4、B−7、B−10、TBSTA、DPSTA−25、S−151、S−152、S−181、TAT、およびTLA−A−50(以上、商品名)、三菱ガス化学株式会社製のTPT、TBT、DBT、TST、TEAT、TAA、TEAA、TLA、およびOGT(以上、商品名)、味の素ファインテクノ株式会社製のKR TTS、KR 46B、KR 55、KR 41B、KR 38S、KR 138S、KR 238S、338X、KR 44、KR 9SA、KR ET、およびAL−M(以上、商品名)、マツモトファインケミカル株式会社製のTA−10、TA−25、TA−22、TA−30、TC−100、TC−401、TC−200、TC−750、TC−400、TC−300、TC−310、TC−315、TPHS、ZA−40、ZA−65、ZC−150、ZC−540、ZC−570、ZC−580、ZC−700、ZB−320、およびZB−126(以上、商品名)、コルコート株式会社製のエチルシリケート28、エチルシリケート28P、N−プロピルシリケート、N−ブチルシリケート、MCS−18、メチルシリケート51、メチルシリケート53A、エチルシリケート40、エチルシリケート48、EMS−485、SS−101、HAS−6、HAS−1、HAS−10、SS−C1、コルコートP、コルコートN−103X、およびマグネシウムエチラート(以上、商品名)を用いることができる。
【0072】
酸化物微粒子2の材料として酸化チタンを用いる場合、第1の化合物としては、例えば、四塩化チタンTiCl4、硫酸チタニアTiOSO4、テトラメトキシチタンTi(OCH3)4、テトラプロポキシチタンTi(OCH2CH2CH3)4、テトラブトキシチタンTi(OCH2CH2CH2CH3)4、テトラペントキシチタンTi(OCH2CH2CH2CH2CH3)4、ブトキシチタンダイマー、ブトキシチタンオリゴマー、ブトキシチタンポリマー、テトラメトキシジルコニウムZr(OCH3)4、テトラエトキシジルコニウムZr(OCH2CH3)4、テトラプロポキシジルコニウムZr(OCH2CH2CH3)4、テトラブトキシジルコニウムZr(OCH2CH2CH2CH3)4、トリメトキシアルミニウムAl(OCH3)3、トリエトキシアルミニウムAl(OCH2CH3)3、トリプロポキシアルミニウムAl(OCH2CH2CH3)3、トリブトキシアルミニウムAl(OCH2CH2CH2CH2CH3)3などを好ましく用いることができる。
【0073】
一方、第2の化合物としては、Si、B、Al、およびZrなどのアルコキシドを用い、第2酸化物層を形成する酸化物が、SiO2、B23、Al23、およびZrO2などの硬度の高い酸化物であるのがよい。
【0074】
酸化物微粒子2の材料として酸化チタンを用いる場合、第2の化合物としては、例えば、ジメチルジメトキシシランSi(CH3)2(OCH3)2、ジメチルジエトキシシランSi(CH3)2(OCH2CH3)2、メチルトリメトキシシランSi(CH3)(OCH3)3、メチルトリエトキシシランSi(CH3)(OCH2CH3)3、テトラメトキシシランSi(OCH3)4、テトラエトキシシランSi(OCH2CH3)4、テトラプロポキシシランSi(OCH2CH2CH3)4、テトラブトキシシランSi(OCH2CH2CH2CH3)4、エトキシシランダイマー、エトキシシランオリゴマー、エトキシシランポリマー、トリメトキシボランB(OCH3)3、トリエトキシボランB(OCH2CH3)3、トリイソプロポキシボランB(OCH(CH3)CH3)3などを好ましく用いることができる。
【0075】
溶媒としては、第1の化合物および第2の化合物を溶解させ、酸化物微粒子2を分散させることができるものを用いる。例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール)、1−ブタノール、2−ブタノール(イソブチルアルコール)、3−メチル−2−プロパノール(sec−ブチルアルコール)、および2−メチル−2−プロパノール(tert−ブチルアルコール)などのアルコール、シクロヘキサノンおよびシクロペンタノンなどのケトン、ヘキサンなどの炭化水素溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF)などのアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシドなどから選択される少なくとも1種類以上を用いることができる。
【0076】
塗液層の表面における乾燥むらやクラックの発生を抑えるため、高沸点溶媒を添加して、溶媒の蒸発速度を制御することもできる。そのような高沸点溶媒として、例えば、ブチルセロソルブ、ジアセトンアルコール、ブチルトリグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールイソプロピルエーテル、トリプロピレングリコールイソプロピルエーテル、メチルグリコールなどを用いることができる。また、支持体への塗布性や組成物のポットライフを向上させる目的で、必要に応じて界面活性剤、粘度調整剤、および分散剤などの添加剤を加えることができる。
【0077】
支持体5は用いられる環境において安定であればよく、それ以外に特に制限されないが、支持体5の材料がプラスチック材料である場合、本発明の特徴が生かされるので、とくに好ましい。また、装置に外部から侵入しようとする水分やガスを阻止する遮断性能が高く、また、耐溶剤性や耐候性に優れている材料が好ましい。支持体5の厚さは特に制限されず、光の透過率や、水蒸気の透過を遮断する遮断性能や、機械的強度などを勘案して、適宜選択することができる。
【0078】
機能性酸化物多孔質層1を光機能材料として用いる場合のように、支持体5が光透過性であることが求められる場合には、支持体5として、光が透過しやすい材質と形状のものを用いる。例えば、石英、サファイア、ガラスなどの透明無機基板、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタラート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンスルフィド()、ポリフッ化ビニリデン()、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、アラミド、ポリエステル(TPEE)、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアリレート類、ポリアクリレート、アクリル樹脂(PMMA)、ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂などの透明プラスチック基板が挙げられる。これらの中でも、特に可視光の透過率が高い基板材料を用いるのが好ましい。
【0079】
[実施の形態2]
実施の形態2では、請求項17に記載した、プラスチック材料からなる支持体に形成された機能性酸化物多孔質層のカレンダー処理について説明する。機能性酸化物多孔質層は、実施の形態1で作製した機能性酸化物多孔質層1であり、その支持体5はプラスチックフィルム13であるとする。
【0080】
図3は、実施の形態2に基づくカレンダー処理工程を説明する断面図である。図3に示されたカレンダー処理装置10は、円柱形のプレスロール11およびバックロール12を備えている。
【0081】
プレスロール11およびバックロール12としては、例えば、誘導発熱ジャケットロール、熱媒循環ロール、ヒーター内臓ロールなどの加熱ロールを用いることができる。ロールの表面処理としては、長期間使用の耐磨耗性に優れる点で、硬質クロムメッキ処理やセラミックス溶射処理が好ましい。また、表面はできるだけ平滑であることが好ましい。
【0082】
バックロール12として、例えばJIS−D80度以上のゴム硬度をもつゴム層、あるいはそれに相当する硬度の樹脂層を鉄ロール表面に施し、表面を研磨仕上げしたロールを用いてもよい。また、バックロール12の表面を、ロール内部で冷媒循環させて冷却するか、または、冷却ロールまたは冷却ノズルを用いて冷却してもよい。このようにすると、カレンダー処理中にプレスロール11から連続的に伝達されてくる熱によって、バックロール12の表面温度が上昇し、機能性酸化物多孔質層1が形成されたプラスチックフィルム13が軟化したり、溶けてしまったりするのを防止することができる。この結果、連続して、生産性よく、カレンダー処理を行うことができる。
【0083】
プラスチックフィルム13上に形成された機能性酸化物多孔質層1のカレンダー処理は、機能性酸化物多孔質層1の焼成後に行うことが望ましい。焼成前にカレンダー処理を行うと、機能性酸化物多孔質層1の密着特性が不十分であるため、機能性酸化物多孔質層1が剥がれてしまうおそれがある。すなわち、カレンダー処理を行うには、処理前の機能性酸化物多孔質層1が支持体13に良好に密着している必要がある。焼成の温度は、プラスチックフィルム13が熱で劣化しないように、40〜200℃の範囲とすることが好ましい。焼成の時間は特に制限はないが、通常は1分〜10時間程度である。
【0084】
カレンダー処理により、機能性酸化物多孔質層1の厚さが減少する。また、酸化物微粒子2間のネッキングが促進される。また、機能性酸化物多孔質層1が形成されたプラスチックフィルム13の透明性が向上する。
【0085】
プレスロール11の温度は室温〜300℃、バックロール12の温度は室温〜300℃、線圧は0〜500kg/cmとすることが好ましい。この範囲外である場合、機能性酸化物多孔質層1が形成されたプラスチックフィルム13が熱負けなどにより変形してしまうことがある。カレンダー処理は2回以上行ってもよい。プラスチックフィルム13の厚さは、特に限定されるものではないが、生産性の観点から38〜350μmであることが好ましい。
【実施例】
【0086】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0087】
実施例1では、まず、実施の形態1で説明した半導体電極層1を作製し、その特性を調べた。
【0088】
<塗液の調製>
金属酸化物半導体微粒子2として酸化チタンTiO2微粒子を用いた。酸化チタン含有率が20〜30%になるように酸化チタン微粒子の粉末とエタノールとを混合し、ペイントシェイカーと直径0.65mmのジルコニアビーズとを用いて9〜24時間ビーズ分散処理を行い、酸化チタン微粒子分散液を調製した。この分散液に所定量の第1の化合物および第2の化合物を加え、攪拌して均一に混合し、酸化チタン微粒子、第1の化合物および第2の化合物を含有する塗液を調製した。このとき、第1の化合物の添加によって分散液の粘度が増加することが観察された。
【0089】
<半導体電極層(金属酸化物半導体多孔質層)の作製>
この塗液を支持体上にバーコート法によって塗布した後、80℃で2分間溶媒を蒸発させた。その後、150℃で30分間焼成した。
【0090】
表1および表2に、それぞれ、実施例1および比較例1における支持体5および半導体電極層1の組成を示す。支持体5として、実施例1−1および1−3では厚さ125μmのPETフィルム(商品名 0300E;三菱樹脂(株)製)を用い、実施例1−2ではガラス基板を用いた。実施例1−4および1−5では、厚さ125μmのPENフィルムの上に透明導電層としてITO層が設けられている透明導電フィルム(尾池工業(株)製)を用いた。この際、実施例1−5では、ITO層上に密着補助層を設けた。密着補助層は、東洋紡(株)製のバイロン245(商品名)の1質量%シクロヘキサノン溶液を塗布し、溶媒蒸発後の厚さが30〜50nmになるように形成した。一方、比較例1−1〜1−8ではPETフィルムを用いた。
【0091】
酸化チタン微粒子として、実施例1−1および1−2ではP25(商品名;デグサ社製)を用い、実施例1−3〜1−5ではST21(商品名;石原産業(株)製)を用いた。一方、比較例1−1〜1−5ではP25を用い、比較例1−6〜1−9ではST21を用いた。実施例および比較例とも、塗液における酸化チタン微粒子の配合量は17.5質量%で一定とした。P25では、アナターゼ型酸化チタンとルチル型酸化チタンとが混在している。ST21では、アナターゼ型酸化チタンの割合がP25に比べて多い。平均粒子径はほぼ同じである。
【0092】
第1の化合物としてブトキシチタンダイマー(DBT;三菱ガス化学(株)製)を用い、第2の化合物としてテトラメトキシシラン(TMOS;純正化学(株)製)を用いた。塗液における配合量は、DBTが2.5質量%、TMOSが0.1質量%で一定とした。比較例1−1〜1−9ではDBTおよびTMOSの配合量を種々に変更して、その影響を調べた。溶媒は、いずれの例でもエタノールを用いた。
【0093】
<評価方法>
硬度は、マルテンス硬度および擦り試験により評価した。マルテンス硬度は、PICODENTOR HM500(商品名;(株)フィッシャー・インストルメンツ製)で評価した。荷重3mNとした。針としてダイアモンド錐体を用い、面角136°で測定した。擦り試験は、ベンコットM−3IIを用い、5cm程度の長さで、1方向に1回、表面を力強く擦り、以下の基準で評価した。
○:傷なし
△:傷10本以下
×:傷11本以上
【0094】
密着特性は、PETおよびガラス基板上に作製した半導体電極層1を試験片とし、JIS K5400の碁盤目(1mm間隔×100マス)セロハンテープ(商品名 CT24;ニチバン(株)製)剥離試験により評価した。
【0095】
半導体電極層1の厚さは、層1の一部を支持体5から削りとり、層1表面から支持体5表面までの段差を触針式表面粗さ測定器(商品名 サーフコーダET4000;(株)小阪研究所製)を用いて測定することにより求めた。半導体電極層1の厚さは、実施例1−1〜1−3および比較例1−1〜1−9で約5μm、実施例1−4、1−5で約3μmであった。
【0096】
<半導体電極層に残留有機物がないことの確認>
半導体電極層には、有機物が残留していないことが好ましい。有機物が残留している場合、その半導体電極層を用いた色素増感型太陽電池の性能が低下するおそれがある。そこで、Nicolet Magna 550(商品名;サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製)を用い、DuraSampl II ATRアタッチメント上に、半導体電極層が形成された支持体を固定して、半導体電極層のFT−IRスペクトルを測定し、炭素−水素結合の伸縮振動(2800〜3000cm-1)に基づく吸収の有無を調べた。実施例1および比較例1のいずれにおいても、炭素−水素結合の伸縮振動は測定されず、半導体電極層に残留有機物がないことが確認された。
【0097】
表1および表2に、それぞれ、実施例1および比較例1における評価を示す。
【0098】
【表1】

【0099】
【表2】

【0100】
実施例1−1〜実施例1−5間の比較から、支持体や酸化チタン材料が異なっても、ほぼ同様の効果が得られることがわかる。一方、実施例1−1と比較例1−1〜1−5との比較から、第1の化合物および第2の化合物がない場合、あるいは一方のみである比較例1の場合には、マルテンス硬度、ベンコット擦り試験、および密着特性のいずれにおいても、実施例1に比して大きく劣っている。
【実施例2】
【0101】
実施例2では、実施の形態2で説明したカレンダー処理の効果を調べた。
【0102】
<機能性酸化物多孔質層の作製>
まず、酸化チタン微粒子としてP25(商品名;デグサ社製)を用い、実施例1−1と同様にして塗液を調製した。実施例3では、支持体5として、実施例1−4で先述した、厚さ125μmのPENフィルムの上に、透明導電層として表面抵抗13Ω/□のITO層が設けられている透明導電フィルム(尾池工業(株)製)を用いた。ITO表面を酸素プラズマ処理にて洗浄後、この上に塗液をコイルバーで塗布し、その他は実施例1と同様にして、機能性酸化物多孔質層1を作製した。比較例2では、DBTおよびTMOSを含まない塗液を形成し、その他は実施例2と同様にして、酸化物多孔質層を作製した。
【0103】
<カレンダー処理>
図3に示すように、機能性酸化物多孔質層1が形成されたプラスチックフィルム13をプレスロール11とバックロール12との間に挟み、連続的に走行させながら加熱・加圧して、酸化物多孔質層1にカレンダー処理を施した。具体的には、プレスロール11とバックロール12はともに160℃に加熱し、線圧160kg/cmでフィルム13をニップした。カレンダー処理回数は1回とした。
【0104】
表3に、実施例2および比較例2における支持体5および機能性酸化物多孔質層1の組成を示す。表3には、3つのサンプルの平均値を記載した。
【0105】
【表3】

【0106】
実施例2−1と実施例2−2との比較からわかるように、カレンダー処理によって機能性酸化物多孔質層1の厚さが減少する。また、酸化物微粒子2間のネッキングが促進される。また、目視による観察から、酸化物多孔質層1が形成されたプラスチックフィルム13の透明性が向上する。しかしながら、比較例2のように、半導体電極層の密着特性が不十分であると、酸化物多孔質層1が剥がれてしまうおそれがある。すなわち、カレンダー処理を行うには、処理前の酸化物多孔質層1が支持体13に良好に密着している必要があり、本発明はこの点でも効果的である。
【0107】
以上、本発明を実施の形態および実施例に基づいて説明したが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、軽量、安価で、フレキシブルなプラスチックフィルムなどを用いて生産性よく製造できる機能性酸化物多孔質層を提供し、その普及に寄与する。
【符号の説明】
【0109】
1…機能性酸化物多孔質層、2…酸化物微粒子、3…第1酸化物層、4…第2酸化物層、
5…支持体、10…カレンダー処理装置、11…プレスロール、12…バックロール、
13…プラスチックフィルム、
【先行技術文献】
【特許文献】
【0110】
【特許文献1】特開2000−327310号公報(請求項8−15、第11,12,16及び17頁)
【特許文献2】特許3671183号公報(第3−8及び10−14頁、図2)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に配置された酸化物微粒子と、
主として直接、前記酸化物微粒子及び前記支持体に結着している第1酸化物層と、
前記第1酸化物層を形成している第1の酸化物よりも硬度の高い第2の酸化物からな り、主として前記第1酸化物層を介して、前記酸化物微粒子及び前記支持体に結着して いる第2酸化物層と
を含有し、前記第1酸化物層と前記第2酸化物層とによって、前記酸化物微粒子間及び前記酸化物微粒子と前記支持体との間が結着されてなる、機能性酸化物多孔質層。
【請求項2】
前記酸化物微粒子が半導体材料である、請求項1に記載した機能性酸化物多孔質層。
【請求項3】
前記半導体材料が、酸化チタンTiO2、酸化亜鉛ZnO、酸化タングステンWO3、酸化ニオブNb25、チタン酸ストロンチウムSrTiO3、酸化スズSnO2及び酸化ケイ素SiO2からなる群から選ばれた少なくとも1種の酸化物である、請求項2に記載した機能性酸化物多孔質層。
【請求項4】
前記酸化物微粒子が絶縁体材料である、請求項1に記載した機能性酸化物多孔質層。
【請求項5】
前記絶縁体材料が、酸化チタンTiO2、酸化ケイ素SiO2、酸化ホウ素B23、酸化アルミニウムAl23、及び酸化ジルコニウムZrO2からなる群から選ばれた少なくとも1種の酸化物である、請求項4に記載した機能性酸化物多孔質層。
【請求項6】
前記第1酸化物層を構成している元素が、前記酸化物微粒子を構成している元素と同一の元素である、請求項1に記載した機能性酸化物多孔質層。
【請求項7】
前記第2酸化物層を構成している酸化物が、酸化ケイ素SiO2、酸化ホウ素B23、酸化アルミニウムAl23、及び酸化ジルコニウムZrO2からなる群から選ばれた少なくとも1種の酸化物である、請求項1に記載した機能性酸化物多孔質層。
【請求項8】
前記支持体の材料がプラスチック材料である、請求項1に記載した機能性酸化物多孔質層。
【請求項9】
酸化物微粒子と、加水分解すると第1の酸化物を生じる第1の化合物と、前記第1の 化合物より加水分解しにくく、かつ加水分解すると前記第1の酸化物より硬度の高い第 2の酸化物を生じる第2の化合物とを、有機溶媒に分散又は溶解させた塗液を調製する 工程と、
前記塗液の層を支持体に被着させる工程と、
前記塗液の層から前記有機溶媒を蒸発させる蒸発工程と、
前記蒸発工程後、温度を上昇させ、加熱処理する焼成工程と
を有し、
前記第1の酸化物の層が、主として直接、前記酸化物微粒子及び前記支持体に結着し 、
前記第2の酸化物の層が、主として前記第1の酸化物の層を介して、前記酸化物微粒 子及び前記支持体に結着し、
前記第1酸化物層と前記第2酸化物層とによって、前記酸化物微粒子間、及び前記酸 化物微粒子と前記支持体との間が結着されている酸化物多孔質層
を作製する、機能性酸化物多孔質層の製造方法。
【請求項10】
前記第1の化合物として塩又はアルコキシドを用いる、請求項9に記載した機能性酸化物多孔質層の製造方法。
【請求項11】
前記第1の化合物は、チタンTi、アルミニウムAl、ケイ素Si、バナジウムV、ジルコニウムZr、ニオブNb、及びタンタルTaからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素の化合物である、請求項10に記載した機能性酸化物多孔質層の製造方法。
【請求項12】
前記第1の化合物として、前記酸化物微粒子及び/又は前記有機溶媒に通常含まれる少量の水分と室温において反応し、一部又は全部が前記塗液中で加水分解される化合物を用いる、請求項9に記載した機能性酸化物多孔質層の製造方法。
【請求項13】
前記第2の化合物として、ケイ素Si、ホウ素B、アルミニウムAl、及びジルコニウムZrからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素のアルコキシドを用いる、請求項9に記載した機能性酸化物多孔質層の製造方法。
【請求項14】
前記蒸発工程中及び/又は前記蒸発工程後の温度を25〜200℃に保つ、請求項9に記載した機能性酸化物多孔質層の製造方法。
【請求項15】
前記焼成工程中の温度を40〜200℃に保つ、請求項9に記載した機能性酸化物多孔質層の製造。
【請求項16】
前記支持体の材料としてプラスチック材料を用いる、請求項9に記載した機能性酸化物多孔質層の製造方法。
【請求項17】
前記支持体上に形成された前記機能性酸化物多孔質層のカレンダー処理を行う、請求項16に記載した機能性酸化物多孔質層の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−136875(P2011−136875A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298437(P2009−298437)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】